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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-164418(P2018-164418A)
(43)【公開日】2018年10月25日
(54)【発明の名称】耕地管理支援システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20180928BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20180928BHJP
【FI】
   A01G7/00 603
   G06T1/00 280
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-62912(P2017-62912)
(22)【出願日】2017年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(71)【出願人】
【識別番号】000126447
【氏名又は名称】アスザック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】小林 一樹
(72)【発明者】
【氏名】山崎 研一
【テーマコード(参考)】
5B057
【Fターム(参考)】
5B057AA15
5B057BA02
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057DA11
(57)【要約】
【課題】作業者等の移動を妨げることなく各種の耕地を対象として耕作物等の撮像データに基づく耕地管理用データを生成可能とする。
【解決手段】耕地Xを撮像して撮像データDpを出力するカメラ11と、撮像データDpを画像処理して管理用データDmを生成する処理部34とを備え、耕地Xに設置される空中軌道1と、カメラ11が取り付けられると共に空中軌道1の案内に従って移動可能に空中軌道1から吊り下げられた吊下部と、空中軌道1に対して吊下部を移動させるモータ31とを備えた移動機構を備え、処理部34は、モータ31を制御して吊下部を移動させる第1の処理と、耕地Xにおける吊下部の位置を特定する第2の処理と、カメラ11を制御して耕地Xを撮像させる第3の処理と、吊下部の位置およびカメラ11から出力される撮像データDpに基づいて管理用データDmを生成する第4の処理とを実行可能に構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕地を撮像して撮像データを出力する撮像部と、当該撮像データを画像処理して耕地管理用データを生成する処理部とを備えた耕地管理支援システムであって、
前記耕地に設置される空中軌道と、少なくとも前記撮像部が取り付けられると共に前記空中軌道の案内に従って移動可能に当該空中軌道から吊り下げられた吊下部と、前記空中軌道に対して前記吊下部を移動させる動力源とを備えた移動機構を備え、
前記処理部は、前記動力源を制御して前記吊下部を移動させる第1の処理と、前記耕地における前記吊下部の位置を特定する第2の処理と、前記撮像部を制御して前記耕地を撮像させる第3の処理と、前記第2の処理によって特定される前記吊下部の位置および前記第3の処理によって前記撮像部から出力される前記撮像データに基づいて前記耕地管理用データを生成する第4の処理とを実行可能に構成されている耕地管理支援システム。
【請求項2】
前記空中軌道は、断面C字状の棒体で構成されて当該棒体における開口部を下向きにして前記耕地に設置され、
前記吊下部は、前記撮像部を取付け可能な吊下部本体と、前記棒体の内面に接するように前記吊下部本体に取り付けられた車輪とを備えて構成されている請求項1記載の耕地管理支援システム。
【請求項3】
前記移動機構は、前記空中軌道の両端部に配置された一対の回動軸間に掛け渡されて当該空中軌道に沿って配置されると共に前記動力源によって当該空中軌道に沿って回動させられる環状駆動帯を備えて構成され、
前記吊下部は、前記環状駆動帯に固定され、
前記動力源は、前記空中軌道による前記吊下部の案内経路内に規定された基点に設置されると共に、前記環状駆動帯に接するように当該動力源と共に前記基点に配設された回動体を回動させることによって当該環状駆動帯を回動させ、
前記処理部は、前記第1の処理において、前記動力源を制御して前記環状駆動帯を回動させることによって前記空中軌道に対して前記吊下部を移動させる請求項1または2記載の耕地管理支援システム。
【請求項4】
前記処理部は、前記第2の処理において、前記回動体、および前記環状駆動帯の回動に伴って当該回動体と共に回動させられる被回動体のいずれかの回動数および回動角度に基づいて当該環状駆動帯の回動量を特定し、特定した当該回動量に基づいて前記吊下部の位置を特定する請求項3記載の耕地管理支援システム。
【請求項5】
前記移動機構は、前記動力源が前記吊下部に取り付けられると共に、前記空中軌道に接するように前記吊下部に取り付けられた動輪を前記動力源によって回動させることによって当該吊下部を当該空中軌道に対して移動可能に構成されている請求項1または2記載の耕地管理支援システム。
【請求項6】
前記空中軌道に取り付けられた複数の被検出体と、当該被検出体を検出可能に前記吊下部に取り付けられた検出部とを備え、
前記処理部は、前記第2の処理において、前記空中軌道における前記被検出体の取付け位置を特定可能な取付け位置データと、前記検出部による前記被検出体の検出結果とに基づいて前記吊下部の位置を特定する請求項1から3および5のいずれかに記載の耕地管理支援システム。
【請求項7】
前記処理部は、前記撮像部を制御して前記吊下部の周囲を継続的に繰り返し撮像させると共に当該撮像部からの前記撮像データを解析して予め設定された追跡対象像を特定し、特定した当該追跡対象像が前記撮像部によって撮像され続けるように前記動力源を制御して前記吊下部を移動させる第5の処理を実行可能に構成されている請求項1から6のいずれかに記載の耕地管理支援システム。
【請求項8】
前記吊下部に取り付けられて利用者による予め規定された動作を検出する動作検出部を備え、
前記処理部は、前記動作検出部によって前記予め規定された動作が検出されたときに、前記撮像部を制御して予め規定された撮像対象を撮像させる第6の処理を実行可能に構成されている請求項1から7のいずれかに記載の耕地管理支援システム。
【請求項9】
前記移動機構は、前記吊下部に取り付けられた物品収容部を備えている請求項1から8のいずれかに記載の耕地管理支援システム。
【請求項10】
前記移動機構は、前記耕地に設置された電子機器に電力を供給するための給電用コネクタが前記吊下部に取り付けられている請求項1から9のいずれかに記載の耕地管理支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕作地の管理に利用される情報を取得して耕作地管理用データを生成可能な耕地管理支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
耕作の分野においては、生産効率の向上を目的として耕地の集約化が図られると共に、作物の品質向上や経費の削減を目的として作業の標準化が図られ、かつ少人数での耕地管理が行なわれるようになっている。このため、管理者が耕地内の耕作物の状態を的確に把握することができるように、耕地の各部位(耕作物)を撮像した撮像データを管理者に提供することが行なわれている。
【0003】
例えば、下記の特許文献には、ビデオカメラおよびGPS機器を搭載した農用車両で耕地(圃場)を走行しながら地表面(圃場面)の局所撮影を連続的に繰り返し実行すると共に、撮像時にGPS機器によって特定された位置情報に基づいて各撮像データの画像を画像処理する(画像相互の位置関係の算出、画像の縮小および張付けを行う)ことによって耕地全体の平面画像の画像データを生成する画像マッピングシステムの発明が開示されている。この画像マッピングシステムでは、ビデオカメラおよびGPS機器と共に農用車両に搭載されたパーソナルコンピュータによって上記の画像処理(画像マッピング)が行なわれて耕地全体の平面画像が生成される。これにより、生成された平面画像を解析することによって耕地のいずれかの部位に異常が生じているか否かを特定することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−120042号公報(第3−4頁、第1−8図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の画像マッピングシステムには、以下のような解決すべき問題点が存在する。すなわち、上記の画像マッピングシステムでは、農用車両に搭載したビデオカメラによって撮像した撮像データに基づいて耕地全体の平面画像(以下、「全体画像」ともいう)を生成する構成が採用されている。この場合、管理対象の耕地には、大きな凹凸が生じている箇所や、農用車両の進入が困難な狭所などが存在することがある。かかる耕地を対象として上記の画像マッピングシステムによって全体画像を得ようとしたときには、凹凸の存在に起因して農用車両に揺れが生じて意図しない場所が撮像されたり、農用車両が進入できないことで撮像できない箇所が生じたりすることとなる。このため、上記の画像マッピングシステムには、耕地全体を好適に管理可能な全体画像を得るのが困難となることがあるという問題点が存在する。
