特開2018-163622(P2018-163622A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2018-163622製造不良原因の探索支援方法及び情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-163622(P2018-163622A)
(43)【公開日】2018年10月18日
(54)【発明の名称】製造不良原因の探索支援方法及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20180921BHJP
   G06F 17/30 20060101ALI20180921BHJP
【FI】
   G06Q50/04
   G06F17/30 180A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-61991(P2017-61991)
(22)【出願日】2017年3月27日
(71)【出願人】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(74)【代理人】
【識別番号】100149696
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】北村 章
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼本 絋希
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC03
(57)【要約】
【課題】製造不良の原因を高精度に推定し得る技術を提供する。
【解決手段】製造不良原因の探索支援方法は、解析対象不良に関して製造現場から採取可能な実測データを取得する工程と、製造現場の製造工程の一部となる解析対象不良に関連する工程範囲を選択する工程(S42又はS43)と、製造工程データベースの中から当該選択された工程範囲に関連付けられている装置又は処理パラメータを特定する工程(S44)と、実測データの中から、当該特定された装置又は処理パラメータに対応する一部の実測データを解析データとして抽出する工程(S45)と、その解析データを用いて確率推論モデルを構築する工程と、構築された確率推論モデルを用いて確率推論を実行する工程と、を含む。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解析対象不良に関して製造現場から採取可能な実測データであって、複数種のデータ群の集合を含む実測データを取得する工程と、
前記製造現場の製造工程の一部となる、前記解析対象不良に関連する工程範囲を選択する工程と、
前記製造工程を区分けし、各工程で動作する装置及び各工程の処理パラメータを各工程に関連付けて格納する製造工程データベースの中から、前記選択された工程範囲に関連付けられている装置又は処理パラメータを特定する工程と、
前記取得された実測データの中から、前記特定された装置又は処理パラメータに対応する一部の実測データを解析データとして抽出する工程と、
前記解析データを用いて、確率推論モデルを構築する工程と、
前記構築された確率推論モデルを用いて確率推論を実行する工程と、
を含む製造不良原因の探索支援方法。
【請求項2】
複数の製造理論の各々について、理論式から導出される理論データの変動に寄与する不良である関連不良及び該理論式を示す製造理論情報をそれぞれ格納する製造理論データベースを参照する工程と、
前記製造理論データベースの参照により、複数の前記製造理論情報の中から、前記解析対象不良と同一又は類似する前記関連不良を示す製造理論情報を特定する工程と、
前記特定された製造理論情報の前記理論式に、前記取得された実測データの中の、該理論式の構成変数として定義されているデータ種のデータ群を代入することに導出される理論データを解析データに加える工程と、
を更に含む請求項1に記載の製造不良原因の探索支援方法。
【請求項3】
前記解析対象不良の不良種別に該当する従来不良の事例ごとに教師あり学習を用いて構築された複数のパターン識別モデルに対して、前記取得された実測データの少なくとも一部を入力することにより、該パターン識別モデルごとに前記解析対象不良との類似度を取得する工程と、
前記取得された類似度に基づいて前記解析対象不良に関連するパターン識別モデルを特定する工程と、
前記特定されたパターン識別モデルの構築に用いられた従来不良の解析情報を取得する工程と、
を更に含み、
前記工程範囲を選択する工程では、前記取得された従来不良の解析情報で示される従来不良の原因となる製造工程を、前記解析対象不良に関連する工程範囲として選択する、
請求項1又は2に記載の製造不良原因の探索支援方法。
【請求項4】
前記工程範囲を選択する工程では、前記製造工程データベースに格納される製造工程の中から技術者により前記解析対象不良に関連する工程として選択された製造工程を前記解析対象不良に関連する工程範囲として選択する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の製造不良原因の探索支援方法。
【請求項5】
前記抽出された解析データに対して、教師あり機械学習により構築されるクラス分類モデルを用いて離散化処理を適用し、分類不可と判断されたデータ種のデータ群を解析データから除外する工程、
を更に含み、
前記確率推論モデルを構築する工程では、前記除外する工程適用後の解析データ用いて、前記確率推論モデルを構築する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の製造不良原因の探索支援方法。
【請求項6】
解析対象不良に関して製造現場から採取可能な実測データであって、複数種のデータ群の集合を含む実測データを取得する工程と、
複数の製造理論の各々について、理論式から導出される理論データの変動に寄与する不良である関連不良及び該理論式を示す製造理論情報をそれぞれ格納する製造理論データベースを参照する工程と、
前記製造理論データベースの参照により、複数の前記製造理論情報の中から、前記解析対象不良と同一又は類似する前記関連不良を示す製造理論情報を特定する工程と、
前記特定された製造理論情報の前記理論式に、前記取得された実測データの中の、該理論式の構成変数として定義されているデータ種のデータ群を代入することにより、理論データを導出する工程と、
前記取得された実測データの少なくとも一部及び前記導出された理論データを用いて、確率推論モデルを構築する工程と、
前記構築された確率推論モデルを用いて確率推論を実行する工程と、
を含む製造不良原因の探索支援方法。
【請求項7】
コンピュータプログラムを格納するメモリと、
前記コンピュータプログラムを読み出し実行する一以上のプロセッサと、
を備える情報処理装置において、
