(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-166443(P2018-166443A)
(43)【公開日】2018年11月1日
(54)【発明の名称】プラセンタエキス含有飲料の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/66 20060101AFI20181005BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20181005BHJP
【FI】
A23L2/00 J
A23L2/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2017-66624(P2017-66624)
(22)【出願日】2017年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】鉄井 崇仁
(72)【発明者】
【氏名】前田 仁美
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC04
4B117LC09
4B117LG29
4B117LK08
4B117LK15
4B117LP07
(57)【要約】
【課題】 プラセンタエキスの有する独特の臭いや味をマスキングした、プラセンタエキス含有飲料の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 プラセンタエキスを含有する飲料を製造する方法であって、
(1):プラセンタエキスを水に溶解する工程、
(2):(1)に酸味料を添加して、原料由来のおりが生じるまで混合する工程及び、
(3):吸着材としてレジンと活性炭と白土を用いた電位吸着型フィルターを用いろ過する工程、
を有してなる方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラセンタエキスを含有する飲料を製造する方法であって、
(1):プラセンタエキスを水に溶解する工程、
(2):(1)に酸味料を添加して、原料由来のおりが生じるまで混合する工程及び、
(3):吸着材としてレジンと活性炭と白土を用いた電位吸着型フィルターを用いろ過する工程、
を有してなる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラセンタエキスの有する独特のにおいや味をマスキングした、プラセンタエキス含有飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラセンタエキスは、美容、健康又は医薬関連分野において盛んに利用されている。例えば、プラセンタエキス、コラーゲン由来成分及びストレス緩和剤を含有することを特徴とする経口用組成物(特許文献1)、オリゴ糖とプラセンタエキスの組み合わせを特徴とする腸内環境改善組成物(特許文献2)、プラセンタエキスを含有する神経細胞活性化剤(特許文献3)、コラーゲン加水分解物、豚プラセンタエキス、ライチ由来の低分子化ポリフェノール及びアスコルビン酸類を美容成分として含有することを特徴とする健康食品(特許文献4)等が知られている。
【0003】
しかしながら、プラセンタエキスは、その起源が生物であるため、経口で摂取する際、特有の不快な味や臭いを有しており、それらのマスキングが課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−70316号公報
【特許文献2】特開2011−157335号公報
【特許文献3】特開2012−136448号公報
【特許文献4】特開2013−34423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、プラセンタエキスの有する独特の臭いや味をマスキングした、プラセンタエキス含有飲料の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
プラセンタエキスを含有する飲料を製造する方法であって、
(1):プラセンタエキスを水に溶解する工程、
(2):(1)に酸味料を添加して、原料由来のおりが生じるまで混合する工程及び、
(3):吸着材としてレジンと活性炭と白土を用いた電位吸着型フィルターを用いろ過する工程、
を有してなる方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法は、プラセンタエキス含有飲料における、ププラセンタエキスの独特の味をマスキングする効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0009】
本発明の飲料は、プラセンタエキスを含有する。プラセンタエキスを得る胎盤の由来としては、特に起源を問わないが、ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、サケ、ニシン、チョウザメ、バラ、メロンなどが例示される。これらの起源の中でも、商用的な使用の観点から、ブタ由来のものを用いることが好ましい。また、既にプラセンタエキスとして市販されている商品があり、それを使用してもよい。
【0010】
プラセンタエキスの製法の一例としては、ブタの胎盤を、プロテアーゼで処理する方法が挙げられる。当該プロテアーゼとしては、例えば、パパイン、トリプシン、ペプシン、プロメライン、サーモライシン等が挙げられる。これらの中ではパパインがプロテアーゼ処理の効率の点から好ましく用いられる。当該プロテアーゼ処理は、3〜75℃、0.5〜3時間程度反応させることにより進められ、前記プロテアーゼ処理により得られる成分を遠心分離、限外ろ過、珪藻土ろ過や、イオン交換樹脂、逆浸透ろ過、活性炭処理などにより精製することによりプラセンタエキスが得られる。
