(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-163531(P2018-163531A)
(43)【公開日】2018年10月18日
(54)【発明の名称】圧電スイッチ
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20180921BHJP
G06F 3/02 20060101ALI20180921BHJP
H01L 41/113 20060101ALI20180921BHJP
H01L 41/047 20060101ALI20180921BHJP
H03K 17/967 20060101ALI20180921BHJP
H03K 17/955 20060101ALI20180921BHJP
【FI】
G06F3/041 602
G06F3/02 E
G06F3/02 F
G06F3/041 580
H01L41/113
H01L41/047
H03K17/967 D
H03K17/955 U
G06F3/041 480
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-60461(P2017-60461)
(22)【出願日】2017年3月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095636
【弁理士】
【氏名又は名称】早崎 修
(72)【発明者】
【氏名】南部 元俊
【テーマコード(参考)】
5J050
【Fターム(参考)】
5J050AA25
5J050AA44
5J050CC09
5J050EE34
5J050EE39
5J050FF25
5J050FF29
5J050FF35
(57)【要約】 (修正有)
【課題】圧電スイッチを入力操作する前に、入力操作者へ入力操作しようとする圧電スイッチに関する情報を伝えて、誤操作を防止する圧電スイッチを提供する。
【解決手段】入力操作パネル20において、圧電体11の一面に配置される検出電極13を利用して、検出電極に表れる交流検出信号の受信レベルの変化から、入力操作前の検出電極に接近する入力操作体50を検出し、入力操作者へ、入力操作しようとする圧電スイッチ1に関する情報を伝える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定電位に設定される基準電極と、
前記定電位に対する電圧を検出する電圧検出回路が接続された検出電極と、
基準電極と検出電極との間に挟持された圧電体とからなる圧電素子を備え、
電圧検出回路が所定の第1閾値以上の電圧を検出することから、入力操作体が圧電素子を押圧する入力操作を検出する圧電スイッチであって、
前記入力操作体の浮遊容量に一部の電流が流れる交流検出信号を発信する発信手段と、
前記検出電極に表れる前記交流検出信号の受信レベルを検出する信号検出手段とを更に備え、
前記検出電極に接近する前記入力操作体の浮遊容量に応じて変化する前記交流検出信号の受信レベルから、前記入力操作前の前記検出電極に接近する前記入力操作体を検出することを特徴とする圧電スイッチ。
【請求項2】
前記圧電素子と絶縁して前記圧電素子の周囲に配設され、前記発信手段に接続して交流検出信号を発信する送信電極を更に備え、
前記信号検出手段が、所定の第2閾値以上の交流検出信号の受信レベルの低下を検出することから、前記入力操作前の前記検出電極に接近する前記入力操作体を検出することを特徴とする請求項1に記載の圧電スイッチ。
【請求項3】
前記基準電極と定電位体との間を接離する開閉手段を更に備え、
前記開閉手段は、前記入力操作前の前記検出電極に接近する前記入力操作体を検出した後、閉じ動作して前記基準電極を定電位に設定するとともに、閉じ動作している所定期間に、前記圧電素子を押圧する入力操作を検出しない場合に、開動作して前記基準電極と前記定電位体間を絶縁することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の圧電スイッチ。
【請求項4】
前記入力操作前の前記検出電極に接近する前記入力操作体を検出した際に、前記圧電スイッチを照光し、若しくは前記入力操作によって制御される制御内容を音声ガイドすることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の圧電スイッチ。
【請求項5】
前記入力操作を検出した際に、前記基準電極と前記検出電極間に駆動電圧を印加して前記圧電素子を撓ませることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の圧電スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電体の圧電正効果を利用して圧電素子を押圧する入力操作を検出する圧電スイッチに関し、更に詳しくは、入力操作前に圧電素子に接近する入力操作体も検出する圧電スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
基準電極と検出電極間に介在する圧電体を歪ませると、基準電極と検出電極間に電圧が発生する圧電正効果を利用し、圧電素子を押圧する入力操作を検出する圧電スイッチは、入力操作面の材質が制約されず、静電容量式タッチパネルのように水滴や埃が介在して入力操作を誤検出することがなく、更に、入力操作を検知した際に、圧電体の圧電逆効果(電歪効果)を利用して圧電素子を振動させることにより入力操作者へクリック感をフィードバックすることが可能であるとの理由から近年カーナビゲーション装置などの種々の電気機器の入力デバイスとして注目されている。
【0003】
また、他の入力デバイスとして、入力操作面に配置する検出電極と入力操作面に接近する指などの入力操作体の間の静電容量が検出電極と入力操作体間の距離にほぼ反比例して増加することに着目し、検出電極と入力操作体間に流れる交流検出信号を発信し、検出電極と入力操作体間の静電容量に応じて検出電極に表れる交流検出信号の受信レベルの変化から、その検出電極に接近する入力操作体を検出する静電容量式タッチパネルが特許文献1で知られている。
【0004】
しかしながら、この静電容量式タッチパネルなどのタッチセンサは、非接触若しくは軽操作力で入力操作を行うことができる反面、タッチセンサへの入力操作感が得られず、また、タッチセンサ側で入力操作が検出されたことをタッチセンサの振動などで入力操作者へフィードバックすることもないので、入力操作者は、入力操作を行ったことを確認できずに繰り返して入力操作を行うことになる。そこで、圧電体の圧電逆効果による入力操作者へのフィードバックを目的として、静電容量式タッチパネルなどのタッチセンサの背面に圧電素子を配設した入力デバイス100が特許文献2で提案されている。この入力デバイス100は、
図3に示すように、タッチセンサー101への入力操作を制御部103が検出すると、圧電素子駆動部104から圧電素子102の両面に駆動電圧を加える駆動電圧波形の駆動信号が出力される。駆動電圧が加えられた圧電素子102は駆動電圧波形に応じて振動し、その振動がタッチセンサ101を介して入力操作者に伝達され、入力操作者は、入力操作が入力デバイス100において検出されたことを認識する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5257481号公報
【特許文献2】特許第5143881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の圧電スイッチは、その表面を覆う入力操作面の材質に制約がなく、入力操作面を平坦面とすることができるが、複数の圧電スイッチを入力操作面に配置した場合に、個々の圧電スイッチの入力操作位置がわかりづらく、意図しない圧電スイッチを誤操作してしまう恐れがある。例えば、カーナビゲーションシステムの入力デバイスとして圧電スイッチを用いた場合に、運転中のドライバーは、指先を近づけて入力操作を行う圧電スイッチを正確に目視確認できず、別の圧電スイッチを入力操作してしまうことがある。このような誤操作は、車内が暗い夜間の運転中により発生する。
【0007】
圧電スイッチが配置された入力操作面に入力操作を行った結果の制御内容を表示するにしても、上記の様に、入力操作位置を視認しながら入力操作を行うことができない場合があり、また、目の不自由な操作者には、所望の制御内容を目的とする圧電スイッチの入力操作できない。
【0008】
また、
図3に示す従来の入力デバイス100では、圧電素子102にタッチセンサ101を重ねた構造とするので、部品点数や組み立て工程が増加してコスト高となとともに、積層させた全体の高さが高くなり、薄型化が要求される電気機器には取付けることができないという問題がある。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、圧電スイッチに接近する入力操作体を検出し、圧電スイッチを入力操作する前に、入力操作者へ入力操作位置や入力操作による制御内容等の圧電スイッチに関する情報を伝えて、誤操作を防止する圧電スイッチを提供することを目的とする。
【0010】
また、圧電スイッチの一部の検出電極を、圧電スイッチに接近する入力操作体を検出する検出手段の一部に兼用し、部品点数が大幅に増加することなく、大きさも嵩張らない圧電スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、請求項1に記載の圧電スイッチは、定電位に設定される基準電極と、定電位に対する電圧を検出する電圧検出回路が接続された検出電極と、
基準電極と検出電極との間に挟持された圧電体とからなる圧電素子を備え、電圧検出回路が所定の第1閾値以上の電圧を検出することから、入力操作体が圧電素子を押圧する入力操作を検出する圧電スイッチであって、入力操作体の浮遊容量に一部の電流が流れる交流検出信号を発信する発信手段と、検出電極に表れる交流検出信号の受信レベルを検出する信号検出手段とを更に備え、検出電極に接近する入力操作体の浮遊容量に応じて変化する交流検出信号の受信レベルから、入力操作前の検出電極に接近する入力操作体を検出することを特徴とする。
【0012】
圧電スイッチを押圧する入力操作により圧電体を歪ませると、圧電正効果により圧電体を挟持する基準電極と検出電極間に電圧が発生し、所定の第1閾値以上の電圧が発生した場合に、圧電スイッチを押圧する入力操作があったものとしてこれを検出する。
【0013】
入力操作体の浮遊容量は、入力操作体がいずれかの検出電極に接近するほど増大し、両者の間のインピーダンスが低下するので、入力操作体を流れる交流検出信号も増大し、検出電極に表れる受信レベルはより大きく変化する。従って、信号検出手段が検出する受信レベルの変化量の増加から検出電極に接近する入力操作体を検出できる。
【0014】
検出電極に接近する入力操作体を、検出電極を用いて検出するので、圧電素子に入力操作体の接近を検出する為の構成を、圧電素子に積層させて加える必要がなく、圧電スイッチの厚みが増加しない。
【0015】
請求項2に記載の圧電スイッチは、圧電素子と絶縁して圧電素子の周囲に配設され、発信手段に接続して交流検出信号を発信する送信電極を更に備え、信号検出手段が、所定の第2閾値以上の交流検出信号の受信レベルの低下を検出することから、入力操作前の検出電極に接近する入力操作体を検出することを特徴とする。
【0016】
検出電極に入力操作体が接近すると、入力操作体の浮遊容量も増大し、発信手段から検出電極に流れる交流検出信号の一部が入力操作体を介してグランドに流れ、検出電極に表れる受信レベルが低下する。従って、信号検出手段が検出する受信レベルの低下量から検出電極に接近する入力操作体を検出できる。
【0017】
請求項3に記載の圧電スイッチは、基準電極と定電位体との間を接離する開閉手段を更に備え、開閉手段は、入力操作前の検出電極に接近する入力操作体を検出した後、閉じ動作して基準電極を定電位に設定するとともに、閉じ動作している所定期間に、圧電素子を押圧する入力操作を検出しない場合に、開動作して基準電極と定電位体間を絶縁することを特徴とする。
【0018】
検出電極に接近する入力操作体を検出した場合には、その後に、圧電素子を押圧する入力操作が行われると推定し、開閉手段は、閉じ動作して基準電極を定電位に設定し、入力操作体が圧電素子を押圧する入力操作を検出する。
【0019】
開閉手段が閉じ動作している所定期間に圧電素子を押圧する入力操作を検出しない場合には、圧電素子を押圧する入力操作は行われなず、入力操作体は圧電素子から離れていると推定し、開閉手段は、開動作して基準電極と定電位体間を絶縁し、基準電極と検出電極を等電位とする。その結果、入力操作体と検出電極間の静電容量に対して極めて大きい圧電体の静電容量が検出電極に交流検出信号が流れないので、圧電体の静電容量の影響を受けずに、信号検出手段が検出する交流検出信号の受信レベルから、高精度に入力操作前の検出電極に接近する入力操作体が検出される。
【0020】
請求項4に記載の圧電スイッチは、入力操作前の検出電極に接近する入力操作体を検出した際に、圧電スイッチを照光し、若しくは入力操作によって制御される制御内容を音声ガイドすることを特徴とする。
【0021】
入力操作体が圧電素子を押圧する入力操作前に、入力操作しようとする圧電スイッチが照光されたり、圧電スイッチを入力操作した結果の制御内容が音声ガイドされるので、圧電スイッチの操作位置を正確に目視確認できない操作者や操作位置を確認できない目の不自由な人に、入力操作しようとする圧電スイッチに関する情報が入力操作前に伝えられる。
【0022】
請求項5に記載の圧電スイッチは、入力操作を検出した際に、基準電極と検出電極間に駆動電圧を印加して圧電素子を撓ませることを特徴とする。
【0023】
圧電素子を押圧する入力操作が検出されると、駆動電圧が印加される圧電体の電歪効果によって圧電素子が撓み、その触感が圧電素子を押圧する入力操作体を介して操作者に伝達される。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明によれば、圧電スイッチを入力操作する前の入力操作体の接近を検出できるので、入力操作しようとする圧電スイッチについての情報を操作者へ伝えて、誤入力を防止できる。
【0025】
また、圧電素子の検出電極を利用して、入力操作前に検出電極に接近する入力操作体を検出するので、圧電スイッチ全体の高さを増加させずに、検出電極を押圧する前の入力操作体を検出できる。
【0026】
請求項2の発明によれば、相互容量方式で入力操作体の接近を検出するので、水滴等誘電率の高い物質が検出電極と入力操作体との間に介在し、その間の静電容量が増加しても、検出電極に表れる交流信号の受信レベルは減少せず、入力操作体の接近を精度よく検出できる。
【0027】
請求項3の発明によれば、検出電極に接続する大容量の圧電体の静電容量の影響を受けずに、検出電極と入力操作体間の微小な静電容量に応じて変化する交流検出信号の受信レベルから、入力操作前の検出電極に接近する入力操作体を検出できる。
【0028】
請求項4の発明によれば、圧電スイッチを入力操作する前に、入力操作の動作を検知できるので、バックライトで圧電スイッチを照光して誤操作を防止したり、目の不自由な人に入力操作前に音声ガイダンスで入力操作した結果の制御内容を伝えることができ、誤操作を防止できる。
【0029】
請求項5の発明によれば、圧電素子を押圧する入力操作が検出されると、圧電素子が撓んでその振動が入力操作者に伝達されるので、入力操作者は、圧電素子からのフィードバックにより圧電スイッチへの入力操作が検出されたことを確認でき、繰り返し入力操作を行うことがない。
【0030】
圧電素子に印加する駆動電圧の波形に応じて異なる振幅や周期で圧電素子を振動させることができので、圧電スイッチや圧電スイッチへの入力操作による制御内容毎に異なる振動を入力操作者へ伝えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本願発明の一実施の形態に係る圧電スイッチ1の圧電素子10が複数個取付けられた入力操作パネル20の部分省略縦断面図である。
【
図2】各圧電スイッチ1の構成を示す入力操作パネル20のブロック図である。
【
図3】従来の圧電スイッチ100の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の一実施の形態に係る圧電スイッチ1は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックからなる圧電体11の表面に金属板からなる検出電極13と背面に金属板からなる基準電極12が固着された圧電素子10を備えている。本実施の形態では、ドライバーが入力操作可能なインストルメントパネルの一部の
図1に示す入力操作パネル20に、カーナビゲーションシステムの各入力ソースに対応させた複数の圧電スイッチ1の圧電素子10が取付けられている。
【0033】
各圧電素子10は、入力操作パネル20のプリント配線基板21上に実装され、
図2に示すように、圧電体11の表面側の検出電極13は、プリント配線基板21の配線パターンを介してマイコン2の電圧検出回路4と信号検出回路6に接続し、背面側の基準電極12は、マイコン2によりコレクタとエミッタ間が開閉制御されるスイッチングトランジスタ3のコレクタに接続し、スイッチングトランジスタ3のエミッタは接地されている。
【0034】
マイコン2は、圧電素子10を押圧する圧電スイッチ1への入力操作を検出する入力操作検出モードと、圧電スイッチ1の検出電極13に接近する入力操作者の指等の入力操作体50を検出する静電容量検出モードのいずれかで動作し、入力操作検出モードでは、各検出電極13を電圧検出回路4に接続するとともに、スイッチングトランジスタ3のベースへスイッチングトランジスタ3を閉じ制御する制御信号を出力し、基準電極12を接地電位の定電位とする。また、静電容量検出モードでは、各検出電極13をゲインを調整した信号検出回路6に接続するとともに、スイッチングトランジスタ3のベースへスイッチングトランジスタ3を開制御する制御信号を出力し、基準電極12を接地から切り離し、検出電極13と等電位とする。
【0035】
マイコン2の動作モードは、入力操作を待機する待機状態においては静電容量検出モードで動作し、静電容量検出モードにおいて検出電極13に接近する入力操作体50を検出すると、入力操作検出モードに移行する。また、入力操作検出モードに移行してから、例えば数秒の時間が経過しても圧電スイッチ1への入力操作が検出されない場合には、入力操作体50が圧電スイッチ1の検出電極13から離れ、直後の入力操作がないものと推定して、静電容量検出モードに移行し、入力操作の待機状態に戻る。
【0036】
各圧電素子10の表面側の検出電極13は、可撓性の絶縁保護シート22で覆われ、絶縁保護シート22を介してその下方に配置された圧電素子10を押圧すると、基準電極12と検出電極13に挟まれた圧電体11が撓み、圧電体11の圧電正効果によって、基準電極12と検出電極13間に数ボルトの電圧が発生する。入力操作検出モードで動作するマイコン2の電圧検出回路4は、電圧検出回路4に接続する各検出電極13の接地電位に対する電圧を、例えば0.5Vに設定する第1閾値の電圧と比較し、第1閾値以上の電圧が検出された検出電極13の圧電素子10を入力操作者が指50等の入力操作体で押圧したものして、その圧電素子10への入力操作を検出する。マイコン2は、圧電素子10への入力操作を検出すると、その圧電素子10の入力操作に対応して設定される制御を実行する。ここでは、いずれかの圧電スイッチ1の圧電素子10を押圧する入力操作が検出されると、その圧電素子10に対応するカーナビゲーションシステムの入力ソースが選択制御されるものとする。
【0037】
圧電素子10が配置された絶縁保護シート22の表面の部位には、その圧電素子10を入力操作することによって選択される入力ソースが表示されている。例えば、
図1において最も左側の圧電スイッチ1aの圧電素子10aを覆う絶縁保護シート22の表面には「現在地」が、その隣の圧電スイッチ1bの圧電素子10bを覆う絶縁保護シート22の表面には「テレビ」が表示され、絶縁保護シート22の「現在地」が表示された表示部分をドライバーの指50で押し下げて、最も左側の圧電素子10aを押圧する入力操作を行うと、カーナビケーションシステムの図示しないモニターに現在地の地図が表示され、その隣の「テレビ」の表示部位を指50で押し下げて、圧電素子10bを押圧する入力操作を行うと、モニターにチューナーで受信したテレビの画像が表示される。
【0038】
マイコン2には、入力操作を検出した圧電素子10へ数100Vの電圧を加えて圧電素子10を変形させるための昇圧回路15が接続され、駆動信号生成回路16は、昇圧回路15により数100Vに昇圧された駆動電圧をもとに、圧電素子10の検出電極13と基準電極12間に印加される駆動信号を生成し、その出力側に接続された切替回路17へ出力する。マイコン2は、切替回路17を切り替え制御してその出力を入力操作を検出した圧電素子10に接続し、圧電素子10の検出電極13と基準電極12間に、駆動信号生成回路16で生成した駆動信号を印加する。これにより入力操作体50が押圧した圧電素子10が圧電逆効果で歪んで駆動信号波形に応じて振動し、その振動が絶縁保護シート22を介して圧電素子10を押圧する入力操作体50に伝わり、入力操作者に入力操作が検出されたことがフィードバックされる。
【0039】
また、静電容量検出モードで動作するマイコン2において、いずれかの検出電極13に接近する入力操作体50を検出するために、入力操作パネル20のプリント配線基板21の背面には、1枚の導電性金属板からなる送信電極14が固着されている。
図2に示すように、送信電極14は、マイコン2の静電容量検出モードで交流検出信号を発信する発信回路5に接続し、入力操作パネル20の背面から交流検出信号を発信する。
【0040】
