(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-16613(P2018-16613A)
(43)【公開日】2018年2月1日
(54)【発明の名称】クレンジング化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/39 20060101AFI20180105BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20180105BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20180105BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20180105BHJP
【FI】
A61K8/39
A61Q1/14
A61K8/81
A61K8/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】書面
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-159750(P2016-159750)
(22)【出願日】2016年7月29日
(71)【出願人】
【識別番号】595048544
【氏名又は名称】株式会社ちふれ化粧品
(72)【発明者】
【氏名】大内 しおり
(72)【発明者】
【氏名】階堂 睦子
(72)【発明者】
【氏名】上村 克己
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC532
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD352
4C083BB04
4C083BB36
4C083CC23
4C083DD23
4C083DD33
4C083EE01
(57)【要約】
【課題】クレンジング力に優れた水中油型クレンジング化粧料を提供する。
【解決手段】HLBが10から17のポリグリセリン脂肪酸エステルを2種類以上含み、かつ、非イオン界面活性剤を少なくとも1種類以上含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HLBが10から17のポリグリセリン脂肪酸エステルを2種類以上含み、かつ、非イオン界面活性剤を少なくとも1種類以上含むことを特徴とするクレンジング化粧料。
【請求項2】
非イオン界面活性剤のHLBが10から12のポリグリセリン脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1記載のクレンジング化粧料。
【請求項3】
HLBが10から17のポリグリセリン脂肪酸エステルの一方がカプリル酸ポリグリセリル−6であり、他方がジカプリン酸ポリグリセリル−6であり、同時に含まれる第三のポリグリセリン脂肪酸エステルがジステアリン酸ポリグリセリル−10であることを特徴とする請求項1、2記載のクレンジング化粧料。
【請求項4】
アルキル基の炭素数が10から30の(アクリレーツ/アクリル酸アルキル)クロスポリマーを0.1から0.5重量%含み、炭素数12から20の高級アルコールを0.2から1重量%含むことを特徴とする請求項1、2、3記載のクレンジング化粧料。
【請求項5】
水溶性増粘剤を0.2から1重量%含むことを特徴とする請求項1、2、3、4記載のクレンジング化粧料。
【請求項6】
アルキル基の炭素数が10から30の(アクリレーツ/アクリル酸アルキル)クロスポリマー1%水溶液をpH6.8に調整した時の粘度が7000から30000mPa・sであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5記載のクレンジング化粧料。
【請求項7】
水溶性増粘剤がカルボマーを含む2種以上の組み合わせであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6記載のクレンジング化粧料。
【請求項8】
炭素数12から20の高級アルコールの組成において、炭素数16の高級アルコールの比率が55%以上であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7記載のクレンジング化粧料。
【請求項9】
請求項3に記載のカプリル酸ポリグリセリル−6とジカプリン酸ポリグリセリル−6の総量が7から9重量%であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8記載のクレンジング化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレンジング力に優れ、保存時の安定性に優れた水中油型クレンジング化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
クレンジング化粧料の性能において優れたクレンジング性能を有することと、皮膚に過度な刺激を与えないことは当然の要求であり、特許文献1では、生体に対する安全性が高いポリグリセリン脂肪酸エステルを含有した飲食品と化粧品が提案されている。
【0003】
一方最近のメイクアップ化粧料は皮脂や汗に対する耐久性を増大させる工夫が凝らされ、かかる耐久性に優れたメイクアップ化粧料に対するクレンジング化粧料の性能向上も同時に求められている。しかし、従来のクレンジング化粧料は、各剤形で長所短所が異なり、いずれも優れたクレンジング化粧料とは言い難かった。例えば、オイル型や油中水型では連続相が油相であるためクレンジング力は高いが、一般的にぬれた手で使用できない上、クレンジング後に油性成分が残留してべたつくため、使用感が好まれない。また、ジェル型やローション型などは使用中の肌感触は良いが、メイクとのなじみが悪く落ちが悪いという欠点があった。
【0004】
水中油型クレンジング化粧料は、油性成分と水性成分を配合しているため使用中の肌あたりが良く、使い心地の良さが消費者に好まれている。一方で、メイクとのなじみが悪く、クレンジング力が低いことや製剤安定性の確保が難しいことが欠点であった。
【0005】
