【解決手段】電気化学デバイスは、第1電極ユニットと、リチウムイオン供給源とを具備する。上記第1電極ユニットにおいては、第1正極と第1負極とが第1セパレータを介して交互に積層されている。上記リチウムイオン供給源は、上記第1負極に電気的に接続された第1金属箔と、上記第1金属箔に対向し上記第1負極に電気的に接続された第2金属箔とを有する。上記負極には、上記第1金属箔と上記第2金属箔との間に設けられた金属リチウム層からリチウムイオンのプレドープがなされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金属箔に設けた金属リチウム層が不均一に溶解し、金属箔付近に金属リチウムが残存した場合、負極におけるリチウムイオンのプレドープのばらつきがより大きくなる可能性がある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、負極におけるリチウムイオンのプレドープのばらつきが抑制された電気化学デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電気化学デバイスは、第1電極ユニットと、リチウムイオン供給源とを具備する。上記第1電極ユニットにおいては、第1正極と第1負極とが第1セパレータを介して交互に積層されている。上記リチウムイオン供給源は、複数の貫通孔を有し上記第1負極に電気的に接続された第1金属箔と、上記第1金属箔に対向し上記第1負極に電気的に接続された第2金属箔とを有する。上記第1負極には、上記第1金属箔と上記第2金属箔との間に設けられた金属リチウム層からリチウムイオンのプレドープがなされている。
【0008】
このような電気化学デバイスによれば、上記第1金属箔と上記第2金属箔との間に、未溶解の金属リチウム層が残存しにくくなる。これにより、上記金属リチウム層が満遍なく電解液に溶解して、上記負極におけるリチウムイオンのプレドープ分布がより均一になる。
【0009】
上記の電気化学デバイスにおいては、上記第1電極ユニットと上記リチウムイオン供給源との間に第2セパレータをさらに具備してもよい。上記第1金属箔は、上記第2金属箔と上記第2セパレータとの間に設けられている。
【0010】
このような電気化学デバイスによれば、上記リチウムイオン供給源と上記電極ユニットとが直接的に接触しなくなる。
【0011】
上記の電気化学デバイスにおいては、上記リチウムイオン供給源において、上記第1金属箔の主面と、上記第2金属箔の主面とは、接触可能に構成されてもよい。
【0012】
このような電気化学デバイスによれば、上記金属リチウム層の上記第1金属箔及び上記第2金属箔に対する接触の機会が増加する。これにより、上記金属リチウム層が満遍なく電解液に溶解して、上記負極におけるリチウムイオンのプレドープ分布がより均一になる。
【0013】
上記の電気化学デバイスは、第2正極と第2負極とが第3セパレータを介して交互に積層された第2電極ユニットをさらに具備してもよい。上記リチウムイオン供給源は、上記第1電極ユニットと上記第2電極ユニットとの間に設けられている。上記第2金属箔には、複数の貫通孔が設けられている。
【0014】
このような電気化学デバイスによれば、上記金属リチウム層が満遍なく電解液に溶解して、上記負極におけるリチウムイオンのプレドープ分布がより均一になる。
【0015】
また、上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電気化学デバイスは、電極ユニットと、リチウムイオン供給源とを具備する。上記電極ユニットは、正極と、負極と、上記正極と上記負極との間に設けられたセパレータを有する。上記リチウムイオン供給源は、複数の貫通孔を有し上記負極に電気的に接続された第1金属箔と、上記第1金属箔に対向し上記第1負極に電気的に接続された第2金属箔とを有する。上記負極には、上記第1金属箔と上記第2金属箔との間に設けられた金属リチウム層からリチウムイオンのプレドープがなされている。このような電気化学デバイスによれば、上記第1金属箔と上記第2金属箔との間に、未溶解の金属リチウム層が残存しにくくなる。これにより、上記金属リチウム層が満遍なく電解液に溶解して、上記負極におけるリチウムイオンのプレドープ分布がより均一になる。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように、本発明によれば、負極におけるリチウムイオンのプレドープのばらつきがより抑制された電気化学デバイスが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。
