特開2018-168102(P2018-168102A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-168102(P2018-168102A)
(43)【公開日】2018年11月1日
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/67 20060101AFI20181005BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20181005BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20181005BHJP
【FI】
   A61K8/67
   A61K8/06
   A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-67233(P2017-67233)
(22)【出願日】2017年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000226437
【氏名又は名称】日光ケミカルズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000228729
【氏名又は名称】日本サーファクタント工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301068114
【氏名又は名称】株式会社コスモステクニカルセンター
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】村社 敬子
(72)【発明者】
【氏名】田中 さやか
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB011
4C083AB031
4C083AB032
4C083AB281
4C083AC022
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC291
4C083AC292
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC531
4C083AC532
4C083AC582
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD152
4C083AD172
4C083AD282
4C083AD352
4C083AD572
4C083AD641
4C083AD642
4C083AD662
4C083BB13
4C083BB45
4C083BB47
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC11
4C083DD23
4C083DD33
4C083DD41
4C083EE01
4C083FF05
(57)【要約】
【課題】経時安定性が高められた化粧料の提供。
【解決手段】(A)〜(E)を必須成分として含み、pH6以下である、水中油型乳化化粧料。
(A)下記一般式(I)で示されるL−アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステル誘導体
【化1】

(式中、Rは分枝した炭素数8〜18のアルキル脂肪酸残基を示す)
(B)25℃で液状である、IOB値が0.1〜0.5の極性油剤、(C)キレート剤、(D)抗酸化剤、(E)水
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(E)を必須成分として含み、pH6以下である、水中油型乳化化粧料。
(A)下記一般式(I)で示されるL−アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステル誘導体
【化1】
(式中、Rは分枝した炭素数8〜18のアルキル脂肪酸残基を示す)
(B)25℃で液状である、IOB値が0.1〜0.5の極性油剤
(C)キレート剤
(D)抗酸化剤
(E)水
【請求項2】
(B)成分の極性油剤が、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン、オリーブ油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油から選ばれるものである、請求項1記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
成分(C)キレート剤が、エデト酸およびその塩、コハク酸およびその塩、ペンテト酸およびその塩から選ばれる1種または2種以上である、請求項1記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
さらに成分(F)pH調整剤として、クエン酸およびその塩、コハク酸およびその塩、リン酸およびその塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれる1種または2種以上を含有する、請求項1〜3のいずれか1項記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項5】
さらに成分(G)炭素数16以上の高級アルコールを化粧料中に8質量%以下含有する、請求項1〜3のいずれか1項記載の水中油型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、L−アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステル誘導体の安定性に優れた水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
