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  • 特開2018168317-保護カバー 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-168317(P2018-168317A)
(43)【公開日】2018年11月1日
(54)【発明の名称】保護カバー
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20181005BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20181005BHJP
【FI】
   C08J5/18CFG
   C08G69/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-67987(P2017-67987)
(22)【出願日】2017年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阪倉 洋
【テーマコード(参考)】
4F071
4J001
【Fターム(参考)】
4F071AA55
4F071AF15
4F071AF30Y
4F071AH12
4F071BA01
4F071BB08
4F071BC01
4J001DA01
4J001DC02
4J001EA14
4J001EB37
4J001EE16D
4J001FB03
4J001FC03
4J001GA12
4J001HA02
4J001JA12
4J001JB02
4J001JB06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リフローハンダ処理等の高温処理をおこなっても、高い透明性を維持することが可能な樹脂製の保護カバーを提供する。
【解決手段】窓部と外枠部3とを備え、窓部が、全光線透過率が80%以上であって、260℃5分間の熱処理前後の全光線透過率の差異が3%以下である樹脂フィルム1にて形成されている保護カバー。センサー部品の検知部分、タッチパネル又は視認用のぞき窓の保護カバーである、保護カバー。樹脂フィルム1が融点が260℃以上の半芳香族ポリアミドからなる保護カバー。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓部と外枠部とを備え、前記窓部が、全光線透過率が80%以上であって、260℃5分間の熱処理前後の全光線透過率の差異が3%以下である樹脂フィルムにて形成されていることを特徴とする保護カバー。
【請求項2】
センサー部品の検知部分、タッチパネルまたは視認用のぞき窓の保護カバーであることを特徴とする請求項1に記載の保護カバー。
【請求項3】
樹脂フィルムが、融点が260℃以上の半芳香族ポリアミドからなることを特徴とする請求項1または2に記載の保護カバー。
【請求項4】
樹脂フィルムが、延伸されたフィルムであることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の保護カバー。
【請求項5】
樹脂フィルムが、365nmにおける光線透過率が70%以上であるフィルムであることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の保護カバー。
【請求項6】
外枠部が、200nm〜800nmにおいて、実質的に光を通さない外枠であることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の保護カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リフローハンダ処理等の高温処理をおこなっても、高い透明性を維持することが可能な樹脂製の保護カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルやセンサー部品を外部からの埃や水から守ったりするために保護カバーが使われている。保護カバーの材質としては、樹脂、金属、セラミック、ガラス等様々なものが使われているが、透明性、硬度という点から、通常、ガラスが用いられている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−133598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、携帯電話や自動車や無人飛行機に組み込まれるセンサー部品については、小型化軽量化が求められており、センサー部品の検知部分が5mmよりも小さいものや曲面形状を有するものが販売されている。
【0005】
