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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-165095(P2018-165095A)
(43)【公開日】2018年10月25日
(54)【発明の名称】自動車の前部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20180928BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20180928BHJP
   B62D 21/15 20060101ALI20180928BHJP
   B60R 19/34 20060101ALI20180928BHJP
【FI】
   B62D25/20 C
   B62D25/08 D
   B62D21/15 C
   B60R19/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-63125(P2017-63125)
(22)【出願日】2017年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】500213915
【氏名又は名称】株式会社ワイテック
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100157808
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 耕平
(72)【発明者】
【氏名】大黒谷 智久
(72)【発明者】
【氏名】神保 泰成
(72)【発明者】
【氏名】小宮 勝行
(72)【発明者】
【氏名】高梨 陽光
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA01
3D203BA13
3D203BB16
3D203BB17
3D203CA24
3D203CA29
3D203CA34
3D203CA37
3D203CA38
3D203CA40
3D203CB03
3D203DA22
3D203DA83
(57)【要約】
【課題】様々な衝突から車室を保護し、且つ、容易に形成可能な前部車体構造を提供することを目的とする。
【解決手段】本出願は、衝撃吸収部が連結されたセットプレートを有する前部車体構造を開示する。前部車体構造は、衝撃吸収部を支持する内支持板部と、内支持板部とともに衝撃吸収部を支持する外支持板部と、これらの支持板部から後方に膨出する水平断面を有する柱部と、を含む柱状部材と、柱部と車体とを連結する連結部材と、柱状部材から後方に延設されたフロントサイドメンバと、柱状部材から外方に突出した突出部材と、を備える。セットプレートは、両支持板部に取り付けられる。突出部材は、外支持板部によって覆われた前端を有する。自動車の衝突時に生じた連結部材周りにモーメントの存在下で、突出部材がフロントサイドメンバを内方へ押圧するように、突出部材は、フロントサイドメンバに接続される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃力を吸収する衝撃吸収部と、前記衝撃吸収部が連結されたセットプレートと、を有する自動車の前部車体構造であって、
前記セットプレートが取り付けられ、且つ、前記衝撃吸収部を支持する内支持板部と、前記セットプレートが取り付けられ、且つ、前記自動車の車幅方向において前記内支持板部から外側に離間した位置で前記衝撃吸収部を支持する外支持板部と、前記内支持板部及び前記外支持板部から後方に膨出する水平断面を有し、且つ、鉛直方向に延びる柱部と、を含む柱状部材と、
前記柱部の上端に取り付けられ、且つ、前記前部車体構造の上方の車体に連結される連結部材と、
前記柱状部材から後方に延設されたフロントサイドメンバと、
前記柱状部材に接続され、且つ、前記柱状部材から前記車幅方向において外方に突出した突出部材と、を備え、
前記突出部材は、前記外支持板部によって覆われた前端を有し、
前記突出部材が前記自動車に衝突した衝突物に衝突したときに生じた前記連結部材周りのモーメントの存在下で、前記突出部材が前記フロントサイドメンバを前記車幅方向において内方へ押圧するように、前記突出部材は、前記フロントサイドメンバに接続される
前部車体構造。
【請求項2】
前記セットプレートは、前記内支持板部及び前記外支持板部よりも厚い
請求項1に記載の前部車体構造。
【請求項3】
前記柱部は、前記セットプレートから下方に突出する下突出部を含む
請求項1又は2に記載の前部車体構造。
【請求項4】
前記柱部は、前記内支持板部及び前記外支持板部よりも後方に位置する後壁を含み、
前記フロントサイドメンバは、前記内支持板部に突き当てられる内前端と、前記後壁から前記車幅方向において外方へ突出することなく、前記後壁に突き当てられた外前端と、を含む
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の前部車体構造。
【請求項5】
前記内支持板部は、前記内前端が突き当てられる第1下部と、前記内前端から上方に延びる第1上部と、を含み、
前記外支持板部は、前記突出部材の前記前端を覆う第2下部と、前記突出部材の前記前端から上方に延びる第2上部と、を含み、
前記衝撃吸収部は、前記第1下部と前記第2下部との間で前記セットプレート及び前記柱状部材によって支持されるクラッシュカンであり、
前記セットプレートは、前記第1上部と前記第2上部とに連結される
請求項4に記載の前部車体構造。
【請求項6】
前記突出部材は、前記外前端よりも後方で前記フロントサイドメンバに接合される後端縁を含み、
前記フロントサイドメンバは、前記後端縁よりも後方の位置に形成された特異的に脆弱な脆弱部を含む
請求項4又は5に記載の前部車体構造。
【請求項7】
前記車体及び前記連結部材の連結位置と前記突出部材の前記後端縁との間において、前記フロントサイドメンバから、前記車幅方向において内方に延びる後縁を有するクロスメンバと、を更に備える
請求項6に記載の前部車体構造。
【請求項8】
前記後壁は、前記外前端が突き当てられる第1領域と、前記第1領域に隣接し、且つ、前記突出部材によって覆われる第2領域と、を含む
請求項4乃至7のいずれか1項に記載の前部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の前部を形成する前部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
