特開2018-164958(P2018-164958A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-164958(P2018-164958A)
(43)【公開日】2018年10月25日
(54)【発明の名称】柔軟シート展開装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20180928BHJP
   B65H 47/00 20060101ALI20180928BHJP
   B25J 15/08 20060101ALN20180928BHJP
【FI】
   B25J13/00 Z
   B65H47/00 Z
   B25J15/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-62278(P2017-62278)
(22)【出願日】2017年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155491
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 雅元
(72)【発明者】
【氏名】樋川 英昭
(72)【発明者】
【氏名】横田 博
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707DS01
3C707ES02
3C707ES07
3C707ET08
3C707EV08
3C707KS03
3C707KV11
3C707LV02
3C707LV05
3C707LV06
3C707LV10
3C707NS10
(57)【要約】
【課題】汎用性の高い柔軟シート展開装置を提供する。
【解決手段】柔軟シートSを把持する第1ハンドH1と、柔軟シートSを把持する第2ハンドH2と、第1ハンドH1を移動させる移動手段(第1ロボット10)とを有する柔軟シート展開装置1。展開装置1は、第1ハンドH1と第2ハンドH2とで柔軟シートSを把持した状態で、第1ハンドH1を第2ハンドH2から離間するように移動させて柔軟シートSを引っ張り、展開する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟シートを把持する第1ハンドと、
前記柔軟シートを把持する第2ハンドと、
前記第1ハンドと前記第2ハンドとを相対的に離間させる離間手段とを有し、
前記第2ハンドは前記柔軟シートを挟持する一対の挟持体を備え、
前記一対の挟持体に挟持された前記柔軟シートに与える外力の向きに応じて、前記柔軟シートの挟持部分に反作用として働く抵抗力が異方性を示し、
前記第1ハンドと前記第2ハンドとを相対的に離間させたとき、前記柔軟シートの挟持部分に、前記第2ハンドから見た前記第1ハンドの相対的な移動方向に対して垂直な力が働くように構成されている、
柔軟シート展開装置。
【請求項2】
前記挟持体がピンチローラであり、
前記抵抗力の最大値を示す方向が前記移動方向に対して傾いている、
請求項1記載の柔軟シート展開装置。
【請求項3】
前記抵抗力の最大値を示す方向が、前記ピンチローラの軸と平行である、
請求項2記載の柔軟シート展開装置。
【請求項4】
前記柔軟シートの挟持部分に働く抵抗力を制御する手段を有している、
請求項1〜3いずれか記載の柔軟シート展開装置。
【請求項5】
前記抵抗力を制御する手段は、前記一対の挟持体のピンチ圧の可変である、
請求項4記載の柔軟シート展開装置。
【請求項6】
前記抵抗力を制御する手段は、前記抵抗力の最大値を示す向きの可変である、
請求項4記載の柔軟シート展開装置。
【請求項7】
前記抵抗力を制御する手段は、前記ピンチローラの回転摩擦力の可変である、
請求項4記載の柔軟シート展開装置。
【請求項8】
前記柔軟シートの位置を認識する位置認識手段を有する、
請求項4から7いずれか記載の柔軟シート展開装置。
【請求項9】
前記第1ハンドが第2ハンドである、
