【課題】 本発明は、床仕上げ材を床下地材又は床下配設物の金属シート上に強固に接着一体化できる(接着性)と共に、床下地材又は床下配設物上に硬化性組成物の硬化物が残存するのを低減しつつ、床仕上げ材を床下地材又は床下配設物上から容易に剥離、除去する(剥離性)ことができる床構造体を提供する。
【解決手段】 本発明の床構造体は、床下地材と、上記床下地材上に敷設され且つ床仕上げ材本体と上記床仕上げ材本体の裏面に積層一体化された合成樹脂層とを含む床仕上げ材と、上記床下地材と上記床仕上げ材とを一体化している硬化物層とを含む床構造体であって、上記硬化物層は、変成シリコーン樹脂100質量部、グリシジル基を有する架橋性シリル化合物0.5〜8質量部、充填材60〜200質量部及びアミノ基由来の官能基を有する架橋性シリル化合物0〜0.3質量部を含有する硬化性組成物の硬化物を含むことを特徴とする。
硬化性組成物の粘度が、ブルックフィールド型粘度計を用いた23℃雰囲気下、ローターNo.5及び分速10回転の条件下での粘度が100000mPa以下であり、且つ、ブルックフィールド型粘度計を用いた23℃雰囲気下、ローターNo.5及び分速1回転の条件下での粘度と、ブルックフィールド型粘度計を用いた23℃雰囲気下、ローターNo.5及び分速10回転の条件下での粘度との比(ブルックフィールド型粘度計を用いた23℃雰囲気下、ローターNo.5及び分速1回転の条件下での粘度/ブルックフィールド型粘度計を用いた23℃雰囲気下、ローターNo.5及び分速10回転の条件下での粘度)が3以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の床構造体。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の床構造体の一例を具体的に説明する。床構造体Aは、床下地材1と、床下地材1上に敷設され且つ裏面に合成樹脂層が積層一体化されてなる床仕上げ材2と、床下地材1と床仕上げ材2とを一体化している硬化物層3とを含む。
【0021】
[床下地材]
床構造体Aを構成している床下地材1としては、特に限定されず、例えば、スレートボードなどのコンクリートを含む床下地材などが挙げられる。
【0022】
[床仕上げ材]
床下地材1上には床仕上げ材2が敷設一体化されている。床仕上げ材2は、
図1に示したように、床仕上げ材本体21と、上記床仕上げ材本体21の裏面に積層一体化された合成樹脂層22とを含む。
【0023】
床仕上げ材本体21としては、合板、ミディアム・デンシティ・ファイバーボード(MDF:Medium Density Fiberboard)などの木質材料、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、タイル、石材などからの材料から形成されたものが挙げられ、木質材料から形成された床仕上げ材本体が好ましい。
【0024】
合成樹脂層22としては、床仕上げ材に加えられた衝撃を吸収する衝撃吸収作用を有するものが好ましい。合成樹脂層22としては、例えば、ポリウレタン発泡シート、ポリエチレン発泡シート、ポリプロピレン発泡シートなどの合成樹脂発泡シート、熱可塑性エラストマーシートなどの衝撃吸収シートなどが挙げられ、ポリエチレン発泡シートが好ましい。
【0025】
衝撃吸収シートの裏面(床仕上げ材21とは反対側の面)に、透湿防止のために、合成樹脂製の非発泡シート23が積層一体化されていてもよい。このような非発泡シート23としては、例えば、不織布、ポリエチレン非発泡シートなどが挙げられ、不織布が好ましく、スパンボンド不織布がより好ましい。
【0026】
[硬化性組成物の硬化物層]
床下地材1と床仕上げ材2とは硬化性組成物の硬化物層3によって一体化されている。硬化性組成物は、変成シリコーン樹脂100質量部、グリシジル基を有する架橋性シリル化合物0.5〜8質量部、充填材60〜200質量部及びアミノ基由来の官能基を有する架橋性シリル化合物0〜0.3質量部を含有する。
【0027】
[変成シリコーン樹脂]
変成シリコーン樹脂は、加水分解性シリル基を有する重合体である。なお、変成シリコーン樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0028】
変成シリコーン樹脂の主鎖となる重合体としては、特に限定されず、例えば、ポリオキシアルキレン系重合体、ポリアルキル(メタ)アクリレート系重合体、オキシアルキレンブロックとアルキル(メタ)アクリレートブロックとを有するブロック共重合体などが挙げられ、ポリオキシアルキレン系重合体が好ましい。なお、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートをいう。
