【解決手段】ベース部材2と、ベース部材2と嵌合され、ベース部材2の表面2a上を覆うカバー部材3と、ベース部材2の表面2aに搭載されるヒューズエレメント5を有し、ベース部材2とカバー部材3は、いずれか一方に、ベース部材2の表面2aの面方向に対して立設され、開口部17,28が形成された側壁11,22が設けられ、いずれか他方に、ベース部材2表面2aと平行な面方向に張り出し、側壁11,22の開口部17,28に嵌合される嵌合凸部18,29が設けられている。
上記嵌合凸部が形成された上記ベース部材又は上記カバー部材は、上記嵌合凸部に隣接して、上記ベース部材の上記表面と交差する面から外部に張り出すとともに、先端に上記開口部の挿入方向と交差する方向へ膨出する係止爪が形成され、上記係止爪が上記開口部に係止される一又は複数の係止片が形成されている請求項1に記載のヒューズ素子。
上記ベース部材と上記カバー部材は、それぞれ、相対向する辺の一方に上記開口部が形成された側壁が設けられ、相対向する辺の他方に上記嵌合凸部が設けられている請求項1又は2に記載のヒューズ素子。
上記ベース部材には、表面に上記ヒューズエレメントが搭載される第1、第2の電極が設けられ、裏面及び/又は側面に上記第1、第2の電極と接続された第1、第2の外部接続電極が設けられ、
上記カバー部材は、上記嵌合凸部及び/又は上記側壁が設けられた辺と異なる辺に、第1、第2の外部接続電極が露出され、外部回路基板に実装された際に上記第1、第2の外部接続電極及び/又は上記第1、第2の外部接続電極に接続された実装用接続材料が上記挿入方向又は上記挿入方向の反対方向の移動を規制する脚部が形成されている請求項1〜8のいずれか1項に記載のヒューズ素子。
上記低融点金属層は、Sn若しくはSnを主成分とする金属からなり、上記高融点金麗層は、Ag若しくはCu又はAg若しくはCuを主成分とする金属からなる請求項18又は19に記載のヒューズ素子。
上記ベース部材と上記カバー部材は、いずれか一方に、上記ベース部材の上記表面の面方向に対して交差され、開口部が形成された側壁が設けられ、いずれか他方に、上記ベース部材の上記表面と交差する面から外部に張り出し、上記側壁の上記開口部に嵌合される嵌合凸部が設けられている請求項23に記載のヒューズ素子。
上記嵌合凸部が形成された上記ベース部材又は上記カバー部材は、上記嵌合凸部に隣接して、上記ベース部材の上記表面と交差する面から外部に張り出すとともに、先端に上記開口部の挿入方向と交差する方向へ膨出する係止爪が形成され、上記係止爪が上記開口部に係止される一又は複数の係止片が形成されている請求項24に記載のヒューズ素子。
上記低融点金属層は、Sn若しくはSnを主成分とする金属からなり、上記高融点金麗層は、Ag若しくはCu又はAg若しくはCuを主成分とする金属からなる請求項30又は31に記載のヒューズ素子。
上記ベース部材と上記カバー部材は、それぞれ、相対向する辺の一方に上記開口部が形成された上記側壁が設けられ、相対向する辺の他方に上記嵌合凸部が設けられている請求項38又は39に記載のヒューズ素子。
上記カバー部材は、上記ベース部材の上記表面と対向する内面に、ヒューズエレメントと離間して内部空間を形成する凹部が形成されている請求項38〜40のいずれか1項に記載のヒューズ素子。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本技術が適用されたヒューズ素子について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0020】
[ヒューズ素子]
本発明に係るヒューズ素子1は、小型且つ高定格のヒューズ素子を実現するものであり、平面寸法が3〜5mm×5〜10mm、高さが2〜5mmと小型でありながら、抵抗値が0.2〜1mΩ、50〜150A定格と高定格化が図られている。なお、本発明は、あらゆるサイズ、抵抗値及び電流定格を備えるヒューズ素子に適用することができるのはもちろんである。
【0021】
本発明に係るヒューズ素子1は、
図1〜
図3に示すように、ベース部材2と、ベース部材2の表面2a上を覆うカバー部材3とを有する。ベース部材2とカバー部材3とは、互いに嵌合することにより素子筐体4を構成する。なお、
図1はヒューズ素子1をカバー部材3側から示す外観斜視図であり、
図2はヒューズ素子1をベース部材2の裏面側から示す外観斜視図であり、
図3はヒューズ素子1をカバー部材3側から示す外観斜視図である。
【0022】
ベース部材2には、ヒューズエレメント5が搭載される。ヒューズエレメント5は、例えば
図4(A)(B)に示すように略矩形板状に形成されるとともにベース部材2の側面に沿うように通電方向の両側が屈曲されることにより、
図5、
図6に示すように、ベース部材2の表面2aに嵌合可能とされている。さらに、ヒューズエレメント5は、両端部が外方に延長され図示しない外部回路の接続電極と接続される端子部5a,5bとされている。ヒューズエレメント5は、上下一対のベース部材2及びカバー部材3によって挟持されるとともに、素子筐体4の外に一対の端子部5a,5bが導出されている。ヒューズ素子1は、外部回路基板に実装されると、ヒューズエレメント5の端子部5a,5bが外部回路の接続電極と接続され、当該外部回路の電流経路に組み込まれる。そして、ヒューズ素子1は、定格を超える電流が通電することによってヒューズエレメント5が自己発熱により溶断し、外部回路の電流経路を遮断する。なお、ヒューズエレメント5の具体的な構成については、後に詳述する。
【0023】
[ベース部材]
ベース部材2は、例えばエンジニアリングプラスチック、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって形成される。また、ベース部材は、モールド成型、粉体成型等、材料に応じた製法によって製造される。
図7〜
図9に示すように、ベース部材2は、表面2aにヒューズエレメント5が搭載されるとともに、一方の側縁側には表面2aの面方向に対して交差され、素子筐体4の側面を構成する第1の側壁11が立設されている。なお、
図7はベース部材2を第1の側壁11側から示す外観斜視図であり、
図8はベース部材2を裏面側から示す外観斜視図であり、
図9はベース部材2を第1の嵌合凸部18側から示す外観斜視図である。
【0024】
ベース部材2は、略矩形板状に形成され、幅方向を通電方向としてヒューズエレメント5が搭載される。また、ベース部材2は、幅方向の略中央に長さ方向にわたって溝部12が形成されている。ベース部材2は、溝部12の両側でカバー部材3とともにヒューズエレメント5を挟持する。これにより、ヒューズエレメント5は、通電方向と直交する幅方向にわたって溝部12と対峙し、ベース部材2及びカバー部材3によって挟持される高熱伝導部14と、溝部12と対峙する低熱伝導部15とが形成される。
【0025】
高熱伝導部14は、ベース部材2及びカバー部材3によって挟持されることによりヒューズエレメント5の面内において相対的に放熱性が高く、過電流により発熱した熱をベース部材2及びカバー部材3を通じて外部に逃がすことができ、温度上昇を抑制でき、また端子部5a,5bの過熱を抑えることができる。低熱伝導部15は、溝部12と対峙することによりベース部材2及びカバー部材3と熱的に接触せず、かつベース部材2及びカバー部材3よりも熱伝導率の低い空気と触れることにより、ヒューズエレメント5の面内において相対的に放熱性が低く、過電流により発熱した熱が集中することにより溶断する溶断部となる。なお、高熱伝導部14は、ベース部材2及びカバー部材3と熱的に接触していればよく、ベース部材2及びカバー部材3と直接接触する他、熱伝導性を備えた部材を介して接触してもよい。
【0026】
なお、溝部12の第1の側壁11側の端部には、ヒューズエレメント5の位置決めを図る位置決め壁16が形成されている。位置決め壁16は、溝部12よりベース部材2の表面2a上に立設され、ヒューズエレメント5の一方の側面が突き当てられることによりベース部材2上の搭載位置を決める。
【0027】
[接着剤]
