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特開2018-164206高速切替装置、それを用いたパルスパターン発生装置、誤り率測定システム、及び高速切替方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-164206(P2018-164206A)
(43)【公開日】2018年10月18日
(54)【発明の名称】高速切替装置、それを用いたパルスパターン発生装置、誤り率測定システム、及び高速切替方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/49 20060101AFI20180921BHJP
   H03M 1/66 20060101ALI20180921BHJP
【FI】
   H04L25/49
   H03M1/66 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-60630(P2017-60630)
(22)【出願日】2017年3月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(72)【発明者】
【氏名】松田 修一
【テーマコード(参考)】
5J022
5K029
【Fターム(参考)】
5J022AB01
5J022BA05
5J022CF08
5K029AA03
5K029GG05
(57)【要約】
【課題】汎用のマルチチャンネルDACからの複数のアナログ電圧を高速に切り替えて外部に出力することができる高速切替装置、それを用いたパルスパターン発生装置、誤り率測定システム、及び高速切替方法を提供する。
【解決手段】入力されたデジタル値に応じたアナログ電圧を出力するDAC15が複数のチャンネルCH1〜CH16にそれぞれ設置されたマルチチャンネルDAC11と、各DAC15にデジタル値をそれぞれ設定する制御部14と、複数のチャンネルの中から任意のチャンネルを選択するための選択信号に応じて複数のチャンネルCH1〜CH16の中から1つのチャンネルを選択し、選択した任意のチャンネルから出力されたアナログ電圧を外部に出力する経路選択スイッチ12と、を備え、経路選択スイッチ12は、選択する任意のチャンネルを選択信号に応じて順次切り替える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたデジタル値に応じたアナログ電圧を出力するD/A変換器(15)が複数のチャンネルにそれぞれ設置されたマルチチャンネルDAC(11)と、
各前記D/A変換器に前記デジタル値をそれぞれ設定するデジタル値設定部(14)と、
前記複数のチャンネルの中から任意のチャンネルを選択するための選択信号に応じて前記複数のチャンネルの中から1つのチャンネルを選択し、選択した前記任意のチャンネルから出力された前記アナログ電圧を外部に出力する経路選択スイッチ(12)と、を備え、
前記経路選択スイッチは、選択する前記任意のチャンネルを前記選択信号に応じて順次切り替えることを特徴とする高速切替装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高速切替装置(10)と、
パルスパターンを発生させるパルスパターン発生器(20)と、
前記経路選択スイッチから出力された前記アナログ電圧に応じたゲインで、前記パルスパターンにエンファシスを付加するエンファシス信号付加回路(24)と、を備えることを特徴とするパルスパターン発生装置。
【請求項3】
前記高速切替装置の前記デジタル値設定部により設定される前記デジタル値は、PCI Express(登録商標)、USB(登録商標)、Ethernet(登録商標)、InfiniBand、CEIのうちのいずれかの通信規格に応じたプリエンファシスが前記パルスパターンにかかるように、前記ゲインを調整するための値であることを特徴とする請求項2に記載のパルスパターン発生装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のパルスパターン発生装置(20)と、
被試験対象(100)を試験するための試験信号の入力に伴って前記被試験対象から出力される被測定信号と前記試験信号とを比較して、前記被測定信号の誤り率を測定する誤り率測定装置(30)と、を備え、
前記試験信号は、前記エンファシス信号付加回路によりエンファシスを付加された前記パルスパターンであることを特徴とする誤り率測定システム。
【請求項5】
請求項1に記載の高速切替装置(10)を用いる高速切替方法であって、
前記マルチチャンネルDACの複数のチャンネルにそれぞれ設置された前記D/A変換器にデジタル値をそれぞれ設定するステップ(S2)と、
各前記D/A変換器により、前記デジタル値に応じたアナログ電圧を出力するステップ(S3)と、
前記複数のチャンネルの中から任意のチャンネルを選択するための選択信号に応じて前記複数のチャンネルの中から1つのチャンネルを選択し、選択した前記任意のチャンネルから出力された前記アナログ電圧を外部に出力する経路選択ステップ(S4〜S6)と、を含み、
