【解決手段】本発明は、作業ロボットに被せる作業ロボット用耐熱性保護カバーであって、前記作業ロボット用耐熱性保護カバー20は、耐熱性繊維を含む糸の編物で構成されており、前記編物は、JIS L1018B法(定荷重法)に準拠した荷重4.9Nにおける伸び率が、たて方向で15%以上、且つよこ方向で30%以上であり、前記耐熱性繊維は、メタ系アラミド繊維、パラ系アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維からなる群から選ばれる一種以上の繊維であることを特徴とする作業ロボット用耐熱性保護カバーに関する。
前記糸は、糸を100質量%とした場合、耐熱性繊維を50〜80質量%、難燃レーヨンを20〜50質量%含む請求項1又は2に記載の作業ロボット用耐熱性保護カバー。
前記糸は、糸を100質量%とした場合、耐熱性繊維を50〜80質量%、難燃レーヨンを19〜49.9質量%、帯電防止繊維を0.1〜1質量%含む請求項4又は5に記載の作業ロボット用耐熱性保護カバー。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、鍛造、溶接及び溶断等の作業を行う作業用ロボットに用いる作業ロボット用耐熱性保護カバー(以下において、単に「保護カバー」とも記す。)である。該作業ロボット用耐熱性保護カバーは、鍛造作業ロボットに用いる場合、鍛造における離型剤や酸化物粉末等がロボットに付着することや、関節に侵入すること等を防ぐことができる。また、該作業ロボット用耐熱性保護カバーは、溶接や溶断作用ロボットに用いる場合、ヒューム等がロボットに付着することや、関節に侵入すること等を防ぐことができる。鍛造、溶接及び溶断等の作業を行う作業用ロボットは、鍛造、溶接及び溶断等の作業において被加工物(部品)の受け渡しをするロボットでもよい。ここで作業ロボットとは、作業ロボット本体でも良いし、ロボットのアームも含む。ロボット本体とアームは共に可動する場合があり、明確に区別できない場合もあるからである。
【0010】
前記作業ロボット用耐熱性保護カバーは、耐熱性繊維を含む糸の編物で構成されており、耐熱性を有するとともに、伸縮性有することになる。
【0011】
前記編物はJIS L 1018 B法(定荷重法)に準拠した荷重4.9Nにおける伸び率が、たて方向で15%以上、且つよこ方向で30%以上である。好ましくは、前記編物はJIS L 1018 B法(定荷重法)に準拠した荷重4.9Nにおける伸び率が、たて方向で20%以上、且つよこ方向で35%以上である。このように伸縮性が大きい編物を用いることにより、作業ロボット用耐熱性保護カバーは、作業ロボットの大きな動き、例えば関節の動きに柔軟に追従することができる。また、作業ロボットに対してフィットした形状にすることができ、周辺の機材との干渉を低減することができる。
【0012】
前記耐熱性繊維として、メタ系アラミド繊維、パラ系アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維からなる群から選ばれる一種以上の繊維を用いる。好ましくは、前記耐熱性繊維は、メタ系アラミド繊維及び/又はパラ系アラミド繊維である。前記糸は、さらに難燃レーヨンを含んでもよい。適切な耐熱性を維持しつつ、コストを下げることができる。また、アラミド繊維と難燃レーヨンを併用することにより、縫製加工が容易になる。耐熱性、コスト及び加工性の観点から、前記糸は、糸を100質量%とした場合、耐熱性繊維を50〜80質量%、難燃レーヨンを20〜50質量%含むことが好ましく、耐熱性繊維を50〜70質量%、難燃レーヨンを30〜50質量%含むことがより好ましい。
【0013】
前記糸は、さらに帯電防止繊維を含むことが好ましい。これにより、編物に帯電防止性を付与することができ、作業ロボット用耐熱性保護カバーも帯電防止性を有することになる。前記糸は、糸を100質量%とした場合、帯電紡糸繊維を0.1〜1質量%含むことが好ましく、0.3〜0.7質量%含むことがより好ましい。
【0014】