L−アスコルビン酸脂肪酸エステルは、ビタミンCとしての生理活性ペンテト酸およびその塩作用や、薬理作用を持ち、かつL−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸塩とは異なり親油性のため、化粧料に対してビタミンC活性作用を付与する目的で、特に油相成分を多く含む化粧料に、使用されてきた(非特許文献1:化粧品ハンドブックp.305,日光ケミカルズ編、平成8年11月1日発行;特許文献1、2:特開平9−65864及び特開平7−232051号公報参照。)。
【0003】
しかし、これらは融点が110℃〜120℃と高く、また油脂への溶解度が低くかつ水に溶解しない。このため、充分な生理活性機能を得るために必要なL−アスコルビン酸脂肪酸エステルを化粧料に配合する場合には、予め、油相成分中に、80℃以上の加温状態で、L−アスコルビン酸脂肪酸エステルを添加し、混合溶解させることが必要であった。
【0004】
このような問題を解決するものとして、特許文献3(特許第3253735号公報)には、特定のL−アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステル誘導体と、それを含む化粧料の発明が提案されている。
【0005】
さらに特許文献4〜7(特開2003−238380号公報、特開2003−342159号公報、特開2003−306419号公報、特開2004−51566号公報)には、特許文献3(特許第3253735号公報)に記載された特定のL−アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステル誘導体を含む化粧料の発明が提案されている。
L−アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステルの製剤中での安定性の改良については、亜硫酸、亜硫酸塩、亜硫酸水素、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸、ピロ亜硫酸塩による着色及び臭いの発生防止方法(特許文献8:特開2004−331524号公報)が報告されているが、これを以てしても十分に満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−65864号公報
【特許文献2】特開平7−232051号公報
【特許文献3】特許第3253735号公報
【特許文献4】特開2003−238380号公報
【特許文献5】特開2003−342159号公報
【特許文献6】特開2003−306419号公報
【特許文献7】特開2004−51566号公報
【特許文献8】特開2004−331524号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】化粧品ハンドブックp.305,日光ケミカルズ編、平成8年11月1日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、含有成分である特定のL−アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステル誘導体の加水分解を抑制することで、経時安定性が高められた化粧料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、L−アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステル誘導体の水中油型乳化化粧料における安定性の改善について鋭意検討した結果、下記(A)〜(E)を必須成分として含み、pH6以下である、水中油型乳化化粧料とすることで、L−アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステル誘導体の加水分解を抑制し、優れた安定性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
(A)下記一般式(I)で示されるL−アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステル誘導体
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、Rは分枝した炭素数8〜18のアルキル脂肪酸残基を示す)
(B)25℃で液状である、IOB値が0.1〜0.5の極性油剤
(C)キレート剤
(D)抗酸化剤
(E)水
【発明の効果】
【0012】
本発明の水中油型乳化化粧料は、(A)成分のL−アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステル誘導体の加水分解が抑制されるため、長期にわたってメラニン生成抑制、メラニンに対する還元性、コラーゲン生成促進、抗酸化性、過酸化脂質抑制などの効果を発揮できる安定な化粧料を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る好適な実施形態について詳述する。
本発明は、(A)〜(E)成分を必須成分として含有し、pH6以下である水中油型乳化化粧料である。
<(A)成分>
本発明に用いる(A)成分は、下記一般式(I)で示されるL−アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステル誘導体である。
【0014】
【化1】
【0015】
一般式(I)中のRは、分枝した炭素数8〜18のアルキル脂肪酸残基を表わす。
