【課題】ばね受け部材をニードル部材にかしめ固定した前後での所定の圧力におけるコイルスプリングのセット長の変化を回避できる絞り装置、および、それを備える冷凍サイクルシステムを提供すること。
(A)〜(D)に示すようなかしめ刃40、40´、41でかしめ加工をする際によりばね受け部材14を変形させやすくする。さらに、ニードル部材11側に形成されたかしめ溝11dの角部11f、11gが変形しないため、ばね受け部材14をかしめ変形させた際に、ばね受け部材14の中心軸方向(ニードル部材11の中心軸方向)への変形が抑止され、ニードル部材11とばね受け部材14との相対位置が変化し難くなり、その結果、かしめ前後のコイルスプリング13のばね荷重(セット長)の変化が小さくなる。
前記ニードル部材は、前記ガイド軸部に連なり前記ニードル部材の中心軸方向に向けて延びる雄ねじと、該雄ねじに連なり前記ニードル部材の中心軸方向に向けて延びる溝とが形成されており、
前記ばね受け部材は、雌ねじが形成されて該雌ねじに前記雄ねじがねじ込まれ、前記雄ねじのねじ山の前記冷媒の流れの2次側斜面が前記雌ねじのねじ山の前記冷媒の流れの1次側斜面と当接させながら前記ニードル部材にかしめ固定されたことを特徴とする請求項1に記載の絞り装置。
【背景技術】
【0002】
空調装置における冷凍サイクルシステムにおいては、絞り装置としてのキャピラリチューブに代えて差圧式の絞り装置を備えるものが提案されている。差圧式の絞り装置は、外気温度に応じて圧縮機を効率よく作動させるために凝縮器出口と蒸発器入口との間の冷媒の圧力を最適に制御するとともに、圧縮機の回転数を変更できる冷凍サイクルシステムにおいても、省力化の観点から圧縮機の回転数に応じた冷媒の圧力を最適に制御するものとされる。絞り装置は、例えば、冷媒が導入される一端で、凝縮器に接続される一次側配管に接合されており、冷媒が排出される他端で蒸発器に接続される二次側配管に接合されている。
【0003】
差圧式の絞り装置は、例えば、特許文献1にも示されるように、冷凍サイクルシステムの配管に接合されるチューブ本体と、チューブ本体の内周部に固定されるガイドチューブと、ガイドチューブに一体に形成され冷媒の流量を調整する冷媒流量調整部を構成する弁座およびニードル部材と、ニードル部材を弁座に対し近接する方向に付勢するコイルスプリングと、コイルスプリングの一方の端部を支持するばね受け部材と、ニードル部材の一端を受け止める底付き円筒状のストッパ部材と、を主な要素として含んで構成されている。
【0004】
ニードル部材のばね受け部材連結部には、ばね受け部材がかしめ加工により固定されている。ばね受け部材は、かしめ加工によるばね受け部材の窪みにより形成される突起がばね受け部材連結部に食い込むことにより固定されている。ばね受け部材にはコイルスプリングの一端が支持され、コイルスプリングの他端はガイドチューブのばね受け部に支持されている。
【0005】
ニードル部材の端面がストッパ部材の閉塞端の平坦な内面に当接されるとき、ニードル部材の先細部の外周部における弁ポートの開口端部に対応する位置において、先細部の外周部が、弁ポートの開口端部の周縁に対して所定の隙間を形成するように配置されている。その際、ニードル部材の先細部と弁ポートの開口端部との間には、絞り部が形成される。このような弁ポートの開口端部の周縁に対して形成される所定の隙間の量により、絞り部を通過する所定の冷媒の流量が設定される。
【0006】
省エネ性、システム信頼性の観点から、システムの定格運転時や各運転条件時において決定される絞り装置前後の差圧(チューブ本体における1次側の冷媒の入口圧力と2次側の冷媒の出口圧力との差)に対して、蒸発器における過熱度を適正に保って効率を高め、液バック(冷媒が上記(ガス)とならず、冷媒が蒸発器の出口から液体の状態で圧縮機の入口に供給される現象)による圧縮機の故障を防止するために、精度の高い弁開度が得られること、および繰り返しの作動後においても適正な弁開度を維持し続けることが望まれている。
【0007】
特許文献1に示される絞り装置は、空気を流体としたブリード流量測定装置に配された状態で、目標ブリード流量と等しい空気流量となるように、ガイドチューブとばね受けの間に配置されたコイルスプリングのセット荷重を、ニードル部材に形成された雄ねじのばね受け部材に形成された雌ねじに対する送り量により変化させ、所定差圧時に目標弁開度が得られることを確認した後、ニードル部材に対してばね受け部材をかしめて固定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、かしめ刃を用いてばね受け部材をかしめると、ばね受け部材に対してばね受け部材の半径方向にかしめ刃を当てたとしても、ばね受け部材は、ばね受け部材の半径方向に変形するだけでなく、ばね受け部材の中心軸方向にも変形する。その結果、かしめ加工前後で、ばね受け部材のばね支持部とニードル部材との相対位置が変化する。これにより、所定の圧力におけるコイルスプリングのばね荷重(セット長)が変化し、所定の圧力における目標弁開度からずれるという課題があった。
【0010】
特に、特許文献1の
図9のように、ニードル部材の雄ねじの不完全ねじ部とかしめ用の溝とが繋がると、ばね受け部材をかしめたとき、その溝のねじ側の側壁が低くなり、溝のねじ側、すなわち低くなった側壁側の角部にばね受け部材が食い込み難くなる。そのため、特にかしめ加工後にばね受け部材がねじ側に動いて変形し易く、コイルスプリングのばね荷重(セット長)の設定がずれ易かった。
【0011】
また、かしめ刃がニードル部材の溝のニードル中心軸方向の中央からずれ、ニードル部材の溝の一方の角部付近にかしめ刃が片寄ると、かしめられたことにより形成されたばね受け部材の突起がニードル部材の溝のニードル中心軸方向の両側の角部に均一に密着せずにがたつきが生じることがある。さらに、ばね受け部材の肉厚が薄いと、かしめ刃とニードル部材の溝の角部とに挟まれることにより、ばね受け部材に強度不足が生じることもある。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ばね受け部材をニードル部材にかしめ固定した前後での所定の圧力におけるコイルスプリングのセット長の変化を回避できる絞り装置、および、それを備える冷凍サイクルシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明は、絞り装置であって、冷媒を供給する配管に配され、該配管内に連通する開口端部を両端に有するチューブ本体と、前記チューブ本体の内周部に配され、弁ポートを有する弁座と、前記弁座の弁ポートに対し近接または離隔可能に配され該弁ポートの開口面積を制御する先細部と、該先細部の末端に連なり前記弁ポートに対し離隔し前記冷媒の流れの上流側に向けて延びるガイド軸部と、を有するニードル部材と、前記ニードル部材にかしめ固定されたばね受け部材と、前記チューブ本体の内周部における前記弁座の位置よりも前記冷媒の流れの上流側に固定され、前記ニードル部材のガイド軸部が摺動可能に配されるガイド部と、前記ばね受け部材と前記ガイド部との間に配され、前記ニードル部材を前記弁座の弁ポートに対し近接する方向に付勢する付勢部材と、を備え、前記ばね受け部材の材質の硬度は、前記ニードル部材の材質の硬度よりも低いことを特徴とする。
【0014】
前記ニードル部材には、前記ガイド軸部に連なる円周状の溝が形成されており、前記溝の両側の溝高さが等しく、前記ばね受け部材は、かしめ加工による窪みにより形成された突起が、前記溝に食い込むことで前記ニードル部材にかしめ固定されてもよい。
【0015】
前記ニードル部材の中心軸方向に沿った前記溝の幅は、前記窪みの幅より広くてもよい。
【0016】
前記ニードル部材は、前記溝から離隔して前記ニードル部材の中心軸方向に向けて延びる雄ねじが形成されており、前記ばね受け部材は、雌ねじが形成されて該雌ねじに前記雄ねじがねじ込まれていてもよい。
【0017】
前記溝の角部の面取り量は、前記溝の深さの1/3以下でもよい。
【0018】
前記溝の深さは、前記ばね受け部材のかしめ加工される部分の肉厚よりも小さくてもよい。
【0019】
前記ばね受け部材のかしめ加工による窪みは、互いに向かい合い略平行の2つの線分状の窪みでもよい。
【0020】
前記ニードル部材は、前記ガイド軸部に連なり前記ニードル部材の中心軸方向に向けて延びる雄ねじと、該雄ねじに連なり前記ニードル部材の中心軸方向に向けて延びる溝とが形成されており、前記ばね受け部材は、雌ねじが形成されて該雌ねじに前記雄ねじがねじ込まれ、前記雄ねじのねじ山の前記冷媒の流れの2次側斜面が前記雌ねじのねじ山の前記冷媒の流れの1次側斜面と当接させながら前記ニードル部材にかしめ固定されてもよい。
【0021】
本発明に係る絞り装置を備える冷凍サイクルシステムは、蒸発器と、圧縮機、および、
凝縮器とを備え、上述の絞り装置が、凝縮器の出口と蒸発器の入口との間に配される配管
に設けられるものとされる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の絞り装置、および、それを備える冷凍サイクルシステムによれば、前記ばね受け部材の材質の硬度は、前記ニードル部材の材質の硬度よりも低くされている。そのため、ばね受け部材をニードル部材にかしめ固定した前後での所定の圧力におけるコイルスプリングのセット長の変化を回避できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る絞り装置の実施例について、詳細に説明する。
【0025】
絞り装置は、例えば、
図2に示されるように、冷凍サイクルシステムの配管における凝縮器3の出口と蒸発器1の入口との間に配置されている。絞り装置は、後述するチューブ本体10の一端10E1で、一次側配管Du1に接合されており、冷媒が排出されるチューブ本体10の他端10E2で二次側配管Du2に接合されている。一次側配管Du1は、凝縮器3の出口と絞り装置とを接続し、二次側配管Du2は、蒸発器1の入口と絞り装置とを接続するものとされる。蒸発器1の出口と凝縮器3の入口との間には、
図2に示されるように、蒸発器1の出口に接合される配管Du3と、凝縮器3の入口に接合される配管Du4とにより、圧縮機2が接続されている。圧縮機2は、不図示の制御部により駆動制御される。これにより、冷凍サイクルシステムにおける冷媒が、例えば、
図2に示される矢印に沿って循環されることとなる。
【0026】
絞り装置は、
図1に拡大されて示されるように、冷凍サイクルシステムの配管に接合されるチューブ本体10と、チューブ本体10の内周部に固定されるガイドチューブ12と、ガイドチューブ12に一体に形成され冷媒の流量を調整する冷媒流量調整部を構成する弁座12V、および、ニードル部材11と、ニードル部材11を弁座12Vに対し近接する方向に付勢するコイルスプリング13と、コイルスプリング13の一方の端部を支持するばね受け部材14と、ニードル部材11の一端を受け止める底付き円筒状のストッパ部材15と、を主な要素として含んで構成されている。
【0027】
チューブ本体10の内周部における一端から所定距離、離隔した中間部には、チューブ本体10の内径よりも小なる外径を有するガイドチューブ12の固定部12Aの外周部が固定されている。
【0028】
ガイドチューブ12は、例えば、銅、真鍮、または、アルミニウム、あるいは、ステンレス鋼等の材料で機械加工により作られている。ガイドチューブ12は、後述する連通孔12Cよりも下流側にチューブ本体10の内周部に固定される固定部12Aと、連通孔12Cよりも上流側に後述するニードル部材11のガイド軸11cを摺動可能に案内するガイド部12Bとから構成されている。
【0029】
ガイドチューブ12は、かしめ加工によるチューブ本体10の窪みにより形成される突起がその固定部12Aの外周溝部に食い込むことにより固定されている。
【0030】
ガイドチューブ12は、チューブ本体10の上流側の一端に最も近いガイド部12Bの端部の外周部に、金属製のストッパ部材15を有している。
【0031】
ストッパ部材15の一端は、かしめ加工によるストッパ部材15の窪みにより形成される突起がガイド部12Bの端部の溝に食い込むことにより、ガイド部12Bに固定されている。底付き円筒状のストッパ部材15は、チューブ本体10の上流側の一端に向けて延び、閉塞端部を他端に有し、コイルスプリング13及びばね受け部材14を覆うような構造となっている。また、その閉塞端部は、平坦な内面を有している。その内面は、ニードル部材11の一端に一体に形成され、ばね受け部材14の一端の雌ねじにねじ込まれる調整ねじ11eの端面を受け止めるものとされる。これにより、ストッパ部材15の窪み15CA1以外の部分の内周面とガイド部12Bの端部の外周面との間に、所定の隙間が形成される。従って、チューブ本体10の一端10E1側から供給される冷媒が、その隙間を通じてストッパ部材15の内周部に流入される。
【0032】
これにより、一次側圧力が急激に変化しても、これに追従して、ストッパ部材15内部の圧力も変化する為、圧力変化の速度に寄らず、差圧に応じた弁開度を得ることが出来る。
【0033】
ガイドチューブ12における固定部12Aの弁座12Vの弁ポート12P、孔部12bは、共通の中心軸線上に形成されている。その際、ガイドチューブ12における固定部12Aとガイド部12Bとが一体に形成されているので、弁座12Vの弁ポート12Pおよび孔部12bは、その中心を互いに一致させるように共通の中心軸線上に高精度に加工することが容易となる。
【0034】
固定部12Aにおける弁座12Vとガイド部12Bとの間には、連通孔12Cが弁座12Vの直下に形成されている。連通孔12Cは、ガイドチューブ12をその径方向に貫通することにより、弁ポート12Pを、ガイドチューブ12の外周部とチューブ本体10の内周部との間に連通させる。
【0035】
ガイドチューブ12における弁座12Vは、ニードル部材11における先細部11bが挿入される弁ポート12Pを内部中央部に有している。弁ポート12Pは、所定の一様な直径で弁座12Vの中心軸線に沿って貫通する円形の開口を有している。
【0036】
ニードル部材11は、例えば、銅合金、または、ステンレス鋼等の材料で機械加工により作られ、弁座12Vに向かい合って形成される先細部11bと、ガイド部12Bにおける孔部12bに摺動可能に嵌合されるガイド軸部11cと、ガイド軸部11cの先端に形成されるかしめ溝11dとを主な要素として構成されている。ニードル部材11にはさらに、先細部11bの2次側に連なる凸部11aが設けられている。
【0037】
所定のテーパ角度を有する円錐台状の先細部11bは、ニードル部材11の一端、即ち、かしめ溝11dと一体に形成される調整ねじ11eの先端がストッパ部材15の閉塞端の内面に当接されるとき、弁ポート12Pの直径よりも大なる直径を有する基部、即ち、後述する凸部11aとの連結部分を弁ポート12Pから所定距離、離隔した位置に有している。
【0038】
図4(A)のニードル部材11のかしめ溝11dには、ばね受け部材14がかしめ加工により固定されている。ばね受け部材14の材質の硬度は、かしめ溝11dが形成されているニードル部材11の材質の硬度に対し低いものとする。ばね受け部材14は、ニードル部材11よりも硬度が低い材質からなるため、かしめ加工によるばね受け部材14の窪み14CA1により形成される突起がかしめ溝11dのガイド軸部11c側の角部11fと調整ねじ11e側の角部11gとに食い込む。また、ニードル部材11のかしめ溝11dは、後述する調整ねじ11eが形成された領域から距離L離れており、かしめ溝11dと調整ねじ11eとの間にはストレート部(ガイド軸部11cと同じ径を持った領域)が設けられている。すなわち、かしめ溝11dと不完全ねじ部を含む調整ねじ11eとは離隔して形成されている。そして、かしめ溝11dの調整ねじ11e側の溝高さd
2(かしめ溝11dの底から角部11gまでの距離)は、かしめ溝11dのガイド軸部11c側の溝高さd
1(かしめ溝11dの底から角部11fまでの距離)と等しい。そのため、かしめ加工時に角部11f、11gの両方が等しくばね受け部材14にしっかりと食い込む。これらの構成により、ばね受け部材14はニードル部材11に対してがたつきなく固定され得ることができる。
【0039】
上述のガイド部12Bに向き合うばね受け部材14のばね支持部14aには、コイルスプリング13の一端が支持され、ばね受け部材14のばね支持筒状部14cには、コイルスプリング13が巻装されている。コイルスプリング13の他端は、上述のガイド部12Bのばね受け部に支持されている。ガイド部12Bのばね受け部に連なる当接部とばね受け部材14のばね支持部の先端とは、所定の距離、離隔されている。
【0040】
ニードル部材11のかしめ溝11dと一体と形成される調整ねじ11eの雄ねじが、ばね受け部材14の内周部の雌ねじ孔にねじ込まれている。調整ねじ11eは、コイルスプリング13の付勢力を調整するものである。
【0041】
調整ねじ11eによりコイルスプリング13の付勢力が調整された後、かしめ加工によるばね受け部材14の窪み14CA1により形成される突起が、かしめ溝11dに食い込むことによって、調整ねじ11eのばね受け部材14に対する位置が固定される。
【0042】
調整ねじ11eの端面がストッパ部材15の閉塞端の平坦な内面に当接されるとき、ニードル部材11の先細部11bの外周部における弁ポート12Pの開口端部に対応する位置において、先細部11bの外周部が、弁ポート12Pの開口端部の周縁に対し所定の隙間を形成するように配置されている。その際、ニードル部材11の先細部11bと弁ポート12Pの開口端部との間には、絞り部が形成される。絞り部とは、弁ポート12Pの周縁から先細部11bの母線への垂線と、先細部11bの母線との交点が、弁ポート12Pの縁から最も近い箇所(最狭部)をいう。この垂線が描く円錐面の面積が、絞り部の開口面積となる。チューブ本体10内の冷媒の圧力が所定値以下の場合、調整ねじ11eの端面は、コイルスプリング13の付勢力と一次側配管Du1からの冷媒の圧力との差に応じた所定の圧力でストッパ部材15の閉塞端の内面に当接されている。
【0043】
調整ねじ11eによるコイルスプリング13の付勢力(コイルスプリングのセット荷重)の調整は、図示しない弁開度設定装置により行われる。
図3(A)のニードルサブアセンブリ16´は、ガイドチューブ12と、ガイドチューブ12の弁ポート12Pおよび孔部12bに挿入されたニードル部材11と、ニードル部材11の調整ねじ11eが所定量、ねじ込まれたばね受け部材14´と、ばね受け部材14´のばね支持部14´aとガイドチューブ12のガイド部12Bの端部との間に配されたコイルスプリング13と、を含んで構成されている。
【0044】
なお、
図3(A)はばね受けカシメ前の断面図であり、
図3(B)はばね受けカシメ後の断面図である。この
図3(A)および、(B)において、
図1に示される構成要素と同一の構成要素について同一の符合を付して示し、その重複説明を省略する。
【0045】
図3(A)においてばね受け部材14´のばね支持筒状部14´cには、コイルスプリング13が巻装されている。ばね受け部材14´の下方の筒状部14´bは、未だ、かしめ加工されていない。この状態で所定の定格弁開度が得られる定格流量となるようにニードル部材11を回転させることで弁開度設定を行い、コイルスプリング13のばね荷重(セット長)を所定の値に調整する。その後、筒状部14´bのニードル部材11のかしめ溝11dに対応する部分をかしめ加工することで、
図3(B)に示すかしめ加工後のニードルサブアセンブリ16を得る。
【0046】
斯かる構成において、冷媒の圧力によるニードル部材11に作用する力がコイルスプリング13の付勢力を超えない場合、冷媒が、
図2において一次側配管Du1を通じて矢印の示す方向に沿って供給されるとき、冷媒の圧力は、チューブ本体10の一端10E1、チューブ本体10の内周部とストッパ部材15の外周部との間、連通路12C、上述の絞り部を通過することにより減圧され、その後、冷媒が、ガイドチューブ12の固定部12Aの内周部を通じて他端10E2から所定のブリード量で排出される。
【0047】
さらに、冷媒の圧力によるニードル部材11に作用する力がコイルスプリング13の付勢力を超える場合、上述の絞り部を通じて流れる冷媒が、弁ポート12Pの周縁からさらに離隔する方向にニードル部材11を押圧することとなる。これにより、流量が、差圧の増大につれて増大することとなる。
【0048】
本発明では、上述のようにニードル部材11の材質は、ばね受け部材14の材質に対し硬度が高いものを使用が、例えば、ニードル部材11とばね受け部材14の材質の組み合わせは、下表に示すようなものとすることができる。
【0050】
ニードル部材11の材質をかしめ変形させるばね受け部材14の材質よりも硬度が高い材質で構成することで、
図7に示すようなかしめ刃40、40´、41でかしめ加工をする際に、よりばね受け部材14を変形させやすくする。さらに、ニードル部材11側に形成されたかしめ溝11dの角部11f、11gが変形しないため、ばね受け部材14をかしめ変形させた際に、ばね受け部材14の中心軸方向(ニードル部材11の中心軸方向)への変形が抑止され、ニードル部材11とばね受け部材14との相対位置が変化し難くなり、その結果、かしめ前後のコイルスプリング13のばね荷重(セット長)の変化が小さくなる。
【0051】
また、
図4(A)においてかしめ溝11dと調整ねじ11eとの間にストレート部(ガイド軸部11cと同じ径を持った領域)を設けている。かしめ溝11dと調整ねじ11eとの間の距離Lは、不完全ねじ部も含む調整ねじ11eがかしめ溝11dに達することが無い距離である。調整ねじ11eの不完全ねじ部などがかしめ溝11dに達すると、かしめ溝11dの側壁が削られて角部11gが角部11fよりもニードル中心軸側に位置してしまう、すなわち溝高さd
2が溝高さd
1よりも低くなってしまう。その結果、かしめ加工後において、ばね受け部材14と角部11gとの間に隙間が生じ易くなる、またはばね受け部材14の角部11gへの食い込みが浅くなり易くなる。このように角部11gとばね受け部材14との係合力が弱くなることで、ばね受け部材14が調整ねじ11e側にずれ易くなる。また、調整ねじ11eの不完全ねじ部などのねじ山とばね受け部材14が接していると、ねじ山に沿ってばね受け部材14が回転し、ねじが緩む方向に、この場合調整ねじ11e側に移動し易くなる。かしめ加工後にばね受け部材14が調整ねじ11e側に移動すると、ニードル部材11とばね受け部材14との相対位置が変化すると同時に、角部11fを含むかしめ溝11dの側壁とばね受け部材14との間に隙間が生じるため、ばね受け部材14がニードル部材11に対してがたつきが生じる。
【0052】
これに対し本発明では、かしめ溝11dと調整ねじ11eとを離隔して形成し、溝高さd
2を溝高さd
1と等しくすることで、かしめ時やかしめ後の振動などによるばね受け部材14の調整ねじ11e側へのずれを防止し、コイルスプリング13のばね荷重(セット長)の変化を小さくすることができる。
【0053】
また、かしめ刃40、40´、41により形成されるばね受け部材14の外周の窪み幅Wは、
図4(A)に示すように、ニードル部材11に予め形成されているかしめ溝11dの幅wに対して小さく形成する(w>W)。これにより、ばね受け部材14の中心軸方向への変形がニードル部材11に形成されたニードル部材11のかしめ溝11dの角部により抑止され、上述したばね受け部材14のかしめ時のコイルスプリング13のばね荷重(セット長)の変化を更に小さくすることができる。
【0054】
上記に加えて、ニードル部材11のかしめ溝11dの角部11f、11gは、
図5(A)に示すように、面取りを無くしてもよい。または、
図5(B)に示すように、角部11f、11gは、かしめ溝11dの溝深さd
i(i=1、2)に対し1/3以下の面取り量としてもよい。すなわち、かしめ溝11dの角部11f、11gの面取り量Dは、0≦D≦d
i/3とする。ニードル部材11のかしめ溝11dの角部11f、11gを、面取り無し(エッジ)、またはかしめ溝11dの溝深さdに対し1/3以下の面取り量としたことで、かしめによるばね受け部材14の変形時に、ニードル部材11のかしめ溝11dの角部11f、11gにばね受け部材14が食い込むことで、ばね受け部材14の中心軸方向への位置ずれが抑止され、かしめ時のコイルスプリング13のばね荷重(セット長)の変化を更に小さくすることができる。
【0055】
また、ニードル部材11のかしめ溝11dの溝深さd
i(i=1、2)は、
図4(A)に示すように、ばね受け部材14の筒状部14bの肉厚tよりも小さく構成する(d
i<t)。これにより、かしめ刃40、40´、41の当たる位置がニードル部材11のかしめ溝11dの角部11fまたは11gの一方の側にずれた場合でも、ばね受け部材14が所定の肉厚を維持できる。従って、かしめ加工によるばね受け部材14の窪みにより形成される突起の強度が保たれ、繰り返しの圧力印加によっても、がたつきや強度不足を生じ難くなる。
【0056】
上述のかしめ加工は、
図7(A)〜(D)に示すかしめ刃40、40´、41のそれぞれを2つ1組としてばね受け部材14を互いに向かい合わせて挟むようにして行い、ばね受け部材14の全周では無く、少なくとも2箇所以上に2つ以上の窪みを形成する。
【0057】
図7の(A)、(B)に示すかしめ刃40、40´のばね受け部材14の中心軸方向に垂直な面における曲率半径R、R´は、ばね受け部材14のかしめる筒状部14bの半径rに対して大きくされている。
図7(A)のかしめ刃40の場合、2つの窪みが筒状部14bに形成され、
図7(B)のかしめ刃40´の場合、1つの刃が2つに分かれているため、4つの窪みが筒状部14bに形成される。また、
図7(A)のかしめ刃40の刃先40aの厚み方向の断面形状は、
図5(A)、(B)などに示すようにばね受け部材14の窪み14CA1が半円形状に形成されるよう、
図7(D)に示すように曲面となっている。
【0058】
このようにばね受け部材14のかしめられる筒状部14bの半径rに対し、かしめ刃40、40´の刃先40a、40´aの曲率半径Rを大きく構成したことで、ばね受け部材14に当たっているかしめ刃40、40´の刃先40a、40´aの脇に空間S、S´が生じるので、その空間S、S´に向かってばね受け部材14の半径方向にばね受け部材14が変形することができる。これにより、かしめ時のばね受け部材14のばね受け部材14の中心軸方向への変形量を抑えることができるため、ばね受け部材14のかしめ時のコイルスプリング13のばね荷重(セット長)の変化を更に小さくすることができる。
【0059】
また、
図1などに示すばね受け部材14の窪み14CA1は、対向する2つの領域に略平行に配置された2つの線分状のものとしてもよい。
図7(C)に示すかしめ刃41を用いて、
図4(C)に示すように互いに向かい合い略平行に配置された2つの線分状の窪み14CA1を形成することで、ばね受け部材14に当たっているかしめ刃41の刃先41aの脇にかしめ刃40、40´の場合よりも大きな空間S´´が生じるので、その空間S´´に向かってばね受け部材14の半径方向にばね受け部材14が変形することができる。これにより、かしめ時のばね受け部材14のばね受け部材14の中心軸方向への変形量を抑制でき、かしめ加工前後でのコイルスプリング13のばね荷重(セット長)の変化を更に小さくすることができる。
【0060】
上述の実施例においては、
図1〜5に示すように、窪み14CA1がばね支持部14aの真下の位置に形成されている構成を示したが、斯かる構成に限定されることなく、例えば、
図8に示すように、ニードル部材11´のかしめ溝11´dを調整ねじ11´eよりも2次側(下流側)に配置してもよい。尚、
図8(B)は、説明のために模式的に記載したもので、便宜上、実際よりもねじ山の数は少なく、ねじ山の高さは高く記載されている。
【0061】
この場合、弁開度を調整している時と同様に、ニードル部材11´の調整ねじ11´eのねじ山の2次側斜面がばね受け部材14のねじ山の1次側(上流側)斜面と当接させながら、ばね受け部材14をかしめ加工する。このかしめ加工により、カシメ部とねじ部の間が変形で延び、ねじ山当接部が離れる為、ニードル部材11´とばね受け部材14のばね支持部14aとの相対位置は変化してしまうが、ばね支持部14aのニードル部材11´に対する移動量は、調整ねじ11eのねじガタ量D以下に制限することができる。
【0062】
そのため、かしめ溝11´dを調整ねじ11´eよりも2次側に配置することで、かしめ加工における変化量を調整ねじ11eのねじガタ量以下に抑えることができ、かしめ加工前後でのコイルスプリング13のばね荷重(セット長)の変化を小さくすることができる。
【0063】
上述のように、各実施形態により、かしめ加工前後でのコイルスプリング13のばね荷重(セット長)の変化を小さくすることができる為、本発明に係る絞り装置を備える冷凍サイクルシステムとしても、冷凍サイクルの流量ばらつきが小さくなり、システムの効率向上となる。