請求項1から8いずれか記載の柔軟シート展開装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布地や紙等の柔軟シートを展開する柔軟シート展開装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、第1クランプで布地の角部を保持させ、第1クランプに近接した位置において第2クランプで布地を保持し、第2クランプをスライドさせながら相対的に離反させて布地を展開する方法が知られている。
特許文献2には、変形性薄物の縁の厚肉部分(例えば、折り返し部分など)を2つのハンド部で把持させて、2つのハンド部をスライドさせながら相対的に離間させて変形性薄物を展開する展開装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−211523号公報
【特許文献2】特開2010−561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の展開方法は、第2クランプを布地に対してスライドさせながら移動させているため、自重によって布地が第2クランプから落ちることがあった。
特許文献2の展開装置は、変形性薄物の縁に形成された厚肉部分を2つのハンド部で把持しながらスライド展開するため、変形性薄物がハンド部から落ちることはないが、厚肉部分を有しない変形性薄物を展開することはできない。
本発明は、汎用性の高い柔軟シート展開装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の柔軟シート展開装置は、柔軟シートを把持する第1ハンドと、前記柔軟シートを把持する第2ハンドと、前記第1ハンドと前記第2ハンドとを相対的に離間させる離間手段とを有し、前記第2ハンドは前記柔軟シートを挟持する一対の挟持体を備え、前記一対の挟持体に挟持された前記柔軟シートに与える外力の向きに応じて、前記柔軟シートの挟持部分に反作用として働く抵抗力が異方性を示し、前記第1ハンドと前記第2ハンドとを相対的に離間させたとき、前記柔軟シートの挟持部分に、前記第2ハンドから見た前記第1ハンドの相対的な移動方向に対して垂直な力が働くように構成されていることを特徴としている。
ここで「前記一対の挟持体に挟持された柔軟シートに与える外力の向きに応じて、前記柔軟シートの挟持部分に反作用として働く抵抗力が異方性を示す」とは、一対の挟持体に挟持された柔軟シートに対して外力を加えたときに柔軟シートの挟持部分に反作用として働く抵抗力が、外力の方向によって異なることをいう。
ここで「前記第1ハンドと前記第2ハンドとを相対的に離間させたとき、前記柔軟シートの挟持部分に、前記第2ハンドから見た前記第1ハンドの相対的な移動方向に対して垂直な力が働く」とは、前記第1ハンドと前記第2ハンドとを相対的に離間させたとき、柔軟シートの挟持部分に働く外力と、柔軟シートの挟持部分に働く抵抗力との合力が、前記移動方向に対して垂直な成分を有していることをいう。
本発明の柔軟シート展開装置が対象とする柔軟シートとしては、布地や、フィルム、紙、シートなどのほかに、シート状の生体組織や人工皮膚などが挙げられる。また柔軟シートの形状としては、矩形、特に、長方形または正方形が好ましいが、特に限定されない。
【0006】
本発明の柔軟シート展開装置は、前記一対の挟持体に挟持された前記柔軟シートに与える外力の向きに応じて、挟持部分に反作用として働く抵抗力が異方性を示し、前記第1ハンドと前記第2ハンドとを相対的に離間させたとき、前記柔軟シートの挟持部分に、前記第2ハンドから見た前記第1ハンドの相対的な移動方向に対して垂直な力が働くように構成されているため、第1ハンドと第2ハンドとを相対的に離間させて柔軟シートを引っ張ったとき、柔軟シートを前記移動方向に対して垂直な方向に動かすことができる。
特に、柔軟シートを吊り下げて第1ハンドを水平に移動させる場合、挟持部分に働く抵抗力を柔軟シートの重力に対抗できるように所定値とすることにより、柔軟シートの挟持部分に鉛直上向き方向の力を与えることができ、柔軟シートを第2ハンドから落とすことなく展開することができる。
【0007】