センサー部品の保護カバーにガラスを用いる場合、ガラスを小さく切断し、かつ固定するために接着する必要がある。しかしながら、微小部分に接着剤を適切に塗り、ガラスをピックアップして精度良く貼り付けるのは難しく歩留まりが悪い。また、しみ出した接着剤がガラス表面に付着し汚染することで、センサーの感度がばらつく場合がある。
【0006】
そのため、ガラスに代えて、センサー部品の保護カバーに樹脂製のフィルムやシートを用いることが検討されている。前記部品は、保護カバーを貼り付けた後、リフローハンダ処理工程で基板に組み込まれる場合があり、そのような場合には、保護カバーに260℃程度の熱がかかる。
【0007】
PETフィルムやポリアミド6のフィルムでは、リフロー耐熱性が低い。また、PIやPEEKのフィルムでは、紫外線や可視光を吸収するため、視認性やセンサー機能が制限されることがあり、フィルムとセンサー部品とを紫外線硬化タイプの接着剤で貼り合わせる際に、接着剤の硬化が不十分となったり、硬化に時間がかかって操業性が低下したりすることがある。
【0008】
本発明は、かかる従来技術を鑑みて、リフローハンダ処理等の高温処理をおこなっても、高い透明性を維持することが可能な樹脂製の保護カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)窓部と外枠部とを備え、前記窓部が、全光線透過率が80%以上であって、260℃5分間の熱処理前後の全光線透過率の差異が3%以下である樹脂フィルムにて形成されていることを特徴とする保護カバー。
(2)センサー部品の検知部分の保護カバー、タッチパネルまたは視認用のぞき窓の保護カバーであることを特徴とする(1)に記載の保護カバー。
(3)樹脂フィルムが、融点が260℃以上の半芳香族ポリアミドからなることを特徴とする(1)または(2)に記載の保護カバー。
(4)樹脂フィルムが、延伸されたフィルムであることを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載の保護カバー。
(5)樹脂フィルムが、365nmにおける光線透過率が70%以上であるフィルムであることを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載の保護カバー。
(6)外枠部が、200nm〜800nmにおいて、実質的に光を通さない外枠であることを特徴とする(1)〜(5)いずれかに記載の保護カバー。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リフローハンダ処理等の高温処理をおこなっても、高い透明性を維持することが可能な樹脂製の保護カバーを提供することができる。本発明の保護カバーは、センサー部品の検知部分の保護カバーやタッチパネルや視認用のぞき窓の保護カバー等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】代表的な構造の保護カバーの断面図と平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の保護カバーは、窓部と外枠部とを備え、前記窓部が、樹脂フィルムにて形成されたものである。
【0014】
樹脂フィルムは、窓部を覆い、外部からの埃や水等の混入を防止するための保護材として機能する。
【0015】
外枠部は、保護カバー全体の強度や形状を維持するものとして機能し、窓部のフィルムの支持体としても機能する。
【0016】
本発明の保護カバーに用いる樹脂フィルムは、JIS K 7361−1に準拠して測定した全光線透過率が80%以上であることが必要で、85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。全光線透過率が80%未満の場合、光が保護カバー窓部を通過後、散乱し、保護カバーからセンサー受光部に届く光が減少するため、検出感度が低下し、保護カバーと受光部を接近させる必要性が発生し、部品配置に自由度が無くなるので好ましくない。
【0017】
本発明の保護カバーに用いる樹脂フィルムは、260℃5分間の熱処理前後における、JIS K 7361−1に準拠して測定した全光線透過率の差異が3%以下であることが必要で、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、0.2%以下であることがさらに好ましい。前記全光線透過率の差異が3%を超える場合、リフローハンダ工程でフィルムの透明性が悪化し光センサーとして使用する際に、光の透過率が低下するので好ましくない。全光線透過率が低下する理由としては、結晶化、オリゴマーの析出、樹脂の相分離等が挙げられる。結晶化が起きると白化して強度が低下することがあり、オリゴマーが析出すると、転写やアウトガスでラインを汚染することがあり、樹脂の層分離が起こると、透明性が低下することがある。
【0018】
