特開2018-164652(P2018-164652A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-164652(P2018-164652A)
(43)【公開日】2018年10月25日
(54)【発明の名称】消火システム
(51)【国際特許分類】
   A62C 37/36 20060101AFI20180928BHJP
【FI】
   A62C37/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-63808(P2017-63808)
(22)【出願日】2017年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】早川 浩司
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189GA01
2E189GA05
(57)【要約】
【課題】起動装置にアドレスが設定されていない場合であっても、制御装置と起動装置との間で正常に通信できるようにする。
【解決手段】ガス消火システム100は、消火区域において消火用のガスを放出する動作を起動する操作を受ける一以上の起動装置4と、ガスの放出を制御する制御装置1と、を備え、制御装置1は、複数種類の第一種通知情報を、一つの通信線を介して一以上の起動装置4に送信するマスター通信部15を有し、起動装置4は、マスター通信部15から第一種通知情報を受信した場合に、上記の通信線を介して応答パルス信号を送信するスレーブ通信部44を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火区域において消火用の消火剤を放出する動作を起動する操作を受ける一以上の起動装置と、前記消火剤の放出を制御する制御装置と、を有する消火システムであって、
前記制御装置は、複数種類の第一種通知情報を、一つの通信線を介して前記一以上の起動装置に送信するマスター通信部を有し、
前記起動装置は、前記マスター通信部から前記第一種通知情報を受信した場合に、前記通信線を介して応答パルス信号を送信するスレーブ通信部を有する、
消火システム。
【請求項2】
前記スレーブ通信部は、自身の設定モードが前記マスター通信部から受信した前記第一種通知情報に対応するモードになっている場合に、前記応答パルス信号を送信し、前記設定モードが前記マスター通信部から受信した前記第一種通知情報に対応するモードになっていない場合に、前記応答パルス信号を送信しない、
請求項1に記載の消火システム。
【請求項3】
前記スレーブ通信部は、自身の前記設定モードの状態が変化した後に、前記マスター通信部から受信した前記第一種通知情報が、変化後の前記設定モードと同一であることを条件として、前記応答パルス信号を送信する、
請求項2に記載の消火システム。
【請求項4】
前記制御装置は、複数の異なる前記設定モードに対応する複数の前記第一種通知情報のそれぞれに対して、複数の前記起動装置から前記応答パルス信号を受信した場合に、前記複数の起動装置が異なる前記設定モードに設定されていると判定する制御部をさらに有する、
請求項2又は3に記載の消火システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記複数の起動装置が異なる前記設定モードに設定されていると判定した場合に、前記複数の起動装置の設定モードを前記複数の設定モードのいずれか一つに設定されるための前記第一種通知情報を前記複数の起動装置に送信する、
請求項4に記載の消火システム。
【請求項6】
前記マスター通信部は、前記第一種通知情報と異なる一以上の第二種通知情報を、前記一以上の第二種通知情報それぞれに対応する一以上の信号線を介して前記一以上の起動装置に通知する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の消火システム。
【請求項7】
前記マスター通信部は、前記第一種通知情報を含むシリアルデータを前記一以上の起動装置に送信し、かつ前記第二種通知情報に対応する前記信号線の電圧を監視し、電圧の変化があったことに基づいて、前記第二種通知情報を受信する、
