【解決手段】 多官能(メタ)アクリレートモノマー(A)と、下記一般式(1)で表される多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(B)と、導電性高分子化合物(C1)及び/又は前記(C1)に酸をドープしてなる導電性高分子組成物(C2)と、光重合開始剤(D)とを必須成分として含有する感光性樹脂組成物。
[式(1)中、Rはf価のアルコールから全ての水酸基を除いた残基を表し、fは4〜8の整数であり、複数あるAOはそれぞれ独立に炭素数2〜4のアルキレンオキシ基を表し、AOの付加形式はランダム形式でもブロック形式でもよく、複数あるmはそれぞれ独立にアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1〜20の数である。]
前記多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(B)が、4〜8価のアルコールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物である請求項1記載の感光性樹脂組成物。
前記導電性高分子組成物(C2)が、ポリチオフェン、ポリ(ヘキシルチオフェン)及びポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンからなる群から選ばれる少なくとも1種にポリスチレンスルホン酸をドープしてなる導電性高分子組成物である請求項1〜3のいずれか記載の感光性樹脂組成物。
前記(B)の重量と、前記(C1)及び前記(C2)の合計重量との比[(B):{(C1)+(C2)}]が、1:10〜10:1である請求項1〜5のいずれか記載の感光性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物は、多官能(メタ)アクリレートモノマー(A)と、多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(B)と、導電性高分子化合物(C1)及び/又は前記(C1)に酸をドープしてなる導電性高分子組成物(C2)と、光重合開始剤(D)とを必須成分として含有する。
【0014】
尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート及び/又はメタクリレート」を、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を、「(メタ)アクリル樹脂」とは「アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂」を、「(メタ)アクリロイル基」とは「アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基」を、「(メタ)アクリロイロキシ基」とは「アクリロイロキシ基及び/又はメタクリロイロキシ基」を意味する。
以下において、本発明の感光性樹脂組成物の必須構成成分である(A)〜(D)について順に説明する。
【0015】
本発明における多官能(メタ)アクリレートモノマー(A)としては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーあれば、特に限定されずに用いられる。
このような多官能(メタ)アクリレートモノマー(A)としては、2官能(メタ)アクリレート(A1)、3官能(メタ)アクリレート(A2)、4〜6官能(メタ)アクリレート(A3)及び7〜10官能(メタ)アクリレート(A4)が挙げられる。
【0016】
2官能(メタ)アクリレート(A1)としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化物[例えば、グリコールのジ(メタ)アクリレート、グリセリンのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのジ(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−1,5−ペンタンジオールのジ(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシ−2−エチル−1,3−プロパンジオールのジ(メタ)アクリレート];多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と(メタ)アクリル酸のエステル化物[例えばトリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート及びグリセリンのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート];水酸基含有両末端エポキシアクリレート;多価アルコールと(メタ)アクリル酸とヒドロキシカルボン酸のエステル化物[例えばヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート]等が挙げられる。
尚、多価アルコールの水酸基のすべてを(メタ)アクリル酸、アルキレンオキサイド付加物等と反応させる必要はなく、未反応の水酸基が残っていてもよい。
【0017】
3官能(メタ)アクリレート(A2)としては、グリセリンのトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
4〜6官能(メタ)アクリレート(A3)としては、ペンタエリスリトールのテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物のペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのプロピレンオキサイド付加物のペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
7〜10官能の(メタ)アクリレート化合物(A4)としては、例えばジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応により得られる化合物等のジイソシアネート化合物と水酸基含有多官能(メタ)アクリレート化合物との反応物等が挙げられる。
