【解決手段】中空円筒形状のソレノイドへ通電することにより、プランジャ60を吸引して弁体75を移動させる電磁弁1において、プランジャ60が摺動内面を摺動するフレアパイプ50を有し、フレアパイプ50が、摺動内面より大径の大径部53を備え、大径部53にプランジャ60を弁座73の方向に付勢する圧縮バネ59が収納されていること、を特徴とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の電磁弁には、次のような問題があった。
すなわち、特許文献1の電磁弁では、付勢バネ26がガイドパイプ6と直列に配置され、特許文献2の電磁弁では、付勢バネ63がガイドパイプ19と直列に配置されているため、電磁弁全体の高さが高くなる問題があった。
近年、電磁弁を集積して使用するケースがあり、また、電磁弁を壁に横向きに配置するケースも多く、電磁弁の高さを低く抑えることが業界では強く求められていた。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、プランジャの衝撃によるガイドパイプの破損を防止すると共に、高さを低くできる電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の電磁弁は、次のような構成を有している。
(1)中空円筒形状のソレノイドへ通電することにより、可動鉄心を吸引して弁体を移動させる電磁弁において、可動鉄心が摺動内面を摺動する磁性体パイプを有し、磁性体パイプが、摺動内面より大径の大径部を備え、大径部に可動鉄心を弁座方向に付勢する付勢バネが収納されていること、を特徴とする。
(2)(1)に記載の電磁弁において、大径部を形成するための拡径部が、大径部に対して垂直に形成されていること、を特徴とする。
【0008】
(3)(1)または(2)に記載の電磁弁において、可動鉄心は、上端側面に上部ウエアリングを備え、下端側面に下部ウエアリングと鍔部とを備え、鍔部が付勢バネの一端を受けていることにより、上部ウエアリングと下部ウエアリングの中間側面と、摺動内面との間に空隙が形成されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電磁弁は、次のような作用・効果を有する。
(1)中空円筒形状のソレノイドへ通電することにより、可動鉄心を吸引して弁体を移動させる電磁弁において、可動鉄心が摺動内面を摺動する磁性体パイプを有し、磁性体パイプが、摺動内面より大径の大径部を備え、大径部に可動鉄心を弁座方向に付勢する付勢バネが収納されていること、を特徴とするので、可動鉄心がパイプの上板に衝突するときの衝撃を大径部を形成するための拡径部で吸収でき、パイプをボディに固定するための鍔部にかかる応力集中が緩和されるため、パイプが破損する恐れがない。同時に、大径部の内部にパイプと並行に付勢バネを収納しているため、電磁弁全体の高さを低くすることができ、業界が要請している電磁弁のコンパクト化に応えることができる。
【0010】
(2)(1)に記載の電磁弁において、大径部を形成するための拡径部が、大径部に対して垂直に形成されていること、を特徴とするので、付勢バネを大径部に装着したときに、付勢バネの一端を拡径部が受けることになるが、拡径部が大径部に対して垂直に形成されているため、全周に渡って付勢バネを安定して保持することができ、付勢バネの付勢力を弁体に対して、全周に渡って均等に配分でき、弁の応答性を安定的に早くすることができる。
特許文献2のように、拡径部が傾斜面を形成している場合には、例え、付勢バネを取り付けた場合に、付勢バネが弁体の軸心に対して傾くため、弁座の全周に渡って安定して均等な押圧力を得ることができず、シール性能が安定しない問題があり、摺動抵抗が増加して動作不良が生じる恐れがあった。
【0011】
(3)(1)または(2)に記載の電磁弁において、可動鉄心は、上端側面に上部ウエアリングを備え、下端側面に下部ウエアリングと鍔部とを備え、鍔部が付勢バネの一端を受けていることにより、上部ウエアリングと下部ウエアリングの中間側面と、摺動内面との間に空隙が形成されていること、を特徴とする。
従来、ガイドパイプの素材としては、非磁性体金属が用いられている。その理由は、磁性体金属のガイドパイプには磁束が流れ、可動鉄心に流れる磁束が減少するために、可動鉄心を吸引する力が低下する問題があったからである。