【0019】
[電気化学デバイスの構成]
本実施形態に係る電気化学デバイス100の構成を以下に説明する。本実施形態で例示される電気化学デバイス100は、リチウムイオンキャパシタである。
【0020】
図1(a)は、本実施形態に係る電気化学デバイスを示す模式的断面図である。
図1(b)は、本実施形態に係る電気化学デバイス内の電極ユニットを示す模式的断面図である。
【0021】
図1(a)に示すように、電気化学デバイス100は、電極ユニット101(第1電極ユニット)と、リチウムイオン供給源180と、セパレータ152(第2セパレータ)とを具備する。電気化学デバイス100において、電極ユニット101、リチウムイオン供給源180及びセパレータ152は、電解液によって浸漬されることが可能である。電極ユニット101及びリチウムイオン供給源180のそれぞれは、図示する数に限らず、それぞれが複数設けられてもよい。
【0022】
図1(a)には、リチウムイオンが電極ユニット101にプレドープされる前の状態が表されている。電極ユニット101及びリチウムイオン供給源180は、X−Y軸平面おいて、例えば、矩形状である。リチウムイオン供給源180は、例えば、シート状である。本実施形態では、電極ユニット101からリチウムイオン供給源180に向かう方向を上方、リチウムイオン供給源180から電極ユニット101に向かう方向を下方とする。
【0023】
リチウムイオン供給源180は、Z軸方向において、電極ユニット101に並ぶ。例えば、リチウムイオン供給源180は、Z軸方向において、セパレータ152を介して電極ユニット101に対向する。例えば、リチウムイオン供給源180の主面180d(下面)は、電極ユニット101の主面101u(上面)とZ軸方向において重なっている。リチウムイオン供給源180は、金属箔181(第1金属箔)と、金属箔182(第2金属箔)と、金属リチウム層183とを有する。
【0024】
金属リチウム層183は、金属箔181と金属箔182との間に設けられている。金属箔182は、金属リチウム層183を介して金属箔181に対向する。金属箔181は、Z軸方向において、金属箔182とセパレータ152との間に設けられている。金属箔181、182のそれぞれは、電極ユニット101の負極130と直接的または間接的な電気的接続がなされている。
【0025】
金属箔181には、複数の貫通孔181hが設けられている。貫通孔181hの孔径は、0.05mm以上0.5mm以下である。XY平面における複数の貫通孔181hの占有率(金属箔181の開口率)は、10%以上30%以下である。複数の貫通孔は、金属箔182に設けられてもよい。
【0026】
金属リチウム層183は圧着等によって金属箔181または金属箔182に固定されている。金属リチウム層183は、金属箔181の主面または金属箔182の主面に沿って均等な厚さを有する。
【0027】
セパレータ152は、電極ユニット101を囲む。これにより、セパレータ152が電極ユニット101とリチウムイオン供給源180との間に設けられ、リチウムイオン供給源180の電極ユニット101への直接的な接触が避けられる。セパレータ152は、電解液中に含まれるイオンを透過する。
図1(a)の例では、セパレータ152は、電極ユニット101のXZ軸平面における任意の断面において電極ユニット101に捲回されている。電極ユニット101のXZ軸平面における任意の断面においてセパレータ152は、多重に捲回されてもよい。
【0028】
また、
図1(a)の例では、電極ユニット101のY軸方向における端部101eは、セパレータ152から開放されている。電極ユニット101は、端部101eを経由してリチウムイオン供給源180、他の電極ユニット及び電極端子等の外部との電気的な接続を取ることができる。
【0029】
図1(b)に示すように、電極ユニット101は、負極130(第1負極)と、正極140(第1正極)と、セパレータ151(第1セパレータ)を有する。負極130、正極140、セパレータ151及びリチウムイオン供給源180のそれぞれは、XY平面において平行に配置されている。負極130、正極140、及びセパレータ151のそれぞれは、例えば、シート状である。
【0030】
電極ユニット101においては、正極140と負極130とがセパレータ151を介して交互にZ軸方向に積層されている。