【0020】
本発明における多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(B)は、下記一般式(1)で表される4〜8個の水酸基を有する多価アルコールの炭素数2〜4のアルキレンオキサイド(以下、AOと略記することがある。)付加物である。
【0022】
一般式(1)におけるRはf価のアルコールから全ての水酸基を除いた残基を表し、fは4〜8の整数であり、複数あるAOはそれぞれ独立に炭素数2〜4のアルキレンオキシ基を表し、AOの付加形式はランダム形式でもブロック形式でもよく、複数あるmはそれぞれ独立にアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1〜20の数である。
【0023】
多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(B)としては、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、グルコース、イソマルト、ラクチトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、ソルボース、フコース、マンノース、トレハロース、スクロース、セロビオース、ソホロース、ニゲロース、マルトース、メリビオース及びラクトース等のアルキレンオキサイド付加物が挙げられ、好ましいのはソルビトール、スクロース、グルコース、ガラクトース及びこれらのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物である。
【0024】
多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(B)としては、4〜8価のアルコールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物が好ましく、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを併用する場合、その付加形式はランダム形式でもブロック形式でもよく、更に好ましいのは4価アルコールのエチレンオキサイド付加物及び6価アルコールのプロピレンオキサイド付加物、特に好ましいのはペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物及びソルビトールのプロピレンオキサイド付加物である。
【0025】
多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(B)のアルキレンオキサイド付加モル数は、導電性及び相溶性の観点から、好ましくは4〜50、更に好ましくは8〜40である。
【0026】
本発明の感光性樹脂組成物は、導電性高分子化合物(C1)及び/又は前記(C1)に酸をドープしてなる導電性高分子組成物(C2)を含有することにより、硬化膜に導電性(帯電防止性)が付与される。
【0027】
導電性高分子化合物(C1)としては、チオフェン系導電性高分子化合物、ピロール系導電性高分子化合物、イソチアナフテン系導電性高分子化合物、フェニレン系導電性高分子化合物及びアニリン系導電性高分子化合物等が挙げられ、導電性(帯電防止性)の観点から好ましいのは、チオフェン系導電性高分子化合物、更に好ましいのはポリチオフェン、ポリ(ヘキシルチオフェン)及びポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン、特に好ましいのはポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンである。
【0028】
(C1)に酸をドープしてなる導電性高分子組成物(C2)に用いられる酸としては、低分子の酸(ハロゲン化水素、過塩素酸、テトラフルオロ硼酸、六フッ化ヒ酸、硫酸、硝酸、チオシアン酸、六フッ化ケイ酸、燐酸、フェニル燐酸、六フッ化燐酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メチルスルホン酸及びエチルスルホン酸)及び高分子の酸[ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)]等が挙げられる。
【0029】
ドープする酸として導電性(帯電防止性)の観点から好ましいのは、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)であり、更に好ましいのはポリスチレンスルホン酸である。
【0030】
ドーパントとしての酸の添加量は、導電性の向上効果がある量であれば特に制限はされないが、導電性高分子化合物(C1)の重量を基準として、1〜50重量%であることが好ましい。
【0031】
導電性高分子化合物(C1)及び(C1)に酸をドープしてなる導電性高分子組成物(C2)の内、導電性(帯電防止性)の観点から好ましいのは、チオフェン系導電性高分子化合物及びこれにポリスチレンスルホン酸をドープしたもの、更に好ましいのはポリチオフェン、ポリ(ヘキシルチオフェン)、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン及びこれらにポリスチレンスルホン酸をドープしたもの、特に好ましいのはポリチオフェン、ポリ(ヘキシルチオフェン)及びポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンからなる群から選ばれる少なくとも1種にポリスチレンスルホン酸をドープしたもの、最も好ましいのはポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンにポリスチレンスルホン酸をドープしたものである。
(C1)及び(C2)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0032】
尚、本発明における導電性高分子化合物(C1)及び導電性高分子組成物(C2)における導電性とは、スピンコーティング法、キャスティング法、バーコード法、ロールコート法等の従来公知の塗布法により作製された膜又は圧縮成型法で作製したペレットについてJIS K6911に準じて測定された表面固有抵抗値が、10