【0012】
一方、本発明では、コアの一部を変形させて固定鉄心をコアを構成しているため、ガイドパイプの上端と固定鉄心とで封止する接合が溶接では困難である。そのため、固定鉄心に代わりに、上端が上板により塞がれたフレアパイプを用いて、フレアパイプの上板の内面に可動鉄心を衝突させている。フレアパイプを非磁性体で形成すると、フレアパイプの上板が磁気回路の抵抗となり、磁束が低下する問題があった。
本発明では、それを回避するために、フレアパイプの素材として、磁性材料を用いている。
【0013】
そして、可動鉄心とフレアパイプの摺動抵抗を極力減少させるために、上部ウエアリングと下部ウエアリングが、フレアパイプの内周面に接触しているため、可動鉄心の本体の外周面と、フレアパイプの内周面との間には、0.5mm程度の隙間が形成されている。
これにより、可動鉄心の本体の外周面は、フレアパイプの内周面に接触することはないため、摺動により金属の摩耗を抑え、摺動抵抗の上昇を防止するので、電磁弁の耐久性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の電磁弁の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る電磁弁1の斜視図である。
図1は、
図3のAA断面図であり、
図2は、
図3のBB断面図である。
また、
図4に、コイル・コア組立体の構成の一部を分解斜視図で示し、
図5に、ボディ・パイプ組立体の構成を分解斜視図で示す。
図1、
図2、及び
図4に示すように、コイル・コア組立体は、側面視で略コの字形状の上部コア10、内部に巻き線コイル23が樹脂によりモールドされているコイルモールド部20、及び下部コア30を有する。上部コア10、及び下部コア30は、強磁性体材料から成り、磁気回路の一部を構成する。
【0016】
上部コア10の上板部11の中央には、下方向に向けて突出した突出部12が形成されている。また、上板部11には、4本の側面板部13が下方に連設されている。突出部12は、底板を備え上が開口された中空円筒形状である。
ここで、突出部12の製造方法について説明する。
図9、
図11、及び
図12に強磁性材料から成る平鋼板14に絞り加工する加工方法の工程図を示す。
図11と
図12は、第4工程と第5工程の断面図である。
図10は、従来の絞り加工工程を示す図である。
図10に示すように、従来の絞り加工では、絞り加工部以外の箇所を上下一対である上ダイス16と、下ダイス15とで、強い力F3で挟んで動かないようにした状態で、パンチ17により平鋼板を押圧して絞り加工を行っている。これにより、絞り加工部以外の箇所は厚みが減少することがない。絞り加工部のみが薄く延ばされて底板を備える中空形状に絞り加工される。
【0017】
次に、本実施形態の絞り加工について説明する。
図9、
図11、
図12に示すように、絞り加工においては、上ダイス16を用いることなく、下ダイス15のみ用いている。本実施形態では、図示しない第1工程、第2工程、第3工程、
図11に示す第4工程、及び
図12に示す第5工程の5回の絞り加工を順次行うことにより、突出部12を形成している。
図示しないが、第1工程で使用するパンチ18Aの直径は、
図10のパンチ17の直径d1より大きくし、かつ下ダイス15Aの加工孔の内径も大きくし、加工孔の端面には傾斜面を形成して、平鋼板14を円錐台形状に成形する。
図示しないが、第2工程で使用するパンチ18Bの直径d3は、第1工程のパンチ18Aの直径より小さくし、かつ下ダイス15Bの加工孔の内径D3も第1工程の内径D2より小さくし、加工孔の端面の傾斜面も第1工程より急傾斜に形成して、円錐台形状を円筒形状に近づけている。
図示しないが、第3工程で使用するパンチ18Cの直径d4は、第2工程のパンチ18Bの直径d3より小さくし、かつ下ダイス15Cの加工孔の内径D4も第2工程の内径D3により小さくし、加工孔の端面の傾斜面も第2工程より急傾斜に形成して、円錐台形状を円筒形状に近づけている。
図11は、絞り加工の第4工程を示す図である。
