【解決手段】ワークWに対して予め設定された移動量で相対移動することにより切削加工を行う工具Tを備えた工作機械100を制御する上位制御装置C1及び制御装置C2であって、工具Tの移動量を補正するための補正量をオペレータにより入力する入力部30と、入力部30に入力された補正量により工具Tの移動量を補正する補正部62と、補正量とともに補正タイミング、及び補正量を入力したオペレータIDを履歴データ51として記憶する記憶部50C1と、記憶部50C1に記憶されたオペレータIDを選択する選択部63と、所定のタイミングにおいて、選択部63で選択されたオペレータIDの履歴データ51に基づく補正タイミング及び補正量で工具Tの移動量を自動補正する自動補正部64と、を備える。
前記自動補正部は、複数の前記履歴データから近似式を求め、この近似式に基づいて前記補正タイミング及び前記補正量を算出する演算部を備える、請求項1又は請求項2に記載の工作機械の制御装置。
前記選択部は、複数の前記履歴データの中から、同一の切削加工に関する前記履歴データを抽出して選択可能とする抽出部を備える、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の工作機械の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はこれに限定されない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きくまたは強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現している。以下の各図において、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系においては、水平面に平行な平面をYZ平面とする。このYZ平面において主軸7(対向軸8)の回転軸方向をZ方向と表記し、Z方向に直交する方向をY方向と表記する。また、YZ平面に垂直な方向はX方向と表記する。X軸は、Z方向に直交し、かつ、ワークに対する切削量を規定する方向である。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向であり、矢印の方向とは反対の方向が−方向であるとして説明する。
【0015】
本実施形態に係る工作機械100の制御装置について、図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る工作機械100の制御装置(上位制御装置C1及び制御装置C2)の一例を示す図である。
図1に示す工作機械100は、旋盤であり、要部について示している。
図1において、工作機械100の+Y側が正面であり、−Y側が背面である。また、工作機械100の±Z側は側面であり、Z方向は工作機械100の左右方向である。
【0016】
図1に示すように、工作機械100は、ベース1を有している。ベース1には、主軸台2が設けられる。主軸台2は、不図示の軸受け等により主軸7を回転軸AXまわりに回転可能な状態で支持している。なお、主軸台2は、ベース1に固定されるが、Z方向、X方向、Y方向等に移動可能に形成され、モータ等の駆動によって移動するものでもよい。主軸7の+Z側の端部には、チャック駆動部9が設けられている。チャック駆動部9は、複数の把握爪9aを主軸7の径方向に移動させてワークWを保持させる。
図1では、主軸7の回転軸AXまわりに等間隔に配置された3つの把握爪9aを用いてワークWを把持しているが、これに限定されず、把握爪9aの個数や形状は、ワークWを保持可能な任意の構成のものが用いられる。
【0017】
主軸7の−Z側の端部は主軸台2から−Z方向に突出しており、この端部にプーリ11が取り付けられる。プーリ11と、ベース1に設けられたモータ12の回転軸との間にはベルト13が掛け渡されている。これにより、主軸7は、モータ12の駆動によりベルト13を介して回転する。モータ12は、例えば、制御装置C2からの指示により回転数等が制御される。モータ12としては、例えば、トルク制御機構を備えたモータが用いられる。また、主軸7は、モータ12及びベルト13によって駆動されることに限定されず、モータ12の駆動を歯車列等で主軸7に伝達するものや、モータ12によって直接主軸7を回転させるものでもよい。
【0018】
ベース1にはZ方向に配置されたZ方向ガイド5が設けられる。Z方向ガイド5には、Z方向ガイド5に沿ってZ方向に移動可能なZ軸スライド17が設けられる。Z軸スライド17は、Z方向駆動系(移動装置)M1の駆動によりZ方向に移動し、所定位置で保持される。なお、Z方向駆動系M1は、例えば、電気モータや油圧等が用いられる。Z軸スライド17には、X方向ガイド18が形成される。また、Z軸スライド17には、X方向ガイド18に沿って移動可能なX軸スライド15が設けられる。X軸スライド15は、X方向駆動系M2の駆動によりX方向に移動し、所定位置で保持される。なお、X方向駆動系M2は、例えば、電気モータや油圧等が用いられる。
【0019】
