(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-164726(P2018-164726A)
(43)【公開日】2018年10月25日
(54)【発明の名称】骨盤臓器脱の予防器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20180928BHJP
A61B 17/42 20060101ALI20180928BHJP
A61F 5/24 20060101ALN20180928BHJP
【FI】
A61B17/00 600
A61B17/42
A61F5/24
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-233450(P2017-233450)
(22)【出願日】2017年12月5日
(31)【優先権主張番号】特願2017-62730(P2017-62730)
(32)【優先日】2017年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】517109074
【氏名又は名称】クスヤマ合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089026
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高明
(74)【代理人】
【識別番号】100091580
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 雅文
(72)【発明者】
【氏名】楠山 弘之
【テーマコード(参考)】
4C098
4C160
【Fターム(参考)】
4C098AA02
4C098BB17
4C098BC01
4C098BC33
4C160DD70
4C160HH20
(57)【要約】
【課題】患者自身により容易に着脱が可能あり更に腹圧性尿失禁を予防することができる骨盤臓器脱の予防器具を提供する。
【解決手段】縮小した状態で膣内に挿入され、膣内に配置された状態で膣内に固定可能な所定形状に保持され、骨盤臓器の脱落を防止する器具である。シリコーン樹脂の薄肉材料で構成され、封入された空気により所定形状が保持される袋構造を備える器具本体と、器具本体に配置され空気を送入、排出できるバルブ部とを備える。器具本体は、挿入方向の奥側に配置される奥側膨出部、挿入方向手前側に配置される手前側膨出部、奥側膨出部及び手前側膨出部の間に形成され手前側に窄まる円錐面部、及び、手前側膨出部と円錐面部の手前側端部との間に形成される段部を備え、手前側膨出部には、複数の凹部が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮小した状態で膣内に挿入され、前記膣内に配置された状態で前記膣内に固定可能な所定形状に保持され、骨盤臓器の脱落を防止する器具であって、
柔軟な薄肉材料で構成され、封入された流体により前記所定形状が保持される袋構造を備える器具本体と、
前記器具本体に配置され前記器具本体内に前記流体を送入でき、前記器具本体内から前記流体を排出できるバルブ部と、
を備えることを特徴とする骨盤臓器脱の予防器具。
【請求項2】
前記器具本体は、挿入方向の奥側に配置される奥側膨出部、挿入方向手前側に配置される手前側膨出部、前記奥側膨出部及び前記手前側膨出部の間に形成され手前側に窄まる円錐面部、及び、前記手前側膨出部と前記円錐面部の手前側端部との間に形成される段部、を備えることを特徴とする請求項1に記載の骨盤臓器脱の予防器具。
【請求項3】
前記手前側膨出部には、外周から内側に向けて形成される凹部が設けられることを特徴とする請求項2に記載の骨盤臓器脱の予防器具。
【請求項4】
前記器具本体の奥側端面と手前側端面とを貫通する孔部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の骨盤臓器脱の予防器具。
【請求項5】
前記器具本体は、挿入方向手前側から奥側に延びる内側筒部及び外側筒部を手前側端部及び奥側端部で接合した構造を備え、
前記器具本体を構成する前記外側筒部の手前側外周及び奥側外周には、全周にわたって環状部材が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の骨盤臓器脱の予防器具。