前記経路選択ステップで選択される前記任意のチャンネルが前記選択信号に応じて順次切り替わることを特徴とする高速切替方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速切替装置、それを用いたパルスパターン発生装置、誤り率測定システム、及び高速切替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器や通信機器の高性能化に伴い、機器間でのシリアル伝送の速度が高速化し続けている。しかしながら、このような高速のシリアル伝送に用いられる伝送線路は、高ビットレートのデジタル信号に対してはローパスフィルタとして機能し、伝送線路を伝搬するデジタル信号の高周波成分を大きく減衰させてしまう。このため、伝送線路のローパスフィルタ特性によって失われてしまう高周波成分を補償するために、デジタル信号にプリエンファシスをかけて低周波成分に対して高周波成分を相対的に持ち上げる技術が従来より知られている。
【0003】
例えば、PCI Express(登録商標)(Peripheral Component Interconnect Express)などの通信規格に準拠した被試験対象(Device Under Test:DUT)に対するコンプライアンステストでは、様々なプリエンファシスがかけられたデジタル信号が試験信号としてDUTの伝送線路に入力される。
【0004】
図5に、プリエンファシスがかけられたデジタル信号の波形の一例を示す。この波形には、複数の振幅量Va,Vb,Vc,Vdを増減可能な箇所(以下、「エンファシスタップ」又は単に「タップ」と称する)が存在する。すなわち、図5の例のエンファシスタップ数は4である。なお、通信規格によって必要なエンファシスタップ数は異なる。
【0005】
図6は、デジタル信号にプリエンファシスをかけるための構成を示す図である。エンファシス信号付加回路50のゲインは、通信規格に応じたDAC値が設定されたDAC(D/A変換器)51からのアナログ電圧に応じて変化する。これにより、エンファシス信号付加回路50に入力されたアナログ制御信号は、通信規格に応じたプリエンファシスをかけられて、DUT100に入力される。なお、図6は1タップ分の構成を示しており、実際にはエンファシスタップ数と同数のDAC51が必要となる。コンプライアンステストにおいては、通信規格ごとに規定された切替時間内にエンファシス信号付加回路50のエンファシスゲインを順次切り替える必要がある。
【0006】
なお、DACとしては、設定されるDAC値の切り替わりのタイミングで、グリッチやセトリング時間のばらつきが発生しない電流セル型のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−115761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されたような従来のDACでは、通信規格ごとに規定された切替時間内にエンファシス信号付加回路のゲインを順次切り替えることが容易ではない。例えば、PCI Express(登録商標)ではゲインの切替時間として500nsecが求められるが、従来のDACが持つμsecオーダのセトリング時間が足かせとなり、規定された切替時間内でのゲインの高速な切替が不可能になってしまうという問題があった。
【0009】
上述の問題を解決するために、例えば、複数のDACによるインターリーブ動作を用いることが考えられるが、この場合には必要なDAC数が膨大となり、またDAC値の設定タイミングも難しくなるため、実現性に問題がある。
【0010】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、汎用のマルチチャンネルDACからの複数のアナログ電圧を高速に切り替えて外部に出力することができる高速切替装置、それを用いたパルスパターン発生装置、誤り率測定システム、及び高速切替方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る高速切替装置は、入力されたデジタル値に応じたアナログ電圧を出力するD/A変換器が複数のチャンネルにそれぞれ設置されたマルチチャンネルDACと、各前記D/A変換器に前記デジタル値をそれぞれ設定するデジタル値設定部と、前記複数のチャンネルの中から任意のチャンネルを選択するための選択信号に応じて前記複数のチャンネルの中から1つのチャンネルを選択し、選択した前記任意のチャンネルから出力された前記アナログ電圧を外部に出力する経路選択スイッチと、を備え、前記経路選択スイッチは、選択する前記任意のチャンネルを前記選択信号に応じて順次切り替える構成である。
【0012】
この構成により、本発明に係る高速切替装置は、汎用のマルチチャンネルDACからの複数のアナログ電圧を高速に切り替えて外部に出力することができる。
【0013】
また、本発明に係るパルスパターン発生装置は、上記の高速切替装置と、パルスパターンを発生させるパルスパターン発生器と、前記経路選択スイッチから出力された前記アナログ電圧に応じたゲインで、前記パルスパターンにエンファシスを付加するエンファシス信号付加回路と、を備える構成である。
【0014】