サスペンションアームを支持するサブフレームが、車体の一部を形成するメインフレームの下方に配置されることがある(特許文献1を参照)。特許文献1のサブフレームは、柱状部材と、セットプレートと、クラッシュカンと、を備える。クラッシュカンは、セットプレートに固定され、セットプレートから前方に延びる。自動車が衝突すると、クラッシュカンは、圧縮変形し、自動車に加わった衝撃力を吸収することができる。
【0003】
柱状部材は、2つの取付板部と、柱部と、を含む。左側に配置された取付板部は、右側の取付板部から離間している。柱部は、左側及び右側の取付部材から後方に膨出する水平断面を形成する薄板によって形成される。柱部は、鉛直方向に延びる。柱部は、サブフレームの上方に配置された車体に連結される。上述のセットプレートは、左側及び右側の取付板部に、ネジによって連結される。柱部は、左側及び右側の取付部材から後方に膨出する水平断面を形成するので、高い剛性を有することができる。クラッシュカンは、高い剛性を有する部位に連結されるので、衝撃力が余り大きくないときには、クラッシュカンのみが圧縮変形され、クラッシュカンの後方に位置する部位の損傷は、生じにくくなる。セットプレートは、左側及び右側の取付板部に、ネジによって連結されるので、左側及び右側の取付部材が接近又は離間するような変形は生じにくい。したがって、柱状部材は、ほとんど変形することなく、大きな衝撃力を受け止めることができる。
【0004】
特許文献1の技術に基づいて設計された自動車が、クラッシュカンの配置位置よりも外側の部位で衝突するならば、クラッシュカンの変形はほとんど生じない。この結果、衝撃力は、ほとんど低減されることなく、車室に伝達されることもある。
【0005】
特許文献2は、クラッシュカンの配置位置よりも外側での衝突によって生じた衝撃が、車室へ伝達されることを防止する技術を提案する。特許文献2のサブフレームは、クラッシュカンと、2つのセットプレートと、フロントサイドメンバと、突出部材と、を備える。クラッシュカンは、2つのセットプレートのうち一方(以下、「第1セットプレート」と称される)に固定される。2つのセットプレートのうち他方(以下、「第2セットプレート」と称される)は、フロントサイドメンバの前端に固定される。第2セットプレートは、第1セットプレートの後方に配置され、第1セットプレートに重なる。
【0006】
フロントサイドメンバは、第2セットプレートから後方に延びる。突出部材は、フロントサイドメンバから車幅方向において外方に突出する。第2セットプレートは、第1セットプレートから、車幅方向において外方に延び、突出部材の前端を覆う。
【0007】
クラッシュカンの外側で自動車に衝突した衝突物は、突出部材の前方で平面を形成する第2セットプレートに衝突する。衝撃力は、その後、第2セットプレートから突出部材に伝達される。突出部材に伝達された衝撃力は、フロントサイドメンバを折り曲げる力として作用する。フロントサイドメンバが折り曲げられる結果、衝撃力は、緩和される。したがって、車室は、衝撃力から適切に保護されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015−231781号公報
【特許文献2】特開2013−212757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び特許文献2の開示技術が組み合わせられるならば、サブフレームは、様々な衝突から車室を保護することができる。しかしながら、特許文献1及び特許文献2の開示技術の組み合わせは、クラッシュカンが固定されるセットプレートと、突出部材の前端を覆うセットプレートと、を必要とする。この場合、これらのセットプレート間の接合及び突出部材の前端を覆うセットプレートと柱状部材との接合が必要とされる。多数の接合部位の結果、サブフレームの製造は、煩雑になる。
【0010】
2つのセットプレート、柱状部材、突出部材及びクラッシュカンの接合全てが、溶接技術に依存するならば、溶接は、接合箇所それぞれにおいて、高い信頼性を以てなされる必要がある。このことは、高度な溶接技術が要求されることを意味する。加えて、セットプレートと柱状部材との接続が、不適切であるならば、突出部材に伝達された衝撃力が、フロントサイドメンバの折り曲げに効果的に利用されないこともあり得る。
【0011】
本発明は、様々な衝突から車室を保護し、且つ、容易に形成可能な前部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一局面に係る前部車体構造は、衝撃力を吸収する衝撃吸収部と、前記衝撃吸収部が連結されたセットプレートと、を有する。前部車体構造は、前記セットプレートが取り付けられ、且つ、前記衝撃吸収部を支持する内支持板部と、前記セットプレートが取り付けられ、且つ、前記自動車の車幅方向において前記内支持板部から外側に離間した位置で前記衝撃吸収部を支持する外支持板部と、前記内支持板部及び前記外支持板部から後方に膨出する水平断面を有し、且つ、鉛直方向に延びる柱部と、を含む柱状部材と、前記柱部の上端に取り付けられ、且つ、前記前部車体構造の上方の車体に連結される連結部材と、前記柱状部材から後方に延設されたフロントサイドメンバと、前記柱状部材に接続され、且つ、前記柱状部材から前記車幅方向において外方に突出した突出部材と、を備える。前記突出部材は、前記外支持板部によって覆われた前端を有する。前記突出部材が前記自動車に衝突した衝突物に衝突したときに生じた前記連結部材周りのモーメントの存在下で、前記突出部材が前記フロントサイドメンバを前記車幅方向において内方へ押圧するように、前記突出部材は、前記フロントサイドメンバに接続される。
【0013】
上記の構成によれば、衝撃力を吸収する衝撃吸収部が連結されたセットプレートは、柱状部材の内支持板部と、自動車の車幅方向において内支持板部から外側に離間した位置で衝撃吸収部を支持する外支持板部と、に取り付けられるので、内支持板部と外支持板部との間の距離を変化させるような変形は、柱状部材に生じにくくなる。加えて、柱状部材の柱部は、内支持板部及び前記外支持板部から後方に膨出する水平断面を有するので、柱状部材は、大きな衝撃力に耐え得る高い剛性を有することができる。
【0014】
連結部材は、鉛直方向に延びる柱部の上端に取り付けられるので、前部車体構造は、前部車体構造の上方に位置する車体に適切に連結される。
【0015】
突出部材は、柱状部材から車幅方向において外方に突出するように柱状部材に接続されるので、衝撃吸収部が衝撃力を有効に吸収できない衝突が生じたときには、衝突物は、突出部材の前端を覆う外支持板部に衝突することになる。衝撃力は、柱状部材に直接的に加わることになるので、柱部の上端に取り付けられた連結部材周りのモーメントが、適切に発生することになる。モーメントは、柱状部材に連結された突出部材を連結部材周りに回動させようとする力として作用するので、突出部材は、柱状部材から後方に延設されたフロントサイドメンバを車幅方向において内方に押圧し、フロントサイドメンバを折り曲げることができる。この結果、車室は、衝撃力から適切に保護されることになる。
