【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)平成27年5月26日、近藤和夫、向原紳悟、大貫仁、林太郎、横井昌幸が、2015年度IEEE第65回電子部品・技術会議講演要旨集の第652頁にて、近藤和夫が発明した、”Reduction of Thermal Expansion Coefficient of Electrodeposited Copper”について公開した。 (2)平成27年6月16日、日刊工業新聞社が、http://twitter.com/nikkan_bizline/status/611004948705251328のウェブサイトで公開された日刊工業新聞電子版BizLineにて、近藤和夫が発明した、”加熱工程での膨張を防ぐことのできるシリコン貫通電極”について公開した。 (3)平成27年6月18日、近藤和夫が、エレクトロニクス実装学会関西ワークショッププログラム、ポスターセッション番号27にて、近藤和夫が発明した、“低線膨張銅めっき−広範囲な実装への応用が拡がる”について公開した。 (4)平成27年8月26日、近藤和夫、向原紳悟、横井昌幸が、http://www3.scej.org/meeting/47f/view/myfile.htmlのウェブサイトで公開された化学工学会第47回秋季大会講演発表要旨集にて、近藤和夫が発明した、”低線膨張銅めっき”について公開した。 (5)平成27年8月31日、近藤和夫、向原紳悟、大貫仁、横井昌幸が、3DIC2015講演要旨集、講演番号IV−1にて、近藤和夫が発明した、”No Pumping at 450℃ with Electrodeposited Copper TSV”について公開した。 (6)平成27年10月11日、近藤和夫、向原紳悟、大貫仁、横井昌幸が、第228回電気化学学会(ECS)大会講演要旨集、講演番号870にて、近藤和夫が発明した、”Reduction of Thermal Expansion Coefficient of Electrodeposited Copper”について公開した。
【課題】めっき物の熱膨張を抑制することの可能な酸性銅めっき液、およびそのめっき液を用いて得られる酸性銅めっき物並びにそのめっき液を用いる半導体デバイスの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の酸性銅めっき液は、カチオン性ポリマーからなる第1の添加剤と、2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸、2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸ナトリウム二水和物、エチレンチオ尿素、およびポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)の部分2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の第2の添加剤と、硫黄原子含有有機化合物からなる第3の添加剤と、を含み、銅濃度が10〜60g/Lであり、硫酸濃度が10〜200g/Lであり、90mg/L以下の塩化物イオンを含み、低熱膨張性の酸性銅めっき物を製造することが可能である。
前記第1の添加剤が、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)またはジアリルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄との共重合体である、請求項2に記載の酸性銅めっき液。
前記第2の添加剤が、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)の部分2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸塩である、請求項1から3のいずれか1項に記載の酸性銅めっき液。
前記第3の添加剤が、(ジ)アルカンスルホン酸およびその塩、メルカプトアルカンスルホン酸およびその塩、芳香族スルホン酸およびその塩、ビス−(スルホアルキル)ジスルフィドおよびその塩、並びにジアルキルジチオカルバミン酸およびその塩からなる群から選択される1種以上の化合物である、請求項1から4のいずれか1項に記載の酸性銅めっき液。
シリコン貫通電極を有する半導体デバイスの製造方法であって、シリコン貫通電極を作製する工程が、一方の主面上にトランジスタと配線層が形成されたシリコン基板の他方の主面に貫通ビアを形成する工程と、前記貫通ビアに、請求項1記載の酸性銅めっき液を用いる電気めっきにより銅めっきする工程と、を含む、該半導体デバイスの製造方法。
下面に銅箔を有する基板の上面に前記銅箔に達する開口部を形成する工程と、前記基板上面と前記開口部に導電性の下地層を形成する工程と、次いで前記下地層の表面に請求項1記載の酸性銅めっき液を用いる電気めっきにより銅配線層を形成する工程と、前記銅配線層をパターニングする工程とを有する、プリント配線基板の製造方法。
