【解決手段】被観察体の微小部位を拡大して観察する手術用顕微鏡を被覆することによって該手術用顕微鏡の滅菌状態を維持するドレープが、未使用時の状態で折り畳まれており、使用時に広げられて手術用顕微鏡を被覆する本体部と、未使用時の状態から使用時の状態への当該ドレープの状態変化を促進する取手部(引き出し用部材)33と、を備える。
前記本体部が広がった状態において、長手方向と直交する方向の幅が、前記長手方向の端部であって前記本体部の開口端部とは異なる端部から前記開口端部へ向けて単調に増加する請求項1〜6のいずれか一項に記載のドレープ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の従来の手術用顕微鏡は、複数の人が同時に観察するために複数の接眼レンズが設けられている。このため、ドレープを装着する際には複雑な形状を有する接眼部を通過させて装着しなければならず、装着が容易であるとは言い難かった。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、手術用顕微鏡への装着が容易なドレープ、手術用顕微鏡および手術用顕微鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るドレープは、被観察体の微小部位を拡大して観察する手術用顕微鏡を被覆することによって該手術用顕微鏡の滅菌状態を維持するドレープであって、未使用時の状態で折り畳まれており、使用時に広げられて前記手術用顕微鏡を被覆する本体部と、前記未使用時の状態から前記使用時の状態への当該ドレープの状態変化を促進する取手部と、を備える。
【0007】
本開示に係るドレープは、上記開示において、前記取手部は、前記本体部の開口端部に設けられ、前記本体部の折り畳まれている部分を前記本体部の長手方向に沿って前記開口端部から引き出す力を加えることが可能な引き出し用部材を有する。
【0008】
本開示に係るドレープは、上記開示において、前記本体部は、前記未使用時の状態で厚さ方向に重ねて折り畳まれている。
【0009】
本開示に係るドレープは、上記開示において、前記本体部は、前記厚さ方向の内周側に重ねて折り畳まれている。
【0010】
本開示に係るドレープは、上記開示において、前記本体部は、前記未使用時の状態で長手方向に重ねて折り畳まれている。
【0011】
本開示に係るドレープは、上記開示において、前記取手部は、前記長手方向の端部であって前記本体部の開口端部とは異なる端部から前記開口端部を越えて延在する紐状のガイド部と、前記長手方向に沿って複数設けられ、各々が前記ガイド部を挿通する複数の挿通部と、を有する。
【0012】
本開示に係るドレープは、上記開示において、前記本体部を広げた状態において、長手方向と直交する方向の幅が、前記長手方向の端部であって前記本体部の開口端部とは異なる端部から前記開口端部へ向けて単調に増加する。
【0013】
本開示に係る手術用顕微鏡は、被観察体の微小部位を拡大して観察する手術用顕微鏡であって、未使用時の状態で折り畳まれており、使用時に広げられて前記手術用顕微鏡を被覆する本体部を有し、前記手術用顕微鏡の滅菌状態を維持するドレープにおける前記未使用時の状態から前記使用時の状態への状態変化を促進する滑動部を備える。
【0014】
本開示に係る手術用顕微鏡は、上記開示において、前記滑動部は、前記手術用顕微鏡に設けられ、前記ドレープが状態変化する際に前記本体部と前記手術用顕微鏡との間に生じる摩擦力を低減する摩擦低減部を有する。
【0015】
本開示に係る手術用顕微鏡は、上記開示において、前記手術用顕微鏡は、被観察体の微小部位を拡大して撮像する撮像部と、ユーザによって把持可能な筒状をなし、中空部に前記撮像部を収容してなるグリップ部と、を有する。
【0016】
