【解決手段】眼科装置は、照明光を被検眼に照射する照明系と、照明系により照明光が照射されている被検眼の前眼部からの光をライトフィールドカメラに導く前眼部観察系と、被検眼のデータを光学的に取得するための測定系50とを備えた光学系と、被検者の顔を支持する支持部と、光学系と支持部とを相対的に光学系の光軸方向に移動する駆動部と、ライトフィールドカメラにより得られた画像データを解析することにより移動目標位置を求める解析部210と、移動目標位置に基づいて駆動部を制御することで、光学系と支持部とを相対移動させる制御部100と、を含む。
前記解析部は、前記画像データに基づいて前記光軸方向の2以上の像面位置に対応した2以上の被検眼画像を生成し、生成された前記2以上の被検眼画像の画質に基づいて前記移動目標位置を求める
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
前記光学系は、前記前眼部観察系の光路と略同軸に配置され、前記被検眼に第1アライメント光を投射し、前記被検眼からの前記第1アライメント光の第1反射光を検出するための第1アライメント光学系を含み、
前記解析部は、前記画像データに基づいて前記第1アライメント光に基づくアライメント輝点像のサイズを求め、求められた前記サイズに基づいて前記移動目標位置を求める
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の眼科装置。
前記解析部は、前記画像データに基づいて前記光軸方向の2以上の像面位置に対応した2以上の被検眼画像を生成し、生成された前記2以上の被検眼画像のうち前記アライメント輝点像のサイズが最小となる被検眼画像に対応した像面位置に基づいて前記移動目標位置を求める
ことを特徴とする請求項8に記載の眼科装置。
前記光学系は、前記前眼部観察系の光軸外から前記被検眼に第2アライメント光を投射し、前記被検眼からの前記第2アライメント光の第2反射光を検出するための第2アライメント光学系を含み、
前記制御部は、前記移動目標位置に基づいて前記光学系と前記支持部とを相対移動させた後、前記第1反射光の検出結果及び前記第2反射光の検出結果の少なくとも一方に基づいて前記駆動部を制御する精密アライメント制御を行う
ことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の眼科装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明に係る眼科装置の実施形態の例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書において引用された文献の記載内容や任意の公知技術を、以下の実施形態に援用することが可能である。
【0017】
この発明に係る眼科装置は被検眼の光学的な検査に用いられる。このような眼科装置には、前述のように、眼科撮影装置と眼科測定装置が含まれる。眼科撮影装置としては、光干渉断層計、眼底カメラ、走査型レーザー検眼鏡、スリットランプなどがある。また、眼科測定装置としては、眼屈折検査装置、眼圧計、スペキュラーマイクロスコープ、ウェーブフロントアナライザなどがある。以下の実施形態では、被検眼を観察(撮影)するための観察系と被検眼のデータを光学的に取得するための測定系とを備えた眼科装置にこの発明を適用した場合について詳述するが、それ以外の任意の眼科装置にこの発明を適用することが可能である。
【0018】
以下では、装置光学系の光軸方向をZ方向(前後方向)とし、装置光学系の光軸に直交する水平方向をX方向(左右方向)とし、装置光学系の光軸に直交する垂直方向をY方向(上下方向)とする。
【0019】
<構成>
図1及び
図2に、実施形態に係る眼科装置の概略構成の一例を模式的に示す。
図1は、被検者側から見た実施形態に係る眼科装置1の外観構成の概略図を表す。
図2は、被検者の側面の方向から見た眼科装置1の外観構成の概略図を表す。
【0020】
眼科装置1には、被検眼を検査するための光学系(装置光学系)が収容されている。
図1及び
図2に示すように、眼科装置1は、ベース410と、ベース410上に設けられた筐体420と、ベース410に対して3次元的に(XYZ方向に)移動可能なレンズ収容部430とを含む。ベース410には、後述の光学系の駆動部等の駆動系や、演算制御回路が格納されている。筐体420には、上記の光学系が格納されている。レンズ収容部430は、筐体420の前面に突出して設けられ、後述の対物レンズ24が収容されている。なお、
図1及び
図2に示すレンズ収容部430は、筐体420の前面に突出しないように設けられていてもよい。筐体420及びレンズ収容部430の少なくとも一方が、ベース410に対して移動可能に構成されていてよい。
【0021】
眼科装置1には、ベース410に固定され、被検者の顔を支持するための顎受けと額当てが設けられている。顎受け及び額当ては、
図1及び
図2に示す支持部440に相当する。
【0022】
[光学系]
図3に、実施形態に係る眼科装置1の光学系の構成例を示す。
【0023】
眼科装置1は、装置光学系が収容されている光学ユニット2を含む。光学ユニット2は、被検眼Eの前眼部Eaを観察するための光学系を含む。また、眼科装置1には、演算制御ユニットと、ユーザインターフェイス部とが設けられている。演算制御ユニットは、各種の演算処理や制御処理等を実行するコンピュータを具備する。ユーザインターフェイス部は、光学ユニット2を用いて取得された観察画像や撮影画像を表示したり、眼科装置1に対する指示を入力したりするために用いられる。
【0024】
〔光学ユニット〕
光学ユニット2には、被検眼Eの前眼部Eaの2次元画像(前眼部像)を取得するための光学系が設けられている。前眼部像には、観察画像や撮影画像などが含まれる。観察画像は、例えば、近赤外光を用いて所定のフレームレートで形成されるモノクロの動画像である。撮影画像は、例えば、可視光をフラッシュ発光して得られるカラー画像、又は近赤外光若しくは可視光を照明光として用いたモノクロの静止画像であってもよい。光学ユニット2は、これら以外の画像、例えばフルオレセイン蛍光画像やインドシアニングリーン蛍光画像や自発蛍光画像などを取得可能に構成されていてもよい。
【0025】
