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特開2018-164202通信装置、基地局選択方法および基地局選択プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-164202(P2018-164202A)
(43)【公開日】2018年10月18日
(54)【発明の名称】通信装置、基地局選択方法および基地局選択プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 36/08 20090101AFI20180921BHJP
   H04W 36/36 20090101ALI20180921BHJP
   H04W 48/16 20090101ALI20180921BHJP
   H04W 64/00 20090101ALI20180921BHJP
   G01S 5/02 20100101ALI20180921BHJP
【FI】
   H04W36/08
   H04W36/36
   H04W48/16 134
   H04W64/00 171
   G01S5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-60587(P2017-60587)
(22)【出願日】2017年3月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000232254
【氏名又は名称】日本電気通信システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩壁 冬樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124501
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 誠人
(72)【発明者】
【氏名】森田 賢二
(72)【発明者】
【氏名】不藤 基樹
(72)【発明者】
【氏名】高澤 淳
(72)【発明者】
【氏名】野中 和明
【テーマコード(参考)】
5J062
5K067
【Fターム(参考)】
5J062AA08
5J062AA12
5J062BB05
5J062CC11
5J062GG02
5K067EE02
5K067EE10
5K067JJ39
5K067JJ52
5K067JJ54
5K067JJ57
5K067KK03
(57)【要約】
【課題】移動する装置単独でハンドオーバ先候補セルを選択できる通信装置を提供する。
【解決手段】多次元アンテナ81は、基地局から送信された電波を受信する。相対位置算出部82は、多次元アンテナ81で受信された電波の受信時間および受信電力の差異から、移動する自通信装置80と基地局との相対位置を算出する。速度方向算出部83は、時系列に複数回算出された相対位置の各差分から、基地局と自通信装置80との相対的な移動速度および移動方向を算出する。基地局選択部84は、移動速度が所定の速度を超える場合に、移動方向のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局から送信された電波を受信する多次元アンテナと、
前記多次元アンテナで受信された電波の受信時間および受信電力の差異から、移動する自通信装置と前記基地局との相対位置を算出する相対位置算出部と、
時系列に複数回算出された相対位置の各差分から、前記基地局と自通信装置との相対的な移動速度および移動方向を算出する速度方向算出部と、
前記移動速度が所定の速度を超える場合に、前記移動方向のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択する基地局選択部とを備えた
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
算出された相対位置および受信電力から、基地局のセル半径を推定するセル半径推定部を備え、
基地局選択部は、推定されたセル半径が所定の大きさ以上のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択する
請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
基地局選択部は、電波飛来方向が一番近い方向のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択する
請求項1または請求項2記載の通信装置。
【請求項4】
基地局選択部は、一定角度内に収まるセルに対応する基地局を選択する
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
基地局選択部は、電波の受信電力および受信品質が予め定めた閾値を超えるセルに対応する基地局を選択する
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
多次元アンテナは、少なくとも4つ以上の受信アンテナまたは2つ以上の平面アレイアンテナである
請求項1から請求項5のうちのいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