一般式(I)で示されるL−アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステルは、Rの炭素数が前記8〜18の分岐脂肪酸であれば特に制限されることはない。具体的には、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸などの炭素数8〜18の分枝アルキル脂肪酸残基が挙げられる。Rが分枝アルキル脂肪酸残基であるものは、常温で液状となるので取り扱いが便利である。
Rの炭素数が8未満の低次エステルでは油への溶解性が低くなり、18を超えると、油性感やべたつきが強くなる。
【0016】
一般式(I)で示されるL−アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステルは、特許第3253735号公報に記載されているL−アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステルであり、同公報に記載の製造方法により製造することができる。また、市販品としては、NIKKOL VC−IP(日光ケミカルズ社製)がある。
(A)成分の化粧料中の含有割合は、0.001〜50.0質量%が好ましく、0.01〜30.0質量%がより好ましい。これら好適な配合割合は、化粧料の剤型により異なる。
【0017】
<(B)成分>
本発明に用いる(B)成分は、25℃で液状である、IOB値が0.1〜0.5の極性油剤である。(B)成分を含有することで、化粧料中の(A)成分の加水分解が抑制される。
本発明におけるIOB値とは、「Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)」の略であって、化合物の有機値に対する化合物の無機値の比に対応する値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標である。具体的には、IOB値=無機性値/有機性値として表される。
「無機性値」、「有機性値」のそれぞれについては、例えば、分子中の炭素原子1個について「有機性値」が20、同水酸基1個について「無機性値」が100といったように、各種原子又は官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のIOB値が算出される(例えば、甲田善生 著、「有機概念図―基礎と応用―」11頁〜17頁、三共出版 1984年発行 参照)。
【0018】
(B)成分の極性油剤としては、次に列挙するものが挙げられる。
エチルヘキサン酸セチル(0.128)、パルミチン酸エチルヘキシル(0.128)、ミリスチン酸イソプロピル(0.182)、マカダミアナッツ油(0.17)、オリーブ油(0.16)、イソノナン酸イソノニル(0.2)、トリ(カプリル酸・カプリン酸・ステアリン酸)グリセリル(0.23)、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル(0.274)、ジステアリン酸ジエチレングリコール(0.24)、ジイソステアリン酸ジエチレングリコール(0.25)、ジオレイン酸ジエチレングリコール(0.25)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(0.25)、ジカプリン酸プロピレングリコール(0.26)、ステアロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル(0.26)、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(0.28)、ラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル(0.29)、トリエチルヘキサノイン(0.353)、オレイン酸プロピレングリコール(0.39)、ジオクタン酸エチレングリコール(0.35)、ジラウリン酸ジエチレングリコール(0.35)、ジ酢酸モノステアリン酸グリセリル(0.36)、トリオクタン酸トリメチロールプロパン(0.33)、モノステアリン酸プロピレングリコール(0.38)、乳酸オクチルドデシル(0.36)、乳酸オレイル(0.39)、ヒマシ油(0.42)、イソステアリン酸プロピレングリコール(0.4)、ジカプリン酸ジエチレングリコール(0.41)、ジカプロン酸プロピレングリコール(0.4)、セバシン酸ジイソプロピル(0.4)、セバシン酸ジエチル(0.43)、パルミチン酸エチレングリコール(0.44)、ヒマシ油脂肪酸メチル(0.43)、モノオレイン酸エチレングリコール(0.41)、モノステアリン酸エチレングリコール(0.4)、乳酸セチル(0.42)が挙げられる。
【0019】
これらのうち、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン等のエステル油、オリーブ油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油等の植物油がより好ましい。さらに好ましくは、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノインである。また、カッコ内は参考IOB値を示す。
【0020】
(B)成分の化粧料中の含有割合は、L−アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステルを除いた全液状油のうち10〜100質量%が好ましく、40〜100質量%がより好ましい。
【0021】
<(C)成分>