下面に銅箔を有する基板の上面に前記銅箔に達する開口部を形成する工程と、前記基板上面と前記開口部に導電性の下地層を形成する工程と、前記下地層の上に所定の形状のレジスト層を形成する工程と、次いで前記レジスト層から露出した前記下地層の表面に請求項1記載の酸性銅めっき液を用いる電気めっきにより銅配線層を形成する工程と、次いで前記レジスト層と前記下地層を除去する工程とを有する、プリント配線基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面等を参照して本発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0016】
実施の形態1
本実施の形態では、本発明の酸性銅めっき液について説明する。
本発明の酸性銅めっき液は、カチオン性ポリマーからなる第1の添加剤と、2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸、2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸ナトリウム二水和物、エチレンチオ尿素、およびポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)の部分2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の第2の添加剤と、硫黄原子含有有機化合物からなる第3の添加剤と、を含み、銅濃度が10〜60g/Lであり、硫酸濃度が10〜200g/Lであり、90mg/L以下の塩化物イオンを含むことを特徴とするものである。
【0017】
第1の添加剤として用いるカチオン性ポリマーは、カチオン性基を分子内に有するポリマーであれば特に限定されない。カチオン性基としては、1級アミン基、2級アミン基、3級アミン基、4級アンモニウム基を挙げることができる。1級、2級または3級アミン基を分子内に含むポリマー(1級、2級または3級アミン塩ポリマーともいう)としては、ポリジアリルアミン塩、ポリアリルアミン塩、ポリエチレンイミン等を挙げることができる。また、4級アンモニウム基を分子内に含むポリマー(4級アンモニウム塩ポリマーともいう)としては、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)の単独重合体やその共重合体を挙げることができ、共重合体としてはジアリルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄との共重合体を挙げることができる。その共重合体の組成は、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド:二酸化硫黄のモル比が0.5:0.5〜0.95:0.05である。好ましくは、モル比が0.5:0.5である。また、第1の添加剤として複数のカチオン性ポリマーを用いることもできる。例えば、1級、2級または3級アミン塩ポリマーと4級アンモニウム塩ポリマーとを一緒に用いてもよい。また、4級アンモニウム塩ポリマーの単独重合体とその共重合体とを一緒に用いてもよい。
【0018】
第1の添加剤の濃度は、1〜50mg/L、好ましくは2〜20mg/Lである。1mg/Lより小さくても、また50mg/Lより大きくても線膨張係数が小さくなりにくいからである。また、4級アンモニウム塩ポリマーの分子量は、数平均分子量が1,000〜100,000の範囲にあることが好ましい。ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)と、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄との共重合体は市販されており、本発明では、その市販品を用いることもできる。例えば、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)は、(ニットーボーメディカル社製)のPAS−H−1L、PAS−5Lを挙げることができる。また、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄との共重合体は、ニットーボーメディカル社製のPAS−A−1やPAS−A−5を挙げることができる。
【0019】
第2の添加剤としては、2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸、2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸ナトリウム二水和物、エチレンチオ尿素、およびポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)の部分2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を用いる。好ましくは、2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸、2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸ナトリウム二水和物、およびポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)の部分2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸塩、より好ましくは、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)の部分2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸塩である。第2の添加剤の濃度は、0.1〜100mg/L、好ましくは1〜50mg/Lである。0.1mg/Lより小さくても、また100mg/Lより大きくても、線膨張係数が小さくなりにくいからである。
