特開2018-167930(P2018-167930A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2018167930-フィルム搬送機構 図000003
  • 特開2018167930-フィルム搬送機構 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-167930(P2018-167930A)
(43)【公開日】2018年11月1日
(54)【発明の名称】フィルム搬送機構
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/14 20060101AFI20181005BHJP
   G03B 27/46 20060101ALI20181005BHJP
   B65H 23/188 20060101ALI20181005BHJP
【FI】
   B65H23/14
   G03B27/46 A
   B65H23/188
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-64997(P2017-64997)
(22)【出願日】2017年3月29日
(11)【特許番号】特許第6349430号(P6349430)
(45)【特許公報発行日】2018年6月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000154130
【氏名又は名称】株式会社不二鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楠山 哲則
【テーマコード(参考)】
2H106
3F104
3F105
【Fターム(参考)】
2H106AB46
3F104AA03
3F104DA26
3F104DA29
3F104DA30
3F105AA04
3F105AB00
3F105BA01
3F105CA11
3F105CA12
3F105CA15
3F105CB00
3F105CB05
3F105DA01
(57)【要約】
【課題】ニップローラやサクションローラを用いることなく、テンションカットを行うことが可能なフィルム搬送機構を提供する。
【解決手段】搬送機構は、フィルム151を搬送する搬送ローラ11と、フィルム151を帯電させることにより、搬送ローラ11にフィルム151を吸着させるための帯電器16aおよび16bと、帯電したフィルム151を除電することにより、搬送ローラ11から下流側に送り出されるフィルム151が剥離しやすくするための除電器17aとを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを搬送するフィルム搬送機構であって、
フィルムが巻き掛けられ、そのフィルムを搬送する搬送ローラと、
フィルムを帯電させることにより、前記搬送ローラにフィルムを吸着させるための帯電器と、
帯電したフィルムを除電することにより、前記搬送ローラから下流側に送り出されるフィルムが剥離しやすくするための除電器とを備えることを特徴とするフィルム搬送機構。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルム搬送機構において、
前記搬送ローラは、近傍に配置される第1駆動ローラおよび第2駆動ローラを含み、
前記第1駆動ローラおよび前記第2駆動ローラには、フィルムがS字状に巻き掛けられていることを特徴とするフィルム搬送機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフィルム搬送機構において、
フィルムの流れ方向において前記搬送ローラよりも上流側に配置され、前記搬送ローラに対して上流側のフィルムの張力を調整するために設けられた第1ダンサーローラと、
フィルムの流れ方向において前記搬送ローラよりも下流側に配置され、前記搬送ローラに対して下流側のフィルムの張力を調整するために設けられた第2ダンサーローラとを備えることを特徴とするフィルム搬送機構。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のフィルム搬送機構において、
前記搬送ローラに対して上流側のフィルムの張力と、前記搬送ローラに対して下流側のフィルムの張力との差に基づいて、前記帯電器によるフィルムの帯電量を調整するように構成されていることを特徴とするフィルム搬送機構。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のフィルム搬送機構において、
