【解決手段】障子2の内方側へ取り付けるアーム受け器3と障子枠4に取り付けるアーム保持器5とを有し、アーム保持器5には、アーム支軸12とアーム支軸12を支点として揺動自在に保持される開度制限アーム13とが設け、アーム受け器3には、アーム支軸12に平行な遊嵌支軸10と開度制限アーム13に摺動自在に外嵌可能で遊嵌支軸10の軸心まわりで回転自在に保持される遊嵌部とを設けた構成とした。
前記遊嵌支軸の中空部には中空のストッパ軸が挿通されて当該ストッパ軸の中空部に前記ロック軸が挿通されることで前記遊嵌支軸、前記ストッパ軸及び前記ロック軸が同軸に配置されており、
前記ストッパ軸は前記遊嵌支軸内を摺動することで前記遊嵌部に対する前記開度制限アームの脱出を阻止する抜け止め状態と脱出を許容する解放状態とに切り替え可能になっていることを特徴とする請求項3記載の内開き障子の開度設定装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1乃至
図7は、本発明に係る開度設定装置1(以下、「本発明装置1」と言う)の第1実施形態を示している。このうち
図4は、本発明装置1を内開きタイプの障子2に装着した状態を示した平面図であって、障子2の下方を内側(開閉のための揺動を行わせる側:例えば建物内部)とし、上方を外側(障子2を揺動によっては移動させない領域:例えば建物外部)としている。
【0016】
この
図4から明らかなように、本発明装置1は、障子2に対して取り付けるアーム受け器3と、障子2を取り囲んでその開閉揺動を保持する障子枠4に対して取り付けるアーム保持器5とを有している。
本発明装置1の一方の構成であるアーム受け器3には遊嵌支軸10が設けられており、この遊嵌支軸10の軸心まわりに遊嵌部11(
図2、
図3等参照)が回転自在に保持され
ている。これに対し、本発明装置1の他方の構成であるアーム保持器5にはアーム支軸12が設けられており、このアーム支軸12の軸心まわりに開度制限アーム13が揺動自在に保持されている。
【0017】
そして本発明装置1は、これらアーム受け器3とアーム保持器5とを、障子2と障子枠4との間で振り分けるに際して、遊嵌支軸10とアーム支軸12との軸心が互いに平行するように関連付けさせるものとする。
なお、
図4では、動作軸を鉛直方向へ向けた蝶番15により障子2が障子枠4に取り付けられたものとしてあり、障子2が鉛直方向の軸回りに揺動支持されたものを例示している。すなわち、障子2は、いわゆる「横開きタイプ」とされている。
【0018】
ただ、障子2は水平方向の軸回りに揺動支持すること(いわゆる「縦開きタイプ」とすること)も可能であるし、また蝶番15ではなく、辷り出し装置(図示略)によって揺動支持されるものとしてもよい。
まず、アーム保持器5について説明する。
このアーム保持器5(
図1〜
図3及び
図6参照)は、前記したようにアーム支軸12及び開度制限アーム13を有しているのに加え、アーム支軸12を障子枠4の内面側に取り付けて開度制限アーム13の揺動が障子枠4の内方側で行われるようにするための取付ブラケット17を有している。
【0019】
本第1実施形態は障子2が横開きタイプなので、アーム支軸12は障子2の揺動軸(蝶番15の動作軸)と平行するようにその軸心を鉛直方向に向けてあり、したがって開度制限アーム13は水平揺動するものとしてある。
また、障子枠4の内方側(
図3の右側)で障子2を開閉させると、障子枠4の下枠4a上を障子2が通過することになる。これに対応させるため、アーム支軸12及び開度制限アーム13は、障子2の下端よりも低位となるように配置させて障子2との接触干渉を避けてある。
【0020】
開度制限アーム13は、長さの固定された(非伸縮性の)ものであって、帯条材により形成したり中実又は中空の棒材により形成したりすることができる。本第1実施形態では帯条材を採用し、帯平面(長方形断面の長辺側)が上下面となり、厚さ方向面(長方形断面の短辺側)が起立した側面となるように用いてある。
この開度制限アーム13には、アーム長手方向の揺動側端部に上方へ突出する抜け止め突起18が設けられている。この抜け止め突起18の作用については後述する。
【0021】
また、この開度制限アーム13におけるアーム長手方向の中途部には、少なくとも1個のロック係合部19が設けられている。このロック係合部19は、本第1実施形態では円形開口の貫通孔としているが、角形の開口形状を採用してもよいし、開口を上に向けた非貫通の凹部としてもよい。このロック係合部19の作用についても後述する。
なお、本第1実施形態では、開度制限アーム13におけるアーム長手方向の基端部にアーム支軸12を挿通させる軸孔を設けて、開度制限アーム13とアーム支軸12との間を回転自在としている。しかし、開度制限アーム13とアーム支軸12を固定したうえで、取付ブラケット17とアーム支軸12との間を回転自在に保持させるような構造を採用することも可能である。
【0022】
取付ブラケット17の具体的な構造については、取付相手となる障子枠4の構造に合わせて適宜変更可能である。本第1実施形態で例示した障子枠4(
図3参照)では、下枠4aの内方側に水平なレール桟4bが付設されたものとしたので、取付ブラケット17はこのレール桟4b上にネジ止め可能な平板状のものとした。この他、取付ブラケット17には、L型アングル材を用いたものやクランプ構造を備えたものなどを採用することもできる。
【0023】
次に、アーム受け器3について説明する。
このアーム受け器3(
図1乃至
図3参照)は、器具本体25と、この器具本体25を障子2の内方側面に取り付けるための取付ブラケット26と、を有したものであって、器具本体25に、前記した遊嵌支軸10(
図4、
図5等参照)及び遊嵌部11が設けられている。
【0024】
本第1実施形態は障子2が横開きタイプなので、遊嵌支軸10は、アーム保持器5のアーム支軸12と同様にその軸心を鉛直方向へ向けるものとされる。
取付ブラケット26については、遊嵌部11をアーム保持器5の開度制限アーム13に対して嵌合可能な配置にできる点(障子2の下框2aに取付可能にする点)を満たせば、殊更、構造的に限定されるわけではない。本第1実施形態では板素材をL形に折り曲げたものを採用して、立ち上がり片26aに取付孔27を設け、水平片26bによって器具本体25を支持するようにしている。