基地局から送信された電波を多次元アンテナで受信し、
前記多次元アンテナで受信された電波の受信時間および受信電力の差異から、移動する通信装置と前記基地局との相対位置を算出し、
時系列に複数回算出された相対位置の各差分から、前記基地局と前記通信装置との相対的な移動速度および移動方向を算出し、
前記移動速度が所定の速度を超える場合に、前記移動方向のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択する
ことを特徴とする基地局選択方法。
【請求項8】
算出された相対位置および受信電力から、基地局のセル半径を推定し、
推定されたセル半径が所定の大きさ以上のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択する
請求項7記載の基地局選択方法。
【請求項9】
コンピュータに、
多次元アンテナで受信された基地局からの電波の受信時間および受信電力の差異から、移動する自コンピュータと当該基地局との相対位置を算出する相対位置算出処理、
時系列に複数回算出された相対位置の各差分から、前記基地局と自コンピュータとの相対的な移動速度および移動方向を算出する速度方向算出処理、および、
前記移動速度が所定の速度を超える場合に、前記移動方向のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択する基地局選択処理
を実行させるための基地局選択プログラム。
【請求項10】
コンピュータに、
算出された相対位置および受信電力から、基地局のセル半径を推定するセル半径推定処理を実行させ、
基地局選択処理で、推定されたセル半径が所定の大きさ以上のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択させる
請求項9記載の基地局選択プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、基地局選択方法および基地局選択プログラムに関し、特に、移動中にハンドオーバ先候補セルを選択する通信装置、基地局選択方法および基地局選択プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信装置が移動する場合、通信装置は、将来の移動に備えてその移動方向(進行方向)にあるセルを選択できることが望ましい。例えば、特許文献1には、複数の通信端末装置が無線通信を行う通信システムが記載されている。特許文献1に記載された通信システムは、検出したセルの中から、参照信号の受信品質が最も良いセル(参照信号の受信電力が最も高いセル)を選択する。
【0003】
また、通信端末の移動速度に応じて最適なセル半径およびセルサイズを選択できることが望ましい。例えば、特許文献2には、移動局の移動速度を推定する方法が記載されている。このような最適なセルを選択することで、ハンドオーバ中の切断や頻繁なハンドオーバを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/015886号
【特許文献2】特開2016−130692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、位置情報、進行方向および移動速度からエリアを選択する方法は一般に知られている。しかし、標準の規格(例えば、3GPP(Third Generation Partnership Project) W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)/LTE(Long Term Evolution ))では、基地局の位置情報を移動する装置側へ通知するインタフェースおよび基地局間で位置情報を交換するインタフェースは存在しない。
【0006】
そのため、現在の規格で上述する特許文献1等に記載された方法を実現するためには、ハンドオーバ先を決定する基地局へ各位置情報を通知する具体的手段が必要になる。また、例えば、マルチベンダ環境でシステムを構築する場合、共通のインタフェースを介し別のサーバ等を設ける必要性なども発生する。さらに、場合によってはオペレータによるデータの入力なども必要になる。
【0007】
そこで、本発明は、移動する装置単独でハンドオーバ先候補セルを選択できる通信装置、基地局選択方法および基地局選択プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による通信装置は、基地局から送信された電波を受信する多次元アンテナと、多次元アンテナで受信された電波の受信時間および受信電力の差異から、移動する自通信装置と基地局との相対位置を算出する相対位置算出部と、時系列に複数回算出された相対位置の各差分から、基地局と自通信装置との相対的な移動速度および移動方向を算出する速度方向算出部と、移動速度が所定の速度を超える場合に、移動方向のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択する基地局選択部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明による基地局選択方法は、基地局から送信された電波を多次元アンテナで受信し、多次元アンテナで受信された電波の受信時間および受信電力の差異から、移動する通信装置と基地局との相対位置を算出し、時系列に複数回算出された相対位置の各差分から、基地局と通信装置との相対的な移動速度および移動方向を算出し、移動速度が所定の速度を超える場合に、移動方向のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択することを特徴とする。