【0006】
この場合、農用車両に代えて、ドローン等の飛行体にビデオカメラを搭載して耕地を空撮することにより、地表面の凹凸の影響を受けることなく耕地を撮像することができる可能性がある。しかしながら、飛行体の操縦に不慣れな者にとっては、撮像すべき位置に飛行体(ビデオカメラ)を位置させることが非常に困難であり、また、ある程度の操縦ができる者であっても農用車両の進入が困難な狭所に飛行体を移動させるのは決して容易ではない。さらに、温室栽培用耕地(ビニールハウス内等)においては飛行体を稼働させること自体が困難であり、法規制等によって飛行体を稼働させることができない地域の耕地も存在する。このため、飛行体を利用して耕地の空撮する構成を採用したとしても、解決すべき新たな問題点が発生する。
【0007】
一方、上記した各種の問題点を解決すべく、出願人は、耕地内に敷設した軌道に沿ってカメラ(撮像部)を移動させつつ耕地を撮像するシステムを試作した。この試作のシステムでは、カメラを取り付け可能な程度に十分に小さな移動体を軌道によって案内する構成のため、地表面の凹凸の影響を受けることのないように軌道を敷設しておけば、大きな揺れを生じさせることなくカメラを移動させながら撮像させることができ、また、農用車両の進入が困難な狭所であってもカメラを移動させて撮像させることができる。さらに、飛行体の操縦のような特殊な技能が要することなく、撮像位置までカメラを容易に移動させることができる。
【0008】
しかしながら、出願人が試作したシステムでは、耕地内に設置した軌道が、作業者や農用車両の移動の妨げとなることがある。また、耕作物の種類によっては、地表面に近い低所から撮像した画像では生育状態等を的確に判断するのが困難となることがある。かかる場合には、例えば、軌道上を移動する移動体に高背の支柱を立設し、その先端に設置したカメラによって高所から撮像することとなるが、軌道に生じている小さな歪みに起因して支柱の先端に設置されているカメラに大きな揺れが生じるおそれがある。したがって、これらの点を改善するのが好ましい。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、作業者等の移動を妨げることなく各種の耕地を対象として耕作物等の撮像データに基づく耕地管理用データを生成可能な耕地管理支援システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の耕地管理支援システムは、耕地を撮像して撮像データを出力する撮像部と、当該撮像データを画像処理して耕地管理用データを生成する処理部とを備えた耕地管理支援システムであって、前記耕地に設置される空中軌道と、少なくとも前記撮像部が取り付けられると共に前記空中軌道の案内に従って移動可能に当該空中軌道から吊り下げられた吊下部と、前記空中軌道に対して前記吊下部を移動させる動力源とを備えた移動機構を備え、前記処理部は、前記動力源を制御して前記吊下部を移動させる第1の処理と、前記耕地における前記吊下部の位置を特定する第2の処理と、前記撮像部を制御して前記耕地を撮像させる第3の処理と、前記第2の処理によって特定される前記吊下部の位置および前記第3の処理によって前記撮像部から出力される前記撮像データに基づいて前記耕地管理用データを生成する第4の処理とを実行可能に構成されている。
【0011】
また、請求項2記載の耕地管理支援システムは、請求項1記載の耕地管理支援システムにおいて、前記空中軌道は、断面C字状の棒体で構成されて当該棒体における開口部を下向きにして前記耕地に設置され、前記吊下部は、前記撮像部を取付け可能な吊下部本体と、前記棒体の内面に接するように前記吊下部本体に取り付けられた車輪とを備えて構成されている。
【0012】
さらに、請求項3記載の耕地管理支援システムは、請求項1または2記載の耕地管理支援システムにおいて、前記移動機構は、前記空中軌道の両端部に配置された一対の回動軸間に掛け渡されて当該空中軌道に沿って配置されると共に前記動力源によって当該空中軌道に沿って回動させられる環状駆動帯を備えて構成され、前記吊下部は、前記環状駆動帯に固定され、前記動力源は、前記空中軌道による前記吊下部の案内経路内に規定された基点に設置されると共に、前記環状駆動帯に接するように当該動力源と共に前記基点に配設された回動体を回動させることによって当該環状駆動帯を回動させ、前記処理部は、前記第1の処理において、前記動力源を制御して前記環状駆動帯を回動させることによって前記空中軌道に対して前記吊下部を移動させる。
【0013】
また、請求項4記載の耕地管理支援システムは、請求項3記載の耕地管理支援システムにおいて、前記処理部は、前記第2の処理において、前記回動体、および前記環状駆動帯の回動に伴って当該回動体と共に回動させられる被回動体のいずれかの回動数および回動角度に基づいて当該環状駆動帯の回動量を特定し、特定した当該回動量に基づいて前記吊下部の位置を特定する。
【0014】
さらに、請求項5記載の耕地管理支援システムは、請求項1または2記載の耕地管理支援システムにおいて、前記移動機構は、前記動力源が前記吊下部に取り付けられると共に、前記空中軌道に接するように前記吊下部に取り付けられた動輪を前記動力源によって回動させることによって当該吊下部を当該空中軌道に対して移動可能に構成されている。
【0015】
また、請求項6記載の耕地管理支援システムは、請求項1から3および5のいずれかに記載の耕地管理支援システムにおいて、前記空中軌道に取り付けられた複数の被検出体と、当該被検出体を検出可能に前記吊下部に取り付けられた検出部とを備え、前記処理部は、前記第2の処理において、前記空中軌道における前記被検出体の取付け位置を特定可能な取付け位置データと、前記検出部による前記被検出体の検出結果とに基づいて前記吊下部の位置を特定する。
【0016】
さらに、請求項7記載の耕地管理支援システムは、請求項1から6のいずれかに記載の耕地管理支援システムにおいて、前記処理部は、前記撮像部を制御して前記吊下部の周囲を継続的に繰り返し撮像させると共に当該撮像部からの前記撮像データを解析して予め設定された追跡対象像を特定し、特定した当該追跡対象像が前記撮像部によって撮像され続けるように前記動力源を制御して前記吊下部を移動させる第5の処理を実行可能に構成されている。
【0017】
また、請求項8記載の耕地管理支援システムは、請求項1から7のいずれかに記載の耕地管理支援システムにおいて、前記吊下部に取り付けられて利用者による予め規定された動作を検出する動作検出部を備え、前記処理部は、前記動作検出部によって前記予め規定された動作が検出されたときに、前記撮像部を制御して予め規定された撮像対象を撮像させる第6の処理を実行可能に構成されている。
【0018】
さらに、請求項9記載の耕地管理支援システムは、請求項1から8のいずれかに記載の耕地管理支援システムにおいて、前記移動機構は、前記吊下部に取り付けられた物品収容部を備えている。
【0019】
また、請求項10記載の耕地管理支援システムは、請求項1から9のいずれかに記載の耕地管理支援システムにおいて、前記移動機構は、前記耕地に設置された電子機器に電力を供給するための給電用コネクタが前記吊下部に取り付けられている。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の耕地管理補助システムでは、空中軌道と、少なくとも撮像部が取り付けられて空中軌道から吊り下げられた吊下部と、空中軌道に対して吊下部を移動させる動力源とを備えた移動機構を備え、処理部が、動力源を制御して吊下部を移動させる第1の処理と、耕地における吊下部の位置を特定する第2の処理と、撮像部を制御して耕地を撮像させる第3の処理と、第2の処理によって特定される吊下部の位置および第3の処理によって撮像部から出力される撮像データに基づいて耕地管理用データを生成する第4の処理とを実行可能に構成されている。
【0021】
したがって、請求項1記載の耕地管理補助システムによれば、空中軌道の案内に従って移動させられる吊下部に取り付けられた撮像部によって耕地を撮像することで撮像部に大きな揺れを生じさせることなく耕地を撮像することができ、また、空中軌道を設置可能なスペースさえあれば撮像部を移動させて撮像させることができるため、各種の耕地を対象としてその状態を的確に把握し得る撮像データを含めた耕地管理用データを生成して提供することができる。また、地表面に敷設した軌道によって撮像部等の移動を案内する構成とは異なり、空中軌道が利用者(作業者)や農用車両の通行(移動)の妨げとなる事態を招くことがないため、耕作作業を安全かつ効率良く実施することができると共に、飛行体による空撮とは異なり、特殊な技能を有していない者であっても、耕地を撮像した撮像データを含む耕地管理用データを確実かつ容易に生成させて提供させることができる。