【0025】
図5(b)(c)及び
図6に示すように、遊嵌支軸10は、その上部軸端が器具本体25の底部を貫通して器具内へ入り込む配置として設けられており、この遊嵌支軸10の下端部(器具本体25の下方)に遊嵌部11が保持されている。
遊嵌支軸10には器具本体25の器具内でナット等の抜け止め具28が嵌め付けられることにより、器具本体25に対する回転自在な状態が保持されると共に、器具本体25からの脱落が防止されるようになっている。
【0026】
本第1実施形態では遊嵌支軸10と遊嵌部11とが一体形成されて、これらが一緒に器具本体25に対して回転自在とされる構造を示してある。しかしこれに限らず、遊嵌支軸10と遊嵌部11とを別体で形成してもよく、別体とする場合には遊嵌支軸10と遊嵌部11との相互間で回転自在にする構造を採用することもできる。
遊嵌部11の保持高さは、アーム保持器5の開度制限アーム13と同じ高さとなるようにするが、これに伴い、遊嵌部11は障子2の下端より低くなる(
図3参照)。ただ、障子2を開閉させるときも遊嵌部11が障子枠4と接触干渉することはないので、遊嵌部11における上記のような高さ方向の配置に関して何ら問題はない。
【0027】
遊嵌部11は開口29を生じさせた環形状に形成されている。この開口29内には、開度制限アーム13が摺動自在となる状態で嵌合可能とされる。開度制限アーム13は水平に設けられていることから、遊嵌部11の開口29は水平方向に貫通している。従って、遊嵌部11が遊嵌支軸10の軸心まわりで回転するときには環形状(開口29)の向きが360°旋回することになる。
【0028】
この遊嵌部11の回転により、障子2を開閉させた際の開度制限アーム13の水平揺動に合わせて開口29が自在に旋回し、開度制限アーム13との嵌合関係及び摺動関係を円滑に保持できるものである。
本第1実施形態では、アーム保持器5の開度制限アーム13が断面長方形の帯条材により形成されたものとしてあることに伴い、遊嵌部11の開口29は、横長の長方形を基本形として形成されている。なお、開度制限アーム13が丸棒材などにより形成されているのであれば、遊嵌部11の開口29も円形等とすればよい。
【0029】
なお、本第1実施形態の遊嵌部11では、開口29の長辺中央部に上方へ凹んだ副開口30が付加されることによって、開口29が凸型の開口形状を呈したものとされている(
図3参照)。この副開口30の作用については後述する。
器具本体25にはロック機構32が内蔵されている(
図5参照)。
図7は、ロック機構32を理解し易いように分解して示した斜視図である。この
図7から明らかなように、ロック機構32は、中空部を備えた筒状のストッパ軸35に対して丸棒状のロック軸36が挿通されることで二重軸状に構成される複合軸体37を核にしたものである。
【0030】
そして、このロック機構32は、複合軸体37のうち、ロック軸36を動作させるためのロック操作部38と、複合軸体37のうち、ストッパ軸35を動作させるための内部入力部39及び外部入力部40とを有している。
まず複合軸体37について説明する。この複合軸体37は、ベース板部42と起立板部43とを有してL型に形成された連動体44に対して、ベース板部42をストッパ軸35が突き抜ける状態となるようにして、溶接などにより固着されたものとなっている。
【0031】
連動体44のベース板部42は、内方側へ向けられる先端部が幅広に拡大されており、この先端部下面が内部入力部39からの操作力を受ける「内操作カム面」として作用する。また連動体44の起立板部43には、外方側へ向けられる側面にカム片45が背負わされており、このカム片45の下面が外部入力部40からの操作力を受ける「外操作カム面
」として作用する。
【0032】
ストッパ軸35の中空部は、上部側に形成された大径部35aと下部側に形成された小径部35bとが相互連通して成る段付き孔構造とされている。これに対してロック軸36は、ストッパ軸35の大径部35aに嵌合可能な同等径のスライドガイド部36aと、ストッパ軸35の小径部35bに嵌合可能な同等径の先端部36bと、を有する段付き軸構造になっている。
【0033】
このようなロック軸36は、スライドガイド部36aがストッパ軸35の大径部35a内をガイドされつつ摺動することにより、先端部36bがストッパ軸35の小径部35bから出たり入ったりするようになっている。
なお、スライドガイド部36aが大径部35aと小径部35bとの間の段差部に係合することで、ロック軸36はそれより下方への摺動ストロークが制限されることになる。このときロック軸36の先端部36bはストッパ軸35の下端から下方へ突出するように設定されている。
【0034】
一方で、スライドガイド部36aが大径部35aから上方脱出しない範囲でロック軸36を引き上げることにより、ロック軸36の先端部36bをストッパ軸35の下端から突出しない状態に収納することができるようになっている。
次にロック操作部38について説明する。このロック操作部38は、ロック軸36に対し、スライドガイド部36aから先端部36bとは軸方向の反対側(
図7の上方)へ延びる操作杆部36cが設けられていることにより構成されている。
【0035】
操作杆部36cは器具本体25の上部を突き抜けて上方へ突出しており、器具本体25を突き抜けた操作杆部36cの上端部に、操作の容易さを考慮して円盤形の操作端46が設けられている。
操作杆部36cは、スライドガイド部36aと同径に形成することもできるが、ストッパ軸35に対するロック軸36の摺動抵抗を可及的に小さく抑える意味で、スライドガイド部36aよりも径小に形成するのが好ましい。
【0036】
これらに加えて、本第1実施形態では、
図5(b)及び(c)に示すように、アーム受け器3の遊嵌支軸10を中空軸に形成してあると共に、この中空部が遊嵌部11の副開口30及び開口29内へも連通するようにしてある。
