特開2018-165610(P2018-165610A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2018-165610高機能燃焼効率および排煙浄化型の小型燃焼炉
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-165610(P2018-165610A)
(43)【公開日】2018年10月25日
(54)【発明の名称】高機能燃焼効率および排煙浄化型の小型燃焼炉
(51)【国際特許分類】
   F23B 80/02 20060101AFI20180928BHJP
【FI】
   F23B80/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-79273(P2017-79273)
(22)【出願日】2017年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】517129717
【氏名又は名称】神田 多
(72)【発明者】
【氏名】神田 多
(72)【発明者】
【氏名】内村 正一
(72)【発明者】
【氏名】山本 久志
(72)【発明者】
【氏名】野田 隆
【テーマコード(参考)】
3K046
【Fターム(参考)】
3K046AA01
3K046AA06
3K046AA11
3K046AB08
3K046AC06
3K046AD02
3K046BA02
3K046BA07
3K046CA09
(57)【要約】
【課題】小型燃焼炉における燃料の燃焼効率化の向上および排煙の浄化にかかる手段に対しては特別な装置を必要とし、小型燃焼炉製作上の負担となっている。ここに、燃料の燃焼効率化の向上および排煙の浄化を特別な装置を使用せず同時に達成できる燃焼装置を提供する。
【解決手段】燃焼炉の外部に、燃焼室の上部と下部とをパイプでつなぎ、燃焼室内で燃料の燃焼により高温となった空気を循環させて再度燃料に吹き当てることで燃料が加熱され、燃焼効率が向上される、さらに燃料の燃焼後の空気(排煙)中に含まれる未燃焼ガスなどが再燃焼されることで排煙の浄化効果が得られる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室内の加熱された排煙を含んだ空気を再度燃焼室内に循環させて燃料を加熱し、かつ排煙を再燃焼することで、燃料の燃焼効率および排煙の浄化能力を高めた高機能性の小型燃焼炉。
【請求項2】
燃焼室の加熱された空気を燃焼室上部より煙筒を用いて再度燃焼室下部に送り込んで燃料に吹きつけることにより燃料が加熱され、燃焼効率が高まることを特徴とする請求項1に記載の燃焼効率高機能型の小型燃焼炉。
【請求項3】
燃焼室で発生した排煙が加熱された空気とともに再度燃焼室に送り込まれ、再び加熱されることで、排煙中に残る未燃焼の可燃性ガスおよび揮発物質などが再燃焼されることにより排煙が浄化されることを特徴とする排煙浄化型の小型燃焼炉。
【請求項4】
燃焼室内の燃料を再加熱することで燃焼効率を高め、さらに燃料の燃焼時に発生した排煙中に含まれる未燃焼物質および揮発性物質などが燃焼されることで排煙の浄化が得られることを特徴とする請求項1〜3に記載の高機能燃焼効率および排煙浄化型の小型燃焼炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室内の加熱された空気を用いて燃料が熱せられることで燃焼の効率が向上すること、さらに排煙中に残る未燃焼ガスおよび揮発性物質が再度加熱され火炎の中を通り再燃焼されることで排煙が浄化される高機能燃焼効率および排煙浄化型の小型燃焼炉に関する。