全光線透過率の中でも、特に平行光線透過率が高いことが好ましい。本発明の保護カバーに用いる樹脂フィルムは、平行光線透過率が85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましい。平行光線透過率が高いと、センサーの保護カバーとして用いた場合に、保護カバー窓部の通過後の散乱が小さくなるため、センサー受光部でのエネルギー損失が小さくなり、検出効率が向上する。
【0019】
本発明の保護カバーを紫外線センサーの保護カバーとして用いる場合、365nmにおける光線透過率が70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。紫外線透過率が70%未満の場合、紫外光が保護カバー窓部を通過後、散乱し、保護カバーからセンサー受光部に届く光が減少するため、検出感度が低下し、保護カバーと受光部を接近させる必要性が発生して、部品配置に自由度が無くなる。
【0020】
本発明の保護カバーに用いるフィルムは特に限定されないが、半芳香族ポリアミドのフィルムであることが好ましい。前記フィルムに用いる半芳香族ポリアミドとしては、例えば、ポリアミド4T、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド11T、ポリアミド12Tが挙げられる。半芳香族ポリアミドは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、共重合してもよい。半芳香族ポリアミドの融点は、260℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましい。2種以上を混合して用いる場合には、混合物の融点が260℃以上であることが好ましい。フィルムの融点が260℃未満の場合、リフローハンダ処理等の高温処理をおこなった場合に透明性を維持することができないので好ましくない。フィルムは、耐熱性と機械的強度の点から、延伸されていることが好ましい。未延伸フィルムの場合、リフローハンダ処理等の高温処理をおこなった場合に透明性を維持することができない場合がある。フィルムは、半芳香族ポリアミドを高温で溶融させシート状に押出したり、溶剤に溶かして基材上で塗布乾燥させたりすることにより得ることができる。
【0021】
半芳香族ポリアミドには、本発明の効果を損なわない範囲において、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、顔料・染料等の着色剤、着色防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、耐候性改良剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、強化剤、改質剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、防曇剤、各種ポリマーが挙げられる。
【0022】
外枠部は、保護カバー全体の支持体となるため、機械強度が高く、腰(保形性)があるものが好ましい。そのような外枠部の材質としては、例えば、金属板(箔)、樹脂板、樹脂成型品、ガラス、セラミックス単体またはその複合体が挙げられる。金属板としては、例えば、ティンフリースチール板、黒化処理ステンレス板、アルミ板が挙げられる。なお、本発明においては、開口部を設ける前の外枠部のことを板やフィルムと称することがある。
【0023】
本発明の保護カバーをセンサーの保護カバーとして用いる場合、外枠部は、センサー信号の受信を阻害せず、ノイズを軽減できる材質であることが好ましい。特に本発明の保護カバーを光センサーの保護カバーとして用いる場合には、光を遮断し、実質的に光を透過しない材質であることが好ましい。具体的には、本発明の保護カバーを365nmの波長でセンシングに使う場合であれば、前記波長において、補強剤は、光線透過率が1%未満であることが好ましく、0.5%未満であることがより好ましく、実質的に光を通過させないことが好ましい。なお、本発明においては、光線透過率が0.1%以下の場合、「実質的に光を通さない」とする。
【0024】
樹脂フィルムと外枠部は、接着剤を介して接着されていてもよいし、熱やプラズマ処理等の表面処理等によるラミネートや、熱プレス、超音波、レーザー等により接着剤を介さずに接着されていてもよい。
【0025】
