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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-164192(P2018-164192A)
(43)【公開日】2018年10月18日
(54)【発明の名称】観測衛星用ターゲットの防護ケース
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/145 20060101AFI20180921BHJP
【FI】
   H04B7/145
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-60279(P2017-60279)
(22)【出願日】2017年3月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000192615
【氏名又は名称】神鋼建材工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105692
【弁理士】
【氏名又は名称】明田 莞
(74)【代理人】
【識別番号】100161252
【弁理士】
【氏名又は名称】明田 佳久
(72)【発明者】
【氏名】仲岡 重治
(72)【発明者】
【氏名】掃部 孝博
(72)【発明者】
【氏名】小島 義晴
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 岳季
(72)【発明者】
【氏名】栗林 健一
(72)【発明者】
【氏名】中村 大輔
【テーマコード(参考)】
5K072
【Fターム(参考)】
5K072AA30
5K072BB18
5K072DD01
5K072FF20
5K072GG19
5K072HH08
(57)【要約】
【課題】本発明は、観測衛星からのマイクロ波を透過させることができ、さらに、観測衛星からのマイクロ波を観測衛星用ターゲットで確実に反射させることにより、正確かつ確実に自動観測させることができる観測衛星用ターゲットの防護ケースを提供する。
【解決手段】観測衛星用ターゲットを収納するための防護ケースであって、該防護ケースが、前記防護ケース部と、該防護ケース部を支える脚部とから構成され、また、前記防護ケース部が、前記観測用ターゲットを載置する台座部と、該台座部の左右それぞれの側面を天井まで覆って屋根を形成する平部と、前記台座部の前後面をそれぞれ覆う妻部と、を少なくとも備え、かつ、前記平部及び前記妻部がマイクロ波を透過し易い材料で構成されたことを特徴とする観測衛星用ターゲットの防護ケース。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測衛星用ターゲットを収納するための防護ケースであって、該防護ケースが、前記防護ケース部と、該防護ケース部を支える脚部とから構成され、また、前記防護ケース部が、前記観測用ターゲットを載置する台座部と、該台座部の左右それぞれの側面を天井まで覆って屋根を形成する平部と、前記台座部の前後面をそれぞれ覆う妻部と、を少なくとも備え、かつ、前記平部及び前記妻部がマイクロ波を透過し易い材料で構成されたことを特徴とする観測衛星用ターゲットの防護ケース。
【請求項2】
前記左右の平部が、マイクロ波が透過可能な合成樹脂をコーティングした布製であることを特徴とする請求項1に記載の観測衛星用ターゲットの防護ケース。
【請求項3】
前記平部が、上部が平面で下部が曲面で構成され、該曲面が、上部が内側に引っ込んで、下部が外側に出っ張った2つの曲率を有する曲面をしており、かつ、該平面及び該曲面のいずれの接線も水平面とのなす角度が40度以上であることを特徴とする請求項2に記載の観測衛星用ターゲットの防護ケース。
【請求項4】
前記左右の平部の最頂部に雪割板を設けたことを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の観測衛星用ターゲットの防護ケース。
【請求項5】
前記妻部が、透明な合成樹脂製であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の観測衛星用ターゲットの防護ケース。
【請求項6】
前記台座部に、前記観測衛星用ターゲットを所定の角度に指向させて固定する角度調整機構を備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の観測衛星用ターゲットの防護ケース。
【請求項7】