光学ユニット2には、照明系10と前眼部観察系20とが設けられている。照明系10は、顎受けや額当てに顔が固定された被検者の前眼部Eaに照明光を照射する。前眼部観察系20は、この照明光の反射光を撮像装置であるライトフィールドカメラ21に導く。
【0026】
照明系10は、前眼部照明光源11を含む。前眼部照明光源11は、被検眼Eの前眼部Eaに照明光を照射する。前眼部照明光源11は、前眼部観察系20の光軸外から被検眼Eの前眼部Eaに照明光を照射する。前眼部照明光源11は、例えば、ハロゲンランプ又はLEDを含む。前眼部照明光源11は、照明光として近赤外光を発する。
図3では、前眼部観察系20の光軸を中心に複数の前眼部照明光源11が設けられている。
【0027】
前眼部観察系20は、ライトフィールドカメラ21と、リレーレンズ22と、絞り23と、対物レンズ24とを含む。ライトフィールドカメラ21は、前眼部観察系20の外部に設けられていてもよい。
【0028】
リレーレンズ22と絞り23との間には、前眼部観察系20の光路に後述のXYアライメント光学系30の光路を合成するためのビームスプリッタBS1が設けられている。また、絞り23と対物レンズ24との間には、前眼部観察系20の光路に後述の測定系50の光路を合成したり、前眼部観察系20の光路と測定系50の光路との合成光路から測定系50の光路を分離したりするためのビームスプリッタBS2が設けられている。
【0029】
前眼部照明光源11からの照明光が照射されている被検眼Eの前眼部Eaからの反射光は、対物レンズ24に入射する。この反射光は、対物レンズ24により屈折され、ビームスプリッタBS2を透過し、絞り23の開口部を通過し、ビームスプリッタBS1を透過し、リレーレンズ22を経由し、ライトフィールドカメラ21に結像される。ライトフィールドカメラ21は、例えば所定のフレームレートで反射光を検出する。ユーザインターフェイス部には、ライトフィールドカメラ21により検出された反射光に基づく、任意の像面位置における前眼部の画像(観察画像)が表示される。
【0030】
実施形態に係るライトフィールドカメラ21は、撮影後に前眼部観察系20の光軸方向(Z方向)の任意の像面位置における画像(ライトフィールド画像)を取得するための撮影装置である。それにより、撮影後に所望の像面位置における画像を取得することができる。このようなライトフィールドカメラ21は、例えば、マイクロレンズアレイ方式の構成を有している。この場合、ライトフィールドカメラ21は、マイクロレンズアレイと、撮像素子とを含んで構成される。マイクロレンズアレイは、被検眼Eとイメージセンサとの間に配置される。マイクロレンズアレイは、焦平面にマトリクス状に配列された複数のマイクロレンズを含む。複数のマイクロレンズは、光軸方向が前眼部観察系20の光軸方向に略一致するように配置されている。イメージセンサは、複数のマイクロレンズに対応してマトリクス状に配列された複数の画素を含み、マイクロレンズアレイを基準に所定の距離だけ離れた位置に配置される。各マイクロレンズにより屈折された光は、当該マイクロレンズに対応する複数の画素に入射する。それにより、複数の画素は、焦平面に入射する光線の通過位置とその向きとに対応した検出結果(画像データ)を出力する。なお、必要に応じて、リレーレンズ22とマイクロレンズアレイとの間に主レンズが配置されていてもよい。
【0031】
演算制御ユニットは、ライトフィールドカメラ21の複数の画素から出力された検出結果(画像データ)に対して公知のデコンボリューション処理(画像復元処理)を施すことにより任意の像面位置における画像を生成することが可能である。
【0032】
この実施形態では、後述のようにライトフィールドカメラ21を用いて粗Zアライメントが行われる。
【0033】
(XYアライメント光学系)
XYアライメント光学系30は、近赤外光を発光する発光ダイオードを含むアライメント指標光源(点光源)31と、レンズ32とを含む。
【0034】
アライメント指標光源31から出力されたアライメント光は、レンズ32により屈折され、ビームスプリッタBS1により対物レンズ24に向けて反射される。ビームスプリッタBS1により反射された光束は、絞り23の開口部を通過し、ビームスプリッタBS2を透過し、対物レンズ24を介して、平行光束として被検眼Eの角膜に導かれる。
【0035】
角膜に導かれた平行光束による角膜表面からの反射光は、対物レンズ24を通過し、ビームスプリッタBS2を透過し、絞り23の開口部を通過し、ビームスプリッタBS1を透過し、リレーレンズ22を経由してライトフィールドカメラ21に結像される。ライトフィールドカメラ21には、アライメント光のプルキンエ像(輝点)に基づく像が形成される。それにより、ユーザインターフェイス部には、被検眼Eの前眼部像とアライメント光のプルキンエ像による輝点像とが同時に表示される。手動でXYアライメントを行う場合、ユーザは、アライメントマーク内に輝点像を誘導するように光学系の移動操作を行う。自動でアライメントを行う場合、演算制御ユニットは、アライメントマークに対する輝点像の変位をキャンセルするように、光学系を移動させるための移動機構を制御する。
【0036】
また、眼科装置1には、Zアライメントを行うためのZアライメント光学系40が設けられている。
【0037】
(Zアライメント光学系)
Zアライメント光学系40は、発散光投射系と、発散光受光系とを含む。発散光投射系は、前眼部観察系20の光軸外に配置された光源41を含む。発散光受光系は、集光レンズ42と、ラインセンサ43とを含む。光源41は、近赤外光である発散光を出力する。発散光は、被検眼Eの角膜に対して斜めから(前眼部観察系20の光軸に対して斜めから)角膜に向けて投射される。
【0038】
集光レンズ42は、前眼部観察系20の光軸に対して発散光投射系の光軸と対称な角度の光軸上に配置されている。集光レンズ42は、光源41から角膜に向けて投射された発散光の反射光をラインセンサ43の受光面(検出面)に集光する。ラインセンサ43は、光源41の角膜によるプルキンエ像と光学的に略共役な位置に配置されている。
【0039】
ラインセンサ43には、前眼部観察系20の光軸方向(Z方向)に対応するように配列された複数の受光素子(検出素子)が設けられている。各受光素子には、あらかじめ位置(番地)が割り当てられている。ラインセンサ43は、光源41から角膜に向けて投射された発散光の反射光を受光すると、ラインセンサ43における受光位置に対応したZアライメント信号を出力することができる。Zアライメント信号は、当該反射光が受光されたことを示す情報と、ラインセンサ43において反射光を受光した受光素子を示す情報(番地、反射光の受光位置を示す情報)とを含む。
