(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-164864(P2018-164864A)
(43)【公開日】2018年10月25日
(54)【発明の名称】懸濁液の濃縮システム
(51)【国際特許分類】
B01D 61/18 20060101AFI20180928BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20180928BHJP
C12M 1/12 20060101ALI20180928BHJP
C07K 1/34 20060101ALI20180928BHJP
【FI】
B01D61/18
B01D61/14 500
C12M1/12
C07K1/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-62100(P2017-62100)
(22)【出願日】2017年3月28日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売した日: 平成29年 1月25日 販売した場所: 神奈川県川崎市殿町3丁目25番22号 公開者: 家田貿易株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517108170
【氏名又は名称】家田貿易株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】児玉 晃典
(72)【発明者】
【氏名】川田 信之
【テーマコード(参考)】
4B029
4D006
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029AA02
4B029AA08
4B029AA09
4B029BB01
4B029BB11
4B029CC01
4B029CC02
4B029CC08
4B029CC10
4B029CC11
4B029DG08
4D006GA06
4D006GA07
4D006HA01
4D006HA41
4D006JA53A
4D006JA57A
4D006JA67A
4D006KA52
4D006KA53
4D006KA54
4D006KA56
4D006KA63
4D006KA67
4D006KE02P
4D006KE06P
4D006KE23Q
4D006KE30P
4D006MA01
4D006MA03
4D006PA02
4D006PB15
4D006PB52
4D006PB70
4H045AA40
4H045BA10
4H045GA10
(57)【要約】
【課題】処理能力を向上させた懸濁液の濃縮システムを提供すること。
【解決手段】懸濁液の濃縮システム1は、中空糸膜モジュール4,5で懸濁液から濾液を分離するものであって、懸濁液を貯留する容器2と、容器2から流出した懸濁液を中空糸膜モジュール4,5に流入させる第1経路3と、中空糸膜モジュール4,5から流出した懸濁液を容器2に流入させる第2経路6と、第1経路3上に設けられ、懸濁液に動力を付与する第1ポンプ7と、第1経路3における第1ポンプ7の下流で分流した懸濁液を容器2に流入させる第3経路8と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過膜モジュールを用いて懸濁液から濾液を分離する懸濁液の濃縮システムであって、
懸濁液を貯留する容器と、
前記容器から流出した懸濁液を前記濾過膜モジュールに流入させる第1経路と、
前記濾過膜モジュールから流出した懸濁液を前記容器に流入させる第2経路と、
前記第1経路上に設けられ、懸濁液に動力を付与するポンプと、
前記第1経路における前記ポンプの下流側で分流した懸濁液を前記容器に流入させる第3経路と、を備える懸濁液の濃縮システム。
【請求項2】
前記容器は、
該容器の下面における略中央に設けられ、前記第1経路に懸濁液を流出させる流出口と、
該容器の下面における前記流出口の周囲に水平方向外側に向けて設けられ、前記第3経路から懸濁液を流入させる複数の流入口と、を有する請求項1に記載の懸濁液の濃縮システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸濁液の濃縮システムに関する。より具体的には、微生物細胞や動物細胞等を培養した懸濁液の濃縮に好適な懸濁液の濃縮システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微生物細胞や動物細胞等を培養した懸濁液の濃縮には、タンジェンシャルフロー・フィルトレーション(TFF)の技術が利用されている。TFFは、懸濁液の流れを透過膜と平行にする技術であり、透過膜の目詰まりを最小限に抑えて透過膜による高い濾過速度を可能にする。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、懸濁液を貯留した容器とTFFの技術を利用した中空糸膜モジュールとの間で懸濁液を循環させることで、中空糸膜モジュールで濾液を分離して懸濁液を濃縮するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−210814号公報
【特許文献2】特開2016−116465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示されているシステムは、数リットル程度の少量の懸濁液を濃縮するものであり、処理能力に限界がある。