そして、遊嵌支軸10の中空部内に複合軸体37を挿通させてある。すなわち、複合軸体37のストッパ軸35及びロック軸36は、遊嵌支軸10に対してそれぞれ同軸の関係を保持しつつ各別に軸方向移動(摺動)すると共に、ストッパ軸35と遊嵌支軸10との間が相対回転するようになっている。
【0037】
またストッパ軸35は、最も下降したときの軸下端が、遊嵌部11の副開口30内へは突き出すが、開口29内までには及ばない配置となるように設定してある。
このようなロック操作部38では、操作端46を引き上げ操作しない限り、ロック軸36はストッパ軸35内で下降した状態が保持されることになる。そのため、遊嵌部11に嵌合された開度制限アーム13(
図6参照)に対して、その上面にロック軸36の先端部36bが乗る状態になる。
【0038】
そして、遊嵌部11内を開度制限アーム13が摺動するとき(すなわち、障子2が開閉動作されたとき)には、ロック軸36の先端部36bに対して開度制限アーム13に設けられたロック係合部19が合致することがあり、この合致時にはロック軸36の先端部36bがロック係合部19に係合する(嵌り込む)ようになる。
これにより、開度制限アーム13は遊嵌部11内を摺動することができなくなるので、障子2は開閉動しない状態にロックされる。このとき、障子2が少しだけ開放された状態となるように設定しておけばよい(100mm程度の開度とするのが好適である)。
【0039】
一方で、操作端46を引き上げ操作してロック軸36を上昇させると、ロック軸36の先端部36はストッパ軸35の下端から突出しない状態に収納される。そのため、ロック軸36の先端部36bが開度制限アーム13のロック係合部19に係合していたときであっても、ロック係合部19からロック軸36の先端部36bは確実に引き抜かれて非接触状態になる。
【0040】
これにより、開度制限アーム13は遊嵌部11内を摺動自在な状態へと解放されることになり、障子2を自由に開閉させることができる。
しかし、前記したようにストッパ軸35の軸下端は遊嵌部11の副開口30内へ突き出しているので、障子2をそれ以上、開かせようとしても、ストッパ軸35の軸下端に開度制限アーム13の抜け止め突起18(
図6参照)が係合して、開度制限アーム13が遊嵌部11から脱出することはない。
【0041】
従って、ロック軸36の先端部36bと開度制限アーム13のロック係合部19との係合が解除されているとはいえ、障子2が過度に開度を広げるようにはならない。ましてや、障子2が全開にされることも決してない。
このように、ロック操作部38は、ロック軸36を遊嵌部11に嵌合された開度制限アーム13に対して係合状態にするか、又は非係合状態にするか(要するに、障子2を設定された小開度状態と全閉状態との間で開閉自在にするか、或いは設定された小開度状態にロックするか)について、切り替え可能なものとなっている。
【0042】
なお、本第1実施形態では、ロック操作部38による操作が軽快に行え、しかも繰り返し使用が確実に行えるようにするために、次の措置を採用した。
すなわち、
図5(b)及び(c)に示すように、ロック軸36には、操作杆部36c(
図7参照)の部分に第1バネ47を外挿してある。この第1バネ47は、スライドガイド部36a(
図7参照)と器具本体25の内部天井との上下間で弾発力を強めた状態に圧縮させてある。そのため、ロック軸36は、そのスライドガイド部36aがストッパ軸35の大径部35aと小径部35bとの間の段差部に係合し、ロック軸36の軸下端がストッパ軸35の下端から突出する状態が付勢されるようになっている。
【0043】
また遊嵌支軸10には、器具本体25内へ突き出した部分に第2バネ48を外挿してある。この第2バネ48は、器具本体25の底部(遊嵌支軸10の抜け止め具28)と連動体44のベース板部42との上下間で弾発力を強めた状態に圧縮させてある。そのため、連動体44は、ストッパ軸35と共に押し上げ付勢されるようになっている。
次に、内部入力部39について説明する。この内部入力部39は、
図7に示すように、ストッパ軸35と一体に固着された連動体44のベース板部42に対し、その下面に前方カム52が当接するように設けられていることにより構成されている。
【0044】
前方カム52は、90°の回転により、連動体44のベース板部42を押し上げたり、押し上げ前の高さ位置に戻したりするように設定されている。連動体44のベース板部42を押し上げた際には、一緒に上昇するストッパ軸35の軸下端が、遊嵌部11内に嵌合した開度制限アーム13の抜け止め突起18(
図6参照)と係合しない高さへと退避させることができる。これにより、開度制限アーム13を遊嵌部11から脱出させることができ、障子2を、小開度を超えて全開させることができる。
【0045】
この前方カム52には、障子2の内方側へ向けられるボス部53が設けられており、このボス部53に、操作ハンドル54のハンドル軸先端部と係合する伝動孔55が形成されている。
従って、伝動孔55に操作ハンドル54のハンドル軸先端部を係合させ、この操作ハンドル54を回転操作することで、前方カム52を回転させ、連動体44と共にストッパ軸35を上下動させることができる。
【0046】
なお、このような障子2の全開は、障子2の外面の窓ふきやメンテナンスを行う際に必要とされるものであって、元来、日常的な使用を目的にしたものではない。そこで、本第1実施形態では、器具本体25の内方を向く面に、必要に応じて簡単に剥ぎ取りできるようにした樹脂製の保護カバー58を取り付け、操作ハンドル54を覆ってある。
この保護カバー58は、半透明や着色透明としておき、カバー内に操作ハンドル54が格納されている状況を外から視認できるようにしておくのが好適である。
【0047】
また、操作ハンドル54の頭部面にも、伝動孔55と同じ形状、大きさの第2伝動孔59を設けておき、保護カバー58にはこの第2伝動孔59に対応する部分に切り欠きを形成させて、カバー外から第2伝動孔59が露出するようにしてある。
これにより、第2伝動孔59に対応した六角レンチなどの専用工具を所持する作業者の
みが、内部入力部39を操作できるようになる。しかも、いちいち保護カバー58を剥ぎ取ったり取り外したりする必要がなく、迅速に操作が行えて至便となる。
【0048】