本開示に係る手術用顕微鏡システムは、被観察体の微小部位を拡大して観察する手術用顕微鏡と、未使用時の状態で折り畳まれており、使用時に広げられて前記手術用顕微鏡を被覆する本体部を有し、前記手術用顕微鏡の滅菌状態を維持するドレープと、を備え、前記手術用顕微鏡は、前記ドレープにおける前記未使用時の状態から前記使用時の状態への状態変化を促進する滑動部を有し、前記ドレープは、未使用時の状態で折り畳まれており、使用時に広げられて前記手術用顕微鏡を被覆する本体部と、前記未使用時の状態から前記使用時の状態への当該ドレープの状態変化を促進する取手部と、を有する。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、手術用顕微鏡への装着が容易なドレープおよび当該ドレープを備えた手術用顕微鏡システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本開示に係る実施の形態を説明する。図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。なお、図面は模式的なものであり、図面の相互間において同一の部分の寸法や同一の部分間の大きさの比率等が異なる場合もある。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る手術用顕微鏡システムの構成を示す図である。同図に示す手術用顕微鏡システム1は、手術用顕微鏡2と、手術用顕微鏡2の先端部を含む一部を被覆して手術用顕微鏡2の滅菌状態を維持するドレープ3と、を備える。
【0021】
手術用顕微鏡2は、被観察体の微細構造を拡大して撮像する顕微鏡としての機能を有する。手術用顕微鏡2は、床面上を移動可能であり、内部に手術用顕微鏡2の制御回路が設けられたベース部4と、2つのアーム部および該2つのアーム部の一方を他方に対して回動可能に連結する関節部からなる組を複数有し、ベース部4に支持される支持部5と、支持部5の先端に設けられて被観察体の微小部位を拡大して撮像する円柱状の顕微鏡部6と、を備える。
【0022】
図2は、手術用顕微鏡2の先端部に装着されるドレープ3の構成ならびに手術用顕微鏡2の先端部における支持部5および顕微鏡部6の構成を示す拡大斜視図である。
【0023】
まず、支持部5の先端部の構成を説明する。支持部5は、先端側で顕微鏡部6を回動可能に支持する第1関節部51と、第1関節部51に固定され、第1関節部51の側面から延びる第1アーム部52と、先端側で第1アーム部52を回動可能に保持する第2関節部53と、先端部が第2関節部53に固定される第2アーム部54とを有する。
【0024】
第1関節部51は円筒状をなし、高さ方向の中心軸である第1軸O
1のまわりに回動可能に顕微鏡部6を保持する。第1アーム部52は、第1関節部51の側面から第1軸O
1と直交する方向に延びる形状をなす。第2関節部53は円筒状をなし、高さ方向の中心軸であり、かつ第1軸O
1と直交する軸である第2軸O
2のまわりに回動可能に第1アーム部52を保持する。第2アーム部54は、第2軸O
2と直交する方向に延びる形状をなす。
【0025】
第2アーム部54の基端側からベース部4に至る部分には、複数の関節部およびアーム部が設けられている(
図1を参照)。なお、支持部5は、2つのアーム部および該2つのアーム部の一方を他方に対して回動可能に連結する関節部からなる組を少なくとも一組有していればよい。このため、第2アーム部54の基端側からベース部4に至る部分の構成は、適宜変更することが可能である。
【0026】
第1関節部51および第2関節部53は、顕微鏡部6および第1アーム部52の回動をそれぞれ禁止する電磁ブレーキを有する。各電磁ブレーキは、顕微鏡部6に設けられる操作入力部(後述)の操作入力に応じて解除され、顕微鏡部6および第1アーム部52の回動が許容される。なお、電磁ブレーキの代わりにエアブレーキを適用してもよい。
【0027】
支持部5には、複数のケーブルを収容可能な中空部が形成されている。このため、手術用顕微鏡2の外部にケーブルが露出することなく、ケーブルに人や物が引っかかってしまうのを防止することができる。また、複数のケーブルを本体外部で引き回すよりも小型化することができ、術者等のユーザの視界の妨げにもならない。
【0028】
次に、顕微鏡部6の構成を説明する。顕微鏡部6は、円筒状をなす筒状部61と、筒状部61の中空部に設けられ、被観察体の像を拡大して撮像する撮像部62と、顕微鏡部6の各種操作入力を受け付ける操作入力部63とを有する。