耐熱性、コスト、加工性及び帯電防止性の観点から、前記糸は、糸を100質量%とした場合、耐熱性繊維を50〜80質量%、難燃レーヨンを19〜49.9質量%、帯電防止繊維を0.1〜1質量%含むことが好ましく、耐熱性繊維を50〜70質量%、難燃レーヨンを29.3〜49.7質量%、帯電防止繊維を0.3〜0.7質量%含むことがより好ましい。
【0015】
前記糸は、紡績糸であってもよく、フィラメント糸であってもよい。コストの観点から、紡績糸であることが好ましい。前記紡績糸は、均一混紡紡績糸であることが好ましい。均一混紡紡績糸とするには、常法の紡績法に従い、例えばカード工程、粗紡工程、連条工程又はそれ以前の工程で混紡して紡績糸とする。前記紡績糸は、特に限定されないが、例えば、強力の観点から、単糸繊度が10〜100dtex(メートル番手で10〜100番)であることが好ましく、33〜67dtex(メートル番手で30〜60番)であることがより好ましい。前記紡績糸は、Z撚りの均一混紡紡績糸2本を用い、S方向に撚りあわせて得られた双糸であることが好ましい。このようにすると糸のトルクを打ち消しあい、編物とした際、ループを安定化させることができ、編物が斜行せず、伸縮性も高くなる。
【0016】
前記メタ系アラミド繊維としては、特に限定されないが、例えば、帝人社製“コーネックス”(商品名)、デュポン社製“ノーメックス”(商品名)等が挙げられる。これらのメタ系アラミド繊維は、4〜7cN/dtex(deci tex)程度の引張強度を有し、限界酸素指数(LOI)は約30であり、且つ熱分解温度は400℃を超えており、耐熱性に優れている。前記メタ系アラミド繊維の単繊維繊度は、特に限定されないが、例えば、0.5〜6dtexの範囲が好ましく、より好ましくは1〜4dtexの範囲である。前記メタ系アラミド繊維の平均繊維長は、特に限定されないが、紡績糸に用いる場合は、例えば、30〜220mmであることが好ましく、より好ましくは50〜120mmである。
【0017】
前記パラ系アラミド繊維は、特に限定されないが、例えば、帝人社製“テクノーラ”(商品名)、デュポン社製“ケブラー”(商品名)等があげられる。これらのパラ系アラミド繊維は、引張強度が高く(例えば帝人社製“テクノーラ”:24.7cN/dtex、デュポン社製“ケブラー”:20.3〜24.7cN/dtex)、熱分解開始温度も高く(前記製品はいずれも約500℃)、限界酸素指数(LOI)は25〜29で、耐熱性に優れている。前記パラ系アラミド繊維の単繊維繊度は、特に限定されないが、0.5〜6dtexの範囲が好ましく、より好ましくは1〜4dtexの範囲である。前記パラ系アラミド繊維の平均繊維長は、特に限定されないが、紡績糸に用いる場合は、例えば、30〜220mmであることが好ましく、より好ましくは50〜120mmである。
【0018】
前記ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(PBO繊維とも称される。)は、特に限定されないが、例えば、東洋紡製の“ザイロン(登録商標)”等を用いることができる。前記ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維の単繊維繊度は、特に限定されないが、例えば、0.5〜6dtexの範囲が好ましく、より好ましくは1〜4dtexの範囲である。前記ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維の平均繊維長は、特に限定されないが、紡績糸に用いる場合は、例えば、30〜220mmであることが好ましく、より好ましくは50〜120mmである。
【0019】
前記難燃レーヨンとしては、特に限定されないが、例えばプロバン加工(オルブライト&ウイルソン社が開発したテトラキスヒドロキシメチルホスホニウム塩を用いたアンモニアキュアリング加工)されたレーヨン繊維、チバ・ガイギー社が開発したピロパテックスCP加工(N−メチロールジメチルホスノプロピオンアミド加工)されたレーヨン繊維等が挙げられる。具体的には、例えば、オーストリア国レンチング社の “ビスコースFR”(商品名)等の市販品を用いることができる。前記難燃レーヨンの単繊維繊度は、特に限定されないが、0.5〜6dtexの範囲が好ましく、より好ましくは1〜4dtexの範囲である。前記難燃レーヨンの平均繊維長は、特に限定されないが、紡績糸に用いる場合は、例えば、30〜220mmであることが好ましく、より好ましくは80〜120mmである。
