(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-164627(P2018-164627A)
(43)【公開日】2018年10月25日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/511 20060101AFI20180928BHJP
A61F 13/532 20060101ALI20180928BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20180928BHJP
【FI】
A61F13/511 110
A61F13/532 200
A61F13/511 100
A61F13/53 300
A61F13/511 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-63524(P2017-63524)
(22)【出願日】2017年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100209130
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏太
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196645
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 陽子
(72)【発明者】
【氏名】安藤 拓郎
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA01
3B200BA02
3B200BA04
3B200BA08
3B200BB03
3B200CA08
3B200CA11
3B200DB01
3B200DB02
3B200DB05
3B200DC01
3B200DC02
3B200DC05
3B200DC06
(57)【要約】
【課題】本発明は、吸収性物品の着用方法に関係なく、肌触りが良好で、着用感に優れ、美粧性の良好な吸収性物品を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、吸収性物品であって、トップシートは、1プライで構成され、三次元の凸部及び凹部を有する凹凸パターンを有し、吸収性物品には、幅方向中心線を跨いで左右対称に、チャネルエンボスが形成されており、チャネルエンボスは、前部及び股部に及ぶ略楕円状の前方チャネルエンボスと、後部に及ぶ略楕円状の後方チャネルエンボスが、股部及び後部の境界部において連結した構造を有し、前方チャネルエンボス及び後方チャネルエンボスの内側において、2本の折り線と交差し、幅方向に延在するエンボス溝が形成されている、吸収性物品を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、を有し、2本の折り線によって、長手方向に略3等分された吸収性物品であって、
前記トップシートは、1プライで構成され、三次元の凸部及び凹部を有する凹凸パターンを有し、
前記吸収性物品は、着用者の腹側にあてがわれ、2本の折り線よりも端部側の前部と、2本の折り線に挟まれる股部と、着用者の背側にあてがわれ、2本の折り線よりも端部側の後部と、に区分され、
前記吸収性物品には、幅方向中心線を跨いで左右対称に、チャネルエンボスが形成されており、
前記チャネルエンボスは、前部及び股部に及ぶ略楕円状の前方チャネルエンボスと、後部に及ぶ略楕円状の後方チャネルエンボスが、股部及び後部の境界部において連結した構造を有し、
前方チャネルエンボス及び後方チャネルエンボスの内側において、2本の折り線と交差し、幅方向に延在するエンボス溝が形成されている、吸収性物品。
【請求項2】
前記トップシートが、平面視で、ハニカム状の凹凸パターンを有する、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前方チャネルエンボスの長手方向の寸法は、後方チャネルエンボスの長手方向の寸法よりも大きく、
前方チャネルエンボスの幅方向の寸法は、後方チャネルエンボスの幅方向の寸法よりも大きい、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体の坪量が、400g/m2以上1500g/m2以下である、請求項1から3のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前部の、長手方向端部側に、前方チャネルエンボスに連結する、略楕円状の前端部チャネルエンボスが形成されている、請求項1から4のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記トップシートが、親水性エアスルー不織布である、請求項1から5のいずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌触りがよく、着用感に優れ、美粧性の良好な吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、で構成されており、これにより、尿等の体液は、トップシートを通って吸収体に吸収される。この吸収性物品は、想定される使用状況における体液の排出量に応じて、様々な吸収量のものが存在する。これらのうち、比較的少量の排出量の体液を吸収するものとしては、軽失禁ライナーや軽失禁パッド等が知られている。
