【解決手段】検査用構造体(1)は、筒部(10)と軸部(20)とを備える。筒部(10)は、検体を注入するための軸方向一端側の第1開口部(111)と、軸方向他端側の第2開口部(112)とを有する筒本体(11)と、筒本体(11)の内周面の全周にわたって当該内周面から内側に突出するとともに軸方向(D1)に所定の間隔をおいて設けられた複数のシール部(12A〜12F)と、を含む。軸部(20)は、筒本体(11)内で軸方向(D1)に移動可能となるように第2開口部(112)から筒本体(11)内に挿入される。この軸部(20)は、複数のシール部(12A〜12F)の各々と接触することにより、筒本体(11)との間に、検体に所定の処理を施すための複数の処理室(61〜66)を区画する。
前記複数の処理室は、前記第1処理室に対して軸方向他端側に配置され、前記吸着剤捕集部に捕集された前記吸着剤に吸着された前記特定成分を、第1温度の加熱下で脱着させる第2処理液が予め充填された第2処理室を含み、
前記軸部の外周面は、前記吸着剤捕集部に対して軸方向他端側に配置された第1凹部を有し、
前記第1凹部は、前記軸部の軸方向への移動に伴って前記シール部と対向する位置に配置されることにより、当該シール部を挟んで両側の前記処理室間を連通させる、請求項2に記載の検査用構造体。
前記第1凹部は、前記軸部の外周面において、前記吸着剤捕集部が前記第1処理室内に配置されたときに、前記第2処理室内に配置される位置に形成されている、請求項4に記載の検査用構造体。
前記第2凹部は、前記軸部の外周面において、前記第1凹部が前記第2処理室内に配置されたときに、前記第3処理室内に配置される位置に形成されている、請求項6に記載の検査用構造体。
前記軸部は、軸方向一端側の先端に突設された撹拌部であって、前記軸部の外周面よりも内側で軸方向に交差する面を持つ撹拌部を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の検査用構造体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、検体の検査に用いられる検査用構造体であって、検査の操作性に優れた検査用構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の局面に係る検査用構造体は、検体の検査に用いられる検査用構造体であって、流体を収容可能な筒状に形成され、前記検体を注入するための軸方向一端側の開口部を有する筒本体と、前記筒本体の内周面の全周にわたって当該内周面から内側に突出するとともに軸方向に所定の間隔をおいて設けられた複数のシール部と、を含む筒部と、前記筒本体内で軸方向に移動可能となるように前記筒本体内に挿入された軸部であって、前記筒本体との間に前記検体に所定の処理を施すための複数の処理室を区画するために前記複数のシール部の各々と摺動可能に接触する外周面を有する軸部と、を備える。
【0009】
この検査用構造体によれば、開口部を介して検体が筒本体内に注入されると、筒本体内で軸部を軸方向に移動させる操作により、検体を処理室間で移動させることができる。すなわち、検体の検査を行うに際して従来技術のように、回転式流体制御弁による連通状態の切換操作及び回転式流体制御弁の上下方向への移動操作等の複雑な操作を行うことなく、軸部を軸方向に移動させる操作によって、処理室内にて検体の処理を実施することができる。従って、本発明に係る検査用構造体は、検体の検査の操作性に優れたものとなる。
【0010】
上記の検査用構造体において、前記複数の処理室は、前記検体中の特定成分を吸着可能な吸着剤が分散された第1処理液が予め充填された第1処理室を含むよう構成されていてもよい。そして、前記軸部の外周面は、前記吸着剤を捕集する吸着剤捕集部を有する。
【0011】
この態様では、第1処理室において、検体中の特定成分が吸着剤に吸着される。そして、吸着剤捕集部が第1処理室内に位置するように軸部を軸方向に移動させる操作によって、特定成分が吸着された吸着剤を吸着剤捕集部にて捕集することができる。
【0012】
上記の検査用構造体において、前記複数の処理室は、前記第1処理室に対して軸方向他端側に配置され、前記吸着剤捕集部に捕集された前記吸着剤に吸着された前記特定成分を、第1温度の加熱下で脱着させる第2処理液が予め充填された第2処理室を含むよう構成されていてもよい。そして、前記軸部の外周面は、前記吸着剤捕集部に対して軸方向他端側に配置された第1凹部を有する。前記第1凹部は、前記軸部の軸方向への移動に伴って前記シール部と対向する位置に配置されることにより、当該シール部を挟んで両側の前記処理室間を連通させる。
【0013】
この態様では、吸着剤捕集部が第2処理室内に位置するように軸部を軸方向に移動させる操作が行われると、当該第2処理室において、吸着剤に吸着された特定成分が脱着される。そして、第1凹部は、軸部の軸方向への移動に伴ってシール部と対向する位置に配置されることにより、当該シール部を挟んで両側の処理室間を連通させる。これにより、処理室間の流体の移動が可能となる。
【0014】
上記の検査用構造体において、前記第1凹部には、前記第1温度で溶融可能な熱溶融材料が埋め込まれている。
【0015】
また、上記の検査用構造体において、前記第1凹部は、前記軸部の外周面において、前記吸着剤捕集部が前記第1処理室内に配置されたときに、前記第2処理室内に配置される位置に形成されている。
【0016】
この態様では、第1凹部が第2処理室内に位置するように軸部を軸方向に移動させる操作によって、第1凹部に埋め込まれた熱溶融材料が溶融される。このようにして熱溶融材料が溶融された状態の第1凹部は、軸部の軸方向への移動に伴ってシール部と対向する位置に配置されることにより、当該シール部を挟んで両側の処理室間を連通させる。これにより、処理室間の流体の移動が可能となる。
【0017】
上記の検査用構造体において、前記複数の処理室は、前記第2処理室に対して軸方向他端側に配置され、第2温度の加熱下で前記特定成分に対する所定の反応を行う反応場となる第3処理室を含むよう構成されていてもよい。そして、前記軸部の外周面は、前記第1凹部に対して軸方向他端側に配置された凹部であって、前記特定成分と反応する反応剤が埋め込まれた第2凹部を有する。
【0018】