請求項6に記載の消火システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記マスター通信部が異なる種類の複数の前記第一種通知情報を送信してから所定の時間以内に前記複数の第一種通知情報に応じて受信した前記応答パルス信号の合計数が、前記一以上の起動装置の数と一致した場合に、前記第一種通知情報が正常に送信できたと判定する判定部をさらに有する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の消火システム。
【請求項9】
前記一以上の起動装置のそれぞれが有する前記スレーブ通信部は、前記第一種通知情報を受信してからランダムな時間が経過した後に前記応答パルス信号を送信する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の消火システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火剤を放出することにより消火する消火システムに関する。
【背景技術】
【0002】
消火剤を放出することにより消火する消火システムは、消火剤の放出を制御する制御装置と、消火剤の放出を起動する起動装置とから構成されている。制御装置と起動装置との間では、複数の信号線を介して、各種の情報がやり取りされる。特許文献1には、制御装置と起動装置との間でシリアル通信線を用いてデータを送受信することで、通信線の数を少なくする消火システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−139658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された消火システムにおいては、複数の起動装置のそれぞれにアドレスが設定され、制御装置は、シリアル通信線を用いて起動装置にデータを送信する場合、送信先のアドレスを含むデータを送信する必要があった。しかしながら、従来は、制御装置と起動装置との間でシリアル通信線が用いられるようになる前は、起動装置にアドレスを設定する必要がなかった。
【0005】
したがって、シリアル通信線が用いられる消火システムを設置する際に、工事担当者が起動装置にアドレスを設定する作業を実施することは、作業の煩雑化、及び効率の低下を招く場合があった。この場合、起動装置にアドレスが設定されていないため、起動装置は、制御装置が送信したデータを正常に受信できないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、起動装置にアドレスが設定されていない場合であっても、制御装置と起動装置との間で正常にシリアル通信が可能になる消火システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の消火システムは、消火区域において消火用の消火剤を放出する動作を起動する操作を受ける一以上の起動装置と、前記消火剤の放出を制御する制御装置と、を有する消火システムであって、前記制御装置は、複数種類の第一種通知情報を、一つの通信線を介して前記一以上の起動装置に送信するマスター通信部を有し、前記起動装置は、前記マスター通信部から前記第一種通知情報を受信した場合に、前記通信線を介して応答パルス信号を送信するスレーブ通信部を有する。
【0008】
前記スレーブ通信部は、例えば、自身の設定モードが前記マスター通信部から受信した前記第一種通知情報に対応するモードになっている場合に、前記応答パルス信号を送信し、前記設定モードが前記マスター通信部から受信した前記第一種通知情報に対応するモードになっていない場合に、前記応答パルス信号を送信しない。
【0009】
前記スレーブ通信部は、自身の前記設定モードの状態が変化した後に、前記マスター通信部から受信した前記第一種通知情報が、変化後の前記設定モードと同一であることを条件として、前記応答パルス信号を送信してもよい。
【0010】
前記マスター通信部は、前記第一種通知情報と異なる一以上の第二種通知情報を、前記一以上の第二種通知情報それぞれに対応する一以上の信号線を介して前記一以上の起動装置に通知してもよい。
【0011】
前記マスター通信部は、前記第一種通知情報を含むシリアルデータを前記一以上の起動装置に送信し、かつ前記第二種通知情報に対応する前記信号線の電圧を監視し、電圧の変化があったことに基づいて、前記第二種通知情報を受信してもよい。
【0012】
