【解決手段】バッテリーケース20は、バッテリーモジュール10を載置した状態で支持するロアケース21と、バッテリーモジュール10を覆うようにロアケース21に取り付けられるカバー29と、ロアケース21を構成する金属製のトレイ22と、ロアケース21を構成し、トレイ22の上面を覆うように形成された合成樹脂製の絶縁層25とを備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のバッテリーケースは、ロアケースのうちバッテリーモジュールを載置しているトレイが合成樹脂製である。したがって、バッテリーモジュールのバッテリーセルを収容するセルケースが金属製であっても、セルケースとトレイとの接触部分で電食が発生する虞はない。しかし、トレイの材料である合成樹脂は、金属に比べて強度が低いため、バッテリーケースを車両の床下に取り付けた場合に、走行中の振動や飛び石等により、トレイに亀裂が生じたりトレイが破損したりすることが懸念される。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、バッテリーモジュールを支持するロアケースの強度を高めるとともに、ロアケースとバッテリーモジュールとの接触部分の電食を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
バッテリーモジュールを載置した状態で支持するロアケースと、
前記バッテリーモジュールを覆うように前記ロアケースに取り付けられるカバーと、
前記ロアケースを構成する金属製のトレイと、
前記ロアケースを構成し、前記トレイの上面を覆うように形成された合成樹脂製の絶縁層とを備えているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
ロアケースのうちバッテリーモジュールを支持するトレイを金属製としたので、ロアケースは高い強度を有している。また、トレイの上面は合成樹脂製の絶縁層で覆われているので、ロアケースの上面に接する部材の材料がトレイとは異なる金属であっても、ロアケースの上面において電食が発生する虞はない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、前記ロアケースを構成し、前記トレイの下面を覆うように形成された合成樹脂製の保護層を備えていてもよい。この構成によれば、ロアケースの下面に水分が付着しても、トレイの下面に錆が発生する虞はない。
【0010】
本発明は、前記絶縁層と前記保護層の外周縁部同士が、前記トレイの周面において繋がっていてもよい。この構成によれば、トレイに、直接、水分が付着することを阻止して、トレイに錆が発生することを防止できる。
【0011】
本発明は、前記カバーを構する金属製のシェルを有し、前記シェルの外周縁部が前記トレイの外周縁部に導通可能に接続されていてもよい。この構成によれば、トレイとシェルによって、バッテリーモジュールを包囲する電磁波シールド機能部材を構成することができる。
【0012】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を
図1〜
図8を参照して説明する。尚、以下の説明において、上下の方向については、
図1〜8にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。本実施例1のバッテリーケース20は、バッテリーパックを構成するものである。バッテリーパックは、バッテリーケース20内に収容される複数のバッテリーモジュール10と、複数の冷却器33とを備えて構成されている。
【0013】
バッテリーモジュール10は、
図6に示すように、前後方向に積層した複数のバッテリーセル11と、複数のバッテリーセル11を収容するモジュールケース15とを備えている。バッテリーセル11は、前後方向の寸法が、高さ寸法(上下寸法)及び幅寸法(左右寸法)に比べて小さい厚板状をなす。各バッテリーセル11の上端面には(+)電極12と(−)電極13が設けられており、複数のバッテリーセル11は、(+)電極12と(−)電極13を繋ぐバスバー14によって直列接続されている。