本発明に用いる(C)成分はキレート剤である。(C)成分を含有することで、化粧料中の(A)成分の加水分解が抑制される。(C)成分としては、エデト酸(EDTA)およびその塩、コハク酸およびその塩、ペンテト酸およびその塩から選ばれる1種または2種以上が挙げられるが、EDTAまたはコハク酸が好ましい。
(C)成分の化粧料中の含有割合は、0.01〜0.30質量%が好ましく、0.01〜0.20質量%がより好ましい。
【0022】
<(D)成分>
本発明に用いる(D)成分は、抗酸化剤である。(D)成分を含有することで、化粧料中の(A)成分が加水分解することを抑制させることができる。
(D)成分としては、アスコルビン酸、トコフェロール、グルタチオン、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ステアリン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビルなどが挙げられる。化粧品に配合する上でトコフェロールが好ましい。
【0023】
(D)成分の化粧料中の含有割合は、0.01〜0.50質量%が好ましく、0.05〜0,30質量%がより好ましい。
【0024】
<(E)成分>
(E)成分の水は、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属に由来するアルカリ金属イオンを含まないか、アルカリ金属イオン量ができるだけ少ないものが好ましく、イオン交換水、蒸留水、逆浸透膜によるろ過水などを使用することができる。
【0025】
<(F)成分>
本発明の化粧料は、さらに(F)成分のpH調整剤を含有することができる。pH調整剤は、緩衝液を含むものを使用することもできる。具体的には、クエン酸およびその塩、コハク酸およびその塩、リン酸およびその塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれる1種または2種以上を含有することができる。
(F)成分の化粧料中の含有割合と、上記した酸とアルカリの含有割合は、本発明の化粧料のpHを所定値に調整できる範囲である。
【0026】
<(G)成分>
本発明の化粧料は、さらに(G)成分の炭素数16以上の高級アルコールを油性原料または乳化安定助剤として化粧料中に含有することができる。
(G)成分を含有することで、炭素数が16未満の高級アルコールを含有した場合と比べて、化粧料中の(A)成分が加水分解することを抑制させることができる。
(G)成分としては、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、べへニルアルコールなどが挙げられ、好ましくは炭素数18以上のステアリルアルコール、べへニルアルコールである。
(G)成分の化粧料中の含有割合は8質量%以下が好ましく、0〜5質量%がより好ましい。(G)成分を5質量%以下含有することで、化粧料中の(A)成分の加水分解が抑制される。
【0027】
<その他の成分>
本発明の化粧料は、本発明の効果を損なわない範囲で化粧品に配合される公知の成分を含有することができる。
前記公知の成分としては、流動パラフィンなどの炭化水素、植物油脂、ロウ類、保湿剤、増粘剤、紫外線吸収剤、粉体、顔料、色材、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、糖、高分子化合物、生理活性成分、経皮吸収促進剤、溶媒、香料、防腐剤などが挙げられる。
【0028】
本発明の化粧料がpH6以下であり、好ましくはpH5.5以下である。化粧料のpHを6以下にすることで、化粧料中の(A)成分が加水分解することを抑制させることができる。
本発明の化粧料は、(A)〜(E)成分、さらに(G)成分と公知成分からなるものであり、前記各成分を含有することでpHが6以下のときは(F)成分のpH調整剤は不要であり、pHが6を超えるときは(F)成分のpH調整剤を使用して、pHを6以下に調整する。
本発明の化粧料は、化粧料中の(A)成分の加水分解を抑制するため、アルカリ金属イオン濃度が低いことが好ましい。
【0029】
本発明の化粧料の剤型は特に制限されるものではなく、化粧水、ローション、乳液、美容液、クリーム、パック、軟膏、分散液、固形物、ムースなどの任意の剤型にすることができる。
【実施例】
【0030】
<測定方法>
1.pH測定
試料の10質量%水溶液を用いて、25℃で測定した。
2.粘度測定
B型粘度計(ローターNo.4、6rpm)を用いて、25℃にて測定した。
【0031】
3.アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステル(A成分)の残存率測定(%)
調製直後と、40℃で6カ月保存したサンプルを用いて測定を行った。サンプルを規定量はかりとり、移動相を加え均一に溶解した後、0.45μmの液体クロマトグラフ用フィルターでろ過し、試料溶液とした。別にVC-IP標準品を移動相にとかし標準溶液とした。試料溶液及び標準溶液20μLにつき、以下の条件で液体クロマトグラフ法により定量した。
VC-IP残存率(%)=40℃・6カ月保存サンプル中のVC-IP定量値/調整直後のサンプル中のVC-IP定量値・100
【0032】
(クロマトグラフィー条件)
カラム温度:30℃
移動相:エタノール:メタノール:クロロホルム(容量比:4:4:2)
測定波長:紫外吸光光度(波長240nm)
流量:1.0mL/min
カラム:ODS(4.6mmφ・150nm)
【0033】
4.使用成分(全て日光ケミカルズ社製)
NIKKO VC-IP:テトラヘキシルデカン酸アスコルビル
NIKKOL CIO:エチルヘキサン酸セチル(IOB値0.128)
NIKKOL Trifat S-308:トリエチルヘキサノイン(IOB値0.353)