前記制御装置は、前記マスター通信部が異なる種類の複数の前記第一種通知情報を送信してから所定の時間以内に前記複数の第一種通知情報に応じて受信した前記応答パルス信号の合計数が、前記一以上の起動装置の数と一致した場合に、前記第一種通知情報が正常に送信できたと判定する判定部をさらに有してもよい。
【0013】
前記一以上の起動装置のそれぞれが有する前記スレーブ通信部は、前記第一種通知情報を受信してからランダムな時間が経過した後に前記応答パルス信号を送信してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、起動装置にアドレスが設定されていない場合であっても、制御装置と起動装置との間で正常に通信が可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ガス消火システムの構成を示す図である。
図2】制御装置と起動装置との間で各種の情報をやり取りするための信号線の一例を示す図である。
図3】起動装置の構成を示す図である。
図4】制御装置と複数の起動装置の間の通信シーケンスを示す図である。
図5】複数の起動装置の設定モードが一致していない場合の制御装置と複数の起動装置との間の通信シーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[ガス消火システム100の概要]
図1は、本実施形態のガス消火システム100の構成を示す図である。ガス消火システム100は、制御装置1と、火災感知器2と、終端回路3と、起動装置4と、ガス放出装置5とを備える。ガス消火システム100は、消火対象となる区域ごとに、一以上の火災感知器2、終端回路3、起動装置4及びガス放出装置5を有する。区域は、例えば、建物内の仕切られた部屋に対応するが、一つの区域に複数の部屋が含まれていてもよい。
【0017】
制御装置1は、ガス消火システム100の各種の動作を司る装置であり、例えば、火災が発生した区域に消火用のガスを放出するための制御を行う。火災感知器2は、区域内で火災が発生したことを検知するセンサーである。終端回路3は、センサーが接続された回路の終端部である。
【0018】
起動装置4は、火災が発生した区域に消火用のガスを放出するための起動操作を受け付けるための装置であり、各区域の出入り口付近に設置されている。ガス放出装置5は、制御装置1の制御に基づいて、制御装置1により指定された区域に消火用のガスを放出する。
【0019】
建物内の人(以下、ユーザという)が火災の発生に気付いた場合に、ユーザが起動装置4に設けられた起動ボタンを押すことにより、ガスの放出要求が制御装置1に通知される。制御装置1は、ガスの放出要求の通知を受けると、起動ボタンが押されてから所定の放出遅延時間(例えば、区域内の人が避難に要する時間)が経過するまで待機する。制御装置1は、放出遅延時間が経過した後に、起動ボタンが押された起動装置4が設置されている区域にガスを放出可能なガス放出装置5を制御して、起動ボタンが押された起動装置4に対応する区域に消火ガスを放出させる。
【0020】
なお、消火ガスの放出動作は、ユーザが起動装置4の起動ボタンを押したことにより動作する手動モード、及び火災感知器2が火災を検知したことに応じて動作する自動モードの2つのモードがある。制御装置1を管理する管理者は、制御装置1の操作パネルにおいて、自動モードと手動モードとを切り替えることができる。また、ユーザが、起動装置4の操作パネルにおいて自動モードと手動モードとを切り替えることもできる。
【0021】
[制御装置1と起動装置4との間の情報の送受信]
図2は、制御装置1と起動装置4との間で各種の情報をやり取りするための信号線の一例を示す図である。制御装置1及び起動装置4は、第1電源線、第2電源線、扉開信号線、起動信号線、緊急停止信号線、電話線及び通信線により接続されている。制御装置1と起動装置4との間では、通信線を介して伝達される第一種通知情報、及び通信線以外の線を介して伝達される第二種通知情報とが送受信される。
【0022】
第1電源線は、起動装置4を動作させるための電力を供給するための線である。第2電源線は基準電圧を提供するための信号線であり、グランドに接続されている。扉開信号線、起動信号線及び緊急停止信号線のそれぞれは、起動装置4から制御装置1に対して伝達する重要度が高く、個別に伝達される第二種通知情報である扉開情報、起動情報及び緊急停止情報を伝達するための信号線である。起動装置4は、各信号線に接続された負荷を切り換えて各信号線の電圧を変化させることにより、各信号線に対応する情報を制御装置1に伝達する。