本発明の柔軟シート展開装置であって、挟持体がピンチローラであり、前記抵抗力の最大値を示す方向が前記移動方向に対して傾いているものが好ましい。
ピンチローラの場合、挟持部分に反作用として働く抵抗力の最大値と最小値との差を大きくできるため、挟持部分に働く前記移動方向に対する垂直な力を大きくすることができる。
前記挟持体がピンチローラであって、前記抵抗力の最大値を示す方向が前記ピンチローラの軸と平行であるものが好ましい。
【0008】
本発明の柔軟シート展開装置であって、前記柔軟シートの挟持部分に働く抵抗力を制御する手段を備えているものが好ましい。
このように挟持部分に働く抵抗力を制御することにより、前記挟持部分に働く前記移動方向に対して垂直な力を制御することができる。
【0009】
前記挟持部分に働く抵抗力を制御する第1の手段としては、前記一対の挟持体のピンチ圧の加減制御が挙げられる。
前記挟持部分に働く抵抗力を制御する第2の手段としては、前記抵抗力の最大値を示す向きの可変制御が挙げられる。ここで抵抗力の最大値を示す向きとは、「柔軟シートを展開した仮想平面上における向き」をいう。
前記挟持部分に働く抵抗力を制御する第3の手段としては、ピンチローラの回転摩擦力の加減制御が挙げられる。
【0010】
本発明の柔軟シート展開装置であって、前記柔軟シートの挟持部分に働く抵抗力を制御する手段と、前記柔軟シートの位置を認識するセンサを有するものが好ましい。この場合、柔軟シートの位置をフィードバックしながら柔軟シートを展開することができる。
【0011】
本発明の柔軟シート展開装置であって、第1ハンドが第2ハンドであるのが好ましい。この場合、2つの第2ハンドで柔軟シートの縁部の中央近辺を挟持し、互いに離れるように2つの第2ハンドを移動させることにより、柔軟シートを落とすことなく展開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1aおよび図1bは、本発明の柔軟シート展開装置の一実施形態であって、柔軟シートの展開前の状態と展開状態を示す概略図である。
図2図2aは柔軟シートに加わる外力を示す概略図であり、図2bは柔軟シートの加わる抵抗力を示す概略図であり、図2cは柔軟シートに加わる力を示す概略図であり、図2dは柔軟シートに加わる合成力を拡大して示す概略図である。
図3図3a本発明の柔軟シート展開装置の第2の実施形態を示す概略図であり、図3bは図3aのX−X線断面図であり、図3cは第3の実施形態を示す概略図である。
図4】本発明の柔軟シート展開装置の第4の実施形態を示す概略図である。
図5】本発明の柔軟シート展開装置の第5の実施形態を示す概略図である。
図6】実施例の結果を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1の柔軟シート展開装置1は、柔軟シートSを把持する第1ハンドH1と、柔軟シートSを把持する第2ハンドH2と、第1ハンドH1を第2ハンドH2から離間させる離間手段(第1ロボット10)とを有する。
図1aは柔軟シート展開装置1の第1ハンドH1と第2ハンドH2とで柔軟シートSを把持した直後の状態を示しており、図1bは柔軟シート展開装置1の第1ハンドH1を第2ハンドH2から離間するように移動させ、柔軟シートSを展開している状態を示す。
【0014】
第1ハンドH1は、柔軟シートSを挟持する一対のフィンガH1aと、それらを直線的に平行開閉運動する第1エアチャックH1bとを備えている。しかし、一対のフィンガH1aを平行開閉運動できれば、カム機構やリンク機構を用いて円弧開閉運動させたり、平行リンク機構を用いて円弧並行開閉運動させたり、一対のアクチュエータを連動させたりするなどの従来公知の機構でよく、特にエアチャックに限定されない。また、第1ハンドH1は、柔軟シートSを把持することができれば特に限定されない。
第1ハンドH1は、第1ロボット10(マニピュレータ)のエンドエフェクタとして取り付けられている。
【0015】
第2ハンドH2は、柔軟シートSを挟持する一対のピンチローラH2aと、それらを直線的に平行開閉運動する第2エアチャックH2bとを備えている。