8Ω以下であることを意味する。(C1)及び(C2)の表面固有抵抗値は500Ω以下であることが好ましい。
【0033】
本発明における多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(B)の重量と、(C1)及び(C2)の合計重量との比[(B):{(C1)+(C2)}]は導電性と相溶性の観点から、好ましくは1:10〜10:1、更に好ましくは1:9〜9:1である。
【0034】
本発明における光重合開始剤(D)は、可視光線、紫外線、遠赤外線、荷電粒子線及びX線等の放射線の露光により、重合性不飽和化合物の重合を開始しうるラジカルを発生するものであれば制限なく使用できる。
【0035】
光重合開始剤(D)としては、フォスフィンオキサイド系化合物(D1)、ベンゾイルホルメート系化合物(D2)、チオキサントン系化合物(D3)、オキシムエステル系化合物(D4)、ヒドロキシベンゾイル系化合物(D5)、ベンゾフェノン系化合物(D6)、ケタール系化合物(D7)及びα−アミノアルキルフェノン系化合物(D8)等が挙げられる。
【0036】
フォスフィンオキサイド系化合物(D1)としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
ベンゾイルホルメート系化合物(D2)としては、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。
チオキサントン系化合物(D3)としては、イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
オキシムエステル系化合物(D4)としては、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]及びエタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1(O−アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0037】
ヒドロキシベンゾイル系化合物(D5)としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及びベンゾインアルキルエーテル等が挙げられる。
ベンゾフェノン系化合物(D6)としては、ベンゾフェノン等が挙げられる。
ケタール系化合物(D7)としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
α−アミノアルキルフェノン系化合物(D8)としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0038】
これらの内、硬化性の観点から好ましいのは、(D1)、(D5)及び(D8)であり、更に好ましいのは、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンである。
【0039】
硬度向上の観点から、本発明の感光性樹脂組成物は、(A)〜(D)以外に更に、下記一般式(2)で表される金属アルコキシド(e)を加水分解縮合してなる金属アルコキシドの縮合物(E)を含有することが好ましい。
【0041】
一般式(2)におけるR
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(f)から1個の水酸基を除いた残基を表す。
【0042】
ここで、多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(f)とは、多価アルコールとアクリル酸及び/又はメタクリル酸とを反応させたエステル反応物の内、水酸基が少なくとも1個以上残っているエステル化合物を意味し、このエステル化合物から1個の水酸基を除いた残基をR
1及び/又はR
2として用いる。
【0043】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール等の炭化水素の水素原子が水酸基で置換された一般的な多価のアルコール;その誘導体としてのジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジペンタエリスリトール及びトリペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0044】
多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(f)としては、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びトリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中で硬度の観点から好ましいのは、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びトリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートである。
【0045】
一般式(2)におけるR
3及びR
4は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(f)から1個の水酸基を除いた残基又は下記一般式(3)で表される金属原子含有基を表し、複数あるR
3及びR
4はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0047】
一般式(3)におけるR
5、R
6及びR
7は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(f)から1個の水酸基を除いた残基を表し、複数ある場合のR
5及びR
6はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
一般式(2)と一般式(3)におけるMは、シリコン原子、チタニウム原子又はジルコニウム原子を表し、硬度の観点から好ましいのはシリコン原子及びチタニウム原子である。一般式(2)と一般(3)においてそれぞれ複数あるMは同一であっても異なっていてもよい。