このように、内部入力部39は、ストッパ軸35を、遊嵌部11に嵌合された開度制限アーム13の抜け止め具18に係合させる状態(遊嵌部11からの開度制限アーム13の脱出を阻止する抜け止め状態)と、ストッパ軸35を、遊嵌部11に嵌合された開度制限アーム13の抜け止め具18に係合させない状態(遊嵌部11から開度制限アーム13の脱出を許容する解放状態)とを、切り替え可能なものとなっている。要するに、障子2の開放動作を、小開度までで制限するか或いは全開にさせるかの切り替えができる。
【0049】
次に、外部入力部40について説明する。この外部入力部40は、ストッパ軸35と一体に固着された連動体44のカム片45に対し、その下面に後方カム60が当接するように設けられていることにより構成されている。
後方カム60は、90°の回転により、連動体44のカム片45を押し上げたり、押し上げ前の高さ位置に戻したりするように設定されている。カム片45を押し上げた際には、連動体44と一緒に上昇するストッパ軸35の軸下端が、遊嵌部11内に嵌合した開度制限アーム13の抜け止め突起18(
図6参照)と係合しない高さへと退避させることができる。
【0050】
すなわち、内部入力部39の場合と同様に、開度制限アーム13を遊嵌部11から脱出させることができ、障子2を、小開度を超えて全開させることができる。
この後方カム60でも、障子2の外方側へ向けられるボス部61が設けられており、このボス部61に、操作ハンドル62のハンドル軸先端部と係合する伝動孔63が形成されている。
【0051】
従って、伝動孔63に操作ハンドル62のハンドル軸先端部を係合させ、この操作ハンドル62を回転操作することで、障子2の外方側からの離隔操作によって後方カム60を回転させ、連動体44と共にストッパ軸35を上下動させることができる。
なお、外部入力部40は、障子2の外方(例えば建物の外)へ向けて設けられるものであって、障子2をよほど大きく開放させない限り、障子2の内方側からこの外部入力部40を操作することはできない。
【0052】
すなわち、この外部入力部40を操作できるのは、非常時の救助作業者や、建物の外装工事業者、メンテナンス作業者など、障子2に対してその外方側から近寄ることができる者に限られる。そのため、本来ならば、操作ハンドル62と後方カム60とは一体的に連結する構造とすればよい。
しかしながら、外部入力部40(後方カム60)と操作ハンドル62との間には障子2の厚さに相当する距離が介在する(
図3参照)。そのため、このことに起因して、障子2の形体や障子枠4の形体などの諸事情との関係で、後方カム60の伝動孔63と操作ハンドル62のハンドル軸との軸心に上下方向や左右方向のズレが生じ、両者の軸心を一直線に連結できないような場合も、ごく稀ではあるが発生するおそれがある。
【0053】
そこで、このような場合に対処するため、後方カム60の伝動孔63を正六角形などの角穴とし、操作ハンドル62のハンドル軸先端部には、伝動孔63(角穴)内に生じている周方向の内隅部に係合して相対回転不能に嵌合する継ぎ手端66を設けるようにするのが好適である。
この場合、継ぎ手端66は、ハンドル軸の先端部からその直径に略等しい長さ位置に軸周りを一周するくびれを設けて、玉形に形成されたものとしておく。このようにすることで、外部入力部40の伝動孔63(角穴)内での継ぎ手端66の連結角度を自在に変更できることになる、そのため、後方カム60の伝動孔63と操作ハンドル62のハンドル軸との軸心にズレが生じていた場合でも、両者の連結が可能となる。
【0054】
以上、詳述したところから明らかなように、本発明装置1では、アーム受け器3が備える遊嵌部11を回転自在に保持させてある。そのため、この遊嵌部11の回転により、障子2を開閉させた際の開度制限アーム13の水平揺動に合わせて開口29が自在に旋回し、開度制限アーム13との嵌合関係及び摺動関係を円滑に保持できるものであり、また同時に、開度制限アーム13についてはシングルアームとして簡潔構造を採用できる(複数
本の折れ曲がりリンク構造にする必要がない)ものである。
【0055】
要するに、これらによって本発明装置1は、内開き窓などの内開きタイプとされた障子2への実施が可能になっている。
また、アーム受け器3に対してロック操作部38を設けて、開度制限アーム13のロック係合部19に対するロック軸36の係合状態と非係合状態とを切り替え操作できるようにしている。このようなことから、本発明装置1は、内開き窓などの内開きタイプとされた障子2へ実施した際においても、内開きタイプの障子2を小さな開き角度で停止保持させたり、内側からの操作や外側からの操作によって簡単に全開させたりできる。
【0056】
なお、障子2を全開させるに際して、内部入力部39の操作によりストッパ軸35を軸移動させるときと、外部入力部40の操作によりストッパ軸35を軸移動させるときとでは、連動体44を前方カム52で動作させるか又は後方カム60で動作させるかの選択になっている。
そのため、本発明装置1でも、先願調整器(特許文献1のもの)と同様に、内部入力部39と外部入力部40との間で伝動系の縁が切れた構成であり、いずれの操作も軽快に行えるという利点がある。
【0057】
ところで、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
例えば、本発明装置1は、
図8に示すように、開度制限アーム13の揺動が
図4の場合とは左右反対になるようにしてアーム保持器5を配置することも可能である。
また本発明装置1は、遊嵌支軸10及びアーム支軸12が水平方向に向く状態として障子2と障子枠4との間に設けることで、
図9に示すように、開度制限アーム13を縦方向面に沿って揺動させること(いわゆる縦使いにすること)も可能である。この場合、アーム保持器5ではアーム支軸12に対する開度制限アーム13の揺れ角(支軸とアームとの交差角の変位量)にある程度のゆとりを持たせるようにし、またアーム受け器3では遊嵌部11と開度制限アーム13との嵌め合い関係にある程度のゆとりを持たせるようにするのが好適である。
【0058】
開度制限アーム13において、ロック係合部19は2個以上設けてもよい。このようにすることで、障子2をロックする小開度位置を複数箇所に設定できることになる。
