【課題】厚みが薄く、面外の曲げ剛性が小さい床面材を用いた場合においても、粘弾性体による防振性を確実かつ効率的に発揮させるとともに、施工時における作業性の向上を図ることができる床構造及び床パネルを提供する。
【解決手段】本発明を適用した床構造1は、梁材2と、梁材2の延在する梁方向Xと略直交する根太方向Yに延在する根太材3と、床面材6とを備え、梁材2は、高さ方向Zにおいて互いに対向して設けられた梁上部2a及び梁下部2bと、梁上部2a及び梁下部2bに連接された梁中間部2cとを有し、根太材3は、高さ方向Zにおいて互いに対向して設けられた上部フランジ3a及び下部フランジ3bと、上部フランジ3a及び下部フランジ3bに連接されたウェブ3cとを有し、根太材3の根太方向Yにおける端部3eは、梁上部2aと梁下部2bとの間に設けられ、粘弾性体4を介して梁材2と接合されることを特徴とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3の開示技術によれば、床面材と梁との間に防振材等の粘弾性体を配置することで、床面材に生じる面外曲げ方向の振動が、床面材から横架材(梁)、下階の壁、下階空間等への伝達を抑制できるとされている。
【0008】
しかし、例えば薄板軽量形鋼造等のように、床面材として比較的厚みが薄く、面外の曲げ剛性が小さい材料が用いられる場合がある。この場合、特許文献1〜3の開示技術では、床面材上に衝撃力等が作用した際に、作用点の近くに粘弾性体が配置されていなければ、粘弾性体に力が十分に伝達されず、粘弾性体による防振性が十分に発揮されない。このため、配置された粘弾性体の数量に対して得られる防振性が乏しくなる。これにより、特許文献1〜3の開示技術では、粘弾性体の防振性を確実かつ効率的に発揮させることが難しい。
【0009】
また、特許文献1〜2の開示技術では、受け材や固定部材を用いて粘弾性体が配置される。このため、粘弾性体を配置するために受け材や固定部材を設置する必要があり、施工時における作業性が低下する。また、特許文献3の開示技術では、粘弾性体が、各床パネルの四隅に配置される。このため、比較的小さいピッチで粘弾性体を配置する必要があり、施工時における作業性が低下する。
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであって、その目的とするところは、厚みが薄く、面外の曲げ剛性が小さい床面材を用いた場合においても、粘弾性体による防振性を確実かつ効率的に発揮させるとともに、施工時における作業性の向上を図ることができる床構造及び床パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係る床構造は、壁材の上端に設けられる床構造であって、壁材の上端に配置された1つ又は複数の梁材と、前記梁材の延在する梁方向と略直交する根太方向に延在する1つ又は複数の根太材と、前記梁材及び前記根太材の上に配置される床面材とを備え、前記梁材は、梁方向及び根太方向と略直交する高さ方向において互いに対向して設けられた板状の梁上部及び板状の梁下部と、前記梁上部から前記梁下部まで延伸して前記梁上部及び前記梁下部に連接された板状の梁中間部とを有し、前記根太材は、高さ方向において互いに対向して設けられた板状の上部フランジ及び板状の下部フランジと、前記上部フランジから前記下部フランジまで延伸して前記上部フランジ及び前記下部フランジに連接された板状のウェブとを有し、前記根太材の根太方向における端部は、前記梁上部と前記梁下部との間に設けられ、粘弾性体を介して前記梁材と接合されることを特徴とする。
【0012】
第2発明に係る床構造は、第1発明において、前記根太材の端部は、少なくとも前記下部フランジが前記粘弾性体を介して前記梁下部と接合されることを特徴とする。
【0013】
第3発明に係る床構造は、第1発明又は第2発明において、前記根太材は、前記梁上部と前記梁下部との間に設けられた補強部を有し、前記補強部は、根太方向において互いに対向して設けられた、前記梁中間部に近い側に位置する板状の外側フランジ及び前記梁中間部から遠い側に位置する板状の内側フランジと、前記外側フランジから前記内側フランジまで延伸して前記外側フランジ及び前記内側フランジに連接される補強ウェブとを有し、少なくとも前記外側フランジが前記粘弾性体を介して前記梁中間部と接合されることを特徴とする。
【0014】
第4発明に係る床構造は、第1発明〜第3発明の何れかにおいて、前記粘弾性体は、接着性又は粘着性を有することを特徴とする。
【0015】
第5発明に係る床構造は、第1発明〜第4発明の何れかにおいて、前記根太材の端部は、前記根太材、前記粘弾性体、及び前記梁材を貫通するねじにより、前記梁材と接合されることを特徴とする。
【0016】
第6発明に係る床パネルは、第1発明〜第5発明の何れかの床構造を備える薄板軽量形鋼造の床パネルであって、前記梁材は、根太方向において並列に配置された一対の梁部を有し、前記根太材は、梁方向において並列に配置された一対の側根太と、前記一対の側根太の間に配置された1つ又は複数の床根太とを有し、前記一対の側根太及び前記床根太は、前記一対の梁部の間に配置され、1つ又は複数の前記床根太の根太方向における床根太端部の一部又は全部、及び前記一対の側根太の根太方向における側根太端部の少なくとも何れかは、前記粘弾性体を介して前記梁部と接合されることを特徴とする。
