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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-162807(P2018-162807A)
(43)【公開日】2018年10月18日
(54)【発明の名称】スプール弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 3/26 20060101AFI20180921BHJP
【FI】
   F16K3/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-59099(P2017-59099)
(22)【出願日】2017年3月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高井 貴志
(72)【発明者】
【氏名】楠美 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】藪下 聡
【テーマコード(参考)】
3H053
【Fターム(参考)】
3H053AA35
3H053BA13
3H053DA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】摺動部材の摺動性を好適に確保できるスプール弁装置を提供する。
【解決手段】スプール弁装置10は収容穴部40を有するスプール弁体30と、固定部50と、弾性部材80と、収容穴部40内に収容される摺動部材60とを備える。収容穴部40はスプール弁体30の軸方向一方側の端部に開口し、内部に摺動部材60が軸方向に摺動可能に配置される第1部分41と、第1部分41よりも軸方向他方側に位置し、軸方向一方側から軸方向他方側に向かって摺動部材60の外径よりも収容穴部40の内径が小さくなる第2部分42とを有する。摺動部材60の軸方向一方側の端部は、固定部50の軸方向他方側の端部と接触可能である。スプール弁体30は、スプール弁体30の径方向外側面に開口しスプール穴部21の径方向内側面に設けられるポートと収容穴部40とを繋ぐ流路を有する。流路は、第2部分42よりも軸方向他方側において収容穴部40と繋がる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延びる中心軸に沿ってスプール穴部内に軸方向に移動可能に配置され、かつ、内部に軸方向に延びる収容穴部を有するスプール弁体と、
前記スプール弁体の軸方向一方側において、前記スプール穴部内に固定される固定部と、
前記スプール弁体と前記固定部との軸方向の間において、一端が前記固定部に支持され、前記スプール弁体に対して前記固定部から離れる向きに力を加える弾性部材と、
前記収容穴部内に収容される摺動部材と、
を備え、
前記収容穴部は、
前記スプール弁体の軸方向一方側の端部に開口し、内部に前記摺動部材が軸方向に摺動可能に配置される第1部分と、
前記第1部分よりも軸方向他方側に位置し、軸方向一方側から軸方向他方側に向かって前記摺動部材の外径よりも前記収容穴部の内径が小さくなる第2部分と、
を有し、
前記摺動部材の軸方向一方側の端部は、前記固定部の軸方向他方側の端部と接触可能であり、
前記スプール弁体は、前記スプール弁体の径方向外側面に開口し前記スプール穴部の径方向内側面に設けられるポートと前記収容穴部とを繋ぐ流路を有し、
前記流路は、前記第2部分よりも軸方向他方側において前記収容穴部と繋がる、スプール弁装置。
【請求項2】
前記第2部分は、軸方向一方側から軸方向他方側に向かって前記収容穴部の内径が小さくなる段差部である、請求項1に記載のスプール弁装置。
【請求項3】
前記第2部分は、軸方向一方側から軸方向他方側に向かうに従って前記収容穴部の内径が漸次小さくなるテーパ穴部である、請求項1に記載のスプール弁装置。
【請求項4】
前記第2部分は、軸方向一方側に面する第1対向面を有し、
前記摺動部材は、軸方向他方側に面し前記第1対向面と軸方向に対向する第2対向面を有し、
前記第2対向面は、前記第1対向面と接触可能であり、かつ、前記第1対向面に対して相対的に傾いた面である、請求項1から3のいずれか一項に記載のスプール弁装置。
【請求項5】
前記第2部分は、軸方向一方側に面する第1対向面を有し、
前記摺動部材は、軸方向他方側に面し前記第1対向面と軸方向に対向する第2対向面を有し、
前記第2対向面は、前記第1対向面と接触可能であり、かつ、前記第1対向面に沿った面である、請求項1から3のいずれか一項に記載のスプール弁装置。
【請求項6】