X軸スライド15には、Y方向ガイド16が形成される。また、X軸スライド15には、Y方向ガイド16に沿って移動可能なY軸スライド21が設けられる。Y軸スライド21は、Y方向駆動系M3の駆動によりY方向に移動し、所定位置で保持される。なお、Y方向駆動系M3は、例えば、電気モータや油圧等が用いられる。なお、上記のZ方向駆動系M1、X方向駆動系M2及びY方向駆動系M3は、制御装置C2によって制御される。
【0020】
Y軸スライド21には、タレット23が取り付けられている。タレット23は、回転駆動装置の駆動によりZ方向を軸として回転可能となっている。タレット23は、ワークWの上方(+X側)に配置される。タレット23の周面には、ホルダプレート24が設けられている。ホルダプレート24には、工具Tを保持するホルダ25が取り付けられている。従って、タレット23を回転させることにより、所望の工具Tが選択される。タレット23に保持される工具Tは交換可能である。工具Tとしては、ワークWに対して切削加工を施すバイト等の他、ドリルやエンドミル等の回転工具が用いられてもよい。
【0021】
図1に示す工作機械100では、工具Tが、ワークWに対して上方(+X側)に配置されているが、これに代えて、ワークWに対して下方(−X側)に配置されてもよいし、ワークWに対してY方向に配置されてもよい。また、工具TによるワークWへの切削は、制御装置C2の後述する加工制御部61によって、上記したZ方向駆動系M1、X方向駆動系M2及びY方向駆動系M3を駆動させ、ワークWに対して工具Tを移動させることにより行う。また、
図1では刃物台としてタレット23が用いられるが、これに限定されず、くし歯状の刃物台が用いられてもよい。
【0022】
制御装置C2は、工作機械100の各部を統括的に制御する。制御装置C2は、例えば、コンピュータが用いられ、数値制御装置及びプログラマブルコントローラを有する。制御装置C2は、入力部30と、表示部40と、記憶部50C2と、処理部60C2とを有している。制御装置C2は、上位制御装置C1との間で有線または無線による通信が可能である。上位制御装置C1は、例えば、複数の工作機械100を統括制御し、各工作機械100に対して加工プログラムの供給、あるいは加工指示等を行う。上位制御装置C1は、例えば、コンピュータが用いられ、記憶部50C1と、処理部60C1とを有している。
【0023】
入力部30は、例えば、操作パネル、タッチパネル、キーボード、マウス、トラックボールなどが用いられる。入力部30は、オペレータからの入力を検出し、入力された情報を制御装置C2の処理部60C2又は上位制御装置C1の処理部60C1に供給する。例えば、入力部30は、ワークWの加工プログラム、ワークWの素材、工具Tの種類等の加工条件や、オペレータを識別するためのオペレータIDをオペレータの操作により入力する。なお、オペレータIDは、入力部30からの入力に代えて、各オペレータが所有するRFIDから受信して取得してもよい。また、オペレータIDは、バーコードなどの一次元コード、または二次元コードなどを読み込んで取得してもよい。
【0024】
また、入力部30は、工具Tの移動量を補正するための補正量をオペレータの操作により入力する。予め記憶部50C2に記憶された加工プログラムに基づいて、加工制御部61により工具Tを移動させる場合であっても、加工後のワークWが所望の寸法から外れる場合がある。例えば、複数のワークWに対して連続して切削加工を行う場合、工具Tに備える刃先(チップ)の摩耗、あるいは熱による刃先の位置の変動によって、加工後のワークWが所望の寸法から外れる場合がある。オペレータは、ワークWの寸法を計測することで、所望の寸法(公差内)から外れたかどうかを確認する。このため、オペレータは、ワークWの寸法が所望の寸法から外れないように、工具Tの移動量、つまり刃先の移動(位置)に関する補正量及び補正タイミングを入力部30から入力し、刃先の移動を補正しながら切削加工を行う。
【0025】
表示部40は、例えば液晶ディスプレイなどであり、制御装置C2の処理部60C2又は上位制御装置C1の処理部60C1から供給されるデータあるいは画像を表示する。例えば、表示部40は、入力部30において加工条件を入力する場合、あるいは補正量を入力する場合には、入力用の画像等を表示させる。表示部40に表示させる画面のデータについては、予め記憶部50C2等に記憶されており、画面内のいずれかが選択された場合に次に表示する画面などが記憶部50に記憶されている。
【0026】
制御装置C2の記憶部50C2は、入力部30により入力されたデータ、及び上位制御装置C1から供給されるデータの他に、処理部60C2により演算等の処理を行うためのプログラム及び各種データが記憶される。上位制御装置C1の記憶部50C1は、制御装置C2から送られたデータの他に、処理部60C1により演算等の処理を行うためのプログラム及び各種データが記憶される。記憶部50C1は、例えば、履歴データ51と、レベルデータ52とを記憶する。記憶部50C2は、例えば、加工プログラム53を記憶する。また、記憶部50C1は、後述する自動補正部64によって工具Tの移動量の補正を自動で行う場合、履歴データ51に基づいて新たに作成された補正タイミング及び補正量を記憶し、さらにこの補正タイミング及び補正量により工具Tの移動量を自動で補正することを実行させる制御プログラムを記憶する。