また、ヒューズ素子1は、ヒューズエレメント5を、接着剤(図示せず)でベース部材2又はベース部材2及びカバー部材3に接続してもよい。接着剤は、ベース部材2の表面2aの溝部12以外の部位に設けられる。これにより、ヒューズ素子1は、接着剤を介してベース部材2又はベース部材2及びカバー部材3とヒューズエレメント5の高熱伝導部14との密着性が高まり、より効率よく熱を伝達させることができる。
【0028】
接着剤は、公知のいずれの接着剤を用いることができるが、高い熱伝導性を有することがヒューズエレメント5の放熱を促進する上で好ましい(例えば、KJR−9086:信越化学工業株式会社製、SX720:セメダイン株式会社製、SX1010:セメダイン株式会社製)。また、接着剤は、バインダー樹脂に導電性粒子を含有させた導電性接着剤を用いてもよい。接着剤として導電性接着剤を用いることによっても、ベース部材2又はベース部材2及びカバー部材3とヒューズエレメント5との密着性を高めるとともに、導電性粒子を介して高熱伝導部14の熱を効率よくベース部材2又はベース部材2及びカバー部材3に伝達させることができる。また、接着剤の替わりにハンダで接続してもよい。
【0029】
ベース部材2の一方の側縁側には、ベース部材2の表面2aの面方向に対して交差、好ましくは略直交する方向に立設され、素子筐体4の側面を構成する第1の側壁11が形成されている。第1の側壁11は、嵌合凹部11aが形成され、嵌合凹部11a内に、後述するカバー部材3に形成された第2の嵌合凸部29が嵌合する第1の開口部17及び第1の開口部17と連続し第1の開口部17に挿入された第2の嵌合凸部29と当接する当接面11bが形成されている。
【0030】
また、ベース部材2の第1の側壁11が設けられた一方の側縁と反対側の他方の側縁には、ベース部材2の表面2aの面と交差する面から外方に張り出し、後述するカバー部材3に形成された第2の側壁22に形成された第2の開口部28に嵌合する第1の嵌合凸部18と、第1の嵌合凸部18の両側に、ベース部材2の表面2aの面と交差する面から外方に張り出し、第2の開口部28に係止される第1、第2の係止片19a,19bが形成されている。第1の嵌合凸部18は、好ましくはベース部材2の表面2aと平行な面に沿って外部に張り出している。
【0031】
[カバー部材]
ベース部材2の表面2a上を覆うカバー部材3は、ベース部材2と同じ材料、同じ製法により形成することができる。
図10〜
図12に示すように、カバー部材3は、素子筐体4の第1の側壁11と対向する側面を構成する第2の側壁22と、ヒューズエレメント5の通電方向に設けられ端子部5a,5bが外部に露出される第3、第4の側壁23,24と、素子筐体4の天面を構成する天面部25とを有する。なお、
図10はカバー部材3を天面25側から示す外観斜視図であり、
図11はカバー部材3の内部を示す外観斜視図であり、
図12はカバー部材3を第2の側壁22側から示す外観斜視図である。
【0032】
カバー部材3の天面25の内面25aは、ベース部材2と同様に、幅方向の略中央に長さ方向にわたって溝部26が形成されている。カバー部材3は、溝部26の両側でベース部材2とともにヒューズエレメント5の高熱伝導部14を挟持する。
【0033】
また、溝部26の第2の側壁22側の端部には、位置決め壁16とともにヒューズエレメント5の位置決めを図る位置決め壁27が形成されている。位置決め壁27は、溝部26よりカバー部材3の天面25の内面25a上に立設され、ヒューズエレメント5の他方の側面が突き当てられることによりベース部材2上の搭載位置を決める。
【0034】
カバー部材3の一方の側縁側には、ベース部材2の表面2aの面方向に対して交差、好ましくは略直交する方向に立設され、素子筐体4の側面を構成する第2の側壁22が形成されている。第2の側壁22は、嵌合凹部22aが形成され、嵌合凹部22a内に、上述したベース部材2に形成された第1の嵌合凸部18が嵌合する第2の開口部28及び第2の開口部28と連続し第2の開口部28に挿入された第1の嵌合凸部18と当接する当接面22bが形成されている。
【0035】
また、カバー部材3の第2の側壁22が設けられた一方の側縁と反対側の他方の側縁には、ベース部材2の表面2aの面方向と交差する面から外方に張り出し、上述したベース部材2の第1の側壁11形成された第1の開口部17に嵌合する第2の嵌合凸部29と、第2の嵌合凸部29の両側に、ベース部材2の表面2aの面と交差する面から外方に張り出し、第1の開口部17に係止される第3、第4の係止片30a,30bが形成されている。第2の嵌合凸部29は、好ましくはベース部材2の表面2aと平行な面に沿って外部に張り出している。
【0036】
[開口部/嵌合凸部/係止片]
ヒューズ素子1は、ベース部材2の表面2aにヒューズエレメント5が搭載された後、ベース部材2にカバー部材3が組み付けられることにより素子筐体4が形成される。このとき、ヒューズ素子1は、ベース部材2の第1の側壁11に形成された第1の開口部17に、カバー部材3に形成された第2の嵌合凸部29が嵌合され、また、カバー部材3の第2の側壁22に形成された第2の開口部28に、ベース部材2に形成された第1の嵌合凸部18が嵌合される。
【0037】
ヒューズ素子1は、ベース部材2の第1の開口部17にカバー部材3の第2の嵌合凸部29が嵌合することにより、嵌合凹部11aの当接面11bが第2の嵌合凸部29の上面と当接する(
図1)。これにより、過電流によってヒューズエレメント5がアーク放電を伴って自己発熱遮断した際に、カバー部材3にベース部材2の表面2a上方へ急激に圧力が加わっても、第1の開口部17と連続する当接面11bで第2の嵌合凸部29を押さえることで、ベース部材2の表面2a上方への圧力に対する耐性が向上されており、カバー部材3がベース部材2から外れることを防止することができる。
【0038】
同様に、ヒューズ素子1は、カバー部材3の第2の開口部28にベース部材2の第1の嵌合凸部18が嵌合することにより、嵌合凹部22aの当接面22bが第1の嵌合凸部18の下面と当接する(
図3)。これにより、第2の開口部28と連続する当接面22bが第1の嵌合凸部18で押さえられることで、ベース部材2の表面2a上方への圧力に対する耐性が向上されカバー部材3がベース部材2から外れることを防止することができる。
【0039】
したがって、ヒューズ素子1は、少なくともベース部材2及びカバー部材3の一方に開口部を設けるとともに他方に嵌合凸部を設けることで、ベース部材2の表面2a上方への圧力に対する耐性を向上させることができるが、好ましくは、ベース部材2及びカバー部材3のそれぞれに、開口部を設けるとともに嵌合凸部を設けて相互に嵌合させあうことにより、より確実にカバー部材3がベース部材2から外れることを防止することができる。
【0040】
ここで、第1の開口部17は、ベース部材2の幅方向を長さ方向とする長方形状をなし、また、第1の側壁11も肉厚に形成されることで第2の嵌合凸部29を押さえる当接面11bも第1の側壁11の厚さに応じた幅を備えている。同様に、第2の開口部28は、ベース部材2の幅方向を長さ方向とする長方形状をなし、また、第2の側壁22も肉厚に形成されることで第1の嵌合凸部18に押さえられる当接面22bも第2の側壁22の厚さに応じた幅を備えている。
【0041】
第1の開口部17に嵌合する第2の嵌合凸部29は、
図10に示すように、ベース部材2の表面2aの面方向に張り出し、第1の側壁11の第1の開口部17に挿入されることにより嵌合される。そして、第2の嵌合凸部29は、その先端から基部29aにかけて第1の開口部17と嵌合され、当接面11bと当接されている。同様に、第2の開口部28に嵌合する第1の嵌合凸部18は、
図7に示すように、ベース部材2の表面2aの面方向に張り出し、第2の側壁22の第2の開口部28に挿入されることにより嵌合される。そして、第1の嵌合凸部18は、その先端から基部18aにかけて第2の開口部28と嵌合され、当接面22bと当接されている。
【0042】
