特開2018-164477(P2018-164477A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トプコンの特許一覧

<>
  • 特開2018164477-眼科装置 図000003
  • 特開2018164477-眼科装置 図000004
  • 特開2018164477-眼科装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-164477(P2018-164477A)
(43)【公開日】2018年10月25日
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/14 20060101AFI20180928BHJP
【FI】
   A61B3/14 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-62144(P2017-62144)
(22)【出願日】2017年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】恩地 裕和
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB17
4C316FB13
4C316FZ03
(57)【要約】
【課題】フレームレートの高いステレオ撮影が可能な眼科装置を提供することを課題とする。
【解決手段】被検眼のステレオ撮影を行う眼科装置100であって、特定のフレームレートで右画像の撮影を行うカメラ101と、カメラ101と同じフレームレートで左画像の撮影を行うカメラ102とを備え、カメラ101の撮影のタイミングとカメラ102の撮影のタイミングとが半周期ずれている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼のステレオ撮影を行う眼科装置であって、
特定のフレームレートで右画像の撮影を行う第1のカメラと、
前記第1のカメラと同じフレームレートで左画像の撮影を行う第2のカメラと
を備え、
前記第1のカメラの撮影のタイミングと前記第2のカメラの撮影のタイミングとが半周期ずれている眼科装置。
【請求項2】
前記第1のカメラの撮影タイミングを決めるクロック信号と前記第2のカメラの撮影タイミングを決めるクロック信号とは、同じ周波数であり、位相が半周期ずれている請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記右画像および前記左画像を撮影したタイミングで前記右画像と前記左画像の表示を表示装置に行わせる請求項1または2に記載の眼科装置。
【請求項4】
特定の時刻において取得されるステレオ画像は、前記特定の時刻に得られた右画像または左画像と、前記特定の時刻の前記半周期前に得られた左画像または右画像とにより構成される請求項1〜3のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記第1のカメラと前記第2のカメラの撮影周期をT、T/2毎の時刻をT1,T2,T3・・・Tnとして、
Tnにおけるステレオ画像は、Tnに取得された右画像または左画像とTn−1において取得された左画像または右画像により構成され、
Tn+1におけるステレオ画像は、Tnに取得された右画像または左画像とTn+1において取得された左画像または右画像により構成され、
Tn+2におけるステレオ画像は、Tn+2に取得された右画像または左画像とTn+1において取得された左画像または右画像により構成され、
Tn+3におけるステレオ画像は、Tn+2に取得された右画像または左画像とTn+3において取得された左画像または右画像により構成される請求項1〜3のいずれか一項に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像の撮影を行う眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、緑内障の診断では視神経乳頭の部分のくぼみの状態の把握が重要となる。この診断に立体画像が有効である。立体画像は、2台のカメラを用いて異なる視点から撮影対象を撮影することで得られる。例えば、特許文献1には、ステレオ撮影を行う眼科装置について記載されている。
【0003】
また、眼科装置では、装置に対する被検眼の相対的な位置合わせが必要となる。この位置合わせに立体画像の技術を用いる技術が公知である(例えば、特許文献2を参照)。この技術では、眼科装置に被検眼を異なる2以上の方向から撮影するカメラを配置し、複数の方向から撮影した画像を解析することで、被検眼の三次元位置を求め、それに基づき上記の位置合わせが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−185177号公報
【特許文献2】特許第5989593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ステレオ撮影を行う眼科装置では、2台のカメラに同一のクロックを入力して同期させて撮影を行っていた。ところで、例えば眼底の撮影では、血流の影響等で患部が微動する場合がある。カメラの駆動クロックを速くすることで、この微動が生じても得られる立体画像に支障が生じないようにできる。しかしながら、カメラの動作速度や眼底撮影に必要な露光時間の関係から、カメラの撮影間隔を短くする(動作クロックを速くする)ことには限界がある。
【0006】
