特開2018-16894(P2018-16894A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2018-16894カーペットの連続染色機及びカーペットの連続染色方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-16894(P2018-16894A)
(43)【公開日】2018年2月1日
(54)【発明の名称】カーペットの連続染色機及びカーペットの連続染色方法
(51)【国際特許分類】
   D06B 11/00 20060101AFI20180105BHJP
   D06P 7/00 20060101ALI20180105BHJP
   D06P 3/00 20060101ALI20180105BHJP
   D06P 5/00 20060101ALI20180105BHJP
   D06C 23/00 20060101ALI20180105BHJP
【FI】
   D06B11/00 B
   D06P7/00
   D06P3/00 N
   D06P5/00 112
   D06C23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-145102(P2016-145102)
(22)【出願日】2016年7月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】特許業務法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 勇紀
(72)【発明者】
【氏名】井上 光晴
【テーマコード(参考)】
3B154
4H057
4H157
【Fターム(参考)】
3B154AB24
3B154AB27
3B154AB34
3B154BA09
3B154BB33
3B154BB34
3B154BB47
3B154BC08
3B154BD01
3B154DA13
4H057AA02
4H057AA03
4H057CA04
4H057CA29
4H057CB45
4H057CB46
4H057CC01
4H057FA31
4H057GA04
4H157AA02
4H157AA03
4H157CA04
4H157CA29
4H157CB45
4H157CB46
4H157CC01
4H157FA31
4H157GA04
(57)【要約】
【課題】 様々な色模様に生機を染色できるカーペットの連続染色機を提供する。
【解決手段】 本発明のカーペットの連続染色機は、カーペットの生機を搬送する搬送装置と、前記搬送装置によって搬送される生機Bに、防染剤及び水のうち少なくとも一方を含む処理剤を塗布する前処理部4と、前記前処理部4によって処理剤が塗布された生機Bに、染色剤を塗布する染色部5と、を有する。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーペットの生機を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送される生機に、防染剤及び水のうち少なくとも一方を含む処理剤を前記生機に塗布する前処理部と、
前記前処理部によって処理剤が塗布された生機に、染色剤を塗布する染色部と、を有する、カーペットの連続染色機。
【請求項2】
前記前処理部が、前記生機の搬送に同期して回転し、前記生機の表面に接して前記処理剤を塗布するロールを有する、請求項1に記載のカーペットの連続染色機。
【請求項3】
前記前処理部が、前記生機の表面に前記処理剤を吹き付けるスプレーを有する、請求項1に記載のカーペットの連続染色機。
【請求項4】
カーペットの生機を搬送する搬送工程と、
前記生機に、防染剤及び水のうち少なくとも一方を含む処理剤を塗布する前処理工程と、
前記処理剤が塗布された生機を、染色剤によって染色する染色工程と、を有する、カーペットの連続染色方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な色模様を表出できるカーペットの連続染色機などに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にカーペットは、連続染色機、インクジェットプリント機などによって、生機のパイル糸を染色する後染めによって、色模様が表出されている。
連続染色機を用いて染色する連続染色方法は、生機を長手方向に搬送している途中で生機を染色する方法である。連続染色方法では、生機の幅方向に配置された複数のノズルから、搬送される生機の表面に染料を吐出し、生機を染色する、所謂「シャワーカーテン式」や、生機を染色液に漬け込む、所謂「ディッピング式」などを用いて連続的に染色処理を行なう。このような従来の連続染色機は、例えば、単一種類の染料のみを用いる、又は、酸性染料とカチオン染料を併用することによって、大量の生機を染色でき、カーペットの生産性に優れている。