【0023】
扉開情報は、起動装置4の操作扉が開かれたことを制御装置1に通知するための情報である。起動装置4は、扉開情報に割り当てられた扉開信号線の電圧を変化させることにより、操作扉が開かれたことを制御装置1に通知する。制御装置1は、扉開情報により操作扉が開かれたことを認識すると、外部スピーカーにより火災が発生したことを通報する。
【0024】
起動情報は、起動装置4に設けられた放出起動ボタンを押す操作が行われたことを制御装置1に通知するための情報である。起動装置4は、起動情報に割り当てられた起動信号線の電圧を変化させることにより、放出起動ボタンが押されたことを制御装置1に通知する。制御装置1は、起動情報の通知を受けると、放出を開始するまでの時間である放出遅延時間をカウントし、放出遅延時間が経過するとガス放出装置5にガスを放出させる。
【0025】
緊急停止情報は、起動装置4に設けられた緊急停止スイッチが操作されたことを制御装置1に通知するための情報である。起動装置4は、緊急停止情報に割り当てられた緊急停止信号線の電圧を変化させることにより、緊急停止ボタンが押されたことを制御装置1に通知する。制御装置1は、放出遅延時間をカウント中に緊急停止スイッチが操作された場合、ガスの放出を中止することができる。
【0026】
電話線は、起動装置4を操作するユーザが制御装置1を管理する管理者又は警備員と通話する際に音声を伝送する信号線である。
通信線は、第二種通知情報以外の複数種類の第一種通知情報を含む複数のシリアルデータを送受信するための信号線である。制御装置1及び起動装置4は、例えば、自動切換情報、手動切換情報、起動表示情報、自動表示情報、手動表示情報、及び閉止弁閉表示情報のいずれかを含むシリアルデータを送受信する。
【0027】
自動切換情報は、起動装置4のモードを自動モードに切り換えるように指示するための情報である。起動装置4は、自動切換情報を受信すると「自動灯」を点灯させる。手動切換情報は、起動装置4のモードを手動モードに切り換えるように指示するための情報である。起動装置4は、手動切換情報を受信すると「手動灯」を点灯させる。
【0028】
起動表示情報は、放出遅延時間のカウントを開始した場合に制御装置1から起動装置4に通知される情報である。起動装置4は、起動表示情報を受信すると、「起動灯」を点灯するとともに、ガスが放出されるまでの時間を示す「放出遅延タイマー」のカウントダウン表示を行う。
【0029】
自動表示情報及び手動表示情報は、制御装置1が起動装置4の状態を確認するために送信する情報であり、制御装置1は、定期的に自動表示情報及び手動表示情報を起動装置4に送信する。閉止弁表示情報は、閉止弁が閉じた状態において、制御装置1から起動装置4に通知される情報である。起動装置4は、閉止弁表示情報を受信すると、「閉止弁閉灯」を点滅させる。
【0030】
第一種通知情報である自動切換情報、手動切換情報、起動表示情報、自動表示情報、手動表示情報、及び閉止弁閉表示情報は、1本の通信線を用いて制御装置1から起動装置4に送信される。制御装置1は、自動切換情報、手動切換情報、起動表示情報、自動表示情報、手動表示情報、及び閉止弁閉表示情報のそれぞれに対応するシリアルデータを複数の起動装置4に一斉送信する。このように、ガス消火システム100においては、複数の第一種通知情報が1本の通信線を用いて送受信されるので、制御装置1と起動装置4との間で接続されるべき線の本数を減らすことができる。
【0031】
制御装置1から起動装置4に自動表示情報が送信された場合、自動表示情報を受信した複数の起動装置4のうち、自動モードに設定されている起動装置4が、パルス状の応答情報を制御装置1に対して送信する。また、制御装置1から起動装置4に手動表示情報が送信された場合、手動表示情報を受信した複数の起動装置4のうち、手動モードに設定されている起動装置4が、パルス状の応答情報を制御装置1に対して送信する。制御装置1は、自動モードに設定されている起動装置4と手動モードに設定されている起動装置4とが混在していることを検出すると、自動切換情報又は手動切換情報を送信することにより、全ての起動装置4の設定モードを統一する。
【0032】
なお、詳細については後述するが、起動装置4は、自身の設定モードが変更された後に、制御装置1から受信した第一種通知情報が自動表示情報又は手動表示情報であり、受信した第一種通知情報が示すモードが、設定が変更された後の設定モードと同一であることを条件として、応答パルス信号を送信してもよい。