【0016】
突出部材は、セットプレートでなく、柱状部材に接続されるので、複数のセットプレートは必要とされない。したがって、前部車体構造は、容易に製造され得る。
【0017】
上記の構成に関して、前記セットプレートは、前記内支持板部及び前記外支持板部よりも厚くてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、セットプレートは、内支持板部及び外支持板部よりも厚いので、内支持板部と外支持板部との間の距離を変化させるような変形は、柱状部材に生じにくくなる。加えて、セットプレート自身も、高い剛性を有することになるので、衝撃吸収部は、高い剛性を有する部位に連結されることになる。この結果、衝撃吸収部は、衝撃力を効果的に吸収することができる。衝撃吸収部に加わる衝撃力が、あまり大きくないならば、衝撃吸収部が、変形する一方で、衝撃吸収部の後方に位置する部位(すなわち、セットプレート、柱状部材及びフロントサイドメンバ)の変形は、生じにくい。
【0019】
上記の構成に関して、前記柱部は、前記セットプレートから下方に突出する下突出部を含んでもよい。
【0020】
上記の構成によれば、下突出部は、セットプレートから下方に突出するので、前部車体構造の中で、前部車体構造の下方に位置する障害物に最も衝突しやすい。したがって、下突出部は、前部車体構造の他の部位よりも先に障害物に衝突することができる。この結果、運転者は、下突出部以外の部位が破損されるよりも前に、自動車の操作を止めることができる。上述の如く、セットプレートは、内支持板部及び外支持板部に取り付けられているので、下突出部の変形は、セットプレートによって食い止められる。したがって、前部車体構造の下方の障害物に起因する前部車体構造の破損は、上方へ伝播しにくい。
【0021】
上記の構成に関して、前記柱部は、前記内支持板部及び前記外支持板部よりも後方に位置する後壁を含んでもよい。前記フロントサイドメンバは、前記内支持板部に突き当てられる内前端と、前記後壁から前記車幅方向において外方へ突出することなく、前記後壁に突き当てられた外前端と、を含んでもよい。
【0022】
上記の構成によれば、フロントサイドメンバは、柱状部材から後方に延設されるので、自動車の前輪と対向し、前輪が向きを変更するための操舵空間の境界を形成することになる。フロントサイドメンバの内前端は、内支持板部に突き当てられる一方で、フロントサイドメンバの外前端は、後壁から車幅方向において外方へ突出することなく、後壁に突き当てられるので、フロントサイドメンバは、広い操舵空間の形成のために、車幅方向において内方の大きく湾曲しなくてもよい。したがって、フロントサイドメンバは、柱状部材から伝達された衝撃力にほとんど変形することなく耐えることができる。
【0023】
上記の構成に関して、前記内支持板部は、前記内前端が突き当てられる第1下部と、前記内前端から上方に延びる第1上部と、を含んでもよい。前記外支持板部は、前記突出部材の前記前端を覆う第2下部と、前記突出部材の前記前端から上方に延びる第2上部と、を含んでもよい。前記衝撃吸収部は、前記第1下部と前記第2下部との間で前記セットプレート及び前記柱状部材によって支持されるクラッシュカンであってもよい。前記セットプレートは、前記第1上部と前記第2上部とに連結されてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、セットプレートは、第1上部と第2上部とに連結されるので、セットプレートと柱状部材との連結位置は、第1下部と第2下部との間でセットプレート及び前記柱状部材によって支持されるクラッシュカンから十分に離間することができる。この結果、クラッシュカンは、セットプレート及び柱状部材によって安定的に支持されることになる。
【0025】
上記の構成に関して、前記突出部材は、前記外前端よりも後方で前記フロントサイドメンバに接合される後端縁を含んでもよい。前記フロントサイドメンバは、前記後端縁よりも後方の位置に形成された特異的に脆弱な脆弱部を含んでもよい。
【0026】
上記の構成によれば、突出部材の後端縁は、外前端よりも後方でフロントサイドメンバに接合されるので、連結部材周りのモーメントが生じたときに、後端縁は、フロントサイドメンバを、車幅方向において内方に押すことになる。脆弱部は、後端縁よりも後方に位置するので、後端縁からの押圧力に起因する応力は、脆弱部に集中することになる。この結果、フロントサイドメンバは、脆弱部において、突出部材によって折り曲げられることになる。
【0027】
上記の構成に関して、前部車体構造は、前記車体及び前記連結部材の連結位置と前記突出部材の前記後端縁との間において、前記フロントサイドメンバから、前記車幅方向において内方に延びる後縁を有するクロスメンバと、を更に備えてもよい。
【0028】
上記の構成によれば、クロスメンバの後縁は、車体と連結部材との間の連結位置と後端縁との間において、フロントサイドメンバから、車幅方向において内方に延びるので、フロントサイドメンバに作用する曲げモーメントに抗することができる。したがって、フロントサイドメンバは、クラッシュカンが圧縮変形される強い衝撃力に耐え、屈曲しにくい。SOL衝突が生じたときは、クロスメンバの後縁は、突出部材の後端縁よりも前方に位置するので、フロントサイドメンバは、突出部材から伝達された力によって適切に屈曲され得る。
【0029】
上記の構成に関して、前記後壁は、前記外前端が突き当てられる第1領域と、前記第1領域に隣接し、且つ、前記突出部材によって覆われる第2領域と、を含んでもよい。
【0030】
上記の構成によれば、後壁の第1領域は、外前端が突き当てられる一方で、第1領域に隣接する第2領域は、突出部材に覆われるので、フロントサイドメンバの外前端は、後壁から車幅方向において外方へ突出することなく、後壁に突き当てられる。フロントサイドメンバは、広い操舵空間の形成のために、車幅方向において内方の大きく湾曲しなくてもよいので、フロントサイドメンバは、柱状部材から伝達された衝撃力にほとんど変形することなく耐えることができる。
【発明の効果】
【0031】
上述の前部車体構造は、様々な衝突から車室を保護し、且つ、容易に形成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】前部車体構造として例示されるサブフレームの概略的な斜視図である。
図2図1に示されるサブフレームの拡大された水平断面図である。
図3図1に示されるサブフレームの概略的な展開斜視図である。
図4図1に示されるサブフレームの概略的な側面図である。
図5図1に示されるサブフレームのフロントサイドメンバの概略的な平面図である。
