【解決手段】異方性導電接着剤は、ポリマーと、5官能以下のエポキシ化合物、オキセタン化合物から選択される少なくとも1種のカチオン重合性化合物と、光カチオン重合開始剤と、熱カチオン重合開始剤と、導電粒子とを含有し、前記光カチオン重合開始剤が、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートをアニオンとするオニウム塩であり、光硬化後の最低溶融粘度が、300〜8000Pa・sであり、光硬化後の最低溶融粘度到達温度が、50〜100℃である。これにより、光の先照射の際に最低溶融粘度の過度な上昇を抑制することができる。
ポリマーと、5官能以下のエポキシ化合物、オキセタン化合物から選択される少なくとも1種のカチオン重合性化合物と、光カチオン重合開始剤と、熱カチオン重合開始剤と、導電粒子とを含有し、
前記光カチオン重合開始剤が、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートをアニオンとするオニウム塩であり、
光硬化後の最低溶融粘度が、300〜8000Pa・sであり、光硬化後の最低溶融粘度到達温度が、50〜100℃である異方性導電接着剤。
ポリマーと、5官能以下のエポキシ化合物、オキセタン化合物から選択される少なくとも1種のカチオン重合性化合物と、光カチオン重合開始剤と、熱カチオン重合開始剤と、導電粒子とを含有する第1層と、ポリマーと、5官能以下のエポキシ化合物、オキセタン化合物から選択される少なくとも1種のカチオン重合性化合物と、光カチオン重合開始剤と、熱カチオン重合開始剤とを含有する第2層と備え、
光硬化後の前記第1層の最低溶融粘度と前記第2層の最低溶融粘度との差が、300Pa・s未満である請求項1又は2記載の異方性導電接着剤。
ポリマーと、5官能以下のエポキシ化合物、オキセタン化合物から選択される少なくとも1種のカチオン重合性化合物と、光カチオン重合開始剤と、熱カチオン重合開始剤と、導電粒子とを含有し、前記光カチオン重合開始剤が、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートをアニオンとするオニウム塩であり、光硬化後の最低溶融粘度が、300〜8000Pa・sであり、光硬化後の最低溶融粘度到達温度が、50〜100℃である異方性導電接着剤を第1の電子部品上に配置する配置工程と、
前記異方性導電接着剤側から光照射する光照射工程と、
前記光照射後の異方性導電接着剤上に第2の電子部品を配置し、熱圧着ツールにより前記第2の電子部品を前記第1の電子部品に熱圧着させる熱圧着工程と
を有する接続体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1.異方性導電接着剤
2.接続体の製造方法
3.実施例
【0014】
<1.異方性導電接着剤>
本実施の形態に係る異方性導電接着剤は、ポリマーと、5官能以下のエポキシ化合物、オキセタン化合物から選択される少なくとも1種のカチオン重合性化合物と、光カチオン重合開始剤と、熱カチオン重合開始剤と、導電粒子とを含有し、光カチオン重合開始剤が、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートをアニオンとするオニウム塩であり、光硬化後の最低溶融粘度が、300〜8000Pa・sであり、光硬化後の最低溶融粘度到達温度が、50〜100℃である。これにより、遮光部の反応率を向上させ、優れた導通抵抗を得ることができる。
【0015】
異方性導電接着剤の最低溶融粘度到達温度及び最低溶融粘度は、レオメータを用いて、例えば、5℃/min、1Hzの条件で測定することができる。また、光硬化は、例えば、波長313nm、365nm、405nmにピークトップを有する紫外線を照射する光源を備えるUV照射装置を用いて、例えば照度200mW、時間10秒の条件で行うことができる。
【0016】
異方性導電接着剤は、フィルム状の異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)、又はペースト状の異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic conductive paste)のいずれであってもよい。取り扱いのし易さからは異方性導電フィルムが好ましく、コストの面からは異方性導電ペーストが好ましい。
【0017】
異方性導電接着剤の光硬化前の最低溶融粘度は、好ましくは100〜2000Pa・s、より好ましくは200〜1500Pa・sであり、光硬化前の最低溶融粘度到達温度は、好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜90℃である。これにより、異方性導電接着剤を被着体に配置する際に、被着体の形状に追従させることができる。