送信電極14から発信される交流検出信号は、送信電極14と検出電極13との間の静電容量Cfを通して検出電極13に表れるので、マイコン2の信号検出回路6は、信号検出回路6に接続する各検出電極13に表れる交流検出信号の受信レベルを検出する。脚など一部が接地された入力操作者の指などの入力操作体50がいずれかの検出電極13に接近すると、入力操作体50の浮遊容量Cmが増加し、送信電極14から発信される交流検出信号の一部が入力操作体50に流れ、検出電極13に表れる交流検出信号の受信レベルが低下する。マイコン2の信号検出回路6は、マイコン2が静電容量検出モードで動作している間に、各検出電極13に表れる交流検出信号の受信レベルを監視し、いずれかの検出電極13から入力操作体50が接近していない待機時に比べて所定の第2閾値以上の受信レベルの低下を検出した場合に、その検出電極13に指等の入力操作体50が接近したものして、検出電極13に接近する入力操作体50を検出する。
【0041】
ここで、入力操作体50と検出電極13の間の空気が介在する静電容量Cmは、数百fF若しくは数pFの単位であるのに対して、検出電極13の背面側の基準電極12との間の圧電体11の静電容量は、その1000倍乃至1万倍のnF単位であるので、基準電極12を定電位とした場合には、微小な静電容量Cmの変化による交流検出信号の受信レベルの変化を検出することが極めて困難となる。そこで、マイコン2が静電容量検出モードで動作している間は、マイコン2からスイッチングトランジスタ3を開制御する制御信号を出力して、基準電極12を接地電位から絶縁し、圧電体11の静電容量が検出電極13に表れる交流検出信号の受信レベルに影響しないようにしている。
【0042】
マイコン2が、特定の検出電極13に接近する入力操作体50を検出すると、図示しない照光手段がその検出電極13が配置された絶縁保護シート22の部位を照光し、また、その検出電極13の圧電素子10を入力操作することによって制御される制御内容がスピーカー18から音声ガイドされる。これにより、入力操作者は、圧電スイッチ1を入力操作する前に、入力操作しようとする圧電スイッチ1の操作位置や制御内容を知ることができ、誤入力を防止できる。
【0043】
以下、上述のように構成された圧電スイッチ1の動作について、ドライバーが指50でカーナビゲーションシステムのモニターへ現在地の地図を表示させるために入力操作パネル1を入力操作する例で説明する。
【0044】
入力操作パネル1の圧電スイッチ1への入力操作が行われていない待機状態で、マイコン2は、静電容量検出モードで動作し、スイッチングトランジスタ3を開制御して基準電極12を接地から絶縁し、送信電極14から周期的に交流検出信号を出力するとともに、マイコン2の信号検出回路6は、交流検出信号の出力に同期して各圧電スイッチ1の検出電極13での交流検出信号の受信レベルを検出し、待機状態での受信レベルを図示しない記憶部で記憶する。
【0045】
入力操作パネル1の最も左側の圧電スイッチ1aを覆う絶縁保護シート22には、カーナビゲーションシステムの入力ソースとして現在地の地図を選択することを示す「現在地」が表示されているので、入力操作者であるドライバーは、入力操作パネル1の概ね左側へ指50を接近させる。これによって、
図2に示すように、指50に圧電スイッチ1aの検出電極13が接近して指50の浮遊容量が増加し、静電容量Cfを介して送信電極14から検出電極13に流れる交流検出信号の一部が指50の浮遊容量Cmを介して指50に流れ、指50で圧電素子10aを押圧操作する前に、圧電素子10aの検出電極13において検出される交流検出信号の受信レベルが待機状態での受信レベルに比べて第2閾値以上低下する。
【0046】
一方、指50から離れた他の圧電スイッチ1の検出電極13の交流検出信号の受信レベルは、指50の浮遊容量が増大しても影響を受けないので、待機状態での受信レベルに比べて第2閾値以上低下することがない。
【0047】
その結果、マイコン2の信号検出回路6は、圧電スイッチ1aの入力操作前に、圧電素子10aの検出電極13に接近する指50を検出し、圧電スイッチ1aを照光するとともに、圧電スイッチ1aを入力操作することによりモニターに現在地の地図が表示されることをスピーカー18から音声ガイドする。従って、ドライバーは、運転中に前方を見ながらであっても、指50で入力操作しようとする圧電スイッチ1aの操作位置と、指50を接近させた圧電スイッチ1aを入力操作すればモニターに現在地の地図が表示されることを確認できる。