【0020】
前記帯電防止繊維としては、特に限定されず、例えば、ナイロンやポリエステル等の合成樹脂をベースポリマーとして、金属繊維、炭素繊維、金属粒子や炭素粒子を練りこんだ繊維、例えばナイロン系導電繊維、ポリエステル系導電繊維等を用いることができる。また、前記帯電防止繊維としては、KBセーレン社製“ベルトロン”(商品名)、クラレ社製“クラカーボ”(商品名)等の市販品を用いることができる。KBセーレン社製“ベルトロン”(商品名)は、ベースポリマーがナイロンであり、導電粒子がカーボンであるナイロン系導電繊維やベースポリマーがポリエステルであり、導電粒子がカーボンであるポリエステル系導電繊維を含むが、いずれを用いてもよい。前記帯電防止繊維は、特に限定されないが、単繊維繊度が0.5〜10dtexの範囲が好ましく、より好ましくは1〜8dtexの範囲である。前記難燃レーヨンの平均繊維長は、特に限定されないが、紡績糸に用いる場合は、例えば、30〜220mmであることが好ましく、より好ましくは80〜120mmである。
【0021】
前記編物は緯編地であってもよく、経編地であってもよい。緯編地の中には丸編ニット地がある。丸編ニット地は円筒状に構成するのが容易である。経編地はトリコット編地又はラッセル編地でもよい。これらの編地は、裁断と縫製によって作業ロボットの形状に合わせて形成することもできる。
【0022】
前記丸編ニットは、シングルニットの天竺組織(平編)であることが好ましく、Z撚りの均一混紡紡績糸2本をS方向に撚りあわせた双糸を用いたシングルニットの天竺組織であることがより好ましい。天竺組織(平編)であると、製造コストを安くでき、ロボットアームの激しく大きな屈伸の動きにも対応できる。Z撚りの均一混紡紡績糸2本をS方向に撚りあわせた双糸を用いると、ループを安定化させることができ、編物が斜行せず、伸縮性も高くなる。或いは、マルチフィラメント糸を仮撚加工し、仮撚時にS撚りした糸とZ撚りした糸を交互に丸編機に供給してシングルニットを編成してもよい。このようにすると、糸のトルクを打ち消しあい、ループを安定化させることができ、編物が斜行せず、伸縮性も高くなる。
【0023】
前記編物には、撥水剤が付着されていてもよい。編物に撥水性を付与することができ、作業ロボット用耐熱性保護カバーも撥水性を有することになる。撥水剤は、前記編物を撥水加工して、繊維に撥水剤を結合させることで編物に付着させることができる。前記撥水加工は、編物を、撥水剤を含む加工液に浸漬した後、脱水、乾燥、キュアすることが好ましい。これにより、撥水剤を強固に繊維に固定できる。
【0024】
前記撥水剤としては、特に限定されず、例えば、フッ素含有化合物を含むフッ素系撥水剤、シリコーン化合物を含むシリコーン系撥水剤、カチオン系フッ素含有シリコーン化合物、カチオン系炭化水素系化合物等が挙げられる。前記フッ素系撥水剤としては、例えばツヤック社製の“WO91” (商品名)、旭硝子社製のフッ素系撥水剤エマルジョン“アサヒガードGS10”(商品名)、日華化学社製のフッ素系撥水剤エマルジョン“NKガードFGN700T”(商品名)と“NKガードNDN7000”(商品名)等の市販品を用いることができる。シリコーン系撥水剤としては、特に限定されないが、例えば変性シリコーン系撥水剤等を用いることができる。前記変性シリコーン系撥水剤としては、例えば、エポキシ変性シリコーン系撥水剤、カチオン系アミノ変性シリコーン系撥水剤等が挙げられ、市販品としては、信越シリコーン社製の“X−22−9002”(商品名、側鎖両末端型エポキシ変性シリコーン)、“X−22−163A”(商品名、両末端型エポキシ変性シリコーン)及び“KF−8012”(商品名、カチオン系両末端アミノ変性シリコーン)等が挙げられる。カチオン系フッ素含有シリコーン化合物としては、例えば、市販品として日華化学社製の商品名“NKガードS−07”と商品名“NKガードS−09”等が挙げられる。カチオン系フッ素化合物としては、例えば、市販品として旭硝子社製のカチオン系フッ素系撥水剤エマルジョン“AG−E061”(商品名)、“AG−E081”(商品名)、“AG−E082”(商品名)、“AG−E092”(商品名)及び“AG−E500D”(商品名)等が挙げられる。“カチオン系炭化水素系化合物としては、例えば、日華化学社製の高融点ワックスエマルジョン“TH−44”(商品名)等の市販品を用いることができる。