【0018】
異方性導電接着剤の光硬化後の最低溶融粘度は、低すぎると捕捉性が悪くなる懸念があるので、300Pa・s以上が好ましく、1000Pa・s以上がより好ましく、1200Pa・s以上が更により好ましい。上限が高すぎると押し込みに支障がでることが懸念されるため、好ましくは8000Pa・s以下、より好ましくは7000Pa・s以下、更により好ましくは3000Pa・s以下である。光硬化後の最低溶融粘度到達温度は、50〜100℃であり、より好ましくは60〜90℃、さらに好ましくは60〜80℃である。これにより、熱圧着する際に導電粒子を挟持させ、異方性導電接着剤を十分に流動させて接着させることができる。
【0019】
また、ポリマーと、5官能以下のエポキシ化合物、オキセタン化合物から選択される少なくとも1種のカチオン重合性化合物と、光カチオン重合開始剤と、熱カチオン重合開始剤と、導電粒子とを含有する第1層としての導電粒子含有層と、ポリマーと、5官能以下のエポキシ化合物、オキセタン化合物から選択される少なくとも1種のカチオン重合性化合物と、光カチオン重合開始剤と、熱カチオン重合開始剤とを含有する第2層としての導電粒子非含有層とからなる2層型の異方性導電フィルムを用いることができる。
【0020】
2層型の異方性導電フィルムを用いた場合、光硬化前の導電粒子含有層の最低溶融粘度は、導電粒子非含有層よりも100〜1000Pa・s大きいことが好ましく、300〜700Pa・s大きいことがさらに好ましい。
【0021】
また、2層型の異方性導電フィルムを用いた場合、光硬化後の導電粒子含有層の最低溶融粘度と導電粒子非含有層の最低溶融粘度との差が、300Pa・s未満であることが好ましく、200Pa・s以下であることがさらに好ましい。これにより、熱圧着時において、導電粒子含有層及び導電粒子非含有層をほぼ同時に硬化させることができ、導電粒子を挟持した状態で異方性導電接着剤を十分に流動させて接着させることができる。
【0022】
ポリマーとしては、ビスフェノールS型フェノキシ樹脂、フルオレン骨格を有するフェノキシ樹脂、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネートなどが挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、膜形成状態、接続信頼性等の観点からビスフェノールS型フェノキシ樹脂を好適に用いられる。フェノキシ樹脂は、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンより合成されるポリヒドロキシポリエーテルである。市場で入手可能なフェノキシ樹脂の具体例としては、新日鐵住金化学(株)の商品名「FA290」などを挙げることができる。
【0023】
ポリマーの配合量は、例えば樹脂成分の5〜70wt%とすることが好ましく、20〜60wt%とすることがより好ましい。ポリマーの含有量が多いと光硬化前の最低溶融粘度が大きくなる傾向にある。本明細書において、「樹脂成分」は、ポリマー、カチオン重合性化合物、光カチオン重合開始剤、及び熱カチオン重合開始剤をいう。
【0024】
5官能以下のエポキシ化合物としては、特に限定されず、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ノボラックフェノール型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物などが挙られ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
市場で入手可能なグリシジルエーテル型の単官能エポキシ化合物の具体例としては、四日市合成(株)の商品名「エポゴーセーEN」などを挙げることができる。また、市場で入手可能なビスフェノールA型の2官能エポキシ化合物の具体例としては、DIC(株)の商品名「840−S」などを挙げることができる。また、市場で入手可能なジシクロペンタジエン型の5官能エポキシ化合物の具体例としては、DIC(株)の商品名「HP−7200シリーズ」などを挙げることができる。
【0026】
オキセタン化合物としては。特に限定されず、ビフェニル型オキセタン化合物、キシリレン型オキセタン化合物、シルセスキオキサン型オキセタン化合物、エーテル型オキセタン化合物、フェノールノボラック型オキセタン化合物、シリケート型オキセタン化合物などが挙げられ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。市場で入手可能なビフェニル型のオキセタン化合物の具体例としては、宇部興産(株)の商品名「OXBP」などを挙げることができる。