【0040】
発散光の反射光の強度分布の重心位置は、角膜の表面(角膜上皮)での反射光束の強度分布の重心位置に相当する。被検眼Eに対して光学ユニット2をZ方向に移動させると、ラインセンサ43における反射光の受光位置が移動する。粗Zアライメント(前眼部観察系20の光軸方向の粗アライメント)が完了した場合、その重心位置は例えばラインセンサ43の検出範囲内となるように設定されている。従って、ラインセンサ43において重心位置として検出された受光位置(番地)を基準に、角膜の表面に対する光学ユニット2の前後方向(Z方向)の位置を特定することができる。それにより、重心位置がラインセンサ43の中央位置になるように光学ユニット2を前後方向に移動させることによって精密なZアライメントを行うことができる。なお、反射光束の強度分布の重心位置を求めているが、反射光束の強度分布のピーク位置を求めるようにしてもよい。
【0041】
(測定系)
測定系50は、レフ測定を行うための公知のレフ測定光学系を含む。例えば、測定系50は、被検眼Eに測定パターン光束を投射する投射系と、被検眼Eからの戻り光を受光する受光系とを含む。投射系により投射された測定パターン光束は、ビームスプリッタBS2により対物レンズ24に向けて反射され、対物レンズ24により屈折されて、被検眼Eに投射される。被検眼Eに投射された測定パターン光束は、被検眼Eの瞳孔の周辺部を通過し、被検眼Eの眼底に投射される。眼底にて反射された測定パターン光束の戻り光は、瞳孔の中央部から射出し、測定パターン光束と同じ経路を通って、測定系50の受光系に設けられた撮像素子により受光される。演算制御ユニットは、受光系による被検眼Eからの戻り光の検出結果に基づいて当該戻り光に基づく像を解析し、被検眼Eの屈折力として球面度数、乱視度数、及び乱視軸角度等を求める。
【0042】
なお、測定系50は、ケラト測定などの別の他覚測定を行うための光学系を含んでいてもよい。
【0043】
このような眼科装置1には、被検眼Eに固視光束を投射する固視光学系が設けられていてもよい。例えば、固視光学系の光路は、前眼部観察系20においてビームスプリッタBS2とライトフィールドカメラ21との間で前眼部観察系20の光路と合成される。すなわち、固視光束は、前眼部観察系20の光路を経由して、被検眼Eに導かれる。固視光学系により投射された固視光束は、ビームスプリッタBS2を透過し、対物レンズ24により屈折され、被検眼Eの瞳孔を通じて眼底に投影される。光軸方向に固視標を移動することにより被検眼に調節刺激を与えたり、眼底における固視光束の投影位置を変更することにより被検眼Eの固視位置を変更したりすることが可能である。
【0044】
〔演算制御ユニット〕
演算制御ユニットの構成について説明する。演算制御ユニットは、光学ユニット2、ユーザインターフェイス部300の各部を制御する。例えば演算制御ユニットは、被検眼Eの前眼部像をユーザインターフェイス部300に表示させる。演算制御ユニットは、例えば、従来のコンピュータと同様に、マイクロプロセッサ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブ、通信インターフェイスなどを含む。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、眼科装置1を制御するためのコンピュータプログラムが記憶されている。演算制御ユニットは、キーボードやマウス等の操作デバイス(入力デバイス)や、LCD等の表示デバイスを備えていてもよい。
【0045】
〔制御系〕
眼科装置1の制御系の構成について
図4を参照しつつ説明する。なお、
図4においては、眼科装置1のいくつかの構成要素が省略されており、この実施形態を説明するために特に必要な構成要素が選択的に示されている。
【0046】
(制御部)
眼科装置1の制御系は、制御部100を中心に構成される。制御部100は、例えば、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイス等を含んで構成される。制御部100には、主制御部110と記憶部120とが設けられている。
【0047】
(主制御部)
主制御部110は前述の各種制御を行う。例えば、主制御部110は、前眼部照明光源11やアライメント指標光源31や光源41の点灯制御や消灯制御、ライトフィールドカメラ21の撮影制御、ラインセンサ43の検出制御、測定系50の制御などを行う。また、主制御部110は、光学系駆動部2A、データ処理部200、ユーザインターフェイス部300などを制御する。主制御部110は、絞り23を制御することも可能である。
【0048】
光学系駆動部2Aは、
図3に示す光学ユニット2(装置光学系)を3次元的に移動する移動機構を駆動する。この移動機構には、光学ユニット2を保持する保持部材と、この保持部材を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。主制御部110は、光学系駆動部2Aを制御して、眼科装置1に設けられた光学系を3次元的に移動させることができる。この制御は、アライメントやトラッキングにおいて用いられる。トラッキングとは、被検眼Eの運動に合わせて装置光学系を移動させるものである。トラッキングを行う場合には、事前にアライメントとピント合わせが実行される。トラッキングは、被検眼Eを動画撮影して得られる画像に基づき被検眼Eの位置や向きに合わせて装置光学系をリアルタイムで移動させることにより、アライメントとピントが合った好適な位置関係を維持する機能である。
【0049】
(記憶部)
記憶部120は、各種のデータを記憶する。記憶部120に記憶されるデータとしては、例えば、前眼部像の画像データ、被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者に関する情報や、被検者の疾患名(緑内障や白内障など)などを表す情報や、左眼/右眼の識別情報などの被検眼に関する情報を含む。また、記憶部120には、眼科装置1を動作させるための各種プログラムやデータが記憶されている。
【0050】
(データ処理部)