【0029】
ポリオキシアルキレン系重合体としては、主鎖が、一般式:−(R−O)n−(式中、Rは炭素数が1〜14のアルキレン基を表し、nは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましく挙げられる。ポリオキシアルキレン重合体の主鎖骨格は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0030】
ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド共重合体、及びポリプロピレンオキサイド−ポリブチレンオキサイド共重合体などが挙げられる。なかでも、ポリプロピレンオキサイドが好ましい。ポリプロピレンオキサイドによれば、硬化性組成物は接着性に優れる。
【0031】
ポリアルキル(メタ)アクリレート系重合体を構成しているアルキル(メタ)アクリレート成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、アルキル(メタ)アクリレートは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0032】
ポリアルキル(メタ)アクリレート系重合体としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリ2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0033】
オキシアルキレンブロックとアルキル(メタ)アクリレートブロックとを有するブロック共重合体において、オキシアルキレンブロックとは、一般式:−(R−O)n−(式中、Rは炭素数が1〜14のアルキレン基を表し、nは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有するブロックをいう。
【0034】
オキシアルキレンブロックとしては、エチレンオキサイドブロック、プロピレンオキサイドブロック、ブチレンオキサイドブロック、テトラメチレンオキサイドブロックなどが挙げられる。なかでも、プロピレンオキサイドが好ましい。プロピレンオキサイドによれば、硬化性組成物は接着性に優れる。オキシアルキレンブロックは、一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0035】
オキシアルキレンブロックとアルキル(メタ)アクリレートブロックとを有するブロック共重合体において、アルキル(メタ)アクリレートブロックとは、アルキル(メタ)アクリレートの重合体ブロックである。アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、アルキル(メタ)アクリレートは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0036】
変成シリコーン樹脂は、加水分解性シリル基を有している。本発明において、加水分解性シリル基とは、珪素原子に1〜3個の加水分解性基が結合してなる基である。
【0037】
加水分解性シリル基の加水分解性基としては、特に限定されず、例えば、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。
【0038】
なかでも、加水分解性シリル基としては、加水分解反応が穏やかであることから、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジアルコキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、硬化性組成物の接着性に優れていることから、ジアルコキシシリル基がより好ましく、メチルジメトキシシリル基が特に好ましい。
【0039】
変成シリコーン樹脂は、硬化性組成物の硬化性が向上し、硬化性組成物の硬化物(以下、単に「硬化物」ということがある)の初期強度を高めることができることから、1分子中に平均して1.0〜5.0個の加水分解性シリル基を有していることが好ましく、1.0〜3.0個の加水分解性シリル基を有していることがより好ましく、1分子中に平均して1.5〜3.0個の加水分解性シリル基を有していることが特に好ましい。1分子中の加水分解性シリル基の数平均個数が1.0個以上であると、硬化性組成物の接着性に優れていると共に、硬化性組成物の硬化性が向上し、硬化物の初期強度が向上する。1分子中の加水分解性シリル基の数平均個数が5.0個以下であると、硬化性組成物の硬化物の剥離性が向上し好ましい。