【0022】
請求項2記載の耕地管理補助システムによれば、断面C字状の棒体で構成された空中軌道を開口部を下向きにして耕地に設置すると共に、撮像部を取付け可能な吊下部本体と、棒体の内面に接するように吊下部本体に取り付けられた車輪とを備えて吊下部を構成したことにより、空中軌道と吊下部との連結部位に雨水や塵埃が付着して吊下部の移動が困難となる状態となるのを好適に回避することができると共に、車輪の存在によって空中軌道に対して吊下部をスムーズに移動させることができる。
【0023】
請求項3記載の耕地管理補助システムでは、空中軌道の両端部に配置された一対の回動軸間に掛け渡されて空中軌道に沿って配置されると共に動力源によって空中軌道に沿って回動させられる環状駆動帯を備えて移動機構が構成され、かつ吊下部が環状駆動帯に固定され、動力源が、空中軌道による吊下部の案内経路内に規定された基点に設置されると共に、環状駆動帯に接するように動力源と共に基点に配設された回動体を回動させることによって環状駆動帯を回動させ、処理部が、第1の処理において、動力源を制御して環状駆動帯を回動させることによって空中軌道に対して吊下部を移動させる。
【0024】
したがって、請求項3記載の耕地管理補助システムによれば、比較的簡易な構成であるにも拘わらず、空中軌道に対して吊下部を確実に移動させることができると共に、吊下部に動力源を取り付けて自走させる構成と比較して、吊下部に取り付けられる各部品の総重量、すなわち、空中軌道に対して移動させられる移動体の総重量を十分に軽量化することができるため、空中軌道に対して吊下部をスムーズに移動させることができる。
【0025】
請求項4記載の耕地管理補助システムでは、処理部が、第2の処理において、回動体、および環状駆動帯の回動に伴って回動体と共に回動させられる被回動体のいずれかの回動数および回動角度に基づいて環状駆動帯の回動量を特定し、特定した回動量に基づいて吊下部の位置を特定することにより、例えば、吊下部に取り付けたGPS測位装置によって吊下部の位置を特定する構成と比較して吊下部の位置を正確に特定することができ、しかも、低コストで構成することができる。
【0026】
請求項5記載の耕地管理補助システムによれば、動力源が吊下部に取り付けられると共に、空中軌道に接するように吊下部に取り付けられた動輪を動力源によって回動させることによって吊下部を空中軌道に対して移動可能に移動機構を構成したことにより、空中軌道に対して吊下部を移動させるための動力を外部から伝達する大掛りな設備が不要となるため、そのような動力伝達機構の設置が困難な耕地においても撮像部等を確実かつ容易に移動させることができる。
【0027】
請求項6記載の耕地管理補助システムでは、空中軌道に取り付けられた複数の被検出体と、被検出体を検出可能に吊下部に取り付けられた検出部とを備え、処理部が、第2の処理において、空中軌道における被検出体の取付け位置を特定可能な取付け位置データと、検出部による被検出体の検出結果とに基づいて吊下部の位置を特定する。したがって、この耕地管理補助システムによれば、空中軌道に対する吊下部の位置を正確かつ容易に特定して吊下部を所望の位置に正確かつ容易に移動させることができる。
【0028】
請求項7記載の耕地管理補助システムによれば、処理部が、撮像部を制御して吊下部の周囲を継続的に繰り返し撮像させると共に撮像部からの撮像データを解析して予め設定された追跡対象像を特定し、特定した追跡対象像が撮像部によって撮像され続けるように動力源を制御して吊下部を移動させる第5の処理を実行することにより、手動操作によって吊下部を任意の位置に移動させたり、利用者と吊下部とを紐等で連結して吊下部を利用者と共に移動させたりすることなく、吊下部を作業者(追跡対象像)の近傍に位置させることができる。これにより、作業者の近傍を撮像部によって容易に撮像することができるため、耕地の状態を把握するのに有用な撮像データを含めた耕地管理用データを確実かつ容易に生成させることができる。
【0029】
請求項8記載の耕地管理補助システムでは、吊下部に取り付けられて利用者による予め規定された動作を検出する動作検出部を備え、処理部が、動作検出部によって予め規定された動作が検出されたときに、撮像部を制御して予め規定された撮像対象を撮像させる第6の処理を実行する。したがって、請求項8記載の耕地管理補助システムによれば、手動操作によって撮像部に撮像を行わせる構成とは異なり、利用者の手が汚れていたり、利用者の手が道具や耕作物で塞がっていたりしても、任意の被写体を容易に撮像させることができる。
【0030】
請求項9記載の耕地管理補助システムによれば、吊下部に取り付けた物品収容部を備えて移動機構を構成したことにより、耕地の各部位において使用する物品や耕地内において取得した物品を作業者が携行しなくて済むため、耕作作業にかかる負担を十分に軽減することができる。
【0031】
請求項10記載の耕地管理補助システムによれば、耕地に設置された電子機器に電力を供給するための給電用コネクタを吊下部に取り付けて移動機構を構成したことにより、耕地内に設置された外部装置に対して電力を容易に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】耕地Xへの耕地管理支援システム100の設置形態の一例について説明するための説明図である。
図2】耕地管理支援システム100の構成、並びに耕地管理支援システム100とデータサーバYおよび情報端末Zとの接続形態について説明するための説明図である。
図3】空中軌道1および移動体3aの構成を示す断面図である。
図4】空中軌道1および移動体3bの構成を示す断面図である。
図5】空中軌道1と移動体3a,3b,3b・・およびケーブル5a,5bとの位置関係について説明するための説明図である。
図6】空中軌道1、コグドベルト2およびプーリ2a,2c,2cの一例について説明するための説明図である。
図7】作業者の着衣に付したマーカーMaの一例について説明するための説明図である。
図8】作業者の手袋に付したマーカーMbの一例、および耕作物Xaの撮像方法について説明するための説明図である。
図9】移動体3a,3bに容器14を吊り下げた状態について説明するための説明図である。
図10】耕地管理支援システム100Aの構成、並びに耕地管理支援システム100AとデータサーバYおよび情報端末Zとの接続形態について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る耕地管理支援システムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0034】
最初に、耕地管理支援システム100の構成について添付図面を参照して説明する。
【0035】
図1,2に示す耕地管理支援システム100は、「耕地管理補助システム」の一例であって、空中軌道1、コグドベルト2、移動体3a,3b,3b・・、ベースユニット4、ケーブル5a,5bおよびセンサユニット6を備えて耕地X(管理対象の「耕地」の一例)に設置されている。
【0036】
空中軌道1は、「空中軌道」の一例であって、図3,4に示すように、一例として、アルミニウムの押出し成形によって断面C字状に形成された棒体(いわゆる「C型チャンネル材」)で構成されており、開口部Hを下向きにして支持部材1aによって支持されて耕地Xの空中に設置されている。この場合、空中軌道1の設置高は、耕作物Xa(図1参照)の高さや作業者の身長および農用車両等の高さよりも高くなるように2m以上とするのが好ましく、耕作物Xa等の撮像が困難となることのないように5m以下(耕地Xが温室栽培用耕地などの場合には3m以下)とするのが好ましい。また、この空中軌道1については、専用の支持柱等に支持部材1aを介して取り付ける設置形態を採用することができ、また、耕地Xが温室栽培用耕地の場合には、温室を構成する柱材や梁材に支持部材1aを介して空中軌道1を取り付ける設置形態を採用することができる。
【0037】
コグドベルト2は、「環状駆動帯」の一例であって、本例の耕地管理補助システム100では、一例として、内面のみに「歯」が形成された片面歯付きベルト(図6参照)で構成されている。このコグドベルト2は、図2に示すように、空中軌道1の両端部に配置されたプーリ2a,2b(「一対の回動軸」の一例)の間に掛け渡されて空中軌道1に沿って回動可能に配設されている。この場合、本例の耕地管理補助システム100では、図3,4に示すように、空中軌道1の内側空間Sに収容されるようにしてコグドベルト2が設置されている。なお、図示および詳細な説明を省略するが、図1に示すように空中軌道1に曲部が存在するときや、長い直線部分が存在するときには、コグドベルト2が空中軌道1の内面に接して空中軌道1およびコグドベルト2に摩耗や傷付きが生じることのないようにコグドベルト2を案内するガイドローラを取り付けるのが好ましい。
【0038】