前記脚部に自穿孔アンカーロッドを用いたことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の観測衛星用ターゲットの防護ケース。
【請求項8】
前記自穿孔アンカーロッドと台座部との間に、ジョイント金具及び継ぎ足しアンカーロッドを加えたことを特徴とする請求項7に記載の観測衛星用ターゲットの防護ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観測衛星用ターゲットを鉄道や道路等に近接した法面に設置することにより、観測衛星からのマイクロ波を、長期間、確実に反射させて観測させるためのもので、雪や落ち葉を積もらせず、また、小動物や害虫等の侵入から観測用ターゲットを守る防護ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道や道路に近接する法面の崩壊によって、鉄道や道路が被災することがしばしばあった。その法面崩壊を予知するため、人工衛星を用いた法面の観測が行われており、例えば、GPSを用いて法面にGPS用の受信機を設置して、法面の変化の観測が行われている。GPSによる観測は、高精度に計測できるというメリットがあるが、GPSを受信するためには電源が必要であり、バッテリーを使用すれば、頻繁にバッテリーを交換する必要に迫られ、その交換作業の安全性やその人件費が掛かるという問題があった。また、それを防ぐために自動計測を行うならば、急峻な法面に電線を引く必要があり、設置費用や手間が掛かると共に、配線した電気ケーブルも維持管理しなければならないという問題があった。
【0003】
近年、地域観測、災害状況把握等を観測するために地球観測衛星が利用されている。観測衛星を用いた観測方法は、観測衛星から照射したマイクロ波の反射波を観測衛星が受信して観測している。マイクロ波は、光学による測定と違い、雲や噴煙があっても影響されず地表を観測できるので大変便利である。また、同じ場所を2回以上観測してデータの変化を解析する所謂「インターフェロメトリ」という手法によって、地形等の変化等を詳細に観測することができる。よって、法面を適宜計測することによって、法面の変化を観測し、土砂災害等を未然に防ぐことに役立たせることができる。
【0004】
しかも、観測衛星による観測は、観測される法面側に電源の必要がなく、電気ケーブルの設置及び維持管理が不要であるので好適である。例えば、観測地点にビームを照射して、その反射ビームを観測する観測衛星を用いた観測方法が先行技術として開示されている(参考文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−105953号公報
【0006】
しかし、観測衛星で直接地表面を計測した場合、測定精度のばらつきが大きいという問題があった。そこで対策として、マイクロ波を効率よく反射させることができる金属製の反射板(観測衛星用ターゲット)を法面上に設置して、その観測衛星用ターゲットを測定することによって、法面の変化を観測する方法が用いられてきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
観測衛星用ターゲットを用いれば精度よく観測することができるが、法面上に設置された観測衛星用ターゲットを長期間観測する場合には、落ち葉や虫等、また、降雪がある地方では、積雪によって、観測衛星用ターゲットが埋没してしまい、観測衛星から照射されたマイクロ波を正確に反射できなくなって、ターゲットの位置を正確に観測できない不具合があるという問題があった。
【0008】
本発明は、これらの問題を解決したものであって、観測衛星からのマイクロ波を透過させることができると共に、防護ケースの屋根には雪や落ち葉が積もらずに、また、小動物や害虫等が防護ケース内に侵入をさせなくして、観測衛星からのマイクロ波を観測衛星用ターゲットで確実に反射させることによって、正確かつ確実に自動観測させることができる観測衛星用ターゲットの防護ケースを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る観測衛星用ターゲットの防護ケースは、観測衛星用ターゲットを収納するための防護ケースであって、該防護ケースが、前記防護ケース部と、該防護ケース部を支える脚部とから構成され、また、前記防護ケース部が、前記観測用ターゲットを載置する台座部と、該台座部の左右それぞれの側面を天井まで覆って屋根を形成する平部と、前記台座部の前後面をそれぞれ覆う妻部と、を少なくとも備え、かつ、前記平部及び前記妻部がマイクロ波を透過し易い材料で構成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る観測衛星用ターゲットの防護ケースは、請求項1に記載の観測衛星用ターゲットの防護ケースにおいて、前記左右の平部が、マイクロ波が透過可能な合成樹脂をコーティングした布製であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る観測衛星用ターゲットの防護ケースは、請求項2に記載の観測衛星用ターゲットの防護ケースにおいて、前記平部が、上部が平面で下部が曲面で構成され、該曲面が、上部が内側に引っ込んで、下部が外側に出っ張った2つの曲率を有する曲面をしており、かつ、該平面及び該曲面のいずれの接線も水平面とのなす角度が40度以上であることを特徴とする。