【0010】
本発明による基地局選択プログラムは、コンピュータに、多次元アンテナで受信された基地局からの電波の受信時間および受信電力の差異から、移動する自コンピュータとその基地局との相対位置を算出する相対位置算出処理、時系列に複数回算出された相対位置の各差分から、基地局と自コンピュータとの相対的な移動速度および移動方向を算出する速度方向算出処理、および、移動速度が所定の速度を超える場合に、移動方向のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択する基地局選択処理を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、移動する装置単独でハンドオーバ先候補セルを選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による通信装置の一実施形態を示すブロック図である。
図2】相対位置を算出する方法の例を示す説明図である。
図3】移動方向を特定する方法の例を示す説明図である。
図4】移動方向を特定する方法の他の例を示す説明図である。
図5】セルを選択する処理の例を示す説明図である。
図6】ハンドオーバが行われる動作例を示す説明図である。
図7】通信装置の動作例を示すフローチャートである。
図8】本発明による通信装置の概要を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明による通信装置の一実施形態を示すブロック図である。本実施形態の通信装置100は、アンテナ11と、相対位置算出部12と、速度方向算出部13と、セル半径推定部14と、基地局選択部15とを備えている。
【0015】
アンテナ11は、基地局から送信された電波を受信する多次元アンテナである。アンテナ11は、例えば、基地局から周期的に送信されるReference or Synchronized Signalなどの電波を受信する。後述するように、電波の受信方向を適切に算出するため、アンテナ11は、少なくとも4つ以上の受信アンテナまたは2つ以上の平面アレイアンテナで実現される。アンテナ11は、上下左右、いずれも360度、全方位からの受信を検知できる受信アンテナで構成される。
【0016】
なお、アンテナ11が検出する電波は、周期的に送信される電波でなくてもよい。アンテナ11は、時系列に複数の電波を受信できれば、送信間隔は不定期であってもよい。
【0017】
相対位置算出部12は、通信装置100と基地局との相対位置を算出する。具体的には、相対位置算出部12は、アンテナ11で周期的に受信された電波の受信時間および受信電力の差異から、移動する通信装置100と基地局との相対位置を算出する。
【0018】
図2は、受信した電波から相対位置を算出する方法の例を示す説明図である。図2(a)に示すように、2つのアンテナ21およびアンテナ22で基地局200からの電波を受信するものとする。
【0019】
基地局200からアンテナ21までの距離をrとすると、基地局200からアンテナ22までの距離yは、y=x+rになる。ここで、xは、アンテナ21と比較したときのアンテナ22の基地局200までの距離差である。
【0020】
アンテナ21とアンテナ22で同じ信号を受信した時間差をtとし、光速(秒速30万キロメートル)をcとすると、距離差xは、x=t×cで算出される。なお、近年ピコ秒1.0×10−12単位での測定が可能であり、1ピコ秒で電波(光)が、0.3mm進むことを測定可能である。
【0021】
アンテナ21とアンテナ22とを結ぶ直線を一辺とし、電波の発信源である基地局100との角度をθとし、基地局から先に信号が到達するアンテナ(図2に示す例では、アンテナ21)までの距離をrとする。このとき、ピタゴラスの定理a+b=cを示す図2(b)の関係から、通信装置100の相対位置は、以下に示す式1で算出できる。
【0022】
【数1】
【0023】
なお、電波受信時には、θおよびrは不明であるため、上記式1を満たすθおよびrは、3次元の曲面で求められる。また、アンテナが2つの場合、基地局の位置を一意に求めることは出来ないが、アンテナが3つの場合には、上記式1の連立式から、θとrの関係を示す曲線が求められる。そして、アンテナが4つの場合、3つの連立式から、θおよびrが1点で求められる。
【0024】
なお、図2では、アンテナ21とアンテナ22との距離を1として、上記式1が定義されている。そのため、各受信アンテナの位置関係を明確にすることで、同様に相対位置を算出することが可能である。
【0025】
なお、上述するように、一般にアンテナが3つ以下の場合、アンテナの種類にも依存するが、受信方向を正しく認識することは困難である。また、電波発信源とそれぞれのアンテナとで差分が発生するように、4つのアンテナが三角錐を形成するように構成されることが好ましい。
【0026】