【請求項6】
前記環状部材は、前記器具本体が縮小した状態で蛇行状態となることを特徴とする請求項5に記載の骨盤臓器脱の予防器具。
【請求項7】
前記器具本体は、シリコーン樹脂及びラテックスを含む柔軟な素材で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の骨盤臓器脱の予防器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨盤臓器脱及び腹圧性尿失禁を予防する器具に関する。
【背景技術】
【0002】
骨盤臓器脱は加齢や出産により、骨盤の底を支える筋肉や靱帯が緩み、内部の臓器である子宮、膀胱、大腸等が脱出する症状を有する疾患である。骨盤臓器脱に対しては、薬物による治療ができず、手術により修復をするか、避妊具であるリングペッサリー等の膣内装具を装着して脱を元の位置にもどすことが行われる(特許文献1参照)。
【0003】
また、骨盤臓器脱の予防のために、膣の外側にシリコーン製の器具を装着し、この器具に対応した下着を着用することもある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009―513215公報
【特許文献2】WO2010/041745公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、手術は患者の負担が大きいし、膣内装具は、数カ月に一度医療機関で入れ替える必要がある。また、外側に器具を装着するタイプのものは、下着をつけなければ使用できず、入浴時例えば温泉等の公衆浴場を利用できない。更に、このような症状が現れる患者は腹圧性尿失禁を発症することもあり、同時に腹圧性尿失禁を予防することも望まれる。
【0006】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、患者自身により容易に着脱が可能であり確実に骨盤臓器脱及び腹圧性尿失禁を予防することができる予防具を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する請求項1に記載の発明は、縮小した状態で膣内に挿入され、前記膣内に配置された状態で前記膣内に固定可能な所定形状に保持され、骨盤臓器の脱落を防止する器具であって、柔軟な薄肉材料で構成され、封入された流体により前記所定形状が保持される袋構造を備える器具本体と、前記器具本体に配置され前記器具本体内に前記流体を送入でき、前記器具本体内から前記流体を排出できるバルブ部と、を備えることを特徴とする骨盤臓器脱の予防器具である。
本発明によれば、縮小した状態で膣内に挿入した予防器具にバルブ部から流体を送入して所定形状を保持して、予防器具を膣内に固定できる。
これにより、患者自身の操作で予防器具を膣内に挿入して固定でき、骨盤臓器の膣からの脱落を予防できると共に、膀胱を保持して腹圧性尿失禁を予防できる。
【0008】
同じく請求項2に記載の発明は、前記器具本体は、挿入方向の奥側に配置される奥側膨出部、挿入方向手前側に配置される手前側膨出部、前記奥側膨出部及び前記手前側膨出部の間に形成され手前側に窄まる円錐面部、及び、前記手前側膨出部と前記円錐面部の手前側端部との間に形成される段部、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、防止器具は手前側膨出部と奥側膨出部とで膣内に確実に固定でき、傾斜部及び段部において膀胱が保持できる。
これにより、予防器具を確実に膣内に固定でき骨盤臓器の脱落を防止できると共に、腹圧性尿失禁を予防することができる。
【0009】
同じく請求項3に記載の発明は、前記手前側膨出部には、外周から内側に向けて形成される凹部が設けられることを特徴とする。
本発明によれば、予防具を膣内に固定した状態において、尿道を凹部に配置して状態にできる。
これにより、膣内に挿入した予防器具により排尿が阻害されることがない。
【0010】
同じく請求項4に記載の発明は、前記器具本体の奥側端面と手前側端面とを貫通する孔部が形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、孔部から膣内の分泌物が排出可能である。