フィルムは、樹脂製の薄膜であることを特徴とするフィルム搬送機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム搬送機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルム搬送経路に設けられ、テンションカットを行うためのニップローラが知られている(たとえば、特許文献1参照)。このニップローラはフィルムを挟持するように構成されており、フィルムの張力をニップローラに対する上流側と下流側とで分断するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−112107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、たとえばフィルムが樹脂製の薄膜である場合に、ニップローラを用いてテンションカットを行うと、フィルムにしわなどが発生するという不都合がある。このため、外周面にフィルムを吸引する吸引孔が形成されたサクションローラを用いてテンションカットを行うことが考えられる。しかしながら、サクションローラでは、幅広のフィルムに対応するのが困難であるとともに、製造コストが増大するという問題点がある。
【0005】
そこで、フィルムを搬送する搬送ローラに対してフィルムが接触する角度範囲を広くすることが考えられる。しかしながら、上流側と下流側とでフィルムの張力差が大きい場合やフィルムの搬送速度が高い場合には、搬送ローラに対するフィルムの滑りが発生するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、ニップローラやサクションローラを用いることなく、テンションカットを行うことが可能なフィルム搬送機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるフィルム搬送機構は、フィルムを搬送するものであり、フィルムが巻き掛けられ、そのフィルムを搬送する搬送ローラと、フィルムを帯電させることにより、搬送ローラにフィルムを吸着させるための帯電器と、帯電したフィルムを除電することにより、搬送ローラから下流側に送り出されるフィルムが剥離しやすくするための除電器とを備える。
【0008】
このように構成することによって、フィルムを帯電させて搬送ローラに吸着させることにより、搬送ローラに対してフィルムが滑るのを抑制することができるので、フィルムの張力を搬送ローラに対する上流側と下流側とで分断するテンションカットを行うことができる。また、帯電したフィルムを除電して、搬送ローラから下流側に送り出されるフィルムを剥離しやすくすることにより、フィルムを帯電させることによる悪影響の発生を抑制することができる。なお、帯電による悪影響とは、たとえば、搬送ローラに吸着したフィルムがその搬送ローラから剥離する位置(離れる位置)が変化することや、その剥離する位置の変化を抑制するために下流側のフィルムの張力を高くする必要が生じることなどである。
【0009】
上記フィルム搬送機構において、好ましくは、搬送ローラは、近傍に配置される第1駆動ローラおよび第2駆動ローラを含み、第1駆動ローラおよび第2駆動ローラには、フィルムがS字状に巻き掛けられている。
【0010】
上記フィルム搬送機構において、好ましくは、フィルムの流れ方向において搬送ローラよりも上流側に配置され、搬送ローラに対して上流側のフィルムの張力を調整するために設けられた第1ダンサーローラと、フィルムの流れ方向において搬送ローラよりも下流側に配置され、搬送ローラに対して下流側のフィルムの張力を調整するために設けられた第2ダンサーローラとを備える。
【0011】
上記フィルム搬送機構において、好ましくは、搬送ローラに対して上流側のフィルムの張力と、搬送ローラに対して下流側のフィルムの張力との差に基づいて、帯電器によるフィルムの帯電量を調整するように構成されている。
【0012】
上記フィルム搬送機構において、好ましくは、フィルムは、樹脂製の薄膜である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフィルム搬送機構によれば、ニップローラやサクションローラを用いることなく、テンションカットを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態によるフィルム巻取装置の概略構成を示した模式図である。
図2図1のフィルム巻取装置の搬送ローラの近傍を拡大して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
−構成−
まず、図1および図2を参照して、本実施形態によるフィルム巻取装置100の構成について説明する。
【0017】
フィルム巻取装置100は、上流側の製膜装置(図示省略)からフィルム151が供給され、そのフィルム151を巻取軸21に巻き取るように構成されている。このフィルム巻取装置100は、図1に示すように、搬送ローラ11を有する搬送機構1と、巻取軸21を有する巻取機構2とを備えている。なお、フィルム151は、たとえば、帯状に形成された樹脂製の薄膜であり、4〜10μmの厚みを有する。このフィルム151の厚みは、ニップローラ(図示省略)を用いてテンションカットを行うと、しわなどが発生する程度のものである。また、フィルム151は、厚み方向に貫通する多数の微細孔を有しており、リチウムイオン二次電池のセパレータとして用いられる。
【0018】
搬送機構1は、製膜装置と巻取機構2との間に配置され、製膜装置から供給されるフィルム151を巻取機構2に搬送するために設けられている。この搬送機構1は、搬送ローラ11と、ガイドローラ12a〜12cと、ダンサーローラ13aを有するダンサー機構13と、ガイドローラ14a〜14cと、ダンサーローラ15aを有するダンサー機構15と、帯電器16aおよび16bと、除電器17aおよび17bとを含んでいる。なお、搬送機構1は、本発明の「フィルム搬送機構」の一例である。