速度方向算出部13は、複数回算出された相対位置の各差分から、基地局と通信装置100との相対的な移動速度および移動方向を算出する。時系列に複数の相対位置が取得できれば、移動速度および移動方向を算出することが可能である。速度方向算出部13は、電波を検出した時間間隔と相対位置の差分から算出される距離に基づいて、相対的な移動速度を算出する。
【0027】
図3は、相対位置の各差分から移動方向を特定する方法の例を示す説明図である。図3(a)は、2つの基地局200,300の位置を固定させて通信装置100が移動する状況を示す。また、図3(b)は、通信装置100の位置を固定させて2つの基地局200,300が移動すると想定した状況を示す。図3(a)および図3(b)に示すいずれの場合も、通信装置と基地局との間の相対位置を測定することで、通信装置が基地局に対してどの方向に移動しているか(矢印A,Bで示す移動方向)を特定することが可能である。
【0028】
図4は、相対位置の各差分から移動方向を特定する方法の他の例を示す説明図である。図4は、通信装置の向きのみを変化(回転)させた状況を示す。図3に示す内容と同様、図4(a)は、2つの基地局200,300の位置を固定させて通信装置100が回転する状況を示す。また、図4(b)は、通信装置100の位置を固定させて2つの基地局200,300が回転方向に移動すると想定した状況を示す。
【0029】
図4(b)を参照すると、基地局の方向が大きく変化している。ここで、基地局200と基地局300が動かないという前提があれば、基地局200と基地局300からなる辺を重ねて回転分の差分を取り除くことで、基地局100との相対位置に変化がないことが分かる。
【0030】
すなわち、ある短期間で基地局が移動しないことを前提とすると、通信装置100がどのような向きでどの方向に進んでも、電波を受信する周期(間隔)を用いて基地局との相対的位置関係を求めることで、基地局に対する相対的な移動速度および移動方向を求めることが可能である。
【0031】
セル半径推定部14は、算出された相対位置および受信電力から、基地局のセル半径を推定する。セル半径推定部14が基地局のセル半径を推定する方法は任意である。セル半径推定部14は、例えば、受信電力の減衰量を算出して、セル半径を推定してもよい。なお、本実施形態では、ある短期間でセル半径が大きく変化しないことを前提としている。
【0032】
基地局選択部15は、算出された相対的な移動速度が所定の速度を超える場合、移動方向のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択する。そして、基地局選択部15は、選択した基地局の内容を基地局側に通知する。
【0033】
具体的には、基地局選択部15は、受信電力および受信品質を、一般的に知られた方法で測定し、測定した値が予め定めた閾値を超えているかどうか判断する。受信品質の例として、信号対干渉電力比(SIR:Signal to Interference Ratio)、基準信号(RSRP:Reference Signal Received Power )、基準信号受信品質(RSRQ:Reference Signal Received Quality )、ブロック誤り率(BLER:Block Error Rate)などが挙げられる。
【0034】
次に、基地局選択部15は、算出された相対的な移動速度が所定の速度を超えるか(すなわち、高速移動中か)否か判断する。高速移動中でない場合、基地局選択部15は、一般的な方法と同様、基地局からの受信電力の強度および上述する受信品質を優先してハンドオーバを行う。一方、高速移動中の場合、基地局選択部15は、通信装置100の進行方向に対して所定の角度内に収まる範囲のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択する。具体的には、基地局選択部15は、電波飛来方向が一番近い方向のセルに対応する近隣の基地局をハンドオーバ先の基地局として選択する。
【0035】
図5は、セルを選択する処理の例を示す説明図である。例えば、車で移動中の車内に通信装置100が存在し、実線の方向に高速移動中であるとする。また、通信装置100の周辺には、基地局200〜500が存在するとする。この場合、基地局選択部15は、移動方向と受信電波の方角が、図5の太枠で示す範囲のように一定角度内に収まる基地局300のセルを、ハンドオーバ先の候補セルとして特定し、基地局300を選択する。
【0036】
また、セル半径が推定されている場合、基地局選択部15は、推定したセル半径が所定の閾値以上の基地局を選択する。このようなセルを選択することで、切り替えがすぐに生じてしまうようなセル半径の小さいセルが選択されることを除外できる。
【0037】
また、基地局選択部15は、高速移動中であっても、受信電力および受信品質が所定の基準を満たしている基地局を選択することが好ましい。
【0038】
本実施形態では、基地局がハンドオーバ先の選択をする前に、通信装置100から基地局側へ測定結果を通知する。その際、基地局選択部15は、ハンドオーバ先として選択した基地局の内容だけでなく、ハンドオーバ先に適切でない基地局の内容を予め除いて通知してもよい。これは、ハンドオーバの処理は、通常、基地局側で行われるからである。