【0048】
マイコン2が検出電極13に接近する指50を検出すると、静電容量検出モードから入力操作検出モードに移行し、スイッチングトランジスタ3を閉じ制御して全ての基準電極12を接地させて接地電位の定電位にするとともに、各検出電極13との接続を信号検出回路6からゲインを変えて電圧検出回路4に切り替える。
【0049】
圧電スイッチ1aの照光とスピーカー18からの音声ガイドによって、指50を接近させた圧電スイッチ1aが入力操作を意図した圧電スイッチ1aであると確認したドライバーは、更に指50をすすめて圧電スイッチ1aを押圧する。押圧により撓む圧電素子10aの圧電正効果により、電圧検出回路4は、圧電素子10aの検出電極13から、接地電位に対して第1閾値電圧を超える数Vの電圧を検出するので、これによりマイコン2は、圧電素子10aを押圧する圧電スイッチ1aの入力操作を検出する。
【0050】
マイコン2は、圧電スイッチ1aの入力操作を検出すると、圧電スイッチ1aについて関連づけられている制御命令である「現在地の地図を表示」を実行し、カーナビゲーションシステムのモニターへ現在地の地図を表示する。また、切替回路17の出力を、入力操作を検出した圧電スイッチ1aの圧電素子10aに切替制御し、駆動信号生成回路16で生成した駆動信号を圧電素子10aの検出電極13と基準電極12間に印加し、圧電素子10aを振動させる。圧電素子10aを押圧したドライバーは、指50から圧電素子10aの振動を受けて、圧電スイッチ1aへの入力操作が検出されたことを確認する。
【0051】
マイコン2は、圧電スイッチ1aの入力操作を検出した後も、クリック操作などの入力操作を検出する為に入力操作検出モードで動作するが、設定した数秒の時間が経過すると、再び待機状態で指50の接近を監視する静電容量検出モードに移行する。
【0052】
上述の実施の形態では、静電容量検出モードと入力操作検出モードで開閉制御される開閉手段を設けたが、圧電体11の静電容量に対して入力操作体50の浮遊容量が微小であっても、検出電極13に表れる交流検出信号の受信レベルの変化を検出できれば、必ずもし開閉手段を設けなくてもよい。
【0053】
また、開閉手段の一例としてバイポーラのスイッチングトランジスタ3で説明したが、電界効果トランジスタや半導体リレーやマイコン2のインピーダンスが異なるポート間での切替で基準電極12と定電位体との間を接離してもよい。
【0054】
また、圧電素子10の圧電体11は、応力を加えて分極が生じる誘電体であれば種々の材料を用いてもよく、また、圧電スイッチ1の圧電素子10の構造は図示したモノモルフの他、2枚の圧電素子を積層させたバイモルフや多数の圧電素子を積層させた積層型であってもよい。
【0055】
上述の実施の形態では、静電容量検出モードで、検出電極13と異なる送信電極14から交流検出信号を発信し、検出電極13に表れる交流検出信号の受信レベルの低下から入力操作体50の接近を検出する相互容量方式で説明したが、送信電極14を設けずに検出電極13から交流検出信号を発信し、検出電極13に表れる交流検出信号の受信レベルの上昇から入力操作体50の接近を検出する自己容量方式を採用してもよい。
【0056】
また、入力操作体50の接近を検出した際に、圧電スイッチ1への照光や音声ガイド以外の方法で入力操作体50を接近させた圧電スイッチ1に関する情報を入力操作者へ伝達してもよく、更に、入力操作体50の接近を検出した段階で、入力操作体50を接近させた圧電スイッチ1への入力操作があったものとして所定の処理を実行するようにしてもよい。
【0057】
また、圧電スイッチ1への入力操作を検出した後、その圧電スイッチ1に駆動電圧を加えて歪ませ、入力操作者へ入力操作が検出されたことをフィードバックしているが、フィードバックは行わない圧電スイッチにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、運転中や暗所で入力操作位置が目視確認できない場合にも入力操作を行う必要のある圧電スイッチに適している。
【符号の説明】
【0059】
1 圧電スイッチ
2 マイコン(発信手段)
3 スイッチングトランジスタ(開閉手段)
4 電圧検出回路
6 信号検出回路(信号検出手段)
10 圧電素子
11 圧電体
12 基準電極
13 検出電極
14 送信電極
18 スピーカー
50 入力操作体(指)