【0019】
搬送ローラ11は、フィルム151が巻き掛けられ、そのフィルム151を搬送するように構成されている。搬送ローラ11に巻き掛けられるフィルム151は搬送ローラ11に対して滑らないようにされており、フィルム151の張力を搬送ローラ11に対する上流側と下流側とで分断するようになっている。すなわち、搬送ローラ11は、テンションカットを行うように構成されている。
【0020】
具体的に、搬送ローラ11は、近傍に配置される2つの駆動ローラ11aおよび11bを含んでいる。駆動ローラ11bは、駆動ローラ11aに対して斜め上方に配置されている。駆動ローラ11bの回転中心は、駆動ローラ11aの回転中心に対して製膜装置側(Y1方向側)に配置されている。このため、駆動ローラ11aおよび11bには、フィルム151がS字状に巻き掛けられている。また、駆動ローラ11aおよび11bは、離間されており、その間のフィルム搬送経路が短くなるように設定されている。なお、駆動ローラ11aおよび11bは、それぞれ、本発明の「第1駆動ローラ」および「第2駆動ローラ」の一例である。
【0021】
ガイドローラ12a〜12cおよびダンサーローラ13aは、フィルム搬送経路における製膜装置と駆動ローラ11bとの間に配置されている。すなわち、ガイドローラ12a〜12cおよびダンサーローラ13aは、フィルム151の流れ方向において搬送ローラ11の駆動ローラ11bよりも上流側に配置されている。このため、ガイドローラ12a〜12cおよびダンサーローラ13aは、製膜装置から供給されるフィルム151を搬送ローラ11にガイドするように構成されている。なお、製膜装置と駆動ローラ11bとの間のフィルム151を上流側のフィルム151aという。
【0022】
具体的には、製膜装置から搬送ローラ11に向かうフィルム搬送経路において、ガイドローラ12a、12b、12cおよびダンサーローラ13aが順に配置されている。ダンサーローラ13aは、駆動ローラ11bに対して巻取機構2側(Y2方向側)に配置されている。このため、ダンサーローラ13aから駆動ローラ11bに向かうフィルム151は、Y1方向にほぼ水平に搬送される。
【0023】
ダンサー機構13は、上流側のフィルム151aの張力を調整するように構成されている。このダンサー機構13は、ダンサーローラ13aと、アーム13bと、加圧装置(図示省略)とを有する。ダンサーローラ13aは、アーム13bの先端に設けられるとともに、アーム13bに対して回転可能に構成されている。アーム13bは、基端側の回動軸を中心にして回動可能に設けられている。加圧装置は、たとえばエアシリンダであり、ピストン(図示省略)がアーム13bに連結されている。そして、ダンサー機構13では、加圧装置からアーム13bを介してダンサーローラ13aに加えられる力が調整されることにより、そのダンサーローラ13aに巻き掛けられた上流側のフィルム151aの張力が調整されるようになっている。なお、ダンサーローラ13aは、本発明の「第1ダンサーローラ」の一例である。
【0024】
ガイドローラ14a〜14cおよびダンサーローラ15aは、フィルム搬送経路における駆動ローラ11aと巻取軸21との間に配置されている。すなわち、ガイドローラ14a〜14cおよびダンサーローラ15aは、フィルム151の流れ方向において搬送ローラ11の駆動ローラ11aよりも下流側に配置されている。このため、ガイドローラ14a〜14cおよびダンサーローラ15aは、駆動ローラ11aから送り出されたフィルム151を巻取軸21にガイドするように構成されている。なお、駆動ローラ11aと巻取軸21との間のフィルム151を下流側のフィルム151bという。この下流側のフィルム151bの搬送経路における各ローラ間の距離は、上流側のフィルム151aの搬送経路における各ローラ間の距離に比べて短い傾向がある。
【0025】
具体的には、駆動ローラ11aから巻取軸21に向かうフィルム搬送経路において、ガイドローラ14a、14b、ダンサーローラ15aおよびガイドローラ14cが順に配置されている。ガイドローラ14aは、駆動ローラ11aと対応する位置の下方に配置されている。このため、駆動ローラ11aから送り出されるフィルム151は、斜め下方に引き出されるようになっている。
【0026】
ダンサー機構15は、下流側のフィルム151bの張力を調整するように構成されている。このダンサー機構15は、ダンサーローラ15aと、アーム15bと、加圧装置(図示省略)とを有する。ダンサーローラ15aは、アーム15bの先端に設けられるとともに、アーム15bに対して回転可能に構成されている。アーム15bは、基端側の回動軸を中心にして回動可能に設けられている。加圧装置は、たとえばエアシリンダであり、ピストン(図示省略)がアーム15bに連結されている。そして、ダンサー機構15では、加圧装置からアーム15bを介してダンサーローラ15aに加えられる力が調整されることにより、そのダンサーローラ15aに巻き掛けられた下流側のフィルム151bの張力が調整されるようになっている。なお、ダンサーローラ15aは、本発明の「第2ダンサーローラ」の一例である。