図1(b)の例では、正極140と負極130とがセパレータ151を介して交互に積層する方向がZ軸方向に対応している。複数の正極140同士は、直接的または間接的に電気的な接続がなされている。複数の負極130同士は、直接的または間接的に電気的な接続がなされている。負極130の個数及び正極140の個数は、図示される数に限られない。
【0031】
負極130は、負極集電体132と、負極活物質層133とを有する。負極活物質層133は、負極集電体132の主面132a、132bに設けられている。すなわち、Z軸方向において、負極集電体132は、2つの負極活物質層133の間に設けられている。負極130における任意の負極集電体132は、直接的または間接的に、他の負極集電体132、金属箔181、182、負極端子等に電気的に接続されている。
【0032】
正極140は、正極集電体142と、正極活物質層143とを有する。正極活物質層143は、正極集電体142の主面142a、142bに設けられている。すなわち、Z軸方向において、正極集電体142は、2つの正極活物質層143の間に設けられている。正極140における任意の正極集電体142は、直接的または間接的に、他の正極集電体142、正極端子等に電気的に接続されている。
【0033】
セパレータ151は、負極130と正極140とを絶縁する。セパレータ151は、負極130と正極140を隔て、電解液中に含まれるイオンを透過する。
【0034】
電極ユニット101の負極130に接続されたリチウムイオン供給源180が電解液に浸漬されると、金属リチウム層183が電解液に溶ける。これにより、電解液中のリチウムイオンが電極ユニット101の負極130にプレドープされる。すなわち、負極130には、金属箔181と金属箔182との間に設けられた金属リチウム層183からリチウムイオンのプレドープがなされる。また、電気化学デバイス100は、外装フィルムで封止可能な構造となっており、電解液注入後、減圧下で封止される。この封止による締め付けにより、金属箔181及び金属箔182は、互いに近づく方向に押圧力を受けている。
【0035】
例えば、プレドープが進行し、金属リチウム層183が電解液に溶けて金属リチウム層183の厚さが薄くなるにつれ、金属箔181と、金属箔182とがより接近する。そして、金属リチウム層183の溶解が終了した場合、例えば、金属箔181の主面181uと、金属箔182の主面182dとはさらに接近したり、接触したりする。
【0036】
また、本実施形態の電極ユニット101においては、正極140と負極130とがセパレータ151を介して交互に積層されているのではなく、正極140と負極130とがそれぞれ1つ設けられ、正極140と負極130との間にセパレータ151が介在した構成であってもよい。
【0037】
電気化学デバイス100の材料について説明する。
【0038】
金属箔181、182は、例えば、銅箔である。金属リチウム層183は、例えば、金属リチウム箔である。金属リチウム層183の量は、リチウムイオンのプレドープにおいて負極活物質層133にドープ可能な範囲で任意に調整される。
【0039】
負極集電体132は、例えば、金属箔である。金属箔には、複数の貫通孔が設けられてもよい。負極集電体132は、例えば、銅箔等でもよい。負極活物質層133に含まれる負極活物質は、電解液中のリチウムイオンを吸蔵と放出とが可能な材料であり、例えば難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、グラファイトやソフトカーボン等の炭素系材料でもよい。負極活物質層133は、負極活物質がバインダ樹脂と混合されたものでもよく、さらに導電助剤を含んでもよい。例えば、負極活物質層133は、上記の活物質、導電助剤及び合成樹脂のスラリー状の混合物を塗布してシート状に形成し、それを裁断したものである。
【0040】
バインダ樹脂は、負極活物質を接合する合成樹脂でよい。バインダ樹脂は、例えばカルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド、フッ素系ゴム、ポリビニリデンフルオライド、イソプレンゴム、ブタジエンゴム及びエチレンプロピレン系ゴム等を用いてもよい。
【0041】