しかしながら、連続染色機は、色模様の表現に限界があり、上記のように酸性染料とカチオン染料を併用したとしても、様々な色模様のカーペットを得ることが困難である。
【0003】
一方、インクジェットプリント機を用いるインクジェット法は、プリンタヘッドから染料を霧状に噴射して生機を染色する方法であり、繊細な色模様を表出できる(特許文献1)。
しかしながら、インクジェットプリント機は、比較的プリント速度が遅く、カーペットの生産性が悪いという問題がある。また、予め決められたパターンに従って染料を噴射するため、予め決まった色模様しか表出できず、染料が滲み出たような自然な感じのぼかし調のカーペットを得ることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−25965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、様々な色模様に生機を染色できるカーペットの連続染色機及び連続染色方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカーペットの連続染色機は、カーペットの生機を搬送する搬送装置と、前記搬送装置によって搬送される生機に、防染剤及び水のうち少なくとも一方を含む処理剤を前記生機に塗布する前処理部と、前記前処理部によって処理剤が塗布された生機に、染色剤を塗布する染色部と、を有する。
【0007】
本発明の好ましいカーペットの連続染色機は、前記前処理部が、前記生機の搬送に同期して回転し、前記生機の表面に接して前記処理剤を塗布するロールを有する。
本発明の好ましいカーペットの連続染色機は、前記前処理部が、前記生機の表面に前記処理剤を吹き付けるスプレーを有する。
【0008】
本発明の別の局面によれば、カーペットの連続染色方法を提供する。
かかる連続染色方法は、カーペットの生機を搬送する搬送工程と、前記生機に、防染剤及び水のうち少なくとも一方を含む処理剤を塗布する前処理工程と、前記処理剤が塗布された生機を、染色剤によって染色する染色工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の連続染色機及び連続染色方法によれば、生機を様々な色模様に染色できる。
また、本発明の好ましい連続染色機によれば、生機を自然な感じのぼかし調に染色できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】カーペットの平面図。
図2図1のII−II線で切断した断面図。
図3】1つの実施形態に係るカーペットの連続染色機の概略図。
図4】同連続染色機の前処理部及び染色部を上側から見た平面図。ただし、生機の両側を省略している(図5乃至図12においても同様)。
図5】同連続染色機の前処理部及び染色部の側面図。
図6】同連続染色機の染色部の斜視図。
図7】同連続染色機の染色部の平面図。
図8】同連続染色機の染色部の側面図。
図9】変形例に係る連続染色機の染色部の平面図。
図10】連続染色方法の前処理工程及び染色工程を示す平面図。
図11】同側面図。
図12】染色工程において一部の吐出口から染色剤の吐出を停止させた状態を示す平面図。
図13】他の実施形態に係る連続染色機の前処理部及び染色部の平面図。
図14】同連続染色機を用いた前処理工程及び染色工程を示す平面図。
図15】同側面図。
図16】他の実施形態に係る連続染色機の染色部の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、適宜図面を参照しつつ説明する。
本明細書において、「〜」で表される数値範囲は、「〜」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
【0012】
[カーペットの概要]
図1は、本発明の1つの実施形態に係るカーペットの平面図であり、図2は、同カーペットの断面図である。
図1に示すように、カーペット1は、例えば、平面視略正方形状などの枚葉状に形成される。もっとも、枚葉状のカーペット1の平面視形状は、略正方形状に限定されず、例えば、略長方形状、略円形状、略楕円形状、略三角形状や略六角形状などの略多角形状などに形成されていてもよい。本明細書において、「略」は、本発明の属する技術分野において許容される形状を意味する。平面視略正方形状、略長方形状、略三角形状などの略多角形状の「略」は、例えば、角部が面取りされている形状、辺の一部が僅かに膨らむ又は窪んでいる形状、辺が若干湾曲している形状などが含まれる。また、平面視略円形状及び略楕円形状の「略」は、例えば、周の一部が僅かに膨らむ又は窪んでいる形状、周の一部が若干直線又は斜線とされた形状などが含まれる。
平面視略正方形状のカーペット1の寸法は、特に限定されないが、例えば、500mm×500mmなどが挙げられる。