前記摺動部材は、軸方向に延びる円柱状であり、
前記摺動部材の軸方向他方側の端部は、軸方向一方側から軸方向他方側に向かうに従って前記摺動部材の外径が漸次小さくなるテーパ部である、請求項1から5のいずれか一項に記載のスプール弁装置。
【請求項7】
前記摺動部材の軸方向他方側の端面は、球面である、請求項1から6のいずれか一項に記載のスプール弁装置。
【請求項8】
前記収容穴部の軸方向他方側の端部は、軸方向一方側から軸方向他方側に向かうに従って前記収容穴部の内径が漸次小さくなる円錐状の円錐穴部である、請求項1から7のいずれか一項に記載のスプール弁装置。
【請求項9】
前記流路は、前記円錐穴部に繋がる、請求項8に記載のスプール弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプール弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
収容孔に収容される第1スプールと、第1スプールの摺動孔内に摺動自在に挿入される第2スプールとを有する容積切換バルブが知られる。例えば、特許文献1には、液圧モータ制御装置に設けられた容積切換バルブが記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−3667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような容積切換バルブにおいて摺動孔の成形精度は、摺動孔の奥側ほど低下しやすく、内径が小さくなりやすい。そのため、第2スプールが摺動孔の奥側に移動した場合に、第2スプールが摺動孔に噛み込んで摺動できなくなる場合がある。また、例えば、特許文献1のように、第2スプールの奥側の端部に小径部が設けられる場合、第2スプールの奥側の端部におけるオイルの油圧を受ける受圧面積が小さくなる。また、オイルの油圧が小径部に対して径方向にも作用しやすい。そのため、オイルの油圧を受けた場合に、第2スプールが摺動しにくい場合があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、摺動部材の摺動性を好適に確保できるスプール弁装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスプール弁装置の一つの態様は、一方向に延びる中心軸に沿ってスプール穴部内に軸方向に移動可能に配置され、かつ、内部に軸方向に延びる収容穴部を有するスプール弁体と、前記スプール弁体の軸方向一方側において、前記スプール穴部内に固定される固定部と、前記スプール弁体と前記固定部との軸方向の間において、一端が前記固定部に支持され、前記スプール弁体に対して前記固定部から離れる向きに力を加える弾性部材と、前記収容穴部内に収容される摺動部材と、を備え、前記収容穴部は、前記スプール弁体の軸方向一方側の端部に開口し、内部に前記摺動部材が軸方向に摺動可能に配置される第1部分と、前記第1部分よりも軸方向他方側に位置し、軸方向一方側から軸方向他方側に向かって前記摺動部材の外径よりも前記収容穴部の内径が小さくなる第2部分と、を有し、前記摺動部材の軸方向一方側の端部は、前記固定部の軸方向他方側の端部と接触可能であり、前記スプール弁体は、前記スプール弁体の径方向外側面に開口し前記スプール穴部の径方向内側面に設けられるポートと前記収容穴部とを繋ぐ流路を有し、前記流路は、前記第2部分よりも軸方向他方側において前記収容穴部と繋がる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、摺動部材の摺動性を好適に確保できるスプール弁装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態のスプール弁装置を示す断面図である。
図2図2は、第1実施形態のスプール弁装置を示す断面図である。
図3図3は、第1実施形態のスプール弁装置の一部を示す断面図である。
図4図4は、第1実施形態の他の一例であるスプール弁装置の一部を示す断面図である。
図5図5は、第2実施形態のスプール弁装置の一部を示す断面図である。
図6図6は、第3実施形態のスプール弁装置の一部を示す断面図である。
図7図7は、第4実施形態のスプール弁装置の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