【0014】
モジュールケース15は、水平板状の底板部16の外周縁に角筒部材17を組み付けて構成されている。モジュールケース15内には複数のバッテリーセル11が位置決めされた状態で収容されている。角筒部の前端部下端縁と後端部下端縁には、夫々、前方へ板状に突出した形態の左右一対の固定片18が形成されている。
【0015】
バッテリーケース20は、略水平な板状をなすロアケース21(
図4を参照)と、ロアケース21に対し上から覆うように組み付けられた合成樹脂製のカバー29(
図3を参照)とを備えている。ロアケース21は、金属製のトレイ22と、合成樹脂製の絶縁層25と、合成樹脂製の保護層26とを備えて構成されている。
【0016】
図8に示すように、トレイ22は、水平な平板状をなすロアプレート23と、ロアプレート23とは別体部品のフレーム24とからなる。フレーム24は、内部が中空の角筒材を溶接等により方形に組み付けたものであり、ロアプレート23の上面外周縁に導通可能に固着されている。ロアプレート23の材料とフレーム24の材料は、電食対策として同一種類の金属である。
【0017】
図8に示すように、絶縁層25は、トレイ22の内面と上面を、その全領域に亘り且つ隙間なく覆うように密着している。換言すると、絶縁層25は、ロアプレート23の上面の全領域と、フレーム24の内周面の全領域と、フレーム24の上面の全領域を覆っている。更に、絶縁層25の外周縁部25Eは、その全周に亘り、フレーム24の外周面よりも外方へ水平なフランジ状に張り出している。また、絶縁層25のうちロアプレート23の上面を覆う水平領域には、前後方向に細長い複数本のリブ27が突出形成されている。フレーム24の左右両側縁部と複数本のリブ27とにより、トレイ22(ロアケース21)の上面には、前後方向に細長く延び且つ左右方向に並列した複数の収容溝28が形成されている。
【0018】
図8に示すように、保護層26は、トレイ22の外面(下面)と外周面を、その全領域に亘り且つ隙間なく覆うように密着している。換言すると、保護層26は、ロアプレート23の下面の全領域と、フレーム24の外周面の全領域を覆っている。更に、保護層26の外周縁部26Eは、その全周に亘り、フレーム24の外周面よりも外方へ水平なフランジ状に張り出して、絶縁層25の外周縁部25Eの下面に対し面接触状態で積層するように固着されている。絶縁層25の外周縁部25Eの下面と保護層26の外周縁部26Eの上面とが接触する領域は、溶着、ガスケット、シール部材等のシール手段(図示省略)により液密状にシールされた状態となっている。
【0019】
ロアケース21を製造する際には、シートブロー成形やホットプレス成形によって、絶縁層25と保護層26をトレイ22と一体化させる。リブ27は、絶縁層25をトレイ22と一体化させる工程で形成する。トレイ22と絶縁層25と保護層26を一体化させた状態では、絶縁層25の外周縁部25Eと保護層26の外周縁部26Eとが全周に亘って液密状に密着するとともに、トレイ22の外面の全領域が絶縁層25と保護層26とによって液密状に覆われる。したがって、ロアケース21の外部の液体が金属製のトレイ22に付着する虞はない。
【0020】
図8に示すように、カバー29は、水平な上壁部30と、上壁部30の外周縁から全周に亘って下方へ延出した周壁部31と、周壁部31の下端縁から全周に亘って外方へ水平に張り出したフランジ部32とを備えた単一部品である。カバー29は、そのフランジ部32を絶縁層25の外周縁部25Eに面当たり状態で積層するようにして、ロアケース21に取り付けられている。カバー29のフランジ部32の下面と絶縁層25の外周縁部25Eの上面とが接触する領域は、溶着、ガスケット、シール部材等のシール手段(図示省略)により液密状にシールされた状態となっている。尚、シール手段は、インサート等によってカバー29のフランジ部32と一体化させてもよい。
【0021】
ロアケース21の上面に形成された各収容溝28内には、夫々、冷却器33が収容されている。冷却器33は、前後方向に細長く且つ上下寸法の小さい偏平な板状をなす。冷却器33の内部には、バッテリーの熱をバッテリーパック(バッテリーケース20)の外部へ排出するための冷却液(図示省略)が流動するようになっている。冷却器33は、熱伝導率の高い材料(例えば、アルミニウム、アルミニウム合金など)からなる。