【0029】
筒状部61は、第1関節部51よりも径が小さい円筒状をなしており、下端部の開口面には、撮像部62を保護するカバーガラスが設けられている(図示せず)。筒状部61は、ユーザによって把持可能であり、撮像部62の視野を変更する際にユーザが移動させるグリップ部としての機能を有する。なお、筒状部61の形状は円筒状に限られるわけではなく、多角筒状をなしていてもよい。
【0030】
撮像部62は、光軸が第1軸O
1と一致するようにそれぞれ配置される複数のレンズを有し、被観察体からの光を集光して結像する光学系621と、光学系621が集光した光を受光して光電変換することによって撮像信号を生成する撮像素子622とを有する。撮像部62は、第1関節部51の中空部まで入り込んでいる。
図2では、筒状部61および第1関節部51の中空部に設置される光学系621および撮像素子622を破線で模式的に示している。
【0031】
光学系621は、複数のレンズを有し、操作入力部63から出力される信号に基づいて被観察体像の拡大倍率および被観察体までの焦点距離を変更可能である。
【0032】
撮像素子622は、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を用いて構成される。撮像素子622が出力する撮像信号は、支持部5の内部空間に設けられる伝送ケーブルを介してベース部4の内部に設けられる制御回路に伝送される。
【0033】
操作入力部63は、第1関節部51および第2関節部53における電磁ブレーキを解除して各関節部の回動を許容する信号や、撮像部62における拡大倍率および被観察体までの焦点距離の変更を指示する信号の入力を受け付ける。ユーザは、筒状部61の側面のうち、操作入力部63が設けられる側面と反対側の側面と向かい合って顕微鏡部6を操作する。
【0034】
次に、ドレープ3の構成を説明する。ドレープ3は、手術用顕微鏡2の先端部から支持部5の基端部付近までを被覆して、その部分の滅菌状態を維持する。ドレープ3の本体は、ビニール等の透明で柔軟な材料を用いて構成され、手術用顕微鏡2の形状に適合する袋状をなす。
【0035】
図3は、ドレープ3の未使用時の状態における構成を示す部分断面図である。
図4は、ドレープ3の本体部32を広げた状態を示す断面図である。ドレープ3は、顕微鏡部6の筒状部61の先端に取り付けられ、被観察体からの光を集光する開口面を保護するカバーガラス(図示せず)が設けられた円筒状の開口カバー31と、未使用時の状態で厚さ方向(
図3の上下方向)の内周側に重ねて折り畳まれており、使用時に広げられて手術用顕微鏡2を被覆する本体部32と、本体部32の長手方向(
図3の左右方向)の開口端部に設けられ、本体部32の折り畳まれている部分を長手方向に沿って開口端部から引き出す力を加えることが可能な帯状の引き出し用部材33と、を有する。
【0036】
本体部32は、
図4に示すように広げた状態において、長手方向に沿って開口カバー31が設けられる側の端部から開口端部へ向けて、長手方向と直交する方向の幅(
図4の上下方向の長さ)が単調に増加する形状をなしている。ここでいう「幅が単調に増加」とは、
図4に示すように、長手方向に沿って開口カバー31が設けられる側の端部から開口端部へ向けて一部の幅が均一である場合も含む。
図3および
図4では、2つの引き出し用部材33を図示しているが、開口端部に設けられる引き出し用部材33の数は適宜変更することが可能である。本体部32は、ビニール等の透明で柔軟な材料を用いて構成される。なお、本体部32は、長手方向に沿って同じ幅の筒状をなしていてもよい。
【0037】
引き出し用部材33は、本体部32の長手方向の開口端部に設けられ、未使用時の状態から使用時の状態へのドレープ3の状態変化を促進する取手部としての機能を有する。なお、取っ手等の部材を引き出し用部材として適用することも可能である。
【0038】