また、第2の嵌合凸部29は、ベース部材2の表面2aの面方向において、第1の開口部17への挿入方向と交差する幅方向の長さが挿入方向の長さよりも幅広に形成され、第2の嵌合凸部29と当接面11bの接触面も第1の開口部17の挿入方向よりも幅方向が広い。同様に、第1の嵌合凸部18は、ベース部材2の表面2aの面方向において、第2の開口部28への挿入方向と交差する幅方向の長さが挿入方向の長さよりも幅広に形成され、第1の嵌合凸部18と当接面22bの接触面も第2の開口部28の挿入方向よりも幅方向が広い。すなわち、第1、第2の開口部17,28は、第1、第2の嵌合凸部18,29を幅方向に広く嵌合することで、ベース部材2の表面2a上方へ衝撃耐性が高い構造となっている。
【0043】
また、第1、第2の嵌合凸部18,29は、第1、第2の開口部17,28に圧入することで係合させるものではないため、可撓性を持たせる必要が無く、より強固な材料を用いたり、寸法を肉厚にしたりするなど、嵌合強度が高められ、また、第1、第2の開口部17,28に深く挿入、嵌合させることができる。
【0044】
したがって、ヒューズ素子1は、ヒューズエレメント5がアーク放電を伴って自己発熱遮断した際に、高熱によって第1、第2の嵌合凸部18,29が軟化して第1、第2の開口部17,28との係合が外れるようなことは起こらず、カバー部材3がベース部材2の表面2a上方へ急激に圧力が加わっても、第1の開口部17と第2の嵌合凸部29との嵌合、及び第2の開口部28と第1の嵌合凸部18との嵌合が外れることはない。
【0045】
なお、第1、第2の嵌合凸部18,29は、第1、第2の開口部17,28への挿入端となる先端面にテーパ部が面取り形成されている。
【0046】
ここで、第1の開口部17は、ベース部材2の溝部12の延長線上に設けられ、ベース部材2の幅方向を長さ方向とする長方形状をなす。同様に、第2の開口部28は、ベース部材2の溝部12の延長線上に設けられ、ベース部材2の幅方向を長さ方向とする長方形状をなす。すなわち、第1、第2の開口部17,28は、ヒューズエレメント5の溶断部となる低熱伝導部15の延長線上に位置する。したがって、ヒューズ素子1は、ヒューズエレメント5の自己発熱遮断時においてアーク放電が発生し、衝撃を受けやすい溶断部に対応して、第1、第2の嵌合凸部18,29を第1、第2の開口部17,28に嵌合させている。したがって、より効果的に熱影響及び急激に増加する内圧に対する耐性を向上させることができる。
【0047】
ベース部材2は、第1の側壁の第1の開口部17の両側に、カバー部材3の第2の嵌合凸部29の両側に突設された第3、第4の係止片30a,30bが係止される係止段部17aが形成されている。係止段部17aは、カバー部材3がベース部材2の表面2aの面内方向への抜け止めを図るものであり、第1の側壁11の外面に形成された嵌合凹部11aの側面に形成され、第1の側壁11の面内方向に張り出すことで段差形状を構成する。
【0048】
第3、第4の係止片30a,30bは、ベース部材2の表面2aの面方向に張り出すとともに、先端部に係止段部17aに係止する係止爪31が形成されている。係止爪31は、ベース部材2の表面2aと平行な面方向且つ第2の嵌合凸部29の第1の開口部17への挿入方向と直交する方向へ膨出する。また、係止爪31は、係止段部17aに係止する係止面31aと、第1の開口部17の両側面を摺動する円弧状又はテーパ状の摺動面31bを有する。
【0049】
第3、第4の係止片30a,30bは、第1の開口部17に挿入されると、摺動面31bが第1の開口部17の両側面を摺動し、内側に撓まされながら圧入され、係止爪31が第1の開口部17を通過することにより、係止面31aが係止段部17aに係止される。これにより、カバー部材3は、ベース部材2の挿入方向への抜け止めが図られる。
【0050】
このように、ヒューズ素子1の素子筐体4は、カバー部材3に形成した第2の嵌合凸部29がベース部材2の第1の側壁11に形成した第1の開口部17に挿入されることにより、ベース部材2の表面2aの上方に係る圧力に対する耐性が向上され、カバー部材3に形成した第3、第4の係止片30a,30bがベース部材2の第1の側壁11に形成した第1の開口部17に圧入されるとともに係止爪31が係止段部17aに係止されることにより、挿入方向であるベース部材2の表面2aの面方向への抜け止めが図られている。
【0051】
同様に、カバー部材3は、第2の側壁の第2の開口部28の両側に、第1の嵌合凸部18の両側に突設された第1、第2の係止片19a,19bが係止される係止段部28aが形成されている。係止段部28aは、第2の側壁22の外面に形成された嵌合凹部22aの側面に形成され、第2の側壁2の面内方向に張り出すことで段差形状を構成する。また、第1、第2の係止片19a,19bは、ベース部材2の表面2aの面方向に張り出すとともに、先端部に係止段部28aに係止する係止爪20が形成されている。係止爪20は、ベース部材2の表面2aと平行な面方向且つ第1の嵌合凸部18の第2の開口部28への挿入方向と直交する方向へ膨出する。また、係止爪20は、係止段部28aに係止する係止面20aと、第2の開口部28の両側面を摺動する円弧状又はテーパ状の摺動面20bを有する。これら係止段部28a及び第1、第2の係止片19a,19bの構成及び機能は、上述した係止段部17a及び第3、第4の係止片30a,30bと同じであるため、詳細は省略する。
【0052】
そして、ヒューズ素子1は、少なくともベース部材2及びカバー部材3の一方に開口部及び係止段部を設けるとともに他方に係止片を設けることで、挿入方向であるベース部材2の表面2aの面方向への抜けを防止することができるが、好ましくは、ベース部材2及びカバー部材3のそれぞれに、開口部及び係止段部を設けるとともに係止片を設け相互に係止させあうことにより、より確実にベース部材2からカバー部材3が挿入方向へ抜けることを防止することができる。
【0053】
なお、ヒューズ素子1は、第1、第2の係止片19a,19bが第2の開口部28の上面に当接することで、ベース部材2の表面2a上方への圧力に対する耐性が向上され、同様に、第3、第4の係止片30a,30bが第1の開口部17の上面に当接することで、ベース部材2の表面2a上方への圧力に対する耐性が向上されている。
【0054】
[ヒューズエレメント]
次いで、ヒューズエレメント5について説明する。ヒューズエレメント5は、ハンダ又はSnを主成分とするPbフリーハンダ等の低融点金属、若しくは低融点金属と高融点金属の積層体である。例えば
図13に示すように、ヒューズエレメント5は、内層と外層とからなる積層構造体であり、内層として低融点金属層9、低融点金属層9に積層された外層として高融点金属層10を有する。
【0055】
低融点金属層9は、好ましくは、Snを主成分とする金属であり、「Pbフリーハンダ」と一般的に呼ばれる材料である。低融点金属層9の融点は、必ずしもリフロー温度よりも高い必要はなく、200℃程度で溶融してもよい。高融点金属層10は、低融点金属層9の表面に積層された金属層であり、例えば、Ag若しくはCu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする金属からなり、ヒューズ素子1をリフロー炉によって外部回路基板上に実装する場合においても溶融しない高い融点を有する。
【0056】
ヒューズエレメント5は、内層となる低融点金属層9に、外層として高融点金属層10を積層することによって、リフロー温度が低融点金属層9の溶融温度を超えた場合であっても、ヒューズエレメント5として溶断するに至らない。したがって、ヒューズ素子1は、リフローによって効率よく実装することができる。
【0057】
