【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
口腔内速崩壊錠の評価方法は以下の通りである。
[硬度試験]錠剤硬度計(岡田精工社製)を用いて測定した。試験は5及び10錠で行い、その平均値を示す。
[崩壊試験]崩壊試験機(富山産業社製)を用いて測定した。試験は6錠で行い、その平均値を示す。試験液は水を用い、錠剤が完全に崩壊し溶解するまでの時間を測定した。
なお、以下の実施例及び比較例に用いた商品名で示される化合物は、以下のとおりである(例えば、医薬品添加物事典2016(薬事日報社発行)などを参照)。
1.商品名スターチ1500G(日本カラコン):部分α化デンプン
2.商品名コリドン90F(BASF):ポビドン
3.商品名dl-α-トコフェロール(BASF):トコフェロール
4.商品名オイドラギットE100(エボニック):アミノアルキルメタクリレートコポリマーE
5.商品名ステアリン酸マグネシウム植物性(太平化学産業):ステアリン酸マグネシウム
6.商品名セオラス PH-301(旭化成):結晶セルロース
7.商品名ペアリトール(ロケットジャパン):D−マンニトール
8.商品名コリドンCL-F(BASF):クロスポビドン
9.商品名カープレックス#67(DSLジャパン):含水二酸化ケイ素
【0028】
本発明の錠剤を、表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
(実施例1)
イミダフェナシン4g、コリドン90F(BASF)2g及びdl-α-トコフェロール(BASF)20gを精製水37.4g、エタノール336.6gの混液に分散した。スターチ1500G(日本カラコン)774gを転動流動層造粒機(ダルトン製、NQ−160)に仕込み、トップスプレー法にてこの溶液をコーティングし(噴霧液量20g/min、噴霧空気圧0.13MPa、給気温度60℃)、イミダフェナシン造粒物を得た。さらに、このイミダフェナシン造粒物20.0g、セオラス PH-301(旭化成)211.15g、スターチ1500G(日本カラコン)7.05gを混合後、ステアリン酸マグネシウム植物性(太平化学産業)1.8gを加え混合後、ロータリー打錠機を用いて打錠圧4.5kNにて1錠あたりイミダフェナシン0.1mgを含む240mgの錠剤を製した。得られた錠剤は硬度5.4kg(n=5)を示した。
(比較例1)
イミダフェナシン4g、コリドン90F(BASF)2gを精製水157.6g、エタノール236.4gの混液に溶解した。スターチ1500G(日本カラコン)794gを転動流動層造粒機(ダルトン製、NQ−160)に仕込み、トップスプレー法にてこの溶液をコーティングし(噴霧液量20g/min、噴霧空気圧0.13MPa、給気温度70℃)、イミダフェナシン造粒物を得た。さらに、このイミダフェナシン造粒物20.0g、セオラス PH-301(旭化成)211.65g、スターチ1500G(日本カラコン)6.55gを混合後、ステアリン酸マグネシウム植物性(太平化学産業)1.8gを加え混合後、ロータリー打錠機を用いて打錠圧4.5kNにて1錠あたりイミダフェナシン0.1mgを含む240mgの錠剤を製した。得られた錠剤は硬度6.3kg(n=6)を示した。
(比較例2)
イミダフェナシン4g、オイドラギットE100(エボニック)20g及びステアリン酸マグネシウム植物性(太平化学産業)10gを精製水146.4g、エタノール219.6gの混液に分散した。スターチ1500G(日本カラコン)766gを転動流動層造粒機(ダルトン製、NQ−160)に仕込み、トップスプレー法にてこの溶液をコーティングし(噴霧液量20g/min、噴霧空気圧0.13MPa、給気温度70℃)、イミダフェナシン造粒物を得た。さらに、このイミダフェナシン造粒物20.0g、セオラス PH-301(旭化成)210.95g、スターチ1500G(日本カラコン)7.25gを混合後、ステアリン酸マグネシウム植物性(太平化学産業)1.8gを加え混合後、ロータリー打錠機を用いて打錠圧4.5kNにて1錠あたりイミダフェナシン0.1mgを含む240mgの錠剤を製した。得られた錠剤は硬度6.1kg(n=5)を示した。
(比較例3)