NIKKOL Triester F-810:トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(IOB値0.274)
NIKKOL バチルアルコールEX:バチルアルコール
NIKKOL べへニルアルコール65:べへニルアルコール
NIKKOL SS-10V:ステアリン酸ソルビタン
NIKKOL N-SPV:パルミチン酸セチル
NIKKOL MGS-150V:ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸PEG−60グリセリル
NIKKOL Hexaglyn PR-15:ポリリシノレイン酸ポリグリセリル−6
NIKKOL シュガースクワラン:スクワラン
NIKKOL ホホバ油S:ホホバ油
NIKKOL ニコムルスLH:グリセリン、水添レシチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル、スクワラン、ステアロイルメチルタウリンNa
NIKKOL Trifat PS-45H:水添パーム油、パーム核油、パーム油
NIKKOL レシノールS−10:水添レシチン
【0034】
実施例1(実施例1-1、1-2):pHの評価
表1に示す第1相と第2相をそれぞれ測りとり・・℃まで加温し、均一溶解する。次に、第2相に第1相を徐々に添加し、ホモミキサーで攪拌乳化させた後、40℃まで冷却し、第3相を加え、化粧料を得た。表中の各成分の数値は質量%を示す。
【0035】
【表1】
【0036】
結果、(B)成分の極性油、(C)成分のキレート剤、(D)成分の抗酸化剤を使用し、pHを調整したことから、(A)成分の加水分解が抑制されていた。pH6以下の場合、よりpHが低いpH5.5以下の実施例1−1の方が(A)成分の加水分解がより抑制された。
【0037】
実施例2(実施例2-1、2-2):バッファー評価
表2に示す各成分を使用して、実施例1と同様にして化粧料を調製した。
【0038】
【表2】
【0039】
結果、(B)成分の極性油、(C)成分のキレート剤、(D)成分の抗酸化剤、(G)成分の高級アルコール(3.50質量%)を使用し、pHを調整したことから、(A)成分の加水分解が抑制されていた。pH6以下の場合、よりpHが低いpH5.5以下の実施例2−2の方が(A)成分の加水分解がより抑制された。また実施例2−2は、pH調整剤としてキレート作用を有するコハク酸を使用したことも(A)成分の加水分解の抑制に影響したことが考えられる。
【0040】
実施例3(実施例3-1、3-2、3-3):キレート剤評価
表3に示す各成分を使用して、実施例1と同様にして化粧料を調製した。
【0041】
【表3】
【0042】
結果、(B)成分の極性油、(C)成分のキレート剤、(D)成分の抗酸化剤、少量の(G)成分(3.50質量%)を使用し、pHを調整したことから、(A)成分の加水分解が抑制されていた。(C)成分のキレート剤による(A)成分の加水分解の抑制効果は、コハク酸(実施例3−3)、EDTA(実施例3−1)、EDTA−2Na(実施例3−2)の順であり、Naイオンが存在したことが実施例3−2の抑制効果を低下させた原因と考えられる。
【0043】
実施例4(実施例4-1、4-2)と比較例1:極性油の評価(EO系処方)
表4に示す第1相と第2相をそれぞれ測りとり、・・℃まで加温し、均一溶解する。次に、第2相に第1相を徐々に添加し、ホモミキサーで攪拌乳化させた後、40℃まで冷却し化粧料を得た。
【0044】
【表4】
【0045】
結果、実施例4−1,4−2は、(B)成分の極性油、(C)成分のキレート剤、(D)成分の抗酸化剤、少量の(G)成分(5.00質量%)を使用し、pHを調整したことから、(A)成分の加水分解が抑制されていた。比較例1は、(B)成分を使用していないため、(A)成分の加水分解の抑制効果が劣っていた。実施例4−2の方が実施例4−1よりも(A)成分の加水分解性の抑制効果が高かった。これは、(A)成分との相溶性が(B)成分の極性油>無極性油(スクワラン)であり、より相溶性のよい(B)成分の極性油と(A)成分を組み合わせることで、(A)成分の水への移行が防止されたことによるものと考えられる。
【0046】
実施例5(実施例5-1、5-2)と比較例2:極性油の評価(アニオン系処方)
表5に示す各成分を使用して、実施例1と同様にして化粧料を製造した。
【0047】
【表5】
【0048】
結果、実施例5−1、5−2は、(B)成分の極性油、(C)成分のキレート剤、(D)成分の抗酸化剤、少量の(G)成分(3.50質量%)を使用し、pHを調整したことから、(A)成分の加水分解が抑制されていた。比較例2は、(B)成分を使用していないため、(A)成分の加水分解の抑制効果が劣っていた。実施例5−1と実施例5−2は、(B)成分の極性油の割合が高い実施例5−2の方が(A)成分の加水分解性の抑制効果が高くなった。これは、(A)成分との相溶性が(B)成分の極性油>無極性油(スクワラン)であり、より相溶性のよい(B)成分の極性油と(A)成分を組み合わせることで、(A)成分の水への移行が防止されたことによるものと考えられる。
【0049】
実施例6(実施例6-1、6-2、6-3):高級アルコール評価
表6に示す各成分を使用して、実施例1と同様にして化粧料を製造した。
【0050】
【表6】
【0051】
結果、実施例6−1、6−2、6−3は、(B)成分の極性油、(C)成分のキレート剤、(D)成分の抗酸化剤、少量の(G)成分(4.75質量%)を使用し、pHを調整したことから、(A)成分の加水分解が抑制されていた。(G)成分のアルコールを使用したときは、炭素数が多いアルコールを使用した方が、(A)成分の加水分解の抑制効果が高かった。高級アルコールは、第1相(油相)と第2相(水相)の界面に存在しているが、炭素数が大きいアルコールほど、第1相(油相)中の(A)成分が第2相(水相)に移行し難くなることが原因と考えられる。