移動体3aは、後述するように空中軌道1に沿って耕地X内を移動させられる要素であって、図3に示す吊下部10(先頭ランナー)と、図2,5に示すように、カメラ11、マイク12および電源ケーブル13とを備え、各構成要素11〜13が吊下部10に取り付けられて一体化されている。吊下部10は、「吊下部」の一例であって、図3に示すように、上記の各構成要素11〜13を取り付け可能な吊下部本体10aと、空中軌道1の内面に接するように吊下部本体10aの上端部に取り付けられた車輪10bとを備え、空中軌道1の案内に従って耕地X内を移動可能に空中軌道1の下方に配設されると共に、内側空間Sにおいてコグドベルト2の外面に吊下部本体10aが固定されている。
【0039】
カメラ11は、「撮像部」に相当し、処理部34の制御下で各種の被写体を撮像して撮像データDpを処理部34に出力する。この場合、カメラ11としては、一般的なデジタルカメラ、全天球カメラ、3Dカメラ、赤外線カメラおよび暗視カメラなどの各種のカメラのなかから耕地管理補助システム100の用途に応じた(後述する「管理用データ」に基づいて管理すべき内容に応じた)カメラが選択されて移動体3aに搭載される。また、本例の耕地管理補助システム100では、「耕地管理補助システム」の構成についての理解を容易とするために1台のカメラ11を使用する例について説明するが、耕地管理補助システム100の用途に応じて2台以上の複数台のカメラ(撮像部)を搭載して構成することもできる。
【0040】
マイク12は、周囲の音声を集音して図示しない処理回路によって音声データDsを生成し、生成した音声データDsを処理部34に出力する。この場合、本例の耕地管理補助システム100では、図2,5に示すように、一例として、上記のカメラ11およびマイク12がケーブル5a(同軸ケーブル)を介してベースユニット4に接続される「有線通信方式」が採用されている。また、本例の耕地管理補助システム100では、後述するように、カメラ11およびマイク12がそれぞれ「動作検出部」として機能して利用者による「予め規定された動作」を検出する構成が採用されている。
【0041】
電源ケーブル13は、図1に示すように耕地Xに設置されたセンサユニット6などに電力を供給するためのケーブルであって、図2,5に示すように、一端部に給電用コネクタ13a(「給電用コネクタ」の一例)が配設されると共に、ケーブル5bを介してベースユニット4に接続されている。なお、本例の耕地管理補助システム100では、センサユニット6の近傍まで移動した移動体3aから電源ケーブル13を伸ばしてセンサユニット6に電力を供給する構成が採用されているが、センサユニット6等に対する電力供給を自動化する場合には、稼働アーム(図示せず)の先端部に給電用コネクタ13aを配設することができる。
【0042】
この場合、本例の耕地管理補助システム100では、移動体3aを構成するカメラ11、マイク12および電源ケーブル13(給電用コネクタ13a)が、雨水や消毒液および塵埃の付着によって動作不良を招くことがないように、防塵防滴構造が採用されている。なお、図示および詳細な説明を省略するが、照明設備が存在しない「耕地」においてカメラ11による撮像を行う場合には、カメラ11と共に「照明器具」を吊下部10に取り付けることにより、少ない電力でカメラ11による撮像範囲を好適に照らすことが可能となる。
【0043】
移動体3bは、後述するように空中軌道1に沿って移動体3aを追って耕地X内を移動させられる要素であって、図4に示すように、ケーブル5a,5b(以下、区別しないときには「ケーブル5」ともいう)が固定された吊下部20(従属ランナー)を備えて構成されている。吊下部20は、ケーブル固定具21によってケーブル5が固定される吊下部本体20aと、空中軌道1の内面に接するように吊下部本体20aの上端部に取り付けられた車輪20bとを備え、空中軌道1の下方に位置するように配設されている。
【0044】
この場合、本例の耕地管理補助システム100では、図5に示すように、ケーブル5が複数の移動体3bによって保持されている。また、本例の耕地管理補助システム100では、各移動体3bが最も接近した状態(同図における右側部位の状態)において、ケーブル5が耕地Xの地表面Fxに接することのないように、移動体3bによるケーブル5の保持間隔が規定されている。なお、この移動体3bの吊下部20は、前述した移動体3aの吊下部10とは異なり、コグドベルト2に固定されていない。
【0045】
ベースユニット4は、一例として、空中軌道1の一端部側に固定的に設置される要素であって、図2に示すように、モータ31、電源供給部32、通信部33、処理部34および記憶部35を備えて構成されている。
【0046】
モータ31は、「動力源」に相当し、空中軌道1の一端部(「空中軌道による吊下部の案内経路内に規定された基点」の一例)に設置されている。このモータ31は、一例として、コグドベルト2を回動させるためのプーリ2a(円形歯車:「環状駆動帯に接するように動力源と共に基点に配設された回動体」の一例:図6参照)を回動可能に図示しない減速機構を介してプーリ2aに連結されると共に、処理部34の制御に従ってプーリ2aを回動させることによって空中軌道1に対してコグドベルト2を回動させる。
【0047】
なお、本例の耕地管理補助システム100では、コグドベルト2がプーリ2aの周面(歯部)に好適に接した状態となるようにテンションローラ2c,2cによってコグドベルト2が押さえ付けられている。また、本例の耕地管理補助システム100では、コグドベルト2、プーリ2a,2b、テンションローラ2cおよびモータ31が相俟って「移動機構」が構成されている。さらに、本例の耕地管理補助システム100では、このモータ31に取り付けられた図示しないエンコーダからの出力信号に基づいてプーリ2aの回動数および回動角度を特定し、特定結果に基づいてコグドベルト2の回動量(すなわち、コグドベルト2に固定されている移動体3aの位置)を特定する構成が採用されている。
【0048】
この場合、モータ31によってコグドベルト2を回動させるための回動軸や、コグドベルト2の回動量を特定するための回動軸は、コグドベルト2の両端に配設された回動軸(上記の例におけるプーリ2a,2b)のいずれかに限定されない。具体的には、プーリ2a,2bとは別個にプーリ2a,2bの間に設けた歯付きプーリ(図示せず)をモータ31等で回動させることでコグドベルト2を回動させる構成や、コグドベルト2の回動に伴って回動させられるプーリ(「被回動体」の一例:図示せず)の回動量に基づいてコグドベルト2の回動量を特定する構成を採用することができる。
【0049】
電源供給部32は、処理部34の制御に従い、図示しない太陽電池パネルや商用交流からケーブル5bを介して電源ケーブル13(給電用コネクタ13a)に電力を供給することによって給電用コネクタ13aを介して接続されたセンサユニット6等に電力を供給する。通信部33は、図2に示すように、一例として、インターネットN等に接続可能な通信アダプタで構成され、処理部34の制御に従ってデータサーバYや情報端末Zなどの外部機器との間でインターネットNを介して各種のデータを送受信する。
【0050】
処理部34は、耕地管理補助システム100を総括的に制御する。具体的には、処理部34は、「処理部」に相当し、モータ31を制御してコグドベルト2を回動させることでコグドベルト2に固定されている移動体3a(吊下部10)を移動させる「第1の処理」を実行する。また、処理部34は、前述したようにモータ31のエンコーダからの出力信号に基づいてプーリ2aの回動数および回動角度を特定してコグドベルト2の回動量を特定し、その特定結果に基づいて耕地X上での移動体3aの位置(空中軌道1による移動体3aの案内経路内のいずれの位置に移動体3aが移動したか)を特定する「第2の処理」を実行する。さらに、処理部34は、カメラ11を制御して耕地Xを撮像させる「第3の処理」を実行する。
【0051】
また、処理部34は、上記の「第2の処理」によって特定される移動体3a(吊下部10)の位置、および上記の「第3の処理」によってカメラ11から出力される撮像データDpに基づいてカメラ11による撮像範囲全体の画像を生成し(「撮像データを画像処理する」との処理の一例)、生成した画像のデータおよびマイク12から出力される音声データDsや、後述するセンサユニット6による検出情報を含めて管理用データDm(「耕地管理用データ」の一例)を生成する「第4の処理」を実行する。なお、管理用データDmの生成・データ構造等については、後に詳細に説明する。
【0052】
さらに、処理部34は、後述するように「追尾動作モード」が選択されたときに、カメラ11を制御して移動体3aの周囲を継続的に繰り返し撮像させると共に、カメラ11からの撮像データDpを解析して、後述する「予め設定された追跡対象像」を特定し、特定した「追跡対象像」がカメラ11によって撮像され続けるようにモータ31を制御して移動体3a(吊下部10)を移動させる「第5の処理」を実行する。
【0053】
また、処理部34は、カメラ11からの撮像データDpに基づき、利用者が予め規定された動作を行ったと判別したときに、カメラ11を制御して、利用者によって指定された部位「予め規定された撮像対象」の一例)をズームアップ撮影させる処理(「第6の処理」の一例)を実行する。さらに、処理部34は、マイク12からの音声データDsに基づき、利用者が予め規定された音声を出力したと判別したときに、カメラ11を制御して、移動体3aの周囲(「予め規定された撮像対象」の他の一例)を撮影させる処理(「第6の処理」の他の一例)を実行する。