図6図1に示されるサブフレームの一部の概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、自動車の前部車体構造として例示されるサブフレーム100の概略的な斜視図である。図1を参照して、サブフレーム100が説明される。
【0034】
サブフレーム100は、左右対称の構造を有する。サブフレーム100の左側の構造が、主に説明される。サブフレーム100の左側の構造に関する説明は、サブフレーム100の右側の構造に援用される。
【0035】
左側の構造に関して、「左」との用語は、車幅方向において、外方を意味する。「右」との用語は、車幅方向において、内方を意味する。上述の如く、サブフレーム100は、左右対称の構造を有するので、サブフレーム100の右側の構造に関しては、車幅方向において外方は、「右」であり、且つ、車幅方向において内方は、「左」である。
【0036】
サブフレーム100は、2つのクラッシュカン111,112と、2つのセットプレート121,122と、2つの柱状部材131,132と、2つの突出部材141,142と、2つのフロントサイドメンバ151,152と、バンパビーム160と、支持構造体170と、2つの連結部材181,182と、を備える。図1は、2つのロアアームLAL,LARを示す。支持構造体170は、2つのロアアームLAL,LARを支持する。左側のロアアームLALは、左側の前輪(図示せず)に連結される。右側のロアアームLARは、右側の前輪(図示せず)に連結される。
【0037】
フロントサイドメンバ151,152は、支持構造体170から前方に延び、柱状部材131,132にそれぞれ連結される。フロントサイドメンバ151は、フロントサイドメンバ152の左方に位置する。柱状部材131は、柱状部材132の左方に位置する。フロントサイドメンバ151の左側の空間は、左側の前輪が向きを変えるために利用される操舵空間として利用される。フロントサイドメンバ151は、左側の前輪用の操舵空間の境界を形成する。フロントサイドメンバ152の右側の空間は、右側の前輪が向きを変えるために利用される操舵空間として利用される。フロントサイドメンバ152は、右側の前輪用の操舵空間の境界を形成する。
【0038】
左側の突出部材141は、フロントサイドメンバ151と柱状部材131とに連結される。突出部材141は、フロントサイドメンバ151及び柱状部材131から左方に突出する。右側の突出部材142は、フロントサイドメンバ152と柱状部材132とに連結される。突出部材142は、フロントサイドメンバ152及び柱状部材132から右方に突出する。
【0039】
左側の柱状部材131は、フロントサイドメンバ151とセットプレート121との間に位置する。柱状部材131は、フロントサイドメンバ151、セットプレート121及び突出部材141から上方に突出する。連結部材181は、柱状部材131の上端に取り付けられ、サブフレーム100の上方に位置する車体(図示せず)に連結される。柱状部材131の下部は、フロントサイドメンバ151、セットプレート121及び突出部材141によって取り囲まれる。
【0040】
右側の柱状部材132は、フロントサイドメンバ152とセットプレート122との間に位置する。柱状部材132は、フロントサイドメンバ152、セットプレート122及び突出部材142から上方に突出する。連結部材182は、柱状部材132の上端に取り付けられ、サブフレーム100の上方に位置する車体(図示せず)に連結される。柱状部材132の下部は、フロントサイドメンバ152、セットプレート122及び突出部材142によって取り囲まれる。
【0041】
クラッシュカン111の後端は、セットプレート121に連結される。セットプレート121は、柱状部材131に連結される。したがって、クラッシュカン111は、セットプレート121を介して、柱状部材131に取り付けられる。クラッシュカン111の前端は、バンパビーム160の左端の近傍に連結される。
【0042】
クラッシュカン112の後端は、セットプレート122に連結される。セットプレート122は、柱状部材132に連結される。したがって、クラッシュカン112は、セットプレート122を介して、柱状部材132に取り付けられる。クラッシュカン112の前端は、バンパビーム160の右端の近傍に連結される。
【0043】
自動車が、クラッシュカン111,112の間の部位において、物体に衝突すると、クラッシュカン111,112は、圧縮変形し、衝撃力を吸収する。クラッシュカン111,112が吸収しきれなかった衝撃力は、柱状部材131,132を通じて、フロントサイドメンバ151,152に伝達される。本実施形態に関して、衝撃吸収部は、クラッシュカン111,112によって例示される。本実施形態に関して、クラッシュカン111,112は、セットプレート121,122を介して、柱状部材131,132に連結される。しかしながら、衝撃吸収部は、柱状部材131,132と一体的に形成された衝撃吸収構造であってもよい。本実施形態の原理は、衝撃吸収部の特定の構造に限定されない。
【0044】
フロントサイドメンバ151,152は、全体的に真っ直ぐ延びる中空棒体であるので、衝撃力が伝達されても、変形しにくい。衝撃力は、フロントサイドメンバ151,152を通じて、支持構造体170へ伝達される。
【0045】
支持構造体170は、連結ピン171,172,173を含む。支持構造体170は、連結ピン171,172,173を介して、サブフレーム100の上方に位置する車体に連結される。
【0046】
支持構造体170は、サブフレーム100の中で最も高い剛性を有する。したがって、支持構造体170に伝達された衝撃力は、支持構造体170によってほとんど吸収されることなく、連結ピン171,172,173に伝達される。この結果、連結ピン171,172,173は破損され、サブフレーム100は、車体から分離される。したがって、サブフレーム100に加わった衝撃力は、車室(図示せず)に伝達されにくい。
【0047】
柱状部材131,132の水平断面は、車幅方向において所定の幅を有するだけでなく、セットプレート121,122から後方に向かう方向においても所定の長さを有するので、柱状部材131,132は、クラッシュカン111,112の取付部位に、高い剛性をもたらす。クラッシュカン111,112の間においてバンパビーム160に加わった衝撃力があまり大きくないならば、クラッシュカン111,112のみが圧縮変形し、他の部位(たとえば、柱状部材131,132、フロントサイドメンバ151,152及び/又は突出部材141,142)は、変形しにくい。
【0048】