【0017】
第7発明に係る床パネルは、第6発明において、前記根太材は、前記一対の側根太の間に配置された1つ又は複数の天井根太を有し、前記天井根太は、前記床面材と離間して配置され、前記天井根太における高さ方向の長さは、前記床根太における高さ方向の長さよりも短いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1発明〜第5発明によれば、根太材の端部が、粘弾性体を介して梁材と接合される。このとき、床面材上に作用する力は、床面材から根太材に伝達され、根太材の端部に集中する。このため、床面材と梁材との間に粘弾性体を配置した場合に比べて、床面材上で力が作用する位置に関わらず、根太材と梁材との間に配置された粘弾性体へ確実に力を伝えることができる。これにより、厚みが薄く、面外の曲げ剛性が小さい床面材を用いた場合においても、配置した全ての粘弾性体の防振性を確実かつ効率的に発揮させることが可能となる。
【0019】
第1発明〜第5発明によれば、粘弾性体は、根太材の端部に配置される。このため、床面材等の下に粘弾性体を配置する場合に比べて、容易に配置することができる。これにより、施工時における作業性の向上を図ることが可能となる。
【0020】
特に、第2発明〜第5発明によれば、根太材の端部は、少なくとも下部フランジが粘弾性体を介して梁下部と接合される。このため、粘弾性体を配置する場所を最小限に抑えることができ、施工時における作業性をさらに向上させることが可能となる。
【0021】
特に、第3発明〜第5発明によれば、補強部が粘弾性体を介して梁中間部と接合される。このため、根太材の上部フランジ及び下部フランジに加えて、補強部にも粘弾性体を配置することができ、床構造の設計に応じて粘弾性体の配置の自由度を高めることが可能となる。さらに、補強部は根太材の上部フランジ及び下部フランジに比べて、梁材との当接面積を大きくとることができるため、粘弾性体の設置量を容易に調整することが可能となる。
【0022】
特に、第4発明、第5発明によれば、粘弾性体は、接着性又は粘着性を有することにより、粘弾性体が梁材と根太材との間に密着した状態で配置される。このため、根太材の端部に集中した応力が粘弾性体に効率的に伝達され、粘弾性体が安定して変形する状態となり、粘弾性体の防振性が発揮され易くなる。
【0023】
特に、第5発明によれば、根太材及び梁材は、ねじにより接合される。このため、根太材と梁材との間に配置された粘弾性体には、ねじの締め付けによる圧縮力が作用することにより、粘弾性体が圧縮固定される。これにより、粘弾性体が圧縮固定されない場合に比べ、床面材に衝撃力等が作用した際の粘弾性体の変形量が小さくなり、振動の最大変位も小さくなるため、粘弾性体の防振性をより確実に発揮させることが可能となる。
【0024】
特に、第6発明、第7発明によれば、床パネルが、粘弾性体を介して梁材と接合された根太材を備える。このため、粘弾性体の防振性を確実かつ効率的に発揮させることができる床パネルを、予め工場等で製作することができる。これにより、施工時における作業性をさらに向上させることが可能となる。
【0025】
特に、第7発明によれば、床パネルに天井根太が配置される。このため、予め製作された床パネルを施工時に用いることで、天井の取り付けを容易に行うことができる。これにより、天井の施工時における作業性を向上させることが可能となる。さらに、天井根太は、床面材と離間して配置される。このため、床面材の振動が天井根太を介して、天井に直接伝達することを防ぐことができる。上記に加え、床面材の振動が下階に伝わる際、粘弾性体を介した伝達経路に限定されるため、粘弾性体によって確実に振動を低減させることができ、下階空間への振動伝達をより低減させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を適用した床構造1を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において壁材の上端における下階壁横枠81に沿って、梁材2が延在する方向を梁方向Xとし、梁方向Xと略直交し、根太材3が延在する方向を根太方向Yとし、梁方向X及び根太方向Yと略直交する方向を高さ方向Zとする。
【0028】
本発明を適用した床構造1は、
図1に示すように、主に薄板軽量形鋼造(スチールハウス)における構造の一部に用いられ、壁材(下階壁8)の上端に設けられる。本発明を適用した床構造1は、例えば下階壁8における梁方向Xに延在する下階壁横枠81と、上階壁7における梁方向Xに延在する上階壁横枠71との間に設けられ、上階壁横枠71及び下階壁横枠81と接合する。
【0029】
薄板軽量形鋼造は、壁材等として薄板軽量形鋼製の枠材を用い、必要に応じて部分的に木製枠や構造面材を薄板軽量形鋼製の枠材に組み合わせて構成される。薄型軽量形鋼製の枠材として、主に板厚2.3mm未満の溝形鋼又はリップ溝形鋼等が用いられる。
【0030】
