【解決手段】実施形態の半導体装置は、第1の面及び第2の面を有する半導体基板と、第1の面の側に設けられた複数の第1の半導体領域と、複数の第1の半導体領域の間に設けられた複数の第2の半導体領域と、第1の半導体領域と第2の半導体領域との間に設けられた複数の絶縁体領域と、第1の半導体領域に設けられた第1導電型のドレイン領域と、第2の半導体領域に設けられた第1導電型のソース領域と、複数のゲート電極と、第1導電型のドレイン領域と第2の面との間に設けられ、第1導電型のドレイン領域よりも第1導電型の不純物濃度の低い第1導電型の第1の不純物領域と、第1導電型のソース領域と第2の面との間に設けられた複数の第2導電型の第2の不純物領域と、を備え、複数の第1の半導体領域の少なくとも一つの第1の半導体領域の幅が、その他の第1の半導体領域の幅よりも広い。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書中、同一又は類似する部材については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0008】
本明細書中、部品等の位置関係を示すために、図面の上方向を「上」、図面の下方向を「下」と記述する場合がある。本明細書中、「上」、「下」の概念は、必ずしも重力の向きとの関係を示す用語ではない。
【0009】
また、以下の説明において、n
+、n、n
−及び、p
+、p、p
−の表記を用いる場合は、各導電型における不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわちn
+はnよりもn型の不純物濃度が相対的に高く、n
−はnよりもn型の不純物濃度が相対的に低いことを示す。また、p
+はpよりもp型の不純物濃度が相対的に高く、p
−はpよりもp型の不純物濃度が相対的に低いことを示す。なお、n
+型、n
−型を単にn型、p
+型、p
−型を単にp型と記載する場合もある。
【0010】
不純物濃度は、例えば、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)により測定することが可能である。また、不純物濃度の相対的な高低は、例えば、SCM(Scanning Capacitance Microscopy)で求められるキャリア濃度の高低から判断することも可能である。また、不純物領域の深さ、厚さなどの距離は、例えば、SIMSで求めることが可能である。また。不純物領域の深さ、厚さ、幅、間隔などの距離は、例えば、SCM像とAFM(Atomic Force Microscope)像との合成画像から求めることが可能である。
【0011】
(第1の実施形態)
実施形態の半導体装置は、第1の面と第2の面を有する半導体基板と、半導体基板の第1の面の側に設けられ、第1の方向に伸長する複数の第1の半導体領域と、半導体基板の第1の面の側に設けられ、第1の方向に伸長し、複数の第1の半導体領域の間に設けられた複数の第2の半導体領域と、半導体基板の第1の面の側に設けられ、複数の第1の半導体領域と複数の第2の半導体領域との間に設けられた複数の絶縁体領域と、複数の第1の半導体領域に設けられた複数の第1導電型のドレイン領域と、複数の第2の半導体領域に設けられた複数の第1導電型のソース領域と、複数の第1導電型のドレイン領域と複数の第1導電型のソース領域の間の、第2の半導体領域及び絶縁体領域の上に設けられた複数のゲート電極と、複数の第1導電型のドレイン領域と第2の面との間に設けられ、複数の第1導電型のドレイン領域よりも第1導電型の不純物濃度の低い複数の第1導電型の第1の不純物領域と、複数の第1導電型のソース領域と第2の面との間に設けられた複数の第2導電型の第2の不純物領域と、を備え、複数の第1の半導体領域の少なくとも一つの第1の半導体領域の幅が、その他の第1の半導体領域の幅よりも広い。
【0012】
図1、
図2は、本実施形態の半導体装置の模式図である。
図1は上面図、
図2は
図1のAA’断面図である。
【0013】
本実施形態の半導体装置は、nチャネル型LDMOSトランジスタを含む半導体装置である。
図1、
図2はnチャネル型LDMOSトランジスタの模式図である。本実施形態では、第1導電型がn型であり、第2導電型がp型である。
【0014】
nチャネル型LDMOSトランジスタは、半導体基板10、複数のゲート電極13を備える。半導体基板10内には、複数のソース素子領域11(第2の半導体領域)、複数のドレイン素子領域12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g(第1の半導体領域)、複数の素子分離領域30(絶縁体領域)を有する。また、半導体基板10内には、p
