【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0029】
A.評価方法
ポリアミドやポリアミドフィルムの物性測定は以下の方法によりおこなった。
(1)相対粘度
ポリアミドやポリアミドフィルムについて、96質量%硫酸を溶媒とし、濃度1g/dL、25℃で測定した。
【0030】
(2)融点
半芳香族ポリアミド10mgを、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製、「DSC−7」)を用い、窒素雰囲気下で20℃から350℃まで10℃/分で昇温し(1st Scan)、350℃にて5分間保持した。その後、100℃/分で20℃まで降温し、20℃にて5分間保持後、350℃まで20℃/分でさらに昇温した(2nd Scan)。そして、2nd Scanで観測される結晶融解ピークのピークトップ温度を融点とした。
【0031】
(3)平均厚み
ポリアミドフィルムについて、厚み計(HEIDENHAIN社製、「MT12B」)を用いて測定した。ランダムに10ヶ所測定し、平均値を平均厚みとした。
【0032】
(4)引張強度および引張伸度
250℃の熱風乾燥機中に5分間静置した前後のフィルムを、MDおよびTDについて、JIS K 7127に準拠して測定した。サンプルの大きさは10mm×150mm、チャック間の初期距離は100mm、引張速度は500mm/分とした。
【0033】
(5)全光線透過率
得られた保護カバーの窓部のフィルムについて、日本電色工業社製ヘーズメーターNDH2000を用いて、JIS K 7361−1に準拠して測定した。
また、保護カバーを260℃5分間で熱処理した後、保護カバーの窓部のフィルムについて、上記と同様に、測定した。
【0034】
(6)紫外線透過率
得られた保護カバーの窓部のフィルムについて、島津製作所社製紫外可視分光光度計Spectrophotometer UV−2450を用いて、365nmにおける透過率を測定した。
また、保護カバーを260℃5分間で熱処理した後、保護カバーの窓部のフィルムについて、上記と同様に、測定した。
【0035】
(7)フィルムのリフロー耐熱性
50mm×50mmに加工したシート準備し、赤外線加熱式のリフロー炉にて、100℃/分の速度で、260℃まで昇温し、10秒間保持した。リフロー処理後のシートを観察し、以下の評価をおこなった。
○:ブリスターの発生や変形が見られなかった。
×:ブリスターの発生や変形が見られた。
【0036】
B.原料
B−1.半芳香族ポリアミド
・半芳香族ポリアミド10T
ジカルボン酸成分として粉末状のテレフタル酸(TPA)470質量部と、モノカルボン酸として分子量284のステアリン酸(STA)32質量部と、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物0.093質量部とを、リボンブレンダー式の反応装置に入れ、窒素密閉下、回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、ジアミン成分として100℃に加温した1,10−デカンジアミン(DDA)498質量部を、2.5時間かけて連続的(連続液注方式)に添加し反応物を得た。なお、原料モノマーのモル比は、TPA:DDA:STA=48.5:49.6:1.9(原料モノマーの官能基の当量比率は、TPA:DDA:STA=49.0:50.0:1.0)であった。 その後、得られた反応物を、同じ反応装置で、窒素気流下、250℃、回転数30rpmで8時間固相重合し、半芳香族ポリアミド10Tを得た。
【0037】
・半芳香族ポリアミド9T、10T/10I、10T/9T(1)、10T/9T(2)
樹脂組成を表1のように変更する以外は、半芳香族ポリアミド10Tを製造した際と同様に重合し、半芳香族ポリアミドを製造した。
【0038】
表1に、半芳香族ポリアミド10T、9T、10T/10I、10T/9T(1)、10T/9T(2)の樹脂組成と特性値を示す。
【0039】
【表1】
【0040】
・半芳香族ポリアミド6T
三井化学社製アーレンA3000、融点320℃
【0041】
B−2.ポリアミドフィルム
・延伸ポリアミドフィルム(1)
半芳香族ポリアミド10Tと半芳香族ポリアミド9Tを、それぞれ、加熱乾燥し、水分率を200ppm以下とした。