また、上記の検査用構造体において、前記第2凹部は、前記軸部の外周面において、前記第1凹部が前記第2処理室内に配置されたときに、前記第3処理室内に配置される位置に形成されている。
【0019】
この態様では、第2凹部が第3処理室内に位置するように軸部を軸方向に移動させる操作によって、第3処理室にて実施される特定成分の反応のために反応剤を供給することができる。
【0020】
上記の検査用構造体において、前記第2凹部に埋め込まれた前記反応剤は、前記第2温度で溶融可能な被覆材により被覆されている。
【0021】
この態様では、反応剤が被覆材により被覆されているので、第3処理室における特定成分の反応に供される前に反応剤が劣化することを、抑止することができる。
【0022】
上記の検査用構造体において、前記筒本体は、前記複数の処理室の各々を画定する筒体が軸方向に複数連結されてなり、前記シール部は、前記筒体間をシールする部分を有する。
【0023】
この態様では、筒本体が複数の筒体の連結構造であるので、軸方向に沿って並設される複数の処理室を有する検査用構造体を、容易に組み立てることができる。また、筒本体を複数の筒体の連結構造とすることによって、検体の検査の処理工程数に応じた処理室の削減及び増設の自由度が向上する。
【0024】
上記の検査用構造体において、前記軸部は、軸方向一端側の先端に突設された撹拌部であって、前記軸部の外周面よりも内側で軸方向に交差する面を持つ撹拌部を有するよう構成されていてもよい。
【0025】
この態様では、軸部を筒本体内で軸方向に往復移動させる操作によって、撹拌部は、処理室内に収容される流体を撹拌することができる。これにより、処理室内にて実施される処理の効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、検体の検査に用いられる検査用構造体において、検査の操作性に優れた検査用構造体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態に係る検査用構造体について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る検査用構造体1の全体構造を示す斜視図である。
図2は、検査用構造体1の断面図である。
【0029】
[検査用構造体の構成]
本実施形態に係る検査用構造体1は、検体の検査に用いられる構造体である。検査用構造体1は、例えば、生体から採取された検体中における、結核等の感染症の原因菌としての感染症起炎菌(特定成分)に由来する標的核酸の存否を判定する遺伝子検査に用いられる。ここで、生体から採取される検体としては、喀痰、胃液及び気管支肺胞洗浄液等の気道検体が挙げられる。なお、本実施形態では、生体から採取された検体に均質化処理液を加えて調製された粘稠液を、検査用の検体とする。均質化処理液は、生体から採取された検体の粘度を低下させる機能を有する処理液であり、例えばNALC−NaOH混合液やNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液等が挙げられる。NALC(N−acetyl−L−cysteine)には還元作用があり、検体中のS−S結合を還元して解離することにより、検体の粘度を低下させる。また、NaOH(水酸化ナトリウム)は、検体中に混在する感染症起炎菌(特定成分)以外の細菌を殺菌する。
【0030】
検査用構造体1は、主として、筒部10と、軸部20と、操作部30と、支持部40と、蓋体50とを備える。
【0031】
筒部10は、流体を収容可能な筒本体11と、複数のシール部とを含む。複数のシール部は、第1シール部12A、第2シール部12B、第3シール部12C、第4シール部12D、第5シール部12E及び第6シール部12Fを含む。筒本体11は、軸方向D1に延びる円筒状に形成される。筒本体11は、検体を注入するための軸方向一端側の第1開口部111と、軸方向他端側の第2開口部112とを有する。なお、以下の説明では、軸方向D1において、筒本体11の他端側から一端側へ向かう方向を第1方向D11と称し、筒本体11の一端側から他端側へ向かう、第1方向D11とは逆の方向を第2方向D12と称する。
【0032】
第1乃至第6シール部12A、12B、12C、12D、12E、12Fは、それぞれ、筒本体11の内周面の全周にわたって当該内周面から内側に突出するとともに、軸方向D1に所定の間隔をおいて設けられている。第1乃至第6シール部12A、12B、12C、12D、12E、12Fは、この順で第2方向D12に並ぶように配置されている。第1乃至第6シール部12A、12B、12C、12D、12E、12Fは、筒本体11内に後述の軸部20が挿入された状態において、筒本体11と軸部20との間の空間を気密及び液密封止する。
【0033】
軸部20は、円柱状に形成され、筒本体11内で軸方向D1に移動可能となるように第2開口部112から筒本体11内に挿入される。軸部20は、筒本体11内で軸方向D1に延びている。軸部20は、筒本体11との間に検体に所定の処理を施すための複数の処理室を区画するために、第1乃至第6シール部12A、12B、12C、12D、12E、12Fの各々と摺動可能に接触する外周面を有する。軸部20は、筒本体11内に挿入された状態において、第1乃至第6シール部12A、12B、12C、12D、12E、12Fの各々と接触することにより、筒本体11との間に、検体に所定の処理を施すための複数の処理室を区画する。
【0034】
本実施形態では、軸部20が筒本体11との間に区画する複数の処理室は、集菌処理室61と、洗浄処理室62と、菌破砕処理室63と、増幅反応前処理室64と、増幅反応処理室65と、内部標準増幅反応処理室66とを含む。
【0035】
集菌処理室61は、軸部20が筒本体11との間に区画する複数の処理室のうち、最も軸方向一端側(第1方向D11側)に配置される処理室である。集菌処理室61は、筒本体11と軸部20との間において、後述の蓋体50と第1シール部12Aとで仕切られた空間に相当する。集菌処理室61は、第1処理室の一例である。この集菌処理室61には、検体中の特定成分としての感染症起炎菌を吸着可能な強磁性体からなる吸着剤が分散された集菌処理液(第1処理液)が予め充填されている。集菌処理液としては、例えばTB−Beads(登録商標)溶液(日本ビーシージー製造株式会社製)等が挙げられる。詳細については後述するが、検査用構造体1を用いた遺伝子検査における集菌処理工程が、集菌処理室61にて実施される。