【0013】
なお、カーペット1は、長尺帯状であってもよい。ここで、本明細書において、長尺帯状は、長手方向の長さが幅方向よりも十分に長い平面視略長方形状をいう。長尺帯状としては、例えば、幅方向の長さが1000mm〜4000mmで、長手方向の長さが5m以上であり、好ましくは、長手方向の長さが10m以上である。なお、幅方向は、長手方向と直交する方向である。
【0014】
カーペット1は、図2に示すように、染色済みの生機11と、前記生機11の裏面側に積層された裏面層12と、を有する。
染色済みの生機11は、基布111と、基布111に植設されたパイル糸112と、を有し、パイル糸112は、後述する連続染色機にて所望の色模様に染色されている。
図示例では、裏面層12は、表面側から順に、接着層121と、補強材122と、バッキング層123と、から構成されている。裏面層12は、生機11と補強材122を接合するために設けられている。補強材122は、カーペット1の寸法安定性などのために設けられ、例えば、不織布や織布などが用いられる。バッキング層123は、カーペット1の重量を成し、施工面に接地される層である。バッキング層123としては、塩化ビニル樹脂などの合成樹脂、ゴムなどから形成される。
本発明において、パイル糸112及び基布111を有する生機11、並びに、裏面層12の層構成は、図示例に限られず、従来公知なものを適宜採用できる。
【0015】
[カーペットの連続染色機]
本発明のカーペットの連続染色機Aは、図3乃至図8に示すように、カーペットの生機Bを搬送する搬送装置3と、生機Bに前処理を施す前処理部4と、染色剤を生機Bに塗布する染色部5と、を有する。
前処理部4は、前記染色部5の上流側に設けられている。前処理部4は、防染剤及び水のうち少なくとも一方を含む処理剤を前記生機Bに塗布する。
染色部5は、前記搬送装置3によって搬送される生機Bの幅方向に配置され且つ染色剤を吐出する複数の吐出口51と、前記生機Bと複数の吐出口51の間に配置され且つ前記吐出口51から吐出された染色剤を前記生機Bに導く誘導板52と、前記各吐出口51からの染色剤の吐出量を調整する調整部53と、を有する。
【0016】
<搬送装置>
搬送装置3は、長尺帯状の生機Bを長手方向に搬送する。各図の白抜き矢印は、生機Bの搬送方向を示す。搬送装置3は、従来公知のローラーと駆動装置(図示せず)とを有する。搬送装置3によって搬送される生機Bは、未染色の生機である。未染色の生機Bは、長尺帯状の基布と、基布にタフトされた未染色のパイル糸と、を有する。
なお、未染色の生機Bとは、カーペットの最終的なデザインを得るために染色剤を用いてパイル糸を染色する前の生機をいう。従って、後述するように、未染色の生機Bは、パイル糸が全く染色されていない場合のほか、パイル糸が何らかの色彩で染色されているものを含む。
なお、本明細書において、生機などが送られる側を「下流側」といい、その反対側を「上流側」という。
【0017】
<前処理部>
前処理部4は、未染色の生機Bの表面に処理剤を塗布する装置である。なお、生機Bの表面は、パイル糸からなる。
処理剤は、防染剤及び水のうち少なくとも一方を含み、必要に応じて、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、糊剤などの粘度調整剤、pH調整剤、染料、均染剤などが挙げられる。処理剤の詳細については、連続染色方法の欄で詳述する。
【0018】
前記処理剤は、適切な前処理部4を用いて生機Bの表面に塗布される。
前処理部4は、前記搬送装置3によって搬送される生機Bの表面に処理剤を塗布できるものであれば特に限定されない。図示例では、前処理部4として、生機Bの搬送に同期して回転するロール41が用いられている。ロール41は、1つでもよく、或いは、複数並設されていてもよい。図示例では、生機Bの搬送方向に2つのロール411,412(第1ロール411、第2ロール412)が互いに平行に配置されている。
ロール41(第1ロール411及び第2ロール412)は、その軸が生機Bの幅方向と略平行に配置され、その軸周りに回転可能である。ロール41は、別途の駆動装置(図示せず)によって駆動力が加えられて回転するものでもよい。或いは、ロール41は、生機Bの表面に接した状態で軸に回転自在に軸支され、その生機Bの搬送に従動して回転するものでもよい。
【0019】
ロール41の周面には、処理剤を具備した塗布部(図示せず)が設けられている。
かかるロール41による塗布部としては、例えば、印刷法を利用できる。
具体的には、(1)周面に凸部が形成されたロールを用い、別途の処理剤供給ロールから前記凸部の頂面に処理剤を付着させ、ロールの回転に従ってその周面の凸部の頂面を生機Bの表面に接触させることにより、処理剤を生機Bに塗布する方法(凸版印刷法の利用)、(2)周面に凹部が形成されたロールを用い、別途の処理剤供給ロールなどから前記凹部内に処理剤を充填し、ロールの回転に従ってその周面の凹部を生機Bの表面に接触させることにより、処理剤を生機Bに塗布する方法(凹版印刷法の利用)、(3)周面に無数の微細孔が形成されたロールを用い、ロールの内側から処理剤を供給し、ロールの回転に従ってその周面を生機Bの表面に接触させ、処理剤を微細孔から滲み出させて生機Bに塗布する方法(孔版印刷法の利用)、などが挙げられる。