データ処理部200は、ライトフィールドカメラ21により得られた画像データに対して各種のデータ処理(画像処理)や解析処理を施す。例えば、データ処理部200は、画像の輝度補正を実行する。また、データ処理部200は、光学ユニット2により得られた画像(眼底像、前眼部像等)に対して各種の画像処理や解析処理を施す。
【0051】
データ処理部200は、解析部210と、眼屈折力値算出部220とを含む。解析部210は、ライトフィールドカメラ21により得られた画像を解析する。眼屈折力値算出部220は、測定系50により測定パターン光束が投射されている被検眼Eの画像に描出されている像の形状を解析して眼屈折力値を求める。
【0052】
解析部210は、
図5に示すように、デコンボリューション処理部211と、画質評価部212と、最良像抽出部213と、特定部214とを含む。
【0053】
デコンボリューション処理部211は、ライトフィールドカメラ21により得られた画像データに対して公知のデコンボリューション処理を施す。例えば、デコンボリューション処理部211は、次のような処理を行う。まず、デコンボリューション処理部211は、主制御部110又はユーザにより指定されたZ方向の像面位置に応じて画像データに対して光線追跡処理等を施して複数のステレオ画像群を形成する。デコンボリューション処理部211は、形成された画像群から公知のアルゴリズムを用いて視差を求め、求められた視差に応じて画像群を平行移動して重ね合わせ、重ね合わされた画像群に対して平均化処理を施すことで当該像面位置に対応した画像を生成する。ユーザは、ユーザインターフェイス部300を用いた像面位置を指定することが可能である。デコンボリューション処理部211は、Z方向の任意の像面位置に対応した画像を生成することが可能である。
【0054】
画質評価部212は、デコンボリューション処理部211により生成された画像の画質を評価する。画質評価部212は、生成された画像の画質を表す評価値を求め、求められた評価値に基づいて当該画像の画質を評価することが可能である。評価値としては、例えば、コントラストや輝度むらに対応する値などがある。この実施形態では、画質評価部212は、生成された画像のコントラストに基づいて当該画像の画質を評価する。例えば、画質評価部212は、デコンボリューション処理部211により生成された画像全体の輝度分布における輝度差、又は当該画像における特徴領域の輝度分布における輝度差を評価値として求め、求められた評価値に基づいて当該画像の画質を評価する。特徴領域は、被検眼Eの特徴部位(特徴部位の境界)に対応する位置を含む領域であってよい。また、特徴領域は、画像中のあらかじめ決められた領域であってもよい。
【0055】
最良像抽出部213は、画質評価部212による評価結果に基づいて、デコンボリューション処理部211により生成された画像の中から最も高画質の画像を抽出する。例えば、最良像抽出部213は、デコンボリューション処理部211により生成されたZ方向の複数の像面位置に対応した複数の前眼部像のうち最も高画質の画像としてコントラストが最も良い前眼部像(輝度差が最大の前眼部像)を抽出する。
【0056】
解析部210は、最良像抽出部213により抽出された前眼部像に対応した像面位置を特定し、特定された像面位置に基づいて粗Zアライメントの移動目標位置を特定することが可能である。
【0057】
特定部214は、デコンボリューション処理部211により生成された画像を解析することにより、当該画像に描出された被検眼Eの特徴部位に相当する領域を特定する。特定部214は、画像の画素値を解析することによって当該領域を特定することが可能である。画像が輝度画像である場合、特定部214は、画像における輝度値の分布に基づいて、特徴部位に相当する画像領域(画素)を特定する。例えば、特徴部位が瞳孔中心である場合、特定部214は、画像の画素値(輝度値など)の分布に基づいて、被検眼Eの瞳孔に相当する画像領域(瞳孔領域)を特定する。一般に瞳孔は他の部位よりも低い輝度で描画されるので、低輝度の画像領域を探索することによって瞳孔領域を特定することができる。このとき、瞳孔の形状を考慮して瞳孔領域を特定するようにしてもよい。つまり、略円形かつ低輝度の画像領域を探索することによって瞳孔領域を特定するように構成することができる。次に、特定部214は、特定された瞳孔領域の中心位置を特定する。上記のように瞳孔は略円形であるので、瞳孔領域の輪郭を特定し、この輪郭(の近似円または近似楕円)の中心位置を特定し、これを瞳孔中心とすることができる。また、瞳孔領域の重心を求め、この重心位置を瞳孔中心としてもよい。なお、他の特徴部位に対応する特徴位置を特定する場合であっても、上記と同様に画像の画素値の分布に基づいて当該特徴位置を特定することが可能である。特定部214は、XYアライメント光学系30により投射されたアライメント光の角膜からの反射光に基づく反射像の位置を含む領域を特徴領域として特定してもよい。
【0058】
眼屈折力値算出部220は、測定系50により得られた被検眼Eからの戻り光に基づく像の形状を解析する。例えば、測定系50が測定パターン光束としてリング状の光束を被検眼に投射した場合、測定系50の受光系における撮像素子又はライトフィールドカメラ21は、リング像が描出された画像を取得する。眼屈折力値算出部220は、得られた画像における輝度分布からリング像の重心位置を求め、この重心位置から放射状に延びる複数の走査方向に沿った輝度分布を求め、この輝度分布からリング像を特定する。続いて、眼屈折力値算出部220は、特定されたリング像の近似楕円を求め、この近似楕円の長径及び短径を公知の式に代入することによって球面度数、乱視度数及び乱視軸角度を求める。或いは、眼屈折力値算出部220は、基準パターンに対するリング像の変形及び変位に基づいて眼屈折力のパラメータを求めることができる。
【0059】
以上のように機能するデータ処理部200は、例えば、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、回路基板等を含んで構成される。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、上記機能をマイクロプロセッサに実行させるコンピュータプログラムがあらかじめ格納されている。
【0060】
(ユーザインターフェイス部)