これにより、膣内に分泌物が蓄留するのを防止できる。
【0011】
同じく請求項5に記載の発明は、前記器具本体は、挿入方向手前側から奥側に延びる内側筒部及び外側筒部を手前側端部及び奥側端部で接合した構造を備え、前記器具本体を構成する前記外側筒部の手前側外周及び奥側外周には、全周にわたって環状部材が配置されていることを特徴とする。
本発明によれば、前記器具本体は、挿入方向手前側から奥側に延びる内側筒部及び外側筒部を手前側端部及び奥側端部で接合した構造を備え、外側筒部の手前側外周及び奥側外周には、全周にわたって環状部材が配置されている。
これにより、内側筒部と外側筒部との間に流体を送入して器具本体の直径を縮小した長体で膣内に配置し拡径して膣内に固定でき、更に環状部材により膣からの脱落を防止することができる。
【0012】
同じく請求項6に記載の発明は、前記環状部材は、前記器具本体が縮小した状態で蛇行状態となることを特徴とする。
本発明によれば、前記環状部材は、前記器具本体が縮小した状態で蛇行状態とされている。
このため、器具本体が拡開した状態で管状部材が延びることで器具本体の拡径と共に拡径して器具本体の周囲に配置された状態にとどまり、器具本体が膣から脱落するのを防止することができる。
【0013】
同じく請求項7に記載の発明は、前記器具本体は、シリコーン樹脂及びラテックスを含む柔軟な素材で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の骨盤臓器脱の予防器具。
本発明によれば、器具本体はシリコーン樹脂及びラテックスを含む柔軟な素材で形成されている。
このため、予防器具を柔軟で変形容易、丈夫、かつ人体に影響を与えることがない安全なものとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る骨盤臓器脱の予防器具によれば、膣に縮小した状態で挿入し、流体を封入して所定の形状を保持して膣内に固定し骨盤臓器の逸脱や腹圧性尿失禁を予防することができ、予防器具の着脱は自己により簡単に行え、しかも予防器具を装着した状態では予防器具は外部に露出等しないので公衆浴場等においても使用可能である。
【0015】
即ち、請求項1に記載の骨盤臓器脱の予防器具によれば、縮小した状態で膣内に挿入した予防器具にバルブ部から流体を送入して所定の形状とし、予防器具を膣内に簡単に固定でき、これにより、骨盤臓器の膣からの逸脱を予防できると共に、膀胱を段部で保持することができ腹圧性尿失禁を予防することができる。
【0016】
また、請求項2に記載の骨盤臓器脱の予防器具によれば、防止器具は手前側膨出部と奥側膨出部とで膣内に確実に固定でき、傾斜部及び段部において膀胱が保持でき、予防器具を確実に膣内に固定でき骨盤臓器の脱落を防止できると共に、腹圧性尿失禁を予防することができる。
【0017】
また、請求項3に記載の骨盤臓器脱の予防器具によれば、予防具を膣内に固定した状態において、尿道を手前側膨出部に形成した凹部に配置した状態にでき、膣内に挿入した予防器具により排尿が阻害されることがない。
【0018】
更に請求項4に記載の骨盤臓器脱の予防器具によれば、器具本体の孔部から膣内の分泌物が排出可能であり、膣内に分泌物が蓄留することを防止できる。
【0019】
また、請求項5に記載の骨盤臓器脱の予防器具によれば、前記器具本体は、挿入方向手前側から奥側に延びる内側筒部及び外側筒部を手前側端部及び奥側端部で接合した構造を備え、外側筒部の手前側外周及び奥側外周には、全周にわたって環状部材が配置されているので、内側筒部と外側筒部との間に流体を送入して器具本体の直径を縮小した長体で膣内に配置し拡径して膣内に固定でき、更に環状部材により膣からの脱落を防止することができる。
【0020】
また、請求項6に記載の骨盤臓器脱の予防器具によれば、前記環状部材は、前記器具本体が縮小した状態で蛇行状態とされているので、器具本体が拡開した状態で管状部材が延びることで器具本体の拡径と共に拡径し器具本体の周囲に配置された状態にとどまり、器具本体が膣から脱落するのを防止することができる。
【0021】