請求項4に係る観測衛星用ターゲットの防護ケースは、請求項1又は2又は3に記載の観測衛星用ターゲットの防護ケースにおいて、前記左右の平部の最頂部に雪割板を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る観測衛星用ターゲットの防護ケースは、請求項1から4のいずれかに記載の観測衛星用ターゲットの防護ケースにおいて、前記妻部が、透明な合成樹脂製であることを特徴とする。また、請求項6に係る観測衛星用ターゲットの防護ケースは、請求項1から5のいずれかに記載の観測衛星用ターゲットの防護ケースにおいて、前記台座部に、前記観測衛星用ターゲットを所定の角度に向かせて固定する角度調整機構を備えたことを特徴とする。また、請求項7に係る観測衛星用ターゲットの防護ケースは、請求項1から6のいずれかに記載の観測衛星用ターゲットの防護ケースにおいて、前記脚部に自穿孔アンカーロッドを用いたことを特徴とする。また、請求項8に係る観測衛星用ターゲットの防護ケースは、請求項7に記載の観測衛星用ターゲットの防護ケースにおいて、前記自穿孔アンカーロッドと台座部との間に、ジョイント金具及び継ぎ足しアンカーロッドを加えたことを特徴とする。
【0013】
これらの構成を採用することにより本発明に係る観測衛星用ターゲットの防護ケースは、防護ケース部の内部に観測衛星用ターゲットを所定の方向に指向して固定することができる。また、法面上に固定された脚部によって、防護ケース部内の観測衛星用ターゲットの位置を法面の変位に、正確に連動させることができる。また、観測衛星用ターゲットは金属製であるので、マイクロ波を反射し易い。また、観測衛星と観測衛星用ターゲットの中間に位置し、側壁と一体となった屋根である平部と、妻部とは、それぞれ、マイクロ波を透過し易い材料で構成されている。よって、観測衛星から照射されたマイクロ波及び観測衛星用ターゲットによって反射されたマイクロ波は、平部及び妻部によって妨害されないので、観測衛星用ターゲットの位置を正確に観測することができる。なお、台座部及び脚部は、観測衛星と観測衛星用ターゲットと中間に位置しないので、マイクロ波を透過させる必要がないから、非金属製である樹脂製や木製でも、金属製でもどちらでもよい。このように、観測衛星を用いて法面の変位を観測することができるので、法面崩壊を事前に察知することができる。また、観測衛星用ターゲットを複数個用いれば、現場から離れた場所で同時に複数個所を観測することができる。よって、GPS測量による観測に比べ人件費を削減することができる。
【0014】
また、本発明に係る観測衛星用ターゲットの防護ケースは、脚部が高床式になっているので、ねずみ等の小動物や害虫が侵入しにくくなっており、小動物や害虫によるトラブルに巻き込まれない。また、雑草及び積雪等によってもターゲットが埋もれないので、観測衛星で確実にターゲットを観測できる。また、ターゲットは、密閉された防護ケース内に設置されるので、防護ケース内が鳥の巣にされることを防止できる。このように、観測衛星用ターゲットは、マイクロ波の反射を確実に行うことができるので、正確に位置を観測して把握できる。
【0015】
また、本発明に係る観測衛星用ターゲットの防護ケースは、平部の最頂部に雪割板を設け、また、平部の平面又は曲面のいずれ位置での接線も、水平面とのなす角度を40度以上にすれば、雪が頂部から割れて、かつ、滑り落ちて、屋根に雪が積もることを防止できる。また、落ち葉についても防護ケースの屋根に積ることなしに滑り落とすことができる。また、平部は、下部の曲面のうち、上部が内側に引っ込んでおり、また、下部が外部に出っ張った形状なので、一つの面が略直角二等辺三角形をした三角錐形状の観測衛星用ターゲットを省スペース的に効率よく収納できる。よって防護ケース全体を小型で軽量化を図ることができるので、運搬が容易で、法面や狭い箇所でも施工を容易にして設置できる。
【0016】