【0022】
バッテリーパックを組み付ける際には、ロアケース21の上面に形成されている複数の収容溝28に、夫々、冷却器33を収容し、各冷却器33の上面に複数(本実施例1では4つ)のバッテリーモジュール10を前後方向に間隔を空けて並べて載置する。このとき、前側のバッテリーモジュール10と後側のバッテリーモジュール10との間に、二対の固定片18が左右に並ぶように配置する。
【0023】
次に、左右方向に細長い固定バー34を、前側のバッテリーモジュール10と後側のバッテリーモジュール10との隙間に落とし込むように収容して、二対の固定片18の上面に載せる。そして、固定バー34に貫通したボルト(図示省略)を、位置決めリブ27にネジ込んで締め付ける。ボルトの締付けにより、複数のバッテリーモジュール10が、冷却器33の上面に当接した状態でロアケース21に固定される。
【0024】
複数のバッテリーモジュール10をロアケース21に固定した後、バッテリーモジュール10を上から覆い隠すようにカバー29を被せ、被せたカバー29を溶着等によってロアケース21に固定する。これにより、バッテリーケース20が構成されるとともに、バッテリーケース20内に複数のバッテリーモジュール10と複数の冷却器33が固定された状態で収容される。以上により、バッテリーパックの組付けが完了する。
【0025】
本実施例1のバッテリーケース20は、バッテリーモジュール10を支持するロアケース21の強度を高めるとともに、ロアケース21とバッテリーモジュール10との接触部分の電食を防止することを解決課題とする。課題解決の手段として、バッテリーケース20は、バッテリーモジュール10を載置した状態で支持するロアケース21と、バッテリーモジュール10を覆うようにロアケース21に取り付けられるカバー29とを備えている。ロアケース21は、金属製のトレイ22と、トレイ22の上面を覆うように形成された合成樹脂製の絶縁層25とを備えている。
【0026】
この構成によれば、ロアケース21のうちバッテリーモジュール10を支持するトレイ22を金属製としたので、ロアケース21は高い強度を有している。また、トレイ22の上面は合成樹脂製の絶縁層25で覆われているので、ロアケース21の上面に接する部材(冷却器33)の材料がトレイ22とは異なる金属であっても、ロアケース21の上面において電食が発生する虞はない。
【0027】
また、ロアケース21は、トレイ22の下面(外面)を覆うように形成された合成樹脂製の保護層26を備えている。したがって、ロアケース21の下面(外面)に水分が付着しても、トレイ22の下面に錆が発生する虞はない。さらに、絶縁層25と保護層26の外周縁部25E,26E同士は、トレイ22の外周面に沿うように配されていて、互いに繋がっている。したがって、トレイ22に、直接、水分が付着することを阻止して、トレイ22に錆が発生することを防止できる。
【0028】
<実施例2>
次に、本発明を具体化した実施例2を
図9を参照して説明する。本実施例2のバッテリーケース40は、電磁波シールド機能を有している点で、上記実施例1のバッテリーケース20と異なっている。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0029】
本実施例2のバッテリーケース40は、略水平な板状をなすロアケース41と、ロアケース41に対し上から覆うように組み付けられた合成樹脂製のカバー50とを備えている。ロアケース41は、金属製のトレイ42と、合成樹脂製の絶縁層46と、合成樹脂製の保護層49とを備えて構成されている。
【0030】
トレイ42は、水平な平板状をなすロアプレート43と、ロアプレート43とは別体部品のフレーム44とからなる。フレーム44は、内部が中空の角筒材を溶接等により方形に組み付けたものであり、ロアプレート43の上面外周縁に導通可能に固着されている。フレーム44には、その外周面上端縁から外方へ水平なフランジ状に張り出した板状導通部45(請求項に記載のトレイの外周縁部)が形成されている。ロアプレート43の材料とフレーム44の材料は、電食対策として同一種類の金属である。トレイ42は、カバー50のシェル51と共同して電磁波シールド機能を発揮する。