【0040】
変成シリコーン樹脂は、硬化性組成物の接着性が向上するので、その分子鎖の末端の少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していることが好ましい。
【0041】
変成シリコーン樹脂における、1分子中における加水分解性シリル基の数平均個数は、
1H−NMRにより求められる変成シリコーン樹脂中の加水分解性シリル基由来のピーク面積の比により、算出することができる。
【0042】
変成シリコーン樹脂の数平均分子量は、2000〜20000が好ましく、3000〜12000がより好ましく、3000〜10000が特に好ましく、4000〜6000が最も好ましいい。数平均分子量が2000以上であると、硬化性組成物の硬化物の剥離性が向上する。数平均分子量が20000以下であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。
【0043】
なお、本発明において、変成シリコーン樹脂の数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いて、ポリスチレンにより換算された値である。例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
【0044】
<測定装置>
Waters社製 製品名「Waters 2690」
<測定条件>
カラム :Shodex GPC KF800D
(4.6mm ID250mm)×2本
カラム温度 :40℃
移動相 :テトラヒドロフラン(0.3mL/分)
サンプル濃度:0.2質量%
検出器 :RI WATERS社製 製品名「2414」
【0045】
変成シリコーン樹脂の25℃における粘度は、200〜10000mPa・sが好ましい。
【0046】
変成シリコーン樹脂の25℃における粘度は、25℃、10回転/分の条件でブルックフィールド型粘度計を用いてJIS K1557に準拠した方法によって測定することができる。
【0047】
変成シリコーン樹脂は、25℃における粘度が200〜2000mPa・sで且つ主鎖となる重合体がポリオキシアルキレン系重合体である変成シリコーン樹脂を反応性希釈剤として含有していることが好ましい。
【0048】
なお、反応性希釈剤は、例えば、カネカ社から商品名「SAT010」及び「SAX015」にて市販されている。
【0049】
硬化性組成物中において、25℃における粘度が200〜2000mPa・sで且つ主鎖となる重合体がポリオキシアルキレン系重合体である変成シリコーン樹脂の含有量は、変成シリコーン樹脂中、5〜50質量%が好ましく、10〜45質量%がより好ましく、20〜35質量%が特に好ましい。
【0050】
25℃における粘度が200〜2000mPa・sで且つ主鎖となる重合体がポリオキシアルキレン系重合体である変成シリコーン樹脂の含有量が5質量%以上であると、硬化性組成物の硬化物の剥離性が向上する。
【0051】
25℃における粘度が200〜2000mPa・sで且つ主鎖となる重合体がポリオキシアルキレン系重合体である変成シリコーン樹脂の含有量が50質量%以下であると、硬化性組成物の接着性が向上する。
【0052】
[グリシジル基を有する架橋性シリル化合物]
硬化性組成物は、グリシジル基を有する架橋性シリル化合物を含有する。グリシジル基を有する架橋性シリル化合物は、珪素原子に1〜3個の加水分解性基が結合し且つ分子内にグリシジル基を有する化合物である。なお、加水分解性基は、上述と同様であるので、説明を省略する。
【0053】
グリシジル基を有する架橋性シリル化合物としては、例えば、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられ、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。グリシジル基を有する架橋性シリル化合物は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0054】
硬化性組成物中におけるグリシジル基を有する架橋性シリル化合物の含有量は、変成シリコーン樹脂100質量部に対して0.5〜8質量部であり、1〜5質量部が好ましい。グリシジル基を有する架橋性シリル化合物の含有量が0.5質量部以上であると、硬化性組成物の接着性が向上する。グリシジル基を有する架橋性シリル化合物の含有量が8質量部以下であると、硬化性組成物の硬化物の剥離性が向上する。