ユーザインターフェイス部300には、操作部310と表示部320とが含まれる。操作部310は、前述した演算制御ユニットの操作デバイスを含んで構成される。操作部310には、眼科装置1の筐体や外部に設けられた各種のボタンやキーが含まれていてもよい。表示部320は、前述した演算制御ユニットの表示デバイスを含んで構成される。また、表示部320は、光学ユニット2の筺体に設けられたタッチパネルなどの各種表示デバイスを含んでいてもよい。
【0061】
なお、操作部310と表示部320とは、それぞれ個別のデバイスとして構成される必要はない。例えばタッチパネルのように、表示機能と操作機能とが一体化されたデバイスを用いることも可能である。その場合、操作部310は、このタッチパネルとコンピュータプログラムとを含んで構成される。操作部310に対する操作内容は、電気信号として制御部100に入力される。また、表示部320に表示されたグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)と、操作部310とを用いて、操作や情報入力を行うようにしてもよい。
【0062】
光学ユニット2に収容されている光学系は、実施形態に係る「光学系」の一例である。光学系駆動部2Aは、実施形態に係る「駆動部」の一例である。前眼部像は、実施形態に係る「被検眼画像」の一例である。Z方向は、実施形態に係る「前眼部観察系の光軸方向」の一例である。X方向、Y方向は、実施形態に係る「前眼部観察系の光軸方向に交差する方向」の一例である。XYアライメント光学系30は、実施形態に係る「第1アライメント光学系」の一例である。Zアライメント光学系40は、実施形態に係る「第2アライメント光学系」の一例である。
【0063】
[動作例]
図6及び
図7に、実施形態に係る眼科装置1の動作例を示す。
図6及び
図7は、測定系50による測定の前に行われるアライメント動作のフローを表す。なお、以下のフローでは、主制御部110は、前眼部照明光源11を制御し、少なくともS1の工程が行われる前から前眼部照明光源11を点灯させているものとする。
【0064】
(S1)
主制御部110は、アライメント指標光源31を制御してアライメント指標光源31をXYアライメント用の光源として点灯させる。アライメント指標光源31から出力されたアライメント光は、上記のように、ビームスプリッタBS1により反射され、絞り23の開口部を通過し、ビームスプリッタBS2を透過し、対物レンズ24を介して被検眼Eの前眼部Eaに投射される。
【0065】
(S2)
続いて、主制御部110は、ライトフィールドカメラ21を制御することにより、前眼部照明光源11からの照明光で照明されアライメント光が投射されている被検眼Eの前眼部Eaの撮影を開始させる。それにより、ライトフィールドカメラ21は、前眼部Eaの画像データを取得する。
【0066】
(S3)
続いて、主制御部110は、S2においてライトフィールドカメラ21から得られた画像データに基づいて所定の基準像面位置における単一の前眼部像をデコンボリューション処理部211に生成させる。所定の基準像面位置は、対物レンズ24から既定の距離だけ離れた位置に対応する像面位置であり、ライトフィールドカメラ21のマイクロレンズアレイが配置される位置である。それにより、眼科装置1は、ライトフィールドカメラ21のマイクロレンズアレイの配置位置と光学的に略共役な位置の前眼部像を取得することができる。
【0067】
(S4)
主制御部110は、S3において取得された単一の前眼部像中にS1において照射されたアライメント光のプルキンエ像に基づく輝点像があるか否かを解析部210に特定させる。解析部210は、前眼部像の画素値(輝度値)の分布に基づいて輝点像を探索する。主制御部110は、解析部210により輝点像が探索されたとき前眼部像中に輝点像が検出されたと判定し、解析部210により輝点像が探索されなかったとき前眼部像中に輝点像が検出されなかったと判定する。
【0068】
S4において輝点像が検出されなかったと判定されたとき(S4:N)、眼科装置1の動作はS11に移行する。S4において輝点像が検出されと判定されたとき(S4:Y)、眼科装置1の動作はS5に移行する。
【0069】
(S5)
S4において輝点像が検出されと判定されたとき(S4:Y)、主制御部110は、所定のXYアライメント基準位置に対する輝点像の変位をキャンセルするように光学系駆動部2Aを制御することにより光学ユニット2と被検眼EとをX方向及びY方向(前眼部観察系20の光軸に直交(交差)する方向)に相対移動させる(精密XYアライメント制御)。
【0070】
(S6)
続いて、主制御部110は、光源41を制御して光源41をZアライメント用の光源として点灯させる。光源41から出力された発散光は、被検眼Eの角膜にて反射される。
【0071】
(S7)
主制御部110は、ラインセンサ43から出力されるZアライメント信号の有無を検出する。Zアライメント信号が検出されたとき、主制御部110は、光源41から出力された発散光がラインセンサ43により受光されたと判断する。Zアライメント信号が検出されなかったとき、主制御部110は、光源41から出力された発散光がラインセンサ43により受光されなかったと判断する。Zアライメント信号が検出されたとき(S7:Y)、眼科装置1の動作はS8に移行する。Zアライメント信号が検出されなかったとき(S7:N)、眼科装置1の動作はS11に移行する。
【0072】
(S8)
S7においてZアライメント信号が検出されたとき(S7:Y)、主制御部110は、Zアライメント信号に基づいて、ラインセンサ43における反射光の受光位置を特定する。主制御部110は、ラインセンサ43の中心位置に対する当該受光位置の変位をキャンセルするように、光学系駆動部2Aを制御することにより光学ユニット2と被検眼EとをZ方向に相対移動させる(精密Zアライメント制御)。
【0073】
(S9)
主制御部110は、Zアライメントが完了したか否かを判定する。主制御部110は、被検眼Eと光学ユニット2との間の距離と対物レンズ24の作動距離との差分が所定の閾値以内であるとき当該アライメントが完了したと判定することができる。例えば、主制御部110は、光学系駆動部2Aに対する制御内容を用いて、被検眼Eと光学ユニット2との間の距離と対物レンズ24の作動距離との差分を求める。Zアライメントが完了したと判定されたとき(S9:Y)、眼科装置1の動作はS10に移行する。Zアライメントが完了していないと判定されたとき(S9:N)、眼科装置1の動作はS2に移行する。