前記コンピュータプログラムを実行することにより、請求項1から6のいずれか一項に記載の製造不良原因の探索支援方法を実現する、
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、確率推論を用いて、製造不良の原因探索を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製造現場では、QC7つ道具等といった品質管理手法が用いられてきた。しかしながら、製品やサービスが高度化、複雑化するに伴い、不良や欠陥の現象と原因との関係が複雑化し、従来の手法では、十分な品質管理を行うことが難しい状況となってきている。
下記特許文献1から4にはそれぞれ欠陥や不良の原因を推定する手法が開示されている。
【0003】
特許文献1には、発生した欠陥と同じ過去の欠陥情報を抽出し、欠陥が起こり易い製造工程情報を抽出し、これら情報と予め格納される製造工程ごとに起こり易い欠陥情報を用いて、欠陥が発生した原因を推定する方法が開示されている。
特許文献2には、或る製造工程における検査装置等からセンシングデータを入力し、ユーザに或る工程における検査画像などの写真等を見せてユーザに所定の特徴量の有無を判断させ、入力されたデータとルールベース又はユーザ入出力部からのデータ及び知識ベースを用いて、推論エンジンが不良原因の推論を行う手法が開示されている。
【0004】
特許文献3には、基準製品の前又は後に処理された各製品の品質上の欠陥とその基準製品の品質上の欠陥との欠陥類似度を算出して、その欠陥類似度の高い製品が最も高い連続性をもって発生している工程を原因工程であると推定する手法が開示されている。
特許文献4には、不良検出部から各不良情報および製品番号データを製品毎に受信して、不良情報の組み合わせと不良の原因を示す不良原因情報とを対応付けたテーブルを参照することで、製品毎に、受信した各不良情報の組み合わせに対応する不良原因情報を読み出す手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−162703号公報
【特許文献2】特開2007−257285号公報
【特許文献3】特開2007−188471号公報
【特許文献4】特開2007−058690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の各手法には、製造不良の原因を探索する上での推定精度に改善の余地が残されている。例えば、特許文献2の手法は、製造現場から採取されるデータに対して確率推論を適用して不良原因を推定しているようであるが、製造現場から採取されるデータは大量となるため、推論精度に支障が出る可能性がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、製造不良の原因を高精度に推定し得る製造不良原因の探索支援技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の各側面では、上述した課題を解決するために、それぞれ以下の構成を採用する。
【0009】
第一の側面は製造不良原因の探索支援方法に関する。第一の側面に係る製造不良原因の探索支援方法は、解析対象不良に関して製造現場から採取可能な実測データであって、複数種のデータ群の集合を含む実測データを取得する工程と、当該製造現場の製造工程の一部となる、解析対象不良に関連する工程範囲を選択する工程と、製造工程を区分けし、各工程で動作する装置及び各工程の処理パラメータを各工程に関連付けて格納する製造工程データベースの中から、当該選択された工程範囲に関連付けられている装置又は処理パラメータを特定する工程と、取得された実測データの中から、当該特定された装置又は処理パラメータに対応する一部の実測データを解析データとして抽出する工程と、その解析データを用いて、確率推論モデルを構築する工程と、構築された確率推論モデルを用いて確率推論を実行する工程と、を含む。
【0010】
第二の側面も製造不良原因の探索支援方法に関する。第二の側面に係る製造不良原因の探索支援方法は、解析対象不良に関して製造現場から採取可能な実測データであって、複数種のデータ群の集合を含む実測データを取得する工程と、複数の製造理論の各々について、理論式から導出される理論データの変動に寄与する不良である関連不良及びその理論式を示す製造理論情報をそれぞれ格納する製造理論データベースを参照する工程と、製造理論データベースの参照により、複数の製造理論情報の中から、解析対象不良と同一又は類似する関連不良を示す製造理論情報を特定する工程と、特定された製造理論情報の理論式に、当該取得された実測データの中の、理論式の構成変数として定義されているデータ種のデータ群を代入することにより、理論データを導出する工程と、当該取得された実測データの少なくとも一部及び導出された理論データを用いて、確率推論モデルを構築する工程と、構築された確率推論モデルを用いて確率推論を実行する工程と、を含む。
【0011】
本発明の他の側面は、コンピュータプログラムを格納するメモリと、コンピュータプログラムを読み出し実行する一以上のプロセッサと、を備える情報処理装置に関する。この情報処理装置は、当該コンピュータプログラムを実行することにより、第一又は第二の側面における製造不良原因の探索支援方法を実現する。また、他の側面は、第一又は第二の側面における製造不良原因の探索支援方法を当該情報処理装置に実現させるコンピュータプログラムであってもよいし、そのようなコンピュータプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体であってもよい。この記録媒体は、非一時的な有形の媒体を含む。
【発明の効果】
【0012】
上記各側面によれば、製造不良の原因を高精度に推定し得る製造不良原因の探索支援技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る不良原因探索支援装置(支援装置)のハードウェア構成例を概念的に示す図である。
図2】不良オントロジデータベース(不良オントロジ)の例を示す図である。
図3】製造工程オントロジデータベース(製造工程オントロジ)の例を示す図である。
図4】製造理論オントロジデータベース(製造理論オントロジ)の例を示す図である。
図5】原因種別判別モデルの例を示す図である。
図6】本実施形態に係る不良原因探索支援装置(支援装置)の動作例を示すフローチャートである。
図7】工程(S30)の具体的内容を示すフローチャートである。
図8】原因種別判別モデルによる対象不良と従来不良事例との類似度の算出イメージを示す概念図である。
図9】工程(S40)の具体的内容を示すフローチャートである。
図10】製造工程オントロジにおける製造工程の選択イメージを示す概念図である。