【0033】
また、制御装置1は、自動表示情報及び手動表示情報に応じて受信した応答情報の合計数が、自動表示情報及び手動表示情報を送信した対象となる区域内の起動装置4の数と一致している場合に、自動表示情報及び手動表示情報が正常に受信されたと判定してもよい。制御装置1は、例えば、自動表示情報及び手動表示情報に応じて受信した応答情報の合計数が、自動表示情報及び手動表示情報を送信した対象となる区域内の起動装置4の数と一致していない場合に、通信線に異常があると判定して、警告表示を行う。
【0034】
従来、1本の通信線を用いて複数の装置に対してシリアルデータを送信する場合、送信先の装置のアドレスを含むシリアルデータが送信される。そして、送信元の装置は、受信した旨の通知を送信先の装置から受信することにより、正常にシリアルデータが送信されたことを確認する。
【0035】
これに対して、本実施形態の制御装置1は、複数の起動装置4のアドレスを指定することなくシリアルデータを送信する。そして、制御装置1は、例えば、自動表示情報を含むシリアルデータを受信した起動装置4から応答パルス信号を受信したことに基づいて、自動モードに設定されている起動装置4が存在することを確認する。このようにすることで、起動装置4の設置者が、それぞれの起動装置4に対してアドレスを設定することなく、制御装置1が、起動装置4の設定モードを確認できる。
【0036】
[制御装置1の構成]
以下、図1を参照しながら、制御部11の詳細な構成及び動作について説明する。
制御装置1は、制御部11と、操作部12と、表示部13と、地区回路14(14−1〜14−n、nは自然数)と、マスター通信部15(15−1〜15−n、nは自然数)と、放出回路16(16−1〜16−n、nは自然数)とを有する。
【0037】
制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を有している。CPUは、ROMに格納されたプログラムを実行することにより、制御装置1の各部を制御する。例えば、制御部11は、地区回路14から火災検知情報の通知を受けると、火災検知情報を通知した地区回路14に対応する区域を表示部13に表示する。また、制御部11は、消火用ガスの放出モードが自動モードに設定されている状態で火災検知情報の通知を受けると、火災検知情報の通知を受けてから所定の放出遅延時間が経過した後に、放出回路16に指示をして消火用のガスを放出させる。
【0038】
また、制御部11は、起動装置4に対して送信する情報を生成し、生成した情報をマスター通信部15に入力する。また、制御部11は、起動装置4が送信したシリアルデータに含まれる情報をマスター通信部15から受信し、受信した情報に基づいて各種の処理を実行する。
【0039】
操作部12は、ユーザが各種の設定を行うための操作用デバイスである。操作部12は、例えば、スイッチ、ボタン又はタッチパネルにより構成される。また、操作部12は、通話用のハンドセットを含んでいる。
表示部13は、各種の情報を表示するためのディスプレイ及び光源を有するパネルである。表示部13は、各起動装置4の動作モード及び動作状態等を表示する。
【0040】
地区回路14は、火災の発生を検知する区域ごとに設けられている。地区回路14は、対応する区域内に設置された複数の火災感知器2のいずれかが火災の発生を検知した情報を受信する。地区回路14は、対応する区域内に設置された火災感知器2から火災の発生を示す火災検知情報を受信した場合に、火災検知情報を制御部11に通知する。
【0041】
マスター通信部15は、消火用のガスを放出する区域ごとに設けられている。マスター通信部15は、起動装置4との間で各種の情報を送受信するための通信インターフェースである。マスター通信部15は、図2に示した7本の信号線に接続されている。マスター通信部15は、扉開信号線、起動信号線及び緊急停止信号線の電圧を監視し、電圧の変化があったことに基づいて、第二種通知情報を受信する。マスター通信部15は、受信した第二種通知情報を制御部11に通知する。
【0042】
また、マスター通信部15は、通信線を介して送信する情報の入力を制御部11から受けると、入力された情報を含むシリアルデータを生成し、1ビットずつ順次送信する。なお、マスター通信部15は、電話線を介して受信した信号を、操作部12に設けられている通話用のハンドセットに対して出力する。
