特開2018-168110(P2018-168110A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 杏林製薬株式会社の特許一覧

特開2018-168110保存安定性に優れたイミダフェナシンを含有する製剤
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-168110(P2018-168110A)
(43)【公開日】2018年11月1日
(54)【発明の名称】保存安定性に優れたイミダフェナシンを含有する製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4164 20060101AFI20181005BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20181005BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20181005BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20181005BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20181005BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20181005BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20181005BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20181005BHJP
【FI】
   A61K31/4164
   A61P13/10
   A61P43/00 111
   A61K9/20
   A61K9/14
   A61K47/38
   A61K47/32
   A61K47/36
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-67522(P2017-67522)
(22)【出願日】2017年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000001395
【氏名又は名称】杏林製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 義一
(72)【発明者】
【氏名】坂野 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】星野 良市
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC17
4C076EE06
4C076EE30
4C076EE32
4C076FF65
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA41
4C086NA03
4C086ZA81
4C086ZC41
(57)【要約】
【課題】新たな結合剤を使用したイミダフェナシンを含有する製剤を提供することが、本発明が解決しようとする課題である。
【解決手段】ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルアルコールからなる群から選ばれる結合剤を用いることで、製剤中のイミダフェナシンの保存安定性が優れた製剤を製造することができることを見出し、本発明を完成した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イミダフェナシン、1または2以上の薬学的に許容される賦形剤、並びにヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルアルコールからなる群から選ばれる結合剤を含有する、イミダフェナシンを含有する造粒物。
【請求項2】
薬学的に許容される賦形剤が部分アルファー化デンプンおよび/または結晶セルロースである、請求項1に記載の造粒物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のイミダフェナシンを含有する造粒物、および1または2以上の薬学的に許容される添加剤を含有する、イミダフェナシンを含有する錠剤。
【請求項4】
薬学的に許容される添加剤が薬学的に許容される賦形剤および/または滑沢剤である、請求項3に記載の錠剤。
【請求項5】
薬学的に許容される賦形剤が結晶セルロースであり、薬学的に許容される滑沢剤がステアリン酸マグネシウムである、請求項4に記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性に優れたイミダフェナシンを含有する製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
イミダフェナシンはムスカリンM1受容体及びM3受容体を選択的に阻害する抗コリン薬であり、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁の治療薬として広く使用されている。現在、イミダフェナシンを有効成分とする医薬品としては、フィルムコーティング錠(FC錠)と口腔内崩壊錠(OD錠)が市販されている(非特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、イミダフェナシンを有効成分とするFC錠やその製造方法が開示されている。また、特許文献2〜8には、イミダフェナシンを有効成分とするOD錠やその製造方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1〜8には、イミダフェナシンを含有する製剤に含まれる結合剤として、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEおよびステアリルアルコールの例しか開示されておらず、その他の結合剤を用いたイミダフェナシンを含有する製剤の報告はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ウリトス錠0.1mg、ウリトスOD錠0.1mg 添付文書、2014年6月改訂(第11版)
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4610834公報
【特許文献2】特許4656672公報
【特許文献3】特許4524502公報
【特許文献4】特開2010−229075公報
【特許文献5】特開2010−229076公報
【特許文献6】特開2011−32183公報
【特許文献7】特開2011−68640公報
【特許文献8】特開2014−172855公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