【0020】
なお、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)の部分2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸塩とは、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)の対イオンである塩化物イオンの一部が2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸イオンで置換されたものである。その置換比率は、モル比で塩化物体:2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸塩体=90:10〜50:50の範囲が好ましい。
【0021】
第3の添加剤としては、硫黄原子含有有機化合物を用いる。硫黄原子含有有機化合物としては、酸性銅めっきにおいてめっき析出速度を増加させる促進剤として使用されている公知の硫黄原子含有有機化合物を1種以上用いることができる。本発明で用いる硫黄原子含有有機化合物は、1つ以上の硫黄原子を含有する有機化合物であり、例えば、(ジ)アルカンスルホン酸およびその塩、メルカプトアルカンスルホン酸およびその塩、芳香族スルホン酸およびその塩、ビス−(スルホアルキル)ジスルフィドおよびその塩、並びにジアルキルジチオカルバミン酸およびその塩からなる群から選択される1種以上の化合物を挙げることができる。(ジ)アルカンスルホン酸としては、例えば、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ジプロパンスルホン酸等を挙げることができる。また、メルカプトアルカンスルホン酸としては、例えば、メルカプトエチルスルホン酸、メルカプトプロパンスルホン酸等を挙げることができる。また、芳香族スルホン酸としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、m−キシレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸等を挙げることができる。また、ビス−(スルホアルキル)ジスルフィドとしては、例えば、ビス−(スルホプロピル)ジスルフィド等を挙げることができる。また、ジアルキルジチオカルバミン酸としては、例えば、N,N−ジメチル−ジチオカルバミルプロパンスルホン酸等を挙げることができる。
【0022】
第3の添加剤の濃度は、0.1〜100mg/L、好ましくは0.5〜50mg/Lである。0.5mg/Lより小さくても、50mg/Lより大きくても、線膨張係数が小さくなりにくいからである。
【0023】
第1の添加剤に、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)および/またはジアリルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄との共重合体を用いる場合、第2の添加剤は、2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸、2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸ナトリウム二水和物、エチレンチオ尿素、またはポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)の部分2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸塩のいずれでもよいが、好ましくは、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)とポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)の部分2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸塩との組み合わせである。ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)とポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)の部分2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸塩とを組み合わせることで、より熱膨張しにくい、すなわちより線膨張係数の小さい酸性銅めっき物を製造することができる。
【0024】