【0027】
履歴データ51は、上位制御装置C1の記憶部50C1に記憶されており、工具Tの補正量と、補正のタイミングと、補正量を入力したオペレータIDとを含む。これら工具Tの補正量、補正のタイミング、及びオペレータIDの各種情報については、入力部30において入力された内容が制御装置C2から送られて記憶される。また、複数の履歴データ51のそれぞれには、加工するワークWに関する情報、及び工具Tに関する情報、加工プログラムに関する情報も併せて記憶されてもよい。なお、オペレータIDについては、例えば、工作機械100を操作可能なオペレータの全員について、予めID情報を記憶部50C2等に記憶させておいてもよい。この場合、入力部30で入力したオペレータのID情報を選択して上位制御装置C1の記憶部50C1にオペレータIDとして記憶する。
【0028】
レベルデータ52は、上位制御装置C1の記憶部50C1に記憶されており、オペレータによる工具Tの移動量の補正に関するレベルについてのデータである。レベルデータ52は、工作機械100の操作、修理、メンテナンスなどの各スキルについてのレベル(習熟度、ランクともいう)に基づいて、オペレータ毎に予め設定されている。レベルは、スキルごとに設定される。また、レベルは、例えば、工作機械100の操作等の経験期間や操作回数等に基づいて自動で記憶部50C1に設定されてもよいし、他で認定されたレベルが記憶部50C1に供給されてもよい。
【0029】
加工プログラム53は、制御装置C2の記憶部50C2に記憶されており、工作機械100の各部を制御してワークWを切削加工するためのプログラムである。加工プログラム53は、加工条件を入力する画面等を表示部40に表示させるプログラムを含む。また、加工プログラム53は、主軸7を回転させるプログラム、把握爪9aを移動させるプログラム等を含む。また、加工プログラム53は、Z方向駆動系M1、X方向駆動系M2、Y方向駆動系M3を駆動するプログラム等を含み、このプログラムは、工具Tの刃先のX方向の位置(すなわちワークWに対する切込み量)を制御するプログラムを含んでもよい。
【0030】
上位制御装置C1の処理部60C1及び制御装置C2の処理部60C2は、記憶部50C1又は記憶部50C2に記憶された各種プログラム及び各種データに基づいて、各種の演算等の処理を行う。制御装置C2の処理部60C2は、加工制御部61と、補正部62とを有する。上位制御装置C1の処理部60C1は、選択部63と、自動補正部64とを有する。
【0031】
加工制御部61は、記憶部50C2に記憶される加工プログラム53を読み出して実行することにより、工作機械100によるワークWの加工を制御する。例えば、加工制御部61は、加工条件を入力する画面等を表示部40に表示させる。加工条件は、予め加工プログラム中に含まれているが、表示部40に加工条件を入力する画面を表示させることにより、加工プログラム中の一部を変更可能である。なお、図示しないが、ワークWを主軸7に対して受け渡すワーク搬送装置についても加工制御部61により制御してもよい。
【0032】
加工制御部61は、タレット23を回転させて工具Tを選択することができる。また、加工制御部61は、加工プログラムに従って把握爪9aを移動させ、主軸7を所定の回転速度で回転させる。また、加工制御部61は、Z方向駆動系M1、X方向駆動系M2及びY方向駆動系M3の駆動を制御する。加工制御部61は、例えば、ワークWと工具Tとの間のX方向の相対移動を制御する場合、主軸7の回転軸AXと工具Tの刃先とのX方向の距離を制御する。
【0033】
補正部62は、入力部30に入力された補正量により工具Tの移動量、つまり刃先の位置を補正する。補正部62は、加工プログラム53のうち工具Tの刃先のX方向の位置を制御するプログラムを実行することにより、入力された補正量に基づいて工具Tの刃先の位置を補正する。加工制御部61は、補正部62により設定された補正量及び補正タイミングに従って、X方向駆動系M2を駆動させる。すなわち、工具Tは、加工プログラム53により予め設定された移動量から補正されて移動する。
【0034】
選択部63は、履歴データ51を生成する際、入力部30の入力に基づいて、記憶部50C1に記憶された全部のオペレータIDの中から、以前に入力部30により補正量及び補正タイミングの入力を行ったオペレータのオペレータIDを選択する。選択部63は、複数のオペレータIDを制御装置C2に送って表示部40に表示させ、この複数のオペレータIDから入力部30により選択されることにより、特定のオペレータIDが選択されたことを取得する。オペレータIDの選択は、1つ(1名)であってもよいし複数(複数名)であってもよい。
【0035】