水中油型クレンジング化粧料の欠点であるクレンジング力の低さを解消する方法としては、これまでに、特許文献2や3のような内相の油分量を多くする試みもなされてきたが、油性成分を増やすことで、洗い流し後のべたつきが増大するため、使用感に優れた製剤を提供することは困難であった。上記の通り、クレンジング力と製剤安定性と使い心地の両立は難しく、消費者が満足するクレンジング化粧料の実現には未だ至っていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5005892号
【特許文献2】特許第4972310号
【特許文献3】特許第5593406号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって本発明の課題は、クレンジング力と製剤安定性に優れた水中油型クレンジング化粧料の提供をすることに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが上記の事情を鑑み鋭意検討を重ねた結果、前記の目的は、HLBが10から17のポリグリセリン脂肪酸エステルを2種類以上含むこと、および、アルキル基の炭素数が10から30の(アクリレーツ/アクリル酸アルキル)クロスポリマーを0.1から0.5重量%含み、炭素数12から20の高級アルコールを0.2から1重量%含むことを特徴とするクレンジング化粧料によって達成された。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水中油型クレンジング化粧料は、クレンジング力に優れ、また、製剤安定性に優れた効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンの重合度、脂肪酸の種類、エステル化度を変えることによって様々なHLBを示すものが得られる。
本発明で用いられる2種のポリグリセリン脂肪酸エステルは、それらのうち、HLBが10から17のものである。
【0011】
本発明で用いられるHLBが10から17の2種類のポリグリセリン脂肪酸エステルについて更に説明する。
このポリグリセリル基の重合度は4から20が好ましい。
2種類のポリグリセリン脂肪酸エステルは、一方が、カプリル酸ポリグリセリル−6であり、他方が、ジカプリン酸ポリグリセリル−6であることが最も好ましい。市販品としては、前者はサンソフトQ−8H−CやサンソフトQ−81F−Cなど、後者はサンソフトQ−102H−C(全て太陽化学製)などが挙げられる。
【0012】
さらにカプリル酸ポリグリセリル−6とジカプリン酸ポリグリセリル−6の総量が7から9重量%であることが好ましい。
【0013】
非イオン界面活性剤には、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール及び、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルなどがある。
本発明で用いられる非イオン界面活性剤で好ましいのは、HLBが10から12のポリグリセリン脂肪酸エステルである。
【0014】
本発明の非イオン界面活性剤として用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルのポリグリセリル基の重合度は4から20が好ましく、エステル部は、炭素数14から20の脂肪酸のジエステルが好ましい。このうち、ポリグリセリル基の重合度10で、炭素数18の脂肪酸のジエステルが最も好ましい。
【0015】
本発明としてはジステアリン酸ポリグリセリル−10が最も好ましく、市販品としてはサンソフトQ−182S−C(太陽化学製)などが挙げられる。
【0016】
十分なクレンジング力を得ると同時に、水中油型クレンジング化粧料を得るために、乳化増粘剤について検討した。
その結果、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル)クロスポリマーと高級アルコールを組み合わせた相と2種のポリグリセリン脂肪酸エステルを含むクレンジング相を組み合わせることで、安定的な水中油型クレンジング化粧料が得られることを見出した。
【0017】
本発明で用いられるクロスポリマーのアルキル基の炭素数は10から30が好ましく、1%水溶液をpH6.8に調整した時の粘度が7000から30000mPa・sであるクロスポリマーがさらに好ましく、10000から15000mPa・sのクロスポリマーが最も好ましい。
【0018】
本発明で用いられるクロスポリマーの配合量は0.1から0.5重量%が好ましく、0.15から0.3重量%がさらに好ましい。
本発明で、クロスポリマーと同時に用いられる高級アルコールの配合量は0.2から1重量%が好ましく、0.3から0.7重量%がさらに好ましい。
【0019】
本発明で、クロスポリマーと同時に用いられる高級アルコールの炭素数は12から20が好ましく、炭素数16と18を主成分とすることがさらに好ましく、炭素数16の高級アルコールの比率が55%以上であることが最も好ましい。
【0020】
乳化状態は、準安定状態であり、長期保存によって、性状が変化することが知られている。クレンジング化粧料においても、乳化当初の滑らかな触感を安定に保持することは大きな課題の一つである。
また、クレンジングを行う際にはクレンジング化粧料が滴らないように、適度な粘度を有することが求められる。
【0021】
乳化安定性の向上とクレンジング化粧料に適度な粘度を与えるために、本発明においては、水溶性増粘剤を0.02から1重量%含むことが好ましい。
増粘剤によっては、乳化粒子の分散状態に影響し、安定的な乳化状態を維持することが困難である。
【0022】
本発明において水溶性増粘剤として用いられるカルボマーの配合量は0.01から0.4重量%が好ましく、0.04から0.3重量%がさらに好ましい。
【0023】
本発明のクレンジング化粧料はとりわけ、高いクレンジング力が求められるメイクアップ落としなど、皮膚洗浄用に利用できる。
【0024】
本発明で必要とされる組成は、以上であるが、用途によって、さらに複数の成分を配合することができる。以下、それについて説明する。
【0025】
本発明では、クレンジング性能と触感を向上するために種々の安定剤または洗浄助剤を使用することができる。そのような安定剤または洗浄助剤とは乳化安定剤またはキレート剤などが挙げられる。
