特開2018-166236(P2018-166236A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-166236(P2018-166236A)
(43)【公開日】2018年10月25日
(54)【発明の名称】音声再生装置
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/217 20060101AFI20180928BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20180928BHJP
【FI】
   H03F3/217
   H04R3/00 310
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-62189(P2017-62189)
(22)【出願日】2017年3月28日
(11)【特許番号】特許第6293951号(P6293951)
(45)【特許公報発行日】2018年3月14日
(71)【出願人】
【識別番号】517100060
【氏名又は名称】中田 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100166132
【弁理士】
【氏名又は名称】木船 英雄
(72)【発明者】
【氏名】中田 宏
【テーマコード(参考)】
5D220
5J500
【Fターム(参考)】
5D220AA37
5J500AA02
5J500AA41
5J500AA66
5J500AC36
5J500AF00
5J500AH39
5J500AK33
5J500AK53
5J500AM00
5J500AS05
5J500AT01
(57)【要約】
【課題】ΔΣ駆動パルスによってスピーカーを効率的に駆動して高音質を実現できる新規な音声再生装置の提供。
【解決手段】ΔΣ駆動パルス信号のパルス正負切り替えのときに、隣接する正負のパルス同士を相殺して残ったパルスを出力する。これによって、ΔΣ駆動パルス信号がLPFで打ち消される成分がなくなって電源電圧が安定するため、LPFを省略することが可能となると共に、駆動電圧を略最大電圧にできるため、音響スピーカー40の振動板を駆動する力が入力電圧に比例して音質が向上する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されるΔΣ駆動パルス信号を処理するパルス処理器と、当該パルス処理器で処理したΔΣ駆動パルス信号を増幅してスピーカーを駆動する増幅器とを有し、
前記パルス処理器は、前記ΔΣ駆動パルス信号のうち、隣接する正負のパルス同士を相殺して残ったパルスを出力することを特徴とする音声再生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の音声再生装置において、
前記パルス処理器と増幅器とを電磁シールドされたケース内に収容し、当該ケースをスピーカーボックス内に組み込んでなることを特徴とする音声再生装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の音声再生装置において、
前記パルス処理器の後に第2のパルス処理器を設け、当該第2のパルス処理器は、前記パルス処理器から出力されたΔΣ駆動パルス信号のパルス幅を元のパルス幅よりも短くして出力することを特徴とする音声再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ΔΣ駆動パルス信号によって音響スピーカーを駆動するための音声再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、CDやDVDなどの音楽メディアに記録されているPCM(Pulse Code Modulation)入力信号を1ビットデジタル信号に変換するための方式として、パルス幅変調方式(PWM:Pulse Width Modulation)と、パルス密度変調方式(PDM:Pulse Density Modulation)が知られている。現在はPWMが一般的に用いられているが、高い信号対ノイズ比(SNR:Single to Noie Ratio)を実現する場合には、ノイズシェーピング特性を有するΔΣ変調器を用いた方式が用いられている。
【0003】
図12はPWM変調方式を用いた従来のオーディオ装置の構成の一例を示したものである。図示するようにPWM駆動パルスは2レベル間を規則的かつ瞬間的に変化する矩形波であり、PCM信号を変調器でPWM変調してからこれを増幅器(D級アンプ)で信号増幅し、その後その増幅信号をLPF(Low Pass Filter:高周波遮断回路)でアナログ信号に変換し、そのアナログ信号によってスピーカーを駆動するようになっている。