図11で使用するパンチ18Dの直径d5は、第3工程のパンチ18Cの直径d4より大きくし、かつ下ダイス15Dの加工孔の内径D5も、第3工程の内径D4よりも大きくし、加工孔は円筒形状としている。
なお、
図9では、平鋼板14に対して、外部から力F1、F2を加えているが、突出部12の底板近傍の側板の厚みW1が、必要な厚みを確保できるならば、外部から力F1、F2を加える必要はない。
図12に、絞り加工の第5工程を示す。
図12は、
図11の状態で下ダイス15Dの加工孔を摺動する下摺動ダイス19が上昇して、鋼板を押し上げてパンチ18Dとの間で挟持して、鋼板の底面の形状を整える。
【0018】
第1工程から第5工程を有することにより、突出部12が完成している。絞り加工の場合には、突出部12の底板近傍の側板の厚みW1が最も延ばされて薄くなる。本実施の形態では、ダイスで絞り加工部以外の箇所を挟んで固定することを行わずに、絞り加工部以外の箇所から金属材料を絞り加工部に移動させているため、突出部12の底板から遠い入口近傍では、側板の厚みW3は、素材である平鋼板の厚みW2より厚くなっており、底板近傍の側板の厚みW1は、素材である平鋼板の厚みW2の80%以上の厚みを確保している。
突出部12の底板から遠い入口近傍の側板の内面と接触しないように、パンチ18Dの直径d3は、
図10のパンチ17の直径d1より小さくしている。絞り加工では、板が薄くなることを防ぐため、
図9に示すように力F1、F2を加えて、金属材料が突出部12に流れ込むようにする。これにより、突出部12の内径が狭くなるためである。
【0019】
図4に示すように、コイルモールド部20は、樹脂製で中空形状のコイルボビン24の外周にコイル23を巻き線した後、コイル23の巻かれたコイルボビン24をインサート成形することにより、モールド部21を形成している。
また、コイルモールド部20は、外部接続端子部22を備えている。外部接続端子部22は、コイル23を外部電源と電気的に接続するためのものである。上部コア10の突出部12は、コイルボビン24の中空孔に対して上面側から挿入されている。
【0020】
下部コア30の底板部31の中央には、上方向に向けて突出した突出部32が形成されている。底板部31の対抗する2面の各々には、側面板部33が上方向に向けて延設されている。側面板部33の形成されていない2面には、
図2に示すように、下方向に向けてコの字状の一対の内鍔部34が形成されている。一対の内鍔部34は、内側に向けて開口している。
下部コア30の突出部32は、コイルボビン24の中空孔に対して底面側から挿入されている。
コイルモールド部20を上部コア10と下部コア30で挟み込んだ状態で、側面板部13の先端を側面板部33と溶接接合することにより、コイル・コア組立が完成する。
そして、コイル・コア組立をインサート成形してモールド部81を形成することにより、
図6に示すコイル組立2が完成する。
【0021】
次に、ボディ・パイプ組立体について説明する。
図1、
図2、
図5に示すように、固定具であるスタッフィング40がボディ70に対して、フレアパイプ50とOリング69を挟み込んだ状態で図示しない4本のネジにより締結される。
スタッフィング40は、略正方形板状で、4隅にネジ穴45が形成されている。中央部は、全周に渡って上向きに突出した側板42を備え、側板42の先端は、全周に渡って外周方向に向かって折り曲げられた折り曲げ部43を備えている。
【0022】
フレアパイプ50は、上面55により塞がれた中空状の円筒部51を備え、拡径部52により拡径された大径部53を備えている。拡径部52は、円筒部51及び大径部53に対して各々直交して形成されており、円筒部51と大径部53とは、平行に形成されている。
大径部53の下端には、外側に向かって拡がる鍔部54が備えられている。フレアパイプ50は、磁性体材料から成形され、磁気回路の一部を構成している。大径部53の内部には、円筒形状の圧縮バネ59が収納されている。
【0023】
可動鉄心であるプランジャ60は、強磁性体材料から成るプランジャ本体61を備える。プランジャ本体61の上面の中央にゴム孔が形成され、ゴム孔には、静音ゴム64が上面より突出して装着されている。静音ゴム64は、プランジャ60が、突出部12に吸引されたときに発生する衝突音を低減させるためのものである。