以上の構成を有するドレープ3の手術用顕微鏡2への装着方法について説明する。まずユーザは、未使用時の状態にあるドレープ3の中空部に顕微鏡部6を挿入して開口カバー31を筒状部61の先端に取り付けた後、ドレープ3の本体部32を広げずに手術用顕微鏡2の先端部を被覆する。
図5は、本体部32を広げないままで手術用顕微鏡2の先端部を被覆した状況を示す図である。
図5に示す状態では、本体部32が折り畳まれたままの状態にある。この後、ユーザは、引き出し用部材33を手でつかんで支持部5が基端側へ延びる方向に沿って引っ張ることにより、本体部32を支持部5の基端部付近まで広げていく。
【0039】
図6は、引き出し用部材33を引っ張って本体部32の折り畳まれた部分を広げ始めた状況を示す図である。また、
図7は、
図6に示す状態から本体部32をさらに広げた状況を示す図である。
図6および
図7に示す矢印は、引き出し用部材33を引っ張る方向を示している。引き出し用部材33を支持部5の基端部付近まで引っ張っていくと、
図1に示すように、本体部32が支持部5のほぼ全面を被覆した状態となる。なお、
図1に示す状態に達した後、支持部5のアーム部の適当な箇所においてドレープ3の上から紐等の部材を巻き付けることによってドレープ3を支持部5に固定してもよい。
【0040】
以上説明した実施の形態1によれば、未使用時の状態で厚さ方向の内周側に折り畳まれたドレープ3の本体部32の開口端部に、未使用時の状態から手術用顕微鏡2を被覆する使用時の状態への状態変化を促進する取手部としての引き出し用部材33を備えたため、手術用顕微鏡2への装着が容易である。その結果、手術の準備を効率よく行うことが可能となる。
【0041】
また、実施の形態1によれば、未使用時の状態で袋の内周側に折り畳んであるため、手術用顕微鏡2に装着する前にドレープ3が長手方向に広がってしまうおそれがなく、未使用時における取扱いが容易である。したがって、ユーザが不意にドレープ3を広げてしまい、不潔な場所にドレープ3が接触して破棄せざるを得ない状況が発生するのを防止することができ、ドレープ3の無駄を減らすことができる。
【0042】
また、実施の形態1によれば、手術用顕微鏡2は、被観察体の微小部位を拡大して撮像する撮像部62と、ユーザによって把持可能な筒状をなし、中空部に撮像部を収容してなるグリップ部(筒状部61)と、を有する単純な形状であるため、ドレープ3の本体部32を広げたときの形状を、長手方向に沿って開口カバー31が設けられる側の端部から開口端部へ向けて、長手方向と直交する方向の幅が単調に増加する形状とすることができる。この意味でも、ドレープ3の手術用顕微鏡2への装着が容易である。
【0043】
ここで、上述した特許文献1と比較して実施の形態1の効果を説明する。特許文献1では、複雑な形状を有する手術用顕微鏡に対応させるためにドレープを大きくした結果、ドレープと手術用顕微鏡との間に大きな隙間が生じるのを防ぐため、その隙間の空気をポンプによって吸引してドレープと手術用顕微鏡との隙間を小さくしている。しかしながら、このような従来構成は、ポンプが必要となって構造が複雑化し、装置の高価格化を招いていた。また、ドレープの本体部の面積が大きいため、ポンプによる吸引で隙間を小さくした後に、紐等を用いてドレープを手術用顕微鏡の支持部に束ねて固定すると、ドレープが厚みを有した状態で顕微鏡本体や支持部に密着してしまい、手術用顕微鏡の操作性が悪くなるという問題も抱えていた。これに対して、本実施の形態1では、引き出し用部材33を設けたことにより、手術用顕微鏡2へのドレープ3の装着を容易とすることに加えて、手術用顕微鏡2が単純な形状であるため、ドレープ3の形状も単純であり、ドレープ3が手術用顕微鏡2の操作性に影響を与えるおそれもない。
【0044】
なお、ドレープの本体部を未使用時の状態で厚さ方向の内周側に折り畳んだ構成とする代わりに、厚さ方向の外周側に折り畳んだ構成としてもよい。
【0045】
(実施の形態2)
図8は、実施の形態2に係るドレープの未使用時の状態における構成を示す部分断面図である。同図に示すドレープ3Aは、開口カバー31と、本体部32Aと、引き出し用部材33とを備える。本体部32Aは、未使用時の状態で長手方向(