加熱乾燥した半芳香族ポリアミド10Tと9Tを、[10T/9T]=95/5(質量比)になるようにドライブレンドした。シリンダーを330℃に設定した一軸押出機(スクリュー径50mm)で溶融し、330℃に設定したTダイから50℃に設定した冷却ロール上にフィルム状に押出し、静電印加法により密着させて冷却し、実質的に無配向の未延伸フィルム(平均厚み:150μm)を得た。
得られた未延伸フィルムの両端をクリップで把持しながら、テンター方式同時二軸延伸機にて、二軸延伸をおこなった。予熱温度は120℃、延伸温度は125℃、MDの延伸歪み速度は2400%/分、TDの延伸歪み速度は2760%/分、MDの延伸倍率は3.0倍、TDの延伸倍率は3.3倍であった。
延伸に引き続いて、二軸延伸機の同じテンター内で285℃にて熱固定をおこない、TDに6%のリラックス処理を施し、平均厚み15μmの延伸されたポリアミドフィルム(1)を得た。
【0042】
・延伸ポリアミドフィルム(2)〜(9)
表2のように樹脂組成、延伸条件を変更する以外は、延伸ポリアミドフィルム(1)を製造した際と同様に、乾燥、未延伸フィルムの製造、二軸延伸、熱固定をおこない、平均厚み15μmの延伸されたポリアミドフィルムを得た。
【0043】
・未延伸ポリアミドフィルム(10)
半芳香族ポリアミド10Tを、加熱乾燥し、水分率を200ppm以下とした。
加熱乾燥した半芳香族ポリアミド10Tを、シリンダーを330℃に設定した一軸押出機(スクリュー径50mm)で溶融し、330℃に設定したTダイから50℃に設定した冷却ロール上にフィルム状に押出し、静電印加法により密着させて冷却し、平均厚み240μmの実質的に無配向の未延伸ポリアミドフィルム(10)を得た。
未延伸ポリアミドフィルム(10)は、融点が315℃であって、引張強度(MD/TD)が54/56MPa、引張伸度(MD/TD)が260/270MPaであった。
【0044】
・延伸ポリアミドフィルム(11)
ユニチカ社製二軸延伸ポリアミド6フィルム エンブレムON−15 融点220℃
【0045】
・延伸ポリアミドフィルム(12)
ユニチカ社製二軸延伸ポリアミド6/ポリアミドMXD6複層フィルム エンブロンM100−15 融点220℃、236℃
【0046】
表2に、延伸ポリアミドフィルム(1)〜(9)と未延伸ポリアミドフィルム(10)の樹脂組成と延伸条件と特性値を示し、表3に、延伸ポリアミドフィルム(11)、(12)の特性値を示す。
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
B−3.接着剤
・接着シート(1)
トーヨーケム社製 耐熱接着シートTSU0041SI−25DL
・接着シート(2)
味の素ファインテクノ社製 層間絶縁シートABF−GX−T31
【0050】
・接着剤溶液(1)
DIC社製ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂HP7200(エポキシ等量255g/eq)、DIC社製フェノールノボラック樹脂TD−2131(酸価104g/eq)をそれぞれ2−ブタノンに溶解して固形分濃度30質量%に調整し、HP7200希釈液、TD−2131希釈液を調製した。HP7200希釈液30質量部とTD−2131希釈液12.2質量部を室温で混合し、接着剤溶液(1)を調製した。
【0051】
・接着剤溶液(2)
ユニチカ社製 共重合ポリエステル樹脂エリーテルUE9885(酸価22mg/KOH)を、トルエン/2−ブタノン混合液(50/50質量比)に溶解して、固形分濃度30質量%に調製した。
・接着剤溶液(3)
ジャパンエポキシレジン社製 エポキシ樹脂JER 1001B80(エポキシ等量475g/eq)、固形分濃度80質量%(20質量%は2−ブタノン)
【0052】
B−4.板またはフィルム
・ティンフリースチール板
厚み0.21mm
・黒化処理ステンレス板
アベル社製 LM−S1、厚さ0.80mm
・アルミ板
厚み0.30mm
【0053】
・黒色未延伸ポリアミドフィルム(A)
半芳香族ポリアミド10Tを加熱乾燥し、水分率を200ppm以下とした。
染料含有ポリアミド66(オリエント工業社製NUBIAN 7807−25)を加熱乾燥し、水分率を200ppm以下とした。