【0043】
放出回路16は、消火用のガスを放出する区域ごとに設けられている。放出回路16は、制御部11の指示に基づいて、ガス放出装置5を制御するガス放出信号を出力する。
【0044】
[起動装置4の構成]
図3は、起動装置4の構成を示す図である。起動装置4は、制御部41と、操作部42と、表示部43と、スレーブ通信部44とを有する。
【0045】
制御部41は、例えばCPU、ROM及びRAMを含み、起動装置4の各部を制御する。
操作部42は、ユーザの操作を受け付ける操作パネルであり、例えば、起動ボタン、緊急停止ボタン及び自動モードと手動モードとを切り換えるためのスイッチを含んでいる。
【0046】
表示部43は、ユーザに通知する情報を表示するためのデバイスである。表示部43は、液晶ディスプレイ又は発光素子を含んでいる。表示部43は、例えば、自動モードに設定されているか手動モードに設定されているかを示すランプを有する。また、表示部43は、スレーブ通信部44が制御装置1から起動信号を受信した後に、制御装置1から順次送られてくる放出遅延時間の残り時間に基づいて、秒単位でカウントダウン表示する。
【0047】
スレーブ通信部44は、制御装置1との間で各種の情報を送受信するための通信インターフェースである。スレーブ通信部44は、マスター通信部15と同様に、7本の信号線に接続されている。スレーブ通信部44は、扉が開いたことの通知を制御部41から受けると、扉開信号線の電圧を所定の電圧(例えば0V)に変化させることで、扉が開いたことをマスター通信部15に通知する。
【0048】
スレーブ通信部44は、操作部42の起動ボタンが押されたことの通知を制御部41から受けると、起動信号線の電圧を所定の電圧に変化させることで、起動操作が行われたことをマスター通信部15に通知する。また、スレーブ通信部44は、操作部42の緊急停止ボタンが押されたことの通知を制御部41から受けると、緊急停止信号線の電圧を所定の電圧に変化させることで、緊急停止操作が行われたことをマスター通信部15に通知する。
【0049】
また、スレーブ通信部44は、制御装置1から受信したシリアルデータを所定のビットごとにパラレルデータに変換してシリアルデータに含まれていた情報を抽出し、抽出した情報を制御部41に通知する。
【0050】
スレーブ通信部44は、マスター通信部15から、自装置の設定モードに対応する自動表示情報又は手動表示情報を受信すると、自装置の自動モード又は手動モードと一致した場合、応答パルス信号を、通信線を介してマスター通信部15に送信する。応答パルス信号は、所定幅の信号であるが、応答パルス信号の態様は任意であり、複数のパルスから構成されていてもよい。
【0051】
なお、スレーブ通信部44は、自身の設定モードの状態が変化した後に、マスター通信部15から受信した自動表示情報又は手動表示情報が、変化後の設定モードと同一であることを条件として、応答パルス信号を送信してもよい。具体的には、スレーブ通信部44は、自動表示情報を受信した場合に、自動表示情報を受信する前に自動モードに切り替える操作が行われていたか否かを判定し、自動モードに切り替える操作が行われていたと判定したことを条件として、応答パルス信号を送信する。同様に、スレーブ通信部44は、手動表示情報を受信した場合に、手動表示情報を受信する前に手動モードに切り替える操作が行われていたか否かを判定し、手動モードに切り替える操作が行われていたと判定したことを条件として、応答パルス信号を送信する。このようにすることで、制御装置1は、起動装置4で設定モードが変更されたことを容易に検出することができる。
【0052】
スレーブ通信部44は、複数の起動装置4のスレーブ通信部44から同時に応答パルス信号を送信しないようにするために、第一種通知情報を含むシリアルデータを受信してからランダムな時間が経過した後に応答パルス信号を送信してもよい。例えば、制御部41は、シリアルデータを受信したことの通知をスレーブ通信部44から受けると、乱数発生器により乱数を発生し、発生した乱数をスレーブ通信部44に通知する。スレーブ通信部44は、制御部41から受け取った乱数に対応する時間が経過するまで待機した後に応答パルス信号を送信する。
【0053】
[通信シーケンスの一例]
