【解決手段】デジタル放送受信機100を、放送サービスを放送する複数の放送設備の各々について位置情報と識別情報とを関連付けて記憶する記憶部140と、受信中の放送サービスを放送する放送設備を識別情報に基づいて特定する特定部と、特定された放送設備と記憶部に記憶された他の放送設備の各々との距離を各放送設備の位置情報に基づいて取得する取得部と、複数の放送設備の各々にて放送される放送サービスのリスト112を保持する保持部と、取得部によって取得された各放送設備との距離に基づいてリスト内の放送サービスを並び替える並び替え部と、放送サービスが並び替えられたリストを表示する表示部120とを備える構成とする。
放送サービスを放送する複数の放送設備の各々について位置情報と識別情報とを関連付けて記憶部に記憶するデジタル放送受信機を用いて実行されるリスト表示方法であって、
受信中の放送サービスを放送する放送設備を前記識別情報に基づいて特定する特定ステップと、
特定された放送設備と前記記憶部に記憶された他の放送設備の各々との距離を各前記放送設備の位置情報に基づいて取得する取得ステップと、
前記取得ステップによって取得された各放送設備との距離に基づいて、前記複数の放送設備の各々にて放送される放送サービスのリストを並び替える並び替えステップと、
前記放送サービスが並び替えられたリストを表示する表示ステップと、
を含む、
リスト表示方法。
放送サービスを放送する複数の放送設備の各々について位置情報と識別情報とを関連付けて記憶部に記憶するデジタル放送受信機を用いて実行されるリスト表示方法であって、
受信中の放送サービスを放送する放送設備を前記識別情報に基づいて特定する特定ステップと、
特定された放送設備の位置を起点として、前記記憶部に記憶された他の放送設備の各々にて放送される放送サービスの受信し易さを評価する評価ステップと、
前記評価ステップによって評価された各放送サービスの受信し易さに基づいて、前記複数の放送設備の各々にて放送される放送サービスのリストを並び替える並び替えステップと、
前記放送サービスが並び替えられたリストを表示する表示ステップと、
を含む、
リスト表示方法。
【背景技術】
【0002】
音響機器や映像機器等において音声や映像をデジタル符号化処理することが一般化している。このような音響機器等における音声や映像のデジタル符号化の趨勢はラジオ放送の分野にも波及し、幾つかの方式のデジタルラジオ放送が規格化され、実用化されている。その一つに、例えばDAB(Digital Audio Broadcast)が知られている。
【0003】
DABは、EUREKA(European Research Coordination Agency)のプロジェクト147で規格化されたデジタルオーディオ放送規格であり、世界各国で実用放送され又は試験放送されている。DABは、伝送方式としてOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)を採用し、音声符号化にはMPEG Audio Layer 2とMPEG4 HE-AAC v2を採用している。
【0004】
DABの伝送フォーマットにおいては、約1.5MHz帯域の一つの周波数ブロック(アンサンブル)の中に複数のサービス(音声サービス又はデータサービス)及びサービス構成情報が多重化されている。サービスには、1つのプライマリサービスコンポーネントが必ず含まれており、最大で11個のセカンダリサービスコンポーネントが任意で含まれる。
【0005】
アンサンブル、サービス、サービスコンポーネントにはそれぞれ、識別子として、EID(Ensemble Identifier)、SID(Service Identifier)、SCIdS(Service Component Identifier within the Service)が設定されている。しかし、これらの識別子は、アルファベットや数字を列記したものにすぎない。そのため、ユーザが識別子からサービス等を直接識別することは難しい。
【0006】
そこで、任意ではあるが、アンサンブル、サービス、サービスコンポーネントにはラベルが設定される。例えばサービスラベルやサービスコンポーネントラベルには、放送局名が付けられる。
【0007】
DAB受信機には、サービスラベルやサービスコンポーネントラベルをリストしたステーションリストが保持されている。ステーションリストは、例えばDAB受信機が全周波数帯域をシークし、シーク時に検出されたアンサンブルの情報を元に作成される。ユーザは、ステーションリストに並ぶラベルの中から1つのラベルを選択することにより、希望するサービスコンポーネントを視聴することができる。