本発明を適用した床構造1は、梁方向Xに延在して下階壁8の上端に配置された1つ又は複数の梁材2と、根太方向Yに延在する1つ又は複数の根太材3と、梁材2及び根太材3の上に配置される床面材6とを備える。梁材2は、下階壁横枠81と上階壁横枠71との間に配置される。根太材3の根太方向Yにおける端部3eは、下階壁横枠81と上階壁横枠71との間に梁材2を介して設けられる。梁材2、根太材3の端部3e、及び床面材6は、下階壁8における高さ方向Zに延在する下階壁縦枠82と、上階壁7における高さ方向Zに延在する上階壁縦枠72との間に設けられる。
【0031】
本発明を適用した床構造1は、床面材6として、主に構造用合板やパーティクルボード等の木質系面材、窯業系面材、石こうボード等を積層し、最上層に仕上げ材を設けた構造が用いられる。なお、床面材6に用いられる材料及びの材料の積層数は、任意である。
【0032】
本発明を適用した床構造1は、梁材2及び根太材3として、主に板厚2.3mm未満の溝形鋼又はリップ溝形鋼等が用いられる。
【0033】
梁材2は、高さ方向Zにおいて互いに対向して設けられた矩形板状の梁上部2a及び矩形板状の梁下部2bと、梁上部2aから梁下部2bまで延伸して梁上部2a及び梁下部2bに連接された矩形板状の梁中間部2cとを有する。梁中間部2cにおける高さ方向Zの長さは、例えば梁上部2aにおける根太方向Yの長さよりも長く、梁下部2bにおける根太方向Yの長さよりも長い。
【0034】
梁材2は、梁中間部2cの高さ方向Zにおける両端部に、梁上部2a及び梁下部2bをそれぞれ溶接して形成されるほか、例えばロールフォーミング加工等を用いて、梁上部2a、梁下部2b、及び梁中間部2cが一体に形成されてもよい。
【0035】
根太材3は、高さ方向Zにおいて互いに対向して設けられた矩形板状の上部フランジ3a及び矩形板状の下部フランジ3bと、上部フランジ3aから下部フランジ3bまで延伸して上部フランジ3a及び下部フランジ3bに連接された矩形板状のウェブ3cとを有する。ウェブ3cにおける高さ方向Zの長さは、例えば上部フランジ3aにおける梁方向Xの長さよりも長く、下部フランジ3bにおける梁方向Xの長さよりも長く、梁材2の梁中間部2cにおける高さ方向Zの長さよりも短い。
【0036】
根太材3は、ウェブ3cの高さ方向Zにおける両端部に、上部フランジ3a及び下部フランジ3bをそれぞれ溶接して形成されるほか、例えばロールフォーミング加工等を用いて、上部フランジ3a、下部フランジ3b、及びウェブ3cが一体に形成されてもよい。
【0037】
根太材3は、例えば梁上部2aと梁下部2bとの間に設けられた補強部31を有する。
補強部31は、
図1に示すように、上部フランジ3aと下部フランジ3bとの間の領域からウェブ3cを介して離間した領域に形成されるほか、例えば
図2に示すように、上部フランジ3aと下部フランジ3bとの間の領域に形成されてもよい。
【0038】
補強部31は、主に上階壁縦枠72又は下階壁縦枠82と同程度の板厚の溝形鋼又はリップ溝形鋼等が用いられる。補強部31は、根太方向Yにおいて互いに対向して設けられた矩形板状の外側フランジ31a及び矩形板状の内側フランジ31bと、外側フランジ31aから内側フランジ31bまで延伸して外側フランジ31a及び内側フランジ31bに連接される補強ウェブ31cとを有する。外側フランジ31aは、梁中間部2cに近い側に位置し、内側フランジ31bは、梁中間部2cから遠い側に位置する。補強ウェブ31cは、例えばウェブ3cに接してもよい。補強ウェブ31cにおける根太方向Yの長さは、例えば外側フランジ31aにおける梁方向Xの長さよりも長く、内側フランジ31bにおける梁方向Xの長さよりも長い。補強ウェブ31cにおける高さ方向Zの長さは、ウェブ3cにおける高さ方向Zの長さよりも短いほか、例えば
図1に示す構成の場合、補強ウェブ31cにおける高さ方向Zの長さは、ウェブ3cにおける高さ方向Zの長さ以上でもよく、補強ウェブ31cが梁上部2a及び梁下部2bと接してもよい。
【0039】
補強部31は、補強ウェブ31cの根太方向Yにおける両端部に、外側フランジ31a及び内側フランジ31bをそれぞれ溶接して形成されるほか、例えばロールフォーミング加工等を用いて、外側フランジ31a、内側フランジ31b、及び補強ウェブ31cが一体に形成されてもよい。
【0040】
本発明を適用した床構造1は、根太材3の端部3eが、梁上部2aと梁下部2bとの間に設けられる。本発明を適用した床構造1は、上部フランジ3aが梁上部2aと接合され、下部フランジ3bが梁下部2bと接合され、外側フランジ31aが梁中間部2cと接合される。なお、「端部3e」の示す範囲は、梁上部2aと梁下部2bとの間に設けられた上部フランジ3aの一部、下部フランジ3bの一部、ウェブ3cの一部、及び補強部31の一部を含む。
【0041】
本発明を適用した床構造1は、根太材3の端部3eが、粘弾性体4を介して梁材2と接合される。すなわち、根太材3の端部3eは、上部フランジ3a、下部フランジ3b、及び補強部31における外側フランジ31aの少なくとも何れかが、粘弾性体4を介して梁材2と接合される。根太材3の端部3eは、例えば少なくとも下部フランジ3bが粘弾性体4を介して梁下部2bと接合されるほか、例えば少なくとも補強部31における外側フランジ31aが粘弾性体4を介して梁中間部2cと接合されてもよい。