−型の第1のp型領域14、p
−型の第2のp型領域15、n
+型の埋め込み領域16、複数のn
+型のソース領域21、複数のn
+型のドレイン領域22、複数のp型のpウェル領域24(第2の不純物領域)、複数のn型のドリフト領域26(第1の不純物領域)を有する。
【0015】
半導体基板10は、第1の面(
図2中のP1)と第2の面(
図2中のP2)を有する。第1の面は半導体基板10の表面、第2の面は半導体基板10の裏面である。
【0016】
半導体基板10は、例えば、シリコン(Si)の単結晶基板である。第1の面は、例えば、シリコンの(001)面である。
【0017】
ドレイン素子領域12a、12b、12c、12d、12e、12f、12gは、半導体基板10の表面の側に設けられる。ドレイン素子領域12a、12b、12c、12d、12e、12f、12gは、第2の方向に複数配置される。ドレイン素子領域12a、12b、12c、12d、12e、12f、12gは、第1の方向に伸長する。
【0018】
ドレイン素子領域12a、12b、12c、12d、12e、12f、12gの中のドレイン素子領域12dの幅(
図1中のw1)は、その他のドレイン素子領域12a、12b、12c、12e、12f、12gの幅(
図1中のw2)よりも広い。
【0019】
ドレイン素子領域12dの幅は、例えば、1.2μm以上である。ドレイン素子領域12a、12b、12c、12e、12f、12gの幅は、例えば、0.5μm以下である。ドレイン素子領域12dの幅は、例えば、ドレイン素子領域12a、12b、12c、12e、12f、12gの幅の2倍以上である。
【0020】
ソース素子領域11は、半導体基板10の表面の側に設けられる。ソース素子領域11は、第2の方向に複数配置される。ソース素子領域11は、第1の方向に伸長する。ソース素子領域11は、2つのドレイン素子領域12a、12b、12c、12d、12e、12f、12gの間に設けられる。ソース素子領域11は、2つの素子分離領域30に挟まれる。
【0021】
素子分離領域30は、半導体基板10の表面の側に設けられる。素子分離領域30は、第2の方向に複数配置される。素子分離領域30は、第1の方向に伸長する。素子分離領域30は、ドレイン素子領域12a、12b、12c、12d、12e、12f、12gのいずれか一つと、ソース素子領域11との間に設けられる。素子分離領域30の第1の方向の端部は互いに接続されていても構わない。
【0022】
素子分離領域30は、例えば、半導体基板10に形成された溝内に絶縁体が埋め込まれることにより形成される。素子分離領域30は、いわゆるSTI(Shallow Trench Isolation)である。絶縁体は、例えば、酸化シリコンである。
【0023】
ゲート電極13は、半導体基板10の表面の上に設けられる。ゲート電極13は、第2の方向に複数配置される。ゲート電極13は、例えば、第1の方向に伸長する。ゲート電極13は、ドレイン素子領域12a、12b、12c、12d、12e、12f、12gのいずれか一つと、ソース素子領域11との間に設けられる。ゲート電極13は、ソース素子領域11及び素子分離領域30の上に設けられる。
【0024】
ゲート電極13は、例えば、不純物がドーピングされた多結晶シリコンである。ゲート電極13とソース素子領域11との間には、図示しないゲート絶縁層が設けられる。
【0025】
p
−型の第1のp型領域14は、半導体基板10の中に設けられる。第1のp型領域14はp型不純物として、例えば、ボロン(B)を含む。第1のp型領域14のp型不純物濃度は、例えば、1×10
15cm
−3以上1×10
16cm
−3以下である。
【0026】
p
−型の第2のp型領域15は、半導体基板10の中に設けられる。第2のp型領域15はp型不純物として、例えば、ボロン(B)を含む。第2のp型領域15のp型不純物濃度は、例えば、1×10
15cm
−3以上1×10
16cm
−3以下である。
【0027】
n
+型の埋め込み領域16は、半導体基板10の中に設けられる。埋め込み領域16は、第1のp型領域14と第2のp型領域15の間に設けられる。埋め込み領域16は、第1のp型領域14と第2のp型領域15を分離する。
【0028】
埋め込み領域16は、例えば、アンチモン(Sb)を含む。埋め込み領域16のn型不純物濃度は、例えば、1×10
20cm
−3以上1×10
22cm
−3以下である。
【0029】