【0036】
洗浄処理室62は、集菌処理室61に対して軸方向他端側(第2方向D12側)に、第1シール部12Aを介して隣接して配置される処理室である。洗浄処理室62は、筒本体11と軸部20との間において、第1シール部12Aと第2シール部12Bとで仕切られた空間に相当する。洗浄処理室62には、集菌処理工程後の吸着剤を洗浄するための洗浄処理液が予め充填されている。洗浄処理液としては、例えばTB−Beads(登録商標)洗浄液(日本ビーシージー製造株式会社製)等が挙げられる。詳細については後述するが、検査用構造体1を用いた遺伝子検査における洗浄処理工程が、洗浄処理室62にて実施される。
【0037】
菌破砕処理室63は、洗浄処理室62に対して軸方向他端側(第2方向D12側)に、第2シール部12Bを介して隣接して配置される処理室である。菌破砕処理室63は、筒本体11と軸部20との間において、第2シール部12Bと第3シール部12Cとで仕切られた空間に相当する。菌破砕処理室63は、第2処理室の一例である。この菌破砕処理室63には、洗浄処理工程後の吸着剤に吸着された感染症起炎菌を第1温度の加熱下で脱着させて菌破砕を行う菌破砕処理液(第2処理液)が予め充填されている。菌破砕処理液としては、例えばTB−Beads(登録商標)溶出緩衝液(日本ビーシージー製造株式会社製)等が挙げられる。詳細については後述するが、検査用構造体1を用いた遺伝子検査における菌破砕処理工程が、菌破砕処理室63にて実施される。
【0038】
増幅反応前処理室64は、菌破砕処理室63に対して軸方向他端側(第2方向D12側)に、第3シール部12Cを介して隣接して配置される処理室である。増幅反応前処理室64は、筒本体11と軸部20との間において、第3シール部12Cと第4シール部12Dとで仕切られた空間に相当する。増幅反応前処理室64には、菌破砕処理工程において調製された検査用中間体に添加される、感染症起炎菌由来の標的核酸に対する核酸増幅反応の前処理を行うための反応試薬が、予め充填されている。反応試薬としては、例えば核酸増幅反応の触媒作用を有する酵素を含む試薬が挙げられる。酵素としては、例えばポリメラーゼ等が挙げられる。詳細については後述するが、検査用構造体1を用いた遺伝子検査における増幅反応前処理工程が、増幅反応前処理室64にて実施される。
【0039】
増幅反応処理室65は、増幅反応前処理室64に対して軸方向他端側(第2方向D12側)に、第4シール部12Dを介して隣接して配置される処理室である。増幅反応処理室65は、筒本体11と軸部20との間において、第4シール部12Dと第5シール部12Eとで仕切られた空間に相当する。増幅反応処理室65には、増幅反応前処理工程において調製された検査用試料が流入される。増幅反応処理室65は、第2温度の加熱下で感染症起炎菌由来の標的核酸に対する核酸増幅反応を行う反応場となり、第3処理室の一例である。詳細については後述するが、検査用構造体1を用いた遺伝子検査における増幅反応処理工程が、増幅反応処理室65にて実施される。
【0040】
内部標準増幅反応処理室66は、増幅反応処理室65に対して軸方向他端側(第2方向D12側)に、第5シール部12Eを介して隣接して配置される処理室である。内部標準増幅反応処理室66は、筒本体11と軸部20との間において、第5シール部12Eと第6シール部12Fとで仕切られた空間に相当する。内部標準増幅反応処理室66には、感染症起炎菌とは別の所定の菌(以下、「内部標準菌」という)を含む検体が、予め収容されている。内部標準増幅反応処理室66には、増幅反応前処理工程において調製された検査用試料が、増幅反応処理室65を介して流入される。詳細については後述するが、検査用構造体1を用いた遺伝子検査における内部標準増幅反応処理工程が、内部標準増幅反応処理室66にて実施される。
【0041】
また、
図1及び
図2に示すように、筒部10において筒本体11は、複数の筒体としての第1筒体11A、第2筒体11B、第3筒体11C、第4筒体11D、第5筒体11E、第6筒体11F及び第7筒体11Gが、軸方向D1に連結されてなる。
【0042】
第1筒体11Aは、集菌処理室61の外面部を画定する。第1筒体11Aの軸方向一端側(第1方向D11側)の端縁が、筒本体11の第1開口部111を画定する。第1筒体11Aの軸方向一端側(第1方向D11側)の内周面には、螺旋状の雌ねじ部11AAが形成されている。この第1筒体11Aの雌ねじ部11AAには、蓋体50の雄ねじ部51が螺合される。蓋体50は、第1開口部111を開閉可能に、筒本体11を構成する第1筒体11Aに装着される。蓋体50は、第1開口部111を閉鎖するように第1筒体11Aに装着されることにより、第1シール部12Aと協同して集菌処理室61を気密及び液密封止する。なお、蓋体50が第1筒体11Aから取り外されて第1開口部111が開放された状態で、検体が、第1開口部111を介して集菌処理室61内に注入される。
【0043】
第2筒体11Bは、第1筒体11Aの軸方向他端側(第2方向D12側)に連結され、洗浄処理室62の外面部を画定する。第3筒体11Cは、第2筒体11Bの軸方向他端側(第2方向D12側)に連結され、菌破砕処理室63の外面部を画定する。第4筒体11Dは、第3筒体11Cの軸方向他端側(第2方向D12側)に連結され、増幅反応前処理室64の外面部を画定する。第5筒体11Eは、第4筒体11Dの軸方向他端側(第2方向D12側)に連結され、増幅反応処理室65の外面部を画定する。第6筒体11Fは、第5筒体11Eの軸方向他端側(第2方向D12側)に連結され、内部標準増幅反応処理室66の外面部を画定する。
【0044】
第7筒体11Gは、第6筒体11Fの軸方向他端側(第2方向D12側)に連結され、第6シール部12Fよりも第2方向D12側に延びる筒体である。第7筒体11Gの軸方向一端側(第1方向D11側)の内周面には、径方向外方側に退避した段差部11GAが形成されている。軸部20は、後述の第2軸体22の連結部221が段差部11GAに当接した状態において、第1方向D11への移動が規制される。
【0045】