内部入力部39や外部入力部40によるストッパ軸35の軸移動構造(障子2を全開させるために採用する伝動構造)は、カム機構を採用するものに限定されるものではなく、例えば歯車機構(ラック歯を用いるものを含む)やリンク機構などを採用してもよい。
【0059】
また、内部入力部39と外部入力部40との伝動系を縁切りする点についても、限定されるわけではない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1乃至
図7は、本発明に係る開度設定装置1(以下、「本発明装置1」と言う)の第1実施形態を示している。このうち
図4は、本発明装置1を内開きタイプの障子2に装着した状態を示した平面図であって、障子2の下方を内側(開閉のための揺動を行わせる側:例えば建物内部)とし、上方を外側(障子2を揺動によっては移動させない領域:例えば建物外部)としている。
【0014】
この
図4から明らかなように、本発明装置1は、障子2に対して取り付けるアーム受け器3と、障子2を取り囲んでその開閉揺動を保持する障子枠4に対して取り付けるアーム保持器5とを有している。
本発明装置1の一方の構成であるアーム受け器3には遊嵌支軸10が設けられており、この遊嵌支軸10の軸心まわりに遊嵌部11(
図2、
図3等参照)が回転自在に保持されている。これに対し、本発明装置1の他方の構成であるアーム保持器5にはアーム支軸12が設けられており、このアーム支軸12の軸心まわりに開度制限アーム13が揺動自在に保持されている。
【0015】
そして本発明装置1は、これらアーム受け器3とアーム保持器5とを、障子2と障子枠4との間で振り分けるに際して、遊嵌支軸10とアーム支軸12との軸心が互いに平行するように関連付けさせるものとする。
なお、
図4では、動作軸を鉛直方向へ向けた蝶番15により障子2が障子枠4に取り付けられたものとしてあり、障子2が鉛直方向の軸回りに揺動支持されたものを例示している。すなわち、障子2は、いわゆる「横開きタイプ」とされている。
【0016】
ただ、障子2は水平方向の軸回りに揺動支持すること(いわゆる「縦開きタイプ」とすること)も可能であるし、また蝶番15ではなく、辷り出し装置(図示略)によって揺動支持されるものとしてもよい。
まず、アーム保持器5について説明する。
このアーム保持器5(
図1〜
図3及び
図6参照)は、前記したようにアーム支軸12及び開度制限アーム13を有しているのに加え、アーム支軸12を障子枠4の内面側に取り付けて開度制限アーム13の揺動が障子枠4の内方側で行われるようにするための取付ブラケット17を有している。
【0017】
本第1実施形態は障子2が横開きタイプなので、アーム支軸12は障子2の揺動軸(蝶番15の動作軸)と平行するようにその軸心を鉛直方向に向けてあり、したがって開度制限アーム13は水平揺動するものとしてある。
また、障子枠4の内方側(
図3の右側)で障子2を開閉させると、障子枠4の下枠4a上を障子2が通過することになる。これに対応させるため、アーム支軸12及び開度制限アーム13は、障子2の下端よりも低位となるように配置させて障子2との接触干渉を避けてある。
【0018】
開度制限アーム13は、長さの固定された(非伸縮性の)ものであって、帯条材により形成したり中実又は中空の棒材により形成したりすることができる。本第1実施形態では帯条材を採用し、帯平面(長方形断面の長辺側)が上下面となり、厚さ方向面(長方形断面の短辺側)が起立した側面となるように用いてある。
この開度制限アーム13には、アーム長手方向の揺動側端部に上方へ突出する抜け止め突起18が設けられている。この抜け止め突起18の作用については後述する。
【0019】
また、この開度制限アーム13におけるアーム長手方向の中途部には、少なくとも1個のロック係合部19が設けられている。このロック係合部19は、本第1実施形態では円形開口の貫通孔としているが、角形の開口形状を採用してもよいし、開口を上に向けた非
貫通の凹部としてもよい。このロック係合部19の作用についても後述する。
なお、本第1実施形態では、開度制限アーム13におけるアーム長手方向の基端部にアーム支軸12を挿通させる軸孔を設けて、開度制限アーム13とアーム支軸12との間を回転自在としている。しかし、開度制限アーム13とアーム支軸12を固定したうえで、取付ブラケット17とアーム支軸12との間を回転自在に保持させるような構造を採用することも可能である。
【0020】
取付ブラケット17の具体的な構造については、取付相手となる障子枠4の構造に合わせて適宜変更可能である。本第1実施形態で例示した障子枠4(
図3参照)では、下枠4aの内方側に水平なレール桟4bが付設されたものとしたので、取付ブラケット17はこのレール桟4b上にネジ止め可能な平板状のものとした。この他、取付ブラケット17には、L型アングル材を用いたものやクランプ構造を備えたものなどを採用することもできる。
【0021】
次に、アーム受け器3について説明する。
このアーム受け器3(
図1乃至
図3参照)は、器具本体25と、この器具本体25を障子2の内方側面に取り付けるための取付ブラケット26と、を有したものであって、器具本体25に、前記した遊嵌支軸10(
図4、
図5等参照)及び遊嵌部11が設けられている。
【0022】
本第1実施形態は障子2が横開きタイプなので、遊嵌支軸10は、アーム保持器5のアーム支軸12と同様にその軸心を鉛直方向へ向けるものとされる。
取付ブラケット26については、遊嵌部11をアーム保持器5の開度制限アーム13に対して嵌合可能な配置にできる点(障子2の下框2aに取付可能にする点)を満たせば、殊更、構造的に限定されるわけではない。本第1実施形態では板素材をL形に折り曲げたものを採用して、立ち上がり片26aに取付孔27を設け、水平片26bによって器具本体25を支持するようにしている。
【0023】
図5(b)(c)及び
図6に示すように、遊嵌支軸10は、その上部軸端が器具本体25の底部を貫通して器具内へ入り込む配置として設けられており、この遊嵌支軸10の下端部(器具本体25の下方)に遊嵌部11が保持されている。