【0048】
一般式(2)におけるnは2〜15の整数であり、硬度及び透明性の観点から好ましくは2〜10である。
一般式(3)におけるkは1〜5の整数であり、硬度の観点から好ましくは1である。
【0049】
硬度の観点から、一般式(2)におけるR
1〜R
4及び一般式(3)におけるR
5〜R
7の内の少なくとも1個が多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(f)から1個の水酸基を除いた残基であり、一般式(2)で表される金属アルコキシド(e)の縮合物(E)が多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(f)から1個の水酸基を除いた残基を少なくとも1個有することが好ましい。
【0050】
更に、同様の観点から、多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(f)から1個の水酸基を除いた残基は、下記一般式(4)で表される有機基であることが好ましい。
【0052】
一般式(4)におけるmは0〜5の整数であり、mが0の場合はペンタエリスリトールのトリアクリレートの残基、mが1の場合はジペンタエリスリトールペンタアクリレートの残基、mが2の場合はトリペンタエリスリトールヘプタアクリレートの残基、mが3の場合はテトラペンタエリスリトールノナンアクリレート、mが4の場合はペンタペンタエリスリトールウンデカンアクリレートの残基、mが5の場合はヘキサペンタエリスリトールトリデカンアクリレートの残基である。
硬度及び塗工性の観点から、mは0〜3であることが好ましい。
【0053】
本発明の金属アルコキシド(e)の縮合物(E)は、テトラアルコシキシラン等の金属アルコキシド(e)と水との加水分解物の縮合により得られる。
この縮合反応時に多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(f)を共存させることにより、一般式(2)のR
1〜R
4の内の少なくとも1個又は一般式(3)のR
5〜R
7の内の少なくとも1個が、多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(f)から水酸基を除いた残基となり、縮合物(E)に多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(f)から水酸基を除いた残基が導入されて硬度が著しく向上する。
【0054】
金属アルコキシド(e)としては、アルコキシシラン、アルコキシチタン及びアルコキシジルコニウム等が挙げられる。
これらの内、硬度の観点から好ましいのは、アルコキシシラン及びアルコキシジルコニウムである。
【0055】
アルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン及びテトラブトキシシランが挙げられ、これらの市販品としては、テトラエトキシシラン(東京化成工業株式会社製)、エチルシリケート28、エチルシリケート28P、N−プロピルシリケート、N−ブチルシリケート(以上、コルコート株式会社製)、正珪酸メチル、正珪酸エチル、高純度正珪酸エチル、高純度正珪酸エチル(EL)(以上、多摩化学工業株式会社製)及びDynasylan SILBOND CONDENSED(エボニックジャパン社製)等が挙げられる。
アルコキシジルコニウムとしては、テトラエトキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム等が挙げられ、これらの市販品としてはテトラブトキシジルコニウム(TBZR)(日本曹達株式会社製)等が挙げられる。
縮合物(E)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0056】
金属アルコキシド(e)の縮合物(E)を製造する際の温度は、40〜80℃であることが好ましく、60〜70℃であることが更に好ましい。温度が40℃以上であると反応速度が速くなるため、生産性が向上する。また、80℃以下であると多官能(メタ)アクリレートが反応系中で重合しポリマー化することなく、金属アルコキシド(e)の加水分解、重縮合を進行させることができる。また、この条件下で金属アルコキシド(e)の加水分解物と多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(f)との反応も十分に進行する。
【0057】
金属アルコキシド(e)の縮合物(E)を製造する際の反応時間は、30分〜6時間であることが好ましく、2時間〜4時間であることが更に好ましい。
【0058】
本発明の感光性樹脂組成物中の多官能(メタ)アクリレートモノマー(A)の含有量は、硬度の観点から、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、好ましくは75〜95重量%、更に好ましくは80〜90重量%である。
【0059】
本発明の感光性樹脂組成物中の多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(B)の含有量は、透明性の観点から(A)〜(D)の合計重量に基づいて、好ましくは1〜10重量%、更に好ましくは2〜8重量%である。
【0060】
本発明の感光性樹脂組成物中の導電性高分子化合物(C1)及び(C1)に酸をドープしてなる導電性高分子組成物(C2)の含有量の合計は、導電性と透明性の観点から(A)〜(D)の合計重量に基づいて、好ましくは0.1〜5重量%、更に好ましくは0.5〜4重量%である。
【0061】
本発明の感光性樹脂組成物中の光重合開始剤(D)の含有量は、硬化性及び透明性の観点から(A)〜(D)の合計重量に基づいて、好ましくは0.1〜10重量%であり、更に好ましくは0.2〜8重量%である。
【0062】
本発明における縮合物(E)の含有量は、硬度及び透明性のバランスの観点から、(A)〜(E)の合計重量に基づいて、好ましくは5〜40重量%、更に好ましくは10〜35重量%、特に好ましくは15〜35重量%である。5重量%以上であると硬度が不足することがなく、40重量%以下であると透明性が良好である。