【0027】
カチオン重合性化合物の含有量は、例えば樹脂成分の10〜70wt%とすることが好ましく、20〜50wt%とすることがより好ましい。カチオン重合性化合物の含有量が多すぎると光硬化後の最低溶融粘度の上昇が大きくなる傾向にある。
【0028】
光カチオン重合開始剤は、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(TFPB)をアニオンとするオニウム塩である。これにより、光硬化後の最低溶融粘度の過度な上昇を抑制することができる。これは、TFPBの置換基が大きく、分子量が大きいためであると考えられる。
【0029】
光カチオン重合開始剤のカチオン部分としては。特に限定されず、芳香族スルホニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウム、芳香族アンモニウムなどが挙られ、これらの中でも、芳香族スルホニウムであるトリアリールスルホニウムを用いることが好ましい。TFPBをアニオンとするオニウム塩の市場で入手可能な具体例としては、BASFジャパン(株)の商品名「IRGACURE290」、和光純薬工業(株)の商品名「WPI−124」などを挙げることができる。
【0030】
光カチオン重合開始剤の含有量は、例えば樹脂成分の0.1〜10wt%とすることが好ましく、1〜5wt%とすることがより好ましい。
【0031】
熱カチオン重合開始剤としては、特に限定されず、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族アンモニウム塩などが挙られ、これらの中でも、芳香族スルホニウム塩を用いることが好ましい。市場で入手可能な芳香族スルホニウム塩の具体例としては、三新化学工業(株)の商品名「SI−60」などを挙げることができる。
【0032】
熱カチオン重合開始剤の含有量は、例えば樹脂成分の1〜30wt%とすることが好ましく、5〜20wt%とすることがより好ましい。
【0033】
導電性粒子としては、異方性導電フィルムにおいて使用されている公知の導電性粒子を用いることができる。例えば、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム、錫、鉛、クロム、コバルト、銀、金等の各種金属や金属合金の粒子、金属酸化物、カーボン、グラファイト、ガラス、セラミック、プラスチック等の粒子の表面に金属をコートしたもの、これらの粒子の表面に更に絶縁薄膜をコートしたもの等が挙げられ、これらの中から2種以上を混在させてもよい。樹脂粒子の表面に金属をコートしたものである場合、樹脂粒子としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂等の粒子を用いることができる。
【0034】
導電性粒子の平均粒径としては、通常1〜30μm、好ましくは2〜20μm、より好ましくは2.5〜15μmである。また、バインダー樹脂中の導電性粒子の平均粒子密度は、接続信頼性及び絶縁信頼性の観点から、好ましくは100〜100000個/mm
2、より好ましくは500〜80000個/mm
2である。
【0035】
また、導電性粒子は、絶縁性樹脂中に分散されていてもよく、フィルム平面視において個々に独立していてもよく、また任意に配置されて存在していてもよい。導電性粒子が配置される場合、異方性接続される電極のサイズやレイアウトに応じて、個数密度や導電粒子間距離などを設定することができる。このため、捕捉向上、ショート抑制などに効果があり、歩留まりの向上などコスト削減効果も見込まれる。
【0036】
また、異方性導電接着剤は、最低溶融粘度を調整するため、シリカなどの絶縁性フィラー(以下、フィラーとのみ記す。)を含有することが好ましい。フィラーの含有量は、異方性導電性接着剤の全量に対して好ましくは3〜60wt%、より好ましくは10〜55wt%、さらに好ましくは20〜50wt%である。また、多層のフィルム形状である場合、各層のフィラーの含有量の合計が前述の範囲であることが好ましい。フィラーの含有量が多いと最低溶融粘度が高くなる傾向にあり、フィラーの含有量が少ないと最低溶融粘度が低くなる傾向にある。また、フィラーの平均粒子径は、好ましくは1〜500nm、より好ましくは10〜300nm、さらに好ましくは20〜100nmである。
【0037】
また、異方性導電接着剤は、無機材料との界面における接着性を向上させるために、シランカップリング剤をさらに含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、エポキシ系、メタクリロキシ系、アミノ系、ビニル系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系などが挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を込み合わせて用いてもよい。