本発明の酸性銅めっき液に用いる銅イオン源は、酸性銅めっき液に用いられる種々の無機銅塩や有機銅塩を用いることができるが、硫酸銅5水和物が好ましい。線膨張係数を小さくするためには、めっき液中の銅濃度は、10〜60g/L、好ましくは15〜55g/Lであり、銅塩を溶解するのに用いる硫酸の濃度は、10〜200g/L、好ましくは25〜180g/Lであり、また、塩化物イオンの濃度は、90mg/L以下でゼロではなく、好ましくは1〜70mg/Lである。
【0025】
本発明の酸性銅めっき液を用いることで、従来のめっき銅に比べて線膨張係数が小さい、低熱膨張性の酸性銅めっき物を製造することができる。本発明の酸性銅めっき液は、低熱膨張性が必要とされる、電子デバイス用の銅材料に用いることができる。例えば、TSV、回路用ガラス基板の銅配線、銅張積層板用の銅箔、半導体用銅配線および銅放熱板等を挙げることができる。
【0026】
実施の形態2
本実施の形態では、本発明の酸性銅めっき液を用いる電気めっきにより得られる酸性銅めっき物について説明する。
【0027】
本発明の酸性銅めっき物は、従来の酸性銅めっき物と比べ、室温における格子定数が大きく、例えば3.6147Åより大きいことを特徴とするものである。本発明の酸性銅めっき物の格子定数は、好ましくは、3.6147Å〜3.62Åである。
【0028】
さらに、本発明の酸性銅めっき物は、従来の酸性銅めっき物に比べて線膨張係数が小さい。従来のめっき銅は、その線膨張係数は1.70×10
−5/Kであり、温度に依存しない一定の値をとる。これに対し、本発明の酸性銅めっき物は、ある温度以上あるいはある温度範囲で、従来のめっき銅よりも線膨張係数が小さくなる。以下、本発明の酸性銅めっき物の態様について、酸性銅めっき物の熱処理温度または使用温度の下限温度と上限温度を用いて説明する。ある態様の酸性銅めっき物は、下限温度から上限温度の範囲内で、常に従来のめっき銅より線膨張係数が小さい(態様1)。また、別の態様の酸性銅めっき物は、下限温度と上限温度の間のある中間温度までは従来のめっき銅より線膨張係数が小さいが、その中間温度を超えると従来のめっき銅より線膨張係数が大きい(態様2)。また、別の態様の酸性銅めっき物は、下限温度と上限温度の間のある温度範囲内のみで従来のめっき銅より線膨張係数が小さい(態様3)。また、別の態様の酸性銅めっき物は、下限温度と上限温度の間のある中間温度までは従来のめっき銅より線膨張係数が小さく、さらにその中間温度を超えると線膨張係数がゼロあるいはマイナス(収縮する)となる(態様4)。また、別の態様では、下限温度と上限温度の間のある中間温度までは従来のめっき銅より線膨張係数が大きく、その中間温度を超えると線膨張係数が小さくなりゼロあるいはマイナス(収縮する)となる(態様5)。ここで下限温度は0℃〜100℃であり、上限温度は600℃〜800℃である。下限温度と上限温度の組み合わせは、0℃〜800℃、好ましくは100℃〜600℃である。また、従来のめっき銅より線膨張係数が小さくなる、ある温度範囲とは、下限温度と上限温度の間の中間の温度範囲内であれば特に限定されないが、例えば下限温度と上限温度の組み合わせが100℃〜600℃の場合、100℃以上500℃未満、100℃以上400℃未満、100℃以上300℃未満、100℃以上200℃未満、200℃以上600℃未満、200℃以上500℃未満、200℃以上400℃未満、200℃以上300℃未満、300℃以上600℃未満、300℃以上500℃未満、300℃以上400℃未満、400℃以上600℃未満、400℃以上500℃未満、または500℃以上600℃未満である。
【0029】
例えば、本発明の酸性銅めっき物には、200℃での線膨張係数が、1.58×10
−5/K以下であるものが含まれる。また、本発明の酸性銅めっき物には、400℃での線膨張係数が、1.55×10
−5/K以下であるものが含まれる。また、本発明の酸性銅めっき物には、200℃での線膨張係数が、1.58×10
−5/K以下であり、かつ400℃での線膨張係数が、1.55×10
−5/K以下であるものが含まれる。さらに、本発明の酸性銅めっき物には、ある温度以上で負の線膨張係数を有し、逆に収縮するものも含まれる。
【0030】
また、本発明の酸性銅めっき物は、熱処理後の炭素含有量が多い方が好ましい。線膨張率が小さくなり易いからである。例えば、450℃での熱処理後の炭素含有量が0.005重量%以上、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.015重量%である。なお、炭素含有量は、高周波燃焼赤外線吸光法により測定した値を用いることができる。
【0031】
ここで、本発明で用いた、線膨張係数の測定方法について説明する。測定には、NETZSCH JAPAN製の線膨張測定装置(型式TD5000 SA/25/15)を用いた。測定試料には、以下の手順で作製したパイプ状試料を用いた。
1.銅めっき用カソード電極の作製
外径4mm、厚さ0.2mm、長さ100mmのアルミパイプの表面に、長さ約15mmにわたって厚さ15nmのAu膜をスパッタリングにより形成した。
(銅めっき)
上部をフッ素樹脂テープでマスキングしたAu膜付きアルミパイプを本発明の酸性銅めっき液に浸漬してカソードとし、5〜100mA/cm