図1および図2に示すように、本実施形態のスプール弁装置10は、スプール筐体20と、スプール弁体30と、固定部50と、弾性部材80と、摺動部材60と、ソレノイド70と、を備える。スプール筐体20は、一方向に延びる中心軸Jに沿って配置される円筒状である。本実施形態において、中心軸Jは、図1および図2における左右方向に延びる。以下の説明においては、中心軸Jの軸方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0010】
また、軸方向における図1および図2の右側を単に「右側」と呼び、軸方向における図1および図2の左側を単に「左側」と呼ぶ。なお、右側および左側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。なお、右側は、軸方向一方側に相当し、左側は、軸方向他方側に相当する。
【0011】
スプール筐体20の内部は、中心軸Jを中心として軸方向に延びるスプール穴部21である。本実施形態においてスプール穴部21は、スプール筐体20の軸方向両側に開口する。スプール穴部21の軸方向と直交する断面形状は、円形状である。スプール筐体20は、インポート22と、アウトポート23と、ドレインポート24と、を有する。インポート22、アウトポート23およびドレインポート24は、スプール筐体20の径方向外側面からスプール穴部21の径方向内側面まで貫通する孔であり、スプール筐体20の外部とスプール穴部21の内部とを繋ぐ。インポート22、アウトポート23およびドレインポート24は、左側から右側に沿ってこの順で並んで配置される。
【0012】
スプール弁体30は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる円柱状である。スプール弁体30は、中心軸Jに沿ってスプール穴部21内に軸方向に移動可能に配置される。スプール弁体30は、被押圧部30aと、第1大径部30bと、第1小径部30cと、第2大径部30dと、第2小径部30eと、第3大径部30fと、を左側から右側に向かってこの順で有する。
【0013】
被押圧部30aは、スプール弁体30の左側の端部である。被押圧部30aの外径は、スプール穴部21の内径よりも小さい。第1大径部30bは、被押圧部30aの右側の端部に繋がる。第1大径部30bの外径は、被押圧部30aの外径よりも大きく、スプール穴部21の内径とほぼ同じである。第1小径部30cは、第1大径部30bの右側の端部に繋がる。第1小径部30cの外径は、被押圧部30aの外径および第1大径部30bの外径よりも小さい。第1小径部30cの径方向外側面とスプール穴部21の径方向内側面との径方向の隙間は、インポート22とアウトポート23とを連結可能な第1連結流路91を構成する。
【0014】
第2大径部30dは、第1小径部30cの右側の端部に繋がる。第2大径部30dの外径は、被押圧部30aの外径および第1小径部30cの外径よりも大きく、スプール穴部21の内径とほぼ同じである。第2大径部30dの外径は、例えば、第1大径部30bの外径と同じである。第2小径部30eは、第2大径部30dの右側の端部に繋がる。第2小径部30eの外径は、被押圧部30aの外径および第2大径部30dの外径よりも小さい。第2小径部30eの外径は、例えば、第1小径部30cの外径と同じである。第2小径部30eの径方向外側面とスプール穴部21の径方向内側面との径方向の隙間は、アウトポート23とドレインポート24とを連結可能な第2連結流路92を構成する。
【0015】
第3大径部30fは、第2小径部30eの右側の端部に繋がる。第3大径部30fは、スプール弁体30の右側の端部である。第3大径部30fは、被押圧部30aの外径および第2小径部30eの外径よりも大きく、スプール穴部21の内径とほぼ同じである。第3大径部30fの外径は、例えば、第1大径部30bの外径および第2大径部30dの外径と同じである。第1大径部30b、第2大径部30dおよび第3大径部30fは、スプール弁体30が軸方向に移動する際に、スプール穴部21の径方向内側面に対して摺動する。
【0016】
スプール弁体30がスプール筐体20に対して軸方向に移動することで、インポート22、アウトポート23、およびドレインポート24の連結状態が変化する。例えば、図1および図2に示す状態からスプール弁体30がスプール筐体20に対して右側に移動すると、第2大径部30dによってアウトポート23とドレインポート24との間が閉塞されるとともに、第1連結流路91によってインポート22とアウトポート23とが連結される。インポート22とアウトポート23とが連結されると、インポート22から流入したオイルがアウトポート23に流出する。
【0017】