【0039】
図6は、ハンドオーバが行われる動作例を示す説明図である。一般には、例えば、図6(a)に示すように、通信装置が測定値を基地局#Sに通知すると、基地局#Sが測定値に基づきセルを選択して、ハンドオーバ要求を他の基地局#Dに通知する。一方、本実施形態では、図6(b)に示すように、基地局選択部15が、セルの候補を選択したうえで測定値を基地局#Sに通知する。そのため、通知を受けた基地局#Sは、候補となるセルを考慮してハンドオーバ要求を他の基地局#Dに通知できる。
【0040】
相対位置算出部12と、速度方向算出部13と、セル半径推定部14と、基地局選択部15とは、プログラム(基地局選択プログラム)に従って動作するコンピュータのCPUによって実現される。例えば、プログラムは、通信装置100の記憶部(図示せず)に記憶され、CPUは、そのプログラムを読み込み、プログラムに従って、相対位置算出部12、速度方向算出部13、セル半径推定部14および基地局選択部15として動作してもよい。また、相対位置算出部12と、速度方向算出部13と、セル半径推定部14と、基地局選択部15とは、それぞれが専用のハードウェアで実現されていてもよい。
【0041】
次に、本実施形態の通信装置100の動作を説明する。図7は、本実施形態の通信装置100の動作例を示すフローチャートである。アンテナ11は、基地局から送信された電波を受信する(ステップS11)。基地局選択部15は、受信電力および受信品質が、基準を超えるセルに対応する基地局を選択する(ステップS12)。
【0042】
相対位置算出部12は、受信された電波の受信時間および受信電力の差異から、通信装置100と基地局との相対位置を算出する(ステップS13)。速度方向算出部13は、相対位置の各差分から、基地局と通信装置100との相対的な移動速度を算出する(ステップS14)。基地局選択部15は、移動速度が所定の速度を超えるか否か(すなわち、高速移動中か否か)判断する(ステップS15)。高速移動中でない場合(ステップS15におけるNo)、基地局の選択は行わずに処理を終了する。
【0043】
一方、高速移動中の場合(ステップS15におけるYes)、速度方向算出部13は、相対位置の各差分から、移動方向を算出する(ステップS16)。そして、基地局選択部15は、移動方向のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択する(ステップS17)。その際、基地局選択部15は、セル半径推定部14によって推定されたセル半径が所定の閾値以上の基地局に限って選択する。
【0044】
以上のように、本実施形態では、アンテナ11が基地局から送信された電波を受信し、相対位置算出部12が、受信された電波の受信時間および受信電力の差異から、移動する通信装置100と基地局との相対位置を算出する。そして、速度方向算出部13が、時系列に複数回算出された相対位置の各差分から、基地局と通信装置100との相対的な移動速度および移動方向を算出し、基地局選択部15が、移動速度が所定の速度を超える場合に、移動方向のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択する。よって、移動する装置単独でハンドオーバ先候補セルを選択できる。
【0045】
すなわち、本実施形態では、基地局と通信装置の相対的な位置関係からハンドオーバ先を選択する。その際、通信装置100の移動方向および移動速度は、通信装置100側でアンテナ(例えば、複数アレイアンテナ)を用いることで、基地局との相対位置が測定される。すなわち、本実施形態の通信装置100は、GPS(Global Positioning System)を使用しない。例えば、ユーザによってはプライバシや個人情報等を知られたくないとの観点からGPSを有効にしないケースもあると想定される。一方、本実施形態の通信装置100は、GPSを使用しないため、GPSを有効にしなくても、適切にハンドオーバ先の基地局を選択できる。
【0046】
本実施形態の通信装置100は、例えば、スマートフォンなどの携帯端末で実現される。すなわち、本実施形態のアンテナ11も、例えば、携帯端末に実装される。ただし、通信装置100の態様は、携帯端末に限定されない。例えば、車両そのものが本実施形態の通信装置100として実現されてもよい。
【0047】
次に、本発明の概要を説明する。図8は、本発明による通信装置の概要を示すブロック図である。本発明による通信装置80は、基地局から送信された電波を受信する多次元アンテナ81(例えば、アンテナ11)と、多次元アンテナ81で受信された電波の受信時間および受信電力の差異から、移動する自通信装置80と基地局との相対位置を算出する相対位置算出部82(例えば、相対位置算出部12)と、時系列に複数回算出された相対位置の各差分から、基地局と自通信装置80との相対的な移動速度および移動方向を算出する速度方向算出部83(例えば、速度方向算出部13)と、移動速度が所定の速度を超える場合に、移動方向のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択する基地局選択部84(例えば、基地局選択部15)とを備えている。
【0048】
そのような構成により、移動する装置単独でハンドオーバ先候補セルを選択できる。