以上のように、筒部10の筒本体11を、複数の筒体である第1乃至第7筒体11A、11B、11C、11D、11E、11F、11Gが連結された構造とすることによって、軸方向D1に沿って並設される複数の処理室を有する検査用構造体1を、容易に組み立てることができる。また、筒本体11を複数の筒体が連結された構造とすることによって、検体の遺伝子検査の処理工程数に応じた処理室の削減及び増設の自由度が向上する。
【0046】
なお、第1乃至第6シール部12A、12B、12C、12D、12E、12Fは、それぞれ、第1筒体11A、第2筒体11B、第3筒体11C、第4筒体11D、第5筒体11E、第6筒体11F及び第7筒体11Gの各々の間をシールする部分を有する。詳しくは、第1シール部12Aは、第1筒体11Aと第2筒体11Bとの間をシールする部分を有する。第2シール部12Bは、第2筒体11Bと第3筒体11Cとの間をシールする部分を有する。第3シール部12Cは、第3筒体11Cと第4筒体11Dとの間をシールする部分を有する。第4シール部12Dは、第4筒体11Dと第5筒体11Eとの間をシールする部分を有する。第5シール部12Eは、第5筒体11Eと第6筒体11Fとの間をシールする部分を有する。第6シール部12Fは、第6筒体11Fと第7筒体11Gとの間をシールする部分を有する。
【0047】
次に、軸部20について、
図2に加えて
図3を参照して詳細に説明する。
図3は、検査用構造体1の軸部20の斜視図である。軸部20は、第1軸体21と、その第1軸体21に対して軸方向他端側(第2方向D12側)に同軸上に連結される第2軸体22と、を含む。
【0048】
第1軸体21は、第1内部空洞部216を有する中空円柱状に形成され、吸着剤捕集部211と、第1凹部212と、第2凹部213と、第3凹部214と、撹拌部215と、を有する。
【0049】
吸着剤捕集部211は、第1軸体21の外周面において軸方向一端部(第1方向D11側の端部)に形成された部分である。吸着剤捕集部211は、集菌処理室61内に位置した状態において、集菌処理室61内に収容される集菌処理液中の吸着剤を捕集する。吸着剤捕集部211は、周方向に延びる複数の溝部を有する第1構造、多孔質材料が貼付された第2構造、及び微細な凹凸形状を有する第3構造の、少なくともいずれか1つの構造によって実現される。
【0050】
吸着剤捕集部211を前記第1構造とする場合、溝部の幅寸法は、吸着剤を保持可能な大きさに設定される。この場合、吸着剤捕集部211は、溝部内に吸着剤が嵌り込んだ状態で当該吸着剤を捕集する。
【0051】
吸着剤捕集部211を前記第2構造とする場合、多孔質材料は、発泡樹脂や焼結金属、セラミックス等から選択することができる。この場合、吸着剤捕集部211は、多孔質材料の細孔に吸着剤が捕捉された状態で当該吸着剤を捕集する。
【0052】
吸着剤捕集部211を前記第3構造とする場合、微細な凹凸形状は、吸着剤を保持可能なパターン形状に設定される。この場合、吸着剤捕集部211は、凹凸形状の凹所内に吸着剤が嵌り込んだ状態で当該吸着剤を捕集する。
【0053】
第1凹部212は、第1軸体21の外周面において、吸着剤捕集部211に対して軸方向他端側(第2方向D12側)に配置された凹部である。第1凹部212は、第1軸体21の外周面において、吸着剤捕集部211が集菌処理室61内に配置されたときに、菌破砕処理室63内に配置される位置に形成されている。第1凹部212には、菌破砕処理室63にて実施される菌破砕処理の処理温度である第1温度で溶融可能な熱溶融材料が、埋め込まれている。熱溶融材料は、パラフィンろう、熱溶融樹脂、及び熱溶融金属等から選択することができる。第1凹部212に埋め込まれた熱溶融材料は、第1凹部212が菌破砕処理室63内に位置した状態において、溶融される。第1凹部212は、熱溶融材料が溶融された状態で、軸部20の軸方向D1への移動に伴って第1乃至第6シール部12A、12B、12C、12D、12E、12Fのいずれかのシール部と対向する位置に配置されることにより、当該シール部を挟んで両側の処理室間を連通させる。これにより、処理室間の流体の移動が可能となる。
【0054】
第2凹部213は、第1軸体21の外周面において、第1凹部212に対して軸方向他端側(第2方向D12側)に形成された凹部である。第2凹部213は、第1軸体21の外周面において、第1凹部212が菌破砕処理室63内に配置されたときに、増幅反応処理室65内に配置される位置に形成されている。第2凹部213には、増幅反応処理室65にて実施される感染症起炎菌由来の標的核酸に対する核酸増幅反応の、反応剤としての第1プライマーが埋め込まれている。第2凹部213に埋め込まれた第1プライマーは、蛍光物質で標識された、標的核酸に結合可能なプライマーである。この第1プライマーの標識蛍光物質としては、例えばヒドロキシナフトールブルー(Hydroxy Naphthol Blue、略称HNB)やGelGreen(登録商標)の混合溶液等が挙げられる。検査用構造体1では、増幅反応前処理室64での増幅反応前処理により調製された検査用試料が増幅反応処理室65に流入された後、第2凹部213が増幅反応処理室65内に位置した状態で、検査用試料中の標的核酸に対する核酸増幅反応が実施される。
【0055】
第3凹部214は、第1軸体21の外周面において、第2凹部213に対して軸方向他端側(第2方向D12側)に形成された凹部である。第3凹部214は、第1軸体21の外周面において、第2凹部213が増幅反応処理室65内に配置されたときに、内部標準増幅反応処理室66内に配置される位置に形成されている。第3凹部214には、内部標準増幅反応処理室66にて実施される内部標準菌由来の核酸に対する核酸増幅反応の、反応剤としての第2プライマーが埋め込まれている。第3凹部214に埋め込まれた第2プライマーは、蛍光物質で標識された、内部標準菌由来の核酸に結合可能なプライマーである。検査用構造体1では、前記検査用試料が増幅反応処理室65を介して内部標準増幅反応処理室66に流入された後、第3凹部214が内部標準増幅反応処理室66内に位置した状態で、内部標準菌由来の核酸に対する核酸増幅反応が実施される。
【0056】