【0042】
粘弾性体4は、0.5mm〜2.0mm程度の厚さで配置される。粘弾性体4は、例えばアクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、オレフィン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ブタン系ゴム、及びブチル系ゴムの少なくとも何れかを含み、複数の材料が積層されてもよい。
【0043】
粘弾性体4は、例えば接着剤又は粘着剤が用いられ、接着性又は粘着性を有する。このとき、接着剤又は粘着剤は、固化した状態又は固化しない状態で梁材2と根太材3との間に密着した状態で配置される。粘弾性体4は、接着剤又は粘着剤が用いられる場合、梁材2又は根太材3に塗布することで配置されるほか、例えばゴム状等の材料が用いられる場合、梁材2と根太材3との間に挟み込むように配置されてもよい。
【0044】
本発明を適用した床構造1は、
図3に示すように、梁材2等がねじ5により接合される。本発明を適用した床構造1は、例えば
図14に示すように、ねじ5の代わりにボルト及びナット等の止着材51が用いられてもよい。なお、
図3に配置された粘弾性体4の数及び主な配置場所、並びに、ねじ5の数は一例である。
【0045】
図4(a)は、
図3における4A−4Aの断面図を示し、
図4(b)は、
図4(a)における4B−4Bの平面図を示し、
図4(c)は、
図4(a)における4C−4Cの平面図を示す。根太材3は、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、下部フランジ3b、粘弾性体4、梁下部2b、及び下階壁横枠81を貫通するねじ5により、梁材2と接合される。根太材3は、例えば
図4(a)及び
図4(c)に示すように、上部フランジ3a、粘弾性体4、梁上部2a、及び床面材6を貫通するねじ5により、梁材2と接合される。このとき、床面材6上に作用する力は、床面材6から根太材3に伝達され、梁材2と根太材3との間に配置された粘弾性体4に集中し、特に、下部フランジ3bと梁下部2bとの間に配置された粘弾性体4に集中する。このため、粘弾性体4には、床面材6上に作用する力、及び、ねじ5の締め付けによる圧縮力が作用する。
【0046】
図5(a)は、
図3における5A−5Aの断面図を示し、
図5(b)は、
図5(a)における5B−5Bの平面図を示す。根太材3は、例えば
図5に示すように、ウェブ3c、及び補強ウェブ31cを貫通するねじ5により、ウェブ3cと補強ウェブ31cとが接合される。補強部31は、外側フランジ31a、粘弾性体4、及び梁中間部2cを貫通するねじ5により、梁材2と接合される。このとき、床面材6に作用する力は、床面材6から根太材3に伝達され、梁材2と根太材3との間に配置された粘弾性体4に集中し、外側フランジ31aと梁中間部2cとの間に配置された粘弾性体4にはせん断力として作用する。このため、粘弾性体4には、床面材6に作用する力によるせん断力、及び、ねじ5の締め付けによる圧縮力が作用する。
【0047】
次に、本発明を適用した床パネル10を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0048】
本発明を適用した床パネル10は、
図6に示すように、上述した床構造1を備える。本発明を適用した床パネル10は、主に薄板軽量形鋼造における構造の一部に用いられる。本発明を適用した床パネル10は、予め工場等で製作することができ、施工時に壁材等と容易に組み合わせることができる。なお、本発明を適用した床パネル10のうち、床面材6については、施工時に取り付けてもよい。
【0049】
本発明を適用した床パネル10は、梁材2が根太方向Yにおいて並列に配置され梁方向Xに延在する一対の梁部21を有する。本発明を適用した床パネル10は、根太材3が、梁方向Xにおいて並列に配置されて根太方向Yに延在する一対の側根太32と、一対の側根太32の間に配置されて根太方向Yに延在する1つ又は複数の床根太33とを有する。一対の側根太32及び床根太33は、一対の梁部21の間に配置される。
【0050】
本発明を適用した床パネル10は、梁部21、側根太32、及び床根太33として、主に板厚2.3mm未満の溝形鋼又はリップ溝形鋼等が用いられる。
【0051】
梁部21は、高さ方向Zにおいて互いに対向して設けられた矩形板状の梁部上部21a及び矩形板状の梁部下部21bと、梁部上部21aから梁部下部21bまで延伸して梁部上部21a及び梁部下部21bに連接された矩形板状の梁部中間部21cとを有する。梁部中間部21cにおける高さ方向Zの長さは、例えば梁部上部21aにおける根太方向Yの長さよりも長く、梁部下部21bにおける根太方向Yの長さよりも長い。
【0052】
梁部21は、梁部中間部21cの高さ方向Zにおける両端部に、梁部上部21a及び梁部下部21bをそれぞれ溶接して形成されるほか、例えばロールフォーミング加工等を用いて、梁部上部21a、梁部下部21b、及び梁部中間部21cが一体に形成されてもよい。
【0053】