【0038】
このような異方性導電接着剤によれば、光の先照射による光硬化時において最低溶融粘度の過度な上昇を抑制するとともに遮光部の反応率を向上させ、熱による本硬化時において導電粒子を挟持した状態で異方性導電接着剤を十分に流動させて接着させることができるため、優れた導通抵抗を得ることができる。
【0039】
<2.接続体の製造方法>
本実施の形態に係る接続体の製造方法は、ポリマーと、5官能以下のエポキシ化合物、オキセタン化合物から選択される少なくとも1種のカチオン重合性化合物と、光カチオン重合開始剤と、熱カチオン重合開始剤と、導電粒子とを含有し、前記光カチオン重合開始剤が、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートをアニオンとするオニウム塩であり、光硬化後の最低溶融粘度が、300〜8000Pa・sであり、光硬化後の最低溶融粘度到達温度が、50〜100℃である異方性導電接着剤を第1の電子部品上に配置する配置工程(S1)と、異方性導電接着剤側から光照射する光照射工程(S2)と、光照射後の異方性導電接着剤上に第2の電子部品を配置し、熱圧着ツールにより第2の電子部品を第1の電子部品に熱圧着させる熱圧着工程(S3)とを有する。これにより、先照射工程(S2)において、遮光部の反応率を向上させるとともに最低溶融粘度の過度な上昇を抑制し、熱圧着工程(S3)において、第2の電子部品を熱圧着ツールにてしっかり押し込むことができるため、優れた導通抵抗を得ることができる。
【0040】
光照射される光としては、紫外線(UV:ultraviolet)、可視光線(visible light)、赤外線(IR:infrared)などの波長帯域から光硬化異方性導電接着剤の硬化システムに応じて選択することができる。これらの中でも、光照射器より照射される光は、エネルギーが高い紫外線を含むことが好ましい。
【0041】
紫外線は、10nm〜400nmの波長であり、波長が短い紫外線は、エネルギーが大きい反面、樹脂内部まで到達し難い性質があり、一方、波長が長い紫外線は、エネルギーはやや小さいものの比較的樹脂内部まで浸透し易い性質がある。また、波長が200nm以下になると酸素を分解するのに消費されたり、酸素に吸収されたりし易い。このため、光照射器から照射される光は、波長が200nm以上の近紫外線を含むことが好ましい。近紫外線を含む光を照射する光源としては、例えば、波長248nm、313nm、334nm、365nm、405nm、436nmを高出力する高圧水銀ランプなどが挙げられる。
【0042】
以下、先照射型の異方性導電接着剤を用いた接続体の製造方法について説明する。
図1は、本実施の形態に係る接続体の製造方法を模式的に示す断面図であり、
図1(A)は、配置工程(S1)を示し、
図1(B)は、先照射工程(S2)を示し、
図1(C)は、熱圧着工程(S3)を示す。なお、異方性導電接着剤は、前述と同様のため、ここでは説明を省略する。
【0043】
[配置工程(S1)]
図1(A)に示すように、配置工程(S1)では、ポリマーと、5官能以下のエポキシ化合物、オキセタン化合物から選択される少なくとも1種のカチオン重合性化合物と、光カチオン重合開始剤と、熱カチオン重合開始剤と、導電粒子とを含有し、前記光カチオン重合開始剤が、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートをアニオンとするオニウム塩であり、光硬化後の最低溶融粘度が、300〜8000Pa・sであり、光硬化後の最低溶融粘度到達温度が、50〜100℃である異方性導電接着剤20を、第1の電子部品10上に配置する。
【0044】
配置工程では、異方性導電接着剤20の最低溶融粘度は、光硬化前と同様、好ましくは100〜2000Pa・s、より好ましくは200〜1500Pa・sであり、最低溶融粘度到達温度は、好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜90℃である。これにより、異方性導電接着剤20を第1の電子部品10に配置する際に、第1の電子部品の形状に追従させることができる。
【0045】
また、導電粒子含有層及び導電粒子非含有層からなる2層型の異方性導電フィルムを用いた場合、光硬化前の導電粒子含有層の最低溶融粘度は、導電粒子非含有層よりも100〜1000Pa・s大きいことが好ましく、300〜700Pa・s大きいことがさらに好ましい。
【0046】