導電助剤は、導電性材料からなる粒子であり、負極活物質の間での導電性を向上させるものでよい。導電助剤は、例えば、黒鉛、カーボンブラック等の炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。なお、導電助剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子などであってもよい。
【0042】
正極集電体142の材料は、例えば、アルミニウム等である。正極活物質層143に含まれる正極活物質は、例えば、活性炭、PAS(Polyacenic Semiconductor:ポリアセン系有機半導体)、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、または複数の遷移元素から構成されるリチウム複合酸化物等の活物質の少なくともいずれかを含む。正極活物質層143は、上記の活物質、導電助剤(例えば、カーボンブラック)及び合成樹脂(例えば、PTFE等)のスラリー状の混合物を塗布してシート状に形成し、それを裁断したものである。
【0043】
セパレータ151、152は、織布、不織布、合成樹脂微多孔膜等でもよい。セパレータ151、152は、ガラス繊維、セルロース繊維、ポリエチレン樹脂等のプラスチック繊維等からなる多孔質シートでもよい。
【0044】
電解液は、任意に選択することが可能である。例えば、電解液において、カチオンとしては、リチウムイオンを少なくとも含む。アニオンとしてはBF
4−(四フッ化ホウ酸イオン)、PF
6−(六フッ化リン酸イオン)、(CF
3SO
2)
2N
−(TFSAイオン)等のアニオンを含み、溶媒としてはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、スルホラン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、エチルイソプロピルスルホン等を含むものとすることができる。具体的には、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF
4)または、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)のプロピレンカーボネート溶液等でもよい。
【0046】
本実施形態に係る電気化学デバイス100の作用を説明する前に、比較例に係る電気化学デバイス500の作用について説明する。
【0047】
図2(a)及び
図2(b)は、比較例に係る電気化学デバイスの作用を示す模式的断面図である。
【0048】
図2(a)に示すように、比較例に係る電気化学デバイス500は、金属箔182を有するものの、金属箔181を有していない。電気化学デバイス500のリチウムイオン供給源580は、金属リチウム層183と金属箔182とからなる。
【0049】
プレドープにおいて、電極ユニット101、リチウムイオン供給源580及びセパレータ152が電解液120に浸漬されると、金属箔182は、金属リチウムから電子(e)を受け取り、イオンとなったリチウムイオン(Li
+)が電解液120に放出される。電解液120に放出されたリチウムイオンは、セパレータ152を通過して、電極ユニット101の負極130(負極活物質層133)にドープされ始める。
【0050】
ここで、電解液120は、金属リチウム層183の結晶粒界、金属リチウム層183と金属箔182との界面等に浸み込む場合がある。これにより、プレドープでは、金属リチウム層183の厚さが均一に減らず、複数の金属リチウム層183が島状となって残存する場合がある。例えば、プレドープが進行すると、金属箔182とセパレータ152との間に、フレーク状または粉状の未反応の金属リチウム層183が生成する場合がある(
図2(b))。
【0051】
このような電解液に溶けない未反応の金属リチウム層183が金属箔182から離れ、分散すると、個々の金属リチウム層183は、金属リチウムから電子を受容できる受容体(例えば、金属箔182)を失う。これにより、金属箔182とセパレータ152との間に、フレーク状または粉状の金属リチウム層183が分散したまま残存する。特に、金属箔182が対向するセパレータ152は絶縁体であるため、個々の金属リチウム層183がセパレータ152に接したとしても、セパレータ152は、金属リチウムから電子を受けることができない。
【0052】
すなわち、比較例に係る電気化学デバイス500においては、金属箔182とセパレータ152との間に、電解液120に未溶解の金属リチウム層183が残存しやすい。これにより、電気化学デバイス500においては、負極130におけるリチウムイオンのプレドープの分布が不均一になりやすい。例えば、残存する金属リチウム層183付近の負極130では、リチウムイオンのプレドープ量が局所的に減少する。
