【課題】出力周波数の高い区間では、ソフトウェア過電流抑制レベルを定数に維持し、出力周波数の低い区間では、ソフトウェア過電流抑制レベルを上げて過負荷性能を向上させるインバータ制御方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の構成および効果を十分に理解するため添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。しかし、本発明は、以下に開示される実施形態に限定されるものではなく、様々な形態に具現されて多様な変更を加えることができる。但し、本実施形態に対する説明は、本発明の開示を完全なものにして、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。添付図面における構成要素は、説明の便宜のためにその大きさを実際より拡大して示しており、各構成要素の比率は、誇張されるか縮小されてもよい。
【0015】
ある構成要素が他の構成要素の「上に」あるか「接して」いると記載された場合、他の構成要素の上に直接相接しているか又は連結されていてもよいが、中間にさらに他の構成要素が存在できると理解しなければならない。一方、ある構成要素が他の構成要素の「真上に」あるか「直接接して」いると記載された場合は、中間にさらに他の構成要素は存在しないと理解されてもよい。構成要素間の関係を説明する別の表現、例えば「〜間に」や「直接〜の間に」等も同様に解釈される。
【0016】
「第1」、「第2」等の用語は、多様な構成要素を説明するに使われるが、上記構成要素は、上記用語によって限定されてはならない。上記用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使うことができる。例えば、本発明の権利範囲を脱しないながら「第1の構成要素」は「第2の構成要素」に命名されてもよいし、同様に「第2の構成要素」も「第1の構成要素」に命名されてもよい。
【0017】
単数の表現は、文脈上明白に別途表現しない限り、複数の表現を含む。「含む」 又は「有する」等の用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品、又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定するためであり、一つ又はそれ以上の別の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品、又はこれらを組み合わせたものが加わると解釈されてもよい。
【0018】
本発明の実施形態において使われる用語は、別途定義されない限り、該技術分野における通常の知識を有する者に通常に知られた意味に解釈することができる。
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明することで、本発明を詳説する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態のインバータ制御方法が適用されるインバータシステムの概略的な構成図である。
【0021】
図面に示されたように、本発明の一実施形態のインバータ制御方法が適用されるシステムは、3相電源3がインバータ2に印加されて、インバータ2の出力が電動機4に印加されるものであって、インバータ2の3相出力電流が検出部5によって検出されて制御部1に印加されれば、パルス幅変造(Pulse Width Modulation、PWM)制御信号がインバータ2のインバータ部2Cに出力される。
【0022】
インバータ2は、3相電源3からAC電源の入力を受けて、整流部2AがこのようなAC電圧をDC電圧に変換して、直流リンクキャパシタ2Bが直流リンク電圧に貯蔵した後、インバータ部2Cが制御部1のPWM制御信号に従ってAC電圧に変換して電動機4に出力する。
【0023】
制御部1から出力されるPWM制御信号は、インバータ部2Cの複数のスイチング素子のオンオフを制御するものであって、これによりインバータ部2Cは、電動機4に所定の出力周波数を有する交流電圧を出力することができる。
【0024】