選択部63は、抽出部65を有する。抽出部65は、複数の履歴データ51の中から、同一の切削加工に関する履歴データ51を抽出して選択可能とする。すなわち、抽出部65は、複数の履歴データ51の中から、同一のワークW、同一の工具T、同一の加工プログラムなどから同一の切削加工に関する履歴データ51を抽出する。選択部63は、抽出部65によって抽出した履歴データ51に関するオペレータIDを制御装置C2に送って表示部40に表示させ、選択可能にする。これにより、同一でない切削加工に関する履歴データ51を選択可能としないので、作業を始めるオペレータに対して利便性を向上させることができる。
【0036】
自動補正部64は、所定のタイミングにおいて、選択部63で選択されたオペレータIDの履歴データ51に基づく補正タイミング及び補正量で工具Tの移動量(刃先のX方向の位置)を自動補正する。所定のタイミングとしては、例えば、工具Tが交換されて別の工具Tを使用する場合等が挙げられる。工具Tを交換することにより新たな補正が必要となるため、このタイミングで自動補正を行うことにより、工具Tの移動量を効率的に補正することができる。なお、所定のタイミングとしては、上記に限定されず、他のタイミングであってもよい。
【0037】
自動補正部64は、演算部66を有する。演算部66は、複数の履歴データ51から近似式を求め、この近似式に基づいて補正タイミング及び補正量を算出する。演算部66は、例えば、最小二乗法あるいはその他の手法により近似式を求める。演算部66が近似式を求めることにより、自動補正部64は、以前の履歴データ51をそのまま用いるのではなく、近似式により算出された補正タイミング及び補正量で工具Tの移動量を補正することができる。これにより、効率よく高精度な自動補正を行うことができる。制御装置C2の加工制御部61は、上位制御装置C1の自動補正部64により算出された補正量及び補正タイミングが供給され、この補正量及び補正タイミングに従って、X方向駆動系M2を駆動させる。すなわち、工具Tは、加工プログラム53により予め設定された移動量から補正されて移動する。
【0038】
また、自動補正部64は、選択部63で選択されたオペレータIDの履歴データ51の値と、この値から求められた近似式をグラフ形式で制御装置C2の表示部40に表示させてもよい。作業を始めるオペレータは、この表示(グラフ)を確認することにより、選択した履歴データ51の内容及び近似式を確認することができる。また、演算部66は、履歴データ51の中から一部の値を除外して近似式を求めてもよい。例えば、表示部40に表示された複数の履歴データ51の値のうち、一部を入力部30により選択することにより、この値を用いない近似式を求めることができる。新たな近似式は表示部40に表示される。この場合、以前の近似式を併せて表示部40に表示し、変更部分を判りやすくしてもよい。
【0039】
このように、履歴データ51の中から一部の値を除外して近似式を求めることができるので、近似式を求める際に参考にすべきでない値を除外できるので、精度よく近似式を求めることができる。近似式を求める際に参考にすべきでない値は、例えば、当初の近似式から離れた値、あるいは作業を始めるオペレータが参酌すべきでないと判断した値などを近似式から除くことができる。
【0040】
図2は、表示部40に表示される操作画面の一例を示す図である。なお、
図2では、入力部30としてタッチパネルが表示部40に設けられた場合を例に挙げて説明するが、この入力部30はタッチパネルに限定されない。
図2に示すように、操作画面41は、ワークWの種類を選択するワーク選択ボタン41aと、切削加工に用いる工具Tを選択する工具選択ボタン41bと、切削加工を行う加工プログラムを選択する加工プログラム選択ボタン41cと、補正量を入力する補正値入力ボタン41dとを含む。これらのボタンはタッチパネルにより選択可能である。ただし、操作画面41は一例であって、他のボタンを含んでもよいし、一部のボタンがなくてもよい。また、各ボタンの表示名も図示した形態に限定されない。
【0041】
作業を始めるオペレータは、ワーク選択ボタン41aを押して、これから切削加工を始めるワークWを特定する。ワークWの特定は、記憶部50C1又は記憶部50C2に記憶されている複数のワークWの中から該当するワークWを選択してもよいし、予め設定されているワークWの品番あるいは型番等を入力部30により入力してもよい。また、オペレータは、工具選択ボタン41bを押して、使用する工具Tを特定する。工具Tの特定は、記憶部50C1又は記憶部50C2に記憶されている複数の工具Tの中から該当する工具Tを選択してもよいし、予め設定されている工具Tの品番または型番等を入力部30により入力してもよい。
【0042】
また、オペレータは、加工プログラム選択ボタン41cを押して、ワークWに対する加工内容を特定する。加工プログラムの特定は、記憶部50C2等に記憶されている複数の加工プログラム53の中から該当する加工プログラム53をオペレータが選択してもよいし、先に特定したワークW及び工具Tに基づいて自動的に選択されてもよい。また、オペレータは、先に選択した加工プログラム53により予め設定された工具Tの移動量を補正する場合に、補正値入力ボタン41dを押して、補正量及び補正タイミングを入力部30により入力する。