【0074】
(S10)
S9においてZアライメントが完了したと判定されたとき(S9:Y)、主制御部110は、測定系50を制御することによりレフ測定を実行させる。測定系50は、被検眼Eに測定パターン光束を投射し、被検眼Eの眼底からの測定パターン光束の戻り光を受光する。主制御部110は、測定系50による受光結果に基づいて測定パターン光束の戻り光に基づく像の形状を眼屈折力値算出部220に解析させ、眼屈折力値を算出させる。以上で、眼科装置1の動作は終了である(エンド)。
【0075】
(S11)
S4において輝点像が検出されなかったとき(S4:N)、又はS7においてZアライメント信号が検出されなかったとき(S7:N)、主制御部110は、S3において生成された単一の前眼部像において被検眼Eの瞳孔領域(瞳孔中心を含む領域)を特定部214に特定させる。特定部214により前眼部像中に被検眼Eの瞳孔領域が特定されたとき(S11:Y)、眼科装置1の動作はS16に移行する。特定部214により前眼部像中に被検眼Eの瞳孔領域が特定されなかったとき(S11:N)、眼科装置1の動作はS12に移行する。
【0076】
(S12)
S11において特定部214により前眼部像中に被検眼Eの瞳孔領域が特定されなかったとき(S11:N)、主制御部110は、S2においてライトフィールドカメラ21により取得された画像データに基づいてZ方向の複数の像面位置における前眼部像をデコンボリューション処理部211に生成させる。複数の像面位置は、あらかじめ決められていてもよいし、操作部310を用いてユーザにより指定されてもよい。
【0077】
(S13)
続いて、主制御部110は、S12において生成された複数の前眼部像それぞれについて被検眼Eの瞳孔領域(瞳孔中心を含む領域)を特定部214に特定させる。特定部214によりいずれかの前眼部像中に被検眼Eの瞳孔領域が特定されたとき(S13:Y)、眼科装置1の動作はS14に移行する。特定部214によりすべての前眼部像中に被検眼Eの瞳孔領域が特定されなかったとき(S13:N)、眼科装置1の動作はS17に移行する。
【0078】
(S14)
S13においていずれかの前眼部像中に被検眼Eの瞳孔領域が特定されたとき(S13:Y)、主制御部110は、XYアライメントの変位とZアライメント(粗Zアライメント)の移動目標位置とを解析部210に特定させる。解析部210は、所定のXYアライメント基準位置に対してS13において特定された瞳孔中心の変位に基づいてXYアライメントの変位を特定する。
【0079】
また、解析部210は、次のようにZ方向の移動目標位置を特定することができる。
【0080】
図8に、実施形態に係る解析部210の動作説明図を示す。
図8は、横軸にZ方向の位置を表し、縦軸に前眼部像のコントラストを表す。
【0081】
解析部210は、Z方向の現在位置Z0に対応した前眼部像の画質を画質評価部212に評価させる。この実施形態では、現在位置Z0に対応する前眼部像のコントラストを表す評価値が得られる。また、解析部210は、S12において生成された複数の前眼部像の中から現在位置Z0とは異なる位置Z1に対応した前眼部像を取得し、取得された前眼部像の画質を画質評価部212に評価させる。この実施形態では、位置Z1に対応する前眼部像のコントラストを表す評価値が得られる。解析部210は、これらの評価値に基づいて位置Z1に対応する前眼部像のコントラストが現在位置Z0に対応する前眼部像のコントラストより良いと判断されるとき、位置Z1に近付く方向に所定のステップだけ移動させた位置を移動目標位置として特定する。解析部210は、位置Z1に対応する前眼部像のコントラストが現在位置Z0に対応する前眼部像のコントラストより悪いと判断されるとき、位置Z1から遠ざかる方向に所定のステップだけ移動させた位置を移動目標位置として特定する。以上のように、解析部210は、光学ユニット2と被検眼E(支持部440)との現在の相対位置に対応した前眼部像より画質が高い前眼部像に対応した像面位置に基づいて移動目標位置を求めることができる。
【0082】
また、解析部210は、S12において生成された前眼部像それぞれについて画質評価部212に画質を評価させてもよい。主制御部110は、画質評価部212による評価結果に基づいて、最も高画質の前眼部像を最良像抽出部213に抽出させる。最良像抽出部213は、S12において生成された複数の前眼部像のうち最もコントラストが良い前眼部像を最も高画質の前眼部像として抽出する。解析部210は、最良像抽出部213により抽出された前眼部像に対応した像面位置に基づき移動目標位置を特定することが可能である。
【0083】
(S15)
主制御部110は、S14において特定されたXYアライメントの変位をキャンセルするように光学系駆動部2Aを制御して光学ユニット2と被検眼EとをX方向及びY方向の少なくとも1つの方向に相対移動させる(粗XYアライメント制御)。また、これに並行して、主制御部110は、S14において特定された移動目標位置に基づいて光学系駆動部2Aを制御して光学ユニット2と被検眼EとをZ方向に相対移動させる(粗Zアライメント制御)。その後、眼科装置1の動作はS2に移行する。
【0084】
(S16)
S11において前眼部像中に被検眼Eの瞳孔領域が特定されたとき(S11:Y)、主制御部110は、瞳孔アライメント(XYアライメント)を実行する。すなわち、主制御部110は、所定のXYアライメント基準位置に対してS11において特定された瞳孔中心の変位をキャンセルするように光学系駆動部2Aを制御することにより光学ユニット2と被検眼EとをX方向及びY方向の少なくとも1つの方向に相対移動させる(粗XYアライメント制御)。その後、眼科装置1の動作はS2に移行する。
【0085】
(S17)
S13においてすべての前眼部像中に被検眼Eの瞳孔領域が特定されなかったとき(S13:N)、主制御部110は、手動アライメントを実行する。すなわち、主制御部110は、アライメント基準位置を表示部320に表示させ、ユーザによる操作部310に対する操作内容に基づいて光学系駆動部2Aを制御することにより、光学ユニット2と被検眼Eとを相対移動させる。例えばユーザは、表示部320に表示されたアライメント基準位置に輝点像を誘導するように光学系の移動操作を行う。その後、眼科装置1の動作はS2に移行する。
【0086】