【0003】
吸収性物品は、通常、1個ごとに3つ折り等に折り畳んで個別包装し、複数個をプラスチックフィルムにて一括包装しており、消費者が吸収性物品を使用する際には、個別包装から吸収性物品を取り出し、吸収性物品の衣類側表面に設けられたズレ止めテープを使用して、吸収性物品を下着に装着している。
【0004】
このような吸収性物品として、例えば、特許文献1には、トップシート、バックシート、及び吸収体と、を有し、少なくともトップシート及び吸収体を圧縮したチャネルエンボスが形成された吸収性物品であって、吸収体は、吸収性物品の幅方向中央に位置する中央吸収部と、中央吸収部よりも幅方向両外側に位置する一対の外側吸収部と、を有しており、中央吸収部は、吸収体の前端部から後端部まで配置されており、チャネルエンボスは、吸収体の長手方向中心よりも前方に位置する前側チャネルエンボスと、吸収体の長手方向中心よりも後方に位置する後側チャネルエンボスと、を有し、前側チャネルエンボス及び後側チャネルエンボスは、一対の外側吸収部と中央吸収部とに跨がっている、吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−069006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の吸収性物品に見られるように、吸収性物品には、一般に、漏れ防止や吸収体の撚れ防止のため、チャネルエンボスが形成されるが、エンボスの総面積が多くなる場合、全体的に硬くなることが知られている。同時に、トップシートにマッチドエンボス処理を施した凹凸パターンを有する、嵩高で柔らかい不織布(3D凹凸シート)を使用する場合には、チャネルエンボスのエンボス総面積が多いと、吸収性物品の美粧性が低下する問題が指摘されていた。
【0007】
さらに、吸収性物品については、着用者によって着用位置はそれぞれ異なっており、例えば、着用した吸収性物品が目立たないように、吸収性物品を腹側に寄せて着用する場合もあれば、使用する時間や場所に応じて、着用方法を変える場合もある。このため、様々な位置で装着したとしても、肌触りや着用感が損なわれない吸収性物品を提供することが求められていた。
【0008】
したがって、本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、吸収性物品の着用方法に関係なく、肌触りがよく、着用感に優れ、美粧性の良好な吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、1プライで構成され、三次元の凸部と凹部を有する凹凸パターンを有するトップシートを用い、前部及び股部に及ぶ略楕円状の前方チャネルエンボスと、後部に及ぶ略楕円状の後方チャネルエンボスが、股部及び後部の境界部において連結した構造等を有する吸収性物品によれば、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0010】
(1)本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、を有し、2本の折り線によって、長手方向に略3等分された吸収性物品であって、前記トップシートは、1プライで構成され、三次元の凸部及び凹部を有する凹凸パターンを有し、前記吸収性物品は、着用者の腹側にあてがわれ、2本の折り線よりも端部側の前部と、2本の折り線に挟まれる股部と、着用者の背側にあてがわれ、2本の折り線よりも端部側の後部と、に区分され、前記吸収性物品には、幅方向中心線を跨いで左右対称に、チャネルエンボスが形成されており、前記チャネルエンボスは、前部及び股部に及ぶ略楕円状の前方チャネルエンボスと、後部に及ぶ略楕円状の後方チャネルエンボスが、股部及び後部の境界部において連結した構造を有し、前方チャネルエンボス及び後方チャネルエンボスの内側において、2本の折り線と交差し、幅方向に延在するエンボス溝が形成されている、吸収性物品である。
【0011】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の吸収性物品であって、前記トップシートが、平面視で、ハニカム状の凹凸パターンを有することを特徴とするものである。
【0012】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載の吸収性物品であって、前方チャネルエンボスの長手方向の寸法は、後方チャネルエンボスの長手方向の寸法よりも大きく、前方チャネルエンボスの幅方向の寸法は、後方チャネルエンボスの幅方向の寸法よりも大きいことを特徴とするものである。