側根太32は、高さ方向Zにおいて互いに対向して設けられた矩形板状の側根太上部フランジ32a及び矩形板状の側根太下部フランジ32bと、側根太上部フランジ32aから側根太下部フランジ32bまで延伸して側根太上部フランジ32a及び側根太下部フランジ32bに連接された矩形板状の側根太ウェブ32cとを有する。側根太ウェブ32cにおける高さ方向Zの長さは、例えば側根太上部フランジ32aにおける梁方向Xの長さよりも長く、側根太下部フランジ32bにおける梁方向Xの長さよりも長く、梁部21の梁部中間部21cにおける高さ方向Zの長さよりも短い。
【0054】
側根太32は、側根太ウェブ32cの高さ方向Zにおける両端部に、側根太上部フランジ32a及び側根太下部フランジ32bをそれぞれ溶接して形成されるほか、例えばロールフォーミング加工等を用いて、側根太上部フランジ32a、側根太下部フランジ32b、及び側根太ウェブ32cが一体に形成されてもよい。
【0055】
床根太33は、高さ方向Zにおいて互いに対向して設けられた矩形板状の床根太上部フランジ33a及び矩形板状の床根太下部フランジ33bと、床根太上部フランジ33aから床根太下部フランジ33bまで延伸して床根太上部フランジ33a及び床根太下部フランジ33bに連接された矩形板状の床根太ウェブ33cとを有する。床根太ウェブ33cにおける高さ方向Zの長さは、例えば床根太上部フランジ33aにおける梁方向Xの長さよりも長く、床根太下部フランジ33bにおける梁方向Xの長さよりも長く、梁部21の梁部中間部21cにおける高さ方向Zの長さよりも短い。
【0056】
床根太33は、床根太ウェブ33cの高さ方向Zにおける両端部に、床根太上部フランジ33a及び床根太下部フランジ33bをそれぞれ溶接して形成されるほか、例えばロールフォーミング加工等を用いて、床根太上部フランジ33a、床根太下部フランジ33b、及び床根太ウェブ33cが一体に形成されてもよい。
【0057】
本発明を適用した床パネル10は、側根太32の側根太端部32e及び床根太33の床根太端部33eが、梁部上部21aと梁部下部21bとの間に設けられる。本発明を適用した床パネル10は、側根太上部フランジ32a及び床根太上部フランジ33aが梁部上部21aと接合され、側根太下部フランジ32b及び床根太下部フランジ33bが梁部下部21bと接合される。
【0058】
図7は、
図6における7A−7Aの断面図を示し、側根太32の側根太端部32e及び床根太33の床根太端部33eの位置に対応する。本発明を適用した床パネル10は、
図7に示すように、1つ又は複数の床根太33における床根太端部33eの一部又は全部、及び一対の側根太32の側根太端部32eの少なくとも何れかが、粘弾性体4を介して梁部21と接合される。すなわち、側根太32の側根太端部32eにおける、側根太上部フランジ32a、側根太下部フランジ32b、及び側根太32に接する補強部31の外側フランジ31a、並びに、床根太33の床根太端部33eにおける、床根太上部フランジ33a、床根太下部フランジ33b、及び床根太33に接する補強部31の外側フランジ31aの少なくとも何れかが、粘弾性体4を介して梁部21と接合される。
【0059】
側根太32の側根太端部32eは、例えば少なくとも側根太下部フランジ32bが粘弾性体4を介して梁部下部21bと接合されるほか、例えば少なくとも補強部31の外側フランジ31aが粘弾性体4を介して梁部中間部21cと接合されてもよい。床根太33の床根太端部33eは、例えば少なくとも床根太下部フランジ33bが粘弾性体4を介して梁部下部21bと接合されるほか、例えば少なくとも補強部31の外側フランジ31aが粘弾性体4を介して梁部中間部21cと接合されてもよい。
【0060】
本発明を適用した床パネル10は、側根太32及び床根太33が、ねじ5により粘弾性体4を介して梁部21と接合される。本発明を適用した床パネル10は、側根太32と梁部21との間、又は、床根太33と梁部21との間に粘弾性体4が設けられる場合、ねじ5の締め付けによる圧縮力が、粘弾性体4に作用する。
【0061】
本発明を適用した床パネル10は、例えば
図8に示すように、根太材3が1つ又は複数の天井根太34を有し、天井根太34が、一対の側根太32の間に配置される。天井根太34は、床根太33と略平行で根太方向Yに延在する。天井根太34は、例えば梁方向Xにおいて床根太33と交互に配置される。天井根太34は、天井9と床面材6との間に配置される。天井根太34は、床面材6と離間して配置され、天井9を支持する。天井根太34として、主に板厚2.3mm未満の溝形鋼又はリップ溝形鋼等が用いられる。
【0062】
図9は、
図8における9A−9Aの断面図を示す。本発明を適用した床パネル10は、
図9に示すように、天井根太34は、高さ方向Zにおいて互いに対向して設けられた矩形板状の天井根太上部フランジ34a及び矩形板状の天井根太下部フランジ34bと、天井根太上部フランジ34aから天井根太下部フランジ34bまで延伸して天井根太上部フランジ34a及び天井根太下部フランジ34bに連接された矩形板状の天井根太ウェブ34cとを有する。天井根太ウェブ34cにおける高さ方向Zの長さは、例えば天井根太上部フランジ34aにおける梁方向Xの長さよりも長く、天井根太下部フランジ34bにおける梁方向Xの長さよりも長く、側根太ウェブ32cにおける高さ方向Zの長さよりも短く、床根太ウェブ33cにおける高さ方向Zの長さよりも短い。