また、ヒューズエレメント5は、所定の定格電流が流れている間は、自己発熱によっても溶断することがない。そして、定格よりも高い値の電流が流れると、自己発熱によって低融点金属層9の融点から溶融を開始し、速やかに端子部5a,5b間の電流経路を遮断することができる。例えば、低融点金属層9をSn‐Bi系合金やIn‐Sn系合金などで構成した場合、ヒューズエレメント5は、140℃や120℃前後という低温から溶融を開始する。このとき、ヒューズエレメント5は、例えば低融点金属としてSnを40%以上含ませる合金を用いることで、溶融した低融点金属層9が高融点金属層10を溶食することにより、高融点金属層10が溶融温度よりも低い温度で溶融する。したがって、ヒューズエレメント5は、低融点金属層9による高融点金属層10の溶食作用を利用して短時間で溶断することができる。
【0058】
また、ヒューズエレメント5は、内層となる低融点金属層9に高融点金属層10が積層されて構成されているため、溶断温度を従来の高融点金属からなるチップヒューズ等よりも大幅に低減することができる。したがって、ヒューズエレメント5は、高融点金属エレメントに比して、幅広に形成するとともに通電方向を短く形成することにより電流定格を大幅に向上させながら小型化を図り、かつ回路基板との接続部位への熱の影響を抑えることができる。また、同じ電流定格をもつ従来のチップヒューズよりも小型化、薄型化を図ることができ、速溶断性にも優れる。
【0059】
また、ヒューズエレメント5は、ヒューズ素子1が組み込まれた電気系統に異常に高い電圧が瞬間的に印加されるサージへの耐性(耐パルス性)を向上することができる。すなわち、ヒューズエレメント5は、例えば100Aの電流が数msec流れたような場合にまで溶断してはならない。この点、極短時間に流れる大電流は導体の表層を流れることから(表皮効果)、ヒューズエレメント5は、外層として抵抗値の低いAgメッキ等の高融点金属層10が設けられているため、サージによって印加された電流を流しやすく、自己発熱による溶断を防止することができる。したがって、ヒューズエレメント5は、従来のハンダ合金からなるヒューズに比して、大幅にサージに対する耐性を向上させることができる。
【0060】
ヒューズエレメント5は、低融点金属層9の表面に高融点金属層10を電解メッキ法等の成膜技術を用いることにより製造できる。例えば、ヒューズエレメント5は、ハンダ箔や糸ハンダの表面にAgメッキを施すことにより効率よく製造できる。
【0061】
なお、ヒューズエレメント5は、低融点金属層9の体積を、高融点金属層10の体積よりも多く形成することが好ましい。ヒューズエレメント5は、自己発熱によって低融点金属が溶融することにより高融点金属を溶食し、これにより速やかに溶融、溶断することができる。したがって、ヒューズエレメント5は、低融点金属層9の体積を高融点金属層10の体積よりも多く形成することにより、この溶食作用を促進し、速やかに端子部5a,5b間を遮断することができる。
【0062】
[変形規制部]
また、
図4(A)に示すように、ヒューズエレメント5は、溶融した低融点金属の流動を抑え、変形を規制する変形規制部6を設けてもよい。これにより大面積化することで高定格化、低抵抗化されたヒューズエレメント5においても、リフロー加熱時等において低融点金属の流動による変形を抑制し、溶断特性の変動を防止することができる。
【0063】
変形規制部6は、ヒューズエレメント5の表面に設けられ、
図13に示すように、低融点金属層9に設けられた1又は複数の孔7の側面7aの少なくとも一部が、高融点金属層10と連続する第2の高融点金属層8によって被覆されてなる。孔7は、例えば低融点金属層9に針等の先鋭体を突き刺し、或いは低融点金属層9に金型を用いてプレス加工を施す等により形成することができる。また、孔7の形状は、例えば楕円形、長方形、その他、任意の形状を採用することができる。また、孔7は、ヒューズエレメント5の溶断部となる中央部に形成してもよく、全面にわたって一様に形成してもよい。なお、孔7を溶断部に対応した位置に形成することで、溶断部における溶融金属量を減らすとともに高抵抗化させ、より速やかに過熱溶断させることができる。
【0064】
第2の高融点金属層8を構成する材料は、高融点金属層10を構成する材料と同様に、リフロー温度によっては溶融しない高い融点を有する。また、第2の高融点金属層8は、高融点金属層10と同じ材料で、高融点金属層10の形成工程において合わせて形成されることが製造効率上、好ましい。
【0065】
[第1、第2の電極、第1、第2の外部接続電極]
なお、ヒューズエレメント5は、端子部5a,5bを設けることなく、ベース部材2の表面2aに形成した第1、第2の電極にハンダ等の接続材料を介して接続してもよい。この場合、ベース部材2の裏面及び/又は側面には、第1、第2の電極と電気的に接続された第1、第2の外部接続電極が形成される。
【0066】
[脚部]
また、カバー部材3は、第3、第4の側壁23,24の両端部に脚部35が形成されている。ヒューズ素子1は、側壁23,24各々の両端部に形成された脚部35の間にヒューズエレメント5の端子部5a,5bがそれぞれ設けられ、端子部5a,5bをヒューズ素子1が表面実装される外部回路基板の接続電極にハンダ等の実装用接続材料にて接続させる。これにより、ヒューズ素子1は、カバー部材3にベース部材2へ挿入した向きと反対の向きに抜ける力がかかった場合にも、実装用接続材料で接続固定されたヒューズエレメント5の端子部5a,5bによって脚部35の移動が阻害され、カバー部材3の抜け止めが図られている。
【0067】
なお、ヒューズエレメント5に端子部5a,5bを形成することに代えて、ベース部材2の表面に第1、第2の電極を設け、裏面及び/又は側面に第1、第2の電極と接続された第1、第2の外部接続電極を形成した場合には、カバー部材3は、第2の嵌合凸部29及び/又は第2の側壁22が設けられた辺と異なる辺に、第1、第2の外部接続電極が露出され、外部回路基板に実装された際に第1、第2の外部接続電極及び/又は上記第1、第2の外部接続電極に接続された実装用接続材料(フィレット)によって脚部35の移動が阻害される。したがって、カバー部材3にベース部材2へ挿入した向きと反対の向きに抜ける力がかかった場合にも、カバー部材3の抜け止めを図ることができる。
【0068】
このようなヒューズ素子1は、
図14(A)に示す回路構成を有する。ヒューズ素子1は、端子部5a,5bを介して外部回路に実装されることにより、当該外部回路の電流経路上に組み込まれる。ヒューズ素子1は、ヒューズエレメント5に所定の定格電流が流れている間は、自己発熱によっても溶断することがない。そして、ヒューズ素子1は、定格を超える過電流が通電するとヒューズエレメント5が自己発熱によって低熱伝導部15が溶断し、端子部5a,5b間を遮断することにより、当該外部回路の電流経路を遮断する(
図14(B))。
【0069】
このとき、ヒューズエレメント5は、上述したように、高熱伝導部14における発熱による熱がベース部材2及びカバー部材3を介して積極的に放熱され、溝部12,26に沿って形成された低熱伝導部15を選択的に過熱させることができる。したがって、ヒューズエレメント5は、端子部5a,5bや実装用接着材料への熱の影響を抑えつつ低熱伝導部15を溶断することができる。
【0070】
また、上述したように、ヒューズ素子1は、ベース部材2の第1の開口部17にカバー部材3の第2の嵌合凸部28が嵌合することにより、過電流によってヒューズエレメント5がアーク放電を伴って自己発熱遮断した際に、カバー部材3にベース部材2の表面2a上方へ急激に圧力が加わっても、第1の開口部17と連続する当接面11bで第2の嵌合凸部29を押さえることで、ベース部材2の表面2a上方への圧力に対する耐性が向上されており、カバー部材3がベース部材2から外れることを防止することができる。
【0071】
また、高融点金属層10よりも融点の低い低融点金属層9を含有することにより、過電流による自己発熱により、低融点金属層9の融点から溶融を開始し、高融点金属層10を浸食し始める。したがって、ヒューズエレメント5は、低融点金属層9による高融点金属層10の浸食作用を利用することにより、高融点金属層10が自身の融点よりも低い温度で溶融され、速やかに溶断することができる。
【0072】
[ベース部材及びカバー部材の材料]