図11】工程(S60)の具体的内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に挙げる実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態の構成に限定されない。
【0015】
以下、本実施形態に係る不良原因探索支援装置(以降、単に支援装置と略称する場合もある)及び不良原因探索支援方法(以降、単に支援方法と略称する場合もある)について説明する。
本実施形態に係る支援装置及び支援方法は、製造現場に設けられたセンサのような機器から得られる実測データ、製造ライン(製造現場)に関する技術者の知識、従来の不良に関する情報(知識)など多様な情報を利用して、製造される製品の不良の原因を高精度に探索することを支援する。
以下の説明では、説明を分かり易くするために、対象とする製造ラインとして、TFT(Thin Film Transistor)アレイの製造ラインを例に挙げる。但し、本実施形態に係る支援装置及び支援方法の対象となる製造ラインがそのような例に限定されるわけではない。
【0016】
〔不良原因探索支援装置の構成〕
図1は、本実施形態に係る不良原因探索支援装置(支援装置)10のハードウェア構成例を概念的に示す図である。支援装置10は、いわゆるコンピュータであり、図1に示されるようなハードウェア要素群を有する。支援装置10は、PC(Personal Computer)、タブレット端末のような汎用コンピュータであってもよいし、製造現場に導入される専用コンピュータであってもよい。
支援装置10は、図1に示されるように、CPU(Central Processing Unit)1、メモリ2、入出力インタフェース(I/F)ユニット3、通信ユニット4等を備える。CPU1は、他のハードウェア要素群とバス等の通信線により接続される。図1に例示されるハードウェア要素群は情報処理回路と総称することもできる。
【0017】
CPU1は、一般的なCPUであってもよいし、その代わりに又はそれに加えて、特定用途向け集積回路(ASIC)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等の少なくとも一つを含んでいてもよい。
メモリ2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置(ハードディスク等)である。
【0018】
入出力I/Fユニット3は、出力装置8、入力装置9等のユーザインタフェース装置と接続可能である。出力装置8は、表示装置、印刷装置等のような、何らかの形でユーザに対して出力を行う装置である。表示装置は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイのような、CPU1により処理された描画データに対応する画面を表示する装置である。入力装置9は、キーボード、マウス等のようなユーザ操作の入力を受け付ける装置である。表示装置及び入力装置9は一体化され、タッチパネルとして実現されてもよい。
【0019】
通信ユニット4は、無線通信又は有線通信を行い、他のコンピュータや機器と通信を行う。例えば、通信ユニット4は、無線通信又は有線通信により、製造ラインに設けられているセンサなどと直接通信を行うこともできる。また、通信ユニット4は、USB(Universal Serial Bus)ユニットを含んでもよい。通信ユニット4は、USBメモリ、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスクのような可搬型記録媒体とデータのやり取りを行うこともできる。通信ユニット4によりサポートされる通信方式は限定されない。
【0020】
支援装置10のハードウェア構成は、図1に示される例に制限されない。支援装置10は、図示されていない他のハードウェア要素を含んでもよいし、図示されている一以上のハードウェア要素を持たなくてもよい。各ハードウェア要素の数も、図1の例に制限されない。例えば、支援装置10は、複数のCPU1を有していてもよいし、複数のメモリ2、複数の入出力I/Fユニット3、複数の通信ユニット4を有していてもよい。
【0021】
支援装置10のメモリ2には、本実施形態に係る支援方法(支援処理)を実現する支援プログラム7が格納されている。支援プログラム7は、ROM(メモリ2)に予め格納されていてもよいし、CD(Compact Disc)、メモリカード等のような可搬型記録媒体やネットワーク上の他のコンピュータから通信ユニット4を介してインストールされ、メモリ2に格納されてもよい。
【0022】
〔不良原因探索支援装置の動作例/不良原因探索支援方法〕
支援装置10(CPU1)は、支援プログラム7をメモリ2からロードし実行することで、他のハードウェア要素と協働して、本実施形態に係る支援方法(情報処理フロー)を実現する。
本支援方法について説明する前に、まず、支援装置10(CPU1)が本支援方法を実現するにあたり利用するデータベースについて説明する。以下に例示される各データベースは、支援装置10のメモリ2に格納されていてもよいし、他のコンピュータ上に展開されていてもよい。後者の場合、支援装置10は、通信ユニット4を介してそのコンピュータと通信を行うことで、各データベースにアクセスすることができる。
【0023】
図2は、不良オントロジデータベース(以降、不良オントロジと略称する場合がある)の例を示す図である。
不良オントロジは、対象製造ラインで生じ得る全ての不良の情報を格納するデータベースであり、全ての不良の概念を不良の種別ごとに分類及び階層化した状態で不良情報を格納する。
本明細書において「オントロジデータベース」とは、或る情報群を体系化された状態(意味付けされた状態)で格納するデータベースを意味し、知識ベースや関係データベースなどと明確に区別して用いるわけではない。
【0024】
例えば、図2の例では、レイヤ1において不良の種別が定義されており、レイヤ2においてレイヤ1の不良種別に該当する不良が更に分類されており、レイヤ3(末端レイヤ)のプロパティにより末端概念となる不良定義の文字列(テキストデータ)が設定されている。具体的には、TFTアレイの製造ラインで生じ得る全ての不良を「ムラ不良」、「線不良」、「点不良」などの最上位種別で分類し、「ムラ不良」を更に「塊状ムラ」、「未定義ムラ」、「ギャップムラ」などと中位種別で分類し、「塊状ムラ」に属する末端概念の不良として「黒斑不良」及び「白斑不良」が定義されている。このような図2のツリー構造は、例えば、メタデータとして格納される。
本実施形態では、「不良種別」は不良オントロジのレイヤ1で分類される不良種別を意味するものとする。
【0025】
図3は、製造工程オントロジデータベース(以降、製造工程オントロジと略称する場合がある)の例を示す図である。
製造工程オントロジは、対象製造ラインの全ての製造工程の情報を格納するデータベースであり、全ての製造工程の概念を分類及び階層化した状態で格納する。