2の定電流でAu膜上に銅を析出させた。なお、電源には、菊水電子工業製の直流電源PMX18−2Aを用い、めっき液攪拌には、イワキ製のマグネットポンプ(Iwaki MD−15R−N)を用いた。また、アルミパイプの表面のめっき面積は、マスキングテープで調整し、(1.5×0.4×π)=1.88cm
2とした。
(アルミの溶解)
表面に銅を析出させたアルミパイプを、100g/Lの水酸化ナトリウム溶液中に浸漬して、アルミを溶解させることで、銅めっき物からなり、内径が4mm、厚さが約20μm、長さ15mmのパイプ(以下、銅めっき物パイプと略す)を得た。
なお、線膨張率の測定は、作製した銅めっき物パイプ12を
図11の平面図に示す測定セル10内に取り付け、標準試料に石英棒11を用いて室温から500℃の温度範囲で行った。試料(銅めっき物パイプ)12の熱膨張に伴い、試料12に接する検出棒14が変位し、その変位を光学的に検出する。標準試料11および試料12を抑える検出棒13,14の荷重は1.0gとしアルゴン雰囲気で、測定を行った。なお、測定セルはオーブン(不図示)の中に取り付けられている。
【0032】
本発明の酸性銅めっき物は、低熱膨張性が必要とされる、電子デバイス用の銅材料に用いることができる。例えば、TSV、回路用ガラス基板の銅配線、銅張積層板用の銅箔、半導体用銅配線および銅放熱板等を挙げることができる。
【0033】
実施の形態3
本実施の形態では、本発明の酸性銅めっき液を用いる、シリコン貫通電極を有する半導体デバイスの製造方法について説明する。
本発明の、シリコン貫通電極を有する半導体デバイスの製造方法は、前記シリコン貫通電極を作製する工程が、一方の主面上にトランジスタが形成されたシリコン基板の該一方の主面に非貫通ビアを形成する工程と、少なくとも前記非貫通ビアに、請求項1記載の酸性銅めっき液を用いる電気めっきにより銅めっきする工程と、前記シリコン基板の他方の主面を研磨して、前記非貫通ビアに充填された銅を露出させて前記シリコン貫通電極を形成する工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0034】
また、本製造方法においては、銅めっきする工程において、非貫通ビアに銅を充填することができる。
【0035】
本製造方法で製造する半導体デバイスとは、TSVを含む装置であれば特に限定されないが、例えば、LSIチップをTSVで積層したもの、ガラス基板にTSVを用いたもの等を挙げることができる。
【0036】
非貫通ビアの開口径は、0.5〜100μm、好ましくは1〜50μmである。また、非貫通ビアの深さは、1〜1000μm、好ましくは2〜500μmである。またアスペクト比は、0.1〜100、好ましくは1〜40である。
【0037】
上記の電気めっきにより銅を充填する工程における電気めっき条件としては、浴温は、室温〜99℃、好ましくは20〜40℃である。また、通電方法は、直流電解またはPR電解(周期的電流反転電解)を用いることができる。電流密度は、0.1〜800mA/cm
2、好ましくは1〜200mA/cm
2である。また、めっき時間は、ビアの直径や深さによるが、20〜300分が好ましい。また、陽極には、酸性銅めっきに用いられるものであれば特に限定されず、可溶性電極または不溶性電極を用いることができる。また、めっき液の攪拌は、エアレーションや噴流等の一般的な方法を用いることができる。
【0038】
本製造方法によれば、絶縁用酸化膜を形成する際、400〜600℃に加熱しても、TSVを形成する酸性銅めっき物の線膨張係数が小さいので、ポンピングを防止できる。それにより、加熱工程やCMP工程を増加させることなく、TSVのポンピングを防止することが可能となる。
【0039】
実施の形態4
実施の形態3では、ビアミドルプロセスを用いるシリコン貫通電極を有する半導体デバイスの製造方法について説明したが、ビアラストプロセスとビアラストバックサイドプロセスを用いる、シリコン貫通電極を有する半導体デバイスの製造方法にも、本発明の酸性銅めっき液を用いることができる。
すなわち、本発明の別の態様に係るシリコン貫通電極を有する半導体デバイスの製造方法は、シリコン貫通電極を作製する工程が、一方の主面上にトランジスタと配線層が形成されたシリコン基板の他方の主面に貫通ビアを形成する工程と、前記貫通ビアに、本発明の酸性銅めっき液を用いる電気めっきにより銅めっきする工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0040】
また、本製造方法においては、銅めっきする工程において、貫通ビアに銅を充填することができる。
【0041】
本製造方法においては、貫通ビアの開口径、深さ、およびアスペクト比は、実施の形態3の非貫通ビアと同様の値を用いることができる。また、電気めっき条件も実施の形態3の場合と同様である。また、製造する半導体デバイスも実施の形態3の場合と同様である。
【0042】
本製造方法によれば、はんだリフロー温度においても、TSVを形成する酸性銅めっき物の線膨張係数が小さいので、TSVのポンピングを防止できる。
【0043】
実施の形態5
本実施の形態では、本発明の酸性銅めっき液を用いる、プリント配線基板の製造方法について説明する。
【0044】