【0008】
例えば特許文献1に、DAB受信機の具体的構成が記載されている。特許文献1に記載のDAB受信機は、ナビゲーションシステムから自車の現在位置(緯度・経度)を取得し、メモリに格納されている領域定義情報データから現在位置が含まれる領域のID記号を検索する。DAB受信機は、現在位置が含まれる領域のID記号が判明すると、判明した領域にて放送されているサービスに関する情報をメモリから検索する。DAB受信機は、検索されたサービスに関する情報(例えばEID、アンサンブルの周波数のID記号)をリスト形式で表示装置の表示画面に表示させる。このリストは、DAB受信機が現在受信可能なサービスの一覧を示す。DAB受信機は、リストの中から希望するサービスがユーザによって選択されると、選択されたサービスを受信する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載のDAB受信機では、シーク処理を実行することなく受信可能なサービスのリストを得ることができる。しかし、受信可能なサービスのリストを得るためには、ナビゲーションシステムから現在位置を採取する必要がある。言い換えると、特許文献1に記載のDAB受信機では、ナビゲーションシステムと連携しなければ、受信可能なサービスのリストを得ることができない。
【0011】
特許文献1に記載のDAB受信機において、ナビゲーションシステムと連携しない場合には、例えば受信履歴のあるアンサンブルに含まれるサービスやサービスコンポーネントのラベルをリスト形式で表示することが考えられる。しかし、これでは、受信可能なサービスやサービスコンポーネントのラベルだけでなく、受信できない可能性の高いアンサンブルに含まれるサービスやサービスコンポーネントのラベルも区別なく表示されるという問題が指摘される。
【0012】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、受信できる可能性の高い放送サービスをリスト表示するのに好適なデジタル放送受信機及びリスト表示方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態に係るデジタル放送受信機は、放送サービスを放送する複数の放送設備の各々について位置情報と識別情報とを関連付けて記憶する記憶部と、受信中の放送サービスを放送する放送設備を識別情報に基づいて特定する特定部と、特定された放送設備と記憶部に記憶された他の放送設備の各々との距離を各放送設備の位置情報に基づいて取得する取得部と、複数の放送設備の各々にて放送される放送サービスのリストを保持する保持部と、取得部によって取得された各放送設備との距離に基づいてリスト内の放送サービスを並び替える並び替え部と、放送サービスが並び替えられたリストを表示する表示部とを備える。
【0014】
また、本発明の一実施形態において、並び替え部は、受信中の放送サービスを放送する放送設備との距離が近い放送設備にて放送されている放送サービスほど上位に並べる構成としてもよい。
【0015】
また、本発明の一実施形態において、並び替え部は、受信中の放送サービスを他の放送設備の各々にて放送される放送サービスよりも上位に並べる構成としてもよい。
【0016】
また、本発明の一実施形態において、並び替え部は、受信中の放送サービスを放送する放送設備との距離が規定値以上となる放送設備にて放送されている放送サービスに対し、リストに表示されないようにフィルタ処理を行う構成としてもよい。
【0017】
放送サービスには、例えば、広域で放送される放送サービスと、広域よりも狭い狭域で放送される放送サービスがある。本発明の一実施形態において、並び替え部は、広域で放送される放送サービスを狭域で放送される放送サービスよりも上位に並べる構成としてもよい。
【0018】
また、本発明の一実施形態に係るデジタル放送受信機は、放送サービスを放送する複数の放送設備の各々について位置情報と識別情報とを関連付けて記憶する記憶部と、受信中の放送サービスを放送する放送設備を識別情報に基づいて特定する特定部と、特定された放送設備の位置を起点として、記憶部に記憶された他の放送設備の各々にて放送される放送サービスの受信し易さを評価する評価部と、複数の放送設備の各々にて放送される放送サービスのリストを保持する保持部と、評価部によって評価された各放送サービスの受信し易さに基づいてリスト内の放送サービスを並び替える並び替え部と、放送サービスが並び替えられたリストを表示する表示部とを備える。