【0043】
図3は、表示部40に表示される操作画面の一例を示す図であり、
図2において補正値入力ボタン41dが押された場合の表示画面を示す図である。なお、
図3においても、入力部30としてタッチパネルが表示部40に設けられた場合を例に挙げて説明するが、この入力部30はタッチパネルに限定されない。
【0044】
図3に示すように、操作画面42は、オペレータIDを入力するためのオペレータID入力ボタン42aと、補正タイミングを入力するための補正タイミング入力ボタン42bと、補正量を入力するための補正量入力ボタン42cと、履歴データ51を参照するための履歴データ参照ボタン42dとを含む。オペレータID入力ボタン42aは、補正値を入力したオペレータを特定するボタンである。オペレータが、オペレータID入力ボタン42aを押すことにより、例えば、オペレータが所持するRFIDからオペレータIDが自動で取り込まれる。なお、オペレータIDを、入力部30からオペレータが入力してもよいし、一次元コード又は二次元コードを読み込ませてもよい。
【0045】
補正タイミング入力ボタン42bは、補正するタイミングを特定する。例えば、切削加工するワークWの個数で設定されてもよいし、工具Tの延べ使用時間で設定されてもよい。補正量入力ボタン42cは、上記した補正タイミングで補正する量を特定する。補正量は、補正タイミングごとに、例えば、向きと長さとで設定され、−X方向に1.0mmなどに設定される。
【0046】
この操作画面42において補正タイミング及び補正量を特定する作業は、各オペレータの経験等に基づく場合が多く、例えば、熟練度の高いオペレータにより実施されるマニュアル作業である。操作画面42において入力された内容は、オペレータIDとともに上位制御装置C1に送られ、履歴データ51として記憶部50C1に記憶される。このとき、操作画面41において特定されたワークW、工具T、加工プログラムについても履歴データ51の一部として記録される。一方、補正タイミング及び補正量をマニュアルで特定することに代えて、以前の履歴データ51を用いることができる。オペレータは、履歴データ参照ボタン42dを押すことにより、以前の履歴データ51を利用することができる。
【0047】
図4は、表示部40に表示される操作画面の一例を示す図であり、
図3において履歴データ参照ボタン42dが押された場合の表示画面を示す図である。なお、
図4においても、入力部30としてタッチパネルが表示部40に設けられた場合を例に挙げて説明するが、この入力部30はタッチパネルに限定されない。
【0048】
図4に示すように、操作画面43は、オペレータ表示欄43aと、オペレータ指定ボタン43bとを含む。オペレータ表示欄43aは、今回の切削加工と同一の切削加工を行った際の履歴データ51の中から、工具Tの補正を行ったオペレータと、このオペレータが入力した補正の数とを対応させて表示させる。なお、
図2に示す操作画面41を操作する際に選択されたワークWの種類、工具Tの種類、及び加工プログラム53の種類がそれぞれ同一である場合、今回の切削加工と同一の切削加工であると抽出部65(
図1参照)により判断される。
【0049】
オペレータ表示欄43aは、オペレータID選択部43cと、オペレータID表示部43dと、補正情報表示部43eとを含む。オペレータID選択部43cは、今回の切削加工で自動補正を行う際に参照するオペレータIDを選択する。オペレータID選択部43cは、1人以上のオペレータIDを個別に選択可能となっている。オペレータID選択部43cは、クリアボタン43fを含む。クリアボタン43fは、例えば、選択したオペレータIDをすべてキャンセルする。オペレータID表示部43dは、オペレータの氏名等、オペレータを識別するための識別情報を表示する。オペレータID表示部43dは、氏名等の表示に代えて社員番号など、他の記号、略号などが表示されてもよい。
【0050】
補正情報表示部43eは、オペレータが行った工具Tの補正についての情報を表示する。
図4においては、オペレータが行った工具Tの補正に関するデータ番号が並べて表示されている。すなわち、補正情報表示部43eに「1、3、4」と表示される場合、このオペレータIDについては1番と3番と4番の履歴データ51があることを表示している。ただし、補正情報表示部43eにおける表示は図示の形態に限定されず、例えば、データの数などが表示されてもよい。
【0051】
オペレータID選択部43cにより1人以上のオペレータIDを選択した後、オペレータ指定ボタン43bを押すことにより、演算部66(
図1参照)は、選択したオペレータIDに関する履歴データ51に基づいて近似式を求め、この近似式から補正タイミング及び補正量を算出する。なお近似式を求める手法、補正タイミング及び補正量を算出する詳細については後述する。