遊嵌支軸10には器具本体25の器具内でナット等の抜け止め具28が嵌め付けられることにより、器具本体25に対する回転自在な状態が保持されると共に、器具本体25からの脱落が防止されるようになっている。
【0024】
本第1実施形態では遊嵌支軸10と遊嵌部11とが一体形成されて、これらが一緒に器具本体25に対して回転自在とされる構造を示してある。しかしこれに限らず、遊嵌支軸10と遊嵌部11とを別体で形成してもよく、別体とする場合には遊嵌支軸10と遊嵌部11との相互間で回転自在にする構造を採用することもできる。
遊嵌部11の保持高さは、アーム保持器5の開度制限アーム13と同じ高さとなるようにするが、これに伴い、遊嵌部11は障子2の下端より低くなる(
図3参照)。ただ、障子2を開閉させるときも遊嵌部11が障子枠4と接触干渉することはないので、遊嵌部11における上記のような高さ方向の配置に関して何ら問題はない。
【0025】
遊嵌部11は開口29を生じさせた環形状に形成されている。この開口29内には、開度制限アーム13が摺動自在となる状態で嵌合可能とされる。開度制限アーム13は水平に設けられていることから、遊嵌部11の開口29は水平方向に貫通している。従って、遊嵌部11が遊嵌支軸10の軸心まわりで回転するときには環形状(開口29)の向きが360°旋回することになる。
【0026】
この遊嵌部11の回転により、障子2を開閉させた際の開度制限アーム13の水平揺動に合わせて開口29が自在に旋回し、開度制限アーム13との嵌合関係及び摺動関係を円滑に保持できるものである。
本第1実施形態では、アーム保持器5の開度制限アーム13が断面長方形の帯条材により形成されたものとしてあることに伴い、遊嵌部11の開口29は、横長の長方形を基本形として形成されている。なお、開度制限アーム13が丸棒材などにより形成されているのであれば、遊嵌部11の開口29も円形等とすればよい。
【0027】
なお、本第1実施形態の遊嵌部11では、開口29の長辺中央部に上方へ凹んだ副開口30が付加されることによって、開口29が凸型の開口形状を呈したものとされている(
図3参照)。この副開口30の作用については後述する。
器具本体25にはロック機構32が内蔵されている(
図5参照)。
図7は、ロック機構32を理解し易いように分解して示した斜視図である。この
図7から明らかなように、ロック機構32は、中空部を備えた筒状のストッパ軸35に対して丸棒状のロック軸36が挿通されることで二重軸状に構成される複合軸体37を核にしたものである。
【0028】
そして、このロック機構32は、複合軸体37のうち、ロック軸36を動作させるためのロック操作部38と、複合軸体37のうち、ストッパ軸35を動作させるための内部入力部39及び外部入力部40とを有している。
まず複合軸体37について説明する。この複合軸体37は、ベース板部42と起立板部43とを有してL型に形成された連動体44に対して、ベース板部42をストッパ軸35が突き抜ける状態となるようにして、溶接などにより固着されたものとなっている。
【0029】
連動体44のベース板部42は、内方側へ向けられる先端部が幅広に拡大されており、この先端部下面が内部入力部39からの操作力を受ける「内操作カム面」として作用する。また連動体44の起立板部43には、外方側へ向けられる側面にカム片45が背負わされており、このカム片45の下面が外部入力部40からの操作力を受ける「外操作カム面」として作用する。
【0030】
ストッパ軸35の中空部は、上部側に形成された大径部35aと下部側に形成された小径部35bとが相互連通して成る段付き孔構造とされている。これに対してロック軸36は、ストッパ軸35の大径部35aに嵌合可能な同等径のスライドガイド部36aと、ストッパ軸35の小径部35bに嵌合可能な同等径の先端部36bと、を有する段付き軸構造になっている。
【0031】
このようなロック軸36は、スライドガイド部36aがストッパ軸35の大径部35a内をガイドされつつ摺動することにより、先端部36bがストッパ軸35の小径部35bから出たり入ったりするようになっている。
なお、スライドガイド部36aが大径部35aと小径部35bとの間の段差部に係合することで、ロック軸36はそれより下方への摺動ストロークが制限されることになる。このときロック軸36の先端部36bはストッパ軸35の下端から下方へ突出するように設定されている。
【0032】
一方で、スライドガイド部36aが大径部35aから上方脱出しない範囲でロック軸36を引き上げることにより、ロック軸36の先端部36bをストッパ軸35の下端から突出しない状態に収納することができるようになっている。
次にロック操作部38について説明する。このロック操作部38は、ロック軸36に対し、スライドガイド部36aから先端部36bとは軸方向の反対側(
図7の上方)へ延びる操作杆部36cが設けられていることにより構成されている。
【0033】
操作杆部36cは器具本体25の上部を突き抜けて上方へ突出しており、器具本体25を突き抜けた操作杆部36cの上端部に、操作の容易さを考慮して円盤形の操作端46が設けられている。
操作杆部36cは、スライドガイド部36aと同径に形成することもできるが、ストッパ軸35に対するロック軸36の摺動抵抗を可及的に小さく抑える意味で、スライドガイド部36aよりも径小に形成するのが好ましい。
【0034】
これらに加えて、本第1実施形態では、
図5(b)及び(c)に示すように、アーム受け器3の遊嵌支軸10を中空軸に形成してあると共に、この中空部が遊嵌部11の副開口30及び開口29内へも連通するようにしてある。
そして、遊嵌支軸10の中空部内に複合軸体37を挿通させてある。すなわち、複合軸体37のストッパ軸35及びロック軸36は、遊嵌支軸10に対してそれぞれ同軸の関係を保持しつつ各別に軸方向移動(摺動)すると共に、ストッパ軸35と遊嵌支軸10との間が相対回転するようになっている。
【0035】
またストッパ軸35は、最も下降したときの軸下端が、遊嵌部11の副開口30内へは
突き出すが、開口29内までには及ばない配置となるように設定してある。