図4は、制御装置1と複数の起動装置4(起動装置4−1、4−2、4−3)との間の通信シーケンスを示す図である。図4は、起動装置4−1、4−2、4−3が自動モードに設定されている状態での通信シーケンスを示している。
【0054】
制御部11は、定期的に自動表示情報を生成し、生成した自動表示情報をマスター通信部15−1に入力する。マスター通信部15−1は、自動表示情報をシリアルデータに変換し、シリアルデータを起動装置4に送信する。
【0055】
複数の起動装置4それぞれのスレーブ通信部44は、自動表示情報を含むシリアルデータを受信する。複数の起動装置4のスレーブ通信部44は、受信した自動表示情報が、自身が設定されているモードである自動モードに対応していると判定し、応答パルス信号を送信する。複数の起動装置4のスレーブ通信部44は、例えば、自動表示情報を受信してからそれぞれランダムな時間を待機した後に応答パルス信号を送信する。
【0056】
制御部11は、自動表示情報をマスター通信部15−1に送信させてから所定の時間が経過すると、手動表示情報を生成し、生成した手動表示情報をマスター通信部15−1に入力する。マスター通信部15−1は、手動表示情報をシリアルデータに変換し、シリアルデータを起動装置4に送信する。
【0057】
複数の起動装置4それぞれのスレーブ通信部44は、手動表示情報を含むシリアルデータを受信する。複数の起動装置4のスレーブ通信部44は、受信した手動表示情報が、自身が設定されているモードである自動モードに対応していないと判定し、応答パルス信号を送信しない。
【0058】
マスター通信部15−1は、応答パルス信号を受信すると、受信した応答パルス信号の数を制御部11に通知する。制御部11は、マスター通信部15−1が異なる種類の複数の第一種通知情報を送信してから所定の時間以内に複数の第一種通知情報に応じて受信した前記応答パルス信号の合計数が、一以上の起動装置4の数と一致した場合に、第一種通知情報が正常に送信できたと判定する判定部として機能する。
【0059】
制御部11は、例えば、予めメモリ(例えばEEPROM)に記憶しておいた、各区域に設置されている起動装置4の台数を示す情報を参照し、第一種通知情報の一例である自動表示情報を送信したことに応じてマスター通信部15−1が受信した応答パルス信号の数と、第一種通知情報の一例である手動表示情報を送信したことに応じてマスター通信部15−1が受信した応答パルス信号の数との合計数が、マスター通信部15−1に対応する区域に設置されている起動装置4の数と一致するか否かを判定する。
【0060】
制御部11は、マスター通信部15−1が自動表示情報を送信してから所定の時間以内に受信した、マスター通信部15−1に対応する区域に設置されている起動装置4から受信した応答パルス信号の数と、マスター通信部15−1が手動表示情報を送信してから所定の時間以内に受信した、マスター通信部15−1に対応する区域に設置されている起動装置4から受信した応答パルス信号の数との合計数が、起動装置4の数と一致した場合に、自動表示情報が正常に送信できたと判定する。
【0061】
制御部11は、応答パルス信号の合計数と区域に設置された起動装置4の数とが一致しない場合、自動表示情報又は手動表示情報が正常に送信されなかったと判定して、エラー処理を行う。制御部11は、エラー処理として、シリアルデータを再送してもよく、エラーが発生したことを表示部13において警告表示してもよい。このようにすることで、制御部11は、複数の通知情報が正しく送信できなかった場合に、エラーが発生したことをユーザに通知することができる。
【0062】
図5は、複数の起動装置4の設定モードが一致していない場合の制御装置1と複数の起動装置4との間の通信シーケンスを示す図である。図5は、図4に示した状態から、起動装置4−2が手動モードに切り換えられた後の状態における通信シーケンスである。
【0063】
制御装置1のマスター通信部15−1が自動表示情報を送信すると、起動装置4−1及び起動装置4−3は応答パルス信号を送信するが、起動装置4−2は、応答パルス信号を送信しない。続いて、制御装置1のマスター通信部15−1が手動表示情報を送信すると、起動装置4−1及び起動装置4−3は応答パルス信号を送信せず、起動装置4−2は、応答パルス信号を送信する。
【0064】