イミダフェナシンは添加剤との相互作用により不安定となることが知られているため、結合剤の選択は重要である。これまでに、イミダフェナシンを含有する製剤に、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEおよびステアリルアルコール以外の結合剤が使用できるか否かについてはわかっていなかった。したがって、新たな結合剤を使用したイミダフェナシンを含有する製剤を提供することが、本発明が解決しようとする課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルアルコールからなる群から選ばれる結合剤を用いて造粒化することで、製剤中のイミダフェナシンの保存安定性が優れた製剤を製造することができることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[1]イミダフェナシン、1または2以上の薬学的に許容される賦形剤、並びに、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルアルコールからなる群から選ばれる結合剤を含有する、イミダフェナシンを含有する造粒物。
[2]薬学的に許容される賦形剤が部分アルファー化デンプンおよび/または結晶セルロースである、[1]に記載の造粒物。
[3][1]または[2]に記載のイミダフェナシンを含有する造粒物、および1または2以上の薬学的に許容される添加剤を含有する、イミダフェナシンを含有する錠剤。
[4]薬学的に許容される添加剤が薬学的に許容される賦形剤および/または滑沢剤である、[3]に記載の錠剤。
[5]薬学的に許容される賦形剤が結晶セルロースであり、薬学的に許容される滑沢剤がステアリン酸マグネシウムである、[4]に記載の錠剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルアルコールからなる群から選ばれる結合剤を用いることで、製剤中のイミダフェナシンの保存安定性が優れた製剤を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、イミダフェナシンとは4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−2,2−ジフェニルブタンアミドを表す。
【0011】
本発明において、錠剤中のイミダフェナシンの含量は0.025〜2mgが好ましく、0.05〜0.25mgが更に好ましく、0.1mgが特に好ましい。
【0012】
本発明の造粒物および錠剤は、任意の薬学的に許容される添加剤を含むことができる。添加剤は有効成分(イミダフェナシン)以外の成分を表し、医薬品添加物事典[日本医薬品添加剤協会、薬事日報社(2016年)]に記載されているものを適宜使用できる。例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、着色剤、光沢剤などが挙げられる。
【0013】
本発明において、薬学的に許容される賦形剤としては、乳糖および白糖などの糖類、D−ソルビトールおよびマンニトールなどの糖アルコール類、結晶セルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類、部分アルファー化デンプンおよびトウモロコシデンプンなどのデンプン類などが挙げられる。本発明においては、結晶セルロースおよび/または部分アルファー化デンプンが好ましく、結晶セルロースと部分アルファー化デンプンの両方を配合する場合、結晶セルロースと部分アルファー化デンプンの配合比率は流動性と成形性の観点から4:1が好ましい。
【0014】
本発明において、薬学的に許容される崩壊剤としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウムおよびメチルセルロースなどのセルロース類、部分アルファー化デンプンおよびトウモロコシデンプンなどのデンプン類、クロスポビドンなどが挙げられる。
【0015】
本発明は、製剤中のイミダフェナシンの保存安定性を高めるため、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルアルコールからなる群から選ばれる結合剤を使用する。イミダフェナシンを含有する造粒物に含有される結合剤の量は0.1〜3%が好ましく、0.5〜1.5重量%が更に好ましく、0.9〜1.1重量%が特に好ましい。
【0016】
本発明において、薬学的に許容される滑沢剤としては、ステアリン酸およびその金属塩類、タルク、硬化油、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。本発明においては、ステアリン酸マグネシウムが好ましい。
【0017】
本発明において、薬学的に許容されるコーティング剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロース、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどのセルロース類、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(E、RS)、メタクリル酸コポリマー(L、S、LD)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液などのアクリル系高分子物質、ポビドン、ステアリルアルコール、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートなどが挙げられる。
【0018】
本発明において、薬学的に許容される着色剤としては、酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄などが挙げられる。
【0019】
本発明において、薬学的に許容される光沢剤としては、カルナウバロウなどが挙げられる。
【0020】
本発明において、薬学的に許容される溶媒としては、製剤を製造する際に使用が許容され得る溶媒であれば特に制限されない。例えば、精製水、有機溶媒、および精製水と有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。
【0021】
本発明の造粒物は、当該技術分野において慣用されている方法により製造することができる。例えば、特許文献1に記載の方法にしたがって、流動層造粒機中で1または2以上の薬学的に許容される賦形剤の流動層を形成させ、イミダフェナシン、並びにヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルアルコールからなる群から選ばれる結合剤をエタノールと精製水の混合溶媒に溶解した液を流動層に吹き付け、乾燥することで製造することができる。乾燥した造粒物は整粒した後、下記の錠剤の製造に用いることが好ましい。
【0022】
本発明の錠剤は、当該技術分野において慣用されている方法により製造することができる。例えば、上記の方法で製造した造粒物を薬学的に許容される添加剤と混合することで混合粉末を製造し、これを任意の打錠機を用いて圧縮成型することで製造することができる。