一方、図1および図2に示す状態においては、第2大径部30dによってインポート22とアウトポート23との間が閉塞され、第2連結流路92によってアウトポート23とドレインポート24とが連結される。アウトポート23とドレインポート24とが連結されると、インポート22からアウトポート23に流れたオイルがドレインポート24に流出する。
【0018】
スプール弁体30は、内部に軸方向に延びる収容穴部40を有する。収容穴部40は、スプール弁体30の右側の端面から左側に窪む有底の穴である。収容穴部40の軸方向と直交する断面形状は、中心軸Jを中心とする円形状である。収容穴部40は、第1部分41と、第2部分42と、第3部分43と、円錐穴部44と、を有する。
【0019】
第1部分41は、スプール弁体30の右側の端部に開口する。第1部分41は、第3大径部30fから第2小径部30eを介して第2大径部30dまで跨って設けられる。第1部分41は、支持穴部41aと、摺動穴部41bと、を有する。支持穴部41aは、第1部分41の右側の端部であり、スプール弁体30の右側の端部に開口する部分である。支持穴部41aは、第3大径部30fに設けられる。
【0020】
摺動穴部41bは、支持穴部41aの左側に繋がる部分である。摺動穴部41bの左側の端部は、第1部分41の左側の端部である。摺動穴部41bの内径は、支持穴部41aの内径よりも小さい。摺動穴部41bの内径は、例えば、軸方向の全体に亘って同じである。摺動穴部41bは、第2小径部30eに設けられる。摺動穴部41bの左側の端部は、第2大径部30dに設けられる。
【0021】
第2部分42は、第1部分41よりも左側に位置する。本実施形態において第2部分42は、第1部分41の左側の端部に繋がる。第2部分42は、第2大径部30dに設けられる。図3に示すように、第2部分42は、右側から左側に向かって摺動部材60の外径Dよりも収容穴部40の内径が小さくなる部分である。
【0022】
なお、本明細書において「右側から左側に向かって摺動部材の外径よりも収容穴部の内径が小さくなる第2部分」とは、第2部分において収容穴部の内径が、摺動部材における摺動する部分の外径よりも小さくなればよい。すなわち、第2部分において小さくなる収容穴部の内径は、摺動部材における摺動しない部分の外径より大きくてもよい。本実施形態において外径Dは、摺動部材60における摺動する部分の外径である。摺動部材60における摺動する部分とは、外径が収容穴部40の内径とほぼ同じで、径方向外側面が収容穴部40の径方向内側面に対して滑りながら移動する部分である。
【0023】
本実施形態において第2部分42は、右側から左側に向かうに従って収容穴部40の内径が漸次小さくなるテーパ穴部である。第2部分42における右側の端部の内径は、摺動穴部41bの左側の端部の内径と同じである。第2部分42は、右側に面する第1対向面42aを有する。第1対向面42aは、第2部分42の径方向内側面である。第1対向面42aは、周方向に延びる円環状である。第1対向面42aは、軸方向と直交する面に対して傾いた面である。第1対向面42aは、右側から左側に向かうに従って径方向内側に位置するテーパ面である。第1対向面42aは、径方向内側に面する。
【0024】
なお、本実施形態の第2部分42を、右側から左側に向かって収容穴部40の内径が小さくなる段差部とみなすこともできる。この場合、第1対向面42aは、右側に面する段差面に相当する。
【0025】
第3部分43は、第2部分42を介して第1部分41の左側の端部に繋がる。第3部分43の内径は、摺動穴部41bの内径よりも小さい。第3部分43における右側の端部の内径は、第2部分42における左側の端部の内径と同じである。第3部分43の内径は、例えば、軸方向の全体に亘って同じである。図1および図2に示すように、第3部分43は、第2大径部30dに設けられる。
【0026】
円錐穴部44は、第3部分43の左側の端部に繋がる。円錐穴部44は、収容穴部40の左側の端部である。円錐穴部44は、右側から左側に向かうに従って収容穴部40の内径が漸次小さくなる円錐状である。円錐穴部44は、第1小径部30cに設けられる。円錐穴部44は、例えば、ドリルを用いて収容穴部40を作製する際に必然的に設けられる場合がある。すなわち、本実施形態によれば、ドリルを用いて収容穴部40を容易に作製することができる。
【0027】
スプール弁体30は、流路31を有する。流路31は、スプール弁体30の径方向外側面に開口しスプール穴部21の径方向内側面に設けられるポートと収容穴部40とを繋ぐ。本実施形態においてスプール穴部21の径方向内側面に設けられるポートとは、アウトポート23である。流路31は、径方向に延びてスプール弁体30の径方向外側面から収容穴部40の径方向内側面まで貫通する。図示は省略するが、流路31の径方向と直交する断面形状は、例えば、円形状である。流路31は、周方向に沿って複数設けられる。本実施形態において流路31は、第2大径部30dに設けられる。流路31の径方向内端部は、第3部分43に繋がる。すなわち、流路31は、第2部分42よりも左側において収容穴部40と繋がる。