【0049】
また、通信装置80は、算出された相対位置および受信電力から、基地局のセル半径を推定するセル半径推定部(例えば、セル半径推定部14)を備えていてもよい。そして、基地局選択部84は、推定されたセル半径が所定の大きさ以上のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択してもよい。
【0050】
また、基地局選択部84は、電波飛来方向が一番近い方向のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択してもよい。
【0051】
また、基地局選択部84は、一定角度内に収まるセルに対応する基地局を選択してもよい。
【0052】
また、基地局選択部84は、電波の受信電力および受信品質が予め定めた閾値を超えるセルに対応する基地局を選択してもよい。
【0053】
なお、多次元アンテナ81は、少なくとも4つ以上の受信アンテナまたは2つ以上の平面アレイアンテナである。
【0054】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0055】
(付記1)基地局から送信された電波を受信する多次元アンテナと、前記多次元アンテナで受信された電波の受信時間および受信電力の差異から、移動する自通信装置と前記基地局との相対位置を算出する相対位置算出部と、時系列に複数回算出された相対位置の各差分から、前記基地局と自通信装置との相対的な移動速度および移動方向を算出する速度方向算出部と、前記移動速度が所定の速度を超える場合に、前記移動方向のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択する基地局選択部とを備えたことを特徴とする通信装置。
【0056】
(付記2)算出された相対位置および受信電力から、基地局のセル半径を推定するセル半径推定部を備え、基地局選択部は、推定されたセル半径が所定の大きさ以上のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択する付記1記載の通信装置。
【0057】
(付記3)基地局選択部は、電波飛来方向が一番近い方向のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択する付記1または付記2記載の通信装置。
【0058】
(付記4)基地局選択部は、一定角度内に収まるセルに対応する基地局を選択する付記1から付記3のうちのいずれか1つに記載の通信装置。
【0059】
(付記5)基地局選択部は、電波の受信電力および受信品質が予め定めた閾値を超えるセルに対応する基地局を選択する付記1から付記4のうちのいずれか1つに記載の通信装置。
【0060】
(付記6)多次元アンテナは、少なくとも4つ以上の受信アンテナまたは2つ以上の平面アレイアンテナである付記1から付記5のうちのいずれか1つに記載の通信装置。
【0061】
(付記7)基地局選択部は、受信電力および受信品質よりも移動方向のセルに対応する基地局を優先して選択する付記1から付記6のうちのいずれか1つに記載の通信装置。
【0062】
(付記8)基地局から送信された電波を多次元アンテナで受信し、前記多次元アンテナで受信された電波の受信時間および受信電力の差異から、移動する通信装置と前記基地局との相対位置を算出し、時系列に複数回算出された相対位置の各差分から、前記基地局と前記通信装置との相対的な移動速度および移動方向を算出し、前記移動速度が所定の速度を超える場合に、前記移動方向のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択することを特徴とする基地局選択方法。
【0063】
(付記9)算出された相対位置および受信電力から、基地局のセル半径を推定し、推定されたセル半径が所定の大きさ以上のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択する付記8記載の基地局選択方法。
【0064】
(付記10)コンピュータに、多次元アンテナで受信された基地局からの電波の受信時間および受信電力の差異から、移動する自コンピュータと当該基地局との相対位置を算出する相対位置算出処理、時系列に複数回算出された相対位置の各差分から、前記基地局と自コンピュータとの相対的な移動速度および移動方向を算出する速度方向算出処理、および、前記移動速度が所定の速度を超える場合に、前記移動方向のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択する基地局選択処理を実行させるための基地局選択プログラム。
【0065】
(付記11)コンピュータに、算出された相対位置および受信電力から、基地局のセル半径を推定するセル半径推定処理を実行させ、基地局選択処理で、推定されたセル半径が所定の大きさ以上のセルに対応する基地局をハンドオーバ先の基地局として選択させる付記10記載の基地局選択プログラム。
【符号の説明】
【0066】
11 アンテナ
12 相対位置算出部
13 速度方向算出部
14 セル半径推定部
100 通信装置
200〜500 基地局
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8