【0052】
実施例7(実施例7-1、7-2、7-3):高級アルコールの配合量評価
表7に示す各成分を使用して、実施例1と同様にして化粧料を製造した。
【0053】
【表7】
【0054】
実施例7−1、7−2、7−3は、(B)成分の極性油、(C)成分のキレート剤、(D)成分の抗酸化剤、(G)成分を使用し、pHを調整したことから、(A)成分の加水分解が抑制されていた。(G)成分の高級アルコールを使用したときは、(G)成分の量が少ない方が(A)成分の加水分解性の抑制効果が高くなった。(G)成分の量が多くなると、第1相(油相)中に溶解する(G)成分の量が多くなり、(G)成分のヒドロキシル基が(A)成分と反応して、(A)成分の加水分解性の抑制効果が小さくなるものと考えられる。
【0055】
実施例8(乳液)
1相 NIKKOL SS−10V 0.5
NIKKOL N−SPV 0.5
NIKKOL バチルアルコールEX 0.2
NIKKOL VC−IP 3.0
NIKKOL シュガースクワラン 2.0
NIKKOL CIO 6.0
NIKKOL ホホバ油S 1.0
KF−96A−6cs(ジメチコン) 2.0
KF−995(シクロメチコン) 4.0
トコフェロール 0.2
2相 NIKKOL ニコムルスLH 3.0
キサンタンガム(2%水溶液) 10.0
1,3−ブチレングリコール 4.0
グリセリン 5.0
エデト酸2ナトリウム 0.1
コハク酸(1%水溶液) 4.0
水酸化ナトリウム(1%水溶液) 1.0
防腐剤 適量
水 残部
(合計) 100.0質量%
【0056】
調製方法:第1相、第2相をそれぞれ80℃で加温する。第2相中に第1相を徐々に添加し、ホモミキサーで乳化させた。乳化後、室温まで冷却し、水補正を行い、乳液を得た。
結果: 調製直後のpHは4.484(10%水溶液)、粘度は10300(B型粘度計、No.4ローター、6rpm)。40℃・6カ月保管後のVC−IP残存率は90%以上であった。
【0057】
実施例9(クリーム)
1相 NIKKOL Triester F−810 4.0
NIKKOL VC−IP 3.0
NIKKOL Trifat PS−45H 4.0
NIKKOL べへニルアルコール65 2.0
NIKKOL バチルアルコールEX 1.0
NIKKOL N−SPV 3.0
NIKKOL MGS−150V 2.0
KF−96A−100cs(ジメチコン) 0.2
NIKKOL レシノールS−10 0.1
トコフェロール 0.1
防腐剤 適量
2相 ヒドロキシエチルセルロース 2.0
キサンタンガム(2%水溶液) 2.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
グリセリン 3.0
クエン酸(1%水溶液) 2.0
クエン酸ナトリウム(1%水溶液) 3.0
エデト酸 0.1
水 残部
(合計) 100.0質量%
【0058】
調製方法:実施例8と同じ方法でクリームを得た。
結果:調製直後のpHは5.214(10%水溶液)、粘度は27000(B型粘度計、No.4ローター、6rpm)。40℃・6カ月保管後のVC−IP残存率は90%以上であった。
【0059】
実施例10(美容液)
1相 グリセリン 2.0
1,3−ブチレングリコール 2.0
ペンチレングリコール 3.0
ジプロピレングリコール 3.0
キサンタンガム(2%水溶液) 1.0
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(2%水溶液)15.0
EDTA−2Na 0.05
2相 L−アルギニン(10%水溶液) 1.0
水 残部
3相 NIKKOL Trifat S−308 3.0
NIKKOL VC−IP 3.0
KF−54(メチルフェニルシリコーン) 1.0
NIKKOL Hexaglyn PR−15 1.0
トコフェロール 0.1
防腐剤 適量
(合計) 100.0質量%
【0060】
調製方法:第1相をパドル撹拌にて均一にし、均一になったところで第2相を添加した。さらに均一になったところで第3相を添加し、十分に撹拌して、美容液を得た。
結果:調製直後のpHは5.174(10%水溶液)、粘度は3100(B型粘度計、No.4ローター、6rpm)。40℃・6カ月保管後のVC−IP残存率は90%以上であった。
【0061】
実施例11(ゲルクリーム)
1相 グリセリン 4.0
1,3−ブチレングリコール 6.0
防腐剤 適量
キサンタンガム(2%水溶液) 4.0
カルボキシビニルポリマー(2%水溶液) 33.0
ペンテト酸5Na 0.10
2相 L−アルギニン 0.1
水 残部
3相 NIKKOL VC−IP 30.0
NIKKOL Triester F−810 5.0
NIKKOL Hexaglyn PR−15 0.5
トコフェロール 0.3
(合計) 100.0質量%
【0062】
調製方法:第1相をパドル撹拌にて均一にし、均一になったところで第2相を添加した。さらに均一になったところで第3相を添加し、十分に撹拌して、ゲルクリームを得た。
結果:調製直後のpHは4.65(10%水溶液)、粘度は88,000(B型粘度計、No.4ローター、6rpm)。40℃・6カ月保管後のVC−IP残存率は90%以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の化粧料は、基礎化粧品、メーキャップ化粧品として利用することができる。