この構成により、本発明に係るパルスパターン発生装置は、汎用のマルチチャンネルDACからの複数のアナログ電圧を高速に切り替えてエンファシス信号付加回路に出力することにより、エンファシス信号付加回路のゲインを高速に切り替えることができる。
【0015】
また、本発明に係るパルスパターン発生装置においては、前記高速切替装置の前記デジタル値設定部により設定される前記デジタル値は、PCI Express(登録商標)、USB(登録商標)、Ethernet(登録商標)、InfiniBand、CEIのうちのいずれかの通信規格に応じたプリエンファシスが前記パルスパターンにかかるように、前記ゲインを調整するための値であってもよい。
【0016】
この構成により、本発明に係るパルスパターン発生装置は、パルスパターン発生器から出力されたパルスパターンに、各種の通信規格に応じたプリエンファシスをかけることができる。例えば、本発明に係るパルスパターン発生装置は、PCI Express(登録商標)のコンプライアンステストで使用されるプリセット値に応じたプリエンファシスを、要求される500nsec以下の切替時間で切り替えることが可能となる。
【0017】
また、本発明に係る誤り率測定システムは、上記のいずれかのパルスパターン発生装置と、被試験対象を試験するための試験信号の入力に伴って前記被試験対象から出力される被測定信号と前記試験信号とを比較して、前記被測定信号の誤り率を測定する誤り率測定装置と、を備え、前記試験信号は、前記エンファシス信号付加回路によりエンファシスを付加された前記パルスパターンである構成である。
【0018】
この構成により、本発明に係る誤り率測定システムは、エンファシス信号付加回路のゲインを高速に切り替えることができるため、被試験対象から出力される被測定信号に対する誤り率測定を高速に行うことができる。
【0019】
また、本発明に係る高速切替方法は、請求項1に記載の高速切替装置を用いる高速切替方法であって、前記マルチチャンネルDACの複数のチャンネルにそれぞれ設置された前記D/A変換器にデジタル値をそれぞれ設定するステップと、各前記D/A変換器により、前記デジタル値に応じたアナログ電圧を出力するステップと、前記複数のチャンネルの中から任意のチャンネルを選択するための選択信号に応じて前記複数のチャンネルの中から1つのチャンネルを選択し、選択した前記任意のチャンネルから出力された前記アナログ電圧を外部に出力する経路選択ステップと、を含み、前記経路選択ステップで選択される前記任意のチャンネルが前記選択信号に応じて順次切り替わる構成である。
【0020】
この構成により、本発明に係る高速切替方法は、汎用のマルチチャンネルDACからの複数のアナログ電圧を高速に切り替えて外部に出力することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、汎用のマルチチャンネルDACからの複数のアナログ電圧を高速に切り替えて外部に出力することができる高速切替装置、それを用いたパルスパターン発生装置、誤り率測定システム、及び高速切替方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1の実施形態に係る高速切替装置の構成を示すブロック図である。
図2】PCI Express(登録商標)のプリセット値を示す表である。
図3】第1の実施形態に係る高速切替装置による高速切替方法の処理を示すフローチャートである。
図4】第2の実施形態に係る誤り率測定システムの構成を示すブロック図である。
図5】プリエンファシスがかけられたデジタル信号の波形の一例を示す図である。
図6】従来のデジタル信号にプリエンファシスをかけるための構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る高速切替装置、それを用いたパルスパターン発生装置、誤り率測定システム、及び高速切替方法の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る高速切替装置は、出力するアナログ電圧を高速に切り替える装置である。図1に示すように、本実施形態に係る高速切替装置10は、少なくとも1つのマルチチャンネルDAC11と、少なくとも1つの経路選択スイッチ12と、操作部13と、デジタル値設定部としての制御部14と、を備える。
【0025】
マルチチャンネルDAC11は、入力されたデジタル値(以下、「DAC値」とも称する)に応じたアナログ電圧を出力する複数のD/A変換器(以下、「DAC」とも称する)15を有している。各DAC15は、複数のチャンネルCH1〜CH16のそれぞれに設置されている。なお、図1では、DAC15の個数及びチャンネル数を16としたが、これ以外の値であってもよい。
【0026】
経路選択スイッチ12は、高速アナログスイッチであり、例えばMOS系の半導体スイッチで構成することができる。経路選択スイッチ12は、制御部14から出力される、複数のチャンネルの中から任意のチャンネルを選択するための選択信号に応じて、複数のチャンネルCH1〜CH16の中から任意の1つのチャンネルを選択し、選択した任意の1つのチャンネルから出力されたアナログ電圧を外部に出力するようになっている。また、経路選択スイッチ12は、選択する任意のチャンネルを選択信号に応じて順次切り替えるようになっている。なお、経路選択スイッチ12によるチャンネルの切替時間は、例えば40nsec以下であり、DAC単体のμsecオーダのセトリング時間、すなわち各DAC15においてDAC値の設定が完了するまでの時間よりも十分に短い。