SOL衝突は、バンパビーム160の左端部(すなわち、クラッシュカン111より左側の部分)又はバンパビーム160の右端部(すなわち、クラッシュカン112より右側の部分)が物体と衝突することを意味する。SOL衝突は、クラッシュカン111,112の圧縮変形をほとんど生じさせない。このとき、物体は、突出部材141,142のうち一方に衝突する。
【0049】
突出部材141は、フロントサイドメンバ151の外側面に連結される。したがって、突出部材141への物体の衝突に起因して生じた衝撃力は、フロントサイドメンバ151の外側面に作用する。この結果、フロントサイドメンバ151は、右方に屈曲される。あるいは、フロントサイドメンバ151は、衝撃力によって折られる。したがって、衝撃力は、車室に伝達されにくい。
【0050】
突出部材142は、フロントサイドメンバ152の外側面に連結される。したがって、突出部材142への物体の衝突に起因して生じた衝撃力は、フロントサイドメンバ152の外側面に作用する。この結果、フロントサイドメンバ152は、左方に屈曲される。あるいは、フロントサイドメンバ152は、衝撃力によって折られる。したがって、衝撃力は、車室に伝達されにくい。
【0051】
図2は、サブフレーム100の拡大された水平断面図である。図3は、サブフレーム100の概略的な展開斜視図である。図1乃至図3を参照して、サブフレーム100が更に説明される。
【0052】
図2に示されるように、柱状部材131は、左支持板部231と、右支持板部232と、柱部233と、を含む。左支持板部231は、右支持板部232から左方に離間している。左支持板部231及び右支持板部232の前面は、1つの仮想鉛直面(図示せず)に沿う。セットプレート121は、左支持板部231及び右支持板部232の前面に当接される。セットプレート121は、ネジや他の適切な固定具によって、左支持板部231及び右支持板部232に固定される。この結果、セットプレート121に連結されたクラッシュカン111は、左支持板部231及び右支持板部232によって支持される。本実施形態に関して、内支持板部は、右支持板部232によって例示される。外支持板部は、左支持板部231によって例示される。
【0053】
図2に示されるように、柱部233は、左支持板部231の右縁及び右支持板部232の左縁から後方に膨出する水平断面を形成する薄板材から形成される。図3に示されるように、柱部233は、フロントサイドメンバ151及び突出部材141から上方に突出する。
【0054】
図4は、サブフレーム100の概略的な側面図である。図1乃至図4を参照して、サブフレーム100が説明される。
【0055】
図2に示されるように、柱部233は、後壁234と、左側壁235と、右側壁236と、を含む。後壁234は、左支持板部231及び右支持板部232の後方で、鉛直方向に延びる。左側壁235は、左支持板部231の右縁及び後壁234の左縁において屈曲され、左支持板部231及び後壁234との間で鉛直方向に延びる。右側壁236は、右支持板部232の左縁及び後壁234の右縁において屈曲され、右支持板部232及び後壁234との間で鉛直方向に延びる。
【0056】
図3に示されるように、連結部材181は、柱部233の上端に溶接される。連結部材181は、基板183と、連結ピン184と、を含む。基板183は、左側壁235の上端縁、右側壁236(図2を参照)の上端縁及び後壁234の上端縁に溶接される。連結ピン184は、基板183の上面から上方に突出する丸棒状の部材である。図3は、連結ピン184の中心線CTLを示す。SOL衝突が生ずると、中心線CTL周りの回転モーメントが発生する。
【0057】
図4は、メインフレームMFMを示す。メインフレームMFMは、サブフレーム100の上方に位置する。図1を参照して説明された連結部材181,182は、連結ピン171,172,173とともに、メインフレームMFMの下面に嵌入される。この結果、サブフレーム100は、メインフレームMFMに連結される。本実施形態に関して、車体は、メインフレームMFMによって例示される。
【0058】
図5は、フロントサイドメンバ151の概略的な平面図である。図1乃至図5を参照して、サブフレーム100が説明される。
【0059】
図5に示されるように、フロントサイドメンバ151は、左前端251と、右前端252と、を含む。右前端252は、左前端251より前方に位置する。
【0060】
図2及び図3に示されるように、左前端251は、後壁234に突き当てられ、後壁234の下部の略右半面に重なる。右前端252は、右支持板部232の後面に突き当てられ、右支持板部232に溶接される。右支持板部232は、右前端252とセットプレート121とによって挟まれる。本実施形態に関して、外前端は、左前端251によって例示される。内前端は、右前端252によって例示される。
【0061】
左前端251は、車幅方向において後壁234の中間位置より右側に溶接されるので、従来技術とは異なり、後壁234の左縁から左方に突出しない。したがって、フロントサイドメンバ151が、左前端251及び右前端252から略真っ直ぐに後方に延設されても、図1を参照して説明された操舵空間は、十分に広い。
【0062】
フロントサイドメンバ151が、左前端251及び右前端252から略真っ直ぐに後方に延設されるので、クラッシュカン111が受けた衝撃力は、フロントサイドメンバ151の一部に集中することなく、フロントサイドメンバ151に沿って略真っ直ぐに後方に伝達される。したがって、フロントサイドメンバ151は、クラッシュカン111が受けた衝撃力によっては変形しにくい。
【0063】
図5に示されるように、フロントサイドメンバ151は、左パネル253と、右パネル254と、を含む。左パネル253は、上述の左前端251を形成する。右パネル254は、上述の右前端252を形成する。左パネル253は、左前端251から後方に略真っ直ぐに延びる。右パネル254は、右前端252から後方に略真っ直ぐに延びる。
【0064】
図3に示されるように、左パネル253は、U字状の断面を有する。左パネル253は、左壁部351と、上壁部352と、下壁部353と、を含む。左壁部351は、左側の前輪(図示せず)に対向し、操舵空間(図1を参照)の境界を形成する。上壁部352は、左壁部351の上縁から右方に屈曲される。下壁部353は、左壁部351の下縁から右方に屈曲される。
【0065】
図3に示されるように、右パネル254は、U字状の断面を有する。右パネル254は、右壁部354と、上壁部355と、下壁部356と、を含む。右壁部354は、左壁部351の反対側に位置する。上壁部355は、右壁部354の上縁から左方に屈曲される。下壁部356は、右壁部354の下縁から左方に屈曲される。
【0066】
図3は、溶接線WL1,WL2を示す。左パネル253の上壁部352の右縁は、右パネル254の上壁部355の左縁に溶接線WL1,WL2に沿って溶接される。同様に、左パネル253の下壁部353の右縁は、右パネル254の下壁部356の左縁に溶接される。この結果、フロントサイドメンバ151として用いられる中空棒体が形成される。