ここで、ヒューズ素子1は、ベース部材及びカバー部材を、耐トラッキング性が250V以上であるプラスチック材料により形成することが好ましい。これは、以下の事情による。
【0073】
すなわち、昨今、環境要求に伴い電子部品のハロゲンフリー化が進み、ヒューズ素子の素子筐体材料はハロゲンフリーのLCPに置き換わってきた。この種のヒューズ素子の用途は電子機器から産業用機械、電動自転車、電動バイク、クルマ等の大電流用途にまで広がっている。このため、搭載される電子機器やバッテリパック等の高容量化、高定格化に伴い、ヒューズ素子は、電流定格のさらなる向上が求められている。
【0074】
電流定格を上げるためには、ヒューズエレメントを大型化することで低抵抗化を図ることが有効である。しかし、ヒューズエレメントは、定格を超えた過電流が流れると溶断し、溶断と共にアーク放電が発生する。したがって、ヒューズエレメントを大型化すると、それに比例してアーク放電による発熱も大規模化してくる。
【0075】
また、電流定格の向上に伴い、過電流による自己発熱遮断時の発熱量も多くなり素子筐体に対する熱影響も増してくる。例えば、ヒューズ素子の電流定格が100Aレベルに上昇し、且つ定格電圧が60Vレベルに上昇すると、電流遮断時のアーク放電により素子筐体のヒューズエレメント対向表面が炭化して、リーク電流が流れて絶縁抵抗が低下したり、発火して素子筐体が破損し、あるいは搭載基板からズレたり、脱落したりする事象も懸念される。これは、液晶ポリマーの主鎖中に有する芳香環がアーク放電によって炭化してしまうことによる。
【0076】
アーク放電を速やかに止めて回路を遮断する対策として、中空ケース内に消弧材を詰めたものや、放熱材の周りにヒューズエレメントを螺旋状に巻きつけてタイムラグを発生させる高電圧対応の電流ヒューズも提案されている。しかし、従来の高電圧対応の電流ヒューズにおいては、消弧材の封入や螺旋ヒューズの製造といった、何れも複雑な材料や加工プロセスが必要とされ、ヒューズ素子の小型化や電流の高定格化といった面で不利である。
【0077】
さらに、素子筐体材料をセラミック材等の燃えない無機材料とする事で絶縁抵抗の低下や発火を抑制する事ができるが、材料コストとプロセスコストが高くなるというデメリットが伴う。
【0078】
そこで、高定格、大電流の用途に対応可能なヒューズ素子において、電流遮断時における耐アーク性に優れ、絶縁抵抗の向上、及び素子筐体の搭載基板からの脱落等を防止できるヒューズ素子が求められている。
【0079】
本技術が適用されたヒューズ素子は、素子筐体を構成するベース部材2及びカバー部材3を、耐トラッキング性が250V以上であるプラスチック材料により形成することにより、ヒューズエレメントの溶断時にアーク放電が発生した場合にも、ベース部材やカバー部材の炭化によるリークの発生による絶縁抵抗の低下を防止し、また、トラッキング現象による発火を防止し、素子筐体が表面実装された搭載基板からズレたり脱落したりすることも防止することができる。
【0080】
ベース部材2及びカバー部材3を構成するプラスチック材料は、ナイロン系材料が好ましい。ナイロン系のプラスチック材料を用いることにより、ベース部材2及びカバー部材3の耐トラッキング性を250V以上とすることができる。耐トラッキング性は、IEC60112に基づく試験により求めることができる。
【0081】
ベース部材2及びカバー部材3を構成するナイロン系のプラスチック材料の中でも、特に特にナイロン46を用いることが好ましい。これにより、ヒューズ素子1は、耐トラッキング性を600V以上に高めることができる。
【0082】
上述したように、ヒューズ素子1は、ベース部材2の第1の側壁11に形成された第1の開口部17に、カバー部材3に形成された第2の嵌合凸部29が嵌合され、また、カバー部材3の第2の側壁22に形成された第2の開口部28に、ベース部材2に形成された第1の嵌合凸部18が嵌合される。
【0083】
これにより、ヒューズ素子1は、嵌合凹部11aの当接面11bが第2の嵌合凸部29の上面と当接し(
図1)、また、嵌合凹部22aの当接面22bが第1の嵌合凸部18の下面と当接する(
図3)。したがって、ヒューズ素子1は、過電流によってヒューズエレメント5がアーク放電を伴って自己発熱遮断した際に、カバー部材3にベース部材2の表面2a上方へ急激に圧力が加わっても、第1の開口部17と連続する当接面11bで第2の嵌合凸部29を押さえ、また、第2の開口部28と連続する当接面22bが第1の嵌合凸部18で押さえられることで、ベース部材2の表面2a上方への圧力に対する耐性が向上されている。
【0084】
このとき、ヒューズ素子1は、素子筐体を構成するベース部材2及びカバー部材3を、耐トラッキング性が250V以上であるプラスチック材料、好ましくは、ポリアミド樹脂、さらに好ましくは脂肪族ポリアミド樹脂を用いて形成される。これにより、大電流用途に用いられるヒューズエレメントが遮断時にアーク放電を伴い、高熱を発した場合にも、ベース部材2やカバー部材3の炭化によるリークの発生による絶縁抵抗の低下を防止し、また、トラッキング現象による発火を防止することができる。
【0085】
脂肪族ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリアミド46(融点:290℃、ガラス転移温度:78℃)、ポリアミド66(融点:262℃、ガラス転移温度:66℃)、ポリアミド6(融点:222℃、ガラス転移温度:59℃)などが挙げられる。これらの中でも、融点及びガラス転移温度が高いポリアミド46が特に好ましい。これにより、大電流に対応するヒューズエレメントの溶断時においてアーク放電が発生して素子筐体4の内部が高温となっても、熱影響による変形に対する耐性に優れるため、ベース部材2の第1の開口部17とカバー部材3の第2の嵌合凸部29との嵌合強度を維持し、また、カバー部材3の第2の開口部28とベース部材2の第1の嵌合凸部18との嵌合強度を維持することができる。
【0086】
表1に、HFナイロンと、LCPとの主要特性比較を示す。
【0088】
表1に示すように、脂肪族ポリアミド樹脂、なかでもポリアミド46は、LCPに比して燃焼性や融点において同等の性能を有し、耐トラッキング性において極めて優れた特性を有することがわかる。
【0089】
なお、ヒューズ素子1は、第1、第2の開口部17,28の各係止段部17a,28aに係止されている第1〜第4の係止片19a,19b,30a,30bも、ポリアミド46等の耐トラッキング性の高いプラスチック材料により形成されることで、アーク放電による高温環境下においても、軟化による係止段部17a,28aからの脱落が防止され、ベース部材2の表面2aの面方向への圧力に対する耐性も向上されている。したがって、ヒューズ素子1は、ベース部材2とカバー部材3との嵌合を維持することができる。
【0090】
[実施例]
素子筐体4を構成するプラスチック材料の相違による耐トラッキング試験について説明する。上述したヒューズ素子1を、LCP、及びHFナイロンPA46を用いて製造し、過電流試験を行った。各ヒューズ素子サンプルに搭載したヒューズエレメントは、内層を構成する低融点金属となる厚さ200μmのSn−Ag−Cu系ハンダ箔(Sn:Ag:Cu=96.5質量%:3.0質量%:0.5質量%)に、電解メッキによりAgメッキを施し高融点金属層を積層したものを用いた。また、LCP製及びHFナイロン製のヒューズ素子サンプルをそれぞれ8個用意し、200A、36Vの電流を印加してヒューズエレメントを溶断し、溶断後の絶縁抵抗を測定した。
【0092】
表2に示すように、LCP製のヒューズ素子では、最低絶縁抵抗が1.0E+6Ω未満であったのに対して、HFナイロン製のヒューズ素子では、最低絶縁抵抗が1.1E+11Ωであった。すなわち、HFナイロン製のヒューズ素子では、燃焼傾向が少なく、ヒューズエレメントの溶断によりアーク放電が発生した場合にも、絶縁性を維持できることがわかる。なお、LCPでは絶縁抵抗が測定不能(Range Over)となったサンプルもあったため、最低絶縁抵抗を1.0E+6Ω未満とした。
【0093】
[発熱体]