プランジャ本体61の外側面の上部には、樹脂製の上部ウエアリング63が外側に向かって、一定の間隔をおいて突出して形成されている。プランジャ本体61の上面には、軸心方向外側に向って複数の突起が形成されている樹脂製のリング63aが、上部ウエアリング63に一体に成形されている。これにより、リング63aは、吸着時の衝撃が緩和されるので、フレアパイプ50の破損を防止するとともに、プランジャ本体61の復帰特性を向上させている。
【0024】
図1に示すように、プランジャ本体61の下部には、樹脂製の弁体保持部68が一体成形されている。弁体保持部68の上部外周、対向するフレアパイプ50の円筒部51の下端より上側には、下部ウエアリング65が外側に向かって突出して形成されている。
上部ウエアリング63と下部ウエアリング65が、円筒部51の内周面に接触しているため、プランジャ本体61の外周面と、円筒部51の内周面との間には、0.5mm程度の隙間が形成されている。
【0025】
これにより、プランジャ本体61の外周面は、円筒部51の内周面に接触することはないため、動作時にプランジャ本体61と円筒部51が摺動せず、繰り返しの動作によって、摺動面が劣化したり、摩耗粉が発生して摺動抵抗が上がって動作不良が発生したりすることを防止しているのである。
また、この隙間は、円筒部51の内周面からプランジャ本体61の外周面に横流れする磁束の磁気抵抗となるので、円筒部51の内周面とプランジャ本体61の外周面との間の吸引力を低減している。
弁体保持部68の外周下端部は外側に突出した鍔部67を備えている。また、弁体保持部68の内周には空間部66が形成されており、空間部66には、ゴム製の弁体75が装着されている。
【0026】
ボディ70には、第1流路71、第2流路72が備えられている。第1流路71と第2流路72とは、弁孔により連通されており、弁孔には、弁座73が備えられている。弁体75が弁座73に当接することにより、第1流路71と第2流路72が遮断され、弁体75が弁座73から離間することにより、第1流路71と第2流路72が連通する。
プランジャ60は、上部ウエアリング63と下部ウエアリング65を介して、フレアパイプ50内に摺動可能に保持されている。圧縮バネ59の上端がフレアパイプ50の拡径部52の内周面に当接し、圧縮バネ59の下端がプランジャ60の鍔部67に当接している。圧縮バネ59により、プランジャ60は、弁体75が弁座73に当接する方向に付勢されている。
【0027】
ここで、拡径部52が、円筒部51及び大径部53に対して、各々直交して形成されているため、圧縮バネ59が大径部53の内面に安定して当接するので、圧縮バネ59の付勢力を安定させ、プランジャ60の動きを安定させることができるため、電磁弁1の応答速度のばらつきを減少して一定の応答タイミングを実現できる。すなわち、プランジャ60が突出部12に吸引されるときは、通電により発生する磁力によりプランジャ60が移動するため、プランジャ60の駆動タイミングは安定している。しかし、圧縮バネ59の力は、ソレノイドの吸引力と比較して弱く、また、残留磁気の影響でプランジャ60が突出部12に吸引されるため、プランジャ60が下降する駆動タイミングは遅れる可能性がある。その遅れを防ぐために、圧縮バネ59の付勢力を安定させておく必要性が高いのである。
また、圧縮バネ59がプランジャ60と円筒部51の隙間に入り込んで動作不良を起こす可能性があるため、圧縮バネ59の位置を安定させる必要もある。
スタッフィング40がボディ70に対して、フレアパイプ50とOリング69を挟み込んだ状態で図示しない4本のネジにより締結されることにより、
図7(ネジを省略して記載している。)に示すボディ・パイプ組立体3が完成する。
【0028】
次に、コイル組立2とボディ・パイプ組立体3との連結構造、組立方法を
図8に基づいて説明する。
ボディ・パイプ組立体3のフレアパイプ50を、コイル組立2の中空孔に下面から挿入する。そして、クリップ91を差し込んで、コイル組立2とボディ・パイプ組立体3とを連結する。クリップ91は、1mm程度の厚さのバネ用ステンレス鋼板をプレス加工したものである。