【0067】
左パネル253と右パネル254とによって形成された中空棒体は、車幅方向よりも鉛直方向において大きな寸法を有する。フロントサイドメンバ151は、車幅方向において狭いけれども、鉛直方向において太いので、大きな剛性を有することができる。
【0068】
U字状の断面を有する左パネル253及び右パネル254は、480MPaを超える引張強度を有する高張力鋼板から形成されることができる。したがって、フロントサイドメンバ151は、クラッシュカン111が受けた衝撃力に耐えるのに十分に大きな剛性を有することができる。
【0069】
図5に示されるように、右パネル254は、左パネル253の左前端251を越えて前方に延びる接合縁357,358を含む。接合縁357は、右パネル254の上壁部355の左縁の一部である。接合縁357の下方に位置する接合縁358は、右パネル254の下壁部356(図3を参照)の左縁の一部である。接合縁357,358は、図2を参照して説明された柱状部材131の右側壁236に溶接される。
【0070】
図3に示されるように、突出部材141は、斜板部241と、上板部242と、下板部243と、を含む。斜板部241は、後端縁244と、後端縁244とは反対側の前端縁245と、を含む。斜板部241は、後端縁244から前端縁245に向けて、左斜め前方に延びる。
【0071】
図3は、左前端251の後方に位置する溶接線WL3を示す。後端縁244は、溶接線WL3で、左パネル253の左壁部351に溶接される。図2に示されるように、前端縁245は、左支持板部231の左端の真後ろに位置する。
【0072】
上板部242は、斜板部241の上縁から折り曲げられた略水平な板部分である。上板部242は、第1縁341と、第2縁342と、第3縁343と、第4縁344と、を含む。第1縁341は、左パネル253の上壁部352に沿って延びる。第2縁342は、第1縁341の前端から屈曲し、左方に延びる。第3縁343は、第2縁342の左端から屈曲し、前方に延びる。第4縁344は、第3縁343の前端から屈曲し、左方に延びる。
【0073】
図3は、溶接線WU1,WU2,WU3,WU4を示す。第1縁341は、左パネル253の上壁部352上において溶接線WL3から左前端251までの区間に形成された溶接線WU1に沿って、左パネル253の上壁部352に溶接される。第2縁342は、柱状部材131の後壁234上で略水平に延びる溶接線WU2に沿って、後壁234に溶接される。第3縁343は、柱状部材131の左側壁235上で略水平に延びる溶接線WU3に沿って、左側壁235に溶接される。第4縁344は、柱状部材131の左支持板部231上で略水平に延びる溶接線WU4に沿って、左支持板部231に溶接される。
【0074】
下板部243は、斜板部241の下縁から折り曲げられた略水平な板部分である。下板部243は、第1縁441と、第2縁442と、第3縁443と、第4縁444と、を含む。下板部243の第1縁441は、上板部242の第1縁341と略平行である。下板部243の第1縁441は、左パネル253の下壁部353に溶接される。下板部243の第2縁442は、下板部243の第1縁441の前端から屈曲し、上板部242の第2縁342に略平行に延びる。下板部243の第3縁443は、下板部243の第2縁442の左端から屈曲し、上板部242の第3縁343に略平行に延びる。下板部243の第4縁444は、下板部243の第3縁443の前端から屈曲し、上板部242の第4縁344に略平行に延びる。
【0075】
図3は、溶接線WB2,WB3,WB4を示す。下板部243の第2縁442は、柱状部材131の後壁234上で略水平に延びる溶接線WB2に沿って、後壁234に溶接される。下板部243の第3縁443は、柱状部材131の左側壁235上で略水平に延びる溶接線WB3に沿って、左側壁235に溶接される。下板部243の第4縁444は、柱状部材131の左支持板部231上で略水平に延びる溶接線WB4に沿って、左支持板部231に溶接される。
【0076】
図3は、溶接線WU2,WB2の間の溶接線WL4を示す。溶接線WU2,WB2は略水平に延びる一方で、溶接線WL4は、略鉛直に延びる。左パネル253の左前端251は、後壁234の下部の右半面に突き当てられ、溶接線WL4に沿って、柱状部材131の後壁234に溶接される。
【0077】
溶接線WL4は、車幅方向において後壁234の略中間位置において鉛直方向に延びる。したがって、左パネル253の左前端251は、柱状部材131の後壁234の下部の右半面に当接する。溶接線WU2,WB2の右端は、溶接線WL4の鉛直線上に位置する。したがって、突出部材141は、柱状部材131の後壁234の下部の左半面を覆う。本実施形態に関して、第1領域は、後壁234の下部の右半面によって例示される。第2領域は、後壁234の下部の左半面によって例示される。
【0078】
上述の如く、前端縁245は、左支持板部231の左端の真後ろに位置し、且つ、上板部242及び下板部243の第4縁344,444は、左支持板部231上で略水平に延びるWU4,WB4に沿って溶接されるので、突出部材141の前端は、全体的に、左支持板部231によって覆われることになる。
【0079】
図1に示されるように、バンパビーム160は、中央領域161と、左端部162と、右端部163と、を含む。中央領域161は、クラッシュカン111,112間の部位である。左端部162は、左側のクラッシュカン111から左方に突出する部位である。右端部163は、右側のクラッシュカン112から右方に突出する部位である。自動車が、中央領域161において、物体に衝突するならば、クラッシュカン111,112は、圧縮変形される。この結果、衝撃力は、クラッシュカン111,112によって効果的に吸収される。クラッシュカン111,112が吸収しなかった衝撃力は、フロントサイドメンバ151,152を通じて、支持構造体170へ伝達される。上述の如く、フロントサイドメンバ151,152は、柱状部材131,132から後方へ、略真っ直ぐ延びるので、クラッシュカン111,112が吸収しなかった衝撃力によってはほとんど変形されない。したがって、クラッシュカン111,112が吸収しなかった衝撃力は、最終的に、連結ピン171,172,173に集中することになる。この結果、連結ピン171,172,173は、破壊され、サブフレーム100は、メインフレームMFM(図4を参照)から分離されることになる。したがって、クラッシュカン111,112が吸収しなかった衝撃力は、車室へはほとんど伝達されない。
【0080】