【0055】
[充填材]
硬化性組成物は、充填材を含有している。充填材としては、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、含水ケイ酸、無水ケイ酸、微粉末シリカ、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、タルク、カーボンブラック、ガラスバルーンなどを挙げることができ、炭酸カルシウムが好ましく、重質炭酸カルシウムがより好ましい。これらの充填材は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0056】
充填材は表面処理が施されていてもよい。表面処理は、例えば、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、ロジン酸、樹脂酸などの有機化合物による表面処理などが挙げられる。
【0057】
表面処理が施された充填材を含んでいることにより、硬化性組成物のチクソ性が向上しやすくなり、硬化性組成物の塗布性が向上する。
【0058】
硬化性組成物中における充填材の含有量は、変成シリコーン樹脂100質量部に対して60〜200質量部であり、80〜150質量部が好ましい。充填材の含有量が60質量部以上であると、硬化性組成物の接着性が向上する。充填材の含有量が200質量部以下であると、硬化性組成物の塗布性が向上する。
【0059】
充填材中において、表面処理が施された充填材の含有量は3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、8質量%以上が特に好ましい。充填材中において、表面処理が施された充填材の含有量は30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が特に好ましい。表面処理が施された充填材の含有量が3質量%以上であると、硬化性組成物の塗布性が向上する。表面処理が施された充填材の含有量が30質量%以下であると、硬化性組成物の硬化物の強度が向上する。
【0060】
[アミノ基由来の官能基を有する架橋性シリル化合物]
硬化性組成物は、変成シリコーン樹脂100質量部に対してアミノ基由来の官能基を有する架橋性シリル化合物0〜0.3質量部を含有している。
【0061】
即ち、硬化性組成物は、アミノ基由来の官能基を有する架橋性シリル化合物を含有していないか、又は、アミノ基由来の官能基を有する架橋性シリル化合物を含有している場合、アミノ基由来の官能基を有する架橋性シリル化合物は、変成シリコーン樹脂100質量部に対して0.3質量部以下含有している。
【0062】
硬化性組成物は、アミノ基由来の官能基を有する架橋性シリル化合物を含有していないことが好ましい。
【0063】
アミノ基由来の官能基を有する架橋性シリル化合物が、変成シリコーン樹脂100質量部に対して0〜0.3質量部含有されているので、硬化性組成物の硬化物は優れた剥離性を有している。
【0064】
接着性と剥離性の両立の観点から、アミノ基由来の官能基を有する架橋性シリル化合物は、変性シリコーン樹脂100質量部に対して0.01〜0.25質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部がより好ましい。
【0065】
アミノ基由来の官能基を有する架橋性シリル化合物とは、珪素原子に1〜3個の加水分解性基が結合し且つ分子内にアミノ基由来の官能基を有する化合物である。なお、加水分解性基は、上述と同様であるので、説明を省略する。
【0066】
アミノ基由来の官能基とは、アミノ基、及び、アミノ基の水素原子が他の原子又は原子団によって置換された官能基を含む。アミノ基の水素原子を置換する原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。アミノ基の水素原子を置換する原子団としては、2−アミノエチル基;3−(トリメトキシシリル)プロピル基、3−(トリエトキシシリル)プロピル基などの3−(トリアルコキシシリル)プロピル基、3−(メチルジメトキシシリル)プロピル基などの3−(アルキルジアルコキシシリル)プロピル基などが挙げられる。
【0067】