図8に示すように、クリップ91は、略コの字状のクリップ本体92と、作業者が持つための持ち手部94を備えている。クリップ本体92には、4カ所に板バネ93が外側に突出して備えられている。板バネ93は、横から見ると、下側に凸状の三角形状に折り曲げられており、上下方向でバネ性を有している。
【0029】
図2に示すように、クリップ本体92は、コイル組立2の下部コア30の内鍔部34と、ボディ・パイプ組立体3のスタッフィング40の折り曲げ部43との間の空間に挿入される。
図13に、クリップ91が配置されている状態を断面図で示す。
図14に、クリップ91と、折り曲げ部43及び内鍔部34との位置関係を示す。
図13、
図14に示すように、クリップ本体92の上面の一部は、スタッフィング40の折り曲げ部43の下面に当接している。そして、4個の板バネ93の三角形状に折り曲げられた頂点部が、下部コア30の内鍔部34の上面に当接している。
4個の板バネ93のバネ力により、コイル組立2の下部コア30の内鍔部34と、ボディ・パイプ組立体3のスタッフィング40の折り曲げ部43は互いに離間する方向に付勢されている。この板バネ93の付勢力により、コイル組立2とボディ・パイプ組立体3とが連結されている。
本実施の形態では、1個のバネ力として、15〜25Nとし、4個の板バネ93の合計で60〜100Nの付勢力としている。
【0030】
従来は、コイル組立とボディ・パイプ組立体とは、例えば、ボディ・パイプ組立のガイドパイプの中空部の上端に溶接された固定鉄心を、駆動装置の中空孔に貫通させ、上端で、止め輪で連結していた。このとき、コイル組立2とボディ・パイプ組立の間にウェーブワッシャを挟入し、コイル組立を上方向に付勢している。
従来の方法では、部品点数が多い問題と、ソレノイド部の上部に連結部を設けているため、固定鉄心がソレノイド部を貫通しない構造では適用できない問題があった。
本実施の形態では、コイル組立2の下部コア30の内鍔部34と、ボディ・パイプ組立体3のスタッフィング40の折り曲げ部43とを用いて、バネ性を備えるクリップ91のみで連結できるため、部品点数を減少できると共に、電磁弁1の高さを低くすることができる。
【0031】
図8に示すように、コイル組立2には、貼り銘板88を貼り付け、コイルガスケット82、DINケース組立83を、3本のネジ84で取り付ける。さらに、DINケース組立83にDINガスケット85、DIN端子箱86を、ネジ87で取り付ける。
これにより、電磁弁1が完成する。
【0032】
次に、電磁弁1の磁気回路について説明する。
図15に、電磁弁1における磁気回路を示す。なお、
図15は、
図1において、断面を示す斜線を省略した図である。
図15に示すように、磁気回路においては、磁束Sは、最も断面積の小さくなる
図12に示す底板近傍の側板の厚みW1により制約を受けるが、本実施の形態では、底板近傍の側板の厚みW1が、素材である平鋼板の厚みW2の80%以上の厚みを確保しているため、十分な磁束を確保することができ、ソレノイドの吸引力を低下させることがないので、電磁弁の開くときの応答性を高く維持することができる。
本実施の形態では、フレアパイプ50の素材として、磁性材料を用いている。通常、プランジャをガイドするためのガイドパイプに磁性体金属を用いると、プランジャの外周側面がガイドパイプに吸引され、大きな摺動抵抗が発生するため、ガイドパイプの素材は、非磁性体材料を用いている。
しかし、ガイドパイプに非磁性体を用いると、固定鉄心からプランジャに流れるメインの磁気回路の途中に非磁性体金属が存在することとなり、メインの磁気回路の抵抗が大きくなり、流れる磁束が減少する問題があった。
【0033】
本実施の形態では、その問題を回避するため、フレアパイプ50の素材として、磁性体金属を用いている。磁性体金属のフレアパイプ50には磁束が流れ、円筒部51に内包されるプランジャ本体61と円筒部51が摺動して、繰り返しの動作によって摺動面が劣化したり、摩耗粉が発生して摺動抵抗が上がることによる動作不良の発生を防止するため、上部ウエアリング63と下部ウエアリング65とを、円筒部51の内周面に接触させて、プランジャ本体61の外周面と、円筒部51の内周面との間には、0.5mm程度の隙間を形成している。
また、この隙間は、円筒部51の内周面からプランジャ本体61の外周面に横流れする磁束の磁気抵抗となるので、円筒部51の内周面とプランジャ本体61の外周面との間の吸引力を低減している。