このようなロック操作部38では、操作端46を引き上げ操作しない限り、ロック軸36はストッパ軸35内で下降した状態が保持されることになる。そのため、遊嵌部11に嵌合された開度制限アーム13(
図6参照)に対して、その上面にロック軸36の先端部36bが乗る状態になる。
【0036】
そして、遊嵌部11内を開度制限アーム13が摺動するとき(すなわち、障子2が開閉動作されたとき)には、ロック軸36の先端部36bに対して開度制限アーム13に設けられたロック係合部19が合致することがあり、この合致時にはロック軸36の先端部36bがロック係合部19に係合する(嵌り込む)ようになる。
これにより、開度制限アーム13は遊嵌部11内を摺動することができなくなるので、障子2は開閉動しない状態にロックされる。このとき、障子2が少しだけ開放された状態となるように設定しておけばよい(100mm程度の開度とするのが好適である)。
【0037】
一方で、操作端46を引き上げ操作してロック軸36を上昇させると、ロック軸36の先端部36はストッパ軸35の下端から突出しない状態に収納される。そのため、ロック軸36の先端部36bが開度制限アーム13のロック係合部19に係合していたときであっても、ロック係合部19からロック軸36の先端部36bは確実に引き抜かれて非接触状態になる。
【0038】
これにより、開度制限アーム13は遊嵌部11内を摺動自在な状態へと解放されることになり、障子2を自由に開閉させることができる。
しかし、前記したようにストッパ軸35の軸下端は遊嵌部11の副開口30内へ突き出しているので、障子2をそれ以上、開かせようとしても、ストッパ軸35の軸下端に開度制限アーム13の抜け止め突起18(
図6参照)が係合して、開度制限アーム13が遊嵌部11から脱出することはない。
【0039】
従って、ロック軸36の先端部36bと開度制限アーム13のロック係合部19との係合が解除されているとはいえ、障子2が過度に開度を広げるようにはならない。ましてや、障子2が全開にされることも決してない。
このように、ロック操作部38は、ロック軸36を遊嵌部11に嵌合された開度制限アーム13に対して係合状態にするか、又は非係合状態にするか(要するに、障子2を設定された小開度状態と全閉状態との間で開閉自在にするか、或いは設定された小開度状態にロックするか)について、切り替え可能なものとなっている。
【0040】
なお、本第1実施形態では、ロック操作部38による操作が軽快に行え、しかも繰り返し使用が確実に行えるようにするために、次の措置を採用した。
すなわち、
図5(b)及び(c)に示すように、ロック軸36には、操作杆部36c(
図7参照)の部分に第1バネ47を外挿してある。この第1バネ47は、スライドガイド部36a(
図7参照)と器具本体25の内部天井との上下間で弾発力を強めた状態に圧縮させてある。そのため、ロック軸36は、そのスライドガイド部36aがストッパ軸35の大径部35aと小径部35bとの間の段差部に係合し、ロック軸36の軸下端がストッパ軸35の下端から突出する状態が付勢されるようになっている。
【0041】
また遊嵌支軸10には、器具本体25内へ突き出した部分に第2バネ48を外挿してある。この第2バネ48は、器具本体25の底部(遊嵌支軸10の抜け止め具28)と連動体44のベース板部42との上下間で弾発力を強めた状態に圧縮させてある。そのため、連動体44は、ストッパ軸35と共に押し上げ付勢されるようになっている。
次に、内部入力部39について説明する。この内部入力部39は、
図7に示すように、ストッパ軸35と一体に固着された連動体44のベース板部42に対し、その下面に前方カム52が当接するように設けられていることにより構成されている。
【0042】
前方カム52は、90°の回転により、連動体44のベース板部42を押し上げたり、押し上げ前の高さ位置に戻したりするように設定されている。連動体44のベース板部42を押し上げた際には、一緒に上昇するストッパ軸35の軸下端が、遊嵌部11内に嵌合した開度制限アーム13の抜け止め突起18(
図6参照)と係合しない高さへと退避させることができる。これにより、開度制限アーム13を遊嵌部11から脱出させることがで
き、障子2を、小開度を超えて全開させることができる。
【0043】
この前方カム52には、障子2の内方側へ向けられるボス部53が設けられており、このボス部53に、操作ハンドル54のハンドル軸先端部と係合する伝動孔55が形成されている。
従って、伝動孔55に操作ハンドル54のハンドル軸先端部を係合させ、この操作ハンドル54を回転操作することで、前方カム52を回転させ、連動体44と共にストッパ軸35を上下動させることができる。
【0044】
なお、このような障子2の全開は、障子2の外面の窓ふきやメンテナンスを行う際に必要とされるものであって、元来、日常的な使用を目的にしたものではない。そこで、本第1実施形態では、器具本体25の内方を向く面に、必要に応じて簡単に剥ぎ取りできるようにした樹脂製の保護カバー58を取り付け、操作ハンドル54を覆ってある。
この保護カバー58は、半透明や着色透明としておき、カバー内に操作ハンドル54が格納されている状況を外から視認できるようにしておくのが好適である。
【0045】
また、操作ハンドル54の頭部面にも、伝動孔55と同じ形状、大きさの第2伝動孔59を設けておき、保護カバー58にはこの第2伝動孔59に対応する部分に切り欠きを形成させて、カバー外から第2伝動孔59が露出するようにしてある。
これにより、第2伝動孔59に対応した六角レンチなどの専用工具を所持する作業者のみが、内部入力部39を操作できるようになる。しかも、いちいち保護カバー58を剥ぎ取ったり取り外したりする必要がなく、迅速に操作が行えて至便となる。
【0046】
このように、内部入力部39は、ストッパ軸35を、遊嵌部11に嵌合された開度制限アーム13の抜け止め具18に係合させる状態(遊嵌部11からの開度制限アーム13の脱出を阻止する抜け止め状態)と、ストッパ軸35を、遊嵌部11に嵌合された開度制限アーム13の抜け止め具18に係合させない状態(遊嵌部11から開度制限アーム13の脱出を許容する解放状態)とを、切り替え可能なものとなっている。要するに、障子2の開放動作を、小開度までで制限するか或いは全開にさせるかの切り替えができる。