アミノ基由来の官能基を有する架橋性シリル化合物は、グリシジル基を有していないことが好ましい。アミノ基由来の官能基を有する架橋性シリル化合物としては、アミノ基由来の官能基を有しておれば、特に限定されず、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’−ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(トリエトキシリル)プロピル]ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。
【0068】
[硬化触媒]
硬化性組成物は、硬化触媒を含有していることが好ましい。硬化触媒としては、特に限定されず、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ビス(ジブチル錫ビストリエトキシシリケート)オキサイド、ジブチル錫オキシビスエトキシシリケート、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシカルボニル−ジスタノキサンなどの有機錫系化合物;テトラ−n−ブトキシチタネート、及びテトライソプロポキシチタネートなどの有機チタン系化合物などが挙げられる。なお、硬化触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0069】
硬化性組成物中における硬化触媒の含有量は、変成シリコーン樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。硬化触媒の含有量が0.1質量部以上であると、硬化性組成物の硬化性が向上する。硬化触媒の含有量が10質量部以下であると、硬化性組成物の熱安定性が向上する。
【0070】
[他の添加剤]
硬化性組成物は、その作用効果を損なわない範囲内において、チキソ性付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、沈降防止剤、脱水剤、溶媒などの他の添加剤を含んでいてもよい。
【0071】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスヒンダードフェノール系酸化防止剤、レスヒンダードフェノール系酸化防止剤及びポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、及びヒンダードアミン系酸化防止剤が好ましく挙げられる。硬化性組成物中における酸化防止剤の含有量は、変成シリコーン樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、0.3〜10質量部がより好ましい。
【0072】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられ、及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。硬化性組成物中における紫外線吸収剤の含有量は、変成シリコーン樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
【0073】
硬化性組成物において、ブルックフィールド型粘度計を用いた23℃雰囲気下、ローターNo.5及び分速10回転の条件下での粘度は、100000mPa以下が好ましく、70000mPa以下がより好ましく、50000mPa以下が特に好ましい。硬化性組成物の粘度が100000mPa以下であると、硬化性組成物の塗布性が向上する。
【0074】
硬化性組成物において、ブルックフィールド型粘度計を用いた23℃雰囲気下、ローターNo.5及び分速1回転の条件下での粘度と、ブルックフィールド型粘度計を用いた23℃雰囲気下、ローターNo.5及び分速10回転の条件下での粘度との比(ブルックフィールド型粘度計を用いた23℃雰囲気下、ローターNo.5及び分速1回転の条件下での粘度/ブルックフィールド型粘度計を用いた23℃雰囲気下、ローターNo.5及び分速10回転の条件下での粘度)は3以上が好ましく、4以上がより好ましい。上記粘度の比が3以上であると、硬化性組成物の塗布性が向上する。
【0075】
硬化性組成物において、ブルックフィールド型粘度計を用いた23℃雰囲気下、ローターNo.5及び分速1回転の条件下での粘度と、ブルックフィールド型粘度計を用いた23℃雰囲気下、ローターNo.5及び分速10回転の条件下での粘度との比(ブルックフィールド型粘度計を用いた23℃雰囲気下、ローターNo.5及び分速1回転の条件下での粘度/ブルックフィールド型粘度計を用いた23℃雰囲気下、ローターNo.5及び分速10回転の条件下での粘度)は10以下が好ましく、8以下がより好ましく、7以下が特に好ましい。
【0076】