【0063】
本発明の感光性樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により種々の添加剤を含有させてもよい。
添加剤としては、可塑剤、有機溶剤、分散剤、消泡剤、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)、スリップ剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤及び紫外線吸収剤が挙げられる。添加剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0064】
本発明の感光性樹脂組成物は、塗工の際に、塗工に適した粘度に調整するために、必要に応じて溶剤で希釈することができる。
溶剤の使用量は、感光性樹脂組成物の全重量に基づいて好ましくは2,000重量%以下、更に好ましくは10〜500重量%である。また、感光性樹脂組成物の粘度は、使用時の温度(例えば5〜60℃)で、例えば好ましくは5〜5,000mPa・s、安定塗工の観点から更に好ましくは50〜1,000mPa・sである。
【0065】
溶剤としては、本発明の感光性樹脂組成物中の樹脂分を溶解するものであれば特に限定されない。具体的には、芳香族炭化水素(例えばトルエン、キシレン及びエチルベンゼン)、エステル又はエーテルエステル(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル及びメトキシブチルアセテート)、エーテル(例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールのモノメチルエーテル及びジエチレングリコールのモノエチルエーテル)、ケトン(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン及びシクロヘキサノン)、アルコール(例えばメタノール、エタノール、n−又はi−プロパノール、n−、i−、sec−又はt−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール及びベンジルアルコール)、アミド(例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、スルホキシド(例えばジメチルスルホキシド)、水及びこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。
【0066】
これらの溶剤の内コーティング膜の平滑性及び溶剤除去の効率の観点から好ましいのは沸点が70〜100℃のエステル、ケトン及びアルコール、更に好ましいのは酢酸エチル、メチルエチルケトン、i−プロパノール及びこれらの混合物である。
【0067】
本発明の感光性樹脂組成物は、基材の少なくとも片面の少なくとも一部に塗布し、必要により乾燥させた後、活性エネルギー線(紫外線、電子線及びX線等)の照射により硬化させることにより、硬化膜を有するハードコート被覆物を得ることができる。
【0068】
塗工に際しては、例えば塗工機[バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(サイズプレスロールコーター及びゲートロールコーター等)、エアナイフコーター、スピンコーター及びブレードコーター等]が使用できる。
【0069】
塗工膜厚は、硬化乾燥後の膜厚として、0.5〜300μmであることが好ましい。乾燥性及び硬化性の観点から更に好ましい膜厚の上限は250μmであり、耐摩耗性、塗工適性の観点から更に好ましい下限は1μmである。
【0070】
上記基材としては、メチルメタクリレート(共)重合物、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリトリアセチルセルロース及びポリシクロオレフィン等の樹脂からなるものが挙げられる。
【0071】
本発明の感光性樹脂組成物が溶剤を含有する場合は、塗工後に乾燥することが好ましい。乾燥方法としては、例えば熱風乾燥(ドライヤー等)が挙げられる。
乾燥温度は、好ましくは50〜200℃、塗膜の硬度及び外観の観点から更に好ましい上限は150℃、観測速度の観点から更に好ましい下限は60℃である。
【0072】
本発明の感光性樹脂組成物を紫外線により硬化させる場合は、種々の紫外線照射装置[例えば、紫外線照射装置[型番「VPS/I600」、フュージョンUVシステムズ(株)製]やLED照射装置を使用できる。
使用するランプとしては、例えば高圧水銀灯及びメタルハライドランプ等が挙げられる。紫外線の照射量は、組成物の硬化性及び硬化物の可撓性の観点から好ましくは10〜10,000mJ/cm
2、更に好ましくは100〜5,000mJ/cm
2である。
【0073】
本発明の感光性樹脂組成物の硬化物のヘイズは1%以下であることが好ましい。1%を超えると硬化物の透明性が悪化する傾向にある。尚、硬化物のヘイズは、実施例に記載の通り、硬化膜のフィルムをJIS K7105に準拠して、全光線透過率測定装置で測定される。
【実施例】
【0074】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、部は重量部を示す。
【0075】
製造例1 [D−ソルビトールのプロピレンオキサイド9モル付加物(B−1)の製造]
ステンレス製オートクレーブに、D−ソルビトール[東京化成工業(株)製]258.5部及び水酸化カリウム0.01部を投入し、系内を窒素で置換した。この時の酸素濃度は50ppmであった。その後、減圧下(0〜1KPa)、80℃にて30分間脱水を行った。次いでプロピレンオキサイド(以下、「プロピレンオキサイド」を「PO」と略称することがある。)741.5部を80℃以下に保ちながらで滴下した後、110℃で4時間熟成して、D−ソルビトールのPO9モル付加物(B−1)を得た。
【0076】
製造例2 [スクロースのPO16モル付加物(B−2)の製造]
ステンレス製オートクレーブに、スクロース268.2部及び水酸化カリウム0.1部を投入し、系内を窒素で置換した。この時の酸素濃度は50ppmであった。その後、減圧下(0〜1KPa)、80℃にて30分間脱水を行った。次いでPO731.8部を80℃以下に保ちながらで滴下した後、110℃で4時間熟成して、スクロースのPO16モル付加物(B−2)を得た。