【0019】
また、本発明の一実施形態において、評価部は、次のパラメータ(1)〜(3)の少なくとも1つ、
(1)受信中の放送サービスを放送する放送設備と記憶部に記憶された他の放送設備の各々との距離、
(2)放送設備による放送の出力、
(3)放送サービスが放送されるエリアの広さ、
に基づいて放送サービスの受信し易さを示す評価値を算出する構成としてもよい。この場合、並び替え部は、リスト内の放送サービスを評価値の高い順に並べる。
【0020】
また、本発明の一実施形態において、放送サービスは、例えばDABの放送サービスである。
【0021】
また、本発明の一実施形態に係るリスト表示方法は、放送サービスを放送する複数の放送設備の各々について位置情報と識別情報とを関連付けて記憶部に記憶するデジタル放送受信機を用いて実行される方法であり、受信中の放送サービスを放送する放送設備を識別情報に基づいて特定する特定ステップと、特定された放送設備と記憶部に記憶された他の放送設備の各々との距離を各放送設備の位置情報に基づいて取得する取得ステップと、取得ステップによって取得された各放送設備との距離に基づいて、複数の放送設備の各々にて放送される放送サービスのリストを並び替える並び替えステップと、放送サービスが並び替えられたリストを表示する表示ステップとを含む。
【0022】
また、本発明の一実施形態に係るリスト表示方法は、放送サービスを放送する複数の放送設備の各々について位置情報と識別情報とを関連付けて記憶部に記憶するデジタル放送受信機を用いて実行される方法であり、受信中の放送サービスを放送する放送設備を識別情報に基づいて特定する特定ステップと、特定された放送設備の位置を起点として、記憶部に記憶された他の放送設備の各々にて放送される放送サービスの受信し易さを評価する評価ステップと、評価ステップによって評価された各放送サービスの受信し易さに基づいて、複数の放送設備の各々にて放送される放送サービスのリストを並び替える並び替えステップと、放送サービスが並び替えられたリストを表示する表示ステップとを含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一実施形態によれば、受信できる可能性の高い放送サービスをリスト表示するのに好適なデジタル放送受信機及びリスト表示方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下においては、本発明の一実施形態として、DABのサービスを受信することが可能なデジタル放送受信機を例に取り説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係るデジタル放送受信機100の構成を示すブロック図である。デジタル放送受信機100は、例えば道路を走行する車両に搭載された車載器であり、
図1に示されるように、MPU(Micro Processing Unit)110、HMI(Human Machine Interface)120、DABブロック130、フラッシュメモリ140、オーディオアンプ150、スピーカ160及び通信インタフェース170を備えている。
【0027】
なお、
図1では、本実施形態の説明に必要な主たる構成要素を図示しており、デジタル放送受信機として一般的な構成要素である筐体など、一部の構成要素については、その図示を適宜省略している。
【0028】
デジタル放送受信機100は車載器に限らない。デジタル放送受信機100は、例えば、スマートフォン、フィーチャフォン、PHS(Personal Handy phone System)、タブレット端末、ノートPC、PDA(Personal Digital Assistant)、PND(Portable Navigation Device)、携帯ゲーム機等の携帯型端末であってもよい。
【0029】
例えば車両にエンジンが掛けられると、図示省略されたバッテリからデジタル放送受信機100の各種回路に電源ラインを通じて電源供給が行われる。MPU110は電源供給後、内部メモリに格納された制御プログラムを読み出してワークエリアにロードし、ロードされた制御プログラムを実行することにより、デジタル放送受信機100全体の制御を行う。
【0030】
HMI120は、ユーザと放送受信機100とが情報をやり取りするためのインタフェースであり、具体的には、タッチパネルディスプレイ及びその周りに配置されたメカニカルキー、リモートコントローラ等である。MPU110は、HMI120に対する選局操作に従い、DABブロック130に受信制御信号を出力する。
【0031】