硬化性組成物における、ブルックフィールド型粘度計を用いた23℃雰囲気下、ローターNo.5及び所定の分速条件下での粘度は、JIS K6833−1に準拠して測定された値をいう。
【0077】
[硬化性組成物の製造]
硬化性組成物の製造は、変成シリコーン樹脂、グリシジル基を有する架橋性シリル化合物及び充填材、並びに、必要に応じて添加される化合物を公知の要領で混合することによって行うことができる。混合は減圧下で行うことが好ましい。
【0078】
[床構造体]
床構造体Aは、
図2に示したように、床下地材1上に床仕上げ材2が敷設されており、床下地材1と床仕上げ材2とが硬化性組成物の硬化物を含む硬化物層3によって一体化されて構成されている。
【0079】
硬化性組成物は空気中の湿気によって硬化して硬化物を生成し、この硬化物によって床下地材1と床仕上げ材2とが一体化されている。硬化性組成物は、優れた接着性を有していることから、床下地材1と床仕上げ材2とを長期間に亘って安定的に一体化する。
【0080】
硬化性組成物の硬化物の最大応力は1.0MPa以上が好ましく、1.1MPa以上がより好ましく、1.2MPa以上が特に好ましい。硬化物の最大応力が1.1MPa以上であると、硬化性組成物の硬化物は優れた剥離性を有している。
【0081】
硬化性組成物の硬化物の最大応力は10MPa以下が好ましく、8MPa以下がより好ましく、7MPa以下が特に好ましい。
【0082】
なお、硬化性組成物の硬化物の最大応力は、試験片として3号ダンベルを用いてJIS K6251に準拠して測定された値をいう。
【0083】
硬化性組成物の硬化物における破断時の伸びは80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、100%以上が特に好ましい。破断時の伸びが80%以上であると、床仕上げ材を床下地材又は床下配設物上から剥離する時、床下地材又は床下配設物上に硬化性組成物の硬化物が残存するのを低減することができる。
【0084】
なお、硬化性組成物の硬化物における破断時の伸びは、試験片として3号ダンベルを用いてJIS K6251に準拠して測定された値をいう。
【0085】
一方、床仕上げ材2は、施工後の不具合やリフォームのために床下地材1上から剥離、除去されることがある。このような場合、上記床構造体を構成している硬化性組成物の硬化物は優れた剥離性を有していることから、床仕上げ材2の裏面に積層されている合成樹脂層を破損することなく且つ床下地材1上に硬化性組成物の硬化物が残存するのを低減させながら、床仕上げ材2を床下地材1上から容易に剥離、除去することができる。
【0086】
[床構造体の施工方法]
床構造体Aの施工方法を説明する。先ず、床下地材1上に硬化性組成物を汎用の方法を用いて塗布する。
【0087】
次に、床下地材1上に塗布した硬化性組成物上に床仕上げ材2をその合成樹脂層が硬化性組成物側となるように敷設する。
【0088】
しかる後、硬化性組成物を所定期間に亘って養生することによって、硬化性組成物を空気中の湿気によって硬化させて硬化物層3とし、この硬化物層3によって床下地材1と床仕上げ材2とを接着一体化させて床構造体Aを構築することができる。
【0089】
[床構造体の他の一例]
上記では、床下地材1上に硬化性組成物の硬化物を含む硬化物層3によって床仕上げ材2を敷設一体化させて床構造体が構成されている場合を説明したが、床下地材1上に床下配設物4が配設され、この床下配設物4上に、硬化性組成物の硬化物を含む硬化物層によって、床仕上げ材2を敷設一体化して構成された床構造体であってもよい。
【0090】
この床構造体の床下地材1を構成する部材としては、合板、パーチクルボード、木根太、石膏ボード、スレート板、及びコンクリート板などが挙げられる。
【0091】
床下配設物4としては、表面がアルマイト処理され又は表面に合成樹脂層が積層一体化されてなる金属シートが上面を形成しておれば、特に限定されず、床暖房パネルが好ましい。
【0092】
床暖房パネルは、汎用のものを用いることができ、発泡シートからなり且つ熱媒体を流通させる流通管を配設するための配設用凹部を有するパネル本体と、上記配設用凹部に配設された流通管と、パネル本体上に配設される金属箔などの金属シートとを有している。
【0093】
金属シートの表面(上面)は、アルマイト処理が施されるか、又は、合成樹脂層が積層一体化されている。合成樹脂層を構成している合成樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などが挙げられる。
【0094】
床構造体Aは、