【0013】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記吸収体の坪量が、400g/m
2以上1500g/m
2以下であることを特徴とするものである。
【0014】
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前部の、長手方向端部側に、前方チャネルエンボスに連結する、略楕円状の前端部チャネルエンボスが形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
(6)本発明の第6の態様は、(1)から(5)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記トップシートが、親水性エアスルー不織布であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の吸収性物品は、1プライで構成され、三次元の凸部と凹部を有する凹凸パターンを有するトップシートを用いる一方で、チャネルエンボスが、前部及び股部に及ぶ略楕円状の前方チャネルエンボスと、後部に及ぶ略楕円状の後方チャネルエンボスとが、股部及び後部の境界部において連結した構造を有している。このため、吸収性物品の排尿域の周囲の領域に、チャネルエンボスが形成されない領域が確保されることに加え、凹凸パターンを有するトップシートが柔らかな肌触りを発現することにより、吸収性物品の着用感が良好なものとなる。さらに、本発明の吸収性物品においては、チャネルエンボスのエンボス総面積が少なく、特に、排尿域の周囲において、チャネルエンボスが形成されていない部位が存在しているので、吸収性物品が美粧性に優れたものとなる。加えて、本発明の吸収性物品においては、前方チャネルエンボスが、前部及び股部に及ぶ略楕円形の形状のものであるので、吸収性物品の着用方法や着用位置を変えても、良好な着用感が維持される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】本発明の吸収性物品の別の態様を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<吸収性物品>
本発明の実施形態に係る吸収性物品1としては、軽失禁パッドが例示されるが、本発明の吸収性物品1はこれに限定されるものではなく、軽失禁ライナー、生理用ナプキン、その他の吸収性物品であってもよい。吸収性物品1は、身体側表面に配置された液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向し、衣類側表面に配置された液不透過性のバックシート30と、トップシート10及びバックシート30の間に配置された吸収体20と、を備え、これにより、吸収体20は、トップシート10とバックシート30との間に挟まれた構造となっている。吸収性物品1は、個別包装に際して幅方向に延びる2本の折り線40によって長手方向に略3等分されて折り畳まれるものであり、包装時には長手方向に3つ折りにされる。吸収性物品1は、着用者の腹側にあてがわれ、2本の折り線40よりも端部側の前部1aと、着用者の股間に位置する股部1bと、着用者の背側にあてがわれ、2本の折り線40よりも端部側の後部1cと、に区分される。
【0019】
[トップシート]
トップシート10は、吸収体20に向けて体液を速やかに通過させるものであり、吸収体20を挟んで、バックシート30に対向して配置される。トップシート10は、肌と当接するシートとなることから、トップシート10には、柔らかな感触で、肌に刺激を与えないような性質を有する、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いて、エアスルー法、サーマルボンド法、スパンレース法、スパンボンド法等の公知の加工法によって得られた親水性不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等を用いることができるが、通気性及び着用時の肌触りの観点から、親水性エアスルー不織布を用いることが好ましい。なお、本発明に用いるトップシート10は、着用時の肌触りを良好にするために、1プライで構成される。また、トップシート10には、ドライタッチ性を付与するために多数の透孔が形成されていてもよい。
【0020】
トップシート10の坪量は、加工性及び強度の点から、18g/m
2以上40g/m
2以下であることが好ましい。また、トップシート10には、肌への刺激を低減させるために、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を適用してもよい。
【0021】
なお、本発明においては、吸収体20の上面への体液の拡散を促進するため、トップシート10と吸収体20との間に、液拡散性シートを設けてもよい。斯かる液拡散性シートとしては、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の不織布や、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布を挙げることができる。液拡散性シートの厚みは0.1mm以上であることが好ましく、その坪量は15g/m
2以上であることが好ましい。液拡散性シートの形状は、特に制限はないが、尿等の体液がくまなく吸収体20に拡散するよう、吸収体20の表面を完全に覆うことができる形状であることが好ましい。
【0022】
(凹凸パターン)
本発明においては、トップシート10が、三次元の凸部及び凹部を有する凹凸パターンを有する。凹凸パターンの形成は、マッチドエンボスによってもよい。ここで、マッチドエンボスパターンとは、例えば、特表2002−512660号公報に開示されるものであり、多数の凸体を有する凸ローラと、凸体と相補的な多数の凹体を有する凹ローラとで、凸体と凹体がかみ合うように不織布を挟み込み、必要に応じて熱を付与することにより形成されるものである。トップシート10が、このような凹凸パターンを有することにより、トップシート10を、嵩高く維持することができる。本発明においては、トップシート10の厚みは、凹凸処理前の1.5倍から3倍の厚みであり、凹凸処理後のトップシート10の厚みは、1mm以上5mm以下であることが好ましく、2mm以上4mm以下であることがより好ましい。
【0023】
また、トップシート10に凹凸パターンが付与されていることにより、トップシート10の平面内に凸部と凹部が形成されるので、トップシート10の平面方向の通気性が良好に維持され、トップシート10に体液が接触した場合に、トップシート10が体液を保持しやすくなる。これらの効果は、いずれも、吸収性物品1の着用時の柔らかな肌触りの発現、吸収性能及び逆戻り性の改善に寄与することとなる。
【0024】
トップシート10が有する凹凸パターンのパターン形状は、円形、楕円形、多角形、長手方向若しくは幅方向に延びる互いに平行な直線、又は互いに並行する曲線であることが好ましく、多角形の場合は、縦方向の寸法が横方向の寸法よりも長くてもよく、横方向の寸法が縦方向の寸法よりも長くてもよい。なお、肌触り及び着用感の観点から、本発明の吸収性物品1におけるトップシート10が有する凹凸パターンは、六角形又は正六角形の凸部と、六角形又は正六角形の凹部とが連続して構成される、平面視で、ハニカム状の凹凸パターンであることが好ましい。
【0025】
トップシート10が有する凹凸パターンの凹部の面積率は、3%以上40%以下であることが好ましく、5%以上30%以下であることがより好ましい。面積率を上記の範囲内のものとすることにより、凹凸パターンの三次元形状が十分に維持され、トップシート10の嵩高さが良好に維持される。
【0026】
[バックシート]
バックシート30は、吸収性物品1の外部に体液が漏れないよう、液不透過性を有し、遮水性を有するシート材が用いられるが、ムレ防止のために透湿性を有していてもよい。このような特性を有するバックシート30の材料としては、例えば、ポリエチレンシートやポリエチレンラミネート不織布等の厚みの薄いプラスチックシートを挙げることができる。バックシート30は、着用者の股間が位置づけられる長手方向中央に括れ部を有する砂時計形状、略矩形形状等の形状を有していてもよく、吸収体20の側縁より若干外方に延在して設けられていてもよい。バックシート30の衣類側表面には、着用時に下着等に吸収性物品1を固着するための粘着剤層が設けられていてもよい。吸収性物品1が粘着剤層を有する場合、粘着剤層を保護するための剥離シートを有していてもよく、この剥離シートは、吸収性物品1の包装シートと部分的に接合されていてもよい。トップシート10及びバックシート30は、長手方向端部等、端部の少なくとも一部において、吸収体20を挟まずに、ホットメルト接着剤やヒートシール等により固着されるフラップを形成していてもよい。
【0027】
[吸収体]
吸収体20は、基材としての吸収性繊維と、高吸水性ポリマー(Super Absorbent Polymer;以下、SAPとも称する)と、を含有する。吸収性繊維は、一般に生理用ナプキン、おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。斯かるフラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。吸収体20の吸収性繊維は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、100g/m
2以上800g/m
2以下の坪量とすることが好ましい。
【0028】
吸収体20に用いるSAPとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系共重合体、ポリアスパラギン酸塩系共重合体、(デンプン−アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系共重合体が好ましい。吸収体20のSAP量は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、50g/m
2以上700g/m
2以下の坪量とすることが好ましく、15質量%以上60質量%以下の含有量とすることが好ましい。
【0029】
吸収体20において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成した積層マットの形態であることが好ましい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体20の形状の安定化の目的から、吸収体20をキャリアシートに包むことが好ましい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシートを複数備える場合は、キャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよく、キャリアシートで吸収体20を包む際の包み方は特に限定されるものではない。
【0030】
なお、吸収体20の坪量は、400g/m
2以上1500g/m
2以下であることが好ましい。吸収体20の坪量をこのような範囲にすることにより、吸収性に優れ、体液の漏れを効果的に防止することができる。また、吸収体20は、上層吸収体と下層吸収体とを積層してなるものであってもよい。この場合、上層吸収体と下層吸収体の長手方向及び幅方向の寸法は、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より大きくてもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法と同じであってもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より小さくてもよい。
【0031】
[チャネルエンボス]
図1は、本発明の吸収性物品1の平面図である。
図1に示すように、本発明の吸収性物品1には、幅方向中心線を跨いで左右対称に、チャネルエンボスが形成されており、チャネルエンボスは、前部1a及び股部1bに及ぶ略楕円状の前方チャネルエンボス21と、後部1cに及ぶ略楕円状の後方チャネルエンボス22が、股部1b及び後部1cの境界部において連結した構造を有している。このため、吸収性物品1の排尿域の周囲の領域に、チャネルエンボスが形成されない領域が確保され、吸収性物品1の着用感が良好なものとなる。また、本発明の吸収性物品1においては、チャネルエンボスのエンボス総面積が少なく、特に、排尿域の周囲において、チャネルエンボスが形成されていない部位が存在しているので、吸収性物品1が美粧性に優れたものとなる。さらに、前方チャネルエンボス21が、前部1a及び股部1bに及ぶ略楕円形の形状のものであるので、吸収性物品1の着用方法や着用位置を変えても、良好な着用感が維持される。
【0032】
また、前方チャネルエンボス21の長手方向の寸法は、後方チャネルエンボス22の長手方向の寸法よりも大きく、前方チャネルエンボス21の幅方向の寸法は、後方チャネルエンボス22の幅方向の寸法よりも大きいことが好ましい。前方チャネルエンボス21をこのような寸法にすることにより、排尿域の周囲において、チャネルエンボスが形成されていない領域がより確保され、吸収性物品1の着用感がより良好なものとなる。
【0033】
また、吸収性物品1には、
図2に示すように、前部1aの、長手方向端部側に、前方チャネルエンボス21に連結する、略楕円状の前端部チャネルエンボス24が形成されていることが好ましい。前方チャネルエンボス21で捕捉された体液が、長手方向に伸びる前端部チャネルエンボス24に伝わり、より広面積で体液を素早く吸収できる。
【0034】
[エンボス溝]
また、本発明の吸収性物品1には、前方チャネルエンボス21及び後方チャネルエンボス22の内側において、2本の折り線40と交差し、幅方向に延在するエンボス溝23が形成されている。このため、吸収性物品1に多量に排泄された体液が、エンボス溝23に捕捉されることにより、トップシート10の表面における体液の長手方向への拡散速度を低減させることができる。また、吸収性物品1がこのエンボス溝23を折れ起点として身体に沿って厚さ方向に湾曲しやすくなるため、吸収性物品1の身体へのフィット性が向上し、体液の漏れを効果的に防止することができる。
【0035】
[立体ギャザー]
吸収性物品1の身体側表面には、立体ギャザーが設けられていてもよい。この立体ギャザーは、トップシート10とともに体液の閉じ込め空間を形成し、体液の漏れを防止できるようになっている。立体ギャザーは、立体ギャザーシートと、立体ギャザーシートの自由端部に沿って配された伸縮性弾性部材と、を備えていることが好ましい。伸縮性弾性部材としては、天然ゴム、合成ゴム及びポリウレタン等からなる、糸状、紐状、平型形状のものを適宜使用することができる。
【0036】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品1の製造方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができ、例えば、必要に応じて、液拡散性シート及び立体ギャザーをあらかじめトップシート10に配置した上で、括れ部を形成した吸収体20をトップシート10とバックシート30との間に挟持し、トップシート10から吸収体20に前方チャネルエンボス21、後方チャネルエンボス22及びエンボス溝23を形成させつつ、トップシート10とバックシート30とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定することで製造することができる。そして、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折りにして折り畳めばよい。
【0037】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例】
【0038】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0039】
<実施例1>
(吸収性物品の作製)
まず、フラッフパルプ及びSAPを混合して、吸収体を準備し、長手方向の寸法が240mm、幅方向の寸法が65mmとなるようにカットした。この吸収体をトップシートとバックシートとの間に挟持し、トップシートとバックシートの全周に亘ってホットメルト接着剤を用いて固定し、長手方向の寸法が270mm、幅方向の寸法が105mmの軽失禁パッドを作製し、実施例1のサンプルとした。なお、トップシートとしては、あらかじめ三次元の凸部及び凹部を有する凹凸パターンを形成した、1プライからなる親水性エアスルー不織布(坪量23g/m
2)を用いた。なお、本明細書の態様に従って、吸収性物品には、トップシートから吸収体にかけて、前部及び股部に及ぶ略楕円状の前方チャネルエンボスと、後部に及ぶ略楕円状の後方チャネルエンボスと、を股部及び後部の境界部において連結するように形成し、さらに、前方チャネルエンボス及び後方チャネルエンボスの内側において、2本の折り線と交差し、幅方向に延在するエンボス溝を形成した。また、バックシートとしては、通気性ポリエチレンフィルム(坪量32g/m
2)を用いた。モニターテストの官能評価により、肌触り、着用感及び美粧性を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0040】
(肌触り)
20名のパネラーにより、複数の着用位置で吸収性物品を着用した際の総合的な肌触りについて、「肌触りがよい」又は「肌触りが悪い」の選択で調査を行い、以下の基準により評価を行った。
◎:「肌触りがよい」が16人以上20人以下のとき
○:「肌触りがよい」が11人以上15人以下のとき
△:「肌触りがよい」が6人以上10人以下のとき
×:「肌触りがよい」がいないか、1人以上5人以下のとき
【0041】
(着用感)
20名のパネラーにより、複数の着用位置で吸収性物品を着用した際の総合的な着用感について、「着用感に優れる」又は「着用感が劣る」の選択で調査を行い、以下の基準により評価を行った。
◎:「着用感に優れる」が16人以上20人以下のとき
○:「着用感に優れる」が11人以上15人以下のとき
△:「着用感に優れる」が6人以上10人以下のとき
×:「着用感に優れる」がいないか、1人以上5人以下のとき
【0042】
(美粧性)
20名のパネラーにより、吸収性物品をトップシート側から多角的に見た場合において、「美粧性に優れる」又は「美粧性が劣る」の選択で調査を行い、以下の基準により評価を行った。
◎:「美粧性に優れる」が16人以上20人以下のとき
○:「美粧性に優れる」が11人以上15人以下のとき
△:「美粧性に優れる」が6人以上10人以下のとき
×:「美粧性に優れる」がいないか、1人以上5人以下のとき
【0043】
<比較例1及び2>
排尿域の周囲の領域に略円形のチャネルエンボスを追加した点(比較例1)、トップシートが、三次元の凸部及び凹部を有する凹凸パターンを有しない点(比較例2)、以外は、実施例1と同様にして吸収性物品を作成し、実施例1と同一の試験・評価を行った。
【0044】
以上の結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1より明らかなように、本発明によれば、着用方法に関係なく、肌触りがよく、着用感に優れ、美粧性の良好な吸収性物品を提供することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 吸収性物品
1a 前部
1b 股部
1c 後部
10 トップシート
20 吸収体
21 前方チャネルエンボス
22 後方チャネルエンボス
23 エンボス溝
24 前端部チャネルエンボス
30 バックシート
40 折り線