DABブロック130は、DAB信号の受信処理を行うブロックであり、アンテナ132及びDAB受信機134を備えている。
【0032】
アンテナ132は、DABアンサンブル信号を受信する。DABアンサンブル信号は、復調の際にフレーム同期に用いられる同期チャンネル、サービス構成情報等が含まれるFIC(Fast Information Channel)、音声サービスやデータサービスが含まれるMSC(Main Service Channel)で構成されている。
【0033】
FICは、FIB(Fast Information Block)で構成されており、EID、SID、SCIdS等の各識別子及び該識別子に関連付けられたラベルデータを含む。FIBは、FIG(Fast Information Group)及びCRC(Cyclic Redundancy Check)を含む。FIGは、その用途によりType 0からType 7の8種類で分類されている。
【0034】
FIGは、FIGヘッダ及びFIGデータフィールドを含む。FIGのTypeは、FIGヘッダ内で通知され、通知されるラベルの種類は、FIGデータフィールド内のExtensionで識別される。ラベルデータは、Type 1のFIGで送信される。アンサンブルラベル、サービスラベル、サービスコンポーネントラベルはそれぞれ、Extension=0、Extension=1、Extension=4で通知される。アンサンブルラベルの通知を行うFIGは、TypeとExtensionを組み合わせて、FIG 1/0(type 1 field for extension 0)と表記される。サービスラベル、サービスコンポーネントラベルの通知を行うFIGについても同様に、FIG 1/1、FIG 1/4と表記される。
【0035】
FIGデータフィールド内のType 1 fieldは、Identifier field、Character field、Character flag fieldで構成されている。FIG Type 1のIdentifier fieldには、通知されるラベルがアンサンブルラベルの場合はEIDが挿入され、サービスラベルの場合はSIDが挿入され、サービスコンポーネントラベルの場合はSID及びSCIdSが挿入される。FIG Type 1のCharacter fieldには、ラベルの文字列データ(データ長:16Byte 固定)が挿入される。
【0036】
ラベルの送信は、DAB放送規格上必須ではないものの、少なくともサービスラベルの送信については強く推奨されている。実際上、ほぼ全ての放送局でサービスラベルの送信が行われている。また、サービスコンポーネントは、基本的に、サービスとサービスコンポーネント(プライマリサービスコンポーネント)とをユーザに識別させる必要がないため、ラベルが設定されていないことが多い。但し、セカンダリサービスコンポーネントについては、プライマリサービスコンポーネントと識別する必要上、ラベルが設定されていることが多い。また、アンサンブルラベルも送信されていることが多い。
【0037】
DAB受信機134は、アンテナ132にて受信されたDABアンサンブル信号を復調し、MPU110より入力される受信制御信号に従い、復調されたDABアンサンブル信号からサービスを選択してデコードする。デコードすることによって得られた音声サービス信号、表示用データ(ラベルデータを含む。)はそれぞれ、オーディオアンプ150、HMI120に出力される。
【0038】
オーディオアンプ150は、DAB受信機134より入力される音声サービス信号を増幅してスピーカ160に出力する。これにより、選局中の放送局より放送されている音声サービスが出力再生される。
【0039】
HMI120は、DAB受信機134より入力される表示用データに基づいてタッチパネルディスプレイ上に現在の情報を表示する。タッチパネルディスプレイ上に表示される現在の情報の一例として、受信中のアンサンブルの周波数、アンサンブルラベル、選択(出力再生)されているサービスのラベル等が表示される。
【0040】
通信インタフェース170は、ネットワーク上に置かれたサーバ等の外部装置と通信するためのインタフェースである。MPU110は、通信インタフェース170を介して例えばインターネット上の情報を取得することができる。
【0042】
シーク処理を実行してステーションリストを更新(作成)する通常更新処理について説明する。
図2に、受信可能な各周波数ブロックに含まれるアンサンブルの構成を模式的に示す。
【0043】