より詳しくは、燃焼室内の燃料が燃焼した際に生ずる加熱空気を煙筒を用いて再度燃焼室に導入し、燃料に吹き付けることで燃料が加熱されて高温となり燃焼効率が向上すること、更に、燃料の燃焼により発生する排煙に含まれる未燃焼ガス及び揮発性物質などが再度加熱されることで排煙が浄化される高機能燃焼効率および排煙浄化型の小型焼却炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小型燃焼炉は燃焼室に配置された燃料(木片、石炭、コ−クス、木炭などに着火し自燃させる。燃料の燃焼を助けるために燃焼炉下部に空気取り入れ口を設け、排煙を放出するための煙筒を燃焼炉上部に配置する。更に排煙を浄化するために煙筒の中間部に排煙を再燃焼させるための二次燃焼装置を設置して排煙の浄化をはかる仕組みが採られている。この方法では、燃料が着火により徐々に温度が上昇するまで燃焼が抑制されることと、燃焼初期の燃焼温度が低いことから不完全燃焼が起こり、大量の未燃焼ガスを含んだ排煙が生ずる。また、燃焼が進んでも排煙の中には未燃焼ガス及び揮発性物質などが混じって排出されるため環境に不適切な負荷を与える。これを解決するために排煙の二次燃焼装置が必要となり、小型燃焼炉を製造する上での技術的、経済的負担となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の小型燃焼炉では、燃料の燃焼に空気取り入れ口から供給される空気量が少なく、燃焼に長い時間を要し、その間に大量の未燃焼の排煙が発生する(不完全燃焼)。更に、発生した排煙の二次燃焼装置には新たな熱源(電気など)が必要であり、小型燃焼炉としてのコストが大きく占められることで実用的経済範囲を越えるため、このような負担を少なくする技術の開発が望まれている。本発明はこうした要望に合致した技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施の方法は以下に示す方法により実施される。すなわち高機能燃焼効率および排煙浄化型の小型焼却炉を得るには、材料としては次のものが使用され配置される。
【0005】
燃焼炉の主材は、例えば、ステンレス鋼材、軟鉄鋼材など。また、試作品ではステンレス鋼材、軟鉄鋼材を用いたが、その他、耐火煉瓦、コンクリ−ト、耐熱性珪藻土生成物などを用いてもよい。
ここでは、ステンレス鋼材(厚さ2mm)を用いてドラム缶状の円筒とし、有底で上部は開放、上部は蓋で覆い燃焼炉の外枠(本体)とする。
本体円筒の基部には燃料挿入口を設け、開閉式の扉を付ける。扉には燃焼室内を観察するための覗き穴を配し、覗き穴は開閉式とする。
本体円筒の上部に加熱空気取り出し口および下部に空気送入口を設け、上部取り出し口にL型煙突を、下部の空気送風口にT型煙突を取り付け、その間を直管煙筒で連結する。
空気送風口のT型煙突は外部から送風機による送風が可能なように開口させておくことで、送風機から送られる風がT型煙突の接合部を通過する際に生ずる空気の陰圧により、上部の煙突からの排煙を吸引して送風機から送られる空気と混じり、燃料へと送られる。
本体円筒下部のT型煙突の反対側に排煙用の煙突を設け、煙突は燃焼炉の高さの2〜3倍とする。
【0006】
燃焼炉の内部は、本体円筒状の燃焼室内には、燃料を配置するためのステンレス鋼材製の網状の燃料棚を置く。
燃料棚の下部には、燃焼炉に開口したT型煙突を通して送られる加熱空気が燃料へと導かれるようにL型煙突の開口部を燃料棚に向ける。
【発明の効果】
【0007】
以上説明してきたように、本発明によれば、高機能燃焼効率および排煙浄化型の小型焼却炉による燃料の燃焼および燃焼終了においては、燃焼炉内の高温の空気を再度燃焼炉の燃料に吹き付けることで燃料が予熱され、燃焼効率が上がり短時間で高温の燃焼が可能となった。さらに、燃焼炉内で燃焼時に不完全燃焼により発生した排煙が再度燃焼炉内に戻されて再加熱されることで、不完全燃焼により生じた排煙が再び燃焼され、二次燃焼効果により無煙化されて排煙の浄化効果が得られた。