【0053】
これに対して、本実施形態に係る電気化学デバイス100の作用を説明する。
【0054】
図3(a)〜
図3(c)は、本実施形態に係る電気化学デバイスの作用を示す模式的断面図である。
【0055】
図3(a)に示すように、プレドープにおいて、電極ユニット101、リチウムイオン供給源180及びセパレータ152が電解液120に浸漬されると、金属箔182は、金属リチウムから電子を受け取り、リチウムイオンが電解液120に放出される。リチウムイオンは、セパレータ152を通過して、電極ユニット101の負極130(負極活物質層133)にドープされ始める。
【0056】
電気化学デバイス100においても、プレドープが進行すると、金属箔181と金属箔182との間に、フレーク状または粉状の金属リチウム層183が生成する場合がある(
図3(b))。
【0057】
しかしながら、電気化学デバイス100においては、フレーク状または粉状の金属リチウム層183が金属箔182から離れたとしても、個々の金属リチウム層183が金属箔182に対向する金属箔181に接触しやすくなっている。この結果、電気化学デバイス100においては、比較例に比べて、金属リチウム層183がフレーク状または粉状の金属リチウムとして、より残存しにくくなっている。
【0058】
また、電気化学デバイス100においては、金属箔181及び金属箔182が互いに近づくように、金属箔181及び金属箔182が押圧力を受けている。これにより、電気化学デバイス100においては、個々の金属リチウム層183が金属箔181と金属箔182とによって強制的に挟まれている。この結果、電気化学デバイス100においては、比較例に比べて個々の金属リチウム層183が集電体(金属箔181、182)に接触する確率が高くなっている。
【0059】
このように、電気化学デバイス100によれば、金属箔181と金属箔182との間に、未溶解の金属リチウム層183が残存しにくくなる(
図3(c))。これにより、電気化学デバイス100では、金属箔181と金属箔182との間に設けられた金属リチウム層183が満遍なく電解液120に溶解して、未反応の金属リチウム層183が減少する。この結果、電気化学デバイス100では、負極130におけるリチウムイオンのプレドープ分布がより均一になる。
【0060】
図4は、本実施形態に係る電極ユニットを示す模式的断面図である。
【0061】
電気化学デバイス100は、電極ユニット101に限らず、別の電極ユニット102(第2電極ユニット)を具備してもよい。電極ユニット102においては、正極145(第2正極)と負極135(第2負極)とがセパレータ153(第3セパレータ)を介してZ軸方向に交互に積層されている。負極135は、負極集電体137と、負極集電体137を挟む負極活物質層138とを有する。正極145は、正極集電体147と、正極集電体147を挟む正極活物質層148とを有する。
【0062】
リチウムイオン供給源180は、Z軸方向において電極ユニット101と電極ユニット102との間に設けられている。金属箔182には、複数の貫通孔182hが設けられている。正極145の構成、材料は、正極140と同じである。負極135の構成、材料は、負極130と同じである。セパレータ153の構成、材料は、セパレータ151と同じである。
【0063】
負極135における任意の負極集電体137は、直接的または間接的に、他の負極集電体137、金属箔181、182、負極端子等に電気的に接続されている。正極140における任意の正極集電体147は、直接的または間接的に、他の正極集電体147、正極端子等に電気的に接続されている。
【0064】
このような構成であれば、プレドープ後、金属箔181、182間において金属リチウム層183が残存しにくくなるとともに、電極ユニット102の増設によって蓄電容量が増加する。さらに、金属リチウム層183は、貫通孔181hを介して、電極ユニット101に満遍なく行き渡るとともに、貫通孔182hを介しても電極ユニット102に満遍なく行き渡る。
【0065】
図5(a)は、本実施形態に係る外装フィルムに封止された電気化学デバイスを示す模式的断面図である。
図5(b)は、本実施形態に係る外装フィルムに封止された電気化学デバイスを示す模式的斜視図である。
図5(a)には、