本発明のプリント配線基板の製造方法は、下面に銅箔を有する基板の上面に前記銅箔に達する開口部を形成する工程と、前記基板上面と前記開口部に導電性の下地層を形成する工程と、次いで前記下地層の表面に請求項1記載の酸性銅めっき液を用いる電気めっきにより銅配線層を形成する工程と、前記銅配線層をパターニングする工程とを有する、ことを特徴とするものである。
【0045】
また、本製造方法においては、銅配線層を形成する工程において、開口部に銅を充填することを含んでもよい。
【0046】
電気めっき条件としては、浴温は、室温〜99℃、好ましくは20〜40℃である。また、通電方法は、直流電解を用いることができる。電流密度は、0.1〜800mA/cm
2、好ましくは1〜500mA/cm
2である。また、めっき時間は、20〜300分が好ましい。また、陽極には、酸性銅めっきに用いられるものであれば特に限定されず、可溶性電極または不溶性電極を用いることができる。また、めっき液の攪拌は、エアレーションや噴流等の一般的な方法を用いることができる。
【0047】
近年の電子機器の小型化、薄型化の要求により、プリント配線基板においても、ファインピッチ化の要求が高まっている。しかし、部品実装時のハンダリフロー温度で、銅配線の熱膨張により、配線基板に反りが生じ、ハンダバンプ同士の接触により接続不良が発生する可能性がある。これに対し、本発明の酸性銅めっき液を用いることで、配線基板の反りを抑制することも可能となる。
【0048】
実施の形態6
本実施の形態では、本発明の酸性銅めっき液を用いる、別のプリント配線基板の製造方法について説明する。
【0049】
本発明のプリント配線基板の製造方法は、下面に銅箔を有する基板の上面に前記銅箔に達する開口部を形成する工程と、前記基板上面と前記開口部に導電性の下地層を形成する工程と、前記下地層の上に所定の形状のレジスト層を形成する工程と、次いで前記レジスト層から露出した前記下地層の表面に請求項1記載の酸性銅めっき液を用いる電気めっきにより銅配線層を形成する工程と、次いで前記レジスト層と前記下地層を除去する工程とを有する、ことを特徴とするものである。
【0050】
また、本製造方法においては、銅配線層を形成する工程において、開口部に銅を充填することを含んでもよい。
【0051】
また、本製造方法の電気めっき条件は、実施の形態5の場合と同様な条件を用いることができる。
【0052】
本製造方法においても、実施の形態5の場合と同様に、本発明の酸性銅めっき液を用いることで、部品実装時のハンダリフロー温度での銅配線の熱膨張による、配線基板の反りを抑制することが可能となる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
(酸性銅めっき液の調製)
実施例および比較例に用いた酸性銅めっき液の組成を表1〜表10に示す。用いた添加剤の略号と入手先は以下の通りである。
SPS:ビス−(スルホプロピル)ジスルフィド(アルドリッチ製)
PD−1H:ポリスチレンスルホン酸
PDSH:1,3−プロパンジスルホン酸
SDDACC:ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(ニットーボーメディカル社製)
NMDSC:ジアリルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄との共重合体(ニットーボーメディカル社製)
2M5S:2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸(和光純薬製)
ETU:エチレンチオ尿素(和光純薬製)
A2M5S:ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)の部分2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸塩(ニットーボーメディカル社製)(塩化物体:2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸塩体=75:25)
MB1:2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸ナトリウム二水和物(和光純薬製)
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】
【表6】
【0061】
【表7】
【0062】
【表8】
【0063】
【表9】
【0064】
【表10】
【0065】
試験例1(線膨張係数測定)
前述の線膨張係数の測定方法で説明した銅めっき用カソードを用い、液温25℃、電流密度10〜100mA/cm
2でめっきを行い、アルミの芯材を溶解除去することで、内径が4mm、厚さが約20μm、長さ15mmの銅めっき物パイプを得た。
【0066】
前述のNETZSCH JAPAN製の線膨張測定装置を用い、室温から500℃の範囲で、線膨張係数の測定を行った。測定結果を表1〜表10に示す。なお、市販の銅パイプについても、室温から500℃の範囲で、線膨張係数の測定を行ったところ、線膨張係数は、(1.70±0.01)×10
−5/Kであった。
【0067】
実施例の線膨張係数について説明する。比較例1は第1の添加剤と第3の添加剤は含むが第2の添加剤を含まないめっき液である。比較例1の場合、従来のめっき銅の場合と同様に伸びは温度とともに直線的に増加し、線膨張係数は、200℃で1.65×10