【0028】
固定部50は、スプール弁体30の右側において、スプール穴部21内に固定される。本実施形態において固定部50は、スプール穴部21の内部のうちの右側の端部に固定される。固定部50は、基部51と、突起部52と、を有する。基部51は、中心軸Jを中心とする円柱状である。基部51の径方向外側面は、スプール穴部21の径方向内側面に固定される。具体的に、基部51の径方向外側面には、例えば、雄ネジ部が設けられる。基部51は、雄ネジ部がスプール穴部21の径方向内側面に設けられた雌ネジ部に締め込まれてスプール穴部21の径方向内側面に固定される。突起部52は、基部51から左側に突出する。突起部52は、中心軸Jを中心とし、右側から左側に向かって外径が小さくなる円錐台状である。
【0029】
弾性部材80は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる圧縮コイルバネである。弾性部材80は、スプール穴部21内に配置される。弾性部材80は、スプール弁体30と固定部50との軸方向の間において、一端が固定部50に支持される。本実施形態において弾性部材80は、右側の端部が基部51の左側の端面に支持される。弾性部材80の右側の端部には、突起部52が挿入される。これにより、弾性部材80の右側の端部が径方向にずれることを抑制できる。弾性部材80の左側の端部は、支持穴部41a内に挿入され、支持穴部41aと摺動穴部41bとの間の段差によって左側から支持される。弾性部材80は、スプール弁体30に対して固定部50から離れる向き、すなわち本実施形態では左向きに力を加える。
【0030】
摺動部材60は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる円柱状である。摺動部材60は、収容穴部40内に収容される。より詳細には、摺動部材60は、第1部分41の内部に軸方向に摺動可能に配置される。摺動部材60は、摺動穴部41bの径方向内側面に対して摺動する。摺動部材60の右側の端部は、固定部50の左側の端部と接触可能である。本実施形態において固定部50の左側の端部とは、突起部52の左側の端面である。図1においては、摺動部材60の右側の端部が突起部52から左側に離れた状態を示し、図2においては、摺動部材60の右側の端部が突起部52の左側の端面と接触した状態を示す。
【0031】
摺動部材60は、収容穴部40の内部のうち摺動部材60よりも左側に位置する部分にオイルが流入することで、オイルの油圧によって右側に押されて、図2に示す位置に移動する。本実施形態では、アウトポート23から流路31を介して第3部分43に流入するオイルの油圧によって、摺動部材60は右側に押される。インポート22からアウトポート23へ、あるいはアウトポート23からドレインポート24へとオイルが流れる場合には、摺動部材60は、常に第3部分43に流入するオイルによって右向きの力を受ける。したがって、スプール弁装置10が作動する場合には、摺動部材60は、オイルから常に右向きの力を受け、図2に示すように固定部50に押し付けられた状態となる。
【0032】
一方、スプール弁装置10を組み立てる際、あるいはスプール弁装置10が停止する際には、スプール弁体30は、図1に示すように、収容穴部40内の奥側、すなわち本実施形態では左側に移動する場合がある。ここで、例えば収容穴部をドリルで作製する場合等には、収容穴部の奥側程、成形精度が低くなり、内径が小さくなる場合がある。そのため、スプール弁体が収容穴部の奥側に移動すると、摺動部材が収容穴部に噛み込み、摺動できなくなる場合があった。
【0033】
これに対して、本実施形態によれば、収容穴部40における第1部分41よりも左側に、摺動部材60の外径Dよりも内径が小さくなる第2部分42が設けられるため、摺動部材60が左側に移動しても、摺動部材60の移動は第2部分42によって止められる。そして、アウトポート23と収容穴部40とを繋ぐ流路31が第2部分42よりも左側において収容穴部40と繋がるため、上述したようにアウトポート23からのオイルが収容穴部40における第2部分42の左側の部分、すなわち第3部分43に流入する。これにより、仮に摺動部材60が収容穴部40に噛み込んだとしても、スプール弁装置10が作動して第3部分43にオイルが流入されることで、オイルの油圧によって噛み込んだ摺動部材60を右側に押して、噛み込みを外すことができる。したがって、摺動部材60が摺動できなくなることを抑制できる。