【0027】
制御部14は、例えばCPU、DAC値記憶部18を構成するROM、RAM、HDDなどを含むマイクロコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等で構成され、高速切替装置10を構成する上記各部の動作を制御する。さらに、制御部14は、所定のプログラムを実行することにより、スイッチ切替制御部19をソフトウェア的に構成するようになっている。
【0028】
DAC値記憶部18は、DAC値として、例えば、PCI Express(登録商標)、USB(登録商標)(Universal Serial Bus)、Ethernet(登録商標)、InfiniBand、CEI(Common Electrical Interface)などの通信規格に関するコンプライアンステストで使用されるプリセット値を記憶するものである。例えば、PCI Express(登録商標)のGen3では、図2に示すような11種類のプリセット値P0〜P10が規定されている。
【0029】
なお、DAC値として通信規格ごとのプリセット値を使用する場合には、マルチチャンネルDAC11及び経路選択スイッチ12の個数は、それぞれ通信規格に応じたエンファシスタップ数以上である必要がある。
【0030】
スイッチ切替制御部19は、あらかじめ設定された順番で、複数のチャンネルの中から任意のチャンネルを選択するための選択信号を経路選択スイッチ12に順次出力するようになっている。
【0031】
操作部13は、ユーザによる操作入力を行うためのものであり、キーボード、タッチパネル、又はマウスのような入力デバイスを含んで構成される。例えば、ユーザは、操作部13を用いて、上記の複数の通信規格の中から1つの通信規格を選択することができるようになっている。また、操作部13は、エンファシスタップごとの複数のチャンネルCH1〜CH16のうち、選択対象となるチャンネルの指定と、指定された全てのチャンネルを選択する際の順番とを、設定可能に構成されていてもよい。
【0032】
制御部14は、操作部13により選択された通信規格のエンファシスゲインに対応した複数のプリセット値をDAC値記憶部18から読み出して、各エンファシスタップ用の各チャンネルCH1〜CH16に設置されたDAC15に読み出したプリセット値をそれぞれ設定するようになっている。なお、各DAC15に設定されるDAC値は、上記のような通信規格ごとに規定されたプリセット値に限定されず、制御部14は、操作部13により入力された任意のデジタル値を各DAC15に設定してもよい。
【0033】
以下、本実施形態の高速切替装置10を用いる高速切替方法について、図3のフローチャートを参照しながらその処理の一例を説明する。
【0034】
まず、ユーザによる操作部13の操作により、複数の通信規格の中から1つの通信規格が選択される(ステップS1)。
【0035】
次に、制御部14は、ステップS1で選択された通信規格のエンファシスゲインに対応した複数のプリセット値をDAC値記憶部18から読み出して、各エンファシスタップ用の各チャンネルCH1〜CH16に設置されたDAC15に、読み出したプリセット値をそれぞれ設定する(ステップS2)。なお、ステップS2において各DAC15に設定されるDAC値は、上記のような通信規格ごとに規定されたプリセット値に限定されず、任意のデジタル値であってもよい。
【0036】
次に、各DAC15は、ステップS2で設定されたプリセット値又は任意のデジタル値に応じたアナログ電圧を出力する(ステップS3)。これにより、各DAC15からアナログ電圧が常に出力されている状態となる。
【0037】
次に、スイッチ切替制御部19は、各エンファシスタップ用の経路選択スイッチ12に選択信号を出力して、所望のプリセット値が設定された1つのチャンネルをエンファシスタップごとに選択する(経路選択ステップS4)。
【0038】
次に、経路選択スイッチ12は、ステップS4で選択されたチャンネルからのアナログ電圧を、エンファシスタップごとに外部に出力する(経路選択ステップS5)。
【0039】
次に、スイッチ切替制御部19は、ステップS2でプリセット値が設定された全てのチャンネルがステップS4にて選択されたか否かを判断する(経路選択ステップS6)。否定判断の場合にはステップS4に戻り、スイッチ切替制御部19は、まだ選択されていないチャンネルを選択するように、経路選択スイッチ12を切り替える。肯定判断の場合には処理を終了する。
【0040】