【0027】
図2に示すように、駆動ローラ11bに対してY2方向側にダンサーローラ13aが配置されるとともに、駆動ローラ11bに対して斜め下方(Y2方向側)に駆動ローラ11aが配置されることから、駆動ローラ11bに巻き掛けられるフィルム151が駆動ローラ11bと接触する角度範囲(駆動ローラ11bの周方向においてフィルム151が接触する部分の長さ)が大きくなっている。具体的には、駆動ローラ11bに対してフィルム151が接触する角度範囲が180度以上である。また、駆動ローラ11aに対して斜め上方(Y1方向側)に駆動ローラ11bが配置されるとともに、駆動ローラ11aの下方にガイドローラ14aが配置されることから、駆動ローラ11aに巻き掛けられるフィルム151が駆動ローラ11aと接触する角度範囲が大きくなっている。具体的には、駆動ローラ11aに対してフィルム151が接触する角度範囲がほぼ180度である。これにより、フィルム151が駆動ローラ11aおよび11bに対して滑りにくくされている。
【0028】
帯電器16aおよび16bは、フィルム151を帯電させることにより、搬送ローラ11にフィルム151を吸着させるために設けられている。このように、フィルム151を帯電させて搬送ローラ11に吸着させることにより、フィルム151が搬送ローラ11に対して滑らないようにされている。また、帯電器16aおよび16bは、上流側のフィルム151aの張力と下流側のフィルム151bの張力との差に基づいて、フィルム151の帯電量を調整するように構成されている。
【0029】
帯電器16aは、駆動ローラ11bに対して製膜装置側(Y1方向側)に配置されている。この帯電器16aは、白抜き矢印で示すように、駆動ローラ11bに巻き掛けられるフィルム151にイオンを供給するように構成されている。
【0030】
帯電器16bは、駆動ローラ11aに対して斜め上方(Y2方向側)に配置されている。この帯電器16bは、白抜き矢印で示すように、駆動ローラ11aに巻き掛けられるフィルム151にイオンを供給するように構成されている。なお、帯電器16bにより供給されるイオンは、帯電器16aにより供給されるイオンと同じ極性である。
【0031】
除電器17aおよび17bは、帯電したフィルム151を除電するために設けられている。除電器17aは、駆動ローラ11aの下方に配置され、除電器17bは、ガイドローラ14aからガイドローラ14bに向かうフィルム151の上方に配置されている。
【0032】
除電器17aは、黒塗り矢印で示すように、駆動ローラ11aからガイドローラ14aに向かうフィルム151にイオン(フィルム151の帯電電荷とは逆極性のイオン)を供給するように構成されている。このため、駆動ローラ11aからガイドローラ14aに向けて送り出されるフィルム151が除電され、そのフィルム151が駆動ローラ11aから剥離しやすくなっている。これにより、駆動ローラ11aから送り出されるフィルム151が、駆動ローラ11aおよびガイドローラ14aの接線方向(T方向)を向くようになっている。
【0033】
除電器17bは、黒塗り矢印で示すように、ガイドローラ14aおよび14b間のフィルム151にイオン(フィルム151の帯電電荷とは逆極性のイオン)を供給するように構成されている。この除電器17bは、フィルム151の残留電荷を除去するために設けられている。
【0034】
巻取機構2は、図1に示すように、フィルム151を巻き取る巻取軸21と、巻取軸21の近傍に配置されるニアローラ22とを有する。巻取軸21は、回転可能に設けられ、搬送機構1により搬送されるフィルム151を巻き取るように構成されている。この巻取軸21にフィルム151が巻き取られることにより巻取ロール(図示省略)が形成される。ニアローラ22は、ガイドローラ14cと巻取軸21との間に配置され、フィルム151が巻き掛けられている。このニアローラ22は、巻取軸21に向かうフィルムの向きを規定する機能を有する。この巻取機構2は、巻取軸21を回転させてフィルム151を巻き取る際に、巻取ロールとニアローラ22との間隔を一定に保つように構成されている。すなわち、巻取ロールに対してニアローラ22が離間された状態で、巻取軸21にフィルム151を巻き取るようになっている。なお、巻取機構2は、フィルム151を巻き取りながら、フィルム151を巻き取る巻取軸21を切り替え可能に構成されている。
【0035】
−動作−
次に、図1および図2を参照して、本実施形態によるフィルム巻取装置100の動作について説明する。
【0036】
まず、図1に示すように、上流側の製膜装置からフィルム巻取装置100にフィルム151が供給される。そのフィルム151は、ガイドローラ12a、12b、12cおよびダンサーローラ13aを介して搬送ローラ11の駆動ローラ11bに搬送される。この搬送ローラ11の駆動ローラ11aおよび11bは駆動回転されており、上流側から供給されるフィルム151を下流側に送り出す。搬送ローラ11の駆動ローラ11aから送り出されるフィルム151は、ガイドローラ14a、14b、ダンサーローラ15a、ガイドローラ14cおよびニアローラ22を介して巻取軸21に搬送される。巻取軸21は駆動回転されており、フィルム151が巻取軸21に巻き取られる。