【0034】
このように、本実施形態によれば、摺動部材60の形状によらず、収容穴部40に第2部分42を設けることで摺動部材60が摺動できなくなることを抑制できる。そのため、摺動部材60の形状の自由度が高く、摺動部材60の形状をオイルの油圧を受けやすい形状とできる。これにより、摺動部材60に好適にオイルの油圧を加えて、摺動部材60を摺動させやすくできる。
【0035】
以上のように、本実施形態によれば、摺動部材60が摺動できなくなることを抑制しつつ、摺動部材60にオイルの油圧を好適に加えることが可能になる。したがって、摺動部材60の摺動性を好適に確保できるスプール弁装置10が得られる。
【0036】
また、本実施形態では、摺動部材60が噛み込みやすい部分よりも右側に第2部分42を設けることで、第2部分42によって摺動部材60が噛み込みやすい部分に移動すること自体を阻止できる。摺動部材60が噛み込みやすい部分とは、上述したように収容穴部40の成形精度が低くなりやすい部分であり、例えば、収容穴部40の奥側(左側)である。本実施形態において摺動部材60が噛み込みやすい部分は、例えば、円錐穴部44の手前に繋がる部分、すなわち第3部分43である。本実施形態では、第2部分42が設けられることで、摺動部材60の左側への移動は第2部分42で止められ、摺動部材60が第3部分43に移動しない。そのため、摺動部材60が収容穴部40に噛み込むこと自体を抑制できる。したがって、本実施形態によれば、摺動部材60の摺動性をより好適に確保できる。
【0037】
また、本実施形態のように、第2部分42が右側から左側に向かって収容穴部40の内径が小さくなる段差部である場合、第2部分42は、円錐穴部44の右側に繋がる第3部分43よりも右側に設けられる。そのため、上述したようにして、摺動部材60が噛み込みやすい位置に移動することを第2部分42によって阻止でき、摺動部材60の摺動性をより好適に確保できる。また、本実施形態によれば、第2部分42はテーパ穴部であるため、例えば第2部分42を段差面が軸方向と直交する段差部とする場合に比べて、第2部分42を作製しやすい。
【0038】
また、本実施形態によれば、収容穴部40の左側の端部が円錐穴部44であるため、収容穴部40内における流路31からのオイルが溜まる部分の容積を最低限確保しやすい。これにより、摺動部材60に対してオイルの油圧をより加えやすく、摺動部材60が噛み込んだ場合であっても、噛み込んだ摺動部材60をオイルの油圧で外しやすい。
【0039】
図3に示すように、摺動部材60は、左側に面し第1対向面42aと軸方向に対向する第2対向面61を有する。本実施形態において第2対向面61は、摺動部材60の左側の端面である。図示は省略するが、第2対向面61は、左側から視て円形状である。第2対向面61は、第1対向面42aと接触可能である。第2対向面61は、軸方向に直交する平坦面である。第2対向面61は、オイルの油圧を受ける部分である。
【0040】
本実施形態において摺動部材60は軸方向の全体が収容穴部40に対して摺動する部分であり、第2対向面61は、摺動部材60における摺動する部分の左側の端面である。したがって、第2対向面61の直径は、摺動部材60における摺動する部分の外径Dと同じであり、第2対向面61の面積を大きくできる。これにより、第2対向面61によってオイルの油圧を好適に受けることができ、摺動部材60の摺動性をより好適に確保できる。また、第2対向面61は、軸方向と直交する平坦面であるため、オイルの油圧によって軸方向と平行な向きに力を受けやすい。そのため、摺動部材60を軸方向に摺動させやすくでき、摺動部材60の摺動性をより好適に確保できる。
【0041】
本実施形態では、第1対向面42aは軸方向と直交する面に対して傾いた面であるため、第2対向面61は、第1対向面42aに対して相対的に傾いた面である。そのため、摺動部材60が第2部分42によって止められる際に、第2対向面61の径方向外縁が、第1対向面42aと接触する。これにより、摺動部材60を第2部分42と線接触させて止めることができる。摺動部材60が第2部分42と線接触する場合、摺動部材60が第2部分42と面接触する場合に比べて、第2部分42に対する摺動部材60の吸着度合いを小さくできる。したがって、第2部分42に接触した摺動部材60がオイルの油圧によって右側に押されて移動する際に、摺動部材60が第2部分42から離れやすく、オイルの油圧を受けた際の摺動部材60の反応性を向上させることができる。