埋め込み領域16は、例えば、グラウンド電位に固定される。埋め込み領域16は、例えば、フローティングである。
【0030】
n
+型のドレイン領域22は、半導体基板10の中に複数設けられる。ドレイン領域22は、ドレイン素子領域12a、12b、12c、12d、12e、12f、12gに設けられる。ドレイン領域22は、第2の方向に複数設けられる。ドレイン領域22は、第1の方向に伸長する。ドレイン領域22は、必ずしもドレイン素子領域12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、それぞれの全面に設けられなくても構わない。
【0031】
ドレイン領域22はn型不純物として、例えば、リン(P)又はヒ素(As)を含む。ドレイン領域22のn型不純物濃度は、例えば、1×10
20cm
−3以上1×10
22cm
−3以下である。
【0032】
n
+型のソース領域21は、半導体基板10の中に複数設けられる。ソース領域21は、ソース素子領域11に設けられる。ソース領域21は、第2の方向に複数設けられる。ソース領域21は、第1の方向に伸長する。
【0033】
ソース領域21はn型不純物として、例えば、リン(P)又はヒ素(As)を含む。ソース領域21のn型不純物濃度は、例えば、1×10
20cm
−3以上1×10
22cm
−3以下である。
【0034】
p型のpウェル領域24は、半導体基板10の中に複数設けられる。pウェル領域24は、ソース領域21と裏面との間に設けられる。pウェル領域24は、ソース領域21と第2のp型領域15との間に設けられる。
【0035】
pウェル領域24はp型不純物として、例えば、ボロン(B)を含む。pウェル領域24のp型不純物濃度は、第2のp型領域15のp型不純物濃度より高い。pウェル領域24のp型不純物濃度は、例えば、1×10
17cm
−3以上1×10
19cm
−3以下である。
【0036】
pウェル領域24のゲート電極13に対向する部分は、LDMOSトランジスタのチャネル領域として機能する。
【0037】
n型のドリフト領域26は、半導体基板10の中に複数設けられる。ドリフト領域26は、ドレイン領域22と裏面との間に設けられる。ドリフト領域26は、ドレイン領域22と第2のp型領域15との間に設けられる。
【0038】
ドリフト領域26はn型不純物として、例えば、リン(P)又はヒ素(As)を含む。ドリフト領域26のn型不純物濃度は、ドレイン領域22のn型不純物濃度よりも低い。ドリフト領域26のn型不純物濃度は、例えば、1×10
17cm
−3以上1×10
19cm
−3以下である。
【0039】
次に、本実施形態の半導体装置の作用及び効果について説明する。
【0040】
図3は、本実施形態の半導体装置の作用及び効果の説明図である。
図3は、ドレイン素子領域の幅とESD耐量との関係を示すグラフである。
図3(a)は人体モデル(Human Body Model:HBM)、
図3(b)はマシンモデル(MM)である。
【0041】
人体モデル、マシンモデルいずれの場合も、ドレイン素子領域幅が広くなるにつれてESD耐量が向上する。特に、ドレイン素子領域幅が1.2μm以上となる領域でESD耐量の上昇率が大きくなる。また、ドレイン素子領域幅が2倍以上になると、ESD耐量も2倍程度に向上する。
【0042】
図4は、本実施形態の半導体装置の作用及び効果の説明図である。
図4は、ドレイン素子領域の幅とドレイン・ソース間耐圧との関係を示すグラフである。
【0043】
ドレイン素子領域幅が広くなるにつれてドレイン・ソース間耐圧が低下する傾向がある。
【0044】
ESD耐量のドレイン素子領域の幅依存性、及び、ドレイン・ソース間耐圧のドレイン素子領域の幅依存性の理由を明らかにするため、ドレイン素子領域の幅を変えてトランジスタの電界分布のシミュレーションを行った。シミュレーションの結果、ドレイン素子領域の幅が狭い場合、ドレインの直下に電界が集中することが明らかになった。ドレイン素子領域の幅が狭い場合、ドレインの直下に電界が集中するため、電流がトランジスタを抜ける前に静電破壊が生じやすいと考えられる。
【0045】
電界の絶対値は、ドレインの直下よりも素子分離領域の下や、ソース領域近傍の方が大きくなる。このため、ドレインの直下に電界が集中するドレイン素子領域の幅が狭い場合の方が、電界が分散され、電界の絶対値が小さくなると考えられる。このため、ドレイン・ソース間耐圧は、ドレイン素子領域幅が狭い場合の方が高いと考えられる。
【0046】
ESD耐量を向上させるためには、