【0034】
以上詳細に説明したように、本実施の形態の電磁弁1によれば、(1)中空円筒形状のコイルモールド部20へ通電することにより、プランジャ60を吸引して弁体75を移動させる電磁弁1において、プランジャ60が摺動内面を摺動するフレアパイプ50を有し、フレアパイプ50が、摺動内面より大径の大径部53を備え、大径部53にプランジャ60を弁座73の方向に付勢する圧縮バネ59が収納されていること、を特徴とするので、プランジャ60がフレアパイプ50の上面55の内面に衝突するときの衝撃を、大径部53を形成するための拡径部52で吸収でき、フレアパイプ50をボディ70に固定するための鍔部54にかかる応力集中が緩和されるため、フレアパイプ50が破損する恐れがない。同時に、大径部53の内部にフレアパイプ50と並行に圧縮バネ59を収納しているため、電磁弁1の全体の高さを低くすることができ、業界が要請している電磁弁のコンパクト化に応えることができる。
【0035】
(2)(1)に記載の電磁弁1において、大径部53を形成するための拡径部52が、大径部53に対して垂直に形成されていること、を特徴とするので、圧縮バネ59を大径部53に装着したときに、圧縮バネ59の一端を拡径部52が受けることになるが、拡径部52が大径部53に対して垂直に形成されているため、全周に渡って圧縮バネ59を安定して保持することができ、圧縮バネ59の付勢力を弁体75に対して、全周に渡って均等に配分でき、電磁弁1の応答性を安定的に早くすることができる。
特許文献2のように、拡径部が傾斜面を形成している場合には、例えば、付勢バネを取り付けた場合に、付勢バネが弁体の軸心に対して傾くため、弁座の全周に渡って安定して均等な押圧力を得ることができず、シール性能が悪くなる問題があり、摺動抵抗が増加して動作不良が生じる恐れがあった。
【0036】
(3)(1)または(2)に記載の電磁弁1において、プランジャ60は、上端側面に上部ウエアリング63を備え、下端側面に下部ウエアリング65と鍔部67とを備え、鍔部67が圧縮バネ59の一端を受けていることにより、上部ウエアリング63と下部ウエアリング65の中間側面と、円筒部51の摺動内面との間に空隙が形成されていること、を特徴とする。
従来、ガイドパイプ(フレアパイプ50)の素材としては、非磁性体金属が用いられている。その理由は、磁性体金属のガイドパイプには磁束が流れ、可動鉄心に流れる磁束が減少するために、可動鉄心を吸引する力が低下する問題があったからである。
【0037】
一方、本実施の形態では、コアを変形させて固定鉄心を構成しているため、ガイドパイプの上端を固定鉄心で封止する接合が溶接では困難である。そのため、固定鉄心に代わりに、上端が上板により塞がれたフレアパイプ50を用いて、フレアパイプ50の上面55の内面にプランジャ60を衝突させている。フレアパイプ50を非磁性体で形成すると、フレアパイプ50の上板57が磁気回路の抵抗となり、磁束が低下する問題があった。
本実施の形態では、それを回避するために、フレアパイプ50の素材として、磁性材料を用いている。
【0038】
そして、磁性体金属のフレアパイプ50には磁束が流れ、円筒部51に内包されるプランジャ60に横向きの吸引力が増加するので、プランジャ本体61と円筒部51が摺動して、繰り返しの動作によって摺動面が劣化したり、摩耗粉が発生して摺動抵抗が上がることによる動作不良が発生したりすることを防止するため、上部ウエアリング63と下部ウエアリング65とを円筒部51の内周面に接触させて、プランジャ60の本体の外周面と、フレアパイプ50の内周面との間には、0.5mm程度の隙間を形成している。
また、この隙間は、円筒部51の内周面からプランジャ本体61の外周面に横流れする磁束の磁気抵抗となるので、円筒部51の内周面とプランジャ本体61の外周面との間の吸引力を低減している。そして、電磁弁1の応答性を高くすることができる。
【0039】
なお、本実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。
例えば、本実施の形態では、上部ウエアリング63を間隔をおいて形成しているが、全周に渡って形成しても良い。下部ウエアリング65も同様である。