つまり、上記のステップS4〜S6の処理により、経路選択ステップS5で選択されるチャンネルが選択信号に応じて順次切り替わるようになっている。なお、ステップS4の処理の前に、ユーザによる操作部13の操作により、エンファシスタップごとに選択対象となるチャンネル(あるいは、プリセット値)を指定する処理や、指定された全てのチャンネルを選択する際の順番を設定する処理などを追加してもよい。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係る高速切替装置10は、チャンネルの切り替えを実行する前に、あらかじめ汎用のマルチチャンネルDAC11内の複数のDAC15にDAC値を設定しておくようになっている。これにより、各DAC15からアナログ電圧が常に出力されている状態となる。さらに、本実施形態に係る高速切替装置10は、それらの出力を経路選択スイッチ12で順次切り替えることにより、各DAC15のセトリング時間に関わらず、汎用のマルチチャンネルDAC11からの複数のアナログ電圧を高速に切り替えて外部に出力することができる。
【0042】
(第2の実施形態)
図4は、第1の実施形態に係る高速切替装置10を有するパルスパターン発生装置20と、誤り率測定装置30と、を備える第2の実施形態に係る誤り率測定システム40を示している。以下では、第1の実施形態に係る高速切替装置10の構成及び動作についての説明は省略する場合がある。
【0043】
図4に示すように、パルスパターン発生装置20は、高速切替装置10と、シンセサイザ21と、ジッタ変調源22と、パルスパターン発生器23と、エンファシス信号付加回路24と、を備える。
【0044】
ジッタ変調源22は、シンセサイザ21が生成するクロックに所望のジッタを付加してジッタクロックを発生させるようになっている。
【0045】
パルスパターン発生器23は、ジッタ変調源22から入力されたジッタクロックを用いて、2−1のビット周期を有する擬似ランダムビット系列や、規格で規定されるCompliance Pattern(CP)、Modified Compliance Pattern(MCP)などのパルスパターンを発生させるようになっている。
【0046】
エンファシス信号付加回路24は、高速切替装置10の経路選択スイッチ12から出力されたアナログ電圧に応じたゲインで、パルスパターン発生器23から出力されたパルスパターンにエンファシスを付加するようになっている。エンファシス信号付加回路24によりエンファシスを付加されたパルスパターンは、DUT100を試験するための試験信号としてDUT100に入力される。
【0047】
ここで、高速切替装置10の制御部14により設定されるDAC値が、例えば、PCI Express(登録商標)、USB(登録商標)、Ethernet(登録商標)、InfiniBand、CEIなどの通信規格で規定されたプリセット値である場合には、パルスパターン発生器23から出力されたパルスパターンにこれらの通信規格に応じたプリエンファシスがかかるように、エンファシス信号付加回路24のゲインを調整することができる。
【0048】
誤り率測定装置30は、エンファシス信号付加回路24から出力された試験信号の入力に伴ってDUT100から出力される被測定信号と試験信号とを比較して、被測定信号の誤り率を測定するようになっている。DUT100が対応する規格の例としては、PCI Express(登録商標)、USB(登録商標)、Ethernet(登録商標)、InfiniBand、CEIなどが挙げられる。
【0049】
なお、図4の例では、パルスパターン発生装置20を誤り率測定装置30と別体の構成として説明したが、パルスパターン発生装置20を誤り率測定装置30と一体に構成することもできる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係るパルスパターン発生装置20は、高速切替装置10を備えることにより、汎用のマルチチャンネルDAC11からの複数のアナログ電圧を高速に切り替えてエンファシス信号付加回路24に出力できるため、エンファシス信号付加回路24のゲインを高速に切り替えることができる。
【0051】
また、本実施形態に係るパルスパターン発生装置20は、パルスパターン発生器23から出力されたパルスパターンに、各種の通信規格に応じたプリエンファシスをかけることができる。例えば、本発明に係るパルスパターン発生装置20は、PCI Express(登録商標)のコンプライアンステストで使用されるプリセット値に応じたプリエンファシスを、要求される500nsec以下の切替時間で切り替えることが可能となる。
【0052】
また、本実施形態に係る誤り率測定システム40は、エンファシス信号付加回路24のゲインを高速に切り替えて、パルスパターン発生器23から出力されたパルスパターンにかけるプリエンファシスを高速に切り替えることができるため、被試験対象から出力される被測定信号に対する誤り率測定を高速に行うことができる。なお、高速切替装置10は、パルスパターン発生装置20に限らず、電圧を高速に切り替えるあらゆる用途に適用できる。例えば、高速切替装置10は、誤り率測定装置30側に組み込まれていてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 高速切替装置
11 マルチチャンネルDAC
12 経路選択スイッチ
13 操作部
14 制御部
15 DAC
18 DAC値記憶部
19 スイッチ切替制御部
20 パルスパターン発生装置
21 シンセサイザ
22 ジッタ変調源
23 パルスパターン発生器
24 エンファシス信号付加回路
30 誤り率測定装置
40 誤り率測定システム
100 DUT
図1
図2
図3
図4
図5
図6