図3に示したように、床下地材1上に床下配設物4が配設されている。更に、床下配設物4上に床仕上げ材2が敷設されており、床下配設物4の金属シートと床仕上げ材2とが硬化性組成物の硬化物を含む硬化物層3によって一体化されて構成されている。
【0095】
硬化性組成物は、上述の通り、空気中の湿気によって硬化して硬化物を生成し、この硬化物によって床下配設物4の金属シートと床仕上げ材2とが一体化されている。硬化性組成物は、アルマイト処理面及び合成樹脂に対して優れた接着性を有していることから、床下配設物4の金属シートと床仕上げ材2とを長期間に亘って安定的に一体化する。
【0096】
一方、床仕上げ材2は、施工後の不具合やリフォームのために、床下配設物4の金属シート上から剥離、除去されることがある。このような場合、上記床構造体を構成している硬化性組成物の硬化物は、アルマイト処理面及び合成樹脂に対して優れた剥離性を有していることから、床仕上げ材2の裏面に積層されている合成樹脂層を破損することなく且つ床下配設物4の金属シート上に硬化性組成物の硬化物が残存するのを低減させながら、床仕上げ材2を床下配設物4の金属シート上から容易に剥離、除去することができる。
【0097】
[床構造体の施工方法]
床構造体Aの施工方法を説明する。先ず、床下地材1上に床下配設物4を汎用の要領で配設する。
【0098】
次に、床下配設物4の金属シート上に硬化性組成物を汎用の方法を用いて塗布する。しかる後、床下地材1上に塗布した硬化性組成物上に床仕上げ材2をその合成樹脂層が硬化性組成物側となるように敷設する。
【0099】
続いて、硬化性組成物を所定期間に亘って養生することによって、硬化性組成物を空気中の湿気によって硬化させて硬化物層3とし、この硬化物層3によって床下配設物4の金属シートと床仕上げ材2とを接着一体化させて床構造体Aを構築することができる。
【実施例】
【0100】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例1】
【0101】
実施例及び比較例において、下記の材料及び化合物を使用した。
[床仕上げ材]
木質材料から形成された床仕上げ材本体の裏面に、衝撃吸収シートとして発泡シートが積層一体化されてなる床仕上げ材A(朝日ウッドテック社製 商品名「ライブネチュラル ネダレス145」)
発泡シートの裏面(床仕上げ材本体とは反対側の面)には、ポリプロピレン繊維及びポリエチレン繊維を含むスパンボンド不織布が積層一体化されていた。
【0102】
[床下配設物及び床下地材]
・床下配設物(金属シートが上面を形成しており且つ金属シートの上面にポリエチレンテレフタレートからなる合成樹脂層が積層一体化されてなる温水マット、三菱樹脂社製)
・床下地材(JIS A5430に準拠したスレートボード、コンクリートと繊維を混合して成形されたボード)
【0103】
[硬化性組成物]
・変成シリコーン樹脂A(主鎖骨格がポリオキシアルキレン重合体で且つ加水分解性シリル基としてメチルジメトキシシリルを有する重合体、1分子中の加水分解性シリル基の平均個数:2.1個、分子鎖の末端に加水分解性シリル基を有している、数平均分子量:9000、25℃における粘度:8000mPa・s、カネカ社製 商品名「EST280」)
【0104】
・変成シリコーン樹脂B(主鎖骨格がポリオキシプロピレンで且つ加水分解性シリル基としてジメトキシシリル基を有する重合体、1分子中の加水分解性シリル基の平均個数:2個、分子鎖の末端に加水分解性シリル基を有している、数平均分子量:4500、25℃における粘度:400mPa・s、カネカ社製 商品名「SAX015」)
【0105】
・グリシジル基を有する架橋性シリル化合物(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学社製 商品名「KBM403」)
【0106】
・充填材(飽和脂肪酸で表面処理された重質炭酸カルシウム、日東粉化社製 商品名「NCC2310」)
【0107】
・アミノ基由来の官能基を有する架橋性シリル化合物(N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学社製 商品名「KBM603」)
【0108】
・硬化触媒[ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、日東化成社製 商品名「U−220H」]
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF社製 商品名「Irganox1010」)