また、本技術は、
図15(A)(B)に示すように、ベース部材2に発熱体41を設けたヒューズ素子40に適用することもできる。なお、以下の説明において、上述したヒューズ素子1と同一の部材については同一の符号を付してその詳細を省略する。本発明が適用されたヒューズ素子40は、ベース部材2と、ベース部材2に積層され、絶縁部材42に覆われた発熱体41と、ベース部材2の両端に形成された第1の電極43及び第2の電極44と、ベース部材2上に発熱体41と重畳するように積層され、発熱体41に電気的に接続された発熱体引出電極45と、両端が第1、第2の電極43,44にそれぞれ接続され、中央部が発熱体引出電極45に接続されたヒューズエレメント5とを備える。そして、ヒューズ素子40は、ベース部材2とカバー部材3とは、互いに接着もしくは嵌合することにより素子筐体4を構成する。
【0094】
ベース部材2の表面2aには、相対向する両端部に、第1、第2の電極43,44が形成されている。第1、第2の電極43,44は、発熱体41が通電し発熱すると、溶融したヒューズエレメント5がその濡れ性により集まり、端子部5a,5b間を溶断させる。
【0095】
発熱体41は、通電すると発熱する導電性を有する部材であって、たとえばニクロム、W、Mo、Ru等又はこれらを含む材料からなる。発熱体41は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合してペースト状にしたものを、ベース部材2上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成することができる。
【0096】
また、ヒューズ素子40は、発熱体41が絶縁部材42によって被覆され、絶縁部材42を介して発熱体41と対向するように発熱体引出電極45が形成されている。発熱体引出電極45はヒューズエレメント5が接続され、これにより発熱体41は、絶縁部材42及び発熱体引出電極45を介してヒューズエレメント5と重畳される。絶縁部材42は、発熱体41の保護及び絶縁を図るとともに、発熱体41の熱を効率よくヒューズエレメント5へ伝えるために設けられ、例えばガラス層からなる。
【0097】
なお、発熱体41は、ベース部材2に積層された絶縁部材42の内部に形成してもよい。また、発熱体41は、第1、第2の電極43,44が形成されたベース部材2の表面2aと反対側の裏面2bに形成してもよく、あるいは、ベース部材2の表面2aに第1、第2の電極43,44と隣接して形成してもよい。また、発熱体41は、ベース部材2の内部に形成してもよい。
【0098】
また、発熱体41は、一端がベース部材2の表面2a上に形成された第1の発熱体電極48を介して発熱体引出電極45と接続され、他端がベース部材2の表面2a上に形成された第2の発熱体電極49と接続されている。発熱体引出電極45は、第1の発熱体電極48と接続されるとともに発熱体41と対向してベース部材2上に積層され、ヒューズエレメント5と接続されている。これにより、発熱体41は、発熱体引出電極45を介してヒューズエレメント5と電気的に接続されている。なお、発熱体引出電極45は、絶縁部材42を介して発熱体41に対向配置されることにより、ヒューズエレメント5を溶融させるとともに、溶融導体を凝集しやすくすることができる。
【0099】
また、第2の発熱体電極49は、ベース部材2の表面2a上に形成され、キャスタレーションを介してベース部材2の裏面2bに形成された発熱体給電電極49a(
図16(A)参照)と連続されている。
【0100】
ヒューズ素子40は、第1の電極43から発熱体引出電極45を介して第2の電極44に跨ってヒューズエレメント5が接続されている。ヒューズエレメント5は、接続用ハンダ等の接続材料を介して第1、第2の電極43,44及び発熱体引出電極45上に接続されている。
【0101】
[フラックス]
また、ヒューズ素子40は、高融点金属層10又は低融点金属層9の酸化及び硫化防止と、溶断時の酸化物及び硫化物除去及びハンダの流動性向上のために、ヒューズエレメント5の表面や裏面にフラックス47をコーティングしてもよい。フラックス47をコーティングすることにより、ヒューズ素子40の実使用時において、低融点金属層9(例えばハンダ)の濡れ性を高めるとともに、低融点金属が溶解している間の酸化物及び硫化物を除去し、高融点金属(例えばAg)への浸食作用を用いて溶断特性を向上させることができる。
【0102】
また、フラックス47をコーティングすることにより、最外層の高融点金属層10の表面に、Snを主成分とするPbフリーハンダ等の酸化防止膜を形成した場合にも、当該酸化防止膜の酸化物を除去することができ、高融点金属層10の酸化及び硫化を効果的に防止し、溶断特性を維持、向上することができる。
【0103】
なお、第1、第2の電極43,44、発熱体引出電極45及び第1、第2の発熱体電極48,49は、例えばAgやCu等の導電パターンによって形成され、適宜、表面にSnメッキ、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の保護層が形成されていることが好ましい。これにより、表面の酸化及び硫化を防止するとともに、ヒューズエレメント5の接続用ハンダ等の接続材料による第1、第2の電極43,44及び発熱体引出電極45の浸食を抑制することができる。
【0104】
また、ヒューズ素子40は、ヒューズエレメント5が発熱体引出電極45と接続されることにより、発熱体41への通電経路の一部を構成する。したがって、ヒューズ素子40は、ヒューズエレメント5が溶融し、外部回路との接続が遮断されると、発熱体41への通電経路も遮断されるため、発熱を停止させることができる。
【0105】
[回路図]
本発明が適用されたヒューズ素子40は、
図16に示すような回路構成を有する。すなわち、ヒューズ素子40は、発熱体引出電極45を経て一対の端子部5a,5b間にわたって直列接続されたヒューズエレメント5と、ヒューズエレメント5の接続点を介して通電して発熱させることによってヒューズエレメント5を溶融する発熱体41とからなる回路構成である。そして、ヒューズ素子40は、ヒューズエレメント5の両端部に設けられた端子部5a,5b及び第2の発熱体電極49と接続された発熱体給電電極49aが、外部回路基板に接続される。これにより、ヒューズ素子40は、ヒューズエレメント5が端子部5a,5bを介して外部回路の電流経路上に直列接続され、発熱体41が発熱体給電電極49aを介して外部回路に設けられた電流制御素子と接続される。
【0106】
[溶断工程]
このような回路構成からなるヒューズ素子40は、外部回路の電流経路を遮断する必要が生じた場合に、外部回路に設けられた電流制御素子によって発熱体41が通電される。これにより、ヒューズ素子40は、発熱体41の発熱により、外部回路の電流経路上に組み込まれたヒューズエレメント5が溶融され、ヒューズエレメント5の溶融導体が、濡れ性の高い発熱体引出電極45及び第1、第2の電極43,44に引き寄せられることによりヒューズエレメント5が溶断される。これにより、ヒューズエレメント5は、確実に端子部5a〜発熱体引出電極45〜端子部5bの間で溶断され(
図16(B))、外部回路の電流経路を遮断することができる。また、ヒューズエレメント5が溶断することにより、発熱体41への給電も停止される。
【0107】
このとき、ヒューズエレメント5は、発熱体41の発熱により、高融点金属層10よりも融点の低い低融点金属層9の融点から溶融を開始し、高融点金属層10を浸食し始める。したがって、ヒューズエレメント5は、低融点金属層9による高融点金属層10の浸食作用を利用することにより、高融点金属層10が溶融温度よりも低い温度で溶融され、速やかに外部回路の電流経路を遮断することができる。
【0108】
また、ベース部材2及びカバー部材3を耐トラッキング性に優れたプラスチック材料を用いることにより、ヒューズエレメント5の溶融遮断時において、ベース部材2やカバー部材3の炭化によるリークの発生による絶縁抵抗の低下を防止し、また、トラッキング現象による発火を防止することができる。