また、本発明に係る観測衛星用ターゲットの防護ケースは、平部が、マイクロ波が透過する樹脂製の枠組みにテント生地(例えば、ポリエステル基布にポリ塩化ビニルコーティングしたものやグラスファイバー基布にポリテトラフルオロエチレンコートしたもの)で構成されているので、マイクロ波は透過すると共に降雨は浸入しないし、しかも、耐久性が高く長期間の観測に好適である。また、妻部は、透明な合成樹脂製なので、マイクロ波は透過するが、降雨は浸入しない。また、透明な板なので、妻部や平部を外さなくとも、観測衛星用ターゲットの状態を視認できる。よって、法面や崖に本発明に係る観測衛星用ターゲットの防護ケースを設置した場合でも、双眼鏡等を用いて離れた位置から観測衛星用ターゲットの状態を確認することができ、危険な法面に行かずに点検作業を安全にすることができる。また、平部と妻部とは、軽量化が図れるので、設置作業が容易で安全にできる。
【0017】
また、本発明に係る観測衛星用ターゲットの防護ケースは、自穿孔アンカーロッドを脚部に用いているので、岩盤や砂質土等の様々な地盤に脚部を打ち込んで、防護ケースを地盤の動きに連動させることができる。また、自穿孔ロッドにジョイント金具を使用して、アンカーロッドを継ぎ足すことができる。よって脚部の長さを法面の勾配に合わせて調整することができるので、本発明に係る観測衛星用ターゲットの防護ケースの台座部を略水平に設置しやすい。また、自穿孔アンカーロッドは、H型鋼や鋼管に比べて軽量であるので法面での運搬や施工が容易である。
【0018】
また、本発明に係る観測衛星用ターゲットの防護ケースは、台座部に観測衛星用ターゲットの方位角及び仰角を調整できる角度調整機構を設けているので、観測衛星用ターゲットを観測衛星からのマイクロ波を反射させるのに最適な方向に容易に調整して固定できるし、脚部の長さ調整で台座部を略水平とし、角度調整機構で、仰角及び方位角を微調整することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る請求項1から8に観測衛星用ターゲットの防護ケースを用いれば、脚部の自穿孔アンカーを確実に地盤に打ち込むことができて、観測用ターゲットを法面の変位に連動させることができるので、観測の精度が上がり、法面崩壊等を未然に予知することができる。また、観測衛星からのマイクロ波は確実に透過できるので、誤計測が起こらない。また、降雪や落ち葉を防護ケースに積もることを防止でき、また、小動物、鳥類、虫類の防護ケース内の侵入を防止でき、また、観測衛星用ターゲットが雑草等に埋もれることを防止できるので、観測衛星用ターゲットの観測が邪魔されずに長期に亘り確実に行うことができる。また、複数の箇所に設置することによって、多数の法面を同時に観測することができる。よって、山奥にある道路や線路沿いの法面を、現地に行かずに安全に観測衛星を使って監視することができ、災害防止に役立たせることができる。
【0020】
また、本発明に係る観測衛星用ターゲットの防護ケースを用いれば、部材がコンパクトで軽量であるので、法面での設置作業が容易であり、また、コンパクトであるので狭いスペースにも設置できる。
【0021】
また、本発明に係る観測衛星用ターゲットの防護ケースを用いれば、観測衛星用ターゲットの設置方向を簡単に微調整できるので、ターゲットの据付調整が容易で短時間にでき効率よく作業できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施するための形態に係る観測衛星用ターゲットの防護ケースの模式的斜視図である。
図2】本発明の実施するための形態に係る観測衛星用ターゲットの防護ケースの使用状態を示す模式図である。
図3】本発明の実施するための形態に係る観測衛星用ターゲットの防護ケースの使用状態を示す模式的正面図である。
図4】観測衛星用ターゲットの模式的斜視図である。
図5】観測衛星用ターゲットを台座部に設置した状態を示す模式的側面図である。
図6】観測衛星用ターゲットが台座部上を左右に回動可能であることを示す模式的平面図である。
図7図5における角度調整機構の模式的拡大側面図である。
図8】平部の曲面の形状とその接線を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1図2図3に示すように、本発明に係る観測衛星用ターゲットの防護ケース1は、観測衛星30から照射されるマイクロ波(所謂Lバンド(0.5〜1.5GHz))を反射させて反射波を観測させるための観測衛星用ターゲット20を内部に設置するためのもので、防護ケース部2と脚部3とから構成されている。また、防護ケース部2は平部5と妻部6と台座部3とを少なくとも備えており、一辺が0.5〜1.5mである。なお、図4に示すように、観測衛星用ターゲット20は、互いに直角方向に位置するように3つの平板から構成され、一つは、底面となる観測衛星用ターゲットプレート20−2であり、他の2つは、略直角二等辺三角形の形状をした観測衛星用ターゲットウイング20−1である。また、観測衛星30から照射されるマイクロ波は、金属製の観測衛星用ターゲット20の3枚の面の内側全体で反射されて、その反射波を観測衛星で観測する。観測衛星用ターゲット20の大きさは、一辺が20〜90cmである。