【0004】
ところで、このPWM駆動パルスを増幅するための増幅器であるD級アンプは、その出力が常にプラス(+)かマイナス(−)の電圧となっており、1周期のうち+と−の同じ長さのパルスが打ち消し合って残った成分のみがスピーカー駆動の信号として出力される。そして、打ち消し合ったエネルギーは、一端LPFまでいってから跳ね返されてD級アンプの電源回路に戻ってくるが、その戻ってきたエネルギーによって電源電圧が不安定になって音質が劣化するという問題がある。
【0005】
そこで、例えば以下の特許文献1などではLPFで打ち消されると分かっているエネルギー成分がある場合、その出力をやめて出力をゼロに保持する方法が提案されている。このようにすることでLPFで打ち消される成分がなくなるため、LPFから戻ってくるエネルギーを大幅に減少させることが可能となる。さらに+、−の切り替えが少なくなることによりLPFを省略できるため、駆動電圧を略最大電圧にできる。この結果、スピーカーの振動板を駆動する力が入力電圧に比例し、音質が向上するという効果も期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US−A1−005617058公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、PWM駆動パルスで発生するような問題は、駆動信号としてΔΣ変調駆動パルスでも同様に発生することが考えられる。しかしながら、ΔΣ変調駆動パルスは等幅で周期の短いパルスが連続して出力されるため、前記のようなPWM駆動パルスに適用する構成では、その問題を解消することはできない。
【0008】
そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その主な目的は、ΔΣ駆動パルスによってスピーカーを効率的に駆動して高音質を実現できる新規な音声再生装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために第1の発明は、入力されるΔΣ駆動パルス信号を処理するパルス処理器と、当該パルス処理器で処理したΔΣ駆動パルス信号を増幅してスピーカーを駆動する増幅器とを有し、前記パルス処理器は、前記ΔΣ駆動パルス信号のうち隣接する正負のパルス同士を相殺して残ったパルスを出力することを特徴とする音声再生装置である。
【0010】
このような構成によれば、パルス処理器20で予め正負のパルス同士を相殺して残ったパルスを出力するようにしたため、ΔΣ駆動パルス信号がLPFで打ち消される成分がなくなって+、−の切り替えが少なくなる。これにより、LPFを省略することが可能となり、駆動電圧を略最大電圧にできるため、音響スピーカーの振動板を駆動する力が入力電圧に比例し、音質が向上する。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記パルス処理器と増幅器とを電磁シールドされたケース内に収容し、当該ケースをスピーカーボックス内に組み込んでなることを特徴とする音声再生装置である。このような構成によれば、パルス処理器や増幅器で発生する高周波ノイズを電磁シールドされたケースおよびスピーカーボックス内で確実に遮蔽できるため、高周波ノイズによる音質の悪化や周囲にある家電などへの悪影響を確実に防止できる。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記パルス処理器の後に第2のパルス処理器を設け、当該第2のパルス処理器は、前記パルス処理器から出力されたΔΣ駆動パルス信号のパルス幅を元のパルス幅よりも短くして出力することを特徴とする音声再生装置である。このような構成によれば、出力されるパルスが連続してもその切り替えのタイミングでアンプ出力部分が瞬間的に短絡状態になるのを防止できると共に、歪が発生しても毎回出力されるすべてのパルスが同じ形となるため、パルスの数に比例するエネルギーを安定して出力することができる。これによってΔΣ駆動パルス波形の歪みによる音質劣化を防止することが可能となり、音量が小さくなっても優れた高音質を発揮できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パルス処理器20で予め正負のパルス同士を相殺して残ったパルスを出力するようにしたため、ΔΣ駆動パルス信号がLPFで打ち消される成分がなくなって+、−の切り替えが少なくなる。これにより、LPFを省略することが可能となり、駆動電圧を略最大電圧にできるため、音響スピーカー40の振動板を駆動する力が入力電圧に比例し、音質が向上するといった優れた効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る音声再生装置100の第1の実施形態を示す構成図である。