電動機4のすべり周波数は、インバータ2で生成する指令周波数と電動機4の回転速度との差に定義されて、電動機4のすべり周波数が大きく増加すれば、過電流が発生してインバータ2または電動機4に焼損が生じるようになる。一般に、インバータ2は、過電流に対する保護対策が立てられているため、過電流が発生すれば、これを制御部1が抑制するかまたはトリップを発生させて、インバータ2または電動機4を保護することができる。
【0025】
以下では、一般の過電流保護のためのインバータ制御方法を説明して、本発明の一実施形態のインバータ制御方法を説明する。
【0026】
図2は、過電流保護のためのインバータ制御時の電流レベルを示したものであり、
図3は、ソフトウェア過電流抑制動作の際に出力周波数の減少によるすべり周波数およびトルクの変化を説明するためのグラフで、
図4は、誘導電動機のすべり周波数と出力トルクおよび入力電流の関係を説明するためのグラフである。
【0027】
図2を参照すれば、電動機のすべり周波数を制御するソフトウェア過電流抑制(software over−current suppression、S/W OCS)動作は、制御部1がインバータ出力電流をモニタリングして、インバータ出力電流がS/W OCSレベル以上に上昇した場合、インバータ出力周波数を減殺して電動機のすべり周波数を減らすことである。S/W OCSレベルは、一般にインバータの定格電流以上の固定したレベルである。
【0028】
電動機4のすべり周波数は、次のような式に示すことができる。
【0030】
このとき、sはすべり周波数であり、
は同期速度で、Nは電動機速度を表す。
【0031】
図3において3Aは、既存の出力周波数のトルク−スリップ曲線を表して、3Bは、減少した出力周波数のトルク−スリップ曲線を表す。一般に、同期速度は、出力周波数に正比例するため出力周波数の減少によりすべり周波数が減少すれば、出力トルクが3P地点で一時的に増加し、同期速度が増加して出力周波数が元に戻れば、すべり周波数は、結果的に以前より減少することになる。すべり周波数が減少すれば、
図4で確認できるように、出力電流の大きさは減少することになる。
【0032】
S/W OCS動作の目的は、過電流によるインバータ2または電動機4の熱損傷を防ぐことである。電流による電動機4における熱発生は電動機4の出力に比例して、電動機4の出力はトルクと出力周波数の積に比例する。
【0033】
一方、出力周波数が入力電圧周波数に近接する場合、整流部2Aによる入力電圧整流過程で発生する電圧リプルが3相出力電圧のそれぞれの大きさに及ぶ影響が異なってくる。この場合、不平衡によって出力電流検出部5で検出した電流より、出力中に一相が大きくなり、一相に対する局所的な過電流が発生することがある。
【0034】
図5は、単相入力型インバータにおける出力電流の不平衡を説明するための波形図である。
図5において5Aは、3相出力電流の不平衡を表すものである。
【0035】
インバータは、出力周波数が小さい場合にも、大きい電流を熱損傷のおそれなく出力できるため過負荷性能を得ることができる。しかし、従来のように、S/W OCSを出力周波数に関係なく一定のS/W OCSレベルを基準とする場合、出力周波数が小さい場合に大きい電流を出力できないため、低周波帯域で過負荷性能を得ることができなかった。
【0036】
出力周波数が大きくなれば、整流部のリプルによる出力電流3相間の不均衡が大きくなりやすい。単相入力を使うインバータの場合、3相入力を使う場合より特にそうであるが、電圧リプルが入力周波数の2倍の周期に発生するため、出力周波数が入力周波数に近接すれば、出力中に一相のピーク出力がリプルによる整流部電圧の高点および底点と同期化されるためである。
【0037】
図6aおよび
図6bは、出力周波数による出力電流の不均衡を説明するための一例示図であって、
図6aは、出力周波数が10Hzである場合の単相入力型インバータにおける出力電流波形を示したものであり、
図6bは、出力周波数が60Hzである場合の単相入力型インバータにおける出力電流波形を示したものである。図面に示されたように、出力周波数が高い場合、出力電流の不均衡が大きくなる。したがって、出力電流の不均衡により熱損傷リスクが大きくなる。
【0038】
また、3相入力電源を整流する場合より単相入力電源を整流する場合が、リプル電圧がさらに大きくなるため相間不均衡が悪化する。
【0039】
図7aおよび
図7bは、入力電源によるリプル電圧の大きさを説明するための一例示であって、