このような背景において、本発明は、フレームレートの高いステレオ撮影が可能な眼科装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、被検眼のステレオ撮影を行う眼科装置であって、特定のフレームレートで右画像の撮影を行う第1のカメラと、前記第1のカメラと同じフレームレートで左画像の撮影を行う第2のカメラとを備え、前記第1のカメラの撮影のタイミングと前記第2のカメラの撮影のタイミングとが半周期ずれている眼科装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1のカメラの撮影タイミングを決めるクロック信号と前記第2のカメラの撮影タイミングを決めるクロック信号とは、同じ周波数であり、位相が半周期ずれていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記右画像および前記左画像を撮影したタイミングで前記右画像と前記左画像の表示を表示装置に行わせることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、特定の時刻において取得されるステレオ画像は、前記特定の時刻に得られた右画像または左画像と、前記特定の時刻の前記半周期前に得られた左画像または右画像とにより構成されることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発明において、前記第1のカメラと前記第2のカメラの撮影周期をT、T/2毎の時刻をT1,T2,T3・・・Tnとして、Tnにおけるステレオ画像は、Tnに取得された右画像または左画像とTn−1において取得された左画像または右画像により構成され、Tn+1におけるステレオ画像は、Tnに取得された右画像または左画像とTn+1において取得された左画像または右画像により構成され、Tn+2におけるステレオ画像は、Tn+2に取得された右画像または左画像とTn+1において取得された左画像または右画像により構成され、Tn+3におけるステレオ画像は、Tn+2に取得された右画像または左画像とTn+3において取得された左画像または右画像により構成されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】眼科装置の概念図である。
図2】同期信号の波形図である。
図3】同期信号とフレームレートの関係を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0013】
(全体の構成)
図1には、眼科装置100が示されている。眼科装置100は、カメラ101とカメラ102を備えている。カメラ101は右側から被検眼の撮影を行い、カメラ102は左側から被検眼の撮影を行う。この例において、カメラ101とカメラ102は、被検眼の眼底のステレオ撮影を行う。
【0014】
カメラ101には、制御部200から同期信号1が供給され、カメラ102には、制御部200から同期信号2が供給される。同期信号の形態には、通常モードと倍速モードの2つの形態がある。通常モードは、カメラ101と102に同じタイミングのクロック信号(同じ位相で位相差のないクロック信号)が同期信号1および2として供給される。通常モードでは、カメラ101と102の撮影が同時に行われる。
【0015】
倍速モードでは、位相が半周期(π)ずれた同期信号1と同期信号2がカメラ101とカメラ102に供給される。図2に倍速モードにおける同期信号1と同期信号2の位相の関係を示す。倍速モードでは、カメラ101と102の撮影が交互に行われる。撮影の間隔で見た場合、通常モードのフレームレートFに比較して、倍速モードではフレームレートが2倍の2Fとなる。図3に通常モードと倍速モードとの関係を示す。
【0016】
(制御部の構成)
制御部200は、同期信号発生回路201、位相シフト回路202、切り替え回路203を備える。同期信号発生回路201は、図2の同期信号1を構成するクロック信号を生成する。クロック周波数は、フレームレートに対応したものとなる。
【0017】
位相シフト回路202は、同期信号発生回路201で発生されたクロック信号を2つに分け、一方をそのまま出力し、他方は位相を半周期(π)シフトさせ、同期信号2として出力する。
【0018】
切り替え回路203は、通常モードにおいて同じクロック信号を同期信号1および同期信号2として出力する。この場合、同期信号1と同期信号2は同じタイミングを刻むクロック信号となる。
【0019】
切り替え回路203は、倍速モードにおいて位相が半周期ずれたクロック信号を同期信号1および同期信号2として出力する。この場合、図2に示すように同期信号1と同期信号2の位相は、半周期(T/2)ずれている。
【0020】
(画像処理部の構成)
画像処理部300は、画像受付部301、ステレオ画像生成部302、ステレオ画像表示制御部303を備える。画像データはデジタル信号化されており、これら各機能部は、画像データを取り扱う集積回路により構成されている。この集積回路は、専用の画像処理用ICやFPGA(field-programmable gate array)等のPLD(プログラマブルロジックデバイス)により構成されている。
【0021】
画像受付部301は、カメラ101とカメラ102が撮影した画像の画像データを受け付ける。ステレオ画像生成部302は、カメラ101が撮影した画像の画像データ(右画像データ)と、カメラ102が撮影した画像の画像データ(左画像データ)に基づくステレオ画像を生成する。
【0022】
ステレオ画像表示制御部303は、上記のステレオ画像を液晶表示装置等の表示装置400に表示するための制御を行う。ステレオ画像は、画面の右側にカメラ101が撮影した画像(右画像)が表示され、画面の左側にカメラ102が撮影した画像(左画像)が表示される。それを観察者が、右目で右画像を視認し、左目で左画像を視認することで立体視が行われる。
【0023】
通常モードでは、右画像と左画像が同時刻に撮影された画像が利用される。倍速モードでは、右画像と左画像とで、撮影時刻が同期信号の半周期分ずれている。すなわち、時刻tに右画像が撮影された場合、左画像は時刻t+T/2(またはt−T/2)に撮影されたものが利用される。
【0024】