図5(b)のA−A線断面が示されている。
【0066】
図5(a)に示すように、電気化学デバイス100は、電極ユニット101、102、103が外装フィルム106に封止されている。電極ユニット103の構成は、例えば、電極ユニット101と同じである。電極ユニット101と電極ユニット102との間及び電極ユニット102と電極ユニット103との間には、リチウムイオン供給源180が設けられている。負極端子131は、電極ユニット101、102、103のそれぞれの負極に電気的に接続されている。正極端子141は、電極ユニット101、102、103のそれぞれの正極に電気的に接続されている。
【0067】
外装フィルム106は、外装フィルム106aと外装フィルム106bとを有する。外装フィルム106aと、外装フィルム106bとは、電極ユニット101、102、103の中央に位置する電極ユニット101の外周で、例えば、熱圧着等によって接合されている。これにより、リチウムイオン供給源180及び電極ユニット101、102、103は、外装フィルム106によって密閉されるため、例えば、電解液注入後、減圧下で封止ことにより、外装フィルム内部は外部の気圧よりも低く、外装フィルム106は、外装フィルム106の内部に押圧力を与え、金属箔181と金属箔182とが近づく押圧力が金属箔181と金属箔182に与えられる。リチウムイオン供給源180及び電極ユニット101、102、103を包む外装フィルム106は、リチウムイオン供給源180及び電極ユニット101、102、103よりもX−Y平面における寸法が大きく、電極面積またはそれ以上の面積で電極ユニット101、102、103を加圧することでも金属箔181と金属箔182に押圧力を与える。
【0068】
図6は、本実施形態に係るリチウムイオン供給源の変形例を示す模式的断面図である。
【0069】
リチウムイオン供給源180においては、金属箔181の主面181dよりも主面181uのほうが粗く構成され、金属箔182の主面182uよりも主面182dのほうが粗く構成されている。金属箔181、182の表面を粗くする手法は、例えば、サンドブラスト等である。
【0070】
このような構成によれば、プレドープの進行中、金属リチウム層183が金属箔181の主面181uまたは金属箔182の主面182dに接触する機会がさらに増加する。これにより、金属リチウム層183は、さらに満遍なく電解液120に溶解して、未反応の金属リチウム層183がより減少する。この結果、電気化学デバイス100では、負極130におけるリチウムイオンのプレドープ分布がより均一になる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、負極130、正極140、セパレータ151及びリチウムイオン供給源180のそれぞれは、軸芯を中心に捲回されてもよい。
【実施例】
【0072】
本実施形態に係る電気化学デバイス100(
図1(a)、(b))が作製された。ここで、電極ユニット101は、9個の正極140と、10個の負極130とを含む。電極ユニット101の平面サイズは、100mm×100mmである。電気デバイス100の容量は、300mAhである。電気化学デバイス100は、リチウムイオン供給源180を上に向けて、温度30℃、30日間保管された。この30日間の保管後、金属箔181、182に金属リチウム層183の残存がないことが確認された。
【0073】
さらに、この電気化学デバイス100に対して、充電条件:30A、3.8V(定電流充電)、放電条件:30A、2.2V(定電流放電)、試験温度:60℃での5万回の充放電サイクル試験を行った。試験後、電気化学デバイス100の内部抵抗は、試験開始前の内部抵抗の120%程度であった。
【0074】
一方、比較例に係る電気化学デバイス500(
図2)も作製された。電気化学デバイス500の構成は、リチウムイオン供給源180以外は電気化学デバイス100と同じである。すなわち、比較例では、リチウムイオン供給源180に金属箔181が設けられていない。比較例では、温度30℃下での保管期間をさらに長くして60日としたが、金属箔182に金属リチウム層183の残存があることが確認された。
【0075】
さらに、この電気化学デバイス500に対して、充電条件:30A、3.8V(定電流充電)、放電条件:30A、2.2V(定電流放電)、試験温度:60℃での5万回の充放電サイクル試験を行った。試験後、電気化学デバイス500の内部抵抗は、試験開始前の内部抵抗の170%まで上昇した。