乳化安定剤には、界面活性剤はもちろんであるが、親水性増粘剤を用いることができる。
【0026】
界面活性剤としては、化粧品または医薬部外品で常用される一般的なアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などを用いることができる。
【0027】
本発明のクレンジング化粧料で用いられる親水性増粘剤は化粧品または医薬部外品に使用されるものであれば特に限定されない。例えば、天然の水溶性高分子、半合成の水溶性高分子、合成の水溶性高分子などを用いることができる。
【0028】
具体的には、天然の水溶性高分子としては、例えばアラビアガム、トラガカントゴムノキガム、グアーガム、カラギーナン、カンテン、クインスシード、褐藻エキス、チューベロース多糖体、スイゼンジノリ多糖体、シロキクラゲ多糖体などの植物由来高分子、キサンタンガム、デキストラン、アルカリゲネス産生多糖体などの微生物由来高分子、コラーゲンなどの動物由来高分子を用いることができる。
【0029】
半合成の水溶性高分子としては、例えばカルボキシメチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプンなどのデンプン系高分子、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどのアルギン酸系高分子などを用いることができる。
【0030】
合成の水溶性高分子としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボマーなどのビニル系高分子、ポリエチレングリコールなどのポリオキシエチレン系高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体共重合系高分子、ポリアクリル酸ナトリウムなどのアクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマーなどを用いることができる。
【0031】
本発明のクレンジング化粧料に用いられるキレート剤として、例えば、ポリフェノール(例えば、没食子酸、タンニン酸、コーヒー酸など)、ヒノキチオール及びその塩、アミノカルボン酸(エチレンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミンジコハク酸など)及びその塩、ヒドロキシカルボン酸(リンゴ酸、クエン酸、酒石酸など)及びその塩、フィチン酸及びその塩、エチドロン酸及びその塩などを用いることができる。
【0032】
本発明のクレンジング化粧料では、皮膚の潤いを保つためにさらに保湿剤を用いることができる。その保湿剤は化粧品または医薬部外品に使用されるものであれば特に限定されない。代表的な保湿剤として、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジグリセリン(エチレンオキサイド)(プロピレンオキサイド)付加物などの多価アルコールやポリエーテル類、植物抽出液、キシリトール、ソルビトール、グリコシルトレハロースなどの糖類、アミノ酸などを用いることができる。
【0033】
また、ヒアルロン酸、ムチン、コンドロイチン硫酸、可溶性コラーゲンなどの生物由来高分子化合物とその塩の両方、またはいずれか一方を用いることができる。
【0034】
本発明のクレンジング化粧料では、油剤を使用することができ、化粧品または医薬部外品に使用されるものであれば特に限定されない。
【0035】
具体的には、例えば、炭化水素油、シリコーン油などの非極性油、モノエステル油などの低極性油、トリグリセリド油などの高極性油、高級アルコール、生物由来油脂などを用いることができる。
【0036】
本発明のクレンジング化粧料には、上記に示すものの他、本発明の効果を損なわない範囲であれば、通常化粧品または医薬部外品に用いられる成分を適宜、その用途、目的に応じて配合することができる。例えば、各種薬効成分、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、粉体、抗酸化剤、防腐剤、香料、着色剤、清涼剤、ビタミン類、中和剤、pH調整剤、精製水、芳香水、温泉水、海洋深層水などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
以下に具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。また、以下の実施例および比較例における配合量は特に断らない限り重量%を示す。
【0038】
<クレンジング化粧料の製造方法>
実施例1から3及び比較例1から11のクレンジング化粧料
以下の表1に示す配合割合で各成分を用い、均一に混合することで、各クレンジング化粧料を調製した。
【0039】
<クレンジング力試験>
人工皮革にクリームファンデーションを均一に塗布し、十分に乾燥させたあと、クレンジング化粧料でなじませ(30秒間)、その後流水で洗い流した。
<評価>
A:ファンデーションが90%以上除去された。
B:ファンデーションが50%以上90%未満除去された。
C:ファンデーションが50%未満除去された。
【0040】
<安定性試験>
クレンジング化粧料を50℃で14日間放置した後20℃に冷却し、性状を目視で観察した。
<評価>
A:乳化状態が均一に維持されていて、液むら、ブツは発生していない。
B:乳化状態は維持されているが、液むらが見られる。
C:2層分離がみられる、あるいはブツが発生している。
【0041】
<結果>
実施例1と2は、クレンジング力、安定性を完全に満足すると同時に、本発明の配合量の範囲の実施例3も、満足するクレンジング化粧料が得られた。
それに対して比較例では、クレンジング力、安定性において満足するものは得られなかった。
【0042】
【表1】
【0043】
以上のように、本発明により、クレンジング力に優れ、また、保存時の安定性に優れた水中油型クレンジング化粧料を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
クレンジング力に優れ、また、保存時の安定性に優れた水中油型クレンジング化粧料を得ることができる。