【0054】
記憶部35は、処理部34の動作プログラムや、上記の撮像データDp、音声データDsおよびセンサユニット6から出力される環境データDeなどを記憶する。また、記憶部35は、処理部34によって生成される管理用データDmを記憶する。なお、このベースユニット4には、動作条件を設定するための操作部や各種の情報を表示する表示部が処理部34に接続されているが、これらの図示および説明を省略する。また、本例の耕地管理補助システム100では、ベースユニット4の各構成要素が、水濡れや塵埃の付着によって動作不良を招くことがないように箱体(収容部)内に収容されて耕地Xに設置されているが、この箱体についての図示および説明についての説明も省略する。
【0055】
センサユニット6は、「耕地に設置された電子機器」に相当し、一例として、温度センサ、湿度センサ、二酸化炭素センサおよび照度センサなどの複数のセンサを備えると共に、各センサからの出力信号に基づいて環境データDeを生成して出力することができるように構成されている。このセンサユニット6は、図1に示すように耕地X内の任意の場所に設置されており、図示しない二次電池を電源として使用して環境データDeの生成処理を実行することができるように構成されている。これにより、センサユニット6に電力を供給する電力ケーブルの常設が不要となっている。なお、このセンサユニット6については、「耕地管理補助システム」の構成要素として備えた本例の構成に限定されず、「耕地管理補助システム」とは別個に耕地Xに設置された各種の「センサユニット」を利用する構成を採用することもできる。
【0056】
次いで、耕地管理補助システム100の使用形態の一例について添付図面を参照して説明する。
【0057】
この耕地管理補助システム100では、一例として、利用者によって設定された時刻が到来したときや、インターネットNを介して情報端末Z等から撮像の開始を指示されたときに、耕地Xの全体(空中軌道1による移動体3aの案内経路の全体)、または、耕地X内の予め設定された部位を撮像して管理用データDmを生成する処理と、利用者が耕地X内で作業を行っているときに利用者の指示した部位を撮像させたり、インターネットNを介して情報端末Z等から遠隔操作して任意の部位を撮像させたりして管理用データDmを生成する処理とを実行することが可能となっている。
【0058】
具体的には、一例として、耕作作業の妨げとなることがない夕刻から早朝までの間の任意の時刻(例えば、07:00)に耕地Xの全体像を含む管理用データDmを生成するように設定する。一方、処理部34は、設定された時刻が到来したと判別したときに、モータ31を制御してコグドベルト2を回動させることで移動体3aを空中軌道1の案内に従って移動させつつ、カメラ11を制御して一定時間間隔で移動体3aの周囲を連続撮像させる。この場合、本例の耕地管理補助システム100では、カメラ11によって撮影されない箇所が存在しないようにコグドベルト2の回動速度およびカメラ11による撮像の周期が予め規定されている。
【0059】
これにより、耕地Xの全体像を生成し得る複数の撮像データDpがカメラ11から処理部34に順次出力される。なお、詳細な説明を省略するが、カメラ11として全天球カメラを採用している場合を除き、カメラ11に搭載されているレンズの画角によっては、空中軌道1に沿って移動体3aを往復動させつつ、カメラ11による撮像方向を変えて複数回に亘って耕作物Xaを撮像する。
【0060】
この場合、本例の耕地管理補助システム100では、図5に示すように、移動体3aとベースユニット4とを接続するケーブル5が移動体3b,3b・・によって一定間隔で保持されている。したがって、移動体3aがベースユニット4から離間する方向に移動させられたときには、同図の左側に示すように、一端部が移動体3aに接続されているケーブル5に引っ張られるようにして移動体3b,3b・・が空中軌道1の案内に従って移動体3aを沿って移動させられる。これにより、ケーブル5が空中軌道1から大きく垂れ下がって耕作物Xa等を傷付ける事態が好適に回避される。
【0061】
一方、処理部34は、上記のようなカメラ11による耕作物Xaの撮像時に、モータ31のエンコーダからの出力信号に基づいてプーリ2aの回動数および回動角度を特定してコグドベルト2の回動量を特定し、その特定結果に基づいて移動体3aの位置を特定する。また、処理部34は、カメラ11から出力された撮像データDpを特定した位置に関連付けて記憶部35に記憶させる。さらに、処理部34は、空中軌道1による移動体3aの案内経路に沿った全域についての撮像データDpが記憶部35に記憶されたとき(移動体3aが空中軌道1の末端まで移動した状態での撮像が完了したとき)に、カメラ11を制御して撮像を終了させると共に、モータ31を制御してコグドベルト2を逆向きに回動させることで移動体3aを空中軌道1の案内に従って逆向きに移動させ、ベースユニット4の近傍に復帰させる。
【0062】
次いで、処理部34は、一例として、各撮像データDpの画像を、撮像データDpに関連付けて記憶させた移動体3aの位置に対応させて配置して結合することにより、空中軌道1による移動体3aの案内経路全体(すなわち耕地Xの全体)の平面画像を生成する。また、処理部34は、生成した画像の画像データと、マイク12から出力された音声データDsと、センサユニット6から取得した環境データDeとを含めて管理用データDmを生成して記憶部35に記憶させる。さらに、処理部34は、予め設定されたタイミング(例えば、管理用データDmの生成が完了した時点)、または、インターネットNを介してのデータサーバYからの要求に応じて、通信部33を制御して管理用データDmをデータサーバYにアップロードする。
【0063】
これにより、管理対象の耕地Xの状態を把握可能な管理用データDmがデータサーバYに保存された状態となる。この結果、例えば情報端末Zを操作してデータサーバYにアクセスして管理用データDmをダウンロードすることにより、耕地X(耕地管理補助システム100の設置場所)から遠く離れていても、管理用データDmを参照することで耕地Xにおける各耕作物Xaの状態等を的確に把握することが可能となる。なお、カメラ11として3Dカメラを採用した場合には、管理用データDmに含ませる耕地Xの像を3D画像データ形式とすることにより、VRゴーグルや3Dモニタを接続した情報端末Z等でこの管理用データDmの3D画像を閲覧することにより、耕地Xの状態を一層的確に把握することが可能となる。
【0064】
また、上記の一連の処理については、設定時刻に自動的に実行するだけでなく、情報端末Z等を操作してベースユニット4にアクセスして任意のタイミングで実行させることもできる。したがって、例えば悪天候のときに耕地Xまで足を運ばなくても、管理用データDmを参照することで耕地Xの状態を把握することができるため、耕地Xの管理に要する負担が十分に軽減される。
【0065】
一方、耕作中に任意のタイミングで指定箇所を撮像させるには、一例として、ベースユニット4の操作部を操作して耕地管理補助システム100を「追尾動作モード」に移行させる。この場合、本例の耕地管理補助システム100では、図7に示すように、移動体3aを自動的に追従させる対象者の着衣にマーカーMaを付しておくことにより、カメラ11によってマーカーMaが撮影可能な範囲内に移動体3aが自動的に移動する構成が採用されている。
【0066】
具体的には、「追尾動作モード(マーカーMaの自動追尾)」が選択されたときに、処理部34は、カメラ11を制御して撮像を開始させると共に、カメラ11から出力される撮像データDpを画像解析することにより、撮像データDpの画像内にマーカーMaの像(「追跡対象像」の一例)が存在するか否かを判別する。また、「追尾動作モード」に移行させる上記の操作が完了した対象者がカメラ11の前に移動することでマーカーMaが撮像されたときに、処理部34は、撮像データDpの画像内にマーカーMaの像が存在すると判別し、一例として、移動体3aに配設されている図示しないスピーカから「認識されました」との音声メッセージを出力させる。
【0067】
この状態において対象者が移動を開始したときに、処理部34は、カメラ11から順次出力される撮像データDpを画像解析して画像内におけるマーカーMaの像の位置や大きさに基づき、対象者(マーカーMa)のカメラ11に対する位置を特定し、その特定結果に応じてモータ31を制御して移動体3aを移動させることによってカメラ11によってマーカーMaが撮像され続ける状態を維持する。これにより、移動体3aが作業者(マーカーMa)を追尾する状態となる。
【0068】