【0031】
絶縁層46は、トレイ42の内面の全領域と、トレイ42の上面のうちフレーム44の全領域及び板状導通部45の内周側領域とに、隙間なく覆うように密着している。絶縁層46のうちロアプレート43の上面を覆う水平領域には、前後方向に細長い複数本のリブ47が突出形成されている。フレーム44の左右両側縁部と複数本のリブ47とにより、トレイ42(ロアケース41)の上面には、前後方向に細長く延び且つ左右方向に並列した複数の収容溝48が形成されている。
【0032】
保護層49は、トレイ42の外面(下面)の全領域と、トレイ42の外周面の全領域と、板状導通部45の下面のうち内周側領域とに、隙間なく覆うように密着している。保護層49と絶縁層46は、直接的に接触してはいない。つまり、絶縁層46の外周縁と保護層49の外周縁との間から、板状導通部45の外周側領域が水平に露出している。
【0033】
ロアケース41を製造する際には、シートブロー成形やホットプレス成形によって、絶縁層46と保護層49をトレイ42と一体化させる。リブ47は、絶縁層46をトレイ42と一体化させる工程で形成する。トレイ42と絶縁層46と保護層49を一体化させた状態では、トレイ42と絶縁層46との界面が、その全領域に亘って液密状に密着しているとともに、トレイ42と保護層49との界面が、その全領域に亘って液密状に密着しているので、トレイ42のうち板状導通部45の外周側領域を除いた大部分の領域には、ロアケース41の外部の液体が付着する虞はない。
【0034】
カバー50は、トレイ42と同一種類の金属材料からなるシェル51と、合成樹脂製の絶縁内層56と、合成樹脂製の絶縁外層57とから構成されている。シェル51は、水平な上板部52と、上板部52の外周縁から全周に亘って下方へ延出した壁状部53と、壁状部53の下端縁から全周に亘って外方へ水平にフランジ状に張り出した張出部54とを備えた単一部品である。張出部54の外周縁部は、段差状に低くなった板状接触部55(請求項に記載のシェルの外周縁部)となっている。
【0035】
絶縁内層56は、シェル51の内面及び下面のうち板状接触部55を除いた領域に対し液密状に密着している。絶縁外層57は、シェル51の外面及び上面のうち板状接触部55を除いた領域に対し液密状に密着している。絶縁内層56と絶縁外層57は、直接的に接触してはいない。つまり、絶縁内の外周縁と絶縁外層57の外周縁との間から、板状接触部55が水平に露出している。
【0036】
カバー50は、絶縁内層56の外周縁部56Eを絶縁層46の外周縁部46Eに面当たり状態で積層するようにして、ロアケース41に取り付けられている。カバー50(絶縁内層56)の外周縁部56Eの下面と絶縁層46の外周縁部46Eの上面とが接触する領域は、溶着、ガスケット、シール部材等のシール手段(図示省略)により液密状にシールされた状態となっている。尚、シール手段は、インサート等によってカバー50の外周縁部56Eと一体化させてもよい。
【0037】
カバー50をロアケース41に取り付けた状態では、トレイ42の板状導通部45の上面と、シェル51の板状接触部55の下面とが、全周に亘り、導通可能に面接触した状態で固着されている。これにより、トレイ42とシェル51とによって、バッテリーモジュールを全体に亘って包囲するシールド部材58が構成される。シールド部材58により、バッテリーモジュールに対する外部からの電磁ノイズの影響や、バッテリーモジュールが発する電磁ノイズの外部への影響が抑制される。
【0038】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1,2では、トレイの下面に合成樹脂製の保護層を形成したが、ロアケースは保護層を有しないものであってもよい。
(2)上記実施例1では、絶縁層と保護層の外周縁部同士を、トレイの周面において繋げたが、絶縁層の外周縁部と保護層の外周縁部との間で、トレイの周面が、合成樹脂で覆われずに露出していてもよい。