【0023】
本発明の錠剤をフィルムコーティング錠とする場合は、例えば、国際公開WO2001/034147に記載の方法により行うことができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
イミダフェナシン800mgをエタノール(95)274gに溶解した後、精製水274gを加え混和した。得られた溶液にヒドロキシプロピルセルロース11.2gを溶解し結合液を作製した。結晶セルロース211.4gおよび部分アルファー化デンプン52.8gをとり、ポリエチレン袋中で混合した。得られた混合品にニューマルメライザー(商品名)(NQ−160、不二パウダル)を用いて結合液140gを噴霧し、造粒物254.6gを得た。
【0026】
(実施例2)
実施例1で得た造粒物133.6gに、結晶セルロース104.6gおよびステアリン酸マグネシウム1.8gを加え、ポリエチレン袋中で混合した。得られた混合品を打錠機(VELA5、菊水製作所、直径9mmの臼、曲率半径12mmのR面杵)を用いて1錠あたり質量240mgとなるように打錠し、錠剤756錠を得た。
【0027】
(実施例3)
結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースのかわりにヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用した以外は実施例1に記載の製造方法と同様にして、イミダフェナシンを含有する造粒物を得た。
【0028】
(実施例4)
実施例3で得られた造粒物を使用した以外は実施例2に記載の製造方法と同様にして、イミダフェナシンを含有する錠剤を得た。
【0029】
(実施例5)
結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースのかわりにポリビニルアルコールを使用した以外は実施例1に記載の製造方法と同様にして、イミダフェナシンを含有する造粒物を得た。
【0030】
(実施例6)
実施例5で得られた造粒物を使用した以外は実施例2に記載の製造方法と同様にして、イミダフェナシンを含有する錠剤を得た。
【0031】
(比較例1)
結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースのかわりにポリビニルピロリドンを使用した以外は実施例1に記載の製造方法と同様にして、イミダフェナシンを含有する造粒物を得た。
【0032】
(比較例2)
比較例1で得られた造粒物を使用した以外は実施例2に記載の製造方法と同様にして、イミダフェナシンを含有する錠剤を得た。
【0033】
(保存安定性試験)
実施例1〜6および比較例1、2の製剤について保存安定性試験を実施した。開始時と60℃90%RH2週間保存時における特定不純物の割合を測定した。なお、不純物の定量は液体クロマトグラフ法(HPLC法)により評価し、特定不純物は正確な評価が可能な相対保持時間(RRT)0.42の物質を選択した。
【0034】
HPLC法
カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル(平均粒径5μm、内径4.6mm×長さ250mm)(ジーエルサイエンス株式会社 商品名Inertsil ODS−3)
A液:薄めたリン酸(1→200)にジエチルアミンを加え、pHを6.0に調整した液
B液:液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
C液:液体クロマトグラフィー用メタノール
検出器:UV
測定波長:220nm
【0035】
実施例1、3、5および比較例1で得られた造粒物の処方(各成分の量の単位:mg/錠)と、それらの保存安定性試験の結果を表1に示す。なお、表中、HPCはヒドロキシプロピルセルロースを、HPMCはヒドロキシプロピルメチルセルロースを、PVAはポリビニルアルコールを、PVPはポリビニルピロリドンを表す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1から明らかなように、ポリビニルピロリドンを結合剤として含有する公知のイミダフェナシン含有造粒物と比較して、ヒドロキシプロピルメチルセルロースやポリビニルアルコールを結合剤として含有する造粒物は試験開始時の特定不純物の割合が少なかった。これは、造粒物の製造時におけるイミダフェナシンの分解が少ないことを示している。また、ヒドロキシプロピルセルロースを含有する造粒物は60℃90%RH2週間保存時の特定不純物の増加が認められず、良好な保存安定性を示した。
【0038】
実施例2、4、6および比較例2で得られた錠剤の処方(各成分の量の単位:mg/錠)と、それらの保存安定性試験の結果を表2に示す。なお、表中、HPCはヒドロキシプロピルセルロースを、HPMCはヒドロキシプロピルメチルセルロースを、PVAはポリビニルアルコールを、PVPはポリビニルピロリドンを表す。
【0039】
【表2】
【0040】
表2から明らかなように、ポリビニルピロリドンを結合剤として含有する造粒物を含有する公知のイミダフェナシン含有錠剤と比較して、ヒドロキシプロピルセルロースやポリビニルアルコールを結合剤として含有する造粒物を含有する錠剤は60℃90%RH2週間保存時の特定不純物の増加量が少なく、良好な保存安定性を示した。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを結合剤として含有する造粒物を含有する錠剤はポリビニルピロリドンを結合剤として含有する造粒物を含有する公知の錠剤と比較して、特定不純物の増加量が同程度であり、良好な保存安定性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはポリビニルアルコールを結合剤として使用することで、保存安定性に優れたイミダフェナシンを含有する製剤を製造することができる。
【手続補正書】
【提出日】2018年3月8日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イミダフェナシン、1または2以上の薬学的に許容される賦形剤、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する、イミダフェナシンを含有する造粒物。
【請求項2】
薬学的に許容される賦形剤が部分アルファー化デンプンおよび/または結晶セルロース
である、請求項1に記載の造粒物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のイミダフェナシンを含有する造粒物、および1または2以上の薬学的に許容される添加剤を含有する、イミダフェナシンを含有する錠剤。
【請求項4】
薬学的に許容される添加剤が薬学的に許容される賦形剤および/または滑沢剤である、請求項3に記載の錠剤。
【請求項5】
薬学的に許容される賦形剤が結晶セルロースであり、薬学的に許容される滑沢剤がステアリン酸マグネシウムである、請求項4に記載の錠剤。