また、ステレオ画像生成部302は、表示装置400として時分割型の立体表示ディスプレイを用いた場合に、表示装置400に右画像と左画像を交互に表示させる処理を行う。この場合、観察者は、液晶シャッターがついたメガネを着用して、右画像を右目で視認し、次のタイミングで左画像を左目で視認することを交互に行ってカメラ101と102が撮影した対象物の立体視を行う。
【0025】
この場合、カメラ101の撮影フレームレートと、表示装置400での右画像の表示フレームレートを同じにし、またカメラ102の撮影フレームレートと、表示装置400での左画像の表示フレームレートを同じにすることで、信号処理の負担を軽減でき、回路を簡素化できる。具体的には、ステレオ画像生成部302は不要となり、画像受付部301が受け付けた右画像と左画像を順次交互に表示装置400に送ればよい。
【0026】
例えば、カメラ101が30フレーム/秒のフレームレートで右画像の撮影を行い、カメラ102が30フレーム/秒のフレームレートで左画像の撮影を行う場合を考える。この場合、図2の周期Tは1秒の1/30であり、カメラ101の撮影とカメラ102の撮影とが図2に示すタイミングで交互に行われる。
【0027】
そして、表示装置400には、1秒/60毎に交互に送られてくる右画像と左画像をそのまま交互に表示する。この場合、右画像と左画像が1秒間に交互に30枚ずつ(合計60枚)表示される。なお、右画像と左画像を同じタイミングで表示させる形態も可能である。
【0028】
(優位性)
右画像を撮影するカメラ101と左画像を撮影するカメラ102とで撮影タイミングをずらし、ステレオ画像を構成する右画像と左画像を交互に撮影することで、カメラ101と102を同一クロックで動作させる場合に比較してフレームレートを実質2倍にすることができる。
【0029】
カメラ単体のフレームレートは、撮像素子の応答速度等に律速され、上限が存在するが、上記の動作を行うことで、撮像素子に負担をかけることなく2倍のフレームレートが得られる。
【0030】
また、交互に撮影した画像をそのまま交互に表示装置に表示することで、簡易な構成でありながら対象物の動きに高い追従性を有する立体画像の撮影および表示が可能となる。
【0031】
以下、具体的な例を挙げて上記の優位性について説明する。例えば、図2の時刻T3におけるステレオ画像を考える。時刻T3では右画像1が取得され、左画像2は取得中(撮影中)である。この場合、右画像1と半周期(T/2)前に取得した左画像1によりステレオ画像が構成される。この場合、時刻T1〜T3において取得した右画像と、時刻T0〜T2において取得した左画像とによってステレオ画像が構成され、当該ステレオ画像には時刻T1〜T3において取得した画像情報が含まれる。
【0032】
時刻T3におけるステレオ画像の次のステレオ画像は、時刻T5において得られる。この場合、右画像2と左画像2によりステレオ画像が構成され、当該当該ステレオ画像には時刻T2〜5において取得した画像情報が含まれる。以下、同様にして右画像3と左画像3の組み合わせによるステレオ画像、右画像4と左画像4の組み合わせによるステレオ画像、・・・と繰り返され、ステレオ動画の画像が得られる。
【0033】
ここで、上記T3におけるステレオ画像の場合を考える。例えば、T1とT2の間で対象物に動きがあったとする。この場合、右画像1と左画像1は撮影中(画素情報の取得中)であるが、右画像1は撮影の前半であり、左画像1は撮影の後半である。よって、上記の変化が生じた時点における当該変化が生じた部分の画素情報の取得が、左画像1では終了しているが、右画像1ではこれからである可能性があり、上記の変化が右画像1で捉えられる可能性がある。
【0034】
仮に、右画像1と左画像1とを同じタイミング(同じ同期信号)で取得した場合、上記の変化を2つの画像が共に捉えることができない確率が高くなる。
【0035】
したがって、図2の方法によれば、時間軸上の分解能を従来の2つのカメラの撮影タイミングを同じにした場合に比較して高くできる。すなわち、本実施形態の態様を採用することで、従来の左右で同じ位相の同期信号を利用する場合に比較して、フレームレートを実質2倍にすることができる。
【0036】
なお、上記の例示では、時刻T3,T5・・・でステレオ画像を得ているが、時刻T2,T4・・・でステレオ画像を得てもよい。この場合、時刻T2において、左画像1とその半周期前に得た右画像0とでステレオ画像が構成され、時刻T4において、左画像2とその半周期前に得た右画像1とでステレオ画像が構成される。
【0037】
(その他)
図1の構成をOCT、SLO、眼屈折検査装置(レフラクトメータ、ケラトメータ)、眼圧計、角膜の特性(角膜厚、細胞分布等)を得るスペキュラーマイクロスコープ、ハルトマン−シャックセンサを用いて被検眼の収差情報を得るウェーブフロントアナライザなどの各種の眼科装置における被検眼のアライメント(位置合わせ)に利用する形態も可能である。この場合、上述した各種の眼科装置が図1の構成を備え、ステレオ画像を用いた被検眼のアライメントが行われる。
【0038】
(変形例)
以下の処理をステレオ画像生成部302で行う態様も可能である。この処理では、まず図2の時刻T2において、右画像0と左画像1によるステレオ画像を得る。次いで、時刻T3において、右画像1と左画像1によるステレオ画像を得る。次いで、時刻T4において、右画像1と左画像2によるステレオ画像を得る。この処理を繰り返し、同期信号の半周期(T/2)毎にステレオ画像を得る。
【0039】
この場合、T2:(右画像0,左画像1)→T3:(右画像1,左画像1)→T4:(右画像1,左画像2)→T5:(右画像2,左画像2)→T6(右画像2,左画像3)→・・・と半周期(T/2)毎にステレオ画像が得られる。このため、周期T毎にステレオ画像を得る場合に比較して更に分解能を高くできる。なお、この例において、右画像と左画像の関係を入れ替えた態様も可能である。
【符号の説明】
【0040】
100…眼科装置
図1
図2
図3