乾燥した半芳香族ポリアミド10T 95質量部と染料含有ポリアミド66 5質量部をドライブレンドした。シリンダーを330℃に設定した一軸押出機(スクリュー径50mm)で溶融し、330℃に設定したTダイから50℃に設定した冷却ロール上にフィルム状に押出し、静電印加法により密着させて冷却し、平均厚み240μmの実質的に無配向の黒色未延伸ポリアミドフィルム(A)を得た。
黒色未延伸ポリアミドフィルム(A)は、融点が315℃であって、引張強度(MD/TD)が52/53MPa、引張伸度(MD/TD)が280/285MPaであった。
【0054】
実施例1
<外枠部の準備>
ティンフリースチール板に、パンチングマシーンで、10mmφの開口部を設け、表面をトルエンとアセトンで脱脂洗浄した。
<開口部を設けた接着シートの準備>
接着シート(1)を打ち抜いて、約14mmφの開口部を設けた。
<接着シートを接着した外枠部の作製>
上記接着シート(1)の軽剥離側を剥がした後、ティンフリースチール板の穴と上記接着シート(1)の穴の中心を合わせ、スチール板の穴の縁に幅2mm程度の接着シートがない部分ができるように、ローラーで軽く貼り合わせ、接着シート(1)を接着したティンフリースチール板を作製した。
<フィルムの準備>
延伸ポリアミドフィルム(1)の片面にコロナ処理をおこない、コロナ面を54mN/mに調製した。
<保護カバーの作製>
上記接着シート(1)を接着したティンフリースチール板の接着シートのもう一方の保護シートを剥がし、延伸ポリアミドフィルム(1)のコロナ面と貼り合わせ、80℃×1分間ゲージ圧0.1MPaで仮圧着した。その後、150℃×2MPa×1分間でプレスした後、熱風乾燥機で200℃5分間熱処理して保護カバーを得た。
【0055】
実施例2〜13、比較例1〜3
用いるポリアミドフィルム、外枠部、接着シートを表4のように変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこなって保護カバーを得た。
【0056】
表4に、得られた保護カバーの構成およびその評価を示す。
【0057】
【表4】
【0058】
実施例14
<外枠部の準備>
ティンフリースチール板の表面をトルエンとアセトンで脱脂洗浄した。
<接着剤溶液を塗布した外枠部の作製>
接着剤溶液(1)を乾燥後の厚みが4μmになるようにティンフリースチール板にマイヤーバーで塗布した後、100℃で5分間乾燥して三井化学東セロ社製ポリプロピレンフィルムOP U−0 20μmを保護フィルムとして貼り合わせ、接着剤溶液を塗布したティンフリースチール板を作製した。
<フィルムの準備>
延伸ポリアミドフィルム(1)の片面にコロナ処理をおこない、コロナ面を54mN/mに調整した。
<保護カバーの作製>
接着剤溶液を塗布したティンフリースチール板を、パンチングマシーンで、ポリプロピレンフィルムからパンチし、10mmφの開口部を設けた。その後、ポリプロピレンフィルムを剥がし、延伸ポリアミドフィルム(1)のコロナ面と貼り合わせ、80℃×1分間ゲージ圧0.1MPaで仮圧着した。その後、150℃×2MPa×1分間でプレスした後、熱風乾燥機で200℃5分間熱処理して保護カバーを得た。
【0059】
実施例15〜18
用いるポリアミドフィルム、外枠部、接着シートを表4のように変更する以外は、実施例14と同様の操作をおこなって保護カバーを得た。
【0060】
実施例19
<外枠部の準備>
黒色未延伸ポリアミドフィルム(A)に、パンチングマシーンで、10mmφの開口部を設けた。
<フィルムの準備>
延伸ポリアミドフィルム(1)の片面にコロナ処理をおこない、コロナ面を54mN/mに調製した。
<保護カバーの作製>
黒色未延伸ポリアミドフィルム(A)の上に、延伸ポリアミドフィルム(1)のコロナ面と貼り合わせ、厚さ1mmのガラス板で押さえた。その後、パナソニックデバイスSUNX社製レーザー溶着機VL−W1500で外枠部の穴と同心円になるように、レーザーパワー35W スキャンスピード200mm/s、14mmφの円形にレーザー照射し、接着し、保護カバーを得た。シール幅は約0.7mmであった。
【0061】
実施例1〜19の保護カバーは、いずれも、リフロー耐熱性を有し、高温処理をおこなっても、高い透明性を維持することができた。
【0062】
比較例1の保護カバーは、窓部に未延伸のポリアミドフィルムを用いたために、リフロー耐熱性が低く、高温処理をおこなうと透明性が低下した。
比較例2、3の保護カバーは、窓部に融点が低いポリアミドフィルムを用いたために、リフロー耐熱性が低く、高温処理をおこなうと透明性が低下した。