図8の左右方向)に折り畳まれた蛇腹状をなしており、引き出し用部材33によって引っ張られることによって広がっていく。なお、
図8では蛇腹状を明示するために本体部32Aを長手方向に広げた態様で記載しているが、実際には長手方向に重ねて折り畳まれた蛇腹状をなしている。また、引き出し用部材33を引っ張ってドレープ3Aを広げたときの形状は、実施の形態1で説明したドレープ3と同様である(
図4を参照)。
【0046】
以上の構成を有するドレープ3Aは、実施の形態1で説明した手術用顕微鏡2とともに、実施の形態2に係る手術用顕微鏡システムを構成する。
【0047】
実施の形態2において、ドレープ3Aを広げて手術用顕微鏡2に装着する方法は、実施の形態1と同様である。すなわち、ユーザは、まず開口カバー31を筒状部61の先端に取り付け、ドレープ3Aを広げずに手術用顕微鏡2の先端部を被覆した後、引き出し用部材33を手でつかんで支持部5が基端側へ延びる方向に沿って本体部32Aを引っ張りながら支持部5の基端部付近まで広げていく。
【0048】
以上説明した実施の形態2によれば、未使用時の状態で長手方向に沿って蛇腹状に折り畳まれたドレープ3Aの本体部32Aの開口端部に、取手部としての引き出し用部材33を備えたため、手術用顕微鏡2への装着が容易である。
【0049】
また、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、手術の準備を効率よく行うことができる上、ドレープ3Aを広げたときの形状が単純であることからも手術用顕微鏡2への装着が容易であるという効果が得られる。
【0050】
なお、本体部32Aに対する引き出し用部材33を、開口端部付近の外周側に設けてもよい。
【0051】
(実施の形態2の変形例)
図9は、実施の形態2の変形例に係るドレープの未使用時の状態における構成を示す部分断面図である。同図に示すドレープ3Bは、開口カバー31と、本体部32Aと、引き出し用部材33と、開口カバー31から支持部5の基端部までの長さに相当する長さ分だけ延在する紐状のガイド部34と、本体部32Aの蛇腹の内周側の折り目付近に本体部32Aの長手方向に沿って複数設けられ、各々がガイド部34を挿通するリング状をなす複数の挿通部35と、を有する。挿通部35は、本体部32Aと同様の材料(ビニール等)を用いて構成される。本変形例においては、ガイド部34および挿通部35が、引き出し用部材33とともに取手部を構成する。
【0052】
なお、
図9においても、蛇腹状を明示するために本体部32Aを実際より長手方向に広げた態様で記載している。また、
図9では2つのガイド部34を記載しているが、ガイド部34の数はこれに限られるわけではなく、3以上であってもよい。
【0053】
以上の構成を有するドレープ3Bを手術用顕微鏡2に装着する際、ユーザは未使用時の状態のドレープ3Bの中空部に顕微鏡部6を挿入して開口カバー31を筒状部61の先端に取り付けた後、ガイド部34を支持部5の基端部まで伸ばす。続いて、ユーザは、ガイド部34に張力を加えた状態で引き出し用部材33をガイド部34に沿って引っ張っていくことにより、本体部32Aを支持部5の基端部付近まで広げる。
【0054】
以上説明した実施の形態2の変形例が、実施の形態2と同様の効果を奏することはもちろんである。加えて、本変形例によれば、本体部32Aがガイド部34に沿って広がっていくため、手術用顕微鏡2に装着する際、本体部32Aを一段と広げやすい。
【0055】
(実施の形態3)
図10は、実施の形態3に係る手術用顕微鏡システムの要部の構成を示す図である。同図に示す手術用顕微鏡システム1Aは、手術用顕微鏡2Aと、ドレープ3とを備える。
【0056】
手術用顕微鏡2Aの支持部5Aは、第1関節部51A、第1アーム部52A、および第2アーム部54Aの表面にそれぞれ設けられた複数のボールローラー201を有する。ボールローラー201は、支持部5Aに沿って適宜設けられている。
【0057】