図2に例示されるように、一つの周波数ブロック(アンサンブル)には、周波数ブロックID(例えば6A)、アンサンブルラベル(例えばEnsemble A)、EID(例えばCA11)、各サービスコンポーネントが含まれる。
【0044】
サービスコンポーネントは、サービスとサービスコンポーネントに関する情報を含み、例示的には、サービスラベル(例えばDAB Station A-01)、SID(例えばCA09)、SCIdS(例えば0)、プライマリ/セカンダリ種別(例えばPrimary)を含む。
【0045】
プライマリサービスコンポーネントにはラベルが設定されていないことが多い。そのため、
図2の例では、サービスラベルが挙げられている。別の一実施形態では、サービスラベルに加えて又はサービスラベルに代えて、プライマリサービスコンポーネントラベル(場合によってはセカンダリサービスコンポーネントラベル)が含まれていてもよい。
【0046】
MPU110の内部メモリには、受信経験のあるアンサンブルに属する放送サービスのラベル(サービス又はサービスコンポーネントのラベルであり、以下、説明の便宜上、「放送ラベル」と記す。)をリストしたステーションリスト112が格納される。
図3に、HMI120のタッチパネルディスプレイ上に表示されるステーションリスト112を例示する。
【0047】
図3に示されるように、ステーションリスト112では、各周波数帯のアンサンブルが昇順に並べられており、且つ各アンサンブル内で放送ラベルがアルファベット順に並べられている。
【0048】
なお、デジタル放送受信機100のサイズ上の制約から、タッチパネルディスプレイを大画面化することは難しい。そのため、ステーションリスト112は、例えば、複数ページに分割して表示されたり、アンサンブル単位で表示されたりしてもよい。
【0049】
MPU110は、HMI120に対するユーザ操作に従い、通常更新処理を実行してステーションリスト112を更新(作成)する。具体的には、MPU110は、ステーションリスト112を内部メモリに保持している場合には、これを消去する。MPU110は、次いで、DABブロック130に受信制御信号を出力して、1つの周波数ブロックの選局を指示する。
【0050】
DABブロック130では、MPU110より入力される受信制御信号に従って受信処理が行われる。DABブロック130でアンサンブルが検出されてデコードが成功すると、ステーションリスト112の更新(作成)に必要なサービス構成情報が得られて、MPU110に出力される。サービス構成情報には、
図2に例示される情報以外に、例えばECC(Extended Country Code)等の情報が含まれていてもよい。
【0051】
MPU110は、DABブロック130よりサービス構成情報を取得すると、次の周波数ブロックの選局をDABブロック130に指示して、次の周波数ブロックについても同様にサービス構成情報の取得を試みる。MPU110は、一定時間内にDABブロック130よりサービス構成情報を取得できなかった場合にも、次の周波数ブロックの選局をDABブロック130に指示してサービス構成情報の取得を試みる。
【0052】
MPU110は、このようなシーク処理を、DAB放送の周波数帯域に含まれる全ての周波数ブロックについて行う。なお、DAB放送の周波数帯域には、チャンネル5Aから13Fまでの41チャンネルを含むBand III帯(174〜240MHz)と、LAからLWまでの23チャンネルを含むL-Band帯(1452〜1492MHz)がある。
【0053】
MPU110は、DAB放送の周波数帯域に含まれる全ての周波数ブロックについてサービス構成情報の取得・取得失敗の結果が得られると、取得されたサービス構成情報に基づいてステーションリスト112を作成し、作成されたステーションリスト112をHMI120のタッチパネルディスプレイ上に表示させる(
図3参照)。
【0054】
ユーザは、HMI120のタッチパネルディスプレイ上に表示されたステーションリスト112の中から希望局(サービス(プライマリサービスコンポーネント)又はセカンダリサービスコンポーネント)を選択することができる。ステーションリスト112上の希望局が選択操作されると、MPU110は、選択された希望局に関連付けられて記憶されたアンサンブルの周波数、EID、SIDに基づいて希望局のサービスが放送されているアンサンブルを選局し、選択された希望局の音声サービスをスピーカ160より出力再生させる。
【0055】
[並び替え更新処理]