【0006】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、処理能力を向上させた懸濁液の濃縮システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明は、濾過膜モジュールを用いて懸濁液から濾液を分離する懸濁液の濃縮システムであって、懸濁液を貯留する容器と、前記容器から流出した懸濁液を前記濾過膜モジュールに流入させる第1経路と、前記濾過膜モジュールから流出した懸濁液を前記容器に流入させる第2経路と、前記第1経路上に設けられ、懸濁液に動力を付与するポンプと、前記第1経路における前記ポンプの下流側で分流した懸濁液を前記容器に流入させる第3経路と、を備える懸濁液の濃縮システムに関する。
【0008】
また、前記容器は、該容器の下面における略中央に設けられ、前記第1経路に懸濁液を流出させる流出口と、該容器の下面における前記流出口の周囲に水平方向外側に向けて設けられ、前記第3経路から懸濁液を流入させる複数の流入口と、を有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、処理能力を向上させた懸濁液の濃縮システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る懸濁液の濃縮システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、
図1及び
図2により、本発明の実施形態に係る懸濁液の濃縮システム1の構成について説明する。
図1は、懸濁液の濃縮システム1の概略図である。
図2は、容器2の底面を示す平面図である。
【0012】
図1に示す懸濁液の濃縮システム1は、動物細胞等の細胞を培養した懸濁液等の濃縮に利用される。具体的に、懸濁液の濃縮システム1は、容器2と、第1経路3と、濾過膜モジュールとしての中空糸膜モジュール4,5と、第2経路6と、第1ポンプ(ポンプ)7と、第3経路8と、第4経路9と、第2ポンプ10と、圧力計11,12,13,14と、流量計15と、重量計16と、GOT(Graphic Operation Terminal)パネル17と、制御装置(図示せず)を備えている。
【0013】
容器2は、懸濁液を貯留する。容器2の容積は、懸濁液の処理量等に応じて決定されるものであり、例えば数十リットルから数千リットル程度である。この容器2には、第1経路3の上流端、第2経路6の下流端、第3経路8の下流端、及び第4経路9の下流端が接続されている。
【0014】
図2に示すように、容器2の下面は、流出口20と、複数の流入口21と、を有している。流出口20は、容器2の下面における略中央に設けられ、この流出口20には、第1経路3(
図1参照)の上流端が接続されている。流出口20は、容器2に貯留されている懸濁液を第1経路3に流出させる。複数の流入口21は、容器2の下面における流出口20の周囲に水平方向外側に向けて設けられ、これら複数の流入口21には、第1経路3(
図1参照)の下流端が接続されている。これら複数の流入口21は、第1経路3から容器2に懸濁液を流入させる。
【0015】
図1に戻って説明する。第1経路3は、上流端が容器2の下面に接続されていると共に、途中の分岐点で二つに分岐して、二つの下流端のそれぞれが中空糸膜モジュール4,5の上流端に接続されている。この第1経路3は、容器2から流出した懸濁液を流通させて中空糸膜モジュール4,5に流入させる。また、第1経路3の二つに分岐する分岐点よりも上流側には、第1ポンプ7が設けられていると共に第1ポンプ7の下流側に第3経路8の上流端が接続されている。
【0016】
中空糸膜モジュール4,5は、鉛直方向に立てた状態で並列に設けられている。中空糸膜モジュール4,5の上流端には第1経路3の下流端が接続され、中空糸膜モジュール4,5の下流端には第2経路6の上流端が接続されている。中空糸膜モジュール4,5は、第1経路3から流入した懸濁液から濾液を分離し、濾液を分離した後の懸濁液を第2経路6に流出させる。中空糸膜モジュール4,5で懸濁液から分離した濾液は、排出経路EXから排出される。排出経路EXから排出される濾液は、濾液収容バッグ等に収容され、利用又は廃棄される。
【0017】
第2経路6は、二つの上流端のそれぞれが中空糸膜モジュール4,5の下流端に接続されていると共に、途中の合流点で一つに合流して、一つの下流端が容器2の天面に接続されている。この第2経路6は、中空糸膜モジュール4,5から流出した懸濁液を流通させて容器2に流入させる。
【0018】
第1ポンプ7は、第1経路3上における途中の分岐点よりも上流側に設けられ、第1経路3、及び第1経路3から分岐する第3経路8を流通する懸濁液に動力を付与する。この第1ポンプ7には、密閉性を保つためにダイヤフラムポンプ等を用いることができる。第1ポンプ7の能力は、懸濁液の処理量等に応じて決定されるものであり、例えば毎分数十リットルから毎分百リットル程度である。
【0019】
第3経路8は、上流端が第1経路3における第1ポンプ7の下流側に接続されていると共に、下流端が容器2の下面に接続されている分岐経路である。この第3経路8は、第1経路3における第1ポンプ7の下流側で分流した懸濁液を流通させて容器2に流入させる。
【0020】
第4経路9は、上流端がバッファの供給口BUに接続されていると共に、下流端が容器2の天面に接続されている。この第4経路9は、供給口BUから供給されたバッファを流通させて容器2に流入させる。また、第4経路9の途中には、第2ポンプ10が設けられている。
【0021】
第2ポンプ10は、第4経路9上に設けられ、第4経路9を通流するバッファに動力を付与する。この第2ポンプ10としては、密閉性を保つためにダイヤフラムポンプ等を用いることができる。第2ポンプ10の能力は、懸濁液の処理量等に応じて決定されるものであり、例えば毎分数リットル程度である。
【0022】
圧力計11〜14は、第1経路3における中空糸膜モジュール4,5の上流側、及び第2経路6における中空糸膜モジュール4,5下流側にそれぞれ設けられている。これらの圧力計11〜14は、第1経路3及び第2経路6を流通する懸濁液の圧力を検知して、検知結果を信号にして制御装置に向けて送信する。