【0016】
ピンチローラH2aは、軸方向に延びる細長のモータ等の回転駆動源を有しないフリーローラである。つまり、一対のピンチローラH2aによって挟持される柔軟シートSの直線状の挟持部分Pは、ピンチローラH2aの軸と平行となる。ここで、柔軟シートを開いた仮想平面における軸と垂直な方向が第1方向D1となり、軸と平行な方向が第2方向D2となる。またローラの表面は平坦面となっている。平坦面とすることにより、柔軟シートを傷つけることがない。
この一対のピンチローラH2aに挟持された柔軟シートSに外力を加えたとき、柔軟シートSの直線状の挟持部分Pには、反作用として、図2bのような、ピンチローラH2aの軸と垂直な方向の抵抗力(ローラの回転摩擦力)f1と、ピンチローラH2aの軸と平行な方向の抵抗力(摩擦力)f2が働く。つまり、挟持された柔軟シートに与える外力の向きに応じて柔軟シートSの直線状の挟持部分Pに反作用として働く抵抗力が異方性を示す。詳しくは、第1方向D1の抵抗力f1(以下、第1抵抗力f1という)が最小値を示し、第2方向D2の抵抗力f2(以下、第2抵抗力f2という)が最大値を示す。つまり、抵抗力の最大値を示す方向と、抵抗力の最小値を示す方向とが垂直の関係にある。
なお、一対のピンチローラH2aは、図1に示すように、ピンチローラの軸と平行である第2方向D2が、後述する第2ハンドH2の移動方向M(図1では水平)に対して角度αで傾くように柔軟シートSを挟持する。
【0017】
第2エアチャックH2bは、第1ハンドH1の第1エアチャックH1bと実質的に同じものである。第2エアチャックH2bも、ピンチローラH2aを平行開閉運動できれば、特に限定されない。
第2ハンドH2も、第1ハンドH1と同様に、第2ロボット20(マニピュレータ)のエンドエフェクタとして取り付けられている。
【0018】
第1ハンドH1を第2ハンドH2から離間させる離間手段は、第1ハンドH1を水平に移動させる第1ロボット10である。しかし、第1ハンドH1を一方向に移動させることができれば、特に限定されない。ここでは、第1ロボット10としては、シリアルリンク構造の垂直多関節ロボットを挙げているが、水平多関節構造のパラレルリンクロボットなどの公知のロボットを用いることができる。また、ロボットを用いずに、電動式アクチュエータや油圧式アクチュエータなどのアクチュエータを用いてもよい。
【0019】
次に、柔軟シート展開装置1による柔軟シートSの展開方法の一例を示す。
第1に、図1aに示すように、第1ハンドH1で柔軟シートSのコーナー部C近辺を把持させ、第2ハンドH2で第1ハンドH1近辺の柔軟シートSの縁部Eを、第2ハンドH2のピンチローラH2aの軸(柔軟シートSの直線状の挟持部分P)が鉛直線に対して傾くようにして挟持させる。そして、その状態で柔軟シートSを吊り下げる。このとき、柔軟シートSの縁部Eが略水平となるように第1ハンドH1と第2ハンドH2とを実質的に同じ高さとする。なお、柔軟シートSは、第1ハンドH1で運んできてもよく、他のロボット等から受けてもよい。また吊り下げた状態で第1ハンドH1および/または第2ハンドH2は柔軟シートSを挟持してもよい。
【0020】
第2に、第1ハンドH1と第2ハンドH2とで柔軟シートSを把持した状態で、第1ハンドH1を第2ハンドH2から離間するように水平方向(図1のM方向)に移動させる。
【0021】
このように図1aの状態で第1ハンドH1を引っ張ると、一対のピンチローラH2aで挟持された柔軟シートSの直線状の挟持部分Pには、図2aに示すように、第1ハンドH1によって引っ張られる水平な力Fと柔軟シートSの自重Gとの合力F1がかかる。一方、柔軟シートSの直線状の挟持部分Pに合力F1が加わると、反作用として、図2bに示すように前述の第1方向の第1抵抗力f1と第2方向の第2抵抗力f2が生じる。つまり、柔軟シートSの直線状の挟持部分Pには、図2cのような力がかかる。
そのため、合力F1の第1方向成分F1aから第1抵抗力f1を差し引いた力V1と、合力F1の第2方向成分F1bから第2抵抗力f2を差し引いた力V2が残る。