−5/K、400℃で1.70×10
−5/Kであった。これに対し、第1の添加剤と第2の添加剤と第3の添加剤を含む実施例1〜実施例13では、200℃で1.03×10
−5/K〜1.58×10
−5/Kという低い線膨張係数が得られた。さらに、第2の添加剤としてA2M5Sを用いた場合、実施例3では、400℃で0.535×10
−5/Kという、純銅の30%程度の非常に低い値が得られた。また、実施例14では、
図1に示すように、約350℃から高温で線膨張係数が負となる傾向を示し、例えば400℃では、−7.5×10
−5/Kである。
【0068】
実施例16〜32および比較例2〜4は、第1の添加剤にNMDSC、第2の添加剤に2M5S、第3の添加剤にSPSを用いた実験例である。また、実施例33〜53は、第1の添加剤にSDDACC、第2の添加剤にA2M5S、第3の添加剤にSPSを用いた実験例である。また、実施例54〜57は、第2の添加剤にETUを用いた実験例であり、実施例54では第1の添加剤にNMDSCを用い、実施例55〜57では第1の添加剤にSDDACCを用いた。銅濃度については、10〜60g/Lの範囲であれば、低い線膨張係数が得られたが(例えば実施例16,18,36)、60g/Lを超えると線膨張係数が高くなった(比較例2)。また、硫酸濃度が、10〜200g/Lの範囲であれば、低い線膨張係数が得られた(例えば、実施例16,19,20,37〜39)。また、塩化物イオン濃度については、ゼロを除く90mg/L以下の範囲で、低い線膨張係数が得られた(実施例21〜24,40〜43、比較例3,4)。また、SPSの濃度を広い範囲で変化させても低い線膨張係数が得られた(例えば実施例25〜28,44〜47)。また、A2M5Sの濃度を広い範囲で変化させても低い線膨張係数が得られた(実施例30〜32,51〜53)。また、ETUを用いた場合でも、低い線膨張係数が得られた(実施例54〜57)。また、SDDACCの濃度を広い範囲で変化させても低い線膨張係数が得られた(例えば実施例48〜50)。また、浴温度の影響については、室温(約20℃、実施例33)、40℃(実施例34)、50℃(実施例35)のいずれの場合も、低い線膨張係数が得られた。
【0069】
また、第2の添加剤にMB1を用いた場合も、低い線膨張係数が得られた(実施例58,59)。また、第3の添加剤に、PS−1Hを用いた場合(実施例60)や、PDSHを用いた場合(実施例61)でも、低い線膨張係数が得られた。
【0070】
試験例2(TSVのポンピング評価)
次に、本発明の酸性銅めっき液を用いてTSVを作製し、作製したTSVのポンピングについて評価を行った。
【0071】
開口径6μm×深さ25μm(アスペクト比4)の非貫通ビアを形成したシリコン基板を用い、その表面にスパッタリングにより厚さ200nmの下地層を形成した。
【0072】
下地層を形成したシリコン基板を、実施例2の組成を有する酸性銅めっき液に浸漬し、陽極に(含リン銅)を用い、以下のPR電解条件で、めっき時間90分で銅めっきを行った。また、比較例1の組成を有するめっき液を用いて同様のPR電解条件で銅めっきを行った。
正電解電流値(Ion) −3mA/cm
2
逆電解電流値(Irev) 18mA/cm
2
正電解時間(Ton) 200ms
逆電解時間(Trev) 10ms
休止時間(Toff) 200ms
【0073】
銅めっきで充填した非貫通ビアの断面の状態を、走査型電子顕微鏡(以下、SEMともいう)(日立製作所製S−4300)で観察した。
図2にその断面のSEM写真を示す。ボイドがなく完全充填されたTSVが得られたことを確認できた。
【0074】
次に、作製したTSVを、
図12に示すin situ観察用の高温用サンプルステージ20に固定した。サンプルステージ20は、表面にカーボンプレート22が配置されたセラミックヒータ21を支持するセラミックサポート23を有している。サンプル28は一対のクランプ24,25によりカーボンプレート22上に固定されている。セラミックヒータ21の温度は熱電対27により制御され、サンプル28の温度は熱電対26により検知される。
【0075】
図3Aに、比較例1のめっき液を用いて作製したTSVの室温(左側)と450℃に加熱した時(右側)の走査型電子顕微鏡写真を示す。TSVがシリコン基板の表面に溢れ、ポンピングが起きていることがわかる。一方、
図3Bは、実施例14のめっき液を用いて作製したTSVの室温(左側)と450℃に加熱した時(右側)の走査型電子顕微鏡写真である。シリコン基板表面からのTSVの膨れは認められず、ポンピングが抑制されていることが確認できた。
【0076】
図4Aと
図4Bは、450℃の加熱を6回繰り返した後の走査型電子顕微鏡写真であり、実施例14のめっき液を用いて作製したTSV(
図4A)では全くポンピングが認められないのに対し、比較例1のめっき液を用いて作製したTSV(
図4B)ではポンピングが認められた。なお、比較例1のめっき液を用いて作製したTSVは、シリコン基板の表面から最大で1.419μmの高さまでポンピングしていた。
【0077】
試験例3(TSVの電気抵抗測定)
実施例2の組成のめっき液を用い、ガラス板(大きさ25×75mm)の表面に金をスパッタリングした電極をカソードとし、陽極に含リン銅を用いて、3mA/cm