【0063】
天井根太34は、天井根太ウェブ34cの高さ方向Zにおける両端部に、天井根太上部フランジ34a及び天井根太下部フランジ34bをそれぞれ溶接して形成されるほか、例えばロールフォーミング加工等を用いて、天井根太上部フランジ34a、天井根太下部フランジ34b、及び天井根太ウェブ34cが一体に形成されてもよい。
【0064】
本実施形態を適用した床パネル10は、例えば天井根太ウェブ34cに取り付けられて高さ方向Zに延在する支持部材91により、梁方向Xに延在する野縁受け92が天井根太34に支持される。野縁受け92は、根太方向Yに延在する複数の野縁93に取り付けられることで、野縁93と接続された下階の天井面となる天井面材94を支持する。これにより、天井根太34は天井9を支持する状態を保持する。
【0065】
なお、例えば
図10に示すように、支持部材91は、天井根太34の天井根太下部フランジ34bの梁方向Xにおける先端部に取り付けられてもよい。また、例えば
図11に示すように、野縁受け92は、根太方向Yに延在してもよく、この場合、梁方向Xに延在する野縁93に野縁受け92が取り付けられる。また、天井9については、施工時に取り付けてもよい。
【0066】
本発明を適用した床構造1によれば、根太材3の端部3eが、粘弾性体4を介して梁材2と接合される。このとき、本発明を適用した床構造1は、床面材6上に作用する力を、床面材6から根太材3に伝達し、根太材3の端部3eに集中させるため、根太材3の端部3eに配置された粘弾性体4へ確実に力を伝えることができる。すなわち、本発明を適用した床構造1は、床面材6と梁材2との間に粘弾性体4を配置した場合に比べて、床面材6上で力が作用する位置に関わらず、床面材6から根太材3に伝達された力が、根太材3の端部3eに配置された全ての粘弾性体4に伝達され易くなる。このため、配置した全ての粘弾性体4において十分な防振性が発揮される。これにより、厚みが薄く、面外の曲げ剛性が小さい床面材6を用いた場合においても、配置した全ての粘弾性体4の防振性を確実かつ効率的に発揮させることが可能となる。
【0067】
また、本発明を適用した床構造1によれば、粘弾性体4は、根太材3の端部3eに配置される。このため、床面材6等の下に粘弾性体4を配置する場合に比べて、容易に配置することができる。これにより、施工時における作業性の向上を図ることが可能となる。
【0068】
また、本発明を適用した床構造1によれば、根太材3の端部3eは、少なくとも下部フランジ3bが粘弾性体4を介して梁下部2bと接合される。このため、粘弾性体4を配置する場所を最小限に抑えることができ、施工時における作業性をさらに向上させることが可能となる。
【0069】
また、本発明を適用した床構造1によれば、補強部31が粘弾性体4を介して梁中間部2cと接合される。このため、根太材3の上部フランジ3a及び下部フランジ3bに加えて、補強部31にも粘弾性体4を配置することができ、本発明を適用した床構造1の設計に応じて粘弾性体4の配置の自由度を高めることが可能となる。さらに、補強部31は根太材3の上部フランジ3a及び下部フランジ3bに比べて、梁材2との当接面積を大きくとることができるため、粘弾性体4の設置量を容易に調整することが可能となる。
【0070】
また、本発明を適用した床構造1によれば、粘弾性体4は、接着性又は粘着性を有することにより、粘弾性体4が梁材2と根太材3との間に密着した状態で配置される。このため、根太材3の端部3eに集中した応力が粘弾性体4に効率的に伝達され、粘弾性体4が安定して変形する状態となり、粘弾性体4の防振性が発揮され易くなる。
【0071】
また、本発明を適用した床構造1によれば、根太材3及び梁材2は、ねじ5により接合される。このため、根太材3と梁材2との間に配置された粘弾性体4には、ねじ5の締め付けによる圧縮力が作用することにより、粘弾性体4が圧縮固定される。これにより、粘弾性体4が圧縮固定されない場合に比べ、床面材6に衝撃等が作用した際の粘弾性体4の変形量が小さくなり、振動の最大変位も小さくなるため、粘弾性体4の防振性をより確実に発揮させることが可能となる。
【0072】
また、本発明を適用した床パネル10によれば、床パネル10が、粘弾性体4を介して梁材2と接合された根太材3を備える。このため、粘弾性体4の防振性を確実かつ効率的に発揮させることができる床パネル10を、予め工場等で製作することができる。これにより、施工時における作業性をさらに向上させることが可能となる。
【0073】
また、本発明を適用した床パネル10によれば、床パネル10に天井根太34が配置される。このため、予め製作された床パネル10を施工時に用いることで、天井9の取り付けを容易に行うことができる。これにより、天井9の施工時における作業性を向上させることが可能となる。さらに、天井根太34は、床面材6と離間して配置される。このため、床面材6の振動が天井根太34を介して、天井9に直接伝達することを防ぐことができる。上記に加え、床面材6の振動が下階に伝わる際、粘弾性体4を介した伝達経路に限定されるため、粘弾性体4によって確実に振動を低減させることができ、下階空間への振動伝達をより低減させることが可能となる。