以上説明したように、実施形態によれば、精密アライメント用の光学系と、ライトフィールドカメラ21とを含み、ライトフィールドカメラ21を用いて粗アライメントを行うようにしたので、広いダイナミックレンジで光学ユニット2と被検眼Eとの位置合わせを行うことができるようになる。
【0087】
(変形例)
上記の実施形態では、デコンボリューション処理により得られた画像の画質(コントラスト)に基づいてZ方向の位置を特定する場合について説明したが、実施形態に係る構成はこれに限定されるものではない。例えば、被検眼Eに投射されたアライメント光の反射光に基づく輝点像のスポットサイズに基づいてZ方向の位置を特定してもよい。
【0088】
以下では、実施形態の変形例に係る眼科装置について、実施形態に係る眼科装置1との相違点を中心に説明する。
【0089】
変形例に係る眼科装置の光学系の構成は、実施形態に係る眼科装置1の光学系の構成と同様である。変形例に係る眼科装置の制御系の構成が実施形態に係る眼科装置1の制御系の構成と異なる点は、解析部210に代えて解析部210aが設けられた点である。
【0090】
図9に、変形例に係る眼科装置の解析部210aの概略構成のブロック図を示す。
図9において、
図5と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0091】
解析部210aが解析部210と異なる点は、画質評価部212に代えてスポットサイズ特定部250が設けられた点である。スポットサイズ特定部250は、デコンボリューション処理部211により生成された前眼部像に対して、XYアライメント光学系30により被検眼Eに投射されたアライメント光のプルキンエ像に基づく輝点像のスポットサイズを特定する。スポットサイズ特定部250は、前眼部像の画素値(輝度値)の分布に基づいて輝点像のサイズを特定することができる。例えば、スポットサイズ特定部250は、前眼部像において所定の閾値以上の輝度値の画素領域を輝点像として特定し、X方向及びY方向の少なくとも一方の長さ、又は面積を当該輝点像のサイズとして特定する。
【0092】
変形例に係る眼科装置の動作は、以下の点を除いて、実施形態に係る眼科装置1の動作と略同様である。本変形例では、例えば
図7のS14において、次のように行われる。解析部210aは、Z方向の現在位置Z0に対応した前眼部像における輝点像のスポットサイズを評価値としてスポットサイズ特定部250に特定させる。また、解析部210aは、S12において生成された複数の前眼部像の中から現在位置Z0とは異なる位置Z1に対応した前眼部像を取得し、取得された前眼部像における輝点像のスポットサイズを評価値としてスポットサイズ特定部250に特定させる。解析部210aは、これらの評価値に基づいて位置Z1に対応する前眼部像の輝点像のサイズが現在位置Z0に対応する前眼部像の輝点像のサイズより小さいと判断されるとき、位置Z1に近付く方向に所定のステップだけ移動させた位置を移動目標位置として特定する。解析部210aは、位置Z1に対応する前眼部像の輝点像のサイズが現在位置Z0に対応する前眼部像の輝点像のサイズより大きいと判断されるとき、位置Z1から遠ざかる方向に所定のステップだけ移動させた位置を移動目標位置として特定する。
【0093】
また、解析部210aは、S12において生成された前眼部像それぞれについて輝点像のスポットサイズをスポットサイズ特定部250に特定させてもよい。主制御部110は、スポットサイズ特定部250による特定結果に基づいて、最も高画質の前眼部像を最良像抽出部213に抽出させる。最良像抽出部213は、S12において生成された複数の前眼部像のうち輝点像のサイズが最小の前眼部像を最も高画質の前眼部像として抽出する。解析部210は、最良像抽出部213により抽出された前眼部像に対応した像面位置を移動目標位置として特定することが可能である。
【0094】
[効果]
実施形態に係る眼科装置の効果について説明する。
【0095】
実施形態に係る眼科装置は、照明系(10)と、光学系(光学ユニット2)と、支持部(440)と、駆動部(光学系駆動部2A)と、解析部(200、200a)と、制御部(100)とを含む。照明系は、照明光を被検眼(E)に照射する。光学系は、前眼部観察系(20)と、測定系(50)とを含む。前眼部観察系は、照明系により照明光が照射されている被検眼の前眼部(Ea)からの光をライトフィールドカメラ(21)に導く。測定系は、被検眼のデータを光学的に取得するために用いられる。支持部は、被検者の顔を支持する。駆動部は、光学系と支持部とを相対的に光学系の光軸方向(Z方向)に移動する。解析部は、ライトフィールドカメラにより得られた画像データを解析することにより移動目標位置を求める。制御部は、移動目標位置に基づいて駆動部を制御することで、光学系と支持部とを相対移動させる。
【0096】
このような構成によれば、ライトフィールドカメラにより得られた画像に基づいて、光学系と被検者の顔を支持する支持部とを相対移動させるようにしたので、広いダイナミックレンジで光学系と被検眼との位置合わせを行うための新たな技術を提供することができる。
【0097】
また、実施形態に係る眼科装置では、解析部は、画像データに基づいて上記の光軸方向の2以上の像面位置に対応した2以上の被検眼画像を生成し、生成された2以上の被検眼画像の画質に基づいて移動目標位置を求めてもよい。
【0098】
このような構成によれば、ライトフィールドカメラにより得られた画像データに基づいて光学系の光軸方向の複数の像面位置に対応した複数の被検眼画像の画質から当該光軸方向の最適な移動目標位置を特定するようにしたので、広いダイナミックレンジで光軸方向の位置合わせを行うことが可能な眼科装置の構成を簡素化することができる。
【0099】
また、実施形態に係る眼科装置では、2以上の被検眼画像は、光学系と支持部との現在の相対位置に対応した被検眼画像を含み、解析部は、現在の相対位置に対応した被検眼画像より画質が高い被検眼画像に対応した像面位置に基づいて移動目標位置を求めてもよい。
【0100】
このような構成によれば、被検眼画像の画質に基づいて光学系と被検眼と光軸方向の位置合わせが行うことができるため、広いダイナミックレンジで光軸方向の位置合わせを行うことが可能な眼科装置の構成を簡素化することができる。
【0101】