そして、請求項7に記載の骨盤臓器脱の予防器具によれば、器具本体はシリコーン樹脂及びラテックスを含む柔軟な素材で形成されているので予防器具を柔軟で変形容易、丈夫、かつ人体に影響を与えることがない安全なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る骨盤臓器脱の予防器具を示すものであり、(a)は一部を切り欠いて示した予防器具の正面図、(b)は予防器具の平面図、(c)は予防器具の底面図である。
【
図2】同骨盤臓器脱の予防器具の装着状態を示す人体の断面模式図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る骨盤臓器脱の予防器具を示す底面図である。
【
図4】本発明の第3実施形態に係る骨盤臓器の予防器具を示すものであり、(a)は縮小状態の骨盤臓器脱の予防器具を示す平面図、(b)は使用状態の骨盤臓器脱の予防器具を示す平面図である。
【
図5】本発明の第3実施形態に係る骨盤臓器の予防器具を示すものであり、(a)は縮小状態から拡開した状態の骨盤臓器脱の予防器具を示す斜視図、(b)は縮小状態から拡開した状態の骨盤臓器脱の予防器具を示す端面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る骨盤臓器の予防器具を示すものであり、(a)は縮小状態の骨盤臓器脱の予防器具を示す斜視図、(b)は縮小状態の骨盤臓器脱の予防器具を示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
本発明を実施するための形態に係る骨盤臓器脱の予防器具について説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る骨盤臓器脱の予防器具を示すものであり、(a)は一部を切り欠いて示した予防器具の正面図、(b)は予防器具の平面図、(c)は予防器具の底面図、
図2は同骨盤臓器脱の予防器具の装着状態を示す人体の断面模式図である。
【0024】
本実施形態に係る骨盤臓器脱の予防器具10は、
図2に示すように、縮小した状態で膣41内に挿入して内部で膣内に固定可能な所定の形状に保持する。これにより、膣41内に予防器具10を固定して子宮42、膀胱43、直腸44等の骨盤臓器が脱落するのを防止すると共に、腹圧性尿失禁を防止する。
【0025】
図1に示すように、予防器具10は、中空の器具本体11と、この器具本体11に取付けられたバルブ部20とから構成されている。器具本体11は、薄肉材料、例えば厚さが1mm〜1.5mmのシリコーン樹脂製の柔軟な薄膜素材で構成される。また、器具本体11は、流体、本例では封入された空気により予防器具10を膣41内に固定できる形状を保持できる袋構造を備える。
【0026】
バルブ部20は器具本体11に流体、本例では空気を器具本体11内に送入でき、器具本体11内から前記流体を排出できるものであり、逆止弁を備える。空気の送入はゴム球等の空気圧送手段で行うことができる。また、空気の排出はバルブ部から空気圧送手段を取り外した状態で、バルブ部20の逆止弁を解除すること、例えばバルブ部20の先端をつまむことにより行う。なお、バルブ部20は、開閉弁を備える等、他の構成を備えるものであってもよい。
【0027】
器具本体11は、シリコーン樹脂を型成形して形成される。器具本体11は、
図1(a)に示すように、挿入方向の奥側に配置される奥側膨出部13と、挿入方向手前側に配置される手前側膨出部14と、奥側膨出部13及び手前側膨出部14の間に形成され手前側に窄まる壁面15を備える円錐面部12を有する。手前側膨出部14と円錐面部12の手前側端部との間には段部17が形成される。バルブ部20は、手前側膨出部14の手前側に形成される手前側端面14aに配置されている。
【0028】
予防器具10は、高さ寸法を例えば6cm、奥側膨出部13及び手前側膨出部14の直径を6cm、高さ寸法を2cm、孔部16の直径を2cmとすることができる。各寸法は適宜変更することがきる。高さ寸法や奥側膨出部13、手前側膨出部14の直径が異なる複数のもの、例えば0.5cmずつ異なる寸法のものを準備しておくと患者に適合するものを選択できる。
【0029】
空気が封入され所定の形状を保った奥側膨出部13及び手前側膨出部14が膣41に接触することにより、予防器具10を膣41内に固定する。また、予防器具10を膣41に固定した状態において、円錐面部12及び段部17には膀胱43が位置し、予防器具10による膀胱の収縮を防止する。