第1の電子部品10は、第1の端子列11を備える。第1の電子部品10は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。第1の電子部品10としては、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)パネル、有機EL(OLED)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)用途、タッチパネル用途などの透明基板、プリント配線板(PWB)などが挙げられる。プリント配線板の材質は、特に限定されず、例えば、FR−4基材などのガラスエポキシでもよく、熱可塑性樹脂などのプラスチック、セラミックなども用いることができる。また、透明基板は、透明性の高いものであれば特に限定はなく、ガラス基板、プラスチック基板などが挙げられる。
【0047】
[先照射工程(S2)]
図1(B)に示すように、先照射工程(S2)では、異方性導電接着剤20側から光照射する。これにより、第1の電子部品10側から光照射した場合、遮光部となる第1の端子列上の反応率を向上させることができる。また、本実施の形態では、分子量の大きな特定の光カチオン重合開始剤を含有する異方性導電接着剤20を用いているため、最低溶融粘度の過度な上昇を抑制することができる。
【0048】
異方性導電接着剤の光硬化後の最低溶融粘度は、前述と同様、低すぎると捕捉性が悪くなる懸念があるので、300Pa・s以上が好ましく、1000Pa・s以上がより好ましく、1200Pa・s以上が更により好ましい。上限が高すぎると押し込みに支障がでることが懸念されるため、好ましくは8000Pa・s以下、より好ましくは7000Pa・s以下、更により好ましくは3000Pa・s以下である。光硬化後の最低溶融粘度到達温度は、50〜100℃であり、より好ましくは60〜90℃、さらに好ましくは60〜80℃である。これにより、熱圧着工程(S3)において、導電粒子21を挟持した状態で異方性導電接着剤20を十分に流動させて接着させることができる。
【0049】
また、導電粒子含有層及び導電粒子非含有層からなる2層型の異方性導電フィルムを用いた場合、前述と同様、光硬化後の導電粒子含有層の最低溶融粘度と導電粒子非含有層の最低溶融粘度との差は、300Pa・s未満であることが好ましく、200Pa・s以下であることがさらに好ましい。これにより、熱圧着工程(S3)において、導電粒子含有層及び導電粒子非含有層をほぼ同時に硬化させることができ、導電粒子21を挟持した状態で異方性導電接着剤を十分に流動させて接着させることができる。
【0050】
[熱圧着工程(S3)]
図1(C)に示すように、熱圧着工程(S3)では、光照射後の異方性導電接着剤20上に第2の電子部品30を配置し、熱圧着ツール40により第2の電子部品30を第1の電子部品10に熱圧着させる。これにより、圧着ツール40の熱により樹脂が溶融し、圧着ツール40により第2の電子部品が十分に押し込まれ、導電粒子21が端子間に挟持された状態で樹脂が熱硬化するため、優れた導通性を得ることができる。
【0051】
また、熱圧着工程(S3)では、圧着ツール40を用いて、好ましくは160℃以下の温度、より好ましくは140℃以下の温度、さらに好ましくは120℃の温度で押圧させる。このような低い温度で加圧することにより、第1の電子部品10及び第2の電子部品30への熱の影響を抑制することができる。
【0052】
第2の電子部品20は、第1の端子列11に対向する第2の端子列21を備える。第2の電子部品20は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。第2の電子部品20としては、例えば、IC(Integrated Circuit)、フレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuits)、テープキャリアパッケージ(TCP)基板、ICをFPCに実装したCOF(Chip On Film)などが挙げられる。
【0053】
このような接続体の製造方法によれば、先照射工程S2において最低溶融粘度の過度な上昇を抑制するとともに遮光部の反応率を向上させ、熱硬化工程S3において導電粒子が端子間に挟持された状態で樹脂を熱硬化させることにより、優れた導通抵抗を得ることができる。
【0054】
[変形例]