【0109】
なお、上述したヒューズ素子1,40は、ヒューズエレメント5の端子部5a,5bを外部回路基板に設けられた外部接続端子にハンダ等により接続することにより当該外部回路基板に表面実装させたが、本技術が適用されたヒューズ素子1,40は、表面実装以外の接続にも用いることができる。
【0110】
例えば、本技術が適用されたヒューズ素子1,40は、ヒューズエレメント5の端子部5a,5bを、大電流対応が可能な外部接続端子となる金属板に接続させてもよい。ヒューズエレメント5の端子部5a,5bと金属板との接続は、ハンダ等の接続材によって接続させてもよく、金属板と接続されたクランプ端子に端子部5a,5bを挟持させてもよく、あるいは端子部5a,5b又はクランプ端子を金属板に導通性を有するねじによりねじ止めすることにより行ってもよい。
【0111】
[ヒューズ素子の変形例]
次いで、本発明に係るヒューズ素子の変形例について説明する。なお、以下の説明において、上述したヒューズ素子1,40と同一の部材については同一の符号を付してその詳細を省略する。
【0112】
本発明が適用されたヒューズ素子50は、
図17に示すように、ベース部材2と、ベース部材2の表面2a上を覆うカバー部材3とを有する。ベース部材2とカバー部材3とは、互いに嵌合することにより素子筐体4を構成する。なお、
図17(A)はヒューズ素子50をカバー部材3側から示す平面図であり、
図17(B)はヒューズ素子50の側面図であり、
図17(C)はヒューズ素子50の背面図であり、
図17(D)はヒューズ素子50の正面図であり、
図17(E)はヒューズ素子50をベース部材2側から示す裏面図である。
【0113】
[ベース部材]
図18〜
図22に示すように、ベース部材2は、表面2aにヒューズエレメント5が搭載されるとともに、一方の側縁側には表面2aの面方向に対して交差され、素子筐体4の側面を構成する第1の側壁11が立設されている。第1の側壁11は、嵌合凹部11aが形成され、嵌合凹部11a内に、後述するカバー部材3に形成された第2の嵌合凸部29が嵌合する第1の開口部17及び第1の開口部17と連続し第1の開口部17に挿入された第2の嵌合凸部29と当接する当接面11bが形成されている。
【0114】
なお、
図18はベース部材2を第1の側壁11側から示す外観斜視図であり、
図19はベース部材2を第1の嵌合凸部18側から示す外観斜視図であり、
図20はベース部材2の裏面を第1の側壁11側から示す外観斜視図であり、
図21はベース部材2の裏面を第1の嵌合凸部18側から示す外観斜視図である。また、
図22(A)はベース部材2の平面図であり、
図22(B)はベース部材2の側面図であり、
図22(C)はベース部材2の背面図であり、
図22(D)はベース部材2の正面図であり、
図22(E)はベース部材2の裏面図である。
【0115】
ヒューズ素子50のベース部材2は、第1の側壁11が設けられた一方の側縁と反対側の他方の側縁には、ベース部材2の表面2aの面と交差する面から外方に張り出し、後述するカバー部材3に形成された第2の側壁22に形成された第2の開口部28に嵌合する第1の嵌合凸部18が形成されている。第1の嵌合凸部18は、好ましくはベース部材2の表面2aと平行な面に沿って外部に張り出している。
【0116】
[カバー部材]
図23〜
図27に示すように、カバー部材3は、素子筐体4の第1の側壁11と対向する側面を構成する第2の側壁22と、ヒューズエレメント5の通電方向に設けられ端子部5a,5bが外部に露出される第3、第4の側壁23,24と、素子筐体4の天面を構成する天面部25とを有する。
【0117】
なお、
図23はカバー部材3を第2の嵌合凸部29側から示す外観斜視図であり、
図24はカバー部材3を第2の側壁22側から示す外観斜視図であり、
図25はカバー部材3の内面を第2の嵌合凸部29側から示す外観斜視図であり、
図26はカバー部材3の内面を第2の側壁22側から示す外観斜視図である。また、
図27(A)はカバー部材3の平面図であり、
図27(B)はカバー部材3の側面図であり、
図27(C)はカバー部材3の背面図であり、
図27(D)はカバー部材3の正面図であり、
図27(E)はカバー部材3の裏面図である。
【0118】
第2の側壁22は、カバー部材3の一方の側縁側に形成され、ベース部材2の表面2aの面方向に対して交差、好ましくは略直交する方向に立設され、素子筐体4の側面を構成する。第2の側壁22は、嵌合凹部22aが形成され、嵌合凹部22a内に、上述したベース部材2に形成された第1の嵌合凸部18が嵌合する第2の開口部28及び第2の開口部28と連続し第2の開口部28に挿入された第1の嵌合凸部18と当接する当接面22bが形成されている。
【0119】
ヒューズ素子50のカバー部材3は、第2の側壁22が設けられた一方の側縁と反対側の他方の側縁には、ベース部材2の表面2aの面方向と交差する面から外方に張り出し、上述したベース部材2の第1の側壁11形成された第1の開口部17に嵌合する第2の嵌合凸部29が形成されている。第2の嵌合凸部29は、好ましくはベース部材2の表面2aと平行な面に沿って外部に張り出している。
【0120】
ヒューズ素子50は、ベース部材2の第1の側壁11に形成された第1の開口部17に、カバー部材3に形成された第2の嵌合凸部29が嵌合され、また、カバー部材3の第2の側壁22に形成された第2の開口部28に、ベース部材2に形成された第1の嵌合凸部18が嵌合される。
【0121】
このとき、ヒューズ素子50は、上述したヒューズ素子1と同様に、ベース部材2の第1の開口部17にカバー部材3の第2の嵌合凸部29が嵌合することにより、嵌合凹部11aの当接面11bが第2の嵌合凸部29の上面と当接する。また、カバー部材3の第2の開口部28にベース部材2の第1の嵌合凸部18が嵌合することにより、嵌合凹部22aの当接面22bが第1の嵌合凸部18の下面と当接する。
【0122】
これにより、過電流によってヒューズエレメント5がアーク放電を伴って自己発熱遮断した際に、カバー部材3にベース部材2の表面2a上方へ急激に圧力が加わっても、第1の開口部17と連続する当接面11bで第2の嵌合凸部29を押さえ、また、第2の開口部28と連続する当接面22bが第1の嵌合凸部18で押さえられることで、ベース部材2の表面2a上方への圧力に対する耐性が向上されており、カバー部材3がベース部材2から外れることを防止することができる。
【0123】
図28に示すように、ヒューズ素子50は、少なくともベース部材2及びカバー部材3のベース部材2の表面2aの面方向に対して交差され、素子筐体4の側面を構成する側縁の一方に開口部を設けるとともに他方に嵌合凸部を設けることで、ベース部材2の表面2a上方への圧力に対する耐性を向上させることができるが、好ましくは、ベース部材2及びカバー部材3のそれぞれに、開口部を設けるとともに嵌合凸部を設けて相互に嵌合させあうことにより、より確実にカバー部材3がベース部材2から外れることを防止することができる。
【0124】
[嵌合爪部/凸面部]
ヒューズ素子50において、ベース部材2の第1の嵌合凸部18には、第2の側壁22に形成された第2の開口部28への挿入方向と交差する方向へ膨出する第1の嵌合爪部51が形成されている。また、ヒューズ素子50において、カバー部材3は、第2の開口部28の当接面22bに、第1の嵌合凸部18の挿入方向と交差する方向へ膨出する第2の凸面部57が形成されている。
【0125】
同様に、カバー部材3の第2の嵌合凸部29には、第1の側壁11に形成された第1の開口部17への挿入方向と交差する方向へ膨出する第2の嵌合爪部56が形成されている。また、ヒューズ素子50において、ベース部材2は、第1の開口部17の当接面11bに、第2の嵌合凸部29の挿入方向と交差する方向へ膨出する第1の凸面部52が形成されている。
【0126】
図28に示すように、第1の嵌合爪部51及び第2の凸面部57、並びに第2の嵌合爪部56及び第1の凸面部52は、互いに係止することにより、カバー部材3のベース部材2の表面2aの面内方向への抜け止めを図るものである。