【0023】
流量計15は、第1経路3における途中の分岐点よりも上流側で、かつ第3経路8の上流端が接続されている点よりも下流側に設けられている。この流量計15は、第1経路3を流通する懸濁液の流量を検知して、検知結果を信号にして制御装置に向けて送信する。
【0024】
重量計16は、容器2の下方に設けられている。この重量計16は、容器2に貯留されている懸濁液の重量を検知して、検知結果を信号にして制御装置に向けて送信する。
【0025】
図示しない制御装置は、所要のソフトウエアがインストールされたものであり、懸濁液の濃縮システム1の全体を制御する。この制御装置は、圧力計11〜14及び流量計15が送信した信号に基づいて第1ポンプ7の動作を決定し、決定した動作を信号にして第1ポンプ7に向けて送信することで、第1ポンプ7の動作を制御する。また、制御装置は、重量計16が送信した信号に基づいて第2ポンプ10の動作を決定し、決定した動作を信号にして第2ポンプ10に向けて送信することで、第2ポンプ10の動作を制御する。
【0026】
GOTパネル17は、懸濁液の濃縮システム1の動作状況を表示する。具体的には、GOTパネル17は、圧力計11〜14により検知される圧力値、第1ポンプ7、第2ポンプ10の出力、流量計15により検知される流量値、及び重量計16により検知される重量等を表示する。
【0027】
次に、図面を参照して、懸濁液の濃縮システム1の動作について説明する。
図1に示す懸濁液の濃縮システム1は、第1ポンプ7の動作により、容器2に貯留されていた懸濁液は、第1経路3を流通すると共に、一部は第1経路3から分岐した第3経路8を流通する。第1経路3を流通した懸濁液は、中空糸膜モジュール4,5で濾液が分離されてから第2経路6を流通して容器2に戻され、第3経路8を流通した懸濁液は、そのまま容器2に戻される。
容器2から流出されて第1経路側(中空糸膜モジュール4,5側)に供給される懸濁液の量と、第3経路8を通じて容器2に循環させる懸濁液の量との割合は、例えば、第1経路3にオリフィス等の流量調整部材を配置することで、適宜設定できる。また、第1経路3に開度調整可能な流量調整弁を配置し、この流量調整弁の開度を調整することにより容器2から流出されて第1経路側(中空糸膜モジュール4,5側)に供給される懸濁液の量と、第3経路8を通じて容器2に循環させる懸濁液の量との割合を調整することもできる。
【0028】
中空糸膜モジュール4,5で分離された濾液が排出経路EXから排出されるので、容器2が貯留する懸濁液の量は次第に減少する。容器2に貯留されている懸濁液の量が所定量(例えば、当初の半分の量)まで減少したことを、重量計16が検知したことを契機に、第2ポンプ10を動作させて容器2にバッファを供給する。懸濁液の濃縮システム1では、濾液の排出とバッファの供給とを繰り返すことで、懸濁液を濃縮して精製する。
【0029】
次に、図面を参照して、容器2内の懸濁液の流れについて説明する。
図1及び
図2に示すように、容器2に貯留されている懸濁液は、容器2の下面における略中央に設けられている流出口20から第1経路3に流出する。また、第3経路8を流通した懸濁液は、容器2の下面における流出口20の周囲に水平方向外側に向けて設けられている複数の流入口21から容器2内に、水平方向外側に向けた放射状に流入する。
【0030】
これにより、容器2内における外側では懸濁液の上昇流が生じ、容器2における中央側では懸濁液の下降流が生じる。このような容器2内の懸濁液の流れによって、容器2内に留まっていた懸濁液と、中空糸膜モジュール4,5で濾液が分離された後の懸濁液と、が撹拌(混合)される。
【0031】
本実施形態によれば、第1ポンプ7により容器2に貯留され流出口20から流出させた懸濁液を、一部を第3経路8を通じて容器2の下面側から容器2に循環させると共に、その他を第1経路3に分岐させて中空糸膜モジュール4,5に供給して濾過した後、容器2に回収させられる。これにより、一台のポンプ(第1ポンプ7)により、中空糸膜モジュール4,5に懸濁液を供給できると共に、容器2に貯留された懸濁液を撹拌できる。よって、中空糸膜モジュール4,5で濾液の分離を行うことで懸濁液中の液性成分が減少した場合に容器2にバッファを供給しても、容器2においてバッファと懸濁液とを好適に撹拌させられるので、バッファを供給しながら数十リットルから数千リットルといった大量の懸濁液を好適に濃縮することができる。即ち、懸濁液の濃縮システムの処理能力を、従来と比較して向上させることができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0033】
例えば、本実施形態では、二本の中空糸膜モジュール4,5を並列に設けているが、これに限定されず、懸濁液の処理量等に応じて、一本の中空糸膜モジュールのみを設けたり、三本以上の中空糸膜モジュールを並列に設けたり、あるいは、複数本の中空糸モジュールを直列に設けたりしてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、濾過膜モジュールとして中空糸膜モジュール4,5を用いたが、これに限らない。即ち、濾過膜モジュールとして平膜モジュールを用いてもよい。
【0035】
また、本実施形態では、本発明を、動物細胞を培養した懸濁液の濃縮に用いたが、これに限らない。即ち、本発明を、微生物細胞を培養した懸濁液の濃縮に用いてもよく、タンパク質を含む懸濁液の濃縮精製に用いてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 懸濁液の濃縮システム
2 容器
3 第1経路
4,5 中空糸膜モジュール(濾過膜モジュール)
6 第2経路
7 第1ポンプ(ポンプ)
8 第3経路
20 流出口
21 流入口