【0074】
なお、本発明を適用した床構造1によれば、例えば
図12に示すように、補強部31を有しなくてもよいほか、複数の根太材3の一部のみ補強部31を有してもよい。この場合においても、根太材3の端部3eは、梁材2の梁上部2aと梁下部2bとの間に設けられ、粘弾性体4を介して梁材2と接合される。このため、床面材6に作用する力を、粘弾性体4へ確実に伝えることができる。これにより、厚みが薄く、面外の曲げ剛性が小さい床面材6を用いた場合においても、配置した全ての粘弾性体4の防振性を確実かつ効率的に発揮させることが可能となる。
【0075】
なお、本発明を適用した床構造1によれば、例えば
図13に示すように、根太材3が上部フランジ3a、下部フランジ3b、及びウェブ3cに連接され、梁方向X及び高さ方向Zと平行な平面上に配置された矩形板状の側面3dを有してもよい。この場合、側面3dは、粘弾性体4を介して梁中間部2cと接合されてもよい。これにより、本発明を適用した床構造1は、補強部31を削減して部材数を少なくできるとともに、設計に応じて粘弾性体4の配置の自由度を高めることが可能となる。
【0076】
なお、本発明を適用した床構造1によれば、例えば
図14に示すように、薄板軽量形鋼造以外における構造の一部に用いられてもよい。本発明を適用した床構造1によれば、例えば梁材29としてH形鋼が用いられるほか、例えば
図15に示すように、梁材29及び根太材39の何れもH形鋼が用いられてもよい。この場合においても、根太材39の端部39eは、梁材29の梁上部29aと梁下部29bとの間に設けられ、粘弾性体4を介して梁材29と接合される。このため、床面材6に作用する力を、粘弾性体4へ確実に伝えることができる。これにより、厚みが薄く、面外の曲げ剛性が小さい床面材6を用いた場合においても、配置した全ての粘弾性体4の防振性を確実かつ効率的に発揮させることが可能となる。
【0077】
また、根太材39の端部39eは、少なくとも下部フランジ39bが粘弾性体4を介して梁下部29bと接合される。このため、粘弾性体4を配置する場所を最小限に抑えることができ、施工時における作業性をさらに向上させることが可能となる。なお、本発明を適用した床構造1は、設計に応じて根太材39の上部フランジ39aが粘弾性体4を介して梁上部29aと接合されてもよい。
【0078】
また、本発明を適用した床構造1は、根太材39の端部39eが、根太材39、粘弾性体4、及び梁材29を貫通する止着材51により、梁材29と接合される。止着材51は、例えばボルトとナットが用いられる。このとき、床面材6に作用する力は、梁材29と根太材39との間に配置された粘弾性体4に集中し、特に、下部フランジ39bと梁下部29bとの間に配置された粘弾性体4に集中する。このため、粘弾性体4には、止着材51の締め付けによる圧縮力が作用する。これにより、床面材6に衝撃力等が作用した際の粘弾性体4の変形量が小さくなり、振動の最大変位も小さくなるため、粘弾性体4の防振性をより確実に発揮させることが可能となる。
【0079】
なお、上述した実施形態では、梁方向Xを下階壁横枠81に沿った方向として説明したが、例えば、複数の下階壁横枠81が互いに交わる場合は、実施形態で説明した一方の下階壁横枠81と交わる他方の下階壁横枠81に沿った方向等を梁方向Xとしてもよい。
【実施例】
【0080】
次に、本実施形態を適用した床構造1の特性について、実施例及び比較例を挙げて詳細に説明する。
【0081】
本実施例において、本実施形態を適用した床構造1及び比較例の床構造における振動測定を実施した。本実施例は、
図16に示すように、インパルスハンマーと加速度ピックアップを用いた振動測定を実施した。各条件における試験体100をインパルスハンマーで加振し、加速度ピックアップで応答加速度信号を測定する。このとき、データレコーダは、パワーアンプで増幅させたインパルスハンマーの加振力信号を入力荷重として取得し、チャージアンプで増幅させた応答加速度信号を出力加速度として取得する。その後、出力加速度を入力荷重で除した値を、アクセレランス((m/s
2)/N)として算出し、各条件における防振性能を評価した。
【0082】
加速度ピックアップは、インパルスハンマーで試験体100を加振する位置の直下で、加振する面に対向する面に位置する測定点F1と、試験体100を支える柱に位置する測定点F2に設置した。測定点F1は、各条件における床構造を薄板軽量形鋼造に用いたとき、床面材の振動が下階の天井に伝わる程度を想定した防振性能の評価が可能となる。測定点F2は、各条件における床構造を薄板軽量形鋼造に用いたとき、床面材の振動が下階の壁に伝わる程度を想定した防振性能の評価が可能となる。
【0083】
振動測定に用いた試験体100は、
図17に示すように、根太方向Yにおいて並列に配置された一対の梁材102と、梁方向Xにおいて並列に配置された3つの根太材3とを備える。本実施例は、梁材102と根太材103とをねじを用いて接合するとき、粘弾性体を間に配置して接合するか否かを差分条件として、振動測定を実施した。粘弾性体は、ポリウレタン接着剤を用いた。
【0084】
図17(b)は、