自動車が、バンパビーム160の左端部162において、物体に衝突するならば(すなわち、SOL衝突が生ずるならば)、クラッシュカン111は、ほとんど変形されない。このとき、自動車に衝突した衝突物は、バンパビーム160の左端部162を破壊した後、左支持板部231に衝突する。この結果、衝突物は、柱状部材131を回転させようとする力として、柱状部材131に直接的に作用する。この結果、図3に示されるように、中心線CTL周りのモーメントが発生する。
【0081】
突出部材141は、上述の如く、柱状部材131に溶接されるので、中心線CTL周りのモーメントは、突出部材141を中心線CTL周りに周回させようとする力として作用する。この結果、突出部材141の後端縁244は、フロントサイドメンバ151の左パネル253の左壁部351に強く押しつけられる。フロントサイドメンバ151は、右方に湾曲され、最終的に、折り曲げられるので、バンパビーム160の左端部162での衝突に起因して発生した衝撃力は、車室へはほとんど伝達されない。したがって、サブフレーム100は、車室を、バンパビーム160の左端部162での衝突に起因して発生した衝撃力から効果的に保護される。
【0082】
図3に示されるように、鉛直に延びる浅溝451が、フロントサイドメンバ151の左パネル253の左壁部351に形成されてもよい。浅溝451の形成の結果、左壁部351は、浅溝451の形成部位において、特異的に薄くなる。すなわち、左壁部351は、浅溝451において、フロントサイドメンバ151の他の部位よりも脆弱になる。
【0083】
図3に示されるように、浅溝451は、突出部材141の後端縁244が溶接される溶接線WL3の後方に位置する。上述の如く、SOL衝突が発生したとき、突出部材141の後端縁244は、左壁部351を右方に押す。フロントサイドメンバ151の前端は、柱状部材131に固定され、且つ、フロントサイドメンバ151の後端は、支持構造体170に連結されているので(図1を参照)、突出部材141の後端縁244が、左壁部351を右方に押すと、フロントサイドメンバ151は、右方に撓むように変形する。左壁部351は、浅溝451において、特異的に脆弱であり、且つ、浅溝451は、溶接線WL3から後方に離れているので、左壁部351は、浅溝451において大きく撓み変形する。したがって、左壁部351は、フロントサイドメンバ151の右方への撓み変形に起因する応力に耐えきれず、浅溝451において塑性変形或いは破壊的変形をすることになる。SOL衝突時のフロントサイドメンバ151の破壊パターンは、浅溝451によって、実質的に定まるので、設計者は、自動車の前部に配置される様々な要素(たとえば、エンジンやラジエタ)の配置に適合するように浅溝451に位置を決定してもよい。
【0084】
本実施形態に関して、脆弱部は、浅溝451によって形成される。しかしながら、脆弱部は、他の構造であってもよい。たとえば、貫通孔が、浅溝451に代えて、形成されてもよい。代替的に、剛性において局所的な変化をもたらす他の構造が、浅溝451に代えて、形成されてもよい。本実施形態の原理は、脆弱部を形成するための特定の構造に限定されない。
【0085】
<他の特徴>
設計者は、上述の配設構造に様々な特徴を与えることができる。以下に説明される特徴は、上述の実施形態に関連して説明された設計原理を何ら限定しない。
【0086】
(セットプレートの厚さ)
図2に示されるように、セットプレート121は、左支持板部231及び右支持板部232よりも厚くてもよい。この結果、セットプレート121自体の剛性は、高くなるので、クラッシュカン111の後端は、高い剛性を有する部位の溶接されることになる。バンパビーム160の中央領域161での衝突の結果生じた衝突力が、小さいならば、クラッシュカン111のみが変形し、セットプレート121及びセットプレート121より後方の柱状部材131、突出部材141及びフロントサイドメンバ151は、変形しにくくなる。
【0087】
加えて、左支持板部231(及び、左側壁235)と右支持板部232(及び、右側壁236)との間の離間距離は、セットプレート121によって維持されやすい。したがって、自動車が、バンパビーム160の中央領域161において衝突したときも、柱状部材131は、変形しにくい。すなわち、柱状部材131は、バンパビーム160の中央領域161において生じた衝撃力に対して高い剛性を有することができる。柱状部材131が、SOL衝突下で発生したモーメント(図3を参照)によって、中心線CTL周りに角変位する間も、柱状部材131の変形は生じにくい。この結果、柱状部材131を回転させようとする力は、突出部材141に効率的に伝達される。この結果、突出部材141は、SOL衝突下で、フロントサイドメンバ151を信頼性高く折り曲げることができる。
【0088】
(柱状部材)
図4に示されるように、柱部233は、セットプレート121の下縁から下方に突出する下突出部331を有してもよい。下突出部331は、図3を参照して説明された溶接線WB2,WB3の下側の部位として定義されてもよい。下突出部331は、サブフレーム100の下方に位置する障害物(たとえば、縁石)に最も衝突しやすい部位である。すなわち、下突出部331は、サブフレーム100の他の部位が障害物に衝突する前に、障害物に衝突することができる。下突出部331が、障害物に衝突するならば、運転者は、多くの場合、障害物への下突出部331の衝突を検知し、自動車を停止させる。したがって、サブフレーム100の破損は、下突出部331に限定される。
【0089】
上述の如く、柱状部材131は、セットプレート121によって効果的に補強されている。下突出部331より上方の部位は、セットプレート121によって保護されているので、障害物への下突出部331の衝突によっては損傷されにくい。すなわち、セットプレート121は、上方への破損の伝播を効果的に防ぐことができる。
【0090】
(柱状部材とセットプレートとの接続構造)
図3に示されるように、左支持板部231は、溶接線WU4の下の領域を形成する下部431と、溶接線WU4の上方の領域を形成する上部432と、を含む。上部432は、連結部材181に向けて狭まる領域を形成する。貫通孔433は、下部431に形成される。貫通孔433は、溶接線WB4の下方に位置する。貫通孔434は、上部432に形成される。本実施形態に関して、第2下部は、下部431によって例示される。第2上部は、上部432によって例示される。
【0091】
左支持板部231と同様に、右支持板部232は、下部531(図2を参照)と上部532(図1を参照)とを含む。右支持板部232の下部531は、フロントサイドメンバ151の右前端252(図5を参照)が突き当てられる領域を形成する。左支持板部231の下部と同様に、貫通孔(図示せず)は、右支持板部232の下部531及び上部532それぞれに形成される。右支持板部232の下部531の貫通孔は、フロントサイドメンバ151の右前端252の下方に位置する。本実施形態に関して、第1下部は、下部531によって例示される。第1上部は、上部532によって例示される。