制御部11は、複数の異なる設定モードに対応する複数の第一種通知情報のそれぞれに対して、複数の起動装置4から応答パルス信号を受信した場合に、複数の起動装置4が異なる設定モードに設定されており、設定モードが統一されていないと判定する。図5に示す例の場合、制御部11は、自動表示情報及び手動表示情報の両方に対して応答パルス信号を受信したことから、複数の起動装置4の設定モードが統一されていないと判定する。そして、制御部11は、直前に複数の起動装置4の設定モードが一致していた状態における設定モードと異なる設定モードが最新の設定モードであると判定する。図5の例において、制御部11は、自動モードから手動モードに切り換えられたと判定する。
【0065】
制御部11は、複数の起動装置4の設定モードが統一されていないと判定した場合、複数の起動装置4の設定モードを複数の設定モードのいずれか一つに設定されるための第一種通知情報を複数の起動装置4に送信する。例えば、制御部11は、全ての起動装置4を最新の設定モードにするべく、自動切換情報又は手動切換情報を複数の起動装置4に送信する。図5の例において、制御部11は、手動切換情報を送信する。起動装置4−1及び起動装置4−3は、手動切換情報を受信すると、自動モードから手動モードに切り換える。これにより、全ての起動装置4が手動モードに設定された状態になる。なお、制御部11は、複数の起動装置4の設定モードが統一されていないと判定した場合、制御装置1又は起動装置4に警告表示をさせるようにしてもよい。
【0066】
また、制御部11は、操作部12において入力された設定モードが全ての起動装置4の設定モードと異なっている場合、操作部12において入力された設定モードに対応する切換情報を送信する。例えば、制御部11は、全ての起動装置4の設定モードが自動モードである状態で、操作部12において手動モードに切り換える操作が行われると、全ての起動装置4に対して手動切換情報を送信する。
【0067】
以上のように、制御装置1は、全ての起動装置4の設定モードを確認するための自動表示情報及び手動表示情報を送信し、自動表示情報及び手動表示情報のどれに対して応答パルス信号を受信したかに基づいて、全ての起動装置4の設定モードの状態を特定する。そして、制御装置1は、全ての起動装置4の設定モードが同一でない場合、自動切換情報又は手動切換情報を送信することで、制御装置1及び全ての起動装置4の設定モードを同じ状態にすることができる。
【0068】
[本実施形態のガス消火システム100による効果]
以上説明したように、ガス消火システム100におけるマスター通信部15は、複数の起動装置4それぞれのアドレスを含まない各種の情報を含むシリアルデータを、一つの通信線を介して複数の起動装置4に送信する。そして、複数の起動装置4のそれぞれは、データパケットを受信したことに応じて、応答パルス信号を制御装置1に送信する。このようにすることで、制御装置1と複数の起動装置4との間の信号線の本数を削減した場合であっても、起動装置4にアドレスを設定する必要がないので、作業の簡易化、効率化が図れ、更に起動装置4へのアドレス設定ミスに伴うエラーが発生しないという効果を奏する。
【0069】
(変形例)
以上の説明においては、制御装置1が通信線によりデータパケットを送信した場合、制御装置1は、一つの区域に設置されている起動装置4の数に相当する数の応答パルス信号を受信したことにより、データパケットが正常に送信されたと判定した。しかし、制御装置1は、少なくとも一つの応答パルス信号を受信したことにより、データパケットが正常に送信されたと判定してもよい。
【0070】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【0071】
例えば、上記の説明においては、第二種通知情報が、起動装置4から制御装置1に通知される例を示したが、制御装置1が信号線の電圧を変化させることにより、第二種通知情報を起動装置4に通知してもよい。また、以上の説明においては、消火剤としてガスを用いるガス消火システム100を例示したが、本発明は、ガス以外の消火剤を用いる消火システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 制御装置
2 火災感知器
3 終端回路
4 起動装置
5 ガス放出装置
11 制御部
12 操作部
13 表示部
14 地区回路
15 マスター通信部
16 放出回路
41 制御部
42 操作部
43 表示部
44 スレーブ通信部
100 ガス消火システム
図1
図2
図3
図4
図5