【0025】
前記編物は、目付が80〜600g/m
2の範囲であることが好ましく、より好ましくは100〜500g/m
2の範囲である。目付が上述した範囲であると、強度と耐久性が高くなる。
【0026】
本発明の作業ロボット用耐熱性保護カバーは、編物が丸編ニットの場合、円筒状のままで作業ロボット用耐熱性保護カバーとして用いてもよい。脱着をより容易にする観点から、丸編ニットをカットし、ロボットの形状に合わせて縫製し、周縁部の所定箇所に面ファスナーを配置することが好ましい。耐熱性の観点から、縫製糸としては、例えば、メタ系アラミド繊維糸、パラ系アラミド繊維糸等の耐熱性繊維糸を用いることが好ましい。また、耐熱性の観点から、面ファスナーは、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維等の耐熱性繊維を含む耐熱性素材で構成されていることが好ましい。
【0027】
本発明の作業ロボット用耐熱性保護カバーは、作業ロボットの形状及び大きさにフィットする複数の大きさのパーツを組み合わせても良い。通常、作業ロボットは、機台、ボディー、アームなど複数のパーツで構成されているので、各パーツに合わせたサイズで保護カバーを形成すると、無駄がなく、付け替え作業も容易となる。前記保護カバーは、さらに紐、ゴム、ボタン、ホック、フック、磁石、ファスナー又は面ファスナーによる固定手段を有していてもよい。これらの固定手段を使用すると、保護カバーが作業ロボットから外れることを防止できるうえ、電線等が存在していても、隙間を作製して覆うことができる。とくに磁石は、磁石同士でも、磁石とロボットのハウジングなどの金属とも固定でき、複雑な形状であってもたるみなく固定できることから好ましい。
【0028】
本発明において、作業ロボットは、次のようなものがある。また、
(1)鍛造:熱間鍛造等
(2)溶断:レーザーによる切断、ガス溶接トーチによる切断、プラズマ切断等
(3)溶接:レーザー、電気溶接等
また、上記(1)〜(3)の作業における加工物を搬送するロボットを含む。
【0029】
次に図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態(実施形態1)における保護カバーの斜視図である。実施形態1の保護カバー10は、円筒状の丸編ニットをそのまま用いた保護カバーであり、よこ方向にはシームレスである。両末端は伸縮性のある縫い方で処理することで、末端からのほつれは起こらない。実施形態1の保護カバー10は、円筒状編物の直径が幅となるように折りたたんだ状態で、一例として長さLは1〜3m、幅Dは0.3〜1mである。
【0030】
図2は、本発明の他の一実施形態(実施形態2)における保護カバーの斜視図である。実施形態2の保護カバー20は、丸編ニットを切り開いて平面状にした後、該平面状の丸編ニットの端部を伸縮性のある縫い方で処理した後、一方の側縁部の表面に面ファスナー201を配置し、他方の側縁部の裏面に面ファスナー201と脱着可能に結合する面ファスナー202を配置した保護カバーである。該実施形態の保護カバー20を作業ロボットに被せた後に、面ファスナー201と202を結合させることで、作業ロボットに保護カバー20を着装させることができる。該実施形態の保護カバー20は、面ファスナー201と202を結合させて円筒状にした保護カバー20を直径が幅となるように折りたたんだ状態で、一例として長さLは1〜3m、幅Dは0.3〜1mである。
【0031】
本明細書において、「裏面」とは、保護カバーにおいて、作業ロボットに近接する面を意味し、「表面」とは、裏面の反対側の面を意味する。
【0032】