なお、前述した接続体の製造方法では、光照射工程(S2)において、異方性導電接着剤側から光照射することとしたが、第1の端子列11上の異方性導電接着剤に光照射することができれば、特に限定されるものではない。例えば、大型パネルのように接着面積が大きい場合、光スポットを移動させながら、若しくは旋回(首振り)させながら異方性導電接着剤に照射してもよい。また、光照射器が複数存在してもよく、異方性導電接着剤(接合部)に対して斜め方向又は横方向から照射してもよい。また、導電粒子含有層及び導電粒子非含有層からなる2層型の異方性導電フィルムを用いた場合、例えば、異方性導電接着剤側と第1の電子部品側の両方から光を照射し、光硬化後の導電粒子含有層の最低溶融粘度と導電粒子非含有層の最低溶融粘度との差を調整してもよい。
【0055】
また、圧着ツール40と第2の電子部品30との間に緩衝材を使用してもよい。緩衝材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)、ポリイミド、ガラスクロス、シリコンラバーなどを用いることができる。
<3.実施例>
【実施例】
【0056】
以下、本技術の実施例について説明する。本実施例では、カチオン硬化型の異方性導電フィルムを作製し、様々な態様で接続体を作製した。そして、配線上の遮光部の反応率、及び基材上の開口部の反応率、並びに、初期の導通抵抗、及び信頼性試験後の導通抵抗を測定した。なお、本技術は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
[単層型の異方性導電フィルムの作製]
表1に示す添加量(質量部)で材料を配合し、光照射前に所定の最低溶融粘度を有し、光照射後に所定の最低溶融粘度を有する厚み12μmの単層型の異方性導電フィルムA〜Hを作製した。また、導電粒子(平均粒径3.2μm)の面密度が60000個/mm
2になるように調整した。また、フィラー(平均粒径50nm、アドマファイン(株式会社アドマテックス製))を20〜30wt%配合して所定の最低溶融粘度になるように調整した。
【0058】
異方性導電フィルムの最低溶融粘度及び最低溶融粘度到達温度は、レオメータ(TA社製ARES)を用いて、5℃/min、1Hzの条件で測定した。
【0059】
光照射は、波長313nm、365nm、405nmにピークトップを有する紫外線を照射する光源を備えるUV照射装置(REX−250、朝日分光株式会社製)を用い、照度200mW、時間10秒の条件で行った。また、照射時間を20秒の条件で行った場合、異方性導電フィルムの最低溶融粘度及び最低溶融粘度到達温度は、照射時間を10秒の条件で行った場合と同様であった。
【0060】
【表1】
フェノキシ樹脂:FA290(新日鐵住金化学(株))
単官能エポキシ化合物:エポゴーセーEN(四日市合成(株))
2官能エポキシ化合物:840−S(DIC(株))
5官能エポキシ化合物:HP−7200シリーズ(DIC(株))
オキセタン化合物:OXBP(宇部興産(株))
光カチオン重合開始剤:IRGACURE 290(BASFジャパン(株))
熱カチオン重合開始剤:SI−60(三新化学工業(株))
【0061】
[2層型の異方性導電フィルムの作製]
表2に示す添加量(質量部)で材料を配合し、光照射前に所定の最低溶融粘度を有し、光照射後に所定の最低溶融粘度を有する、厚み6μmの導電粒子含有層、及び厚み12μmの導電粒子非含有層を作製した。導電粒子含有層は、導電粒子(平均粒径3.2μm)の面密度が60000個/mm
2になるように調整を行った。また、導電粒子含有層及び導電粒子非含有層は、フィラー(平均粒径50nm、アドマファイン(株式会社アドマテックス製))を導電粒子含有層に30〜40wt%、導電粒子非含有層に5〜15wt%配合して溶融粘度を調整した。そして、所定の最低溶融粘度を有する導電粒子含有層と導電粒子非含有層とをロールラミネータを用いてラミネートし、厚み18μmの2層構造の異方性導電フィルムAA〜DDを作製した。
【0062】
導電粒子含有層及び導電粒子非含有層の最低溶融粘度及び最低溶融粘度到達温度は、レオメータ(TA社製ARES)を用いて、5℃/min、1Hzの条件で測定した。
【0063】
光照射は、波長313nm、365nm、405nmにピークトップを有する紫外線を照射する光源を備えるUV照射装置(REX−250、朝日分光株式会社製)を用い、照度200mW、時間10秒の条件で行った。また、照射時間を20秒の条件で行った場合、異方性導電フィルムの最低溶融粘度及び最低溶融粘度到達温度は、照射時間を10秒の条件で行った場合と同様であった。
【0064】
【表2】
フェノキシ樹脂:FA290(新日鐵住金化学(株))
単官能エポキシ化合物:エポゴーセーEN(四日市合成(株))
2官能エポキシ化合物:840−S(DIC(株))
5官能エポキシ化合物:HP−7200シリーズ(DIC(株))
オキセタン化合物:OXBP(宇部興産(株))
光カチオン重合開始剤:IRGACURE 290(BASFジャパン(株))