【0037】
ここで、搬送機構1では、図2に示すように、帯電器16aによってフィルム151が帯電されることにより、その帯電したフィルム151が駆動ローラ11bに吸着されるとともに、帯電器16bによってフィルム151が帯電されることにより、その帯電したフィルム151が駆動ローラ11aに吸着される。このため、フィルム151が搬送ローラ11に対して滑らないことから、フィルム151の張力が搬送ローラ11に対する上流側と下流側とで分断される。
【0038】
また、除電器17aによって帯電したフィルム151(駆動ローラ11aに吸着したフィルム151)を除電することにより、駆動ローラ11aからガイドローラ14aに向かうフィルム151が、駆動ローラ11aから剥離しやすくなる。このため、駆動ローラ11aから送り出されるフィルム151が、駆動ローラ11aおよびガイドローラ14aの接線方向(T方向)に搬送される。なお、除電器17bによりフィルム151の残留電荷が除去される。
【0039】
そして、駆動ローラ11aの回転速度は、製膜装置から供給されるフィルム151の搬送速度に応じて設定されるとともに、ダンサーローラ13aの位置に応じて調整される。具体的には、入出力速度差(供給されるフィルム151の搬送速度と駆動ローラ11aの表面速度との差)が発生し、ダンサーローラ13aが所定の位置から変位した場合に、そのダンサーローラ13aの変位を打ち消すように、駆動ローラ11aの回転速度が制御される。これにより、入出力速度差が発生しても吸収することが可能である。つまり、駆動ローラ11aが速度制御される。なお、駆動ローラ11bは、表面速度が駆動ローラ11aの表面速度と同じになるように駆動される。上流側のフィルム151aの張力は、ダンサー機構13により調整されており、たとえば20〜40N/mに設定される。
【0040】
また、巻取軸21の回転速度は、駆動ローラ11aの回転速度に応じて設定されるとともに、ダンサーローラ15aの位置に応じて調整される。具体的には、入出力速度差(駆動ローラ11aの表面速度と巻取軸21に巻き取られる巻取ロールの表面速度との差)が発生し、ダンサーローラ15aが所定の位置から変位した場合に、そのダンサーローラ15aの変位を打ち消すように、巻取軸21の回転速度が制御される。これにより、入出力速度差が発生しても吸収することが可能である。つまり、巻取軸21が速度制御される。下流側のフィルム151bの張力は、ダンサー機構15により調整されており、たとえば5N/mに設定される。すなわち、下流側のフィルム151bの張力は、上流側のフィルム151aの張力よりも低く設定されている。
【0041】
なお、帯電器16aおよび16bによるフィルム151の帯電量は、上流側のフィルム151aの張力と下流側のフィルム151bの張力との差に基づいて設定される。具体的には、上流側のフィルム151aの張力と下流側のフィルム151bの張力との差が大きくなるほど、フィルム151の帯電量が大きくなるように設定される。
【0042】
−効果−
本実施形態では、上記のように、フィルム151を帯電させることにより、搬送ローラ11にフィルム151を吸着させるための帯電器16aおよび16bと、帯電したフィルム151を除電することにより、駆動ローラ11aから下流側に送り出されるフィルム151が剥離しやすくするための除電器17aとが設けられている。このように構成することによって、フィルム151を帯電させて搬送ローラ11に吸着させることにより、搬送ローラ11に対してフィルム151が滑るのを抑制することができるので、フィルム151の張力を搬送ローラ11に対する上流側と下流側とで分断するテンションカットを行うことができる。また、帯電したフィルム151を除電して、駆動ローラ11aから下流側に送り出されるフィルム151を剥離しやすくすることにより、フィルム151を帯電させることによる悪影響の発生を抑制することができる。なお、帯電による悪影響とは、たとえば、駆動ローラ11aに吸着したフィルム151がその駆動ローラ11aから剥離する位置(離れる位置)が変化することや、その剥離する位置の変化を抑制するために下流側のフィルム151bの張力を高くする必要が生じることなどである。したがって、ニップローラやサクションローラを用いることなく、テンションカットを行うことができる。その結果、フィルム151が樹脂製の薄膜である場合であっても、製造コストの増大を抑制しながら、テンションカットを行うことができる。
【0043】
また、本実施形態では、上流側のフィルム151aの張力と下流側のフィルム151bの張力との差が大きくなるほど、フィルム151の帯電量を大きくすることによって、搬送ローラ11に対してフィルム151が滑るのを抑制しながら、フィルム151が必要以上に帯電されるのを抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態では、搬送ローラ11が2つの駆動ローラ11aおよび11bを含み、駆動ローラ11aおよび11bにはフィルム151がS字状に巻き掛けられることによって、搬送ローラ11に対してフィルム151が接触する接触長さを長くすることができるので、搬送ローラ11に対してフィルム151が滑るのを抑制することができる。