【0030】
また、器具本体11において、
図1(c)に示すように、手前側膨出部14には、外周から内側に向けて形成した凹部18が8箇所に形成されている。隣り合う凹部18の間には平面部19が形成されている。この凹部18は、予防器具10を膣41内に固定したとき、尿道が位置するようにして尿道が予防器具10で圧迫されるのを予防する。
【0031】
本実施形態に係る予防器具10では、器具本体11の奥側端面13aと手前側端面14aとを貫通する孔部16が形成されている。これにより、予防器具10が挿入された状態で予防器具10より奥からの分泌物を排出することができる。
【0032】
本実施形態に係る予防器具10を膣41に装着するには、
図2に示すように、予防器具10を縮小する。そして、この縮小した状態の予防器具10を膣41に挿入して所定の位置に配置する。このとき、バルブ部20を外部に露出させる。なお、予防器具10の送入には円筒状の送入補助具(アプリケータ)等を使用することができる。
【0033】
そして、挿入した予防器具10にバルブ部20からゴム球等の空気圧送手段で空気を送入して所定形状とし、この状態で空気圧送手段を取り外す。これにより、予防器具10は、膣41内に固定される。
【0034】
これにより、膣41内に予防器具10を固定保持して骨盤臓器の逸脱や腹圧性尿失禁を予防することができる。また、予防器具10の着脱は患者自己により簡単に行え、しかも予防器具を装着した状態では予防器具は外部に露出したり、下着等他の装具を使用したりする必要がない。このため、予防器具10を着装した状態で公衆浴場等を利用できる。
【0035】
<第2実施形態>
上記実施形態では、手前側膨出部14には8箇所に凹部18を形成した。本発明に係る骨盤臓器脱の予防器具にあっては手前側膨出部において凹部の数を変更したり、形状を変えたりすることができる。
図3は本発明の第3実施形態に係る骨盤臓器脱の予防器具の底面図である。
図3に示す予防器具30は、手前側膨出部34において凹部38を6箇所設けたものである。このように凹部の数を変更することや、他の部分の形状を変更することは適宜行うことができる。
【0036】
<第3実施形態>
次に本発明の第3実施形態について説明する。
図4は本発明の第3実施形態に係る骨盤臓器の予防器具を示すものであり、(a)は縮小状態の骨盤臓器脱の予防器具を示す平面図、(b)は使用状態の骨盤臓器脱の予防器具を示す平面図、
図5は本発明の第3実施形態に係る骨盤臓器の予防器具を示すものであり、(a)は縮小状態から拡開した状態の骨盤臓器脱の予防器具を示す斜視図、(b)は縮小状態から拡開した状態の骨盤臓器脱の予防器具を示す端面図、
図6は本発明の第3実施形態に係る骨盤臓器の予防器具を示すものであり、(a)は縮小状態の骨盤臓器脱の予防器具を示す斜視図、(b)は縮小状態の骨盤臓器脱の予防器具を示す端面図である。
【0037】
本実施形態に係る骨盤臓器脱の予防器具50は、器具本体51と、2つの環状部材55、55とを備える。
【0038】
器具本体51は、内側筒部52と端部鏡板部材53と外側筒部54とから構成される。器具本体51は、挿入方向手前側から奥側に延び、送入方向手前側と奥側を連通する孔部58を備えた円筒形状をなす。外側筒部54は、内側筒部52の外側に配置された円筒形状をなす薄いシート材から構成される。端部鏡板部材53は、内側筒部52と外側筒部54を挿入側手前側と同奥側で接合する環状のシート材から構成される。
【0039】
器具本体51は全体をラテックスや合成樹脂、例えばシリコーン樹脂、ポリプロピレン等で構成されている。本実施形態に係る予防器具50では、内側筒部52は、端部鏡板部材53及び外側筒部54より厚手(たとえば厚さ2mm)に構成されている。このため、内側筒部52は剛性を備え、予防器具50全体に剛性を付与し、膣41に挿入しやすい堅さを与える。
【0040】
また、端部鏡板部材53及び外側筒部54は、薄手(たとえば厚さ0.5mm〜1mm)であり、自由に湾曲や折曲が可能である。端部鏡板部材53は、内側筒部52及び外側筒部54を手前側端部及び奥側端部で接合している。そして、内側筒部52と端部鏡板部材53と外側筒部54で囲まれた領域には流体、本例では空気を封入することができる空気室57が形成される。予防器具50は、空気室57に空気を圧入することにより直径が拡大する。なお、端部鏡板部材53及び外側筒部54は柔軟であればよく、特に弾性的に伸び縮みしてもしなくてもよい。