本実施形態では、製造工程オントロジは、図2に例示された不良オントロジの不良種別(レイヤ1)ごとに設けられ、レイヤ1に大工程が定義され、レイヤ2に中工程が定義され、レイヤ3に小工程(作業)が定義されている。レイヤ2には各工程で処理される部品(部品種別など)及び各工程で作動する製造装置の情報(装置IDなど)がプロパティにより設定されており、レイヤ3には各工程の処理パラメータ(処理温度や処理時間など)がプロパティにより設定されている。処理パラメータには、例えば、データ種の識別情報が設定される。不良種別ごとに設けられる各製造工程オントロジにおいて、製造工程概念の階層構造は同一となるが、プロパティの情報が相互に異なることになる。
具体的には、レイヤ1の「ゲート電極の製造工程」に関して、レイヤ2において「エッチング工程」、「初期洗浄工程」などが定義されており、その「エッチング工程」には対象部品のプロパティとして「ゲート配線」が設定されており、製造装置のプロパティとして「エッチング装置」が設定されている。また、レイヤ3の「エッチング工程」には「処理番号」及び「処理時間」が処理パラメータ(プロパティ)として設定されている。
製造工程オントロジは、対象となる製造ラインの製造工程を区分けし、各工程で動作する装置及び各工程の処理パラメータを各工程に関連付けて格納する製造工程データベースと呼ぶこともできる。各工程の処理パラメータは、各工程に関するパラメータであれば、その具体的内容は制限されない。
【0026】
図4は、製造理論オントロジデータベース(以降、製造理論オントロジと略称する場合がある)の例を示す図である。
製造理論オントロジデータベースは、対象製造ラインにおける全ての製造理論の情報を格納するデータベースであり、全ての製造理論の概念を分類及び階層化した状態で格納する。
図4の例では、レイヤ1において全ての製造理論が理論の種別ごとに分類されており、レイヤ2においてその理論種別に該当する製造理論情報が設定されている。図4の例では、製造理論情報には、理論式、その理論式の構成変数、及び関連不良が含まれている。関連不良プロパティには、理論式から導出される理論データの変動に寄与する不良であって不良オントロジの末端レイヤの不良の定義と紐づけ可能な情報が設定される。具体的には、膜厚の厚さAに関して、「黒斑不良」が関連不良プロパティに設定されており、その関連不良に影響を受ける理論データを導出する理論式及びその構成変数がそれぞれ設定されている。
製造理論オントロジは、複数の製造理論の各々について、理論式から導出される理論データの変動に寄与する不良である関連不良及びその理論式を示す製造理論情報をそれぞれ格納する製造理論データベースと呼ぶことができる。
【0027】
支援装置10は、このようなデータベースに加えて、不良オントロジの各不良種別にそれぞれ対応付けられた複数の原因種別判別モデルを更に用いる。この原因種別判別モデルについても、データベースと同様に、支援装置10のメモリ2上に実現されていてもよいし、他のコンピュータ上に実現されていてもよい。
図5は、原因種別判別モデルの例を示す図である。
各原因種別判別モデルは、図5に示されるように、不良オントロジの不良種別に対応付けられており、対応する不良種別に該当する従来不良の事例ごとに教師あり学習を用いて構築された一以上のパターン識別モデルをそれぞれ含んでいる。本実施形態では、パターン識別モデルとしてSVM(Support Vector Machine)モデルが用いられている。
【0028】
各SVMモデルは、実測データを入力して、対応する従来不良の事例に類似するか否かの2値を識別するパターン識別器である。各SVMモデルは、対応する不良種別の従来不良事例の原因解析時に採取された実測データ群を学習データとし、その実測データ群の不良発生パターンを学習する。このとき、実測データ群のデータ種の中で学習データとして利用されるデータ種は、その不良の原因と推定されたデータ種及び特徴選択法の一種であるReliefにより選択されたデータ種のみを用いることが望ましい。これにより、SVMモデルの識別精度を向上させることができる。なお、SVMモデルの構築方法には既存の方法が用いられればよい。
各SVMモデルについて、それを構築するために用いた従来不良事例の情報(実測データ、従来不良の解析情報(不良原因の製造工程や利用されたパラメータなど))が対応付けられて別途格納されている。このような従来不良事例の情報についても、支援装置10のメモリ2に格納されていてもよいし、他のコンピュータに格納されていてもよい。
【0029】
以下、本実施形態に係る支援方法について図6から図11を用いて説明する。
図6は、本実施形態に係る支援装置10の動作例を示すフローチャートであり、本支援方法を示す図である。支援装置10(CPU1)は、支援プログラム7をメモリ2からロードし実行することで、他のハードウェア要素と協働して、図6に例示される情報処理フローを実行する。
【0030】
CPU1は、不良オントロジにおいて対象不良を特定する(S10)。具体的には、CPU1は、解析対象とすべき不良(対象不良)として、不良オントロジの末端レイヤの不良定義を特定する。例えば、CPU1は、不良定義のリストを出力装置8に表示させ、ユーザが入力装置9の操作を通じてそのリストから選択された不良定義を特定してもよい。また、CPU1は、画像解析など既存の解析技術を用いて発生した不良を自動検出し、その検出結果を用いて当該不良定義を特定することもできる。工程(S10)における不良定義の特定方法は制限されない。
【0031】
更に、CPU1は、対象不良に関する実測データを取得する(S20)。
取得される実測データは、対象不良に関して製造現場(製造ライン)から採取可能であって、複数種のデータ群の集合を含む。ここで「製造ラインから採取可能」とは、製造ラインに設置された機器(センサなど)から取得可能であることのみならず、製造ラインに関する認識により人間自らが取得可能であることも含む。即ち、実測データには、人手により取得されたデータが含まれてもよい。
また、当該実測データは、複数種のデータ群を複数個含むと言い換えることができる。以降、実測データに含まれる複数種のデータ群の一塊をレコードと表記し、実測データに含まれる複数種のデータ群の個数をレコード数と表記する場合もある。
TFTアレイの場合、ガラス基板のシート単位に複数種(例えば、100種以上)のデータ群が複数シート分採取されたものが当該実測データとされる。即ち、一シート分のデータ群が一レコードに相当し、シート数がレコード数に相当する。本実施形態では、1シートから製造されたディスプレイの総数に対する不良品の割合としての不良率が一レコードごと(シート単位)に含められる。このように、実測データを形成するデータ単位は、不良率が設定可能であることが望ましい。不良率は、解析データの選別や後述する原因推定モデルに利用することで、不良原因の解析精度の向上を見込めるからである。