図2】第1の実施形態に係るパルス処理器20を示すブロック図である。
図3】パルス処理器20によるパルス処理の例を示すΔΣ駆動パルスを示す波形図である。
図4】ΔΣ駆動パルスをプラス駆動出力とマイナス駆動出力に分けた例を示す波形図である。
図5】パルス処理器20によるパルス処理の流れの一例を示す波形図である。
図6】パルス処理器20によるパルス処理の流れの一例を示す波形図である。
図7】本発明に係る音声再生装置100の第2の実施形態を示す構成図である。
図8】第2の実施形態に係る第2のパルス処理器90を示すブロック図である。
図9】第2のパルス処理器90によるΔΣ駆動パルスの処理例を示す波形図である。
図10】理想的なΔΣ駆動パルスと実際のΔΣ駆動パルスを示す波形図である。
図11】本発明に係る音声再生装置100の第3の実施形態を示す構成図である。
図12】PWM変調方式を用いた従来のオーディオ装置の構成の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る音声再生装置100の第1の実施形態を示したものである。図示するようにこの音声再生装置100は、ΔΣ変調器10と、パルス処理器20と、増幅器30と、音響スピーカー40とから構成されている。
【0016】
ΔΣ変調器10は、公知の1ビットデジタル変調器の1つであり、CDやDVDなどのメディアに記録されたPCM信号(44.1KHz、16ビット)からオンとオフの信号列からなる等幅のΔΣ駆動パルス(パルス列)信号を生成してパルス処理器20に出力するようになっている。図3(A)はこのΔΣ変調器10から出力されるΔΣ駆動パルス信号の波形の一例であり、等幅のプラス(+)またはマイナス(−)のΔΣ駆動パルスPが休み無く連続して出力されている。
【0017】
増幅器30は、例えばフルブリッジと呼ばれる4つのトランジスタを組み合わせた公知のD級アンプであり、プラスの電源1つだけで音響スピーカー40に正負両方の電圧を印加ができるようになっている。音響スピーカー40は、電磁コイルと磁石とコーンとからなる公知のダイナミックスピーカーであり、増幅器30から出力された正負のデジタル信号を可聴域の音に変換して出力するようになっている。
【0018】
パルス処理器20は、図2に示すような回路構成となっており、3つ(第1乃至第3)のフリップフロップ回路21,22,23と、同じく3つ(第1乃至第3)のAND回路24,25,26と、それぞれ1つのXOR回路27およびダウンカウンター28といった複数の論理回路から構成されている。
【0019】
このパルス処理器20は、図示するようにΔΣ変調器10から送られてきたΔΣ信号(駆動パルス)を第1のフリップフロップ回路21およびXOR回路27に入力し、以後、第2フリップフロップ回路22、第3フリップフロップ回路23、AND回路24,25,26、ダウンカウンター28において処理されて、それぞれΔΣ信号と共に送られてくるΔΣクロック周波数に従って順次後述するようなパルス相殺処理を行って所定のパルスのみを出力するようになっている。なお、このダウンカウンター28は、初期値は0であり、カウンターが0のとき出力オン、入力がオンになると2周期オフになってカウント0でオンに戻り、各AND回路24,25,26を動作するようになっている。
【0020】
すなわち、このパルス処理器20は例えば図3(A)に示すような波形のΔΣ駆動パルスが入力されると、隣接する+(プラス)駆動出力パルスと−(マイナス)駆動出力パルス同士を相殺し、同図(B)に示すように相殺されなかった駆動パルス(図の例では+駆動出力パルスP3とP12)のみを出力するようになっている。図3(A)の例では斜線で塗りつぶされたパルスが相殺されて出力されなかったパルスを示す。
【0021】
図4はこのΔΣ駆動パルスをプラス駆動出力とマイナス駆動出力に分けたものであり、図5および図6はこのパルス処理器20によるパルス処理(パルス相殺処理)の一例を示したものである。先ず、このパルス処理器20は、図5(A)に示すように最初の+駆動出力パルス(以後、+パルスと称す)P1が入力されると、図2に示すようにこの+パルスP1は第1のフリップフロップ回路21およびXOR回路27に入力し、XOR回路27側では第2のAND回路25を介してダウンカウンター28に入力されて、そのカウンター値が2にセットされる。
【0022】