【0077】
製造例3 [ペンタエリスリトールのエチレンオキサイド30モル付加物(B−3)の製造]
ステンレス製オートクレーブに、ペンタエリスリトール93.4部及び水酸化カリウム0.1部を投入し、系内を窒素で置換した。この時の酸素濃度は50ppmであった。その後、減圧下(0〜1KPa)、80℃にて30分間脱水を行った。次いでエチレンオキサイド906.6部を80℃以下に保ちながらで滴下した後、110℃で4時間熟成して、ペンタエリスリトールのエチレンオキサイド30モル付加物(B−3)を得た。
【0078】
製造例4 [ケイ素アルコキシドの縮合物(E−1)溶液の製造]
撹拌機、冷却管、吹込み管及び温度計を備えた反応容器に、ペンタエリスリトールトリアクリレート[商品名:ETERMER235、長興化学(株)製](A−1)65部、水1.51部及びテトラエトキシシラン(e−1)[商品名:Dynasylan Silbond Condensed、エボニックジャパン(株)製]35部を仕込み30分間攪拌した後、パラトルエンスルホン酸2.36部を仕込み、65℃で2時間反応させた。その後、反応容器を減圧にし、空気を吹き込みながら、70℃で2時間トッピングし、ケイ素アルコキシドの縮合物(E−1)のペンタエリスリトールトリアクリレート(A−1)65重量%溶液を得た。
【0079】
比較製造例1 [ビスフェノールAのPO20モル付加物(B’−1)の製造]
ステンレス製オートクレーブに、ビスフェノールA164.3部及び水酸化カリウム0.01部を投入し、系内を窒素で置換した。この時の酸素濃度は50ppmであった。その後、減圧下(0〜1KPa)、80℃にて30分間脱水を行った。次いでPO835.7部を80℃以下に保ちながらで滴下した後、110℃で4時間熟成して、ビスフェノールAのPO20モル付加物(B’−1)を得た。
【0080】
実施例1
表1の配合部数(部)に従い、ガラス製の容器に、ペンタエリスリトールトリアクリレート(A−1)、製造例1で製造したソルビトールのPO9モル付加物(B−1)、(C2−1)、(D−1)及び溶剤としてのイソプロピルアルコールを仕込み、均一になるまで攪拌し、実施例1の感光性樹脂組成物を得た。
【0081】
実施例2〜5及び比較例1〜5
表1に記載の原料及びその配合部数(部)に変更する以外は実施例1と同様にして、実施例2〜5及び比較例1〜5の感光性樹脂組成物を得た。
【0082】
【表1】
【0083】
尚、表1中の略称の化学品の詳細は以下の通りである。
(A−1):「ETERMER235」[ペンタエリスリトールトリアクリレート:長興化学(株)製、官能基数3個、水酸基1個]
(A−2):「アロニックスM−403」[ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(ペンタ体比率=55モル%):東亜合成(株)製]
(A’−1):「ライトアクリレートPO−A」[フェノキシエチルアクリレート:共栄社化学(株)社製;官能基数が1個]
(C−1):「PEDOT/PSS(dry re−dispersible pellets)[SIGMA−ALDRICH社製、ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン、カタログ値の表面固有抵抗値:200〜450Ω]
(C’−1):導電性のスズアンチモン系酸化物粉末「T−1」[三菱マテリアル電子化成(株)]
(D−1):「イルガキュアー907」[2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン:BASF(株)社製]
【0084】
実施例1〜5及び比較例1〜5の感光性樹脂組成物の硬化物を以下に示す方法で作製して、硬化フィルムのヘイズ、鉛筆硬度及び表面固有抵抗値を測定・評価した。
【0085】
<硬化フィルムの作製法>
厚さ100μmのPETフィルム[商品名「コスモシャインA4300」、東洋紡績(株)製]基材の片面に、バーコーターを用いて感光性樹脂組成物を乾燥硬化後の膜厚が5μmになるように塗布し、80℃で2分間乾燥させた後、紫外線照射装置[型番「VPS/I600」、フュージョンUVシステムズ(株)製]により、紫外線を300mJ/cm
2照射し、基材フィルム表面に硬化膜を有するフィルムを得た。
得られたフィルムについて下記の方法で性能評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0086】
[ヘイズの測定]
JIS K7105に準拠し、全光線透過率測定装置[商品名「haze−gard dual」BYK gardner(株)製]を用いて硬化フィルムのヘイズ(%)を測定した。
この条件でのヘイズは一般に1%以下が好ましい。
【0087】
[鉛筆硬度の測定]
JIS K−5400に準じ、硬化フィルムの鉛筆硬度を測定した。
この条件での鉛筆硬度は一般に2H以上が好ましい。
【0088】
[導電性の評価]
JIS K6911に準じて硬化フィルムの表面固有抵抗値(Ω)を測定した。
表面固有抵抗値が小さいほど導電性が高く、この評価方法と条件においては、一般には1.0×10
9Ω以下が好ましい。
【0089】
本発明の実施例1〜5の感光性樹脂組成物から得られた硬化フィルムは、導電性(帯電防止性)を発現させるための導電性化合物を多量に含有していても透明性が損なわれず、かつ高い硬度を有している。
一方、単官能アクリレートのみを使用している比較例1の硬化フィルムは、鉛筆硬度が劣る。また、多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(B)を使用しない比較例2と、2価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(B’−1)を使用した比較例3では透明性が悪くなる。また、導電性高分子化合物(C1)及び(C1)に酸をドープしてなる導電性高分子組成物(C2)のいずれおも使用しない比較例4と、導電性のスズアンチモン系酸化物粉末(C’−1)を使用した比較例5では帯電防止性が十分発現できない。