また、実施形態に係る眼科装置では、解析部は、2以上の被検眼画像のうち最も高画質の被検眼画像に対応した像面位置に基づいて移動目標位置を求めてもよい。
【0102】
このような構成によれば、専用の光学系を設けることなく、高い精度で光学系と被検眼との光軸方向の位置合わせが可能な眼科装置を提供することができるようになる。
【0103】
また、実施形態に係る眼科装置では、駆動部は、光学系と支持部とを相対的に光学系の光軸方向に交差する方向(XY方向)に移動し、解析部は、画像データに基づいて被検眼の特徴部位に相当する特徴領域を特定し、制御部は、特徴領域に基づいて駆動部を制御することで、光軸方向に交差する方向に光学系と支持部とを相対移動させてもよい。
【0104】
このような構成によれば、上記の効果に加えて、ライトフィールドカメラにより得られた画像データに基づいて光学系の光軸に交差する方向の位置合わせが可能な眼科装置を提供することができるようになる。
【0105】
また、実施形態に係る眼科装置では、制御部は、駆動部による光軸方向の移動制御に並行して、駆動部による光軸方向に交差する方向の移動制御を行ってもよい。
【0106】
このような構成によれば、光軸方向とその交差方向とで別個に移動制御を行う場合に比べて、光学系と被検眼との高精度な位置合わせが可能になる。
【0107】
また、実施形態に係る眼科装置では、光学系は、第1アライメント光学系(XYアライメント光学系30)と、第2アライメント光学系(Zアライメント光学系40)とを含んでもよい。第1アライメント光学系は、前眼部観察系の光路と略同軸に配置され、被検眼に第1アライメント光(アライメント光)を投射し、被検眼からの第1アライメント光の第1反射光を検出するために用いられる。第2アライメント光学系は、前眼部観察系の光軸外から被検眼に第2アライメント光(発散光)を投射し、被検眼からの第2アライメント光の第2反射光を検出するために用いられる。制御部は、移動目標位置に基づいて光学系と支持部とを相対移動させた後、第1反射光の検出結果及び第2反射光の検出結果の少なくとも一方に基づいて駆動部を制御する精密アライメント制御を行ってもよい。
【0108】
このような構成によれば、ライトフィールドカメラにより得られた画像データに基づいてアライメントを行った後、第1アライメント光学系及び第2アライメント光学系を用いた精密アライメントを実行するようにしたので、高いアライメント精度を実現することが可能になる。
【0109】
また、実施形態に係る眼科装置では、光学系は、第1アライメント光学系(XYアライメント光学系30)を含んでもよい。第1アライメント光学系は、前眼部観察系の光路と略同軸に配置され、被検眼に第1アライメント光(アライメント光)を投射し、被検眼からの第1アライメント光の第1反射光を検出するために用いられる。解析部(210a)は、画像データに基づいて第1アライメント光に基づくアライメント輝点像のサイズを求め、求められたサイズに基づいて移動目標位置を求めてもよい。
【0110】
このような構成によれば、ライトフィールドカメラにより得られた画像データから生成される画像中のアライメント輝点像のスポットサイズから当該光軸方向の最適な移動目標位置を特定するようにしたので、広いダイナミックレンジで光軸方向の位置合わせを行うことが可能な眼科装置の構成を簡素化することができる。
【0111】
また、実施形態に係る眼科装置では、解析部は、画像データに基づいて光軸方向の2以上の像面位置に対応した2以上の被検眼画像を生成し、生成された2以上の被検眼画像のうちアライメント輝点像のサイズが最小となる被検眼画像に対応した像面位置に基づいて移動目標位置を求めてもよい。
【0112】
このような構成によれば、広いダイナミックレンジで、かつ、高い精度で光学系と被検眼との光軸方向の位置合わせが可能な眼科装置を提供することができるようになる。
【0113】
なお、光学系の配置の制限などにより、前眼部観察系において十分なNAが確保できず、必要なアライメント分解能を確保するための焦点深度が得られない場合がある。このような場合でも、ダイナミックレンジの広いアライメント光学系(ライトフィールドカメラを用いたアライメント光学系)と、十分な精度を有するがダイナミックレンジの狭いアライメント光学系(アライメント輝点像を用いたアライメント光学系)とを組み合わせて、広範囲に、かつ十分な精度でのアライメントが可能な眼科装置を提供することができるようになる。
【0114】
また、実施形態に係る眼科装置では、光学系は、第2アライメント光学系(Zアライメント光学系40)を含んでもよい。第2アライメント光学系は、前眼部観察系の光軸外から被検眼に第2アライメント光(発散光)を投射し、被検眼からの第2アライメント光の第2反射光を検出するために用いられる。制御部は、移動目標位置に基づいて前記光学系と前記支持部とを相対移動させた後、第1反射光の検出結果及び第2反射光の検出結果の少なくとも一方に基づいて駆動部を制御する精密アライメント制御を行ってもよい。
【0115】
このような構成によれば、ライトフィールドカメラにより得られた画像データに基づいてアライメントを行った後、第1アライメント光学系及び第2アライメント光学系を用いた精密アライメントを実行するようにしたので、高いアライメント精度を実現することが可能になる。
【0116】
また、実施形態に係る眼科装置は、上記のライトフィールドカメラを含んでもよい。
【0117】
このような構成によれば、ライトフィールドカメラを搭載し、広いダイナミックレンジで光学系と被検眼との位置合わせを行うことが可能な眼科装置を提供することができるようになる。
【0118】
以上に説明した構成は、この発明を好適に実施するための一例に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加等)を適宜に施すことが可能である。適用される構成は、例えば目的に応じて選択される。また、適用される構成に応じ、当業者にとって自明の作用効果や、本明細書において説明された作用効果が得られる。
【0119】
なお、上記の実施形態は、ライトフィールドカメラの構成やデコンボリューション処理の処理内容に限定されるものではない。上記の実施形態は、ライトフィールドカメラの構成に応じたデコンボリューション処理を行うことで、撮影後に前眼部観察系の光軸方向の複数の像面位置のいずれかにフォーカス調整された画像を取得できるものを適用することができる。