ここで力V1の鉛直上向き成分V1aの方が力V2の鉛直下向き成分V2aより大きいため、柔軟シートSは上昇する。なお、図2dの合力Vは、挟持部分Pの引っ張られる方向を示している。
よって、柔軟シートSは、第1ハンドH1に引っ張られる距離に応じて上昇しながら展開される。
【0022】
このように柔軟シート展開装置1は、柔軟シートSを第2ハンドH2から落とすことなく展開することができる。また第1ロボット10および第2ロボット20を用いることにより、展開した柔軟シートSを、折り畳ませたり、所定の位置に積み重ねたり、収納させたりすることができ、柔軟シートの把持から柔軟シートを展開した後の作業を全自動で行わせる装置とすることもできる。
なお、第1ハンドH1で柔軟シートSを引っ張ることにより、柔軟シートS自体が延びたり、若干ねじれたりするため、第1ハンドH1の移動距離は柔軟シートSの挟持部分Pの移動距離より大きくなり、その方向も若干異なる。
【0023】
図1の柔軟シート展開装置1で説明したように、図2dの鉛直上向き成分V1aが鉛直下向き成分V2aより大きければ、柔軟シートSは上昇する。一方、鉛直上向き成分V1aが力V2の鉛直下向き成分V2aと同じ場合、柔軟シートSの縁部Eの高さは一定に維持され、鉛直上向き成分V1aが鉛直下向き成分V2aより小さい場合、柔軟シートSは下降する。そして、鉛直上向き成分V1aおよび鉛直下向き成分V2aは、柔軟シートSに加わる外力が一定の場合、第1抵抗力f1と第2抵抗力f2(柔軟シートSの挟持部分に働く抵抗力)に依存する。つまり、第1ハンドH1で柔軟シートSを引っ張る展開工程において、柔軟シートSにかかる抵抗力を制御することにより柔軟シートSの挟持部分にかかる鉛直方向の力を制御することができる。
よって、柔軟シートSに働く抵抗力を制御する手段を備えた柔軟シート展開装置は、柔軟シートSの位置(高さ)を制御しながら柔軟シートSを展開することができる。このような手段を備えた柔軟シート展開装置は、柔軟シートSの縁部Eの高さを一定に保ちながら柔軟シートSを展開するのに好ましく、特に、柔軟シートSの縁部Eの高さを一定に、かつ、縁部Eを水平に保ちながら柔軟シートSを展開するのに好ましい。
【0024】
図3aの柔軟シート展開装置1bは、柔軟シートの挟持部分に働く抵抗力を制御する手段と、柔軟シートの位置を認識する位置認識手段とを有し、柔軟シートSの位置(高さ)をフィードバックしながら柔軟シートSを展開するものである。詳しくは、柔軟シートSの位置認識手段(センサ30)と、柔軟シートの挟持部分に働く抵抗力を制御する手段(第2エアチャックH2b)と、制御装置50とをさらに有している。他の構成は、図1の柔軟シート展開装置1と実質的に同じであり、第1ハンドH1と、第2ハンドH2と、第1ロボット10と、第2ロボット20とを有する。
【0025】
位置認識手段は、図3bに示すように、第2ハンドH2に保持された柔軟シートSの縁部Eの位置(高さ)を検知するセンサ30である。センサとしては、例えば、光電センサ、ファイバー光電センサ、赤外線近接センサなどが用いられる。なお、位置認識手段としては、カメラなどの画像認識手段、接触センサなどの触覚認識手段を用いてもよい。
【0026】
柔軟シートの挟持部分に働く抵抗力を制御する手段は、第2ハンドH2の第2エアチャックH2bである。第2エアチャックH2bを操作することにより第2ハンドH2の一対のピンチローラH2aのピンチ圧を可変でき、結果、一対のピンチローラH2aで挟持された柔軟シートSの直線状の挟持部分Pに対するピンチローラH2aの軸と平行な第2抵抗力(摩擦力)f2を制御することができる(図2b参照)。例えば、ピンチ圧を強くすることにより第2抵抗力f2を強くすることができ、ピンチ圧を弱くすることにより第2抵抗力f2を弱くすることができる。
【0027】
制御装置50は、センサ30から柔軟シートSの縁部Eの位置情報を受信し、その位置情報に基づいて一対のピンチローラH2aによるピンチ力を算出し、それを第2エアチャックH2bに送信する。また、制御装置50は、第1ロボット10の動作も同時に制御する。