【0047】
次に、外部入力部40について説明する。この外部入力部40は、ストッパ軸35と一体に固着された連動体44のカム片45に対し、その下面に後方カム60が当接するように設けられていることにより構成されている。
後方カム60は、90°の回転により、連動体44のカム片45を押し上げたり、押し上げ前の高さ位置に戻したりするように設定されている。カム片45を押し上げた際には、連動体44と一緒に上昇するストッパ軸35の軸下端が、遊嵌部11内に嵌合した開度制限アーム13の抜け止め突起18(
図6参照)と係合しない高さへと退避させることができる。
【0048】
すなわち、内部入力部39の場合と同様に、開度制限アーム13を遊嵌部11から脱出させることができ、障子2を、小開度を超えて全開させることができる。
この後方カム60でも、障子2の外方側へ向けられるボス部61が設けられており、このボス部61に、操作ハンドル62のハンドル軸先端部と係合する伝動孔63が形成されている。
【0049】
従って、伝動孔63に操作ハンドル62のハンドル軸先端部を係合させ、この操作ハンドル62を回転操作することで、障子2の外方側からの離隔操作によって後方カム60を回転させ、連動体44と共にストッパ軸35を上下動させることができる。
なお、外部入力部40は、障子2の外方(例えば建物の外)へ向けて設けられるものであって、障子2をよほど大きく開放させない限り、障子2の内方側からこの外部入力部40を操作することはできない。
【0050】
すなわち、この外部入力部40を操作できるのは、非常時の救助作業者や、建物の外装工事業者、メンテナンス作業者など、障子2に対してその外方側から近寄ることができる者に限られる。そのため、本来ならば、操作ハンドル62と後方カム60とは一体的に連結する構造とすればよい。
しかしながら、外部入力部40(後方カム60)と操作ハンドル62との間には障子2の厚さに相当する距離が介在する(
図3参照)。そのため、このことに起因して、障子2
の形体や障子枠4の形体などの諸事情との関係で、後方カム60の伝動孔63と操作ハンドル62のハンドル軸との軸心に上下方向や左右方向のズレが生じ、両者の軸心を一直線に連結できないような場合も、ごく稀ではあるが発生するおそれがある。
【0051】
そこで、このような場合に対処するため、後方カム60の伝動孔63を正六角形などの角穴とし、操作ハンドル62のハンドル軸先端部には、伝動孔63(角穴)内に生じている周方向の内隅部に係合して相対回転不能に嵌合する継ぎ手端66を設けるようにするのが好適である。
この場合、継ぎ手端66は、ハンドル軸の先端部からその直径に略等しい長さ位置に軸周りを一周するくびれを設けて、玉形に形成されたものとしておく。このようにすることで、外部入力部40の伝動孔63(角穴)内での継ぎ手端66の連結角度を自在に変更できることになる、そのため、後方カム60の伝動孔63と操作ハンドル62のハンドル軸との軸心にズレが生じていた場合でも、両者の連結が可能となる。
【0052】
以上、詳述したところから明らかなように、本発明装置1では、アーム受け器3が備える遊嵌部11を回転自在に保持させてある。そのため、この遊嵌部11の回転により、障子2を開閉させた際の開度制限アーム13の水平揺動に合わせて開口29が自在に旋回し、開度制限アーム13との嵌合関係及び摺動関係を円滑に保持できるものであり、また同時に、開度制限アーム13についてはシングルアームとして簡潔構造を採用できる(複数本の折れ曲がりリンク構造にする必要がない)ものである。
【0053】
要するに、これらによって本発明装置1は、内開き窓などの内開きタイプとされた障子2への実施が可能になっている。
また、アーム受け器3に対してロック操作部38を設けて、開度制限アーム13のロック係合部19に対するロック軸36の係合状態と非係合状態とを切り替え操作できるようにしている。このようなことから、本発明装置1は、内開き窓などの内開きタイプとされた障子2へ実施した際においても、内開きタイプの障子2を小さな開き角度で停止保持させたり、内側からの操作や外側からの操作によって簡単に全開させたりできる。
【0054】
なお、障子2を全開させるに際して、内部入力部39の操作によりストッパ軸35を軸移動させるときと、外部入力部40の操作によりストッパ軸35を軸移動させるときとでは、連動体44を前方カム52で動作させるか又は後方カム60で動作させるかの選択になっている。
そのため、本発明装置1でも、先願調整器(特許文献1のもの)と同様に、内部入力部39と外部入力部40との間で伝動系の縁が切れた構成であり、いずれの操作も軽快に行えるという利点がある。
【0055】
ところで、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
例えば、本発明装置1は、
図8に示すように、開度制限アーム13の揺動が
図4の場合とは左右反対になるようにしてアーム保持器5を配置することも可能である。
また本発明装置1は、遊嵌支軸10及びアーム支軸12が水平方向に向く状態として障子2と障子枠4との間に設けることで、
図9に示すように、開度制限アーム13を縦方向面に沿って揺動させること(いわゆる縦使いにすること)も可能である。この場合、アーム保持器5ではアーム支軸12に対する開度制限アーム13の揺れ角(支軸とアームとの交差角の変位量)にある程度のゆとりを持たせるようにし、またアーム受け器3では遊嵌部11と開度制限アーム13との嵌め合い関係にある程度のゆとりを持たせるようにするのが好適である。
【0056】
開度制限アーム13において、ロック係合部19は2個以上設けてもよい。このようにすることで、障子2をロックする小開度位置を複数箇所に設定できることになる。
内部入力部39や外部入力部40によるストッパ軸35の軸移動構造(障子2を全開させるために採用する伝動構造)は、カム機構を採用するものに限定されるものではなく、例えば歯車機構(ラック歯を用いるものを含む)やリンク機構などを採用してもよい。
【0057】
また、内部入力部39と外部入力部40との伝動系を縁切りする点についても、限定されるわけではない。