但し、実測データの構成はこのような例に制限されず、例えば、実測データの一レコードが製造ロット単位に設定され、実測データは複数の製造ロット分のレコード集合とされてもよい。
【0032】
また、CPU1による当該実測データの取得方法も制限されない。支援装置10に対象製造ラインのセンサなどが接続されている場合には、CPU1は、各種センサから当該実測データを取得することができる。また、CPU1は、他のコンピュータや可搬型記録媒体などから当該実測データを取得することもできる。更に、CPU1は、入力画面を出力装置8に表示させ、ユーザが入力装置9の操作を通じて入力した実測データを取得することもできる。
【0033】
続いて、CPU1は、工程(S10)で特定された対象不良に対応する原因種別判別モデルを用いて、対象不良に関連する従来不良の蓄積情報を抽出する(S30)。
対象不良に対応する原因種別判別モデルは、不良オントロジにおいて対象不良が属する不良種別(レイヤ1)に対応付けられた原因種別判別モデルである。対象不良に関連する従来不良(関連従来不良)は、対象不良と同一又は類似の従来不良である。
CPU1は、関連従来不良を特定し、その関連従来不良に対応付けられて格納されている(蓄積されている)従来不良事例の解析情報を抽出する。工程(S30)の具体的処理内容は後述する。
【0034】
CPU1は、製造工程オントロジを用いて、工程(S20)で取得された実測データの中から、解析データとすべき実測データを選択する(S40)。工程(S40)では、工程(S30)で抽出された関連従来不良の蓄積情報及び対象製造ラインの技術者の知識を用いて、不良原因解析のために有用な実測データが限定的に選択される。この選択手法により、原因推定モデル(確率推論モデル)の構築に用いる実測データを、多種かつ多量な高次元実測データから絞ることで、推定精度を向上させることができる。工程(S40)の具体的処理内容は後述する。
【0035】
更に、CPU1は、CFS(Correlation-based Feature Selection)法を用いて、工程(S20)で取得された実測データの中から、解析データとすべき実測データを選択する(S50)。
CFS法は、特徴選択法の一種であり、変数間の相関関係に基づく評価値Meritにより説明変数の部分集合を評価し、最良の部分集合を選択する手法である。評価値Meritは以下の(式1)で求めることができる。以下の(式2)は目的変数Yと説明変数Zとの相関関係SU()を示す。
本実施形態では、以下の式の目的変数が不良率であり、説明変数が実測データのデータ種(特徴量)である。つまり、CFS法により、目的変数(例えば、不良率)と相関が大きくかつ他の説明変数(データ種)と相関が小さい説明変数(データ種)を抽出することができる。
【数1】
【0036】
加えて、CPU1は、製造理論オントロジを用いて、対象不良に関連する理論データを解析データとして取得する(S60)。製造理論オントロジには理論式を含む製造理論情報が格納されているため、CPU1は、製造理論オントロジにおいて対象不良に関連する製造理論情報を特定し、その製造理論情報で示される理論式を用いて解析データとすべき理論データを導出することができる。工程(S60)の具体的処理内容は後述する。
【0037】
このように本実施形態では、工程(S20)で取得された実測データの中から工程(S40)及び工程(S50)で選択された実測データ、並びに工程(S60)で取得された理論データが原因推定モデル(確率推論モデル)構築のための解析データとされる。言い換えれば、対象不良に関連する従来不良に関する蓄積知識、対象製造ラインの技術者の知識、CFS法による統計的知識、及び対象製造ラインにおける普遍的知識に基づくデータを用いて、原因推定モデル(確率推論モデル)が構築される。これにより、高精度な不良原因解析を実現することができる。
【0038】
CPU1は、そのような解析データに対して、教師あり機械学習により構築されるクラス分類モデルを用いて離散化処理を適用する(S70)。本実施形態では、CPU1は、当該解析データに含まれる数値データを対象にして、クラス分類モデルの一種である決定木を用いて離散化処理を適用する。
決定木の構築手法としては、例えば、CART(Classification And Regression Trees)が用いられる。解析データの数値データx(説明変数)と不良率y(目的変数)とにより構成される2次元データD={(x、y)、・・・、(x、y)}を学習データとし、以下の(式3)及び(式4)で示されるジニ係数Qm(T)を評価指標とすることで、決定木が構築される。
【数2】
ジニ係数は、0〜1の値域を取り、分割後の隔たりが大きければ1に近づき、小さければ0に近づくため、ジニ係数を1から0に近付けていくように分岐して決定木を構築していく。
構築された決定木の分岐条件に従って、解析データの数値データを数値区間に変換することで、数値データの情報量を減らすことができる(離散化)。
【0039】
工程(S70)の離散化処理は、解析データのデータ種ごとに適用されるが、当該解析データには分割数「0」となるデータ種が存在する場合がある。CPU1は、そのように分類不可と判断されたデータ種の数値データをノイズとして解析データから除外することで、解析データをさらに厳選する(S80)。
【0040】
CPU1は、工程(S80)で厳選されかつ工程(S70)で離散化された解析データを用いて、確率推論モデルである原因推定モデルを構築する(S80)。本実施形態では、確率推論モデルとしてベイジアンネットワークが利用される。つまり、解析データに含まれる実測データ(不良率を含む)及び理論データをノードとするベイジアンネットワークによる原因推定モデルが構築される。
ベイジアンネットワークは、既知のとおり、各ノードがそれぞれ確率変数で表され、ノード間の因果関係が条件付確率で定量化されている有向循環グラフ構造により表される。ノード間の因果関係は、AIC(Akaike’s Information Criterion)を評価基準として欲張り法を用いた探索アルゴリズムにより決定することができる。確率推論モデルの構築手法には公知の様々な手法が利用可能であり、ここではその説明を割愛する。
【0041】
CPU1は、工程(S80)で構築された原因推定モデルを用いて確率推論を実行し、対象不良の原因を推定する(S90)。確率推論モデルを用いた具体的な原因推定方法は何ら制限されない。例えば、全ノードのノード値(解析データの値)ごとに不良率ノードのノード値が「異常値」となる確率(異常確率値AP(Abnormal Probability)が推論される。異常確率値を各ノードにおける不良に対する影響度として捉え、閾値以上の異常確率値を持つノードに着目する(絞り込む)。絞り込まれたノードの値と異常確率値との傾向を確認することで、不良の発生に影響を与えている可能性の高いノード(データ種)を推定することができる。ここで、理論データに対応するノードが推定された場合には、その理論データの理論式の構成変数であるデータ種に対応するノードに着目して、更なる推論を行うことで、深層原因の探索が可能となる。