図17(a)における17B枠の根太材103を示す拡大斜視図であり、
図17(c)は、
図17(a)における17C枠の根太材103を示す拡大斜視図である。粘弾性体を配置する場所として、
図17(b)及び
図17(c)に示すように、根太材103の端部103eにおける、上部フランジ103a面上の第1部分104a、下部フランジ103b面上の第2部分104b、及び、補強部131の外側フランジ131a面上の第3部分104cを設定した。なお、各部分104a、104b、104cは、3つの根太材103の両側の端部103eに設定する。
【0085】
本実施例における試験体100の振動測定は、参考例、実施例1、実施例2、及び実施例3の4条件について実施した。参考例は、粘弾性体を配置しない条件である。実施例1は、第2部分104bのみに粘弾性体を配置する条件である。実施例2は、第2部分104b及び第3部分104cに粘弾性体を配置する条件である。実施例3は、第1部分104a、第2部分104b、及び第3部分104cに粘弾性体を配置する条件である。
【0086】
【表1】
表1は、測定点F1における振動測定結果を示す表である。本実施例は、表1に示すように、試験体100の各条件における振動測定結果として、オクターブバンド中心周波数(16Hz、31.5Hz、63Hz、125Hz)に対応する測定値(アクセレランス)と、参考例の測定値に対する各条件の測定値の割合を示す参考例比(%)とを算出した。すなわち、参考例比の値が低いほど参考例に比べて測定値が小さいため、防振性能が優れた条件として判断することができる。
【0087】
実施例1は、16Hz、31.5Hz、63Hz、及び125Hzのオクターブバンド中心周波数において、参考例比がそれぞれ24%、75%、85%、及び67%であった。このため、実施例1は、各オクターブバンド中心周波数において、参考例よりも低い測定値を示した。
【0088】
実施例2は、16Hz、31.5Hz、63Hz、及び125Hzのオクターブバンド中心周波数において、参考例比がそれぞれ20%、65%、112%、及び64%であった。このため、実施例2は、16Hz、31.5Hz、及び125Hzのオクターブバンド中心周波数において、参考例よりも低い測定値を示した。
【0089】
実施例3は、16Hz、31.5Hz、63Hz、及び125Hzのオクターブバンド中心周波数において、参考例比がそれぞれ28%、77%、89%、及び94%であった。このため、実施例3は、各オクターブバンド中心周波数において、参考例よりも低い測定値を示した。
【0090】
【表2】
表2は、測定点F2における振動測定結果を示す表である。
【0091】
実施例1は、16Hz、31.5Hz、63Hz、及び125Hzのオクターブバンド中心周波数において、参考例比がそれぞれ74%、68%、40%、及び44%であった。このため、実施例1は、各オクターブバンド中心周波数において、参考例よりも低い測定値を示した。従って、実施例1は、各測定点F1、F2における各周波数帯域で、粘弾性体の防振性を発揮でき、特に、63Hz帯域において粘弾性体の優れた防振性を発揮できることを確認した。
【0092】
実施例2は、16Hz、31.5Hz、63Hz、及び125Hzのオクターブバンド中心周波数において、参考例比がそれぞれ43%、44%、62%、及び111%であった。このため、実施例2は、16Hz、31.5Hz、及び63Hzのオクターブバンド中心周波数において、参考例よりも低い測定値を示した。従って、実施例2は、各測定点F1、F2における16Hz及び31.5Hzの周波数帯域で、粘弾性体の防振性を発揮でき、特に、31.5Hz帯域において粘弾性体の優れた防振性を発揮できることを確認した。
【0093】
実施例3は、16Hz、31.5Hz、63Hz、及び125Hzのオクターブバンド中心周波数において、参考例比がそれぞれ26%、39%、53%、及び138%であった。このため、実施例3は、16Hz、31.5Hz、及び63Hzのオクターブバンド中心周波数において、参考例よりも低い測定値を示した。従って、実施例3は、各測定点F1、F2における16Hz、31.5Hz、及び63Hzの周波数帯域で、粘弾性体の防振性を発揮できることを確認した。
【0094】
本実施例によれば、粘弾性体を配置した実施例1、実施例2、及び実施例3は、粘弾性体を配置しない比較例に比べて、粘弾性体の防振性を発揮できることを確認した。このため、少なくとも下部フランジ103b面上の第2部分104bに粘弾性体を配置して梁材102と接合することで、粘弾性体の防振性を確実に発揮させることが可能となる。
【0095】
また、本実施例によれば、粘弾性体を配置する位置によって、粘弾性体の防振性を発揮できる周波数帯域が異なることを確認した。このため、床構造において低減したい振動数帯域に応じて、粘弾性体を配置する位置を設定することにより、状況に応じて適切な粘弾性体の防振性を発揮させることが可能となる。
【0096】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、上述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならない。