【解決手段】外管1を地盤E中に設置する。先端スペーサ7と支持台11で支持された剛性の高い直線状の案内長体3を外管の内部に設置し、これをガイドとして管路3を外管の内部に設置する。外管の一開口端部と管路の外周面との間を第1の封止部21(
前記案内長体は、前記案内長体を前記外管の内部に挿入する際の先端側に設けられて前記外管の内周面を摺動する第1の支持部材と、前記案内長体を前記外管の内部に挿入する際に地中の外にある後端側に設けられた第2の支持部材とによって、可及的に直線状となるように前記外管の内部に設置されることを特徴とする請求項1に記載の管路の築造装置。
前記外管を地中から引き抜いて撤去する際に生じる地盤の開口部に、前記充填材の流出を防止する第2の封止部を設けたことを特徴とする請求項2に記載の管路の築造装置。
【背景技術】
【0002】
図12は、両端が開口した貫通路100の中に本管101を設置する工事に有用な本管の支持装置と、この支持装置を用いて行う管路の製造方法を示す図である。同図に示す支持装置及び管路の製造方法は、例えば上水道管や下水道管を地中に敷設するために用いることができる。例えば塩化ビニール管(以下、塩ビ管と称する。)を上水道管として地中に敷設する場合を説明すると、塩ビ管は強度の問題のために推進装置を用いて地中に直接押し込んで敷設していく工法を採用することができない場合がある。このため、地中に所定長さの鋼管を継ぎ足しながら推進装置で推進し、
図12に示すように必要な長さの貫通路100を鋼管で構成し、その内部の空間に鋼管よりも外径の小さい塩ビ管の本管101を挿入して接続することにより本管路を敷設する工法を採用する場合がある。
【0003】
このような工法を採用する場合、鋼管の内部の所定位置に継ぎ足した塩ビ管の本管101を配置させるため、
図12に示すように、本管101の外周に、貫通路の内周面との間に所定の隙間を設けるためのスペーサ102を取り付ける。このスペーサ102は、本管101の外周に取り付ける環状部103と、環状部103に取り付けられた4枚の羽部104から構成される。4枚の羽部104は、環状部103の周方向について90度の間隔をおいた4つの位置に、環状部103の半径方向について放射状の姿勢で環状部103に取り付けられている。
【0004】
ここで、貫通路100を構成するため、所定長さの鋼管を継ぎ足しながら地中に推進していくと、土質その他の推進条件により、鋼管と鋼管の継ぎ目に微小な角度が生じ、地中に敷設された鋼管の貫通路100が一直線状にならず、全体として蛇行するような屈曲状態となってしまうことがある。完全に直線状の貫通路100が得られ、その内部に本管101を敷設するのであれば、前記スペーサ102の4枚の羽部104は全て所定の同一寸法とし、本管101を貫通路100の中心に直線状に配置することができる。
【0005】
しかしながら、前述したように蛇行した貫通路100の内部に本管101を敷設する場合には、このような同一のスペーサ102を装着したのでは、貫通路100の内部で本管101を直線状を保持して配置することが困難となる。そこで、鋼管の推進後、得られた貫通路100について測量を行い、その蛇行した状態を把握する作業が必要となる。すなわち、貫通路100の軸方向の各位置ごとに、所定の基準位置から見た上下及び左右の各方向に関する誤差を測定する。そして、次に、この測定結果に応じて貫通路100の軸方向の各位置に配置される本管101の各スペーサ102について、その4枚の羽部104の寸法を適切に設計、加工する作業を行なう。このようにすれば、貫通路100が蛇行していても、4枚の羽部104が貫通路100の蛇行状態に適合した寸法に加工されたスペーサ102を本管101に取り付けた場合、可及的に直線状態の本管101を貫通路100の内部に安定して配置することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図12に示した本管101の支持装置と、この支持装置を用いて行う管路の製造方法によれば、蛇行した鋼管の貫通路100が基準位置からどの程度外れているかを知るために、蛇行状態の測量を行う必要があり、さらに、その測量結果に応じて複数のスペーサ102の羽部104を個別に加工して長さの調整作業を行なわなければならない。このような作業は大変煩雑なものであり、その結果として本管の敷設作業には長時間を要し、工費が嵩むという問題があった。
【0007】
また、塩ビ管の本管101は、その用途によっては、これを充填材で被覆した安全性の高い状態で地中に設置することが求められる場合がある。このような構造を
図12に示す工法で実現しようとすれば、貫通路100の中に本管101を設置した後、貫通路100と本管101の間の空間に充填材を注入して固化させる必要がある。この場合には、本管101は固化した充填材で被覆されるので、貫通路100を構成する鋼管をそのまま残しておく必要性は少なく、むしろ高価な鋼管を無用に残しておくよりは地中から引き抜いて再利用することが好ましい。
【0008】
しかしながら、
図12に示す本管の支持装置と、この支持装置を用いて行う管路の製造方法では、貫通路100を引き抜けば、貫通路100の内部にある本管101も同時に同方向に引き出してしまうことになり都合が悪い。そもそも、このような支持装置を用いた場合、貫通路100の引き抜きと、充填材の注入を、どのような工程で行えばよいか、不明である。仮に何らかの手段を講じて貫通路100だけを地中から引き抜き、地中に本管100を残すことができたとしても、その場合には、地中に残った管状の空洞(トンネル)内で本管100を所定位置に維持することは困難と考えられる。
【0009】
本発明は、以上説明した従来の技術における課題に鑑みてなされたものであり、両端が開口した貫通路の中に、なるべくまっすぐな状態で管路を設置する工事を従来よりも簡単に行なうことができるとともに、そのように設置した管路を充填材で被覆した状態で地中に設置することができる管路の築造装置及び方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載された管路の築造装置は、
充填材に被覆された管路を地中に築造する管路の築造装置であって、
地中に設置されて最終的には撤去される外管と、
地中に設置された前記外管の内部に設置されて前記管路を前記外管へ挿入する際の案内となる案内長体と、
前記外管の一方の開口端部に取り付けられるとともに前記管路の外周に摺動可能に接して設けられ前記外管の内部を封止する第1の封止部と、
前記外管が地中から引き抜かれて生じた空洞に充填材を供給する充填材供給手段と、
を備えたことを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載された管路の築造装置は、請求項1に記載の管路の築造装置において、
前記案内長体は、前記案内長体を前記外管の内部に挿入する際の先端側に設けられて前記外管の内周面を摺動する第1の支持部材と、前記案内長体を前記外管の内部に挿入する際に地中の外にある後端側に設けられた第2の支持部材とによって、可及的に直線状となるように前記外管の内部に設置されることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載された管路の築造装置は、請求項2に記載の管路の築造装置において、
前記外管を地中から引き抜いて撤去する際に生じる地盤の開口部に、前記充填材の流出を防止する第2の封止部を設けたことを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載された管路の築造方法は、
充填材に被覆された管路を地中に築造する管路の築造方法であって、
外管を地中に設置する工程と、
地中に設置した前記外管の内部に案内長体を設置するとともに、前記案内長体を案内として前記外管の内部に管路を設置する工程と、
前記外管の一方の開口端部と前記管路の外周面との間を封止した状態で、前記外管を地中から徐々に引き抜くとともに、前記外管が地中から引き抜かれて生じた空洞に充填材を供給する工程と、
を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載された管路の築造装置及び請求項4に記載された管路の築造方法によれば、推進工法その他の任意の工法によって外管を地中に設置し、その外管の内部に、可及的に直線状態に近い態様で案内長体を設置することにより、その案内長体をガイドにして外管の内部に可及的に直線状態に近い態様で管路を設置することができる。そして、外管の一方の開口端部と管路の外周面との間を封止した状態で、外管を地中から徐々に引き抜きながら、外管が地中から引き抜かれて生じた空洞に充填材供給手段で充填材を供給していけば、外管と管路の隙間に充填材が流入することはなく、充填材に被覆された管路を地中に築造するとともに、外管を回収することができる。
【0015】
請求項2に記載された管路の築造装置によれば、外管の内部に挿入された案内長体は、その先端側を第1の支持部材によって支持され、その後端側を第2の支持部材によって支持されるので、可及的に直線状となるように外管の内部に設置される。
【0016】
請求項3に記載された管路の築造装置によれば、外管を地中から引き抜いて撤去する際に生じる地山の開口部に第2の封止部が設けられているので、地山の開口部から充填材が流出することはない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
1.実施形態の概要
本発明の実施形態は、地中に管路を築造する装置と方法に関するものである。この装置及び方法は、充填材で被覆された管路が地中に埋設された状態を得ることを目的としている。この装置及び方法は、例えば上水道管や下水道管を地中に敷設するために好適に用いることができる。このような用途の管材としては塩化ビニール管(以下、塩ビ管と称する)が使用されることがあるが、塩ビ管は、強度の問題のために油圧等を駆動源とする推進装置を用いて地中に直接押し込んで敷設していくことができない場合がある。このため、実施形態では、地中に所定長さの鋼管を継ぎ足しながら推進装置で推進して必要な長さの貫通路を構成してこれを外管とし、その内部の空間に、外管よりも外径の小さい塩ビ管の管路を挿入して接続しながら推進していくものとする。そして、その際、管路がなるべく真っ直ぐになるように、剛体からなる案内長体を予め外管内に敷設しておき、この案内長体をガイドにして管路を設置していく。さらに、実施形態では、管路の設置が終了した後、地中内に管路を残して外管を地中から引き抜きつつ、地中内にある管路の周囲の空洞を充填材で埋めることにより、最終的には充填材で被覆された管路だけが地中に埋設された状態を得る。
以下、図面を参照して、実施形態に係る管路の築造装置の構造と、管路の築造方法について詳細に説明する。
【0019】
2.管路の築造装置(
図1〜
図8)
実施形態に係る管路の築造装置を、
図1〜
図8を参照して説明する。
図1、
図4及び
図5に示すように、外管1は地盤Eを貫通して地中に設けられている。すなわち、外管1は、その両端が地盤Eの外の空間に開口している。ここで、地盤Eの外の空間とは、
図1に示すように、地面に掘削された発進立坑4や到達立坑5のような縦穴状の空間等を意味する。発進立坑4及び到達立坑5の地盤Eは土留壁6に覆われており、外管1の両端は土留壁6の貫通孔から発進立坑4及び到達立坑5内に突出している。この外管1は、継ぎ足しながら地中に推進した鋼管によって構成された貫通路であるため、発進立坑4から到達立坑5まで直線状に設置しようとしても、推進条件によっては必ずしも完全な直線状にできるとは限らず、若干湾曲した状態で敷設される場合もある。実施形態では、そのような場合にも対応できるように、外管1内に管路3をなるべく直線的に敷設するためのガイドとして、後述する案内長体2を使用している。なお、外管1との名称は、その推進後に、後述する本管としての管路2と、管路2を支える案内長体3が内部に設けられることに基づいている。
【0020】
図1〜
図3及び
図5〜
図7に示すように、外管1の内部には、案内長体2が設けられている。案内長体2は、後述する管路3を外管1内で支持するための支持部材又は管路3を外管1内に挿入して設置していく際のガイド部材として機能する部材である。実施形態の案内長体2は、高い剛性を有する曲がりにくい棒状部材(例えばH形鋼)から構成される。工程については後に詳述するが、棒状部材を複数本用意し、これらを継ぎ足しながら、到達立坑5側から外管1の内部に案内長体2を挿入しつつ、発進立坑4に向けて進めていく。なお、案内長体2を外挿する管路2も、案内長体2と同様に継ぎ足しながら到達立坑5側から外管1の内部に挿入していく。
【0021】
図1(b)に示すように、案内長体2の先端部は発進立坑4に近い側に配置されている。その案内長体2の先端部には、第1の支持部材として先端スペーサ7が取りつけられている。先端スペーサ7は、案内長体2を外管1の内部の所定位置に位置決めするための位置決め部材であり、また外管1の内部に案内長体2を挿入して進めていく際のスライド部材でもある。先端スペーサ7は、案内長体2の先端部が挿入されて固定される四角い枠体8と、枠体8の各辺の外側に設けられた合計4つのスペーサ9を有している。スペーサ9は調整部材10を介して枠体8に取り付けられており、調整部材10を高さの異なるものと交換することにより、外管1内における案内長体2の先端部の位置を任意に調整することができる。
【0022】
図1(a)に示すように、案内長体2の後端部は到達立坑5に突出している。到達立坑5内には、第2の支持部材として支持台11が設置されており、案内長体2の後端部を固定し、必要な高さに保持している。
【0023】
図5及び
図6に示すように、案内長体2には内部スペーサ12が取りつけられている。内部スペーサ12は、
図5には表れていないが、案内長体2の長手方向について所定間隔をおいた複数箇所に設けられており、かつ
図5及び
図6に示すように各箇所ごとに周方向に180度離れた2つの位置に設けられている。内部スペーサ12は、管路3の内周面に合致した周状の案内面を有しており、案内長体2に管路3を外挿する際のガイドとなり、また、外管1内に設置した案内長体2に対して一定の間隔で管路3を位置決めする部材ともなっている。内部スペーサ12は調整部材10を介して案内長体2に取り付けられているので、調整部材10を高さの異なるものと交換することにより、内径の異なる管路3に合せて内面との隙間を任意に調整することができる。
【0024】
図1〜
図7に示すように、外管1の内部には、外管1よりも外径が細い本管である管路3が敷設されている。管路3は例えば塩ビ管であり、所定長さの複数本の管を接続して構成している。外管1と同様、この管路3の両端も、
図1に示すように発進立坑4及び到達立坑5に開口している。
【0025】
前述したように、管路3には、前述した案内長体2が挿入されており、管路3は案内長体2によって外管1内に保持されている。また、
図5及び
図6に示すように、この管路3の全長の略中央には、その外周面の下側の2カ所に、外部スペーサ13が取りつけられている。外部スペーサ13は、案内長体2に管路3を外挿する際のガイドになるとともに、外管1の内部に管路3の全長を設置した後には、管路3の重量を長手方向の中央部で支える支持部材ともなっている。
【0026】
図5〜
図7に示すように、管路3の内部には、管路3の外側に充填材を供給する充填材供給手段である充填材供給管14が配設されている。充填材供給管14は複数本が設けられている。図示はしないが、各充填材供給管14の基端は、発進立坑4にある充填材供給部に接続されており、また
図5に示すように、各充填材供給管14の先端は、管路3の周壁に軸線方向に沿って所定間隔で配置された各接続位置に接続され、各接続位置で管外に充填材を放出できるようになっている。なお、充填材としては、セメントと水とを練り混ぜてできたミルク状の液剤であるセメントミルク等が利用できる。なお、セメントミルクとしては、セメントと水以外に、各種の混和剤を含んだものも含む。
【0027】
図1及び
図3に示すように、到達立坑5に突出している管路3の後端部の外周面には、固定部15が取りつけられている。固定部15は、管路3の後端部の外周面に取り付けられた周状の固定枠16と、固定枠16の周面に等角度間隔で放射状に設けられた係止材17を有している。実施形態では、本管である管路3を地中に残しつつ、外管1を発進立坑4の側に引き抜いて地中から撤去するが、何等の手当てをしないで外管1を発進立坑4の側に引くと、外管1内の管路3も同方向に引っ張られて管路3の後端部は到達立坑5の土留壁6から地中に引き込まれてしまう。実施形態では、到達立坑5に突出している管路3の後端部に固定部15が取り付けられており、外管1が発進立坑4の側に引かれるに伴って管路3が同方向に引かれても、固定部15が土留壁6に係止してストッパとなるため、管路3が到達立坑5の土留壁6から地中に引き込まれることはない。
【0028】
実施形態では、外管1は
図1に示すように地盤E中に設置され、その内部に管路3が設置された後、所定の工程に従い、
図1では左にある発進立坑4の側に外管1が引き戻され、1本ずつ分解されて発進立坑4外に撤去される。
図5に示すように、このように外管1を左に引き戻す都度、地盤E中では、外管1の推進時の先端部(すなわち引き抜き時の後端部、
図5中の右端)から、外管1が引き戻された長さ分だけ地盤E内に残された管路2が露出していき、この露出した管路3と、外管1が抜去された地盤Eとの間の空間に充填材20が供給されていく。
【0029】
ここで、外管1の推進時の先端部(すなわち引き抜き時の後端部)と、地中に残された管路3との隙間が開放されていれば、充填材20は外管1と管路2の間に流入してしまう。これを防ぐために、外管1の推進時の先端部に当たる一方の開口端部と、管路2の外周との間には、両管の隙間を塞ぐ第1の封止部21が設けられている。
【0030】
図4に示すように、第1の封止部21は、外管1と管路2が到達立坑5に突出している状態でこれらに取り付けられる。第1の封止部21は、外管1の先端部に溶接等により固定される基管部22を有している。基管部22の外径は外管1の外径と同一である。基管部22の開放端側の外周面には、周方向に沿って等角度間隔で、複数の補強板23が取り付けられている。補強板23は弾性を有している。また、補強板23は、軸線方向に平行に突出しており、先端は内側に曲折しているが、管路2の外周面には接していない。そして、基管部22の外周面には、補強板23を覆うように、可撓性を有する筒状の封止材24の一端部が固定されている。封止材24はキャンバスシート地から構成されている。封止材24の一端部は、周方向について複数に分割された取り付け板25によって基管部22の外周面に固定されている。封止材24の他端部は、基管部22に比べて小径となっており、管路2の外周面に摺動可能かつ充填材20については液密状態となるように接している。管路2の外周面に接している封止材24の他端部の内面には、キャンバスシート地の摩耗を防止するため、超高分子ポリエチレンシートが貼り付けられている。
【0031】
また、取り付け板25に関して、封止材24と反対側には、土圧受け26が設けられている。土圧受け26は、周状の部材であり、その厚さは封止材24と取り付け板25の厚さの合計よりも大きく、外管1を引き抜く際の前面側に当たる図中左側が斜面になっている。この土圧受け26は、外管1の抜き時に地盤Eから受ける土圧を斜面によって外方に反らせ、封止材24と取り付け板25に過大な力が加わらないようにしている。
【0032】
また、管路2の外側に充填された充填材の圧力を測定するために、封止材24を貫通して圧力センサ27が設けられている。圧力センサ27が測定した充填材20の圧力は、発進立坑4に設けられた図示しない制御部に送られるようになっており、管路2の周囲の空洞を充填材20で確実に充填できたか否かを、測定した圧力に基づいて遠隔的に判断できるようになっている。
【0033】
実施形態では、外管1は
図1に示すように地中に推進されて設置された後、工程に従い、図中左側にある発進立坑4に引き戻される。そうすると、
図1(a)に示すように到達立坑5内に突出していた外管1は、土留壁6の孔から地盤E内に引き込まれるので、位置が固定されて動かない管路2と、土留壁6の孔に連通する地盤Eの孔との隙間は、到達立坑5内に露出してしまう。ここで、外管1が移動したあとの地盤Eと、管路2との隙間に充填材20が注入されると、到達立坑5内に開放されている地盤Eの孔から充填材20が到達立坑5内に流出してしまう。これを防ぐために、土留壁6の孔を塞ぐ第2の封止部30が設けられている。
【0034】
図1(a)及び
図3中に想像線で示すように、充填材20の注入作業に先立ち、外管1を地中に引き込んだために到達立坑5側に生じる地盤Eの開口部と、管路2の外周面との間の環状の隙間を、リング状のパッキン材である第2の封止部30で塞いでおく。
図1(a)では、管路2の固定部15は土留壁6に係止しているように表しているが、実際の工程では、充填材20の注入作業に先立ち、外管1を土留壁6に隠れるように引き込み、土留壁6の孔と管路2の固定部15との間に第2の封止部30を設置して環状の隙間を塞ぎ、固定部15が第2の封止部30に係止するようにセッティングする。
【0035】
図8は、外管1の引き抜きと充填材20の注入が完了した後に、管路2の内部に残った充填材供給管14を除去するために切断する処理装置40を示している。処理装置40は、
図8中右側の到達立坑5から、同左側の発進立坑4に向けて進行する。処理装置40は、監視カメラ41と切断装置42を搭載した先端ユニット43と、先端ユニット43に接続された補助ユニット44を有しており、発進立坑4内から操作することができる。何れのユニット43,44も管路2内を直進するためのローラ45を有しており、また必要に応じて周方向に回動することもでき、充填材供給管14の管路2に対する接続位置に応じて切断装置42の位置を調整することができる。充填材供給管14と管路2の接続部分を処理装置40で切断すれば、発進立坑4内から充填材供給管14を引っ張って回収することができる。
【0036】
3.管路の築造方法(
図9〜
図11)
第1実施形態を、
図9〜
図11に示す模式的な工程図を参照して説明する。
2つの地点の間の地中に管路2を敷設する場合、まず、その2つの地点の地面を掘り下げて、
図9〜
図11に示すように、土留壁6で補強された発進立坑4と到達立坑5を形成する。
図9(a)に示すように、発進立坑4の底部に推進装置50を設置する。推進装置50は、基台51と推進部5210を備えている。推進部52は、基台51の上に設置されており、油圧等の駆動力で外管1を地中に圧入し、又は地中に圧入されている外管1を引き抜くことができる。
【0037】
図示はしないが、外管1を構成する鋼管を発進立坑4に搬入して推進装置50に設置する。前述したように、地盤E中に推進する外管1は、複数本の鋼管を継ぎ足したものであり、従って推進装置50には構成要素となる鋼管を設置して1本ずつ地盤E中に圧入、推進する操作を繰り返す。すなわち、1番目の外管1を圧入後、2番目の外管1を発進立坑4に搬入し、推進装置50に設置し、最初の外管1の後端に2番目の外管1の先端を接続してから2番目の外管1を推進部52で押圧し、最初の外管1とともに地盤E中に圧入、推進する。以後、3番目以降の外管1も同様に前の外管1に接続して推進する。このような工程を必要な回数だけ繰り返し、
図9(a)に示すように、最初の外管1を到達立坑5に到達させる。これによって、発進立坑4と到達立坑5の間の地盤E内に外管1が敷設される。外管1の両端の開口は発進立坑4と到達立坑5に位置しており、発進立坑4と到達立坑5は外管1を介して連通している。
【0038】
図9(a)に示すように、先端スペーサ7(
図1(b)参照)が取り付けられた案内長体2をクレーン60で吊り上げ、到達立坑5に搬入し、先端スペーサ7を外管1に挿入する。吊り上げられた案内長体3は、その中央部を支持部材61で支持しておく。
【0039】
図9(b)に示すように、案内長体3に、後端部から2本の管路2を外挿する。この状態になるまでの工程を詳述すると、まず
図9(a)に示すクレーン60を外して案内長体3を支持部材61で支持した状態とし、案内長体3の後端部から1本目の管路2を外挿し、支持部材61の手前まで進める。次に、案内長体3の後端部をクレーン60で吊り、支持部材61を案内長体3の中央部から外して後端部に移動し、1本目の管路2を先端スペーサ7まで進める。支持部材61を案内長体3の後端部から外して再び中央部に移動し、クレーン60を外して2本目の管路2を案内長体3に外挿し、中央部にある支持部材61の手前まで進める。ここで再び案内長体3の後端部をクレーン60で吊る。この状態が
図9(b)である。その後、中央部の支持部材61を外して後端部に移動する。2本目の管路2を進め、2本目の管路2の先端を1本目の管路2の後端に付き合わせて接続し、1本にする。
【0040】
図9(c)に示すように、後続の案内長体3をクレーン60で吊り上げ、到達立坑5に搬入し、先行の案内長体3と接続する。1〜2本目の管路2の設置と同様の工程で、案内長体3の吊り位置と支持部材61の支持位置を適宜に変えながら、後続の案内長体3に3〜4本目の管路2を外挿して先に進め、2本目と3本目の管路2を接続し、3本目と4本目の管路2も接続する。
【0041】
図10(a)に示すように、
図9を参照して説明した工程を必要な回数だけ繰り返し、1本目の管路2を発進立坑4の土留壁6に達するまで進める。このとき、到達立坑5においては、外管1は到達立坑5内に突出しており、管路2は外管1から突出しており、案内長体3は管路2から突出している。図示はしないが、この状態において、外管1と管路2に第1の封止部21(
図4参照)を取り付ける作業を到達立坑5内で行う。
【0042】
以上説明した工程において、地中に設置した外管1は、全体としてなるべく直線状であることが好ましいが、推進条件によっては必ずしも完全な直線状にはなっていない場合もある。その場合、外管1の両端間で測量を行い、軸線方向の各位置における外管1の曲率や曲折方向を計測して全体の形状を把握しておく。そして、外管1内において、案内長体3を直線状に配置できるように、案内長体3の構成単位である鋼材の端面を適宜の傾斜面に加工する。すなわち、これら鋼材を接続すると案内長体3は全体として湾曲したアーチ形状となり、これを外管1内に配置した際には自重によって直線状となるようにする。これによって、外管1の中に設置した案内長体3を可及的な直線状とすることができ、従って当該案内長体3を外挿して設置した管路2も直線状とすることができる。案内長体3は、剛性が高く、曲がりにくい鋼材で構成しているため、高い精度で直線状に形成することができるため、最終的に管路2も高い精度で直線状に形成することができる。
【0043】
図10(b)に示すように、案内長体3をさらに発進立坑4に向けて押し込み、先端スペーサ7が発進立坑4の土留壁6を通り抜けた位置に来るように案内長体3の位置を設定する。案内長体3の後端部は到達立坑5の内部で支持台11によって支持する。そして、発進立坑4の推進装置50(
図9(a)参照)を用いて外管1を発進立坑4内に引き戻す。ここで、到達立坑5の土留壁6に第2の封止部30(図示の都合上、
図10(b)では不図示。
図1(a)及び
図3参照)を設け、外管1が地中に引き込まれたために生じた地盤Eの孔に連通する土留壁6の孔のうち、管路2の周囲の環状の部分を塞ぐ。
【0044】
図10(c)に示すように、外管1を構成単位である1本の長さごとに発進立坑4内に引き戻す。外管1の引き戻しにより、地盤E内には地山が露出したトンネルが現れる。このトンネルの中には、案内長体3で支持された管路2が直線的な配置で安定して敷設された状態にある。外管1を引き戻しながら、又は1本の外管1を引き戻した後に、充填材供給管14から管路2の外に充填材20を供給し、管路2の外側にあるトンネル内の空間に充填する(
図5参照)。この空間は、管路2の軸線方向の両端を第1の封止部21と第2の封止部30で封止されている(
図5に示す第1の封止部21と、
図1(a)及び
図3に一点鎖線で示す第2の封止部30を参照)。従って、充填材は、外管1と管路2の隙間に入り込むこともないし、到達立坑5内に流出してしまうこともない。そして、前記空間を充填材20が確実に充填したか否かは、圧力センサ27の検知した充填材20の圧力によって判断することができる。なお、発進立坑4内に引き戻した外管1は、分解可能な位置で切り離して1本ずつ発進立坑4の外に搬出し、必要に応じて再利用に供することもできる。
【0045】
第1の封止部21が取り付けられた最後の外管1が発進立坑4の外に搬出されると、
図11(a)に示すように管路2の周囲を充填材で固める工程が終了する。
【0046】
図11(b)に示すように、図示しないクレーン等を用いて案内長体3を管路2から引き出し、到達立坑5の外に運び出す。
【0047】
図11(c)に示すように、地盤E内には管路2が残存する。なお、図示の都合上、
図10及び
図11には示していないが、この管路2は
図5の右方に示すように充填材20に被覆されている。この充填材20が固化することにより、管路2は周囲を固められて補強された状態となる。図には示していないが、管路2の内部に残った充填材供給管14は、処理装置40で根元から切断し、発進立坑4内から引っ張って回収される。
【0048】
以上説明した実施形態では、案内長体3としてH形鋼のような形鋼を例示したが、高い剛性を有する曲がりにくい長手形状の部材であればこれに限らない。また、外管1に対して案内長体3及び管路2を到達立坑5から挿入したが、発進立坑4から挿入してもよい。その場合、推進装置50を用いることができる。また、外管1は発進立坑4から引き戻したが、これは発進立坑4にある推進装置50を利用するためであり、到達立坑5から引き出してもよい。