一方、処理部34は、対象者を追跡させる上記の処理と並行して、マイク12から出力される音声データDsの音声解析を行うことで対象者が予め規定された音声を出力したかを監視する処理と、カメラ11から出力される撮像データDpの画像解析を行うことで対象者が予め規定された動作を行ったか否かを監視する処理とを繰り返し実行する。この場合、本例の耕地管理補助システム100では、「追跡動作モード」に移行させられている状態において、例えば、対象者から「写真撮影」との音声が発せられたときに、処理部34が、予め規定された手順に従ってカメラ11に被写体を撮像させる構成が採用されている。
【0069】
具体的には、処理部34は、音声データDsの音声解析により、写真撮影が指示されたと判別したとき(「予め規定された動作が検出されたとき」の一例)に、カメラ11から出力される撮像データDpの像の中に図8に示す一対のマーカーMbの像が存在するか否かを判別する。このマーカーMbは、対象者がカメラ11による撮像範囲を指定する際の指標となるマーカーであって、本例では、一例として、作業用の手袋にこのマーカーMbが付されているものとする。また、処理部34は、一対のマーカーMbの像が存在すると判別したときに、図示しないスピーカから予め規定されたカウントダウンメッセージを出力した後に、カメラ11を制御して両マーカーMb,Mbの像を対角とする矩形範囲を「予め規定された撮像対象」として撮像させる(「第6の処理」の一例)。
【0070】
この際には、例えば何らかの異常が生じている耕作物Xaの撮像データDpがカメラ11から出力されてベースユニット4の記憶部35に記憶される。これにより、この撮像データDpを耕地Xの管理者や耕作物Xaの育成に詳しい者に転送することで、耕地X(耕作物Xa)の状態を把握させることができる。
【0071】
一方、作業者から「写真撮影」との音声が出力された時点における撮像データDpの画像内にマーカーMbの像が存在しないときに、処理部34は、カウントダウンメッセージを出力すると共に、メッセージの出力の時点においてカメラ11から出力されている撮像データDp(マーカーMaの追尾を目的として撮像された撮像データDp)を、撮像時刻に関連付けて記憶部35に記憶させる処理を実行する(「第6の処理」他の一例)。これにより、対象者の像を含む耕地Xでの作業光景の像(撮像データDp)が記憶部35に保存される。
【0072】
なお、本例の耕地管理補助システム100では、上記のように「写真撮影」との音声を検出したときに撮像処理をするだけでなく、カメラ11からの撮像データDpの画像解析によって対象者が行った「予め規定されたゼスチャー」を検出したとき(「予め規定された動作が検出されたとき」の他の一例)に撮像処理が実行される構成が採用されている。また、撮像処理を指示するための操作スイッチ(プッシュスイッチや紐付きスイッチ)を移動体3aに配設し、この操作スイッチの操作によって撮像処理を実行させたり、例えば:Bluetooth (登録商標)などの近距離無線通信装置を移動体3aに搭載し、この通信装置と通信可能な各種の携帯型通信機からの遠隔操作によって撮像処理を実行させたりすることもできる。
【0073】
この場合、この耕地管理補助システム100では、前述したように高所に設置された空中軌道1から吊り下げられている移動体3a(カメラ11)によって耕地Xを撮像する構成のため、空中軌道1が作業者や農用車両の通行の妨げとなることなく、耕地Xの内の任意の被写体を撮像させることが可能となっている。これにより、耕地X(耕作物Xa)の状態を把握するのに有用な各種の管理用データDmを提供することが可能となっている。
【0074】
また、この耕地管理補助システム100では、上記のように耕地X内をカメラ11によって撮像して管理用データDmを生成するだけでなく、耕地X内に設置されているセンサユニット6などに電力を供給して二次電池を充電することが可能となっている。この場合、耕地X内の各部の環境を把握するには、耕地X内に複数のセンサユニット6を点在させるのが好ましいが、これらのセンサユニット6に電力ケーブルによって常時給電する構成を採用した場合には、電力ケーブルが作業の妨げとなったり、作業者や農用車両によって電力ケーブルが切断されてしまったりするおそれがある。
【0075】
これに対して、本例の耕地管理補助システム100では、センサユニット6の二次電池の蓄電率が低下したときに、そのセンサユニット6の近傍まで移動体3aを移動させてセンサユニット6の二次電池を充電することが可能となっている。具体的には、一例として「追尾動作モード」に移行させた状態において、マーカーMaが付された着衣を着た作業者が充電対象のセンサユニット6まで移動する。これにより、移動体3aが作業者を追ってセンサユニット6の近傍まで移動する。
【0076】
次いで、作業者は、移動体3aの電源ケーブル13を伸ばして給電用コネクタ13aをセンサユニット6に接続する。この際に、ベースユニット4の電源供給部32が、センサユニット6への給電用コネクタ13aの接続を感知して、ケーブル5bに電力を供給する。これにより、ケーブル5b,13および給電用コネクタ13aを介して電源供給部32からセンサユニット6に電力が供給されて二次電池が充電される。なお、本例の耕地管理補助システム100の構成とは相違するが、センサユニット6の受電用コネクタ(図示せず)に並設した通信用コネクタに接続可能なコネクタを移動体3aに配設しておき、二次電池の充電と並行してセンサユニット6から環境データDeを取得する構成を採用することもできる。
【0077】
また、本例の耕地管理補助システム100では、耕地Xの撮像および管理用データDmの生成(提供)や、センサユニット6等への電源の供給だけでなく、耕作作業に必要な各種の物品を移動体3a,3bによって耕地X内の任意の部位に搬送することが可能となっている。物品の搬送に際しては、図9に示すように、移動体3aの吊下部10、および/または移動体3bの吊下部20に容器14を取り付ける。
【0078】
この場合、容器14は、「物品収容部」の一例であって、任意の小形軽量物を収容することが可能に構成されている。また、容器14に収容して搬送する「物品」としては、耕地X(耕作物Xa)の消毒に際してセンサユニット6等に薬液が付着するのを阻止するための保護カバーや、剪定具、筆記具およびメモ帳、肥料、薬品、フェロモントラップ(捕虫用具)、並びに容器14の移動先において取得した試料(生育状態が特異な耕作物Xaや、捕獲した害虫および植物等)などが想定される。
【0079】
次いで、一例として、「追跡動作モード」に移行させる。これにより、前述した一連の処理のときと同様にしてマーカーMaが付された着衣の作業者に追従して移動体3a(および移動体3b)が移動する結果、吊下部10(または吊下部20)に取り付けられている容器14内が作業者の近傍まで自動的に搬送される。これにより、容器14内の物品を取り出して使用したり、移動先において取得した試料等を容器14に収容して搬送させたりすることが可能となる。
【0080】
一方、耕地Xにおける作業を完了したとき(作業が完了して耕地Xから離れるとき)には、上記の「追跡動作モード」を解除する。この際には、前述したように、利用者によって設定された時刻が到来したときや、インターネットNを介して情報端末Z等から撮像の開始を指示されたときに、耕地Xの全体、または、耕地X内の予め設定された部位を撮像して管理用データDmを生成する処理が実行される状態となり、条件が満たされたときに、耕地Xの撮像が行なわれて管理用データDmが生成される。
【0081】
このように、この耕地管理補助システム100では、空中軌道1と、カメラ11が取り付けられて空中軌道1から吊り下げられた吊下部10と、空中軌道1に対して吊下部10を移動させるモータ31とを備えた「移動機構」を備え、処理部34が、モータ31を制御して吊下部10を移動させる「第1の処理」と、耕地Xにおける吊下部10の位置を特定する「第2の処理」と、カメラ11を制御して耕地Xを撮像させる「第3の処理」と、「第2の処理」によって特定される吊下部10の位置および「第3の処理」によってカメラ11から出力される撮像データDpに基づいて管理用データDmを生成する「第4の処理」とを実行可能に構成されている。
【0082】
したがって、この耕地管理補助システム100によれば、空中軌道1の案内に従って移動させられる吊下部10に取り付けられたカメラ11によって耕地Xを撮像することでカメラ11に大きな揺れを生じさせることなく耕地Xを撮像することができ、また、空中軌道1を設置可能なスペースさえあればカメラ11を移動させて撮像させることができるため、各種の耕地Xを対象としてその状態を的確に把握し得る撮像データDpを含めた管理用データDmを生成して提供することができる。また、地表面に敷設した「軌道」によってカメラ11等の移動を案内する構成とは異なり、空中軌道1が利用者(作業者)や農用車両の通行(移動)の妨げとなる事態を招くことがないため、耕作作業を安全かつ効率良く実施することができると共に、飛行体による空撮とは異なり、特殊な技能を有していない者であっても、耕地Xを撮像した撮像データDpを含む管理用データDmを確実かつ容易に生成させて提供させることができる。
【0083】