図7aは、単相入力型インバータの直流リンク電圧を示したものであり、
図7bは、3相入力型インバータの直流リンク電圧を示したものである。図面に示されたように、単相入力型インバータの直流リンク電圧におけるリプル電圧の大きさ(7A)が、3相入力型インバータの直流リンク電圧におけるリプル電圧の大きさ(7B)よりさらに大きいことが分かる。
【0040】
したがって、出力電流の大きさが大きくなる方向に不均衡が生じた相の場合、他の相に比べて、過電流によって電力用半導体および導線、電動機巻線などに熱損傷が発生しやすいため、これを勘案して不均衡の度合いに比例してS/W OCSレベルを低く取らなければならない。一方、出力周波数が相対的に小さい場合、リプル電圧の周波数は、出力周波数の数倍に大きくなり、出力相とリプル電圧間の同期化による不均衡は、相対的に少なくなる。また、出力トルクが一定である場合、出力周波数の減少によって出力は相対的に減少し、過電流による熱損傷可能性は減る。
【0041】
結論的に、出力周波数に関係ない一定基準を使って過電流抑制を行う場合、出力周波数が高い場合のための保護機能は確保されるが、出力周波数の低い場合、この水準が不必要に高く、過負荷性能を引き出せなくなる問題点がある。誘導電動機の特性上、電動機起動の際、すなわち、出力周波数が低いときに大きいトルクと出力電流が必要であるため、低周波出力の過負荷性能が低下することは不適切であった。
【0042】
したがって、本発明のインバータ制御方法は、出力周波数の高い区間では、ソフトウェア過電流抑制レベルを定数に維持し、出力周波数の低い区間では、ソフトウェア過電流抑制レベルを上げて過負荷性能を向上させることができる。
【0043】
図8は、本発明の一実施形態に従ってソフトウェア過電流抑制動作を制御する過程を説明するための一例示図である。
【0044】
図面に示されたように、本発明の一実施形態のインバータ制御方法は、インバータ2の出力電流における出力周波数を3つの区間に分けて、それぞれS/W OCSレベルを変動させることができる。
【0045】
すなわち、出力周波数が相対的に高い8C区間では(すなわち、出力周波数が f2より大きい場合)、直流リンク電圧のリプル電圧によって出力相間不平衡が生じて、一相に局所的な過電流が発生する可能性があり、高い出力周波数によって電動機4の出力が高くなり発熱量が多くなる。したがって、8C区間では、S/W OCSレベル(8R)を定数に低く設定して過電流保護性能を確保することができる。このとき、8C区間におけるS/W OCSレベル(8R)は、従来のS/W OCSレベルと同様であり、定格電流の約160%であってもよい。但し、これは例示的なものであり、本発明がこれに限定されるものではない。
【0046】
また、出力周波数が一番低い区間8Aでは(すなわち、出力周波数がf1より小さい場合)、前述した不均衡による局所的な過電流可能性が減少して、電動機4の出力も低い出力周波数によって低いため、S/W OCSレベル(8P)を上げることで、さらに大きい出力電流も保護機能動作なく出力するようにできる。すなわち、8A区間におけるS/W OCSレベル(8P)は、従来のS/W OCSレベルよりさらに大きくなり、例えば定格電流の約180%であってもよい。但し、これは例示的なものであり、本発明がこれに限定されるものではない。これによって、出力周波数が低い場合、過負荷機能を向上させることができる。
【0047】
一方、出力周波数が中間区間8Bでは(すなわち、出力周波数がf1より大きくてf2より小さい場合)、S/W OCSレベル(8Q)を線状に減少させて連続関数になるようにすることができる。すなわち、8A区間におけるS/W OCSレベル(8P)から8C区間におけるS/W OCSレベル(8R)まで線状に減少するようにS/W OCSレベル(8Q)を設定することができる。S/W OCSレベルが連続関数ではない場合、出力周波数が区間の境界で微細に変化するとき、S/W OCSレベルの不連続的な変化によって同じ大きさの出力電流に対して突然の電流抑制動作が行われるためである。
【0048】
図9は、本発明の一実施形態のインバータ制御方法を説明するための一実施形態の流れ図である。
【0049】
図面に示されたように、本発明の一実施形態のインバータ制御方法は、制御部1が出力電流検出部5から出力電流を受信して(S11)、出力電流の出力周波数を確認することができる。