フィルムと外枠部とを接着剤を介して接着する場合、接着剤は、接着シートを用いてもよいし、樹脂を有機溶剤に溶解した接着剤溶液を塗布乾燥して用いてもよい。接着シートに用いられる樹脂や有機溶剤に溶解させる樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、フェノールノボラック系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド系樹脂が挙げられる。接着剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。接着剤は、耐熱性を向上させるため、反応する末端官能基を有する複数の樹脂を併用することが好ましい。耐熱性の点から、接着剤は、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂が好ましい。有機溶剤としては、樹脂が溶解すれば特に限定されないが、例えば、トルエン、2−ブタノン、シクロペンタノンや前記有機溶剤の混合溶液が挙げられる。
【0026】
本発明の保護カバーの製造方法は特に限定されないが、例えば、外枠部の上に、開口部を設けた接着シートを接着し、さらにフィルムを接着する方法や、板の上に接着シートを接着した後、窓部を設け、さらにフィルムを接着する方法や、外枠部の上にフィルムをのせ、レーザー照射する方法が挙げられる。
【0027】
本発明の保護カバーは、リフローハンダ処理等の高温処理をおこなっても、高い透明性を維持することが可能である。そのため、センサー部品の検知部分の保護カバーや、タッチパネルの保護カバーや、視認用のぞき窓の保護カバーとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0029】
A.評価方法
ポリアミドやポリアミドフィルムの物性測定は以下の方法によりおこなった。
(1)相対粘度
ポリアミドやポリアミドフィルムについて、96質量%硫酸を溶媒とし、濃度1g/dL、25℃で測定した。
【0030】
(2)融点
半芳香族ポリアミド10mgを、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製、「DSC−7」)を用い、窒素雰囲気下で20℃から350℃まで10℃/分で昇温し(1st Scan)、350℃にて5分間保持した。その後、100℃/分で20℃まで降温し、20℃にて5分間保持後、350℃まで20℃/分でさらに昇温した(2nd Scan)。そして、2nd Scanで観測される結晶融解ピークのピークトップ温度を融点とした。
【0031】
(3)平均厚み
ポリアミドフィルムについて、厚み計(HEIDENHAIN社製、「MT12B」)を用いて測定した。ランダムに10ヶ所測定し、平均値を平均厚みとした。
【0032】
(4)引張強度および引張伸度
250℃の熱風乾燥機中に5分間静置した前後のフィルムを、MDおよびTDについて、JIS K 7127に準拠して測定した。サンプルの大きさは10mm×150mm、チャック間の初期距離は100mm、引張速度は500mm/分とした。
【0033】
(5)全光線透過率
得られた保護カバーの窓部のフィルムについて、日本電色工業社製ヘーズメーターNDH2000を用いて、JIS K 7361−1に準拠して測定した。
また、保護カバーを260℃5分間で熱処理した後、保護カバーの窓部のフィルムについて、上記と同様に、測定した。
【0034】
(6)紫外線透過率
得られた保護カバーの窓部のフィルムについて、島津製作所社製紫外可視分光光度計Spectrophotometer UV−2450を用いて、365nmにおける透過率を測定した。
また、保護カバーを260℃5分間で熱処理した後、保護カバーの窓部のフィルムについて、上記と同様に、測定した。
【0035】
(7)フィルムのリフロー耐熱性
50mm×50mmに加工したシート準備し、赤外線加熱式のリフロー炉にて、100℃/分の速度で、260℃まで昇温し、10秒間保持した。リフロー処理後のシートを観察し、以下の評価をおこなった。
○:ブリスターの発生や変形が見られなかった。
×:ブリスターの発生や変形が見られた。
【0036】
B.原料
B−1.半芳香族ポリアミド
・半芳香族ポリアミド10T
ジカルボン酸成分として粉末状のテレフタル酸(TPA)470質量部と、モノカルボン酸として分子量284のステアリン酸(STA)32質量部と、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物0.093質量部とを、リボンブレンダー式の反応装置に入れ、窒素密閉下、回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、ジアミン成分として100℃に加温した1,10−デカンジアミン(DDA)498質量部を、2.5時間かけて連続的(連続液注方式)に添加し反応物を得た。なお、原料モノマーのモル比は、TPA:DDA:STA=48.5:49.6:1.9(原料モノマーの官能基の当量比率は、TPA:DDA:STA=49.0:50.0:1.0)であった。 その後、得られた反応物を、同じ反応装置で、窒素気流下、250℃、回転数30rpmで8時間固相重合し、半芳香族ポリアミド10Tを得た。
【0037】