また、この耕地管理補助システム100によれば、断面C字状の棒体で構成された空中軌道1を開口部Hを下向きにして耕地Xに設置すると共に、カメラ11を取付け可能な吊下部本体10aと、棒体の内面に接するように吊下部本体10aに取り付けられた車輪10bとを備えて吊下部10を構成したことにより、空中軌道1と吊下部10との連結部位に雨水や塵埃が付着して吊下部10の移動が困難となる状態となるのを好適に回避することができると共に、車輪10bの存在によって空中軌道1に対して吊下部10をスムーズに移動させることができる。
【0084】
さらに、この耕地管理補助システム100では、空中軌道1の両端部に配置された一対のプーリ2a,2b間に掛け渡されて空中軌道1に沿って配置されると共にモータ31によって空中軌道1に沿って回動させられるコグドベルト2を備えて「移動機構」が構成され、かつ吊下部10がコグドベルト2に固定され、モータ31が、空中軌道1による吊下部10の案内経路内に規定された「基点(本例では、ベースユニット4側の端部)」に設置されると共に、コグドベルト2に接するようにモータ31と共に「基点」に配設されたプーリ2aを回動させることによってコグドベルト2を回動させ、処理部34が、「第1の処理」において、モータ31を制御してコグドベルト2を回動させることによって空中軌道1に対して吊下部10を移動させる。
【0085】
したがって、この耕地管理補助システム100によれば、比較的簡易な構成であるにも拘わらず、空中軌道1に対して吊下部10を確実に移動させることができると共に、「吊下部」に「動力源」を取り付けて自走させる構成と比較して、吊下部10に取り付けられる各部品の総重量、すなわち、空中軌道1に対して移動させられる移動体の総重量を十分に軽量化することができるため、空中軌道1に対して吊下部10をスムーズに移動させることができる。
【0086】
また、この耕地管理補助システム100では、処理部34が、「第2の処理」において、「回動体」および「被回動体」のいずれか(本例では、「回動体」としてのプーリ2a)の回動数および回動角度に基づいてコグドベルト2の回動量を特定し、特定した回動量に基づいて吊下部10の位置を特定することにより、例えば、吊下部10に取り付けたGPS測位装置によって吊下部10の位置を特定する構成と比較して吊下部10の位置を正確に特定することができ、しかも、低コストで構成することができる。
【0087】
さらに、この耕地管理補助システム100によれば、処理部34が、カメラ11を制御して吊下部10の周囲を継続的に繰り返し撮像させると共にカメラ11からの撮像データDpを解析して予め設定された「追跡対象像(本例では、マーカーMaの像)」を特定し、特定した「追跡対象像」がカメラ11によって撮像され続けるようにモータ31を制御して吊下部10を移動させる「第5の処理」を実行することにより、手動操作によって吊下部10を任意の位置に移動させたり、利用者と吊下部10とを紐等で連結して吊下部10を利用者と共に移動させたりすることなく、吊下部10を作業者(追跡対象像)の近傍に位置させることができる。これにより、作業者の近傍をカメラ11によって容易に撮像することができるため、耕地Xの状態を把握するのに有用な撮像データDpを含めた管理用データDmを確実かつ容易に生成させることができる。
【0088】
また、この耕地管理補助システム100によれば、吊下部10に取り付けられて利用者による「予め規定された動作(一例として「撮像開始」との音声の出力や、予め規定されたゼスチャーの実行)」を検出する「動作検出部(マイク12やカメラ11)」を備え、処理部34が、「動作検出部」によって「予め規定された動作」が検出されたときに、カメラ11を制御して「予め規定された撮像対象」を撮像させる「第6の処理」を実行する。したがって、この耕地管理補助システム100によれば、手動操作によってカメラ11に撮像を行わせる構成とは異なり、利用者の手が汚れていたり、利用者の手が道具や耕作物Xaで塞がっていたりしても、任意の被写体を容易に撮像させることができる。
【0089】
さらに、この耕地管理補助システム100によれば、吊下部10に取り付けた容器14を備えて「移動機構」を構成したことにより、耕地Xの各部位において使用する物品や耕地X内において取得した物品を作業者が携行しなくて済むため、耕作作業にかかる負担を十分に軽減することができる。
【0090】
また、この耕地管理補助システム100によれば、耕地Xに設置された「電子機器(センサユニット6等)」に電力を供給するためのケーブル13および給電用コネクタ13aを吊下部10に取り付けて「移動機構」を構成したことにより、耕地X内に設置されたセンサユニット6等に対して電力を容易に供給することができる。
【0091】
次に、「耕地管理補助システム」の他の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、上記の耕地管理補助システム100を構成する構成要素と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0092】
図10に示す耕地管理補助システム100Aは、「耕地管理補助システム」の他の一例であって、上記の耕地管理補助システム100における移動体3aに代えて移動体3Aを備えている。また、耕地管理補助システム100Aは、耕地管理補助システム100におけるベースユニット4に代えてベースユニット4Aを備えて構成されている。さらに、この耕地管理補助システム100Aは、コグドベルト2やプーリ2a,2bおよびテンションローラ2c等を備えずに、空中軌道1が単体で耕地X内に設置されている。
【0093】
この場合、空中軌道1には、空中軌道1に対する移動体3Aの位置を特定するための複数のマーカーMmが取り付けられている。このマーカーMmは、「被検出体」に相当し、一例として、永久磁石を備えて空中軌道1に等間隔(一例として、50cm間隔)で取り付けられている。なお、所定位置に位置しているカメラ11によって撮像可能な撮像範囲が十分に広い場合(カメラ11として全天球カメラを採用したり、カメラ11を任意の撮像方向に向ける首振り機構を備えたりしている場合)には、カメラ11によって撮像することができない部位が生じることのないように空中軌道1上に撮像処理位置を任意に規定すると共に、規定した撮像処理位置だけにマーカーMmを配設して撮像処理位置を特定させることもできる。
【0094】
一方、移動体3Aは、耕地管理補助システム100の移動体3aと同様にして空中軌道1に沿って耕地X内を移動させられる要素であって、移動体3aの吊下部10と同様に構成された「吊下部」(図示せず)に、カメラ11、マイク12、ケーブル13(給電用コネクタ13a)、モータ41、センサ42、処理部43および記憶部44が取り付けられて一体化されている。
【0095】
モータ41は、「動力源」の他の一例であって、空中軌道1に接するように「吊下部」に取り付けられた「動輪」(一例として、前述した吊下部10における吊下部10aと同様の車輪:図示せず)を回転させることによって「吊下部」を空中軌道1に対して移動させる。なお、本例の耕地管理補助システム100Aでは、一例として、ケーブル5bを介してベースユニット4Aから供給される電力を利用してモータ41が動作する構成が採用されているが、このような構成に代えて、「吊下部」に「二次電池」を搭載してモータ41を動作させる構成を採用することもできる。センサ42は、「検出部」の一例であって、永久磁石を備えたマーカーMmを利用する本例では、マーカーMm(マーカーMmから発せられる磁束)を検出可能なマグネットセンサで構成されている。
【0096】
処理部43は、後述するようにベースユニット4に配設されている処理部34aと相俟って「処理部」を構成する。この処理部43は、移動体3Aを総括的に制御する。具体的には、処理部43は、モータ41を制御して「動輪」を回動させることで空中軌道1に対して移動体3A(吊下部)を移動させる「第1の処理」を実行する。また、処理部43は、センサ42からの検出信号(センサ42によるマーカーMmの検出結果)に基づいて空中軌道1に対する移動体3A(吊下部)の位置(空中軌道1による移動体3Aの案内経路内のいずれの位置に移動体3Aが移動したか)を特定する「第2の処理」を実行する。さらに、処理部43は、カメラ11を制御して耕地Xを撮像させる「第3の処理」を実行する。
【0097】
また、処理部43は、カメラ11から出力される撮像データDpを、上記の「第2の処理」によって特定される移動体3A(吊下部)の位置に関連付けてベースユニット4Aに出力する。また、処理部43は、ベースユニット4Aからの要求に応じてマイク12から出力される音声データDsをベースユニット4Aに出力する。さらに、処理部43は、「追尾動作モード」が選択されたときに、カメラ11を制御して移動体3Aの周囲を継続的に繰り返し撮像させると共に、カメラ11からの撮像データDpを解析して、「予め設定された追跡対象像」を特定し、特定した「追跡対象像」がカメラ11によって撮像され続けるようにモータ41を制御して移動体3A(吊下部)を移動させる「第5の処理」を実行する。
【0098】