【0052】
次に、以上のように構成された工作機械100の制御装置(上位制御装置C1及び制御装置C2)の動作をついて説明する。まず、加工対象であるワークWを主軸7に把持させる。ワークWを把持させた後、制御装置C2の加工制御部61は、加工プログラム53に従ってワークWの切削加工を行う。具体的には、モータ12を駆動して主軸7を回転させることにより、ワークWを回転させる。ワークWの回転数は、加工プログラムに応じて適宜設定される。加工制御部61は、工具Tの刃先がワークWの加工位置に対応するように、X方向駆動系M2によって工具TをX方向に移動させ、回転軸AXと刃先との間のX方向の距離を調整する。その後、工具Tの刃先をワークWの+Z側端部に向けて−Z方向に移動させる。刃先がワークWの−Z側端部に当たることで、ワークWの切削が行われる。
【0053】
最初のワークWの切削加工が終了した後、この最初のワークWの寸法を測定して、所望の寸法からのズレを求め、加工プログラム53に対して工具Tの初期位置に関する初期補正量を設定する。この初期補正量は、補正部62(
図1参照)に入力されることにより設定される。なお、初期補正量は、所望の寸法からのズレを0にする補正量であってもよいし、所望の寸法からのズレよりも大きな補正量であってもよい。また、この初期補正量についても履歴データ51を参酌してもよい。
【0054】
工具Tに対して初期補正量で補正した後、複数のワークWを連続して切削加工させるが、初期補正量を設定した加工プログラムに従って工具Tを移動させても、加工後のワークWが所望の寸法から外れる場合がある。例えば、工具Tの刃先の摩耗、あるいは熱による刃先の位置の変動によって、加工後のワークWが所望の寸法から外れる場合がある。このため、オペレータは、工具Tの移動量(刃先の位置)を補正しながら切削加工を行う。
【0055】
工作機械100は、複数のワークWを連続して切削加工を行っており、この切削加工に応じて工具Tの摩耗等が変化する。工作機械100は、不図示のローダなどから加工済みのワークWを連続して搬出する。オペレータは、搬出された加工済みのワークWの寸法を計測し、又は自動計測装置などによって計測された加工済みのワークWの寸法を確認する。オペレータによって加工済みのワークWを計測又は確認している際も、工作機械100によるワークWの切削加工が継続されており、計測又は確認したワークWを切削加工した工具Tの摩耗は進行している。オペレータは、自己の熟練度によりその摩耗進行度も考慮して工具Tの補正量を決定する。さらに、オペレータは、加工済みのワークWの寸法が公差内に収まりつつ、できるだけ補正回数が少なくなるように補正量を決定する。
【0056】
図5は、本実施形態に係る工作機械100の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図5に示すように、制御装置C2は、オペレータにより工具Tの移動量について補正が行われたか否かを判定する(ステップST01)。制御装置C2は、
図2に示す操作画面41において補正値入力ボタン41dが押されたか、あるいは、
図3に示す操作画面42において補正タイミング及び補正量が入力されたか否かを判定する。ステップST01において、制御装置C2は、入力部30において補正を行う旨の入力を検出しない場合(ステップST01のNO)、加工プログラム53により予め設定された移動量の工具TによってワークWを切断加工する(ステップST02)。なお、上記のように初期補正値が設定されている場合は、ステップST02において初期補正値をオフセット量として、予め設定された移動量の工具TによってワークWを切断加工する。
【0057】
また、制御装置C2は、例えば、
図2に示す操作画面41で補正値入力ボタン41dが選択された場合等のように、入力部30において補正を行う旨の入力を検出した場合には、補正を行うと判定する(ステップST01のYES)。この場合、制御装置C2は、履歴データ51を利用するか否かの判定を行う(ステップST03)。
【0058】
ステップST03において、制御装置C2は、例えば、
図3の操作画面42で補正タイミング入力ボタン42b又は補正量入力ボタン42cが選択された場合等のように、入力部30において履歴データ51を利用しないことを検出した場合(ステップST03のNO)には、履歴データ51を利用せずに補正を行うと判定する。オペレータは、
図3の操作画面42から、工具Tの補正量及び補正タイミングを入力部30から補正部62(
図1参照)に入力する(ステップST04)。ステップST04において、制御装置C2は、オペレータにより工具Tの補正量及び補正タイミングが補正部62に入力されたことを確認する。
【0059】
オペレータにより補正量及び補正タイミングを入力した後、制御装置C2(補正部62)は、入力された補正量及び補正タイミングと、入力したオペレータのオペレータIDとを上肢制御装置C1に送る。上位制御装置C1は、送られた補正量及び補正タイミングと、オペレータIDとを履歴データ51として記憶部50C1に記憶させる(ステップST05)。制御装置C2の加工制御部61(