【0045】
−他の実施形態−
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0046】
たとえば、本実施形態では、製膜装置から供給されるフィルム151を巻き取るフィルム巻取装置100の搬送機構1に本発明を適用する例を示したが、これに限らず、原反からフィルムを繰り出して巻き替えるフィルム巻替装置の搬送機構に本発明を適用してもよい。
【0047】
また、本実施形態では、搬送ローラ11が2つの駆動ローラ11aおよび11bを含む例を示したが、これに限らず、搬送ローラが1つの駆動ローラによって構成されていてもよい。
【0048】
また、本実施形態では、2つの帯電器16aおよび16bが設けられる例を示したが、これに限らず、帯電器の数はいくつであってもよい。同様に、2つの除電器17aおよび17bが設けられる例を示したが、これに限らず、除電器の数はいくつであってもよい。
【0049】
また、本実施形態において、フィルム151の搬送速度に基づいて、フィルム151の帯電量を調整するようにしてもよい。たとえば、フィルム151の搬送速度が高くなるほど、フィルム151の帯電量を大きくしてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、フィルム151が4〜10μmの厚みを有する多孔質薄膜である例を示したが、これに限らず、フィルムに微細孔が形成されておらず、厚みが2〜10μmであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 搬送機構(フィルム搬送機構)
11 搬送ローラ
11a 駆動ローラ(第1駆動ローラ)
11b 駆動ローラ(第2駆動ローラ)
13a ダンサーローラ(第1ダンサーローラ)
15a ダンサーローラ(第2ダンサーローラ)
16a 帯電器
16b 帯電器
17a 除電器
151 フィルム
151a 上流側のフィルム
151b 下流側のフィルム
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2018年5月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の薄膜であるフィルムを搬送するフィルム搬送機構であって、
フィルムが巻き掛けられ、そのフィルムを搬送する搬送ローラと、
フィルムを帯電させることにより、前記搬送ローラにフィルムを吸着させるための帯電器と、
帯電したフィルムを除電することにより、前記搬送ローラから下流側に送り出されるフィルムが剥離しやすくするための除電器とを備え
帯電によってフィルムを前記搬送ローラに吸着させることにより、フィルムの張力が前記搬送ローラに対する上流側と下流側とで分断されるように構成されていることを特徴とするフィルム搬送機構。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルム搬送機構において、
前記搬送ローラは、近傍に配置される第1駆動ローラおよび第2駆動ローラを含み、
前記第1駆動ローラおよび前記第2駆動ローラには、フィルムがS字状に巻き掛けられていることを特徴とするフィルム搬送機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフィルム搬送機構において、
フィルムの流れ方向において前記搬送ローラよりも上流側に配置され、前記搬送ローラに対して上流側のフィルムの張力を調整するために設けられた第1ダンサーローラと、
フィルムの流れ方向において前記搬送ローラよりも下流側に配置され、前記搬送ローラに対して下流側のフィルムの張力を調整するために設けられた第2ダンサーローラとを備えることを特徴とするフィルム搬送機構。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のフィルム搬送機構において、
前記搬送ローラに対して上流側のフィルムの張力と、前記搬送ローラに対して下流側のフィルムの張力との差に基づいて、前記帯電器によるフィルムの帯電量を調整するように構成されていることを特徴とするフィルム搬送機構。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明によるフィルム搬送機構は、樹脂製の薄膜であるフィルムを搬送するものであり、フィルムが巻き掛けられ、そのフィルムを搬送する搬送ローラと、フィルムを帯電させることにより、搬送ローラにフィルムを吸着させるための帯電器と、帯電したフィルムを除電することにより、搬送ローラから下流側に送り出されるフィルムが剥離しやすくするための除電器とを備える。そして、フィルム搬送機構は、帯電によってフィルムを搬送ローラに吸着させることにより、フィルムの張力が搬送ローラに対する上流側と下流側とで分断されるように構成されている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】