また、第2凹部213に埋め込まれた第1プライマーと、第3凹部214に埋め込まれた第2プライマーとは、増幅反応処理室65及び内部標準増幅反応処理室66の各々にて実施される核酸増幅反応の反応温度である第2温度で溶融可能な被覆材により被覆されている。被覆材は、パラフィンろう、及び熱溶融樹脂等から選択することができる。被覆材は、第2凹部213が増幅反応処理室65内に位置し、第3凹部214が内部標準増幅反応処理室66内に位置した状態において、核酸増幅反応の実施に先立って、溶融される。第1プライマー及び第2プライマーが被覆材により被覆されることによって、核酸増幅反応に供される前に第1プライマー及び第2プライマーが劣化することを、抑止することができる。
【0057】
なお、増幅反応処理室65における核酸増幅反応により生成される第1増幅産物からは、第1プライマーの蛍光物質に由来する蛍光が発せられる。また、内部標準増幅反応処理室66における核酸増幅反応により生成される第2増幅産物からは、第2プライマーの蛍光物質に由来する蛍光が発せられる。検査用構造体1を用いた遺伝子検査では、第1増幅産物から発せられる蛍光を検出することにより、感染症起炎菌に由来する標的核酸の存否が判定される。このとき、第2増幅産物から発せられる蛍光の検出結果は、リファレンスとして使用される。
【0058】
上記のような蛍光の検出精度を向上するために、本実施形態では、
図1に示すように、筒本体11の外周面における、増幅反応処理室65及び内部標準増幅反応処理室66の各々に対応する位置に、導光部70が配設されている。導光部70は、第1増幅産物及び第2増幅産物の各々から発せられる蛍光に対する透光性を有する材料により構成されている。第1増幅産物及び第2増幅産物の各々から発せられる蛍光は、導光部70により導光されて出射されることになる。このため、蛍光の検出精度を向上することができる。
【0059】
撹拌部215は、第1軸体21の軸方向一端側(第1方向D11側)の先端に突設された突片である。撹拌部215は、第1軸体21の外周面よりも内側で軸方向D1に交差する面を有する。撹拌部215と吸着剤捕集部211との軸方向D1における位置関係は、撹拌部215及び吸着剤捕集部211が同時に集菌処理室61内に位置することが可能なように設定されている。吸着剤捕集部211が集菌処理室61内で軸方向D1に往復移動するように軸部20が移動されることにより、撹拌部215は、集菌処理室61内に収容される流体を撹拌することができる。これにより、集菌処理室61にて実施される集菌処理における、吸着剤に対する感染症起炎菌の吸着を促進することができる。
【0060】
第2軸体22は、第1軸体21の第1内部空洞部216と連通する第2内部空洞部224を有する中空円柱状に形成され、連結部221と、雄ねじ部222と、溝部223とを有する。
【0061】
連結部221は、第2軸体22の軸方向一端部(第1方向D11側の端部)を構成する部分である。第2軸体22は、連結部221を介して第1軸体21に対して軸方向他端側(第2方向D12側)に同軸上に連結される。また、軸部20は、連結部221の軸方向一端部(第1方向D11側の端部)が、第7筒体11Gの段差部11GAに当接した状態において、第1方向D11への移動が規制される。連結部221が段差部11GAに当接した状態では、第1軸体21の吸着剤捕集部211が集菌処理室61内に位置している。
【0062】
雄ねじ部222は、第2軸体22の外周面に形成された螺旋状のねじ部である。溝部223は、第2軸体22の外周面において軸方向D1に直線状に延びる溝である。雄ねじ部222及び溝部223は、軸部20を軸方向D1に移動させるための駆動力が操作部30によって伝達される機構となる。
【0063】
操作部30は、第2軸体22が挿通される筒状に形成され、筒本体11に対して第2軸体22の軸回りに回転可能である。この操作部30は、第2軸体22の雄ねじ部222と螺合可能な螺旋状の雌ねじ部31が形成された内周面と、第2軸体22の軸回りに回転するための駆動力が伝達されるギア部32が形成された外周面とを備えている。このギア部32を介して不図示の駆動モータの回転駆動力が操作部30に伝達される。このように、回転駆動力が操作部30に伝達されると、操作部30は、筒本体11に対して第2軸体22の軸回りに回転する。また、第2軸体22の雄ねじ部222と操作部30の雌ねじ部31とによって、操作部30の回転力を第2軸体22に伝達するための伝達機構が構成され、雄ねじ部222及び雌ねじ部31を介して操作部30の回転力が第2軸体22に伝達される。
【0064】
また、操作部30は、筒本体11の軸方向他端側(第2方向D12側)の端部に形成される後述の支持部40の内部に挿入される操作挿入部33を含む。この操作挿入部33によって操作部30が、筒本体11の軸方向他端側(第2方向D12側)の端部に形成される支持部40に支持される。操作部30において操作挿入部33の外周面には、全周にわたって周方向に延びる操作溝部33Aが形成されている。
【0065】
支持部40は、筒本体11の軸方向他端側(第2方向D12側)の端部に筒状に形成され、操作部30を回転自在に支持する。なお、支持部40は、筒本体11の軸方向他端部において一体的に形成されていてもよいし、筒本体11とは別体であってもよい。支持部40が筒本体11とは別体である場合には、支持部40は、筒状に形成され、筒本体11の軸方向他端部に固定されて、操作部30を回転自在に支持する。筒本体11の軸方向他端部における支持部40は、操作部30の操作溝部33Aに挿入されて操作部30の軸方向D1への移動を規制する操作部移動規制部41と、第2軸体22の溝部223に挿入されて第2軸体22の軸回りの回転を規制する軸体回転規制部42とを備えている。
【0066】
操作部30の操作溝部33Aと支持部40の操作部移動規制部41とによって、回転された操作部30の、軸方向D1に沿った移動を規制する操作部移動規制機構が構成される。操作部30は、操作溝部33Aに支持部40の操作部移動規制部41が挿入された状態において、軸方向D1への移動が規制され、第2軸体22の軸回りに回転可能である。また、第2軸体22の溝部223と支持部40の軸体回転規制部42とによって、雄ねじ部222及び雌ねじ部31を介して操作部30の回転力が伝達された第2軸体22の軸回りの回転を規制する軸体回転規制機構が構成される。第2軸体22は、溝部223に支持部40の軸体回転規制部42が挿入された状態において、軸回りの回転が規制され、軸方向D1への移動が可能である。すなわち、軸部20は、軸回りの回転が規制された状態で、軸方向D1への移動が可能である。