本発明により、燃焼炉として求められる燃料の燃焼効率化と排煙からの有害物質除去の機能が容易に得ることができ、小規模な燃焼炉では技術的および経済的に困難とされる燃料の燃焼効率化と排煙からの未燃焼による有害物質の除去が同時に可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】燃焼炉本体の外観構造図
図2】燃焼炉本体の内部構造図
図3】燃焼機能の概略図
【発明を実施するための形態】
高機能燃焼効率および排煙浄化型の小型燃焼炉の製造の実施例について、図1から図3に基づいて説明する。
【0009】
材料 ステンレス製鋼板 厚さ2mm。(規格:SUS304)
軟鉄性鋼板 厚さ2mm
ステンレス製L型煙突 (規格:エビ曲90°径106mm)
ステンレス製T型煙突 (規格:T曲 径106mm)
ステンレス製直管煙突 (規格:径106mm x 長さ910mm、および長さ 630mm)
ステンレス製 エキスパンドメタル(メッシュ16x32mm、板厚1.5mm)
耐火ブロック(360x190x69mm)
耐火煉瓦(230x114x65mm)
【0010】
成形方法
燃焼炉本体の胴部は、材料(1)のステンレス鋼を直径570mm筒状とし、底部は同材料により有底とする。
本体左側上部から100mmの位置に材料(3)のL型円筒を取り付ける(図‐a)。
本体左側底部から100mmに位置に材料(4)のL型円筒を取り付け(図‐b)、材料(5)の直管円筒で材料(3)aと(4)bをつなぐ(図‐C)。
本体の右側底部50mmの位置に材料(3)のL型円筒を取り付ける(図‐d)。
材料(3)のL型円筒を取り付ける(図‐d)に材料(5)の直管煙筒を取り付け(図‐f)、先端に材料(3)のL型円筒を取り付け(図‐e)、排気用の煙突とする。
本体正面の下部に400mm x 400mmの開口部を設け、燃料挿入口および燃焼残渣の取出し口とする(図‐h)。
燃料投入口には材料(2)の軟鉄性鋼板で同形に切った扉をつけ片側を蝶番で止める(図‐h)。
燃料挿入口の扉には小穴をあけて内部の確認窓(覗き穴)としてもよい。
本体の上部は材料(1)のステンレス製鋼板で同形に作った蓋をする(図‐i)。上部の蓋は取り外しができるよう、固定しない。
【0011】
内部の構造
本体左側上部に取り付ける材料(3)のL型円筒は本体内部に吐出しない(図‐a)。
本体左側底部に取り付ける材料(4)のT型円筒には本体内部で材料(3)のL型円筒を取り付け、開口部を本体中央で上向きとし(図‐g)、開口部は燃焼床直下に配する。
本体右側底部に取り付ける材料(3)のL型円筒は本体内部に吐出しない(図‐d)。
本体底部に材料(7)の耐火ブロックを4〜6個置き、内径に合わせて円盤状に切った材料(6)のステンレス製エキスパンドメタルを置き、燃料の燃焼床とする(図‐j)。
燃焼床(図‐j)としたエキスパンドメタルの上に材料(8)の耐火煉瓦を4から6個置き、その上に同形の材料(6)のステンレス製エキスパンドメタルを置いて炭化材料などを置く台とする(図‐k)。
【0012】
本体の底部に設置した材料(4)のT型円筒(図‐b)に接続した材料(3)のL型円筒の開口部は本体中央で上向きとする(図‐g)。
【実施例】
高機能燃焼効率および排煙浄化型の小型焼却炉による燃焼例‐1
焼却炉としての活用例
【0013】
材料
1.高機能燃焼効率および排煙浄化型の小型焼却炉
2.電気式送風機(100v・300w、風量2.3m/min.、風圧3.9kPa
3.燃料として、樹木剪定廃材、雑草の刈り取り残渣の混合物
【0014】
燃焼準備