チューナ(DAB受信機134)を複数搭載する構成では、1つのチューナを用いて希望局を受信しつつ、他のチューナを用いてシーク処理を行い、ステーションリスト112を最新の内容に更新することができる。一方、本実施形態に係るデジタル放送受信機100のように、チューナを1つしか搭載しない構成では、シーク処理を実行するためには希望局の受信を中断する必要がある。
【0056】
ここで、
図4に、本発明の一実施形態に係るデジタル放送受信機100のMPU110により実行される処理であって、シーク処理を実行することなくステーションリスト112を更新することが可能な並び替え更新処理のフローチャートを示す。
【0057】
図4に示される並び替え更新処理の実行にはシーク処理が不要なため、チューナを1つしか搭載しない構成であっても希望局を受信しつつステーションリスト112の更新が可能となる。また、
図4に示される並び替え更新処理の実行には、特許文献1に記載の構成と異なり、ナビゲーションシステムとの連携が必要とされない。
【0058】
図4に示される並び替え更新処理は、例えば、ステーションリスト112が既に作成されており、且つデジタル放送受信機100の電源がオンされてからアンサンブルが受信可能となったタイミングや選局操作によって別のアンサンブルの受信を開始したタイミング等で実行が開始される。
【0059】
図5(a)に、
図4に示される並び替え更新処理が実行される前(並び替え更新前)のステーションリスト112を例示し、
図5(b)に、
図4に示される並び替え更新処理が実行された後(並び替え更新後)のステーションリスト112を例示する。なお、
図5に示されるステーションリスト112では、放送ラベルに加えてアンサンブルの情報やアンサンブル距離(後述)も表示される。但し、
図3と同様に、放送ラベルだけが表示されてもよい。
【0060】
本実施形態では、
図5に示されるように、アンサンブルA〜C及びWの情報がステーションリスト112に含まれている。
【0061】
[
図4のS11(アンサンブル位置リスト142へのアクセス)]
フラッシュメモリ140には、アンサンブル位置リスト142が格納されている。
図6に、アンサンブル位置リスト142の構成を模式的に示す。
【0062】
図6に示されるように、アンサンブル位置リスト142には、各アンサンブルを放送する放送設備(例えば電波塔)に関する情報が含まれている。放送設備に関する情報には、例えば、EID、周波数帯(周波数ブロックID)、放送設備の位置(経度・緯度)、放送エリア種別(狭域/広域)が含まれる。狭域は、例えば国の一部地域(地方)であり、広域は、例えば国全土(全国)である。
【0063】
アンサンブル位置リスト142は、例えばデジタル放送受信機100の出荷段階でフラッシュメモリ140に格納されている。アンサンブル位置リスト142は、メモリカード等の記録メディアやインターネット等の手段を用いて事後的に得られてもよく、また、これらの手段を用いて適宜更新されてもよい。
【0064】
本処理ステップS11では、アンサンブル位置リスト142へのアクセスが行われる。
【0065】
[
図4のS12(受信中のアンサンブルの判定)]
本処理ステップS12では、現在受信しているアンサンブルのEID(又は周波数ブロックID)と関連付けられた放送エリア種別がアンサンブル位置リスト142から読み込まれ、読み込まれた放送エリア種別から、現在受信しているアンサンブルの放送エリアが地方であるか否かが判定される。
【0066】
ここでは、アンサンブルBを受信している前提で本フローチャートの説明を行う。アンサンブルBのEIDはCB11である。
図6によれば、CB11と関連付けられた放送エリア種別が地方であるため、本処理ステップS12では、YES判定となる。
【0067】
なお、現在受信しているアンサンブルの放送エリアが全国である場合(S12:NO)には、本フローチャートの処理が終了する。
【0068】
[
図4のS13(アンサンブル距離の算出)]
本処理ステップS13は、処理ステップS12(受信中のアンサンブルの判定)にて現在受信しているアンサンブルの放送エリアが地方であると判定された場合(S12:YES)に実行される。本処理ステップS13では、アンサンブル位置リスト142に含まれている各放送設備の位置(経度・緯度)を用いて、現在受信しているアンサンブルを放送する放送設備と、ステーションリスト112に含まれる他のアンサンブルを放送する放送設備の各々との距離が算出される。説明の便宜上、ここで算出される距離を「アンサンブル距離」と記す。また、説明の便宜上、アンサンブルA、B、C、Wを放送する各放送設備を「放送設備A」、「放送設備B」、「放送設備C」、「放送設備W」と記す。