熱カチオン重合開始剤:SI−60(三新化学工業(株))
【0065】
[接続体の作製]
異方性導電フィルムは、幅4.0mm、長さ40.0mmとしたものを用いた。ICチップは、厚み0.5mm、幅1.8mm、長さ34mmであり、導通測定用配線(バンプサイズ:30×85μm、ピッチ:50μm、金バンプ高さh=15μm)を形成した測定用TEG(Test Element Group)を用いた。ガラス基板は、厚み0.5mmの導通測定用配線を形成した測定用TEGを用いた。
【0066】
(態様1)
表3に示す態様1のように構造体を作製した。先ず、ガラス基板上に異方性導電フィルムを配置し(工程A)、異方性導電フィルム側から光照射した(工程B)。光照射は、波長313nm、365nm、405nmにピークトップを有する紫外線を照射する光源を備えるUV照射装置(REX−250、朝日分光株式会社製)を用い、照度200mW、時間5秒の条件で行った。
【0067】
光照射後の異方性導電フィルム上にICチップを搭載し(工程C)、熱圧着ツール(幅10.0mm、長さ40.0mm)によりICチップをガラス基板上に熱圧着させ(工程D)、接続体を作製した。熱圧着ツールによる熱加圧は、厚み0.05mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)からなる緩衝材を介して行った。また、熱圧着条件は、温度100℃−圧力60MPa−時間5secとした。
【0068】
(態様2)
表3に示す態様2のように構造体を作製した。先ず、態様1と同様に、ガラス基板上に異方性導電フィルムを配置し(工程A)、異方性導電フィルム側から光照射した(工程B)。そして、光照射後の異方性導電フィルム上にICチップを搭載し(工程C)、ガラス基板側から光照射しながら(工程D1)、熱圧着ツール(幅10.0mm、長さ40.0mm)によりICチップをガラス基板上に熱圧着させ(工程D)、接続体を作製した。
【0069】
ガラス基板側からの光照射は、波長313nm、365nm、405nmにピークトップを有する紫外線を照射する光源を備えるUV照射装置(REX−250、朝日分光株式会社製)を用い、照度200mW、時間5秒の条件で行った。また、熱圧着ツールによる熱加圧は、厚み0.05mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)からなる緩衝材を介して行い、熱圧着条件は、温度100℃−圧力60MPa−時間5secとした。
【0070】
(態様3)
表3に示す態様3のように構造体を作製した。先ず、ガラス基板上に異方性導電フィルムを配置し(工程A)、次に、異方性導電フィルム上にICチップを搭載した(工程C)。そして、熱圧着ツール(幅10.0mm、長さ40.0mm)によりICチップをガラス基板上に熱圧着させ(工程D)、接続体を作製した。熱圧着ツールによる熱加圧は、厚み0.05mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)からなる緩衝材を介して行った。また、熱圧着条件は、温度100℃−圧力60MPa−時間5secとした。
【0071】
(態様4)
表3に示す態様4のように構造体を作製した。先ず、ガラス基板上に異方性導電フィルムを配置し(工程A)、次に、異方性導電フィルム上にICチップを搭載した(工程C)。そして、ガラス基板側から光照射しながら(工程D1)、熱圧着ツール(幅10.0mm、長さ40.0mm)によりICチップをガラス基板上に熱圧着させ(工程D)、接続体を作製した。
【0072】
ガラス基板側からの光照射は、波長313nm、365nm、405nmにピークトップを有する紫外線を照射する光源を備えるUV照射装置(REX−250、朝日分光株式会社製)を用い、照度200mW、時間5秒の条件で行った。また、熱圧着ツールによる熱加圧は、厚み0.05mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)からなる緩衝材を介して行い、熱圧着条件は、温度100℃−圧力60MPa−時間5secとした。
【0073】
【表3】
【0074】
[遮光部及び開口部の反応率の測定]
接続体における配線上の遮光部の異方性導電膜及びガラス基板上の開口部の異方性導電膜のそれぞれについて、反応率を測定した。反応率は、異方性導電膜中のエポキシ基の減少率により求めた。すなわち、異方性導電接続前の異方性導電膜中のエポキシ基が異方性導電接続によりどれだけ減少したかを、赤外吸収スペクトルの914cm
−1の吸収を測定することで求めた。
【0075】
[導通抵抗の測定]