【0042】
図7は、図6に示される工程(S30)の具体的内容を示すフローチャートである。
CPU1は、工程(S30)においてまず、対象不良の種別に対応する原因種別判別モデルを特定する(S31)。上述したとおり、原因種別判別モデルは、不良オントロジの不良種別(レイヤ1)ごとに対応付けられているため、CPU1は、不良オントロジにおいて対象不良が属する不良種別(レイヤ1)を特定し、その不良種別に対応付けられた原因種別判別モデルを特定する。
【0043】
次に、CPU1は、特定された原因種別判別モデルに含まれる複数のパターン識別モデル(本実施形態におけるSVMモデル)の各々に対して、取得された実測データの少なくとも一部を適用する(S32)。各パターン識別モデルに対して適用される実測データは、そのパターン識別モデルの学習データとされたデータ種のデータである。各パターン識別モデルに対して適用される実測データは、同一のデータ種群であってもよいし、相互に異なるデータ種群であってもよい。
また、各パターン識別モデルに適用される実測データのレコードは、実測データの全レコードにおける不良率が所定閾値(例えば、平均値+標準偏差)以上のレコードのみとすることが望ましい。これにより対象不良の発生パターンが顕著に表れた実測データレコードのみを利用することができる。
【0044】
CPU1は、各パターン識別モデルに対する実測データの適用により、各パターン識別モデルに関して対象不良との類似度をそれぞれ算出する(工程33)。本実施形態におけるSVMモデルは、上述したとおり、シート単位の実測データの入力に対して、対応する従来不良事例に類似するか否かの2値を出力する。CPU1は、実測データの各レコードを各SVMモデルにそれぞれ適用することで、実測データのレコードごとに類似か非類似かの2値を出力させ、適用されたレコード数(シート数)kに対する類似と出力されたレコード数の割合を算出する。本実施形態では、この算出された割合を対象不良とそのSVMモデルに対応する従来不良事例との類似度とする。
【0045】
図8は、原因種別判別モデルによる対象不良と従来不良事例との類似度の算出イメージを示す概念図である。図8の例では、対象不良に関する不良種別が「ムラ不良」と特定されており、その「ムラ不良」に対応付けられた原因種別判別モデルにはn個のSVMモデルが構築されている。n個のSVMモデルの各々に対して実測データ中のk個の各レコードが適用され、レコードごとに類似か非類似が出力されている。そして、SVMモデル1の類似度が1(全て類似)と算出され、SVMモデル2の類似度が0.8(非類似有り)と算出され、SVMモデルnの類似度が0(全て非類似)と算出されている。
【0046】
CPU1は、工程(S33)で算出された類似度を用いて、所定閾値以上の類似度を示すパターン識別モデル(SVMモデル)を特定する(S34)。言い換えれば、CPU1は、当該類似度を用いて、対象不良と同一又は類似の従来不良事例に対応するパターン識別モデルを特定する(S34)。当該閾値は、例えば、不良種別ごとに予め決められていてもよいし、対象不良ごとにユーザからの入力により決められてもよい。
CPU1は、工程(S34)で特定されたパターン識別モデル(SVMモデル)を構築するために用いた従来不良の蓄積情報を抽出する(S35)。本実施形態では、各SVMモデルに対応付けられて従来不良事例の情報が格納されているため、CPU1は、特定されたSVMモデルに対応付けられた従来不良事例の情報、特に不良原因を示す解析情報を抽出する。
【0047】
図9は、図6に示される工程(S40)の具体的内容を示すフローチャートである。
CPU1は、工程(S40)においてまず、対象不良の種別に対応する製造工程オントロジを特定する(S41)。本実施形態では、上述したとおり、製造工程オントロジは、不良オントロジの不良種別(レイヤ1)ごとに設けられている。
【0048】
続いて、CPU1は、工程(S30)で抽出された関連従来不良の蓄積情報の中の、特に不良原因を示す解析情報に基づいて、製造工程オントロジで体系化されている全ての製造工程の中から関連従来不良の原因と解析された製造工程を、対象不良に関連する工程範囲として選択する(S42)。
更に、CPU1は、製造工程オントロジで体系化されている全ての製造工程の中から技術者により対象不良に関連する工程として選択された製造工程を、対象不良に関連する工程範囲として選択する(S43)。このとき、CPU1は、製造工程オントロジに基づいて製造工程のリストを出力装置8に表示させ、ユーザが入力装置9を操作することによりそのリストから選択された製造工程を選択してもよい。また、CPU1は、技術者により選択された製造工程に関する情報を他のコンピュータから取得することもできる。
図10は、製造工程オントロジにおける製造工程の選択イメージを示す概念図である。
図10の例では、破線で囲まれている範囲が技術者の知識により選択された製造工程の範囲を示し、長破線で囲まれている範囲が連従来不良の原因と解析された製造工程の範囲を示している。
【0049】
CPU1は、製造工程オントロジにおいて工程(S42)及び工程(S43)で選択された工程範囲に関連付けられている装置又は処理パラメータを特定する(S44)。本実施形態では、CPU1は、製造工程オントロジにおいて当該選択された工程範囲のプロパティに設定されている製造装置の情報(レイヤ2)及び処理パラメータ(レイヤ3)を特定する。
CPU1は、工程(S20)で取得された実測データの中から、工程(S44)で特定された製造装置及び処理パラメータに対応するデータ種のデータ(実測データ)を解析データとして選択する(S45)。
【0050】
このように工程(S40)では、製造工程オントロジで体系化されている全ての製造工程の中から、対象不良と同一又は類似する従来不良の原因と解析された製造工程と、製造ラインに関する知識及び経験に基づいて技術者が対象不良と関連の強いと考える製造工程とが解析対象としての製造工程の範囲として抽出される。そして、その範囲の製造工程概念に属するプロパティである製造装置及び処理パラメータに対応する実測データが解析データとして限定的に選択される。これにより、従来不良事例の解析知識及び技術者の知識を用いて、対象不良に関連の強い実測データを選択することができ、高精度の原因解析を行うことができる。
【0051】
図11は、図6に示される工程(S60)の具体的内容を示すフローチャートである。