以上の構成を有する手術用顕微鏡システム1Aでは、ドレープ3の本体部32を広げる際に、本体部32に接触するボールローラー201が回転するため、本体部32と支持部5Aとの間の摩擦力が小さくなっている。すなわち、ボールローラー201は、ドレープ3が状態変化する際に本体部32と手術用顕微鏡2Aとの間に生じる摩擦力を低減する摩擦低減部である。このようなボールローラー201は、引き出し用部材33とともに、ドレープ3における未使用時の状態から手術用顕微鏡2Aを被覆する使用時の状態への状態変化を促進する滑動部を構成する。
【0058】
なお、実施の形態3において、手術用顕微鏡システムが備えるドレープは、引き出し用部材33を有していなくてもよい。この場合には、ボールローラー201が単独で滑動部を構成する。
【0059】
以上説明した実施の形態3によれば、手術用顕微鏡2Aの支持部5Aに、滑動部としての複数のボールローラー201を備えたため、状態変化の際に生じるドレープ3の本体部32と支持部5Aとの間の摩擦力が低減され、手術用顕微鏡2Aに対するドレープ3の装着が容易となる。その結果、手術の準備を効率よく行うことが可能となる。
【0060】
なお、ボールローラー201の代わりに、支持部5Aが伸びる方向に沿って回転する複数の滑車を設けてもよい。
【0061】
また、実施の形態3に係る手術用顕微鏡システムを構成するドレープは、ドレープ3に限られるわけではなく、上述したドレープ3Aまたは3Bを適用してもよいし、ドレープ3Aまたは3Bから引き出し用部材33を除いた構成を有するドレープを適用してもよい。
【0062】
(実施の形態4)
図11は、実施の形態4に係る手術用顕微鏡システムの要部の構成を示す図である。同図に示す手術用顕微鏡システム1Bは、手術用顕微鏡2Bと、ドレープ3とを備える。
【0063】
手術用顕微鏡2Bの支持部5Bの表面には、潤滑部202が設けられている。潤滑部202は、例えば支持部5Bの表面にフッ素樹脂等の潤滑剤を塗布することによって形成されている。
【0064】
以上の構成を有する手術用顕微鏡システム1Bでは、ドレープ3の本体部32を広げる際に、本体部32と支持部5Bとの間に生じる摩擦力を潤滑部202によって低減している。すなわち、潤滑部202は、ドレープ3が状態変化する際に本体部32と手術用顕微鏡2Bとの間に生じる摩擦力を低減する摩擦低減部である。このような潤滑部202は、引き出し用部材33とともに、ドレープ3における未使用時の状態から手術用顕微鏡2Bを被覆する使用時の状態への状態変化を促進する滑動部を構成する。
【0065】
実施の形態4においても、手術用顕微鏡システムが備えるドレープは、引き出し用部材33を有していなくてもよい。この場合には、潤滑部202が単独で滑動部を構成する。
【0066】
以上説明した実施の形態4によれば、手術用顕微鏡2Bの支持部5Bの表面に形成され、滑動部としての潤滑部202を備えたため、ドレープ3の状態変化の際に生じる本体部32と支持部5Bとの間の摩擦力が低減され、手術用顕微鏡2Bに対するドレープ3の装着が容易である。その結果、手術の準備を効率よく行うことが可能となる。
【0067】
なお、潤滑部202を支持部5Bの表面全体に設ける代わりに、支持部5Bのうち形状が複雑であってドレープ3が引っかかりそうな部分(例えば各関節部付近)の表面にのみ潤滑部202を設けてもよい。
【0068】
また、支持部5Bに対して実施の形態3で説明したボールローラー201をさらに設けてもよいし、ボールローラー201と潤滑部202を支持部5Bの別な箇所に設けてもよい。
【0069】
また、実施の形態4に係る手術用顕微鏡システムを構成するドレープは、実施の形態3と同様にドレープ3に限られるわけではなく、上述したドレープ3Aまたは3Bを適用してもよいし、ドレープ3Aまたは3Bから引き出し用部材33を除いた構成を有するドレープを適用してもよい。
【0070】
(その他の実施の形態)
手術用顕微鏡として、ユーザが目を近づけて被観察体の像を観察するための接眼部を備えた光学式の手術用顕微鏡を適用してもよい。この場合はドレープの形状が複雑であるものの、取手部を設けることにより、手術用顕微鏡へのドレープの装着が容易となる。
【0071】
また、手術用顕微鏡のベース部は、床面上に移動可能に設ける代わりに、天井や壁面やベッド等に固定した構成としてもよい。