また、処理部43は、カメラ11からの撮像データDpに基づき、利用者が予め規定された動作を行ったと判別したときに、カメラ11を制御して、利用者によって指定された部位「予め規定された撮像対象」の一例)をズームアップ撮影させる処理(「第6の処理」の一例)を実行する。さらに、処理部43は、マイク12からの音声データDsに基づき、利用者が予め規定された音声を出力したと判別したときに、カメラ11を制御して、移動体3Aの周囲(「予め規定された撮像対象」の他の一例)を撮影させる処理(「第6の処理」の他の一例)を実行する。
【0099】
記憶部44は、処理部43の動作プログラムや、撮像データDpおよび音声データDsなどを記憶する。また、記憶部44は、空中軌道1に帯するマーカーMmの設置位置を特定可能に予め生成されたマーカー位置データDx(「取付け位置データ」の一例)を記憶する。なお、移動体3Aの各構成要素は、水濡れや塵埃の付着に起因する動作不良を招くことのないように防水・防塵対策が施されている。
【0100】
ベースユニット4Aは、耕地管理補助システム100のベースユニット4と同様にして空中軌道1の一端部側に固定的に設置される要素であって、電源供給部32、通信部33、処理部34aおよび記憶部35を備えて構成されている。
【0101】
処理部34aは、ベースユニット4Aおよび耕地管理補助システム100の全体を総括的に制御する。具体的には、処理部34aは、移動体3Aの処理部43を制御して空中軌道1に対して移動体3Aを移動させたりカメラ11による撮像を実行させたりする。また、処理部34aは、移動体3A(処理部43)から出力される撮像データDpに基づいてカメラ11による撮像範囲全体の画像を生成する(「撮像データを画像処理する」との処理の他の一例)。
【0102】
さらに、処理部34aは、撮像データDpに基づいて生成した画像のデータ、および移動体3Aから出力された音声データDsや、センサユニット6による検出情報を含めて管理用データDm(「耕地管理用データ」の一例)を生成する「第4の処理」を実行する。また、処理部34aは、通信部33を制御することにより、生成した管理用データDmをデータサーバYにアップロードさせる。なお、管理用データDmに対してセンサユニット6からの環境データDeを含める必要がないときには、移動体3Aの処理部43を「処理部」として機能させて、処理部34aによる上記の各処理を処理部43に実行させる構成を採用することもできる。
【0103】
なお、この耕地管理補助システム100Aでは、前述した耕地管理補助システム100のベースユニット4と同様にして、ベースユニット4Aの各構成要素が、水濡れや塵埃の付着によって動作不良を招くことがないように箱体(収容部)内に収容されて耕地Xに設置されているが、この箱体についての図示および説明についての説明も省略する。
【0104】
この耕地管理補助システム100Aでは、耕地管理補助システム100と同様にして、利用者によって設定された時刻が到来したときや、インターネットNを介して情報端末Z等から撮像の開始を指示されたときに、耕地Xの全体(空中軌道1による移動体3Aの案内経路の全体)、または、耕地X内の予め設定された部位を撮像して管理用データDmを生成する処理と、利用者が耕地X内で作業を行っているときに利用者の指示した部位を撮像させたり、インターネットNを介して情報端末Z等から遠隔操作して任意の部位を撮像させたりして管理用データDmを生成する処理とを実行することが可能となっている。
【0105】
この場合、この耕地管理補助システム100Aでは、移動体3Aの処理部43がセンサ42からのセンサ信号、および記憶部44に記憶されているマーカー位置データDxに基づいて空中軌道1に対する移動体3A(吊下部)の位置を特定しつつモータ41を制御して「動輪」を回動させて移動体3Aを自走させる点、並びに、移動体3Aの処理部43とベースユニット4Aの処理部34aとが相俟って「処理部」として機能する点を除き、耕地管理補助システム100において実行される上記の各種の処理と同様の処理が実行される。これにより、この耕地管理補助システム100Aにおいても、上記の耕地管理補助システム100の運用時と同様にして、耕地Xを管理するのに有用な管理用データDmがデータサーバYに蓄積され、この管理用データDmに基づき、情報端末Zなどを使用して耕地Xの状態を把握することが可能となっている。
【0106】
このように、この耕地管理補助システム100Aによれば、モータ41が「吊下部」に取り付けられると共に、空中軌道1に接するように「吊下部」に取り付けられた「動輪」をモータ41によって回動させることによって「吊下部」を空中軌道1に対して移動可能に「移動機構」を構成したことにより、空中軌道1に対して移動体3A(吊下部)を移動させるための動力を外部から伝達する大掛りな設備が不要となるため、そのような動力伝達機構の設置が困難な耕地Xにおいてもカメラ11等を確実かつ容易に移動させることができる。
【0107】
また、この耕地管理補助システム100Aによれば、空中軌道1に取り付けられた複数のマーカーMmと、マーカーMmを検出可能に「吊下部」に取り付けられた「検出部(本例では、センサ42)」とを備え、処理部43が、「第2の処理」において、空中軌道1におけるマーカーMmの取付け位置を特定可能なマーカー位置データDxと、「検出部」によるマーカーMmの検出結果とに基づいて「吊下部」の位置を特定する。したがって、この耕地管理補助システム100Aによれば、空中軌道1に対する移動体3A(吊下部)の位置を正確かつ容易に特定して移動体3A(吊下部)を所望の位置に正確かつ容易に移動させることができる。
【0108】
なお、「耕地管理補助システム」の構成は、上記の耕地管理補助システム100,100Aの構成の例に限定されない。例えば、耕地管理補助システム100の空中軌道1に耕地管理補助システム100Aと同様に複数のマーカーMmを配設し、かつ移動体3aにセンサ42を配設すると共に、ベースユニット4の処理部34がセンサ42からの検出信号に基づいて空中軌道1に対する移動体3aの位置を特定する処理(「第2の処理」の他の一例)を実行する構成を採用することもできる。また、「第2の処理」については、エンコーダからの出力信号や、センサ42からのセンサ信号に基づく位置の特定に限定されず、「吊下部」にGPS測位器を取り付けると共に、このGPS測位器による検出結果に基づいて「空中軌道に対する吊下部の位置」を特定することもできる。
【0109】
また、カメラ11から出力された撮像データDpやマイク12から出力された音声データDsをケーブル5aを介してベースユニット4(処理部34)に出力する構成に代えて、移動体3aからベースユニット4(処理部34)に無線通信によってこれらのデータを出力する構成を採用することもできる。さらに、移動体3aの吊下部10に取り付けたマイク12やケーブル13(給電用コネクタ13a)は、「耕地管理補助システム」に必須の構成要素ではなく、これらが不要なときには、少なくともカメラ11だけを吊下部10に取り付けて空中軌道1に対して移動させる構成を採用することもできる。
【0110】
また、容器14に収容した保護カバーを作業者が手作業でセンサユニット6等に装着する使用形態を例に挙げて説明したが、この保護カバーの装着作業を自動化するためのロボットアーム等(図示せず)を「吊下部」に取り付けることで、作業にかかる負担を一層軽減することが可能となる。さらに、センサユニット6等に対するケーブル13aの接続作業についてもロボットアーム等の実装によって自動化を図ることで、作業にかかる負担を一層軽減することが可能となる。
【0111】
また、一本の空中軌道1によって「吊下部」を支える構成を例に挙げて説明したが、複数本の「空中軌道」によって「吊下部」を支える構成を採用することもできる。さらに、空中軌道1の内側空間Sにコグドベルト2を配設した例について説明したが、このような構成に代えて、「環状駆動帯」を「空中軌道」の外に配設することもできる。加えて、1本の空中軌道1に1つの移動体3a(または、1つの移動体3A)を配設した構成を例に挙げて説明したが、撮像処理等に要する時間の短縮を図るべく、1本の「空中軌道」に複数の移動体3a(または、複数の移動体3A)を配設して「耕地管理補助システム」を構成することもできる(図示せず)。
【符号の説明】
【0112】
100,100A 耕地管理支援システム
1 空中軌道
1a 支持部材
2 コグドベルト
2a,2b プーリ
2c テンションローラ
3a,3b,3b・・,3A 移動体
4,4A ベースユニット
5a,5b,13 ケーブル
6 センサユニット
10,20 吊下部
10a,20a 吊下部本体
10b,20b 車輪
11 カメラ
12 マイク
13a 給電用コネクタ
14 容器
21 ケーブル固定具
31,41 モータ
32 電源供給部
33 通信部
34,34a,43 処理部
35,44 記憶部
42 センサ
De 環境データ
Dm 管理用データ
Dp 撮像データ
Ds 音声データ
Dx マーカー位置データ
Fx 地表面
H 開口部
Ma,Mb,Mm マーカー
N インターネット
S 内側空間
X 耕地
Xa 耕作物
Y データサーバ
Z 情報端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10