図3は、本発明の他の一実施形態(実施形態3)における保護カバーの斜視図である。直径の異なる2つの円筒状の丸編ニット30,40を縫製してつなぐか、又は丸編ニット30,40を連続的な編物とした保護カバーである。両末端は同様に折り返され縫製されている。実施形態3の保護カバーは、円筒状編物の直径が幅となるように折りたたんだ状態で、一例として長さL1は1〜3m、L2は0.3〜0.6m、幅D1は0.6〜1m、D2は0.3〜0.5mである。また、実施形態2の場合と同様に、2つの円筒状の丸編ニット30,40を切り開いて平面状にした後、該平面状の丸編ニットの端部を伸縮性のある縫い方で処理した後、一方の側縁部の表面と、他方の側縁部の裏面等の必要な箇所に面ファスナーを配置する構成にしてもよい。
【0033】
図4は、
図2に示されている実施形態2の保護カバー20を作業ロボット100に取り付けた(被せた)一例の斜視図である。保護カバー20において、面ファスナーは図示していない。保護カバー20は、作業ロボット100のアーム全体を覆い、関節部の激しく大きな動きにも柔軟に対応できる。11は機台、12は回転台座、13はアーム、14は関節、15はマジックハンドである。
図1に示されている実施形態1の保護カバー及び
図3に示されている実施形態3の保護カバーも、同様に作業ロボットに被せることができる。
【0034】
図5は、本発明の一実施例におけるシングルニットの天竺組織(平編)の組織図である。
図6は同、天竺組織(平編)の編目形成工程を示す模式的説明図である。
【実施例】
【0035】
以下実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお本発明は下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0036】
<編物の伸び率>
JIS L1018B法(定荷重法)に準拠した。温度20±2℃、相対湿度65±2%の雰囲気下で編物をウェール方向(たて方向)及びコース方向(よこ方向)にそれぞれ長さ30cm、幅5cmの大きさに切断し、5枚の試験片とした。この試験片の一端を上部クランプで固定し、他端に3gfの初期荷重を加え、20cm間隔に印を付け、静かに4.9Nの荷重を加えて1分間保持後の印間の距離を測定し、次の式によって伸び率(%)を求め、ウェール方向(たて方向)及びコース方向(よこ方向)それぞれ5回の平均値を算出した。
E
P={(L1−L)/L}×100
E
P:伸び率(%)
L:元の印間の距離(cm)
L1:4.9Nの荷重を加えて1分間保持後の印間の距離(cm)
【0037】
(実施例1)
(1)使用繊維
メタ系アラミド繊維:帝人社製“コーネックス”(商品名)、平均単繊維繊度2.2dtex、平均繊維長89mm、熱分解温度415℃
難燃レーヨン:レンチング社製“ビスコースFR”(商品名)、平均単繊維繊度3.3dtex、平均繊維長70mm
帯電防止繊維:KBセーレン社製“ベルトロン”(商品名、ベースポリマー:ナイロン、導電粒子:カーボン)、平均単繊維繊度5.5dtex、平均繊維長89mm
【0038】
(2)保護カバーの作製
前記メタ系アラミド繊維、難燃レーヨン繊維及び帯電防止繊維の原綿をそれぞれ個別に梳毛カードに投入して開繊を行い、繊維ウェブにしてからスライバー混によりメタ系アラミド繊維55.0質量%、難燃レーヨン44.5質量%及び帯電防止繊維0.5質量%の比率で混合し、前紡工程、精紡工程を経て、均一混紡紡績糸を得た。得られたZ撚りの均一混紡紡績糸2本を用い、S方向に撚りあわせて得られた双糸(メートル番手:60番)を丸編機に供給して天竺組織(平編)に編成した。得られた丸編ニットは、コース数は35個/インチ、ウェール数は31個/インチであり、目付は200g/m
2であった。その後、得られた丸編ニットを切り開いて平面状にした後、該平面状の丸編ニットの端部を伸縮性のある縫い方で処理した。その後、
図2に示すように、一方の側縁部の表面にループがポリフェニレンサルファイド繊維で構成された面ファスナー201(クラレファスニング社製、商品名「ニューエコマジック耐熱タイプ」、幅20mm、長さ1m)を配置し、他方の側縁部の裏面にフックがポリフェニレンサルファイド繊維で構成された面ファスナー201と脱着可能に結合する面ファスナー202(クラレファスニング社製、商品名「ニューエコマジック耐熱タイプ」幅20mm、長さ1m)を配置し、保護カバー20を得た。得られた保護カバー20は作業ロボットに被せた後に、面ファスナー201と202を結合して使用する。面ファスナー201と202を結合させて円筒状にした保護カバー20を直径が幅となるように折りたたんだ状態で、長さLは60m、幅Dは1.5mである。