次に、図5(A)に示すように次の−駆動出力パルス(以後、−パルスと称す)P2が入力されると、図2に示すようにこの−パルスP2は、同じく第1のフリップフロップ回路21およびXOR回路27に入力し、XOR回路27側では第2のAND回路25を介してダウンカウンター28に入力されてそのカウンター値が1となり、図5(B)に示すように最初の+パルスP1と打ち消しが行われる。この結果、いずれのパルスP1,P2も出力されることなく、その内部で相殺されると共に、そのカウンター値が0にリセットされる。
【0023】
次に、図5(C)に示すように次の+パルスP3,P4が続いて入力された後、−パルスP5が入力されると、+パルスP3の直前の−パルスP2はすでに最初の+パルスP1の相殺に使用されてカウンター値が0になっているため、打ち消しが行われず、そのまま+駆動パルスとして出力される。一方、その次の+パルスP4は、その後の−パルスP5によって打ち消されるため、−パルスP5と同様に出力されることはない。さらに、同図(D)に示すようにこの−パルスP5に続いて入力された−パルスP6は、その後に入力された+パルスP7によって相殺されるため、+パルスP7と同様に出力されることはない。
【0024】
以後は、図6(A)〜(D)に示すように隣接する+パルスと−パルス同士が順次打ち消し合って相殺され、カウンター値が0になって打ち消し合う相手パルスがなかったパルスのみ(この例では+パルスP3とP12)がこのパルス処理器20から出力されて増幅器30に入力されることになる。
【0025】
このように本発明の音声再生装置100は、パルス処理器20で予め正負のパルス同士を相殺して残ったパルスのみを出力するようにしたため、ΔΣ駆動パルス信号がLPFで打ち消される成分がなくなって+、−の切り替えが少なくなる。これにより、LPFを省略することが可能となり、駆動電圧を略最大電圧にできるため、音響スピーカー40の振動板を駆動する力が入力電圧に比例し、音質が向上するといった優れた効果を発揮できる。
【0026】
なお、本実施の形態では、このパルス処理器20の前段にΔΣ変調器10を設けた構成となっているが、SACD(Super Audio CD)のようにはじめから1ビットのΔΣ駆動パルス信号で音声情報が記録されているメディアを音源として用いた場合は、ΔΣ変調処理が不要となる。そのため、このような場合は図1に示すようにΔΣ変調器10の後段に切り替えスイッチ11を設け、その音源となるΔΣ駆動パルス信号を直接パルス処理器20に入力するようにしても良い。
【0027】
次に、図7乃至図9は本発明に係る音声再生装置100の第2の実施形態を示したものである。先ず図7に示すようにこの音声再生装置100は、ΔΣ変調器10と、パルス処理器20と、第2のパルス処理器70と、増幅器30と、音響スピーカー40とから構成されており、第2のパルス処理器70以外の構成は、前記第1の実施形態と同じ構成となっている。すなわち、本実施の形態は前述したパルス処理器20と増幅器30との間に、新たに第2のパルス処理器70を設けたものである。
【0028】
この第2のパルス処理器70は、図8に示すような回路構成となっており、ΔΣ信号とクロック信号を入力するフリップフロップ回路71と、第1および第2のAND回路72,73とから構成されている。そして、この第2パルス処理器70においては、この最初のパルス処理器20から出力されたΔΣ信号の各パルスは、フリップフロップ回路71に入力し、このΔΣ信号に付随して入力されるクロック信号によって図9に示すようなその幅が約半分の短幅パルスpに変形される。
【0029】
変形された短幅パルスpがプラスのときは、そのまま第1のAND回路72を介してプラス(+)駆動電圧として出力され、短幅パルスpがマイナスに切り替わったときは、第2のAND回路73を介してマイナス(−)駆動電圧として出力される。これら各短幅パルスpは、いずれも同じ形状でかつ半分に短縮されたぶんだけ一定の間隔を隔てて生成される。
【0030】
図9の例では、1周期の半分を休止することにより、各ΔΣ駆動パルスP3〜P6がそれぞれ元のパルス幅の約半分の短幅パルスp3〜p6に変形されて隣接するパルス間に一定の間隔を隔てて生成されることによってこの間隔が休止時間となっている。このようにパルス間に一定の間隔を隔てて生成されることによってΔΣ駆動パルス波形の歪みによる音質劣化を防止することが可能となり、音量が小さくなっても優れた高音質を発揮できる。その理由を以下に説明する。
【0031】