CPU1は、工程(S60)においてまず、製造理論オントロジにおいて対象不良と同一の関連不良をプロパティに持つ製造理論情報を特定する(S61)。製造理論オントロジの関連不良プロパティは、上述したとおり、不良オントロジの末端レイヤの不良定義と紐づけ可能な情報を持つため、工程(S10)で特定された対象不良の不良定義と同一の不良定義が関連不良プロパティに設定されている製造理論情報が特定される。
【0052】
次に、CPU1は、製造理論オントロジの各関連不良と対象不良との類似度をそれぞれ算出する(S62)。対象不良と各関連不良との類似度は、不良オントロジを用いて、例えば、次の式(5)により算出することができる。式(5)では、不良オントロジ内での概念の距離(エッジ数)を用いて不良概念間の類似度が算出される。c及びcは不良オントロジ内の不良概念を示し、LCSは最も近い共通の親概念を示し、dはルートからLCSまでの距離を示す。len()は二つの概念間の距離を示す。
【数3】
一つの製造理論情報に複数の関連不良が設定される場合には、当該複数の関連不良の中の最大類似度がその製造理論情報の関連不良に関する類似度とされればよい。
【0053】
CPU1は、製造理論オントロジにおいて対象不良と類似の関連不良をプロパティに持つ製造理論情報を特定する(S63)。具体的には、CPU1は、工程(S62)において関連不良ごとに算出された類似度を用いて、所定閾値以上の類似度を示す関連不良を含む製造理論情報を特定する。当該閾値は、例えば、対象不良の不良種別ごとに予め決められていてもよいし、対象不良ごとにユーザからの入力により決められてもよい。
このように、工程(S61)から工程(S63)は、製造理論オントロジの参照により、複数の製造理論情報の中から、対象不良と同一又は類似する関連不良を示す製造理論情報を特定する工程と呼ぶことができる。
【0054】
CPU1は、工程(S61)及び工程(S63)で特定された製造理論情報の理論式に実測データを代入して、理論データを算出する(S64)。理論式に代入される実測データは、同一製造理論情報の構成変数プロパティに設定されているデータ種のデータ群である。理論式には実測データのレコードごとに実測データが代入され、実測データの各レコードについて理論データがそれぞれ算出されることになる。結果、工程(S64)で算出された理論データが当該解析データに加えられる。
【0055】
製造理論オントロジに体系化されている製造理論概念は、対象製造ラインにおける普遍的な理論情報であるため、工程(S64)で算出される理論データは、対象不良に関連する普遍的な製造理論に基づくデータである。このように、本実施形態では、製造ラインから採取可能な実測データに加えて、製造ラインからは採取できない普遍的な製造理論データも用いて、原因推定モデル(確率推論モデル)が構築されるため、推論精度を向上させることができる。
【0056】
[変形例]
上述の実施形態は製造不良原因探索支援装置及び製造不良原因探索支援方法の例示である。当該支援方法は、上述の全ての処理工程を有する必要はなく、その一部の処理工程のみを有していてもよい。
上述の実施形態では、対象不良に関連する従来不良に関する蓄積知識、対象製造ラインの技術者の知識、CFS法による統計的知識、及び対象製造ラインにおける普遍的知識の全てが加味されたが、これらのうちの一部に基づくデータを用いて原因推定モデル(確率推論モデル)が構築されてもよい。この変形例によっても不良原因の解析精度を十分に向上させることができる。
【0057】
例えば、関連従来不良の蓄積情報及び製造理論情報は用いられなくてもよい。更に、CFS法を用いた実測データの選択及びクラス分類モデルを用いた離散化処理による解析データの厳選も実行されなくてもよい。この場合、図6のフローチャートにおいて工程(S30)、工程(S50)、工程(S60)及び工程(S80)は省かれてもよく、図9のフローチャートにおいて工程(S42)も省かれてもよい。これに伴い、原因種別判別モデル及び製造理論オントロジが不要となる。
即ち、当該支援方法は、対象不良に関する当該実測データを取得する工程と、製造現場の製造工程の一部となる、対象不良に関連する工程範囲を選択する工程と、製造工程オントロジの中から、当該選択された工程範囲に関連付けられている装置又は処理パラメータを特定する工程と、取得された実測データの中から、その特定された装置又は処理パラメータに対応する一部の実測データを解析データとして抽出する工程と、その解析データを用いて、確率推論モデルを構築する工程と、構築された確率推論モデルを用いて確率推論を実行する工程とを少なくとも含んでいればよい。この場合、対象不良に関連する工程範囲を選択する工程では、製造工程データベースに格納される製造工程の中から技術者により対象不良に関連する工程として選択された製造工程を選択すればよい。
この変形例においても、技術者の知識及び経験を加味して対象不良と関連の強いデータ種の実測データを限定的に選択し、確率推論モデルの構築に利用することができるため、不良原因の解析精度を向上させることができる。
【0058】
他の例として、実測データの選択及びクラス分類モデルを用いた離散化処理による解析データの厳選を行わず、製造理論情報及び実測データの両方が用いられてもよい。この場合、図6のフローチャートにおいて工程(S30)、工程(S40)、工程(S50)及び工程(S80)が省かれてもよい。これに伴い、原因種別判別モデル及び製造工程オントロジが不要となる。
即ち、当該支援方法は、当該実測データを取得する工程と、製造理論オントロジを参照する工程と、製造理論オントロジの参照により、複数の製造理論情報の中から、対象不良と同一又は類似する関連不良を示す製造理論情報を特定する工程と、特定された製造理論情報の理論式に、取得された実測データの中の、理論式の構成変数として定義されているデータ種のデータ群を代入することにより、理論データを導出する工程と、取得された実測データの少なくとも一部及び導出された理論データを用いて、確率推論モデルを構築する工程と、構築された確率推論モデルを用いて確率推論を実行する工程とを少なくとも含んでいればよい。
この変形例においても、製造ラインから採取可能な実測データに加えて、対象不良に関連する普遍的な製造理論に基づくデータを確率推論モデルの構築に利用することができるため、不良原因の解析精度を向上させることができる。
この他、工程(S50)のみを省く形態、工程(S80)のみを除く形態など各種変形例が考えられる。
【0059】
また、上述の説明で用いた複数のフローチャートでは、複数の情報処理工程が順番に記載されているが、本実施形態での情報処理の実行順序は、その記載の順番に制限されない。例えば、図6のフローチャートにおいて、工程(S10)及び工程(S20)の実行順は変えてもよいし、並行に実行されてもよい。また、工程(S50)又は工程(S60)は、工程(S30)及び工程(S40)と並行して実行されてもよいし、それらよりも前に実行されてもよい。
【実施例】
【0060】