【0024】
防護ケース部2は、観測衛星用ターゲット20を載置している台座部4と、台座部4の側面を屋根まで覆っている2箇所の平部5と、台座部4の前後面を覆う妻部6とから少なくとも構成されている。
【0025】
台座部4は、金属製又は、例えば合成樹脂製のような非金属製の板で構成され、剛性を有している。よって、脚部3の変位に連動して台座部4も変位することができる。また、図5、6に示すように、台座部4は、角度調整機構8によって、観測衛星用ターゲット20のプレート20−2の下面に設けられたベルワッシャ20−3を下から支えると共に観測衛星用ターゲット20を、上下左右、所定の角度内で自在に指向させることができる。よって、本発明に係る観測衛星用ターゲットの防護ケース1を設置する際に厳密に位置決めする必要がなく施工が容易なうえに、角度調整機構8により観測衛星用ターゲット20を観測衛星30の軌道上の最適な方向に確実に向けることができる。なお、図7に示すように、角度調整機構8は、ロッド8−1の先端部にコマナット8−2を備えて、台座部4に、2つのロックナット8−3で固定されており、コマナット8−2が、ベルワッシャ20−3内を所定の角度内で自在に回動可能となっている。また、適切な方向に指向させた観測衛星用ターゲット20を、観測衛星用ターゲット固定具9で、台座部4に固定させている。
【0026】
妻部6は、透明な合成樹脂(例えば、ポリカーボネート、アクリル、塩化ビニルなど)製を使用しているので、観測衛星30からのマイクロ波及びその反射波は透過する。よって、観測衛星用ターゲット20の観測を阻害しない。また、透明であるので、防護ケース部2の内部を視認することができる。よって、防護ケース部2をそのままにして解体せずに、台座部4に据え付けられた観測衛星用ターゲット20の状態を確認できる。また、妻部6は、台座部4とL字型の樹脂製又は金属製の接合具で固定されており、また、表裏の妻部6を非金属製の桟10で連結され、また頂部にある樹脂製の雪割板7を固設して支えている。なお、これらの桟10や雪割板7は、観測衛星30からのマイクロ波及びその反射波を透過する。
【0027】
平部5は、マイクロ波をよく透過させるための生地として誘電率の高いポリエステル基布をポリ塩化ビニルコーティングした防水・撥水テント生地を用いるとよい。これにより、観測衛星30からのマイクロ波及びその反射波は透過するので、観測衛星用ターゲット20の観測を阻害しない。また、風雨の防護ケース内の侵入を防ぐことができる。また、テント生地は軽量なので、平部5を支える台座部4、妻部6及び脚部3に負担をかけないし、また、法面上での設置作業における運搬や施工が容易である。また、平部5は、上端部を雪割板7で、下端部を台座部4で、また両側面を妻部6で固定し、中間部を桟10で支えられている。したがって、平部5は、風雪にも耐える強度を有しているし、また、テント生地は耐久性が高いので、長期間、防護ケースを交換せずに観測することができる。また、平部5は、鋭意検討を重ねた結果、下部が外部に出張った曲面で、上部が内部に引っ込んだ曲面の2つの曲面5−bが組合わさり、さらにその上部が平面5−aの形状をしており、その曲面の接線5−5及び平面と水平面とのなす角α5−6は、いずれの位置においても40度以上の勾配となっているので、本発明に係る観測衛星用ターゲットの防護ケース1の平部5は、降雪を、平部5に積もらずに平部5から滑り落とすことができると共に、観測衛星用ターゲット20を省スペースに効率よく収納させることができる。また、同様に鋭意検討した結果、落ち葉も曲面の接線と水平面とのなす角α5−6が40度以上であれば、平部5から、滑り落とすことができる。また、雪割板7は、積雪を板7で左右に分割させて、平部5を滑り落とすことができる。このように、積雪や落ち葉等が防護ケース部2に積もらないので、観測衛星30からのマイクロ波が、ターゲット20で確実に反射され、正確に観測することができると共に、積雪等の重みによって、防護ケース部2が倒壊することを防止できる。
【0028】