【0042】
図1および図2に示すように、ソレノイド70は、スプール弁体30の左側に配置される。ソレノイド70は、スプール弁体30の左側の端部、すなわち被押圧部30aに接触する可動子71を有する。可動子71は、ソレノイド70に電源が供給されることで、軸方向に移動する。ソレノイド70は、可動子71を介して、スプール弁体30に右向きの力を加える。
【0043】
第3部分43にオイルが流入されて摺動部材60が図2に示す位置にある状態では、第3部分43内のオイルの油圧によって、スプール弁体30に対して左向きの反力が加えられる。スプール弁体30の軸方向位置は、第3部分43内のオイルによる左向きの反力と弾性部材80による左向きの弾性力とを足し合わせた左向きの力と、ソレノイド70による右向きの力とが釣り合う位置となる。そのため、例えば、図2に示す状態からソレノイド70に供給される電流を増加させて、ソレノイド70からスプール弁体30に加えられる右向きの力を増加させると、スプール弁体30を右側に移動させることができる。
【0044】
スプール弁体30が右側に移動すると、アウトポート23とドレインポート24との間が遮断されて、インポート22とアウトポート23とが連結される。この場合、第3部分43内のオイルの油圧は、アウトポート23から流出するオイルの油圧と同じになる。また、弾性部材80が軸方向に弾性圧縮されて、弾性部材80によってスプール弁体30に加えられる左向きの力が大きくなる。そのため、スプール弁体30の軸方向位置は、アウトポート23から流出するオイルの油圧と増加した弾性部材80による左向きの弾性力とを足し合わせた左向きの力と、増加したソレノイド70による右向きの力とが釣り合う位置となる。なお、アウトポート23から流出するオイルの油圧は、第1連結流路91に対するアウトポート23の開口度によって変化する。
【0045】
この状態において、インポート22に流入するオイルの油圧が変動して例えば大きくなった場合、アウトポート23から流出するオイルの油圧および第3部分43内のオイルの油圧が大きくなる。そのため、スプール弁体30に加えられる軸方向の力の釣り合いが崩れて、スプール弁体30が左側に移動する。スプール弁体30が左側に移動すると、第1連結流路91に対するアウトポート23の開口度が小さくなる。そのため、第1連結流路91からアウトポート23に流れるオイルの油圧が低下し、第3部分43内のオイルの油圧も低下する。
【0046】
ここで、スプール弁体30の左側への移動による弾性部材80の弾性力の変化が無視できる程度に小さければ、ソレノイド70による右向きの力と弾性部材80による左向きの力とは変わらないとみなせるため、第3部分43内のオイルの油圧、すなわちアウトポート23から流出するオイルの油圧が、インポート22に流入するオイルの油圧が変動する前の圧力と同じ圧力になる位置で、スプール弁体30は停止する。このように、インポート22に流入するオイルの油圧が変動しても、その変動に応じてスプール弁体30が軸方向に移動して第1連結流路91に対するアウトポート23の開口度が調整されることで、アウトポート23から流出するオイルの油圧を一定に自動調整することが可能となる。
【0047】
また、弾性部材80の弾性係数は変化しないため、ソレノイド70による右向きの力を変化させると、スプール弁体30に加えられる軸方向の力が釣り合う際の第3部分43内のオイルの油圧、すなわちアウトポート23から流出されるオイルの油圧を変化させることができる。具体的には、ソレノイド70に供給する電流を増加させてソレノイド70による右向きの力を大きくすれば、アウトポート23から流出されるオイルの油圧を大きくできる。したがって、ソレノイド70に供給する電流を調整することで、容易にアウトポート23から流出されるオイルの油圧を調整することができる。
【0048】
本発明は上述の実施形態に限られず、他の構成を採用することもできる。以下の説明においては、上述の実施形態と同様の構成については、適宜同一の符号を付す等により説明を省略する場合がある。
【0049】
摺動部材は、図4に示す摺動部材160のような構成であってもよい。図4に示すように、摺動部材160は、第2対向面61の径方向外縁部に、第2対向面61と異なる第2対向面162を有する。第2対向面162は、左側および径方向外側に面し、第1対向面42aと軸方向に対向する。第2対向面162は、第2対向面61の径方向外縁部に周方向の一周に亘って設けられる円環状である。第2対向面162は、左側から右側に向かって径方向外側に位置するテーパ面である。