ΔΣ駆動パルスは、図10(A)に示すように2レベル間を規則的かつ瞬間的に変化する矩形波となるのが理想的であるが、実際には同図(B)に示すようにパルスの立ち上がりで緩やかに遅れる特性がある。これはパルスを生成するアナログの駆動素子(トランジスタ)はオンになっても出力が最大電流、最大電圧に達するまでに時間がかかるからであり、オンからオフに切り替わるときも同様に緩やかに変化する。この結果、同図(B)に示すように波形が乱れてしまい、以下に示すような問題が生ずる。
【0032】
すなわち、先ず出力がプラス、マイナスに切り替わるとき、同図(B)に示すように瞬間的に両方の駆動回路がオンになって電流が回路内で短絡してしまう。その結果、短絡している間の電力はスピーカーへ届かず、トランジスタを発熱させてしまうことがある。次に同図(B)の斜線部に示すようにパルスの角が歪みで欠けることによって出力されるエネルギーがトランジスタのオンオフ制御信号の長さと正確に比例しないため、エネルギーロスの比率が大きくなることがある。
【0033】
このため、本実施の形態では、この駆動素子の遅れを見込んで図9(B)に示すようにパルスのオンオフの切り替えのタイミングに休止時間(デッドタイム)を設けたものである。このようにすれば、パルスの切換のタイミングでアンプ出力部分が瞬間的に短絡状態になるのを防止できると共に、歪が発生しても毎回出力されるすべてのパルスが同じ形となるため、パルスの数に比例するエネルギーを安定して出力することができる。この結果、ΔΣ駆動パルス波形の歪みによる音質劣化を防止することが可能となり、音量が小さくなっても優れた高音質を発揮できる。
【0034】
次に、図11は本発明に係る音声再生装置100の第3の実施形態を示したものである。図示するようにこの音声再生装置100は、前述したΔΣ変調器10、パルス処理器20、増幅器30などの電磁波を発生する機器を電磁シールド材料、例えば金属板や金属網などで形成されたケース50内に収容し、このケース50を音響スピーカー40を取り付けるスピーカーボックス60内に一体的に組み込んだものである。
【0035】
すなわち、ΔΣ駆動パルス信号はMHzオーダーの信号であり、これを1W〜100Wの電力伝送を行う場合、その輻射電波量も増大となり、音質や周囲の電化製品に悪影響を及ぼすことが考えられる。そこで、本実施の形態ではこれらの機器を電磁シールドされたケース50内に収容すると共にさらにこのケース50をスピーカーボックス60内に一体的に組み込んだものであり、これによってこれらの機器から発生する不要な高周波輻射を確実に遮蔽して音質や周囲の電化製品への悪影響を抑制することができる。
【0036】
また、このように構成することによりパルス処理器20や増幅器30などを設置するスペースが不要となって室内空間を有効利用できると共に、音響スピーカー40へ接続するケーブルが不要または大幅に短縮できるため、コストダウンや伝送時の信号劣化などによる音質低下も同時に回避することができる。
【符号の説明】
【0037】
100…音声再生装置
10…ΔΣ変調器
11…切り替えスイッチ
20…パルス処理器
21〜23…第1乃至第3のフリップフロップ回路(第1実施形態)
24〜26…第1乃至第3のAND回路(第1実施形態)
30…増幅器
40…音響スピーカー
50…ケース(電磁シールド)
60…スピーカーボックス
70…第2のパルス処理器
71…フリップフロップ回路(第2実施形態)
72,72…第1及び第2のAND回路(第2実施形態)
P…ΔΣ駆動パルス
p…短幅のΔΣ駆動パルス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2017年12月20日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されるΔΣ駆動パルス信号を処理するパルス処理器と、当該パルス処理器で処理したΔΣ駆動パルス信号を増幅してスピーカーを駆動する増幅器とを有し、
前記パルス処理器は、前記ΔΣ駆動パルス信号のうち、隣接する正負のパルス同士をその入力順に相殺し、相殺したパルスは次のパルスの相殺に用いることなく、残ったパルスを出力することを特徴とする音声再生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の音声再生装置において、
前記パルス処理器と増幅器とを電磁シールドされたケース内に収容し、当該ケースをスピーカーボックス内に組み込んでなることを特徴とする音声再生装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の音声再生装置において、
前記パルス処理器の後に第2のパルス処理器を設け、当該第2のパルス処理器は、前記パルス処理器から出力されたΔΣ駆動パルス信号のパルス幅を元のパルス幅よりも短くして出力することを特徴とする音声再生装置。