・脱水剤(ビニルシランカップリング剤、信越化学社製 商品名「KBM1003」)
【0109】
(硬化性組成物A〜Jの製造)
変成シリコーン樹脂、グリシジル基を有する架橋製シリル化合物、充填材、アミノ基を有する架橋性シリル化合物及び脱水剤を表1に示した所定量ずつ攪拌機に供給して均一に混合した後、10分間に亘って減圧脱泡した。
【0110】
次に、表1に示した所定量ずつの硬化触媒及びヒンダードフェノール系酸化防止剤を上記攪拌機に供給して均一に混合した後、10分間に亘って減圧脱泡して白色ペースト状の硬化性組成物を得た。
【0111】
得られた硬化性組成物について、ブルックフィールド型粘度計を用いた23℃雰囲気下、ローターNo.5及び所定の分速条件(分速1回転又は分速10回転)下での粘度をJIS K6833−1に準拠して測定し、その結果を表1に示した。
【0112】
表1において、ブルックフィールド型粘度計を用いた23℃雰囲気下、ローターNo.5及び所定の分速1回転下での粘度は、「粘度[分速1回転]」の欄に記載した。
【0113】
表1において、ブルックフィールド型粘度計を用いた23℃雰囲気下、ローターNo.5及び所定の分速10回転下での粘度は、「粘度[分速10回転]」の欄に記載した。
【0114】
表1において、ブルックフィールド型粘度計を用いた23℃雰囲気下、ローターNo.5及び分速1回転の条件下での粘度と、ブルックフィールド型粘度計を用いた23℃雰囲気下、ローターNo.5及び分速10回転の条件下での粘度との比(ブルックフィールド型粘度計を用いた23℃雰囲気下、ローターNo.5及び分速1回転の条件下での粘度/ブルックフィールド型粘度計を用いた23℃雰囲気下、ローターNo.5及び分速10回転の条件下での粘度)を「粘度比」の欄に記載した。
【0115】
得られた硬化性組成物について、硬化性組成物の硬化物の最大応力及び破断時の伸びを上述の要領で測定し、その結果表1に示した。
【0116】
(実施例1〜12、比較例1〜7)
表2及び表3に示した床下配設物又は床下地材の金属シート上に、表2及び表3に示した硬化性組成物をJIS A5536に準拠したくし目ごてを用いて塗布した。
【0117】
次に、硬化性組成物上に床仕上げ材Aを敷設した後、硬化性組成物を23℃、相対湿度50%の雰囲気下に4週間に亘って養生し、硬化性組成物を空気中の湿気によって硬化させて硬化物とし、この硬化物によって、床下配設物の金属シート又は床下地材と、床仕上げ材Aとを接着一体化させて床構造体を構築した。
【0118】
床構造体の施工時において、硬化性組成物の塗布性を下記の基準で評価した。得られた床構造体について、剥離性及び接着性を下記の要領で測定した。結果を表2及び表3に示した。
【0119】
(硬化性組成物の塗布性)
床構造体の施工時において、硬化性組成物を床下配設物又は床下地材の金属シート上に塗布した際の負荷を下記基準に基づいて評価した。
◎・・終始疲労感を感じることなく、塗布可能であった。
○・・施工開始時より徐々に疲労感を感じるようになったが塗布可能であった。
×・・施工開始時点でこてが重く、塗布作業が困難であった。
【0120】
(剥離性)
床構造体から床仕上げ材を剥離した時の状態を目視観察し、下記基準に基づいて評価した。下記に記載した硬化物の量とは、床構造体を構成している硬化物を100%としたときの硬化物の量をいう。
◎・・床下地材又は床下配設物上に残存した硬化物の量が10%未満であり且つ床仕上
げ材の発泡シートの材料破壊はなかった。
○・・床下地材又は床下配設物上に残存した硬化物の量が10%以上で30%未満であ
り且つ床仕上げ材の発泡シートの材料破壊はなかった。
×・・床下地材又は床下配設物上に残存した硬化物の量が30%以上であるか、又は、
床仕上げ材の発泡シートに材料破壊を生じた。
【0121】
(接着性)
実施例及び比較例ごとに、表2に示した所定の床下配設物、床下地材、硬化性組成物及び床仕上げ材を用い、JIS A5536に記載の方法に準拠して試験体を作製した。
【0122】
得られた試験体について引張試験機(インストロン社製)を用いて引張試験を行い、下記基準に基づいて評価した。
◎・・床仕上げ材の発泡シートに材料破壊を生じ且つ硬化物層には凝集破壊は生じなか
った。
○・・床仕上げ材の発泡シートに材料破壊を生じ且つ硬化物層にも凝集破壊を生じた。
△・・硬化物層に凝集破壊を生じた。
×・・硬化物層と、床下配設物又は床下地材との界面で剥離が生じた。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
【表3】