【0050】
第2対向面162は、第1対向面42aと接触可能であり、かつ、第1対向面42aに沿った面である。これにより、第1対向面42aと第2対向面162とが接触した際に、摺動部材160を第2部分42に面接触させることができる。したがって、摺動部材160と第2部分42とが接触する面積を大きくすることができ、摺動部材160を第2部分42によって安定して受け止めることができる。
【0051】
<第2実施形態>
図5に示すように、本実施形態のスプール弁体230において、収容穴部240の第2部分242は、右側から左側に向かって収容穴部240の内径が小さくなる段差部である。第2部分242の第1対向面242aは、軸方向と直交する段差面である。第1対向面242aは、周方向に延びる円環状である。
【0052】
摺動部材260の左側の端部は、右側から左側に向かうに従って摺動部材260の外径が漸次小さくなるテーパ部263である。本実施形態においてはテーパ部263の径方向外側面が第2対向面262である。第2対向面262は、周方向に延びる円筒状である。第2対向面262は、第1対向面242aに対して相対的に傾いた面である。そのため、第1対向面242aと第2対向面262とは、線接触する。このように、摺動部材260の左側の端部をテーパ部263とすることで、摺動部材260と第2部分242とを接触させる構成としやすい。
【0053】
テーパ部263は、収容穴部240に対して摺動しない部分であり、テーパ部263の左側の端部は、第3部分43内に挿入される。すなわち、テーパ部263の左側の端部の外径は、第3部分43の内径よりも小さい。摺動部材260の左側の端面は、左側に凸となる球面である。これにより、摺動部材260におけるオイルの油圧受ける軸方向端面の表面積を大きくできる。したがって、摺動部材260の摺動性をより好適に確保できる。
【0054】
<第3実施形態>
図6に示すように、本実施形態のスプール弁装置310のスプール弁体330において、収容穴部340の第1部分341は、円錐穴部344の右側に繋がる。本実施形態において第2部分342は、円錐穴部344の右側の端部である。円錐穴部344は、例えば、第1実施形態の円錐穴部44に比べて軸方向に長い。
【0055】
本実施形態において流路331は、円錐穴部344に繋がる。そのため、流路331からオイルを円錐穴部344内に直接的に送ることができる。これにより、摺動部材60が円錐穴部344の右側の端部、すなわち第2部分342まで移動した場合であっても、円錐穴部344内のオイルの油圧によって摺動部材60を好適に右向きに摺動させることができる。また、本実施形態によれば、収容穴部340を多段に作る必要がなく、収容穴部340の作製が容易である。
【0056】
<第4実施形態>
図7に示すように、本実施形態のスプール弁装置410の固定部450において、突起部452の軸方向の寸法は、第1実施形態における突起部52の軸方向の寸法よりも大きい。突起部452の左側の端部は、スプール弁体30が軸方向に移動する範囲内において、常に支持穴部41a内に挿入される。本実施形態の摺動部材460は、球体である。摺動部材460は、突起部452の左側の端部に支持される。本実施形態においては、突起部452が支持穴部41aに挿入されるため、球体である摺動部材460が摺動穴部41bから支持穴部41aに抜け出ることを抑制できる。
【0057】
図示は省略するが、本実施形態においても、第2部分が設けられ、摺動部材460の摺動性を好適に確保できる。本実施形態では、摺動部材460が球体であるため、摺動部材460が収容穴部40に噛み込みにくく、収容穴部40内における摺動部材460の摺動性も向上できる。したがって、本実施形態によれば、摺動部材460の摺動性をより好適に確保することができる。
【0058】
なお、上記各実施形態のスプール弁装置の用途は、特に限定されない。また、上記の各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0059】
10,310,410…スプール弁装置、21…スプール穴部、30,230,330…スプール弁体、31,331…流路、40,240,340…収容穴部、41,341…第1部分、42,242,342…第2部分、42a,242a…第1対向面、44,344…円錐穴部、50,450…固定部、60,160,260,460…摺動部材、61,162,262…第2対向面、80…弾性部材、263…テーパ部、J…中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7