【0028】
このように柔軟シート展開装置1bは、柔軟シートSの展開工程において、位置認識手段によって柔軟シートSの位置を確認しながら、一対のピンチローラH2aのピンチ力を制御し、柔軟シートSの挟持部分に働く鉛直方向の力を制御できるため、柔軟シートSの高さを一定に保ちながら柔軟シートSを展開することができる。例えば、柔軟シートSが上昇しすぎたときは、ピンチ力を強くして抵抗力f2を強め、図2dの鉛直下向き成分V2aを小さくし、柔軟シートSを下降させことができる。一方、柔軟シートSが下降しすぎたときは、ピンチ力を弱くし抵抗力f2を弱め、図2dの鉛直下向き成分V2aを大きくし、柔軟シートSを上昇させることができる。
このように柔軟シートSの高さを一定にして展開することができるため、展開後における第1ハンドH1と第2ハンドH2の把持位置を一定にすることができる。この場合、柔軟シートSを展開した後の作業、例えば、柔軟シートの搬送、積み重ね、折り畳み、収納などが煩雑にならない。
【0029】
次に、柔軟シートの挟持部分に働く抵抗力を制御する第2の手段を説明する。
柔軟シートにかかる抵抗力を制御する第2の手段として、図3cに示すように、柔軟シートSの挟持部分に働く抵抗力の最大値を示す向き(D2)を可変させてもよい。この実施形態では、第2ハンドH2を、柔軟シートSを展開した仮想平面上で回転自在とし、第2抵抗力の向きを可変としている。例えば、第2ロボット20によって、第2ハンドH2の基部Bを中心に仮想平面上で回転させている。しかし、その方法は、特に限定されない。このように柔軟シートSの挟持部分Pに働く第1抵抗力f1および第2抵抗力f2の方向を変えることにより、柔軟シートSの挟持部分に働く鉛直方向の力を制御することができる。
【0030】
柔軟シートの挟持部分に働く抵抗力を制御する第3の手段として、第2ハンドH2の一対のピンチローラH2aの回転摩擦力を可変させてもよい。ピンチローラH2aの回転摩擦力を制御することにより、一対のピンチローラH2aで挟持された柔軟シートSの直線状の挟持部分Pに対するピンチローラH2aの軸と垂直な第1抵抗力f1を制御することができる(図2b参照)。つまり、回転摩擦力を強くすることにより、第1抵抗力f1を大きくして図2dの鉛直上向き成分V1aを大きくすることができ、回転摩擦力を弱くすることにより、第1抵抗力f1を小さくて図2dの鉛直上向き成分V1aを小さくすることができる。
【0031】
ここでは、柔軟シートの挟持部分に働く抵抗力を制御する手段を3つ挙げたが、これらに限定されない。また、柔軟シートの挟持部分に働く抵抗力を制御する手段は、これらのいずれか2つの手段を組み合わせてもよく、全ての手段を組み合わせてもよく、また、他の手段と組み合わせても良い。
【0032】
図4の柔軟シート展開装置1cは、2本の第2ハンドH2で柔軟シートSを展開するものである。詳しくは、2本の第2ハンドH2と、一方の第2ハンドH2を他方の第2ハンドH2から離間させる離間手段(第2ロボット20、20)とを有する。ここで離間手段は、それぞれの第2ハンドH2の第2ロボット20となる。そして、2本の第2ハンドH2は相対することになるため、それぞれの第2ハンドH2における離間する方向M1、2は全体から見ると逆となる。
【0033】
次に、柔軟シート展開装置1cによる柔軟シートSの展開方法の一例を示す。
第1に、一方の第2ハンドH2で柔軟シートSの縁部Eを把持させ、他方の第2ハンドH2で一報の第2ハンドH2近辺の柔軟シートSの縁部Eを挟持させる。このとき、それぞれ第2ハンドH2のピンチローラH2aの軸(柔軟シートSの直線状の挟持部分P)が鉛直線に対して傾くようにして挟持させる。なお、2本の第2ハンドH2は相対するため、その傾きも逆となる。そして、その状態で柔軟シートSを吊り下げる。このとき、柔軟シートSの縁部Eが略水平となるように両第2ハンドH2を実質的に同じ高さとする。
第2に、両第2ハンドH2で柔軟シートSを把持した状態で、両方の第2ハンドH2を、互いに離れるように水平方向(M1、M2方向)に移動させて、柔軟シートSを展開する。