【0092】
図2に示されるように、クラッシュカン111の後端は、左支持板部231及び右支持板部232の下部431,531の間でセットプレート121に溶接される。左支持板部231の下部431に形成された貫通孔433は、クラッシュカン111とセットプレート121との溶接位置から左斜め下方に離間している。左支持板部231の上部432に形成された貫通孔434は、クラッシュカン111とセットプレート121との溶接位置から左斜め上方に離間している。右支持板部232の下部531に形成された貫通孔は、クラッシュカン111とセットプレート121との溶接位置から右斜め下方に離間している。右支持板部232の上部532に形成された貫通孔は、クラッシュカン111とセットプレート121との溶接位置から右斜め上方に離間している。左支持板部231の貫通孔433,434及び右支持板部232の2つの貫通孔に対応する4つの貫通孔(図示せず)は、セットプレート121に形成される。2つのネジは、セットプレート121を貫通し、左支持板部231の貫通孔433,434に挿通される。同様に、他のもう2つのネジは、セットプレート121を貫通し、右支持板部232の2つの貫通孔に挿通される。したがって、セットプレート121は、セットプレート121とクラッシュカン111の後端との接続位置から十分に離れた位置で、左支持板部231及び右支持板部232に締結される。この結果、クラッシュカン111は、セットプレート121及び柱状部材131によって安定的に保持されることになる。
【0093】
(クロスメンバ)
上述の実施形態に関して、フロントサイドメンバは、車幅方向において内方に偏った位置において、柱状部材に溶接される。したがって、バンパビームの中央領域における衝突下においても、フロントサイドメンバを内方に変位させる力が生じやすい。前部車体構造は、フロントサイドメンバを内方に変位させる力に抗するクロスメンバを備えてもよい。例示的なクロスメンバが、以下に説明される。
【0094】
図6は、サブフレーム100の一部の概略的な平面図である。図1及び図6を参照して、サブフレーム100が更に説明される。
【0095】
図1に示されるように、サブフレーム100は、フロントサイドメンバ151,152の間で延びるクロスメンバ190を備える。クロスメンバ190は、後縁191と前縁192とを含む。後縁191及び前縁192それぞれは、車幅方向に延びる。
【0096】
図1及び図6に示されるように、後縁191は直線的に延びる一方で、図6に示されるように、前縁192は、フロントサイドメンバ151の近くで前方に向けて湾曲する。クロスメンバ190は、フロントサイドメンバ151の近くで太くなるので、クロスメンバ190とフロントサイドメンバ151の右パネル254との間での長い溶接長が得られる。
【0097】
図6に示されるように、クロスメンバ190の後縁191の左端は、車両の前後方向において、連結ピン184の中心線CTLと突出部材141の後端縁244との間で、フロントサイドメンバ151の右パネル254の右壁部354に連結される。クロスメンバ190の後縁191は、SOL衝突時にフロントサイドメンバ151を右方へ湾曲させる力を加える突出部材141の後端縁244よりも前に位置するので、突出部材141の後端縁244の後方に形成された浅溝451(図3を参照)における屈曲は、クロスメンバ190によってはほとんど妨げられない。
【0098】
図3に示されるように、フロントサイドメンバ151は、柱状部材131に対して右側に偏って取り付けられているので、クラッシュカン111が圧縮される正面衝突が生じたとき、フロントサイドメンバ151の前端は、右方に作用する力を受けやすい。クロスメンバ190は、右方へ作用する力に抗するので、フロントサイドメンバ151は、右方へほとんど変形しない。したがって、クラッシュカン111が吸収しきれなかった力は、フロントサイドメンバ151を通じて、支持構造体170へ円滑に伝達される。
【0099】
上述の様々な特徴は、様々な車両の全体的な設計に適合するように、組み合わされてもよいし、変更されてもよい。
【0100】
上述の実施形態に関して、突出部材、フロントサイドメンバ及び柱状部材の間での接合は、溶接技術に依存する。しかしながら、他の技術(たとえば、リベットやネジ)が、溶接とともに、或いは、溶接に代えて利用されてもよい。
【0101】
上述の実施形態に関して、サブフレームの連結部材は、メインフレームに向けて突出し、メインフレームに連結される。しかしながら、サブフレームの連結部材は、メインフレームから下方に突出した棒体を受け入れる貫通孔或いは凹部を有する板状部材であってもよい。上述の実施形態の原理は、連結部材の特定の構造或いは形状に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0102】
上述の実施形態の原理は、様々な車両に搭載されるサブフレームに好適に利用される。
【符号の説明】
【0103】
100・・・・・・・・・・・・・・・・・・・サブフレーム(前部車体構造)
111,112・・・・・・・・・・・・・・・クラッシュカン(衝撃吸収部)
121,122・・・・・・・・・・・・・・・セットプレート
131,132・・・・・・・・・・・・・・・柱状部材
141,142・・・・・・・・・・・・・・・突出部材
151,152・・・・・・・・・・・・・・・フロントサイドメンバ
181,182・・・・・・・・・・・・・・・連結部材
190・・・・・・・・・・・・・・・・・・・クロスメンバ
191・・・・・・・・・・・・・・・・・・・後縁
231・・・・・・・・・・・・・・・・・・・左支持板部(外支持板部)
232・・・・・・・・・・・・・・・・・・・右支持板部(内支持板部)
233・・・・・・・・・・・・・・・・・・・柱部
234・・・・・・・・・・・・・・・・・・・後壁
244・・・・・・・・・・・・・・・・・・・後端縁
251・・・・・・・・・・・・・・・・・・・左前端(外前端)
252・・・・・・・・・・・・・・・・・・・右前端(内前端)
331・・・・・・・・・・・・・・・・・・・下突出部
344,444・・・・・・・・・・・・・・・第4縁(前端)
431・・・・・・・・・・・・・・・・・・・下部(第2下部)
432・・・・・・・・・・・・・・・・・・・上部(第2上部)
451・・・・・・・・・・・・・・・・・・・浅溝(脆弱部)
531・・・・・・・・・・・・・・・・・・・下部(第1下部)
532・・・・・・・・・・・・・・・・・・・上部(第1上部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6