ICチップとガラス基板との接続状態について、デジタルマルチメータを使用して、接続初期及び信頼性試験後における導通抵抗(Ω)を測定した。導通抵抗値の測定は、図に示すように、ICチップのバンプに接続されたガラス基板の配線にデジタルマルチメータを接続し、50Vの電圧測定でいわゆる4端子法にて導通抵抗値を測定した。また、信頼性試験の条件は、温度85℃、湿度85%RH、時間500hrとした。
【0076】
<実施例1>
表4に、異方性導電フィルムAを用いて、態様1により作製した実施例1の接続体の評価結果を示す。接続体における反応率及び導通抵抗は良好であった。
【0077】
<実施例2>
表4に、異方性導電フィルムAを用いて、態様2により作製した実施例2の接続体の評価結果を示す。接続体における反応率及び導通抵抗は良好であった。すなわち、第1の電子部品側から光照射しながら、熱圧着ツールにより第2の電子部品を第1の電子部品上に熱圧着させても、反応率及び導通抵抗が良好な接続体を得ることができた。
【0078】
<実施例3>
表4に、異方性導電フィルムBを用いて、態様1により作製した実施例3の接続体の評価結果を示す。接続体における反応率及び導通抵抗は良好であった。
【0079】
<実施例4>
表4に、異方性導電フィルムCを用いて、態様1により作製した実施例4の接続体の評価結果を示す。接続体における反応率及び導通抵抗は良好であった。
【0080】
<実施例5>
表4に、異方性導電フィルムDを用いて、態様1により作製した実施例5の接続体の評価結果を示す。接続体における反応率及び導通抵抗は良好であった。
【0081】
<実施例6>
表4に、異方性導電フィルムEを用いて、態様1により作製した実施例6の接続体の評価結果を示す。接続体における反応率及び導通抵抗は良好であった。
【0082】
<実施例7>
表4に、異方性導電フィルムFを用いて、態様1により作製した実施例7の接続体の評価結果を示す。接続体における反応率及び導通抵抗は良好であった。
【0083】
<比較例1>
表4に、異方性導電フィルムGを用いて、態様1により作製した比較例1の接続体の評価結果を示す。初期の導通抵抗及び信頼性試験後の導通抵抗が良好でなかった。これは、光照射後の最低溶融粘度が低すぎるため、熱圧着工程Dにおいて、第2の電子部品が押し込まれすぎて端子間の樹脂が少なくなったため、初期導通が高く、信頼性試験後に抵抗がオープンになったものと考えられる。
【0084】
<比較例2>
表4に、異方性導電フィルムHを用いて、態様1により作製した比較例2の接続体の評価結果を示す。初期の導通抵抗及び信頼性試験後の導通抵抗が良好でなかった。これは、光照射後の最低溶融粘度が高すぎるため、熱圧着工程Dにおいて、第2の電子部品を十分に押し込むことができず、初期導通が高く、信頼性試験後に抵抗がオープンになったものと考えられる。
【0085】
<比較例3>
表4に、異方性導電フィルムAを用いて、態様3により作製した比較例3の接続体の評価結果を示す。遮光部の反応率及び信頼性試験後の導通抵抗が良好でなかった。これは、光照射を行っていないため、遮光部の反応率が低く、また、最低溶融粘度が低すぎるため、熱圧着工程Dにおいて、第2の電子部品が押し込まれすぎて端子間の樹脂が少なくなったため、信頼性試験後に抵抗がオープンになったものと考えられる。
【0086】
<比較例4>
表4に、異方性導電フィルムAを用いて、態様4により作製した比較例4の接続体の評価結果を示す。遮光部の反応率及び信頼性試験後の導通抵抗が良好でなかった。これは、第1の部品側から光照射を行ったため、第1の端子列による遮光部が生じてしまい、遮光部の反応率が低いため、熱圧着工程Dにおいて、信頼性試験後に抵抗がオープンになったものと考えられる。
【0087】
<実施例8>
表4に、異方性導電フィルムAAを用いて、態様1により作製した実施例8の接続体の評価結果を示す。接続体における反応率及び導通抵抗は良好であった。
【0088】
<実施例9>
表4に、異方性導電フィルムBBを用いて、態様1により作製した実施例9の接続体の評価結果を示す。接続体における反応率及び導通抵抗は良好であった。
【0089】
<実施例10>
表4に、異方性導電フィルムCCを用いて、態様1により作製した実施例10の接続体の評価結果を示す。接続体における反応率及び導通抵抗は良好であった。
【0090】
<比較例5>
表4に、異方性導電フィルムDDを用いて、態様1により作製した比較例5の接続体の評価結果を示す。遮光部の反応率、初期の導通抵抗及び信頼性試験後の導通抵抗が良好でなかった。これは、光照射後の導電粒子含有層の最低溶融粘度と導電粒子非含有層の最低溶融粘度との差が大きいため、導電粒子含有層及び導電粒子非含有層をほぼ同時に熱硬化させることができず、導電粒子を挟持した状態で異方性導電接着剤を十分に流動させて接着させることができなかったためと考えられる。
【0091】
【表4】