【0067】
操作部30及び支持部40を備えた構成とすることによって、支持部40により支持された操作部30の軸回りの回転力が、第2軸体22(すなわち軸部20)の軸方向D1への移動の力に変換される。このため、軸部20の軸方向D1への移動を精密に制御することが可能となる。また、軸方向D1に沿った不所望な力が軸部20に加わったとしても、操作部30が回転されない限り、軸部20が軸方向D1へ移動せず、不所望な移動を抑止することが可能となる。更に、操作部30の回転力が雄ねじ部222及び雌ねじ部31を介して第2軸体22に伝達されたとき、第2軸体22の軸回りの回転が、溝部223と軸体回転規制部42とで構成された軸体回転規制機構によって規制されるので、軸回りに回転させようとする不所望な力が軸部20に加わったとしても、軸部20が軸方向D1へ移動することがなく、不所望な移動を抑止することが可能となる。
【0068】
[検査用構造体を用いた検体の検査方法]
次に、検査用構造体1を用いた検体の検査方法について、
図4を参照して説明する。
図4は、検査用構造体1を用いた遺伝子検査の流れを示すフローチャートである。第2軸体22の連結部221が第7筒体11Gの段差部11GAに当接し、第1軸体21の吸着剤捕集部211が集菌処理室61内に位置した状態で、検査用構造体1を用いた遺伝子検査が開始される。なお、吸着剤捕集部211が集菌処理室61内に位置した状態では、撹拌部215も集菌処理室61内に位置している。
【0069】
<検体注入工程>
まず、ステップs1の検体注入工程では、検査者によって蓋体50が取り外され、集菌処理室61内に検体が注入される。検体の注入後、検査者によって蓋体50が取り付けられる。集菌処理室61内に検体が注入された検査用構造体1は、操作部30に回転駆動力を与える駆動モータが付設された所定の検査装置にセットされる。このとき、検査用構造体1は、第1方向D11が鉛直上方に向かう方向となり、第2方向D12が鉛直下方に向かう方向となるように、軸方向D1が鉛直方向に沿った姿勢で検査装置にセットされる。
【0070】
<集菌処理工程>
次に、ステップs2の集菌処理工程が集菌処理室61にて実施される。集菌処理工程において集菌処理室61の温度は、例えば室温(25℃)に保持される。
図5は、遺伝子検査の集菌処理工程における検査用構造体1の状態を示す断面図である。
図5に示すように、ステップs2の集菌処理工程では、吸着剤捕集部211が集菌処理室61内で軸方向D1に往復移動するように軸部20を移動させる操作が、操作部30を介して行われる。これにより、撹拌部215が、集菌処理室61内に収容される流体(吸着剤が分散された集菌処理液と検体との混合物)を撹拌する。このとき、検体中の感染症起炎菌が、集菌処理液中の吸着剤に吸着される。
【0071】
感染症起炎菌が吸着剤に吸着されると、磁力発生部材90が、第1軸体21の第1内部空洞部216及び第2軸体22の第2内部空洞部224に挿入される。磁力発生部材90は、磁石や磁化可能な金属からなる棒状の部材である。磁力発生部材90は、強磁性体からなる吸着剤に作用する磁力を発生し、当該吸着剤を引き付ける。第1内部空洞部216及び第2内部空洞部224への磁力発生部材90の挿入動作は、検査用構造体1がセットされる検査装置により実行されてもよいし、検査者により実行されてもよい。第1内部空洞部216及び第2内部空洞部224に磁力発生部材90が挿入されると、第1内部空洞部216に対して径方向外方側の第1軸体21の外周面に形成された吸着剤捕集部211に向かって、感染症起炎菌を吸着した吸着剤が、引き付けられる。これにより、吸着剤捕集部211は、感染症起炎菌を吸着した吸着剤を捕集する。換言すると、磁力発生部材90が、第1軸体21の第1内部空洞部216及び第2軸体22の第2内部空洞部224に挿入され、吸着剤捕集部211が集菌処理室61内に位置するように軸部20を軸方向D1に移動させる操作によって、感染症起炎菌を吸着した吸着剤を吸着剤捕集部211にて捕集することができる。
【0072】
なお、吸着剤捕集部211が、上記の多孔質材料が貼付された第2構造、及び微細な凹凸形状を有する第3構造とされている場合には、第1内部空洞部216及び第2内部空洞部224への磁力発生部材の挿入動作は、必須ではない。
【0073】
<洗浄処理工程>
次に、ステップs3の洗浄処理工程が洗浄処理室62にて実施される。洗浄処理工程において洗浄処理室62の温度は、例えば室温(25℃)に保持される。
図6は、遺伝子検査の洗浄処理工程における検査用構造体1の状態を示す断面図である。
図6に示すように、ステップs3の洗浄処理工程では、吸着剤捕集部211が洗浄処理室62内に位置するように軸部20を第2方向D12に移動させる操作が、操作部30を介して行われる。洗浄処理室62では、吸着剤捕集部211に捕集された吸着剤を洗浄処理液で洗浄する処理が行われる。なお、洗浄処理室62における吸着剤の洗浄処理は、吸着剤が吸着剤捕集部211に捕集された状態のままで行われる。
【0074】
<菌破砕処理工程>
次に、ステップs4の菌破砕処理工程が菌破砕処理室63にて実施される。菌破砕処理工程において菌破砕処理室63の温度(第1温度)は、例えば90℃以上100℃以下に保持される。
図7A乃至
図7Dは、遺伝子検査の菌破砕処理工程における検査用構造体1の状態を示す断面図である。
図7A乃至
図7Dに示すように、ステップs4の菌破砕処理工程では、吸着剤捕集部211が菌破砕処理室63内に位置するように軸部20を第2方向D12に移動させる操作が、操作部30を介して行われる。菌破砕処理室63では、吸着剤捕集部211に捕集された吸着剤に吸着された感染症起炎菌を、菌破砕処理液にて第1温度の加熱下で脱着させる処理が行われる。菌破砕処理液にて吸着剤から脱着された感染症起炎菌は、菌体の細胞膜の分解等により細胞成分がバラバラに破砕された状態となる。菌破砕処理室63における菌破砕処理により、感染症起炎菌が菌破砕処理液に溶出されてなる検査用中間体が、調製される。なお、菌破砕処理室63における菌破砕処理は、吸着剤が吸着剤捕集部211に捕集された状態のままで行われる。
【0075】
菌破砕処理室63の加熱方式は、誘導加熱(induction heating、略称IH)方式と、熱伝導方式とに大別される。
【0076】