図1参照)は、補正部62に入力された補正量及び補正タイミングに基づいて工具Tの移動量を補正し、ワークWを切削加工する(ステップST06)。
【0060】
一方、ステップST03において、制御装置C2は、例えば、
図3の操作画面42で履歴データ参照ボタン42dが選択された場合等のように、入力部30において履歴データ51を利用する旨の入力を検出した場合、履歴データ51を利用した補正を行うと判定する(ステップST03のYES)。この場合、ステップST03の判定結果により、上位制御装置C1は、自動補正部64により、履歴データ51を利用した自動補正を実行させる(ステップST07)。
【0061】
図6は、ステップST07の処理を詳細に示すフローチャートである。
図6に示すように、選択部63の抽出部65は、
図2の操作画面41においてオペレータが入力したワークW、工具T、及び加工プログラムに基づいて、上位制御装置C1の記憶部50C1に記憶されている複数の履歴データ51の中から、同一の切削加工における履歴データ51を抽出する(ステップST71)。ステップST71において、抽出部65は、オペレータが入力したワークW、工具T、及び加工プログラムの全てが同一であることを同一の切削加工としているが、これに限定されず、ワークW、工具T、及び加工プログラムの1つ又は2つが異なる場合も同一の切削加工としてもよいし、類似するワークW、類似する工具T、及び類似する加工プログラムであっても同一の切削加工としてもよい。
【0062】
次に、オペレータは、抽出部65により抽出された履歴データ51に関するオペレータIDを選択する(ステップST72)。ステップST72において、自動補正部64は、例えば、
図4に示す操作画面43において、オペレータによりオペレータID選択部43cの少なくとも1つが選択された後、オペレータ指定ボタン43bが押された場合、オペレータによりオペレータIDが選択されたことを確認する。
【0063】
次に、演算部66は、選択されたオペレータにおける履歴データ51に基づいて近似式を求める(ステップST73)。
図7は、演算部66により求めた近似式の一例を示すグラフである。
図7の縦軸は補正量を示し、横軸は工具Tの残寿命を示している。残寿命は、ワークWを切削可能な個数を示している。ステップST73において、演算部66は、
図7に示すように履歴データ51ごとに補正のタイミング及び補正量をグラフ内にプロットする。演算部66は、プロットしたデータから、例えば最小二乗法などにより近似曲線(近似式)81を求める。
【0064】
また、演算部66は、
図7に示すグラフを表示部40に表示させるようにしてもよい。この場合、演算部66は、例えば、グラフ内の各プロットを除外可能としてもよい。例えば、演算部66は、オペレータが入力部30により除外対象となるプロットを選択させ、選択されたプロットを除外して近似式を求めてもよい。このように、履歴データ51の中から、参考にすべきでない値を容易に除外できるので、精度の高い近似式を求めることができる。また、演算部66は、例えば、工作機械100の動作が所定時間以上停止した後に切削加工を行った場合、稼働開始後の所定時間内に行った補正に関する値を自動的に除外してもよい。新たな近似式を求めた場合、表示部40には前の近似曲線81と合わせて新たな近似曲線(近似式)を表示させてもよい。また、演算部66は、近似式を求める際に、特定の履歴データ51、または特定のオペレータIDに関する履歴データ51に対して重み付けして近似式を求めてもよい。
【0065】
次に、演算部66は、近似曲線81に基づいて補正のタイミング及び補正量を設定する(ステップST74)。ステップST74において、演算部66は、所定の条件に基づいて補正のタイミング及び補正量を設定する。例えば、
図7に示すように、補正量N1〜N4(例えば、単位mmなど)を一定値Nとして、近似曲線81から一定値Nの補正量で補正を行うための各補正タイミング(例えば、工具残寿命540回など)を近似曲線81に基づいてそれぞれ算出してもよい。一定値Nは、例えば、最初の補正を示すプロット群Aから統計処理して補正タイミングを算出し、その補正タイミングから求められる補正量N1を上記した一定値Nとしてもよい。プロット群Aの統計処理としては、平均値、最頻値、中央値、などの算出が用いられる。
【0066】
また、演算部66は、補正量N1〜N4を一定値Nとすることに限定されず、適宜任意の補正量に設定することができる。例えば、各補正量N1〜N4を予め設定し、この補正量N1〜N4を実施する補正タイミングを近似曲線81から求めてもよい。また、最初に補正タイミングを設定して、その補正タイミングで必要な補正量N1等を近似曲線81から算出してもよい。なお、上記した補正量及び補正のタイミングの算出方法は一例であり、他の算出方法により補正量及び補正のタイミングを算出してもよい。また、
図7では補正タイミングが4回である例を示しているが、補正タイミングが4回より少なくてもよいし、4回より多くてもよい。