・半芳香族ポリアミド9T、10T/10I、10T/9T(1)、10T/9T(2)
樹脂組成を表1のように変更する以外は、半芳香族ポリアミド10Tを製造した際と同様に重合し、半芳香族ポリアミドを製造した。
【0038】
表1に、半芳香族ポリアミド10T、9T、10T/10I、10T/9T(1)、10T/9T(2)の樹脂組成と特性値を示す。
【0039】
【表1】
【0040】
・半芳香族ポリアミド6T
三井化学社製アーレンA3000、融点320℃
【0041】
B−2.ポリアミドフィルム
・延伸ポリアミドフィルム(1)
半芳香族ポリアミド10Tと半芳香族ポリアミド9Tを、それぞれ、加熱乾燥し、水分率を200ppm以下とした。
加熱乾燥した半芳香族ポリアミド10Tと9Tを、[10T/9T]=95/5(質量比)になるようにドライブレンドした。シリンダーを330℃に設定した一軸押出機(スクリュー径50mm)で溶融し、330℃に設定したTダイから50℃に設定した冷却ロール上にフィルム状に押出し、静電印加法により密着させて冷却し、実質的に無配向の未延伸フィルム(平均厚み:150μm)を得た。
得られた未延伸フィルムの両端をクリップで把持しながら、テンター方式同時二軸延伸機にて、二軸延伸をおこなった。予熱温度は120℃、延伸温度は125℃、MDの延伸歪み速度は2400%/分、TDの延伸歪み速度は2760%/分、MDの延伸倍率は3.0倍、TDの延伸倍率は3.3倍であった。
延伸に引き続いて、二軸延伸機の同じテンター内で285℃にて熱固定をおこない、TDに6%のリラックス処理を施し、平均厚み15μmの延伸されたポリアミドフィルム(1)を得た。
【0042】
・延伸ポリアミドフィルム(2)〜(9)
表2のように樹脂組成、延伸条件を変更する以外は、延伸ポリアミドフィルム(1)を製造した際と同様に、乾燥、未延伸フィルムの製造、二軸延伸、熱固定をおこない、平均厚み15μmの延伸されたポリアミドフィルムを得た。
【0043】
・未延伸ポリアミドフィルム(10)
半芳香族ポリアミド10Tを、加熱乾燥し、水分率を200ppm以下とした。
加熱乾燥した半芳香族ポリアミド10Tを、シリンダーを330℃に設定した一軸押出機(スクリュー径50mm)で溶融し、330℃に設定したTダイから50℃に設定した冷却ロール上にフィルム状に押出し、静電印加法により密着させて冷却し、平均厚み240μmの実質的に無配向の未延伸ポリアミドフィルム(10)を得た。
未延伸ポリアミドフィルム(10)は、融点が315℃であって、引張強度(MD/TD)が54/56MPa、引張伸度(MD/TD)が260/270MPaであった。
【0044】
・延伸ポリアミドフィルム(11)
ユニチカ社製二軸延伸ポリアミド6フィルム エンブレムON−15 融点220℃
【0045】
・延伸ポリアミドフィルム(12)
ユニチカ社製二軸延伸ポリアミド6/ポリアミドMXD6複層フィルム エンブロンM100−15 融点220℃、236℃
【0046】
表2に、延伸ポリアミドフィルム(1)〜(9)と未延伸ポリアミドフィルム(10)の樹脂組成と延伸条件と特性値を示し、表3に、延伸ポリアミドフィルム(11)、(12)の特性値を示す。
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
B−3.接着剤
・接着シート(1)
トーヨーケム社製 耐熱接着シートTSU0041SI−25DL
・接着シート(2)
味の素ファインテクノ社製 層間絶縁シートABF−GX−T31
【0050】
・接着剤溶液(1)
DIC社製ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂HP7200(エポキシ等量255g/eq)、DIC社製フェノールノボラック樹脂TD−2131(酸価104g/eq)をそれぞれ2−ブタノンに溶解して固形分濃度30質量%に調整し、HP7200希釈液、TD−2131希釈液を調製した。HP7200希釈液30質量部とTD−2131希釈液12.2質量部を室温で混合し、接着剤溶液(1)を調製した。
【0051】
・接着剤溶液(2)
ユニチカ社製 共重合ポリエステル樹脂エリーテルUE9885(酸価22mg/KOH)を、トルエン/2−ブタノン混合液(50/50質量比)に溶解して、固形分濃度30質量%に調製した。
・接着剤溶液(3)
ジャパンエポキシレジン社製 エポキシ樹脂JER 1001B80(エポキシ等量475g/eq)、固形分濃度80質量%(20質量%は2−ブタノン)
【0052】
B−4.板またはフィルム
・ティンフリースチール板
厚み0.21mm
・黒化処理ステンレス板
アベル社製 LM−S1、厚さ0.80mm
・アルミ板
厚み0.30mm
【0053】
・黒色未延伸ポリアミドフィルム(A)
半芳香族ポリアミド10Tを加熱乾燥し、水分率を200ppm以下とした。