図3からも明らかなように、ドレイン素子領域の幅を広くすれば良い。しかしながら、すべてのドレイン素子領域の幅を広くすると単位面積当たりのオン抵抗(RonA)が増加することになる。よって、チップ面積の増大を招く。
【0047】
本実施形態では、ドレイン素子領域12a、12b、12c、12d、12e、12f、12gの内、一部のドレイン素子領域幅だけを広くする。具体的には、ドレイン素子領域12dの幅だけを広くする。
【0048】
一部のドレイン素子領域の幅だけを広くすることにより、nチャネル型LDMOSトランジスタのESD耐量が向上する。すべてのドレイン素子領域幅を広げるのではなく、一部のドレイン素子領域幅だけを広くするため、RonAの増加が抑制される。
【0049】
一部のドレイン素子領域幅だけを広くした場合でも、ESD耐量が向上する理由は、以下のように考えられる。
【0050】
ドレイン素子領域幅の広いドレイン素子領域12dでは、その他のドレイン素子領域12a、12b、12c、12e、12f、12gよりもESD耐量が高い。そして、ドレイン素子領域幅の広いドレイン素子領域12dでは、その他のドレイン素子領域12a、12b、12c、12e、12f、12gよりもドレイン・ソース間耐圧が低い。このため、nチャネル型LDMOSトランジスタにESDが印加された際、最初にESD耐量の高いドレイン素子領域12dに電流が流れ、順を追ってその他のドレイン素子領域12a、12b、12c、12e、12f、12gにも電流が流れると考えられる。
【0051】
ESDが印加された際の初期の大きな電流をESD耐量が高いドレイン素子領域12dが担うことで、ドレイン素子領域全体の幅を広くした場合と同等のESD耐量向上効果が得られると考えられる。
【0052】
高いESD耐量を実現する観点から、ドレイン素子領域12dの幅は、1.2μm以上であることが好ましく、1.5μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることが更に好ましい。
【0053】
また、高いESD耐量を実現する観点から、ドレイン素子領域12dの幅は、ドレイン素子領域12a、12b、12c、12e、12f、12gの幅の2倍以上であることが好ましく、3倍以上であることがより好ましい。
【0054】
また、RonAを低くする観点から、ドレイン素子領域12a、12b、12c、12e、12f、12gの幅は、0.5μm以下であることが好ましい。
【0055】
本実施形態によれば、高いESD耐量と低いRonAが両立するnチャネル型LDMOSトランジスタが実現可能である。
【0056】
(第2の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、少なくとも一つの第1の半導体領域が、複数の第1の半導体領域の内の末端に位置する第1の半導体領域である点で、第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0057】
図5は、本実施形態の半導体装置の模式図である。
図5は上面図である。
【0058】
ドレイン素子領域12a、12b、12c、12d、12e、12f、12gの内、末端に位置するドレイン素子領域12aの幅(
図5中のw3)及びドレイン素子領域12gの幅(
図5中のw4)が、その他のドレイン素子領域12b、12c、12d、12e、12fの幅(
図5中のw5)よりも広い。
【0059】
複数のドレイン素子領域12a、12b、12c、12d、12e、12f、12gの内、末端に位置するドレイン素子領域12aやドレイン素子領域12gは特異点になることから、ESDによる破壊が生じやすい傾向がある。本実施形態では、特に、末端に位置するドレイン素子領域12a及びドレイン素子領域12gの幅を広げることで、更にESD耐量を向上させることが可能である。
【0060】
本実施形態によれば、第1の実施形態同様、高いESD耐量と低いRonAが両立するnチャネル型LDMOSトランジスタが実現可能である。
【0061】
実施形態においては、ドレイン素子領域の数が7個の場合を例に説明したが、ドレイン素子領域の数は3個以上であれば、7個に限定されるものではない。
【0062】
実施形態においては、nチャネル型LDMOSトランジスタを例に説明したが、pチャネル型LDMOSトランジスタでも同様の効果を得ることが可能である。pチャネル型LDMOSトランジスタの場合は、第1導電型がp型、第2導電型がn型となる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。