まず、誘導加熱方式について説明する。菌破砕処理室63の加熱方式として誘導加熱方式を採用する場合、
図7A、
図7B及び
図7Cに示すように、導電性を有する導電部材80を用いる。
図7Aに示す例では、菌破砕処理室63の外面部を画定する第3筒体11Cの内周面に、導電部材80が取り付けられている。
図7Bに示す例では、第1軸体21の第1内部空洞部216における吸着剤捕集部211に対応する領域部分に、導電部材80が配設されている。
図7Cに示す例では、第1軸体21の第1内部空洞部216及び第2軸体22の第2内部空洞部224に、棒状の導電部材80が挿入される。そして、検査用構造体1がセットされる検査装置には、菌破砕処理室63と対向するように誘導加熱部が付設されている。これにより、菌破砕処理室63における菌破砕処理を、誘導加熱部による導電部材80の誘導加熱下で行うことができる。
【0077】
次に、熱伝導方式について説明する。菌破砕処理室63の加熱方式として熱伝導方式を採用する場合、
図7Dに示すように、温度調整部81Aを備えた加熱部材81を用いる。加熱部材81において温度調整部81Aは、加熱源となるペルチェ素子やセラミックヒーター等により実現される。
図7Dに示す例では、第1軸体21の第1内部空洞部216及び第2軸体22の第2内部空洞部224に、棒状の加熱部材81が挿入される。加熱部材81の温度調整部81Aから発せられた熱は、第1軸体21を介して菌破砕処理室63に伝導される。これにより、菌破砕処理室63における菌破砕処理を、温度調整部81Aから発せられる熱による加熱下で行うことができる。
【0078】
<溶融処理工程>
次に、ステップs5の溶融処理工程が菌破砕処理室63にて実施される。溶融処理工程において菌破砕処理室63の温度は、菌破砕処理時と同一の第1温度に保持される。
図8は、遺伝子検査の菌破砕処理後において、軸部20の第1凹部212内の熱溶融材料を溶融させる溶融処理を説明するための図である。
図8に示すように、ステップs5の溶融処理工程では、第1凹部212が菌破砕処理室63内に位置するように軸部20を第1方向D11に移動させる操作が、操作部30を介して行われる。このとき、菌破砕処理室63と、その菌破砕処理室63に隣接した増幅反応前処理室64とは、連通した状態ではないので、菌破砕処理により調製された検査用中間体は、菌破砕処理室63に収容された状態のままである。第1凹部212が菌破砕処理室63内に位置するように配置されると、第1凹部212に埋め込まれた熱溶融材料が溶融される。
【0079】
<増幅反応前処理工程>
次に、ステップs6の増幅反応前処理工程が増幅反応前処理室64にて実施される。増幅反応前処理工程において増幅反応前処理室64の温度は、例えば室温(25℃)に保持される。
図9は、遺伝子検査の増幅反応前処理工程における検査用構造体1の状態を示す断面図である。
図9に示すように、ステップs6の増幅反応前処理工程では、熱溶融材料が溶融された状態の第1凹部212が第3シール部12Cとの対向位置に位置するように、軸部20を第2方向D12に移動させる操作が、操作部30を介して行われる。熱溶融材料が溶融された状態の第1凹部212が第3シール部12Cとの対向位置(第3シール部12Cを跨ぐ位置)に配置されると、第3シール部12Cを挟んで両側の菌破砕処理室63と増幅反応前処理室64とが、第1凹部212を介して連通状態となる。このため、菌破砕処理室63に収容される流体である検査用中間体が、第1凹部212を介して増幅反応前処理室64へ移動する。すなわち、検査用中間体が増幅反応前処理室64内に流入する。増幅反応前処理室64では、流入した検査用中間体と、酵素を含む反応試薬とを混合する増幅反応前処理が行われ、検査用試料が調製される。
【0080】
<流体移動工程>
次に、ステップs7の第1流体移動工程では、増幅反応前処理室64にて調製された検査用試料を増幅反応処理室65へ移動させる処理が実施される。すなわち、ステップs7の第1流体移動工程では、検査用試料を増幅反応処理室65へ流入させる。
図10Aは、増幅反応前処理室64にて調製された検査用試料を増幅反応処理室65へ流入させる動作を説明するための図である。
図10Aに示すように、ステップs7の第1流体移動工程では、熱溶融材料が溶融された状態の第1凹部212が第4シール部12Dとの対向位置(第4シール部12Dを跨ぐ位置)に位置するように、軸部20を第2方向D12に移動させる操作が、操作部30を介して行われる。熱溶融材料が溶融された状態の第1凹部212が第4シール部12Dとの対向位置に配置されると、第4シール部12Dを挟んで両側の増幅反応前処理室64と増幅反応処理室65とが、第1凹部212を介して連通状態となる。このため、増幅反応前処理室64に収容される流体である検査用試料が、第1凹部212を介して増幅反応処理室65へ移動する。すなわち、検査用試料が増幅反応処理室65内に流入する。
【0081】
更に、ステップs8の第2流体移動工程では、増幅反応処理室65内に流入した検査用試料の一部を内部標準増幅反応処理室66へ移動させる処理が実施される。すなわち、ステップs8の第2流体移動工程では、検査用試料を内部標準増幅反応処理室66へ流入させる。
図10Bは、検査用試料を内部標準増幅反応処理室66へ流入させる動作を説明するための図である。
図10Bに示すように、ステップs8の第2流体移動工程では、熱溶融材料が溶融された状態の第1凹部212が第5シール部12Eとの対向位置(第5シール部12Eを跨ぐ位置)に位置するように、軸部20を第2方向D12に移動させる操作が、操作部30を介して行われる。熱溶融材料が溶融された状態の第1凹部212が第5シール部12Eとの対向位置に配置されると、第5シール部12Eを挟んで両側の増幅反応処理室65と内部標準増幅反応処理室66とが、第1凹部212を介して連通状態となる。このため、増幅反応処理室65に収容される流体である検査用試料の一部が、第1凹部212を介して内部標準増幅反応処理室66へ移動する。すなわち、検査用試料が内部標準増幅反応処理室66内に流入する。
【0082】
<増幅反応処理工程>
次に、ステップs9の増幅反応処理工程が増幅反応処理室65にて実施される。増幅反応処理工程において増幅反応処理室65の温度(第2温度)は、例えば60℃以上70℃以下に保持される。なお、ステップs9の増幅反応処理工程では、内部標準増幅反応処理室66においても増幅反応処理が実施される。