【0041】
このような器具本体51は、奥行き方法の寸法を例えば6cm、最大直径を6cm、内側筒部52の直径を2cmとすることができる。器具本体51は、型による一体成形、各部材の貼り合せにより製造できる。なお、端部鏡板部材53、外側筒部54を形成する素材に通気性がある場合には、内面に気密性がある層、例えばアルミ層を形成する。
【0042】
本実施形態に係る予防器具50では、挿入方向手前側の端部鏡板部材53には、バルブ部56が配置されている。このバルブ部56は、器具本体51に流体、本例では空気を器具本体51内に送入でき、器具本体51内から前記流体を排出できるものであり、逆止弁を備える。空気の送入はゴム球等の空気圧送手段で行うことができる。また、空気の排出はバルブ部から空気圧送手段を取り外した状態で、バルブ部56の逆止弁を解除すること、例えばバルブ部20の先端をつまむことにより行う。なお、バルブ部56は、開閉弁を備える等、他の構成を備えるものであってもよい。
【0043】
環状部材55は、断面が円形(たとえば直径8〜10mm)の柔軟なリング状部材で構成される。環状部材55は、器具本体51と同一の素材又は異なる素材、即ちラテックスやシリコーン樹脂等で形成される。環状部材55は、外側筒部54の手前側外周及び奥側外周の端部の全周に配置され、器具本体51の縮小時(
図4(a)、(c))には、前後方向(
図4(a)中の上下方向)大きく蛇行状態であり、
図5(a)及び
図6(a)に示すように小さい直径内に収まる。一方、器具本体51の空気室57に空気を送入した拡開時(
図4(b)、(d))には、
図5(b)及び
図6(b)に示すように器具本体51の拡開と共に拡径し前後方向の蛇行が小さくなる。これにより、予防器具50が全体的に拡経され、予防器具50が膣41内から離脱するのを防止する。なお、端部鏡板部材53、外側筒部54は環状部材55の変形と共に変形していく。
【0044】
本実施形態に係る予防器具50の装着時において、予防器具50より奥からの分泌物を孔部58から排出することができる。
【0045】
本実施形態に係る予防器具50を膣41に装着するには、
図4(a)、(c)、
図5(a)、
図6(a)に示すように予防器具50を縮小する。そして、この縮小した状態の予防器具50を膣41に挿入して所定の位置に配置する。このとき、バルブ部56を外部に露出させる。なお、予防器具50の送入には円筒状の送入補助具(アプリケータ)等を使用することができる。
【0046】
そして、挿入した予防器具50にバルブ部56からゴム球等の空気圧送手段で空気を送入して所定形状とし、この状態で空気圧送手段を取り外す。これにより、予防器具50は、膣41内に固定される。
【0047】
これにより、膣41内に予防器具50を固定保持して骨盤臓器の逸脱や腹圧性尿失禁を予防することができる。また、予防器具50の着脱は患者自己により簡単に行え、しかも予防器具を装着した状態では予防器具は外部に露出したり、下着等他の装具を使用したりする必要がない。このため、予防器具50を着装した状態で公衆浴場等を利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明に係る骨盤臓器脱の予防器具は、膣に縮小した状態で挿入し、流体を封入し所定形状を保持して膣内に固定し骨盤臓器の逸脱や腹圧性尿失禁を予防することができ、予防器具の着脱は自己により簡単に行え、しかも予防器具を装着した状態では予防器具は外部に露出等しないので公衆浴場等においても使用可能であり、産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0049】
5:外側筒部
10:予防器具
11:器具本体
12:円錐面部
13:奥側膨出部
13a:奥側端面
14:手前側膨出部
14a:手前側端面
15:壁面
16:孔部
17:段部
18:凹部
19:平面部
20:バルブ部
30:予防器具
34:手前側膨出部
38:凹部
41:膣
42:子宮
43:膀胱
44:直腸
50:予防器具
51:器具本体
52:内側筒部
53:端部鏡板部材
54:外側筒部
55:環状部材
56:バルブ部
57:空気室
58:孔部