【0069】
アンサンブル距離は、基点(現在受信しているアンサンブルを放送する放送設備の位置)と端点(ステーションリスト112に含まれる他のアンサンブルを放送する放送設備の位置)との距離である。放送設備Bを起点した場合、各端点(放送設備A、C、W)とのアンサンブル距離は次に示される通りである。
【0070】
放送設備Aとのアンサンブル距離 :100km
放送設備Cとのアンサンブル距離 :10km
放送設備Wとのアンサンブル距離 :―
【0071】
なお、アンサンブル位置リスト142において、放送エリア種別が全国となっているデータには、放送設備の位置(経度・緯度)が含まれていない。そのため、放送設備Wとのアンサンブル距離は算出されない。
【0072】
また、放送エリア種別が地方のアンサンブルの中には、複数の放送設備で放送されるものもある。このような放送については、複数の放送設備の大凡の中間位置の緯度・経度が「放送設備の位置(経度・緯度)」としてアンサンブル位置リスト142に登録されている。
【0073】
[
図4のS14(ステーションリスト112の並び替え)]
本処理ステップS14では、処理ステップS13(アンサンブル距離の算出)にて算出されたアンサンブル距離に基づいてステーションリスト112が並び替えられる。ステーションリスト112は、原則、現在受信しているアンサンブルに属する放送サービスの放送ラベルが最上位に位置し、且つその下位において、現在受信しているアンサンブルを放送する放送設備との距離が近い放送設備(言い換えると、アンサンブル距離が短い放送設備)にて放送される放送サービスの放送ラベルほど上位に位置するように並び替えられる。
【0074】
現在受信しているアンサンブルを放送する放送設備については、アンサンブル距離が0kmであるといえる。そのため、「ステーションリスト112は、原則、アンサンブル距離が短い放送設備にて放送される放送サービスの放送ラベルほど上位に位置するように並び替えられる。」と表現することもできる。
【0075】
アンサンブル距離が短い放送設備ほどデジタル放送受信機100との距離が近い可能性が高い。そのため、アンサンブル距離が短い放送設備にて放送される放送サービスほどデジタル放送受信機100にて受信できる可能性が高い。すなわち、本処理ステップS14では、受信できる可能性の高い放送サービスの放送ラベルほど上位に位置するようにステーションリスト112が並び替えられる。
【0076】
ユーザは、所定の操作を行うことにより、並び替え更新後のステーションリスト112をHMI120のタッチパネルディスプレイ上に表示させることができる。
【0077】
このように、本実施形態では、受信できる可能性の高い放送サービスの放送ラベルがステーションリスト112の上位に配置される。ステーションリスト112の上位は、例えばユーザの目に留まりやすく、また、画面スクロールせずに又は少ない画面スクロールで閲覧可能である。そのため、受信できる可能性の高い放送サービスの放送ラベルをステーションリスト112の上位に配置することにより、ユーザにとって選局時の利便性が向上する。
【0078】
なお、本実施形態では、ステーションリスト112を並び替え更新するにあたり、幾つかの例外ルールが適用される。この種の例外ルールを適用するか否かについては、例えばユーザ操作によって適宜設定変更できるようにしてもよい。
【0079】
《例外ルール1》
放送エリア種別が全国のアンサンブル(全国放送のアンサンブル)に属する放送サービスの放送ラベルを、放送エリア種別が地方のアンサンブル(一部地域で放送のアンサンブル)に属する放送サービスの放送ラベルよりも上位に並べる。
【0080】
図4に示される並び替え更新処理の実行前には、アンサンブルA、B、C、Wの順に、各アンサンブルに属する放送サービスの放送ラベルが並べられている(
図5(a)参照)。並び替え更新処理の実行後には、例外ルール1が適用されることにより、アンサンブルW、B、C、Aの順に、各アンサンブルに属する放送サービスの放送ラベルが並べられる(
図5(b)参照)。
【0081】
全国放送のアンサンブルは、受信できる可能性が極めて高い。そのため、
図5(b)の例では、アンサンブルWに属する放送サービスの放送ラベルがステーションリスト112の最上位に配置される。
【0082】
なお、複数の国(例えば欧州の各国)の全国放送のアンサンブルの情報がステーションリスト112に混在している場合があり得る。この場合、例えば、各国の全国放送のアンサンブルのEIDの中から、現在受信しているアンサンブルのEIDと国コード部分(先頭の4bit)が一致するアンサンブルが特定され、特定された全国放送のアンサンブルに属する放送サービスの放送ラベルがステーションリスト112の最上位に配置される。