【0127】
第2の嵌合爪部56は、第2の嵌合凸部29が第1の開口部17へ挿入された際に当接面11bと対向する面に、第2の嵌合凸部29の幅方向にわたって膨出形成されている。また、第2の嵌合爪部56は、第2の嵌合凸部29が第1の開口部17へ挿入されると第1の凸面部52を乗り越えて係止する第2の嵌合面56aが形成されている。また、第2の嵌合爪部56は、第2の嵌合凸部29の第1の開口部17への挿入時に第1の凸面部52と摺接する第2のテーパ部58が形成されている。第2のテーパ部58は、第2の嵌合凸部29の先端に向かって第2の嵌合凸部29が薄肉化するように形成されている。これにより、第2の嵌合凸部29は、若干撓みながら第1の開口部17へ圧入されると、第2のテーパ部58を第1の凸面部52が摺動し、第2の嵌合爪部56が第1の凸面部52をスムーズに乗り越え、第2の嵌合面56aを第1の凸面部52に係止させることができる。これにより、カバー部材3は、ベース部材2の挿入方向への抜け止めが図られる。
【0128】
このように、ヒューズ素子50の素子筐体4は、カバー部材3に形成した第2の嵌合凸部29がベース部材2の第1の側壁11に形成した第1の開口部17に挿入されることにより、ベース部材2の表面2aの上方に係る圧力に対する耐性が向上されている。また、素子筐体4は、第2の嵌合凸部29に形成した第2の嵌合爪部56がベース部材2の第1の側壁11に形成した第1の開口部17に圧入されるとともに第2の嵌合面56aが第1の凸面部52に係止されることにより、挿入方向であるベース部材2の表面2aの面方向への抜け止めが図られる。さらに、素子筐体4は、第2の嵌合爪部56が第2の嵌合凸部29からカバー部材3がベース部材2から垂直方向に離間する方向に膨出成形され、第1の凸面部52が当接面11bから第2の嵌合爪部56と反対方向に膨出成形されているため、ヒューズエレメント5の遮断時における圧力が上下方向に加わった場合に、互いの引っ掛かり強度が増強され、より確実にベース部材2及びカバー部材3が外れることを防止することができる。
【0129】
同様に、第1の嵌合爪部51は、第1の嵌合凸部18が第2の開口部28へ挿入された際に当接面22bと対向する面に、第1の嵌合凸部18の幅方向にわたって膨出形成されている。また、第1の嵌合爪部51は、第1の嵌合凸部18が第2の開口部28へ挿入されると第2の凸面部57を乗り越えて係止する第1の嵌合面51aが形成されている。また、第1の嵌合爪部51は、第1の嵌合凸部18の第2の開口部28への挿入時に第2の凸面部57と摺接する第1のテーパ部53が形成されている。第1のテーパ部53は、第1の嵌合凸部18の先端に向かって第1の嵌合凸部18が薄肉化するように形成されている。これにより、第1の嵌合凸部18は、若干撓みながら第2の開口部28へ圧入されると、第1のテーパ部53を第2の凸面部57が摺動し、第1の嵌合爪部51が第2の凸面部57をスムーズに乗り越え、第1の嵌合面51aを第2の凸面部57に係止させることができる。これら第1の嵌合爪部51及び第2の凸面部57の構成及び機能は、上述した第2の嵌合爪部56及び第1の凸面部52と同じであるため、詳細は省略する。
【0130】
そして、ヒューズ素子50は、少なくともベース部材2及びカバー部材3の一方に開口部及び凸面部を設けるとともに他方に嵌合爪部を設けることで、挿入方向であるベース部材2の表面2aの面方向への抜けを防止することができるが、好ましくは、ベース部材2及びカバー部材3のそれぞれに、開口部及び凸面部を設けるとともに嵌合爪部を設け相互に係止させあうことにより、より確実にベース部材2からカバー部材3が外れることを防止できる。
【0131】
なお、ヒューズ素子50は、第1、第2の嵌合凸部18,29が第1、第2の凸面部52,57の上面に当接するようにしてもよく、これによってもベース部材2の表面2a上方への圧力に対する耐性を向上させることができる。
【0132】
また、ヒューズ素子50は、第1、第2の凸面部52,57と摺接する第1、第2の嵌合爪部51,56に第1、第2のテーパ部53,58を形成する他にも、第1、第2の嵌合凸部18,29の先端面の全側縁にテーパ部を形成してもよい。これによりベース部材2とカバー部材3とを組み付ける際に、第1、第2の嵌合凸部18,29を第1、第2の開口部17、28へスムーズに挿入させることができる。
【0133】
[凹部]
ヒューズ素子50は、カバー部材3のベース部材2の表面2aと対向する内面25aに、ヒューズエレメント5と離間して内部空間を形成する凹部60を形成してもよい。凹部60は、ヒューズエレメント5が溶断する際に、瞬間的に高熱になり、素子筐体4内部の空気が急激に膨張した際に、膨張空気を逃がして素子筐体4内部を減圧させ、また、溶融したヒューズエレメント5の気化物質の付着する面積を増やし、カバー部材3の内面25aを気化物質が連続することによる絶縁抵抗の低下を防止するものである。
【0134】
凹部60は、例えば、カバー部材3の内面25aにおいて、ヒューズエレメント5と熱的に接触する接触部に隣接して設けられ、ヒューズエレメント5の溶断部位となる低熱伝導部15との間に内部空間を形成する。また、凹部60により形成される内部空間は、ヒューズエレメント5の溶断部位となる溝部26と連続されていることが好ましい。
【0135】
凹部60を形成することにより、ヒューズ素子50は、ヒューズエレメント5の溶断時における膨張空気を凹部60で減圧させるとともに、溝部26で溶断したヒューズエレメント5の気化物質を積極的に凹部60に付着させ、多量の気化物質が内面25a及び溝部26に付着、堆積しヒューズエレメント5の端子部5a,5b間の絶縁抵抗が低下することを防止することができる。
【0136】
また、凹部60は、カバー部材3の内面25aから脚部35が形成された第3、第4の側壁23,24の内面にかけて連続して形成してもよく、さらに第3、第4の側壁23,24の下部より外部に連続させてもよい。これにより、ヒューズ素子50は、ヒューズエレメント5の溶断時おいて発生する膨張気体を凹部60を介して排出し、内圧の急激な上昇による素子筐体4の損傷や素子筐体4が実装されている外部回路基板からの剥離を防止することができる。
【0137】
[ベース部材及びカバー部材の材料]
なお、ヒューズ素子50は、上述したヒューズ素子1と同様に、ベース部材及びカバー部材を、耐トラッキング性が250V以上であるプラスチック材料により形成することが好ましく、また、ベース部材2及びカバー部材3をナイロン系のプラスチック材料により構成し、ナイロン系のプラスチック材料の中でも、特に特にナイロン46を用いることが好ましい。これにより、ヒューズ素子1は、耐トラッキング性を600V以上に高めることができる。このようなベース部材及びカバー部材の材料の構成及び機能は、上述したヒューズ素子1と同じであるため、詳細は省略する。
【0138】
[発熱体]
また、ヒューズ素子50は、上述したヒューズ素子40と同様に、ベース部材2に発熱体41を設けてもよい。ヒューズ素子50において、発熱体を設ける構成及び機能は、上述したヒューズ素子40と同じであるため、詳細は省略する。
【0139】
[裾部]
また、ヒューズ素子1,50は、ベース部材2のヒューズエレメント5が嵌合する両側面の下端縁に、外方に張り出す裾部61を設けてもよい。裾部61は、ベース部材2の表面2aにヒューズエレメント5が嵌合することにより、端子部5a,5bに繋がるヒューズエレメント5の屈曲部もしくは傾斜部の下部に入り込む構造が好ましい。
【0140】
これにより、ヒューズ素子1,50は、裾部61の上にヒューズエレメント5の端子部5a,5b及びヒューズエレメント5の屈曲部や傾斜部が一部重畳することとなり、過電流によるヒューズエレメント5の遮断時にヒューズエレメント5の溶断エリアが高熱伝導部14まで広がった場合においても、裾部61が端子部5a,5bとヒューズエレメント5の屈曲部に引っ掛り、端子部5a,5bを介して実装されている外部回路基板からの脱落を抑制することができる。