1.高機能燃焼効率および排煙浄化型の小型焼却炉内に耐火煉瓦を4個置き、その上に燃焼炉の内径に等しくなるように切断した軟鉄製エキスパンドメタルを置いて火床とし、その上に燃料として樹木の剪定廃材を20kg置いた。
2.燃料への着火用に、焚き付け材として丸めた新聞紙を燃料の下に挿入した。
3.燃焼炉上部の蓋を閉め、煙突および空気取り入れ口は開放とした。
【0015】
燃焼の経過と燃焼状態
1.燃料への着火は、燃料挿入口を開き焚き付け材にマッチで着火した後、燃料挿入口を閉じた。
2.焚き付け材から燃料に火が移ったことを確かめて、電気式送風機を運転し送風を開始した。
3.燃焼の始めは煙突から白煙が出て燃焼炉の中で燃料に火が回っていることが確かめられたが、燃焼開始10分後には煙突からの排煙は肉眼では確認できなくなり、透明な熱気の排出状態となって、 60分後の燃料が燃え尽きるまで継続した。
4.燃焼が終了後、燃焼炉上部の蓋を開けると燃料は完全に焼却され、500gの焼却灰が残るのみであった。
【実施例】
高機能燃焼効率および排煙浄化型の小型焼却炉による燃焼例‐2
炭化炉としての活用例
【0016】
材料
1.高機能燃焼効率および排煙浄化型の小型焼却炉
2.電気式送風機(100v・300w、風量2.3m/min.、風圧3.9kPa
3.燃料 ナラ材による燃料用薪(木口約5〜10cm、長さ30cm)
4.炭化材料 竹材(幅2cm、厚さ5〜7mm、長さ15cmに切断)
5.炭化材の収納容器(ブリキ製一斗缶)
【0017】
燃焼の準備
1.高機能燃焼効率および排煙浄化型の小型焼却炉内に耐火煉瓦を4個置き、その上に燃焼炉の内径に等しくなるように切断した軟鉄製エキスパンドメタルを置いて火床とし、中央に炭化材料として竹材1.2kgを詰めた一斗缶を置いた。一斗缶は蓋をして密閉状態としたが、内部の熱膨張した空気は蓋の隙間から容易に漏れる状態を保つ。
2.燃料の薪は、一斗缶の周囲に8.0kgを配置した。
3.燃料への着火用に、焚き付けとして木屑および丸めた新聞紙を薪の下に挿入した。
4.燃焼炉上部の蓋を閉め、煙突および空気取り入れ口は開放とした。
【0018】
燃焼の経過と燃焼状態
1.燃料への着火は、燃料挿入口を開き、焚き付け材にマッチで着火した後、燃料挿入口を閉じた。
2.焚き付け材から燃料の薪に火が移ったことを確かめて、電気式送風機を運転し送風を開始した。
3.燃焼の始めは煙突から白煙が出て燃焼炉の中で燃料に火が回っていることが確かめられたが、燃焼開始10分後には煙突からの排煙は肉眼では確認できなくなり、透明な熱気の排出状態となって45分後の燃料が燃え尽きるまで継続した。
4.燃焼が終了後、燃焼炉上部の蓋を開けると、燃料は完全に焼却され、250gの焼却灰が残るのみであった。
5.燃焼炉内に置いた一斗缶は余熱で高温なため、燃焼炉から取り出した後、冷却を待って一斗缶内部の炭化材料を確認すると、竹材は完全に炭化し、1.2kgの竹材が0.37kgの竹炭となった。
【産業上の利用可能性】
【0019】
以上説明してきたように、本発明によれば、高機能燃焼効率および排煙浄化型の小型焼却炉による燃料の燃焼および燃焼終了においては、燃焼炉内の高温の空気を再度燃焼炉の燃料に吹き付けることで燃料が予熱され、燃焼効率が上がり短時間で高温の燃焼が可能となった。さらに、燃焼炉内で燃焼時に不完全燃焼により発生した排煙が再度燃焼炉内に戻されて再加熱されることで、不完全燃焼により生じた排煙が再び燃焼され、二次燃焼効果により無煙化されて排煙の浄化効果が得られた。
本発明により、燃焼炉として求められる燃料の燃焼効率化と排煙からの有害物質除去の機能が容易に得ることができ、小規模な燃焼炉では技術的および経済的に困難とされる燃料の燃焼効率化と排煙からの未燃焼による有害物質の除去が同時に可能となった。
図1
図2
図3