染料含有ポリアミド66(オリエント工業社製NUBIAN 7807−25)を加熱乾燥し、水分率を200ppm以下とした。
乾燥した半芳香族ポリアミド10T 95質量部と染料含有ポリアミド66 5質量部をドライブレンドした。シリンダーを330℃に設定した一軸押出機(スクリュー径50mm)で溶融し、330℃に設定したTダイから50℃に設定した冷却ロール上にフィルム状に押出し、静電印加法により密着させて冷却し、平均厚み240μmの実質的に無配向の黒色未延伸ポリアミドフィルム(A)を得た。
黒色未延伸ポリアミドフィルム(A)は、融点が315℃であって、引張強度(MD/TD)が52/53MPa、引張伸度(MD/TD)が280/285MPaであった。
【0054】
実施例1
<外枠部の準備>
ティンフリースチール板に、パンチングマシーンで、10mmφの開口部を設け、表面をトルエンとアセトンで脱脂洗浄した。
<開口部を設けた接着シートの準備>
接着シート(1)を打ち抜いて、約14mmφの開口部を設けた。
<接着シートを接着した外枠部の作製>
上記接着シート(1)の軽剥離側を剥がした後、ティンフリースチール板の穴と上記接着シート(1)の穴の中心を合わせ、スチール板の穴の縁に幅2mm程度の接着シートがない部分ができるように、ローラーで軽く貼り合わせ、接着シート(1)を接着したティンフリースチール板を作製した。
<フィルムの準備>
延伸ポリアミドフィルム(1)の片面にコロナ処理をおこない、コロナ面を54mN/mに調製した。
<保護カバーの作製>
上記接着シート(1)を接着したティンフリースチール板の接着シートのもう一方の保護シートを剥がし、延伸ポリアミドフィルム(1)のコロナ面と貼り合わせ、80℃×1分間ゲージ圧0.1MPaで仮圧着した。その後、150℃×2MPa×1分間でプレスした後、熱風乾燥機で200℃5分間熱処理して保護カバーを得た。
【0055】
実施例2〜13、比較例1〜3
用いるポリアミドフィルム、外枠部、接着シートを表4のように変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこなって保護カバーを得た。
【0056】
表4に、得られた保護カバーの構成およびその評価を示す。
【0057】
【表4】
【0058】
実施例14
<外枠部の準備>
ティンフリースチール板の表面をトルエンとアセトンで脱脂洗浄した。
<接着剤溶液を塗布した外枠部の作製>
接着剤溶液(1)を乾燥後の厚みが4μmになるようにティンフリースチール板にマイヤーバーで塗布した後、100℃で5分間乾燥して三井化学東セロ社製ポリプロピレンフィルムOP U−0 20μmを保護フィルムとして貼り合わせ、接着剤溶液を塗布したティンフリースチール板を作製した。
<フィルムの準備>
延伸ポリアミドフィルム(1)の片面にコロナ処理をおこない、コロナ面を54mN/mに調整した。
<保護カバーの作製>
接着剤溶液を塗布したティンフリースチール板を、パンチングマシーンで、ポリプロピレンフィルムからパンチし、10mmφの開口部を設けた。その後、ポリプロピレンフィルムを剥がし、延伸ポリアミドフィルム(1)のコロナ面と貼り合わせ、80℃×1分間ゲージ圧0.1MPaで仮圧着した。その後、150℃×2MPa×1分間でプレスした後、熱風乾燥機で200℃5分間熱処理して保護カバーを得た。
【0059】
実施例15〜18
用いるポリアミドフィルム、外枠部、接着シートを表4のように変更する以外は、実施例14と同様の操作をおこなって保護カバーを得た。
【0060】
実施例19
<外枠部の準備>
黒色未延伸ポリアミドフィルム(A)に、パンチングマシーンで、10mmφの開口部を設けた。
<フィルムの準備>
延伸ポリアミドフィルム(1)の片面にコロナ処理をおこない、コロナ面を54mN/mに調製した。
<保護カバーの作製>
黒色未延伸ポリアミドフィルム(A)の上に、延伸ポリアミドフィルム(1)のコロナ面と貼り合わせ、厚さ1mmのガラス板で押さえた。その後、パナソニックデバイスSUNX社製レーザー溶着機VL−W1500で外枠部の穴と同心円になるように、レーザーパワー35W スキャンスピード200mm/s、14mmφの円形にレーザー照射し、接着し、保護カバーを得た。シール幅は約0.7mmであった。
【0061】
実施例1〜19の保護カバーは、いずれも、リフロー耐熱性を有し、高温処理をおこなっても、高い透明性を維持することができた。
【0062】
比較例1の保護カバーは、窓部に未延伸のポリアミドフィルムを用いたために、リフロー耐熱性が低く、高温処理をおこなうと透明性が低下した。
比較例2、3の保護カバーは、窓部に融点が低いポリアミドフィルムを用いたために、リフロー耐熱性が低く、高温処理をおこなうと透明性が低下した。
【符号の説明】
【0063】
1 フィルム
2 接着剤
3 外枠部
図1