以下に実施例を挙げ、上述の内容を更に詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例から何ら限定を受けない。本発明者らは次のような実験を行い、上述の効果を検証した。この検証実験を実施例として以下、説明する。
【0061】
検証実験では、TFTアレイの製造ラインを解析対象の製造現場とし、ムラ不良の一種が対象不良とされ、その対象不良に関する実測データが実験データとして採取された。
具体的には、185個のデータ種を持つ1720レコードの実測データが利用された。この実測データの各レコードはガラス基板のシート単位に採取されており、185個のデータ種は「不良率」、「製造装置(処理装置)」及び「処理パラメータ」に大別される。「不良率」については閾値に基づいて「正常値」又は「異常値」の2値で示された。
【0062】
本発明者らは、このような実測データを用いて、次のような5つの実施例について解析精度を比較した。
実施例A:上述の実施形態。
実施例B:上述の実施形態から工程(S30)、工程(S40)、工程(S50)及び工程(S80)を除いた形態。
実施例C:上述の実施形態から工程(S80)を除いた形態。
実施例D:上述の実施形態から工程(S30)及び工程(S40)を除いた形態。
実施例E:上述の実施形態から工程(S50)を除いた形態。
【0063】
各実施例において構築された原因推定モデル(ベイジアンネットワーク)において、目的変数である不良率に関するクラス分類における「正解率」と「F値」とが比較された。「正解率」とは、目的変数に関する正解データの割合であり、「F値」とは、適合率と再現率の調和平均である。F値は、目的変数に含まれる値ごとに求まるため、その平均値が評価に用いられた。そして、「正解率」及び「F値」が5分割交差検証により求められた。本実験の結果を以下に示す。
実施例A:正解率=82.09%、F値=0.777
実施例B:正解率=67.31%、F値=0.654
実施例C:正解率=79.88%、F値=0.762
実施例D:正解率=80.89%、F値=0.751
実施例E:正解率=78.49%、F値=0.727
【0064】
上記結果により、実施例Aと実施例Bとでは、正解率で14.78%、F値で0.123の差がある。これにより、上述の実施形態における工程(S30)、工程(S40)、工程(S50)及び工程(S80)により不良原因の推定精度を向上できることが実証されている。言い換えれば、本実施形態のように、関連従来不良に関する蓄積知識、対象製造ラインの技術者の知識及びCFS法による統計的知識に基づく実測データの選択(特徴選択)により、原因推定モデル(確率推論モデル)を構築するうえで有用な実測データを取捨選択できていることが確認される。
また、実施例Aと実施例Cとの比較、実施例Aと実施例Dとの比較、及び実施例Aと実施例Eとの比較により、上述の実施形態における工程(S30)、工程(S40)、工程(S50)及び工程(S80)が個々に解析精度の向上に貢献していることが確認される。
また、実施例Bについても或る程度高い正解率及びF値を示しているため、製造理論に関する理論データのみを用いる形態についても有用であることが確認される。
以上の結果から、本実施形態によれば、製造不良の原因を高精度に推定し得ることが実証された。
【0065】
更に、本発明者らは、実施例Aについて製造不良の深層原因を効率的に探索可能であることを検証している。
本検証では、事前準備として、物理解析により対象不良(ムラ不良の一種)の一次原因の分析が行われ、TFT部におけるリーク電流が対象不良の主原因(一次原因)であることが特定された。そして、実施例Aにより、この一次原因に対する二次原因以降の深層原因が次のように探索された。
【0066】
まず、工程(S30)から工程(S60)により、20個のデータ種を持つ1720レコードの解析データが取得された。20個のデータ種の中の一種が製造理論オントロジの理論式から導出された理論データ(残膜膜厚)であった。これら解析データに対して離散化処理を適用し、ベイジアンネットワークによる原因推定モデルが構築された。この原因推定モデルは、解析データのデータ種の個数と同じ20個のノードを持ち、各ノードは実測データ自体をノード値として持つ。例えば、残膜膜厚のノードは、ノード値として「Extra−Thick」、「Thick」、「Medium」、「Thin」を持つ。
【0067】
原因探索では、まず、その原因推定モデルを用いて、全ノードのノード値ごとに不良率が「異常値」となる確率(異常確率値)を推論する。これにより算出された異常確率値が閾値(異常確率値+10%)以上となる16個のノードが選択され、各ノードに対して更に詳細な傾向が分析された。
ここでは、探索の一例として、選択された16個のノードの中の残膜膜厚ノードに関する分析が例示される。残膜膜厚ノードのノード値ごとの異常確率値は次のように算出された。
「Thin」=0.1706、「Medium」=0.2495、「Thick」=0.5484、「Extra−Thick」=0.6713
この結果、残膜膜厚値の上昇に伴い異常値の発生確率が徐々に増加しており、顕著な傾向が確認される.これより、残膜膜厚が不良の発生に影響を与えている可能性が高いことが推定された(二次原因)。
【0068】
また、残膜膜厚は理論データであり、この理論データと不良との関係性が明らかになったことにより、理論データを導出した理論式の構成変数も間接的に不良に影響を与えている可能性が高いと考えられる。本原因探索では、その構成変数の中の一つをノード値とするノード(ゲート膜厚成膜チャンバ)に更に着目して、原因探索が進められた。
このような原因探索により、物理解析で特定された一次原因(TFT部におけるリーク電流の発生)に対する深層原因が特定された。特定された深層原因の一部である二次原因は、上述した「残膜膜厚値の上昇」であり、三次原因は「ゲート膜圧値の上昇」であった。以降の深層原因については割愛する。
以上の結果により、本実施形態によれば、複雑性の高い製造不良の原因探索を可能とし、深層原因を効率的に特定可能であることが実証された。
【0069】
更に、本発明者らは、解析対象の製造ラインにおける従来の品質管理手法(相関分析及び物理解析)を用いて、対象不良の原因探索を合わせて行った。この従来手法を用いた原因探索では、一人で約8時間の作業時間を要し、実施例Aと同程度の結果が得られた。一方、実施例Aでは、一人で約2時間の作業時間を要した。
結果、原因探索に要する時間が約四分の一となっており、本実施形態によれば、原因探索に要する時間も短縮できることが確認された。
【符号の説明】
【0070】
1 CPU
2 メモリ
3 入出力I/Fユニット
4 通信ユニット
7 支援プログラム
8 出力装置
9 入力装置
10 不良原因探索支援装置(支援装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11