【0067】
演算部66により補正量及び補正のタイミングを算出した後、自動補正部64は、ステップST74において設定した補正のタイミング及び補正量を制御装置C2に供給する。制御装置C2の加工制御部61は、供給された補正のタイミング及び補正量に基づいて工具Tの移動量を補正し、ワークWを切削加工する(ステップST75)。すなわち、演算部66で算出した補正量及び補正のタイミングにより、工具Tの移動量が自動で補正される。これにより、複数のワークWに対して連続して切削加工を実施する。
【0068】
このように、本実施形態に係る工作機械100の制御装置又は制御方法によれば、作業を開始するオペレータがオペレータIDを選択することにより、そのオペレータIDの履歴データ51に基づいて補正タイミング及び補正量を求め、工具Tの移動量を自動補正する。従って、習熟度の高いオペレータが行った操作を選択することにより、加工効率のよい補正タイミング及び補正量を容易に実行することができ、工作機械100を操作するオペレータの習熟度が低い場合でも、オペレータの負担軽減を図りつつ、加工効率を向上させることができる。
【0069】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上述した説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、上記した実施形態では、操作画面43のオペレータ表示欄43aが、オペレータID選択部43cと、オペレータID表示部43dと、補正情報表示部43eとを含む場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
【0070】
図8は、表示部40に表示される操作画面の他の例を示す図である。
図8に示すように、操作画面44は、オペレータ表示欄43aと、オペレータ指定ボタン43bとを含む。オペレータ表示欄43aは、オペレータID選択部43cと、オペレータID表示部43dと、補正情報表示部43eと、レベル情報表示部43gとを含む。レベル情報表示部43gを除いて
図4に示す操作画面43と同様であるため、各部の説明を省略する。
【0071】
レベル情報表示部43gは、各オペレータにおけるレベルを表示する。レベルは、この切削加工において補正量及び補正タイミングを設定するスキルの熟練度を示しており、例えば、上位制御装置C1の記憶部50C1に記憶されており、制御装置C2に供給される。このレベルは、
図1に示すように、オペレータIDと関連付けられてレベルデータ52として記憶部50C1に記憶されている。選択部63の抽出部65がオペレータID(履歴データ51)を抽出する際に、このオペレータIDに関するレベルデータ52が読み出されて操作画面44に表示される。
【0072】
このレベルの表示によって、オペレータが履歴データ51(オペレータID)を選択する際の指標となるため、オペレータの負担を軽減することができる。なお、レベル情報表示部43gは操作画面44に常に表示されることに限定されず、例えば、操作画面44にレベル表示ボタンが設けられ、このレベル表示ボタンをオペレータが押したときにレベル情報表示部43gが操作画面44に表示されるようにしてもよい。
【0073】
また、上記した実施形態では、上位制御装置C1が選択部63(抽出部65を含む)、及び自動補正部64(演算部66を含む)を備える構成を例に挙げて説明しているが、この構成に限定されない。例えば、制御装置C2の処理部60C2が選択部63(抽出部65を含む)、及び自動補正部64(演算部66を含む)の一方又は双方を備える構成であってもよい。また、上記した実施形態では、上位制御装置C1の記憶部50C1が履歴データ51及びレベルデータ52を記憶する構成を例に挙げて説明しているが、この構成に限定されない。例えば、制御装置C2の記憶部50C2が履歴データ51及びレベルデータ52の一方又は双方を記憶する構成であってもよい。
【0074】
また、上記した実施形態において、上位制御装置C1及び制御装置C2は、例えばコンピュータシステムを含む。上位制御装置C1及び制御装置C2は、記憶部50C1又は記憶部50C2に記憶されている制御プログラムを読み出し、この制御プログラムに従って各種の処理を実行する。例えば、この制御プログラムは、ワークWに対して予め設定された移動量で相対移動することにより切削加工を行う工具Tを備えた工作機械100に対して、オペレータにより入力された補正量により工具Tの移動量を補正することと、補正量とともに補正タイミング、及び補正量を入力したオペレータIDを履歴データ51として記憶することと、記憶されたオペレータIDが選択されることにより、所定のタイミングにおいて、選択されたオペレータIDの履歴データ51に基づく補正タイミング及び補正量で工具Tの移動量を自動補正することと、を実行させる。この制御プログラムは、コンピュータシステムで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。