【0050】
その後、制御部1は、出力周波数が所定のf2より大きい場合には(S12)、S/W OCSレベルを定格電流の160%に設定することができる(S13)。但し、これは例示的なものであり、本発明がこれに限定されるものではなく、定格電流より大きいレベルに設定することができる。このとき、f2は、例えば20Hzであってもよいが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0051】
S12において出力周波数がf2より小さい場合、制御部1は、出力周波数がf2より小さいf1より小さいか確認することができる(S14)。制御部1は、出力周波数がf1より小さい場合、S/W OCSレベルを定格電流の180%に設定することができる(S15)。但し、これは例示的なものであり、本発明がこれに限定されるものではなく、S13において設定されたS/W OCSレベルより大きいレベルに設定することができる。このとき、f1は、例えば10Hzであってもよいが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0052】
S14において出力周波数がf1より大きい場合、制御部1は、S/W OCSレベルを(200−2×出力周波数)に設定することができる(S16)。この場合、前記例で設定した定格電流の160%と180%を線状に連結したことは、既に説明したとおりである。したがって、本発明が前記例に限定されるものではなく、各区間におけるレベルを線状に連結したことによって、その決定式は変更されてもよい。
【0053】
その後、制御部1は、出力電流検出部1で検出した出力電流が上記設定したS/W OCSレベルより大きくなるかをモニタリングして、出力電流がS/W OCSレベルより大きくなる場合(S17)、スリップ制御を行うことができる(S18)。すなわち、制御部1は、インバータ2の出力周波数を減殺して電動機4のすべり周波数を減らすことができる。
【0054】
このように、本発明は、出力周波数が低い水準でS/W OCSレベルを上げることで過負荷性能を向上させることができる。
【0055】
低い水準の出力周波数でS/W OCSレベルを上げても、保護機能上に悪影響がない理由は、次のとおりである。
【0056】
第一、当該水準ではリプル電圧の周波数が出力に比べて高くなり、出力相間不平衡の度合いが減ることになり、したがって、不平衡によって一相に流れる過電流が検出電圧に比べてさらに大きくなる場合を勘案して基準電流を低くする必要性が減るようになる。
【0057】
第二、当該水準では出力周波数が低いため、出力周波数とトルクの積である出力も結果的に低い水準となり、配線の発熱が減少し、基準電流を低くする必要性が減るようになる。
【0058】
本発明の場合、出力周波数が高くて、電動機4およびインバータで過電流による熱損傷可能性が大きくなる場合、低いS/W OCSレベルを適用するため、過電流抑制動作性能は制限されない。
【0059】
図10は、本発明の別の実施形態に従ってソフトウェア過電流抑制動作を制御する過程を説明するための一例示図である。
【0060】
図8の一実施形態では、出力周波数区間を3つに分けて、低い周波数帯域および高い周波数帯域ではS/W OCSレベルを一定に維持して、中間周波数帯域で周波数が増加するほど線状に減少させるようにS/W OCSレベルを設定(10A)したが、
図10の一実施形態によれば、制御部1は、出力電流の不平衡の度合い及びインバータ配線の発熱量などを利用して、出力周波数に対する関数でS/W OCSレベルを10Bのようにモデリングすることができる。
【0061】
したがって、要求される熱特性と出力周波数を利用して、理想的な基準電流が出力される関数を導出することができる。
【0062】
これによって、本発明のインバータ制御方法は、出力周波数の高い区間では、ソフトウェア過電流抑制レベルを維持し、出力周波数の低い区間では、ソフトウェア過電流抑制レベルを上げて過負荷性能を向上させることができる。
【0063】
以上、本発明による実施形態を説明したが、これは例示的なものに過ぎず、当該分野における通常の知識を有する者であれば、これから多様な変形および均等な範囲の実施形態が可能である点を理解できる。したがって、本発明の真の技術的保護の範囲は、次の請求範囲によって定めるべきである。