2の電流密度で銅めっきを行った。一方、比較例1の組成のめっき液を用い、同様の条件で銅めっきを行ったものを比較サンプルとした。作製したサンプルは、室温で電気抵抗測定を行った後、以下の加熱処理を行った。
昇温速度:10℃/分
真空度:1.5×10
−5Torr
保持温度:400℃
保持時間:30分
【0078】
電気抵抗の測定は、四端子法を用い室温で行った。比較サンプルの体積抵抗値は、3.7×10
−6Ω・cmであった。これに対し、実施例2の組成のめっき液を用いて製造した酸性銅めっき物の体積抵抗値は、4.0×10
−6Ω・cmであった。その差は、9%程度であり、従来と同等の電気抵抗を有することを確認した。
【0079】
試験例4(プリント配線基板用配線としての評価)
実施例15の組成のめっき液を用い、電流密度を3mA/cm
2とした以外は、試験例1と同様の方法を用いて作製した銅めっき物パイプをサンプルとして用いた。そのサンプルを200℃で60分加熱した後、線膨張係数の測定を行った。また、比較例1の組成のめっき液を用い、同様の条件で銅めっきを行ったものを比較サンプルとした。
【0080】
結果を
図5に示す。実施例15の組成のめっき液を用いたサンプルの、230℃における線膨張係数は、0.5×10
−5/Kであり、比較サンプルに比べてその伸びが約34%小さな値であった。これより、ハンダのリフロー温度において、熱膨張を抑制可能な銅めっき配線が可能であることを確認できた。
【0081】
また、実施例1の組成のめっき液を用い、試験例3と同様の方法により、電気抵抗測定用のサンプルを作製した。また、比較例1の組成のめっき液を用い、試験例3と同様の方法で比較サンプルを作製した。作製したサンプルは、以下の加熱処理を行った。
昇温速度:10℃/分
真空度:1.5×10
−5Torr
保持温度および保持時間:200℃で60分、230℃で1分
【0082】
電気抵抗の測定は、四端子法を用い室温で行った。比較サンプルの体積抵抗値は、3.7×10
−6Ω・cmであった。これに対し、実施例15の組成のめっき液を用いて製造した酸性銅めっき物の体積抵抗値は、5.1×10
−6Ω・cmであった。その差は、39%程度であり、従来と同等の電気抵抗を有することを確認した。
【0083】
(酸性銅めっき物の分析)
本発明の酸性銅めっき液を用いて作製した酸性銅めっき物について、FEAES分析とX線回折分析を行った。FEAES分析を、アルバックファイ社製の電界放射型オージェ電子分光装置(型式686)を用いて行った。分析には実施例14の酸性銅めっき物を用いた。
【0084】
図6に熱処理に伴う、本発明の酸性銅めっき物の組織観察結果を示す。aは203℃、bは310℃、cは350℃、dは450℃、と加熱したときの加熱温度を保持したままの組織観察結果である。aでは粒径1.0μm程度の銅結晶が観察出来る。bでは粒径数100μm程度の黒色組織が出現した。この黒色組織は銅結晶の結晶粒界の三重点付近に多く析出していた。また、c、dではその黒色組織の個数が多くなった。
【0085】
図7は、450℃に加熱した、本発明の酸性銅めっき物のSEM写真であり、写真中央に見える黒点部1が黒色組織、それ以外の組織が銅である。
図8および
図9は、それぞれ、
図7の写真中の黒色組織とそれ以外の組織のFEAES分析結果であり、横軸は運動エネルギー(eV)、縦軸は強度を示す。黒点部1には910eV近傍の銅の強度はほとんど出ない。しかしながら、280eV近傍の炭素の強度は強い。黒色組織は炭素の塊である。一方、黒色組織以外の組織、例えば写真中の符号2の部分では銅の強度が著しく強く、同時に炭素の強度も強い。FEAESは金属の最表面の情報を与える。そして金属は大気中の炭素を容易に吸着する。そのため符号2の部分では炭素の強度が強くでたものと考えられる。
【0086】
なお、450℃に加熱した本発明の酸性銅めっき物について、LECOジャパン製の炭素・硫黄分析装置CSLS600を用いて、高周波燃焼赤外線吸光法により含有炭素量の分析を行ったところ、0.018重量%の値が得られた。一方、第2の添加剤を含まない比較例1についても含有炭素量の分析を行ったところ、含有炭素量は0.004重量%であった。
【0087】
図10は、アズデポジットの酸性銅めっき物と、それを450℃で30分間アニールした後(以下、アニール後という)の酸性銅めっき物のX線回折の結果を示す図である。格子定数の変化が著しく検出できる高角度側のCu(222)αhとCu(222)α2とを図示した。Cu(222)αhがアニール後に0.3度程度高角度側に変位している。この格子定数の変位を格子定数で表すと、アズデポジットではd=3.6155Å、アニール後ではd=3.6139Åとなり、格子定数が減少し銅の単位胞が縮んでいることを確認した。
【0088】
アズデポジットの銅は、炭素を銅単位胞内に固溶していると考えられる。そのためこの固溶体銅は非平衡状態である。加熱に伴いこの非平衡状態の固溶体銅から炭素を固溶しない平衡状態の銅に変化する。この炭素が拡散して銅粒界の三重点に析出する(
図6のb、c、dおよび
図7の黒色組織)。この熱処理に伴う非平衡銅から平衡銅への単位胞の収縮が、従来のめっき銅と比べて線膨張係数が低い銅が発現したメカニズムであると考えられる。