図11A乃至
図11Eは、遺伝子検査の増幅反応処理工程における検査用構造体1の状態を示す断面図である。
図11A乃至
図11Eに示すように、ステップs9の増幅反応処理工程では、第2凹部213が増幅反応処理室65内に位置するように軸部20を第1方向D11に移動させる操作が、操作部30を介して行われる。第2凹部213が増幅反応処理室65内に位置する状態において、第3凹部214は、内部標準増幅反応処理室66内に位置している。
【0083】
第2凹部213には第1プライマーが埋め込まれており、第3凹部214には第2プライマーが埋め込まれている。このため、第2凹部213が増幅反応処理室65内に位置し、第3凹部214が内部標準増幅反応処理室66内に位置するように軸部20を移動させる操作によって、増幅反応処理室65及び内部標準増幅反応処理室66の各々にて実施される核酸増幅反応のために反応剤を供給することができる。なお、第1プライマー及び第2プライマーを被覆する被覆材は、第2温度の加熱下で溶融される。
【0084】
増幅反応処理室65では、第1流体移動工程において流入した検査用試料と、第1プライマーとの存在下で、検査用試料中の標的核酸に対する核酸増幅反応が実施される。また、内部標準増幅反応処理室66では、第2流体移動工程において流入した検査用試料と、内部標準菌を含む検体と、第2プライマーとの存在下で、内部標準菌由来の核酸に対する核酸増幅反応が実施される。
【0085】
増幅反応処理室65及び内部標準増幅反応処理室66の加熱方式は、菌破砕処理室63の加熱方式と同様に、誘導加熱方式と熱伝導方式とに大別される。
【0086】
まず、誘導加熱方式について説明する。増幅反応処理室65及び内部標準増幅反応処理室66の加熱方式として誘導加熱方式を採用する場合、
図11A、
図11B及び
図11Cに示すように、導電性を有する導電部材80を用いる。
図11Aに示す例では、増幅反応処理室65の外面部を画定する第5筒体11Eの内周面と、内部標準増幅反応処理室66の外面部を画定する第6筒体11Fの内周面とに、導電部材80が取り付けられている。
図11Bに示す例では、第1軸体21の第1内部空洞部216における第2凹部213及び第3凹部214に対応する領域部分に、導電部材80が配設されている。
図11Cに示す例では、第1軸体21の第1内部空洞部216及び第2軸体22の第2内部空洞部224に、棒状の導電部材80が挿入される。そして、検査用構造体1がセットされる検査装置には、増幅反応処理室65及び内部標準増幅反応処理室66と対向するように誘導加熱部が付設されている。これにより、増幅反応処理室65及び内部標準増幅反応処理室66における核酸増幅反応を、誘導加熱部による導電部材80の誘導加熱下で行うことができる。
【0087】
次に、熱伝導方式について説明する。増幅反応処理室65及び内部標準増幅反応処理室66の加熱方式として熱伝導方式を採用する場合、
図11Dに示すように、温度調整部81Aを備えた加熱部材81を用いる。
図11Dに示す例では、第1軸体21の第1内部空洞部216及び第2軸体22の第2内部空洞部224に、棒状の加熱部材81が挿入される。加熱部材81の温度調整部81Aから発せられた熱は、第1軸体21を介して増幅反応処理室65及び内部標準増幅反応処理室66に伝導される。これにより、増幅反応処理室65及び内部標準増幅反応処理室66における核酸増幅反応を、温度調整部81Aから発せられる熱による加熱下で行うことができる。
【0088】
また、熱伝導方式としては、
図11Eに示すように、熱伝導部材82を用いることもできる。熱伝導部材82は、増幅反応処理室65及び内部標準増幅反応処理室66と対向するように、筒本体11の外周面に取り付けられる。熱伝導部材82は、熱伝導性を有する材料により構成される。熱伝導部材82を構成する材料としては、例えばポリプロピレンやアクリル系樹脂等の合成樹脂、合成ゴムなどが挙げられる。この熱伝導部材82に対してペルチェ素子やセラミックヒーター等の加熱源から熱を与える。これにより、増幅反応処理室65及び内部標準増幅反応処理室66における核酸増幅反応を、加熱下で行うことができる。
【0089】
上述したように、増幅反応処理室65における核酸増幅反応により生成される第1増幅産物からは、第1プライマーの蛍光物質に由来する蛍光が発せられる。また、内部標準増幅反応処理室66における核酸増幅反応により生成される第2増幅産物からは、第2プライマーの蛍光物質に由来する蛍光が発せられる。検査用構造体1を用いた遺伝子検査では、第1増幅産物から発せられる蛍光を、導光部70を通じて検出することにより、感染症起炎菌に由来する標的核酸の存否が判定される。このとき、第2増幅産物から発せられる蛍光の検出結果は、リファレンスとして使用される。
【0090】
以上説明したように、本実施形態に係る検査用構造体1では、第1開口部111を介して検体が筒本体11内に注入されると、筒本体11内で軸部20を軸方向D1に移動させる操作により、検体を各処理室61〜66に移動させることができる。すなわち、検体の検査を行うに際して従来技術のように、回転式流体制御弁による連通状態の切換操作等の複雑な操作を行うことなく、軸部20を軸方向D1に移動させる操作によって、各処理室61〜66内にて検体の処理を実施することができる。従って、本実施形態に係る検査用構造体1は、検体の検査の操作性に優れたものとなる。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変形実施形態を採ることができる。
【0092】
増幅反応前処理工程において菌破砕処理室63から増幅反応前処理室64へ流体を移動させるとき、第1流体移動工程において増幅反応前処理室64から増幅反応処理室65へ流体を移動させるとき、あるいは、第2流体移動工程において増幅反応処理室65から内部標準増幅反応処理室66へ流体を移動させるときに、第1凹部212がシール部と対向する範囲内で軸部20を、軸方向D1に沿って往復移動させるようにしてもよい。これにより、流体の自由落下による移動速度を高めることができる。また、第1凹部212を介した流体の移動時の移動速度をより高めるために、第1凹部212の内周面に撥水性のコーティング処理を施してもよい。