【0039】
(3)編物(保護カバー)の伸び率
前記編物の伸び率を、前記したJIS L 1018 B法に準拠した方法で測定したところ、たて方向で25%、よこ(円周)方向で50%であった。
【0040】
(4)保護カバーの着装試験
(a)鍛造工程
実施例1で得られた保護カバーを鍛造工程において加工物の受け渡し作業を行う作業ロボットに被せた後に、面ファスナー201と202を結合し、保護カバー20を作業ロボットに着装させた。従来品(安川電機社製)は、重くて着脱が面倒であるうえ、作業ロボットにフィットせず、周辺の機器との干渉も生じていた。また、高価であったが、約6カ月で破れていた。これに対し、実施例の保護カバーは、着脱が容易でメンテナンスの手間を小さくすることができた。また、比較的に安価であり、耐熱性及び柔軟性を有することから、7カ月使用しても保護カバーの破損は生じず、作業ロボットが離型剤によって汚染させることを防ぐことができた。
【0041】
(b)溶断工程
実施例1で得られた保護カバーを溶断工程において加工物の受け渡し作業を行う作業ロボットに被せた後に、面ファスナー201と202を結合し、保護カバー20を作業ロボットに着装させた。半年間使用しても保護カバーの破損は生じず、金属酸化物粉末のロボット関節への侵入を防ぐことができ、ロボットの故障も生じなかった。また、保護カバー着装中も必要に応じてバルブ・配管のメンテナンスが容易にできた。また、形状の自由度が高いためパトライト(登録商標)など保護カバーの外に出したい部分を出すことができ、使用しやすかった。
【0042】
(実施例2)
この実施例においては、作業ロボットの形状及び大きさにフィットする複数の大きさのパーツからなる複数の保護カバーの例について説明する。下記を変えた以外は実施例1と同様に保護カバーを作成した。まず、
図7に示すように、鍛造作業ロボットの先端保護カバー51を丸編機で作成した。大きさは
図7のように畳んだ状態で下辺横200mm、上辺横90mm、縦320mmとした。上辺の末端は、伸縮性のある縫い方で処理してほつれ防止縁52とした。下辺は袋縫いしゴム53を入れた。
【0043】
次に、
図8に示すように、作業ロボットの中間部の可動部を覆うための中間保護カバー54を丸編機で作成した。大きさは
図8のように畳んだ状態で横320mm、縦800mmとした。上辺の末端は、伸縮性のある縫い方で処理してほつれ防止縁52とした。下辺は袋縫いし紐55を入れて、固定手段とした。
【0044】
次に
図9に示すように、作業ロボットのボディー部を覆うためのボティー保護カバー56を丸編機で作成した。大きさは
図9のように畳んだ状態で横1200mm、縦2000mmとした。上辺の末端は、伸縮性のある縫い方で処理してほつれ防止縁52とした。下辺は袋縫いし紐55を入れて、固定手段とした。さらに右上から900mmの長さで分離部57を作成し、ボタン59又はフックにより分離部57を止めるようにした。ボタン59,59はボタン用紐60に固定されており、ボタン穴58,58に入れて固定する。分離する際にはボタン59,59はボティー保護カバー56から外す。このようにすると洗濯時に生地を痛めることがない。なお、ボタンに換えて磁石を使用してもよい。磁石は、磁石同士でも固定できるほか、磁石とロボットのハウジングなどの金属とも固定でき、複雑な形状であってもたるみなく固定できることから好ましい。磁石も洗濯時には取り外しできる。
【0045】
以上のように作成した保護カバーを、
図10に示すように鍛造作業ロボットに被せた。すなわち、先端保護カバー51と、中間保護カバー54と、ボティー保護カバー56を、
図10に示すように作業ロボット200に被せた。保護カバー51、54、56は、作業ロボット200の形状及び大きさにフィットするように構成されているので、無駄な空間がなく、しかもロボットアームが自由に動ける保護カバーとすることができた。61a〜61dは作業ロボットに接続されている電線である。
図9に示す分離部57を使用して電線61a〜61dの位置を動かすことなく保護カバー56を被せることができた。