【0083】
なお、他の国の全国放送のアンサンブルは、受信できる可能性が低い。そのため、これらのアンサンブルは、例えばステーションリスト112の下位に表示されたり、ステーションリスト112に表示されないようにフィルタ処理がかけられたりする。
【0084】
アルメニアやオーストリア、アイスランド等の一部の国では、国コードが同じである。各国の全国放送のアンサンブルのEIDの中から適正なEIDを特定する精度を向上させるため、ECCを参照することが好ましい。
【0085】
《例外ルール2》
アンサンブル距離が規定値以上の放送設備で放送されるアンサンブルに属する放送サービスの放送ラベルを表示しない。
【0086】
デジタル放送受信機100から遠く離れた放送設備で放送されるアンサンブルを受信できる可能性は低い。このようなアンサンブルに属する放送サービスの放送ラベルに対し、ステーションリスト112に表示されないようにフィルタ処理を行うことにより、無駄な選局操作(受信できないアンサンブルを選択する操作)が避けられる。
【0087】
例えば規定値を90kmとする場合を考える。この場合、アンサンブルAに属する放送サービスの放送ラベルの表示がステーションリスト112から消去される。
【0088】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施例等又は自明な実施例等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
【0089】
上記の実施形態では、原則、アンサンブル距離が短い放送設備にて放送される放送サービスの放送ラベルほど上位に位置するようにステーションリスト112が並び替えられている。別の一実施形態では、現在受信しているアンサンブルを放送する放送設備の位置を起点とした、放送サービスの受信し易さを示す評価値が算出され、算出された評価値が高いアンサンブル順に、放送サービスの放送ラベルが並び替えられてもよい。
【0090】
放送サービスの受信し易さを示す評価値は、例示的には、次のパラメータ(1)〜(3)の少なくとも1つ、
(1)アンサンブル距離、
(2)放送設備による放送の出力、
(3)アンサンブルが放送されるエリアの広さ、
に基づいて算出される。
【0091】
図7に、別の一実施形態に係るデジタル放送受信機100のMPU110により実行される処理であって、シーク処理を実行することなくステーションリスト112を更新することが可能な並び替え更新処理のフローチャートを示す。なお、
図4に示される並び替え更新処理と重複する内容については説明を適宜簡略又は省略する。
【0092】
[
図7のS21〜S22]
本処理ステップS21〜S22では、
図4の処理ステップS11〜S12と同じ処理が実行される。
【0093】
[
図7のS23(評価値の算出)]
本処理ステップS23では、ステーションリスト112に含まれる各アンサンブル(言い換えると各放送設備)について、パラメータ(1)〜(3)に基づいて放送サービスの受信し易さを示す評価値が算出される。なお、評価値の算出に先行して、パラメータ(1)である各放送設備のアンサンブル距離が算出される。パラメータ(2)、(3)については、例えばアンサンブル位置リスト142に予め含まれている。
【0094】
本処理ステップS23では、各パラメータに対してスコアリングが行われる。パラメータ(1)に対しては、アンサンブル距離が短いほど、高いスコアが付与される。パラメータ(2)に対しては、放送設備による放送の出力が高いほど、高いスコアが付与される。パラメータ(3)に対しては、アンサンブルが放送されるエリアが広いほど、高いスコアが付与される。
【0095】
本処理ステップS23では、各パラメータに対して付与されたスコアが加算され、その合計値が、ステーションリスト112に含まれる各アンサンブルに対する評価値として算出される。
【0096】
[
図7のS24(ステーションリスト112の並び替え)]
本処理ステップS24では、処理ステップS23(評価値の算出)にて算出された評価値の高い順にステーションリスト112が並び替えられる。別の一実施形態では、放送サービスの受信し易さが、複数のパラメータを用いて多面的に評価される。そのため、より高い精度で、受信できる可能性の高い放送サービスの放送ラベルほど上位に位置するようにステーションリスト112が並び替えられる。