【0034】
このように柔軟シート展開装置1cは、2つの第2ハンドで柔軟シートの縁部の中央近辺を挟持させ、互いに離れるように2つの第2ハンドを移動させることにより、柔軟シートを落とすことなく展開することができるため、図1の柔軟シート展開装置1のように、柔軟シートSのコーナー部Cを探索させて把持しなくてもよい。
【0035】
本発明の柔軟シート展開装置は、柔軟シートを落とすことなく展開することができる。そのため、柔軟シートを展開した後の作業を自動に行う装置と組み合わせることにより、柔軟シートの把持から柔軟シートを展開した後の作業を全自動で行わせることができる。例えば、柔軟シートの搬送、積み重ね、折り畳み、収納などを全自動で行わせることができる。
【0036】
なお、図1〜3の柔軟シート展開装置では、第2ハンドH2を固定し、第1ハンドH1を移動させていたが、第1ハンドH1を固定し、第2ハンドH2を移動させてもよい。また、すべての実施形態において、両方を同時に移動させてもよい。
これまでの全ての実施形態において、第2ハンドの一対の挟持体として、軸方向に伸びる長いピンチローラを挙げたが、ピンチローラは長くなくてもよい。また、複数のリングローラを同軸上に並べてもよい。またローラではなく、一対のロッドとしてもよい。一対のロッドとする場合、図2bの抵抗力f1は、ロッドと柔軟シートSとの摩擦力となる。さらに、挟持体は、展開する柔軟シートに応じてその表面の材質を変えたり、その表面に凹凸を設けたりして、柔軟シートに反作用として働く摩擦力を変えてもよい。
さらに、ピンチローラH2aは、図5の柔軟シート展開装置1cに示すように、ローラの表面にピンチローラの軸に対して傾いた環状の突条Tまたは螺旋条を有していてもよい。この場合、柔軟シートSの挟持部分に働く抵抗力の最大値を示す方向は、ピンチローラH2aの軸ではなく、突条の向きに対して垂直な方向となる。なお、柔軟シート展開装置1cの他の構成は、図1の柔軟シート展開装置1と実質的に同じであり、第1ハンドH1と、第2ハンドH2の第2エアチャックH2bと、第1ロボット10と、第2ロボット20とを有する。
また本発明の柔軟シート展開装置は、柔軟シートを吊り下げながら展開することに好ましく用いられるが、水平に寝かせた柔軟シートに用いてもよい。
【実施例】
【0037】
柔軟シートSを第1ハンドH1と第2ハンドH2に把持させた状態で、第1ハンドH1を第2ハンドH2から離間させるように水平に60mm移動させ、そのときの柔軟シートSの動きを測定した。第2ハンドH2のピンチローラH2aは、水平に対して65度とした。柔軟シートSとしては、紙および布を用いた。また第2ハンドH2のピンチ圧を0.05MPaおよび0.1MPaとした。
いずれの場合も、図6のように、第1ハンドH1の移動に伴い柔軟シートSは縁部Eが上昇した。それぞれの実験において、柔軟シートSの仮想回転の中心を求め、その中心の周りにどれくらい回転したかを次の表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1からもわかるように、ピンチローラH2aとの摩擦力が大きい布の方が紙より大きく回転した。さらに、ピンチ圧を上げた方が大きく回転した。つまり、ピンチローラH2aの角度およびピンチ圧に応じて柔軟シートSの高さを制御することがわかった。
この実験から柔軟シートの挟持部分の反作用として働く抵抗力、例えば、抵抗力の角度、抵抗力の大きさを適宜調整することにより、柔軟シートを2つのハンドで把持した状態のまま、シートの移動方向を重力に抗して制御しつつ展開できることがわかった。
【符号の説明】
【0040】
S 柔軟シート
P 直線状の挟持部分
C コーナー部
E 縁部
H1 第1ハンド
H1a フィンガ部
H1b 第1エアチャック
H2 第2ハンド
H2a ピンチローラ
H2b 第2エアチャック
T 突条
1、1b、1c 展開装置
10 第1ロボット
20 第2ロボット
30 センサ
50 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6