また、図1図3に示すように、脚部3は、自穿孔アンカーを用いており、脚部3の支柱部はアンカーロッド3−3を、また、先端部に地盤を穿孔するためのビット3−1を先端部に備えている。また、場合によっては、継手3−2を備え、アンカーロッド3−3を追加させている。自穿孔アンカーを用いているので、掘削と脚部3の設置の施工時間を短縮できるし、グラウトを注入して法面の地山とアンカーロッド3−3及びビット3−1とを固着させて一体とすることがよくできるので、本発明に係る観測衛星用ターゲットの防護ケース1を法面の動きに連動させることができ、観測衛星30の観測データを法面崩壊の予知に役立たせることができる。なお、脚部3は、金属製であるが、観測衛星30と観測衛星用ターゲット20との間に位置していないので、観測の妨害をしない。また、アンカーロッド3−3は、H鋼や鋼管より軽量で施工がし易い。また、脚部3によって、本発明に係る観測衛星用ターゲットの防護ケース1は高床式になるので、ねずみ等の小動物や害虫の侵入を防ぎ、観測衛星用ターゲット20が、雑草に埋もれることもない。
【0029】
次に、本発明に係る観測衛星用ターゲットの防護ケース1の使用方法の一例を説明する。まず、人が観測し難い山奥の線路の脇で、崩れれば甚大な被害が出そうな法面に、本発明に係る観測衛星用ターゲットの防護ケース1を設置する。設置する方法は、観測衛星用ターゲット20を設置する所定の位置にアンカーロッド3−3の先端にビット3−1を取付けて表土の厚み分の深さを穿孔し、グラウトを注入して地山に固設する。その際に、脚部3の4本の足の上端の高さが略水平になるように、継手3−2と最適な長さのアンカーロッド3−3を追加する。そして、脚部3に角度調整機構8が付いた台座部4を載せてボルトで固定し、角度調整機構8のコマナット 8−2の先端に観測衛星用ターゲット20を載せて所定の方向に向け、観測衛星用ターゲット固定具9を用いて、観測衛星用ターゲット20を固定する。そして、前後の妻部6を台座部4にL字型の樹脂製接合具を用いてボルトで固定して、前後の両妻部6間に雪割板と片側につき1本以上の桟10を、ボルトで固定する。そして、両側の平部5を雪割板7と台座部4と妻部6とに固定して設置完了する。なお、脚部3は、脚の数が4本でなくても、3本でも2本でも1本でもよい。
【0030】
本発明に係る観測衛星用ターゲットの防護ケース1を用いれば、観測衛星30と観測衛星用ターゲット20との中間に位置する平部5、妻部6、雪割板7、桟10は、マイクロ波を透過させるので、観測衛星30からのマイクロ波を観測衛星用ターゲットで正確かつ確実に反射させて、正確にターゲット20の2枚のウイング20−1とプレート20−2とに囲われた位置を正確に観測させることができる。また、雪や落ち葉が防護ケース部2に積もらないので、マイクロ波の透過を阻害されない。また、観測衛星用ターゲット20が、防護ケース部2によって隙間なく覆われているので、風雨によって劣化しないし、鳥の巣にされることもない。
【0031】
また、本発明に係る観測衛星用ターゲットの防護ケース1は、脚部3が高床式になっているので、雑草等に埋没することがなく、確実にマイクロ波を反射できるし、小動物や害虫からの侵入を防ぐことができる。また、見回りの際も、高床式で目立つので、山林の中でも容易に観測衛星用ターゲット20を見つけ出すことができる。
【0032】
また、妻部が透明な樹脂製なので、防護ケース部2を解体せずに、観測衛星用ターゲット20の目視による点検ができる。
【0033】
本発明に係る観測衛星用ターゲットの防護ケース1を用いれば、観測衛星用ターゲット20を長期間安定してマイクロ波を反射させることができるので、人が頻繁に点検に行けないような山奥の線路沿いの法面や道路沿いの法面やその他同じような構成の法面の監視に役立つ。
【産業上の利用可能性】
【0034】
観測衛星で地表を観測する分野で広く利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1:観測衛星用ターゲットの防護ケース
2:防護ケース部
3:脚部
3−1:ビット 3−2:継手 3−3:アンカーロッド
4:台座部
5:平部 5−a:平面部 5−b:曲面部
5−1:円中心1 5−2:円中心2 5−3:半径1 5−4:半径2 5−5:接線 5−6:角度α
6:妻部
7:雪割板
8:角度調整機構
8−1:ロッド 8−2:コマナット
8−3ロックナット
9:観測衛星用ターゲット固定具
10:桟
20:観測衛星用ターゲット
20−1:観測衛星用ターゲットウイング
20−2:観測衛星用ターゲットプレート
20−3:ベルワッシャ
30:観測衛星
40:法面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8