【0011】
上記のプラセンタエキスは、スプレードライ、凍結乾燥などの慣用の手段により粉末化することもできる。
【0012】
プラセンタエキスの含有量は、1日あたりの摂取量として0.01〜20g、より好ましくは0.1〜10gである。0.01g未満の摂取ではプラセンタエキスの効果が発揮されない場合がある。また20gを超えて摂取しても、その効果に向上が認められない場合があり、非効率的である。
【0013】
本発明の飲料には、酸味料を配合する。酸味料としてはフィチン酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸などの有機酸、塩酸、リン酸などの無機酸、レモン果汁、リンゴ果汁などの酸性を呈する果汁と併用して用いてもよい。
【0014】
酸味料の配合量は特に限定されず、所望のpHとなる量を配合する。
【0015】
本発明の方法によれば、まず、プラセンタエキスを水に溶解する工程を含む。プラセンタエキスの水への溶解方法は特に限定されない。加温若しくは室温の水を撹拌しながら、プラセンタエキスを徐々に添加して、均一に溶解する。なお、溶解する容器は開放式、閉鎖式いずれを用いてもよい。
【0016】
本発明の方法によれば、次に上記で得られたプラセンタエキス水溶液に酸味料を添加する。酸味料のプラセンタエキス水溶液の溶解方法は特に限定されない。加温若しくは室温のプラセンタエキス水溶液を撹拌しながら、酸味料を徐々に添加して、さらに撹拌を続ける。この段階で原料由来のおりの発生が認められるまで撹拌を継続する。
【0017】
本発明の方法によれば、上記で得られたプラセンタエキスと酸味料を含有する組成物を、濾過工程に供する。
【0018】
濾過は、レジンと活性炭と白土を用いた電位吸着型フィルターを用いて行う。電位吸着型のフィルターとは、フィルターの素材として不織布以外に、珪藻土やパーライト、ゼータ電位が付与されたレジンなどが用いられ、固形分を機械的な捕捉のみではなく、素材の吸着作用によって取り除くことができるフィルターであり、例えば住友スリーエム社製のゼータプラス10C、30C、60Cや、ゼータプラス50C等、フィルテック社製のNA45KSや、NA60KSや、NA90KSや、NA150KSや、NA300KS等が挙げられる。これらのフィルターの中でも、住友スリーエム社製のゼータプラス10C、60Cから選択される1種又は2種を用いることが、呈味の点から好ましい。
【0019】
本発明の飲料には、通常保健機能食品、食品、医薬品および医薬部外品の分野の飲料に用いることが可能な成分、例えば、甘味料、ビタミン類、有機酸類、無機酸類、生薬、着色料、香料、保存剤、増粘剤、オリゴ糖類、多糖類、などの他、キトサン化合物、コラーゲン類、ヒアルロン酸類、コンドロイチン類、栄養強化成分、滋養強壮成分などを適時選択して配合することができる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
【0021】
まず、実施例に使用したプラセンタエキスの調製方法を示す。
【0022】
[プラセンタエキス]
国内産豚由来プラセンタを、加水分解後、ろ過、乾燥させて得られた、プラセンタエキスを、プラセンタエキスとして使用した。
【0023】
表1に記載した処方にて、製造方法の検討を行った。味の評価は、味認識装置TS−5000Z (株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー製)を用い、苦味(先味)、苦味(後味)の測定を行い、味覚の変化を確認した。
【0024】
【表1】
【0025】
[実施例、比較例1〜3]
表1に示した成分(1)に(2)を添加して均一に溶解した。さらに(3)を添加して、おりが発生するまで撹拌を継続した後、(4)、(5)を添加して飲料素液とした。飲料素液を表2に示す方法によりろ過することにより、本発明の実施例1及び比較例1〜3にかかる飲料を得た。なお、電位吸着フィルターとして、住友スリーエム社製のゼータプラス10Cを用いた。
【0026】
【表2】
【0027】
表2に示した通り、比較例2、3においては無濾過の比較例1より、苦味(先味)、苦味(後味)ともに強まる傾向にあった。これに対し、本発明の実施例においては、苦味(先味)、苦味(後味)ともに、無濾過の比較例1より減少していた。レジンと活性炭と白土を装備した電位吸着フィルターを用いてろ過することにより、プラセンタエキスの味をマスキングする効果を発揮することは明らかであった。
【0028】
さらに、比較例4として、(1)に(3)、(2)の順に添加して調製した飲料は、実施例と同様のろ過を行った場合、経時でおりの発生が認められた。
【0029】
【表3】
【0030】
[実施例2]
表3に示した処方を用い、飲料を次の通り調製した。調合タンクに(1)精製水を投入し80℃に加熱した。次いで撹拌しながら(2)プラセンタエキスを調合タンクに徐々に添加して、均一に溶解した。さらに(3)クエン酸、(4)クエン酸Naを添加して、撹拌を続ける。おりの発生を確認し、(5)エリスリトール、(6)難消化性デキストリン、(7)甘味料を撹拌しながら添加した。住友スリーエム社製電位ろ過フィルター(ゼータプラスカートリッジフィルターC12D10C(S)12インチ16セル(有効濾過面積1.66m
2))を用いてろ過した後、貯液タンクに移送し香料を添加後精製水にて100Lとした。
【0031】
実施例2にかかる飲料は、プラセンタエキスの生臭さが気にならない、良好な呈味の飲料であった。