イミダフェナシン4g、コリドン90F(BASF)2g及びdl-α-トコフェロール(BASF)20gを精製水37.4g、エタノール336.6gの混液に分散した。スターチ1500G(日本カラコン)774gを転動流動層造粒機(ダルトン製、NQ−160)に仕込み、トップスプレー法にてこの溶液をコーティングし(噴霧液量20g/min、噴霧空気圧0.13MPa、給気温度60℃)、イミダフェナシン造粒物を得た。さらに、このイミダフェナシン造粒物60.0g、ペアリトール(ロケットジャパン)457.3g、コリドンCL-F(BASF)16.2g及びカープレックス#67(DSLジャパン)1.2gを混合後、ステアリン酸マグネシウム植物性(太平化学産業)5.4gを加え混合後、ロータリー打錠機を用いて打錠圧8.5kNにて1錠あたりイミダフェナシン0.1mgを含む180mgの錠剤を製した。得られた錠剤は硬度3.7kg(n=10) 、崩壊時間12秒(n=6)を示した。
(試験例)
実施例1及び比較例1〜3の造粒物及び錠剤について光安定性試験を実施した.D65ランプ4000ルクス×約14日間における分解物の生成量の結果を表2及び3に示す。なお、分解物の定量は液体クロマトグラフ法(HPLC法)により評価した。
HPLC法
カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル(平均粒径5 μm,内径4.6 mm×長さ150mm) (ジーエルサイエンス株式会社 商品名Inertsil ODS-3)
A液:1-オクタンスルホン酸ナトリウム1.08 gを薄めたリン酸(1→1000) 1000 mLに溶かす。
B液:液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
送液:A液及びB液の混合比を変えて濃度勾配制御する。
検出器:UV
測定波長:220 nm
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
表2及び表3の実施例1の結果を比較して分かる通り、トコフェロールを含有する造粒物の場合、造粒物の状態でも、錠剤の状態でも高い光安定化効果を発揮する。これに対し、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEを含有する造粒物の場合、造粒物の状態では高い光安定化効果があるものの(表2比較例2)、セルロース賦形剤を加え錠剤化した場合、この効果が減弱する(表3比較例2)。
【0034】
本発明者らは今までに、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEを含有するイミダフェナシン造粒物を用いてOD錠の製造が可能であることを見出していた(特許文献6には、賦形剤としてマンニトールを混合後、圧縮成型したOD錠が記載されている)。今回、FC錠の製造を行うために、造粒物に混合する賦形剤を、セルロース系賦形剤に変更し、圧縮成型したところ、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEの安定作用が減弱するという新たな課題が生じた。なお、セルロース系賦形剤は、安価であり、錠剤に成型した際に高い硬度が出せるため、FC錠を初めとする通常錠を製造する際に、好んで用いられる賦形剤である。
【0035】
本発明は、トコフェロール又はトコフェロール誘導体を含有する造粒物を使用した場合、セルロース系賦形剤を用いた場合でも、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEのような光安定化効果の減弱を起こすことなく、光安定性に優れた錠剤が得られることを見出したことが特徴である。
【0036】
表3の光線照射後の値を見れば分かる通り、トコフェロール含有処方(実施例1)は、トコフェロールを含まない処方(比較例1)、及び、トコフェロールの代わりにアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを含む処方(比較例2)に比べ、光分解物の合計生成量が1/10以下に抑えられている。イミダフェナシン造粒物中にトコフェロールを配合することにより、高い光安定化効果を発揮することがわかる。
【0037】
また、比較例3は実施例1と同じトコフェロールを含有するイミダフェナシン造粒物を用いているが、口腔内崩壊錠であること、造粒物外にマンニトールを主成分として用いていることが、実施例1とは異なる。
【0038】
造粒物外に結晶セルロースを主成分として用いている実施例1(通常錠)と比較すると、光分解物の合計生成量は多く、1.2%である。造粒物外に使用する賦形剤として、結晶セルロースを用い、通常錠に成型することで、光安定性に優れた通常錠の提供が可能であることがわかる。