前記(1)及び(2)のロール41を用いた場合には、処理剤は、凸部及び凹部の平面視形状と略同じ形状になって生機Bに転写される。前記(3)のロール41を用いた場合には、処理剤は、無数の微細孔の集合形状と略同じ形状になって生機Bに転写される。
時間当たりの塗布量が大きいことから、前記(3)のロール41を用いることが好ましい。特に、処理剤を比較的大量に塗布できる前記(3)のロール41を用いて、水を多く含んだ処理剤を塗布することにより、下流側の染色部5での染色剤を十分に薄めることができ、良好なぼかし調の色模様を表出することが可能となる。
【0020】
ロール41の塗布部の形態に応じて、処理剤の塗布形状を適宜設定できる。
例えば、周面にスポット的な形状の塗布部が設けられているロール41を用いた場合には、生機Bの表面に、長手方向に所定間隔を開けて、処理剤Cが平面視スポット的な形状に塗布されていく。前記スポット的な形状としては、特に限定されず、略矩形状、略三角形状などの略多角形状、略円形状、略楕円形状、略星形状、その他の任意形状などが挙げられる。この場合、略矩形状などのスポット的な形状の塗布部は、ロール41の周面において、周方向に1つだけ設けられていてもよく、或いは、周方向に所定間隔を開けて複数設けられていてもよい。また、スポット的な形状の塗布部は、ロール41の周面において、その軸方向に1つだけ設けられていてもよく、或いは、その軸方向に所定間隔を開けて複数設けられていてもよい。
【0021】
また、例えば、ロール41の周面に周方向全体に亘る連続的な形状の塗布部が設けられているロール41を用いた場合には、生機Bの表面に、長手方向に処理剤Cが平面視帯状に塗布されていく。前記連続的な形状としては、周面の周方向全体に亘る帯環状などが挙げられる。この場合、周方向に連続的な形状の塗布部は、ロール41の周面において、その軸方向に1つだけ設けられていてもよく、或いは、ロール41の周面において、その軸方向に所定間隔を開けて複数設けられていてもよい。
さらに、ロール41の周面に、前記スポット的な形状の塗布部と、前記連続的な形状の塗布部と、が設けられていてもよい。その他、ロール41に設けられる塗布部の形態は、様々に設定できる。
【0022】
上述のように、ロール41が複数並設される場合(例えば、第1ロール411、第2ロール412)、各ロール41の塗布部の形態は、同じでもよく、或いは、異なっていてもよい。複数のロール41を用いる意義から、塗布部の形態が異なる複数のロール41を用いることが好ましい。
例えば、第1ロール411には、略矩形状などのスポット的な形状の塗布部が複数設けられ、第2ロール412には、連続的な形状の塗布部が設けられる。
【0023】
<染色部>
図3乃至図5において、前記前処理部4の下流側には、染色部5が設けられている。
染色部5は、未染色の生機Bの表面に染色剤を塗布する装置である。染色剤の塗布装置の形式は、特に限定されず、例えば、シャワーカーテン式、ディッピング式などが挙げられる。前記シャワーカーテン式は、適量の染色剤を生機Bに上方から注ぎかけて塗布することによって染色を行なう装置であり、前記ディッピング式は、染色剤が貯められた染槽に生機Bを潜らせることによって染色を行なう装置である。前処理部4で生機Bに塗布した処理剤が流出するおそれがなく、染色量の制御も可能な上、染色の均質化や染色速度のコントロールにも優れることから、シャワーカーテン式の塗布装置が好ましい。
図示例では、シャワーカーテン式の塗布部5を示している。
染色部5は、図4乃至図8に示すように、複数の吐出口51と、生機Bと複数の吐出口51の間に配置され且つ前記吐出口51から吐出された染色剤を前記生機Bに導く誘導板52と、前記各吐出口51からの染色剤の吐出量を調整する調整部53と、を有し、好ましくは、前記各吐出口51から流出される染色剤の吐出量を計測する流量計54をさらに有する。
【0024】
搬送装置3の途中であって、前処理部4の直ぐ下流側には、誘導板52が配置されている。誘導板52は、表面が平坦な板状体からなり、図示例では、誘導板52は平面視略長方形状とされている。誘導板52の裏面は、平坦でもよく或いは凹凸状に形成されていてもよい。なお、誘導板52は、平板に限られず、屈曲部を有する板状体や曲面部を有する板状体を用いてよい。また、誘導板52の下端521は、図5及び図8に示すように、側面視で尖っていることが好ましい。誘導板52の下端521が側面視で尖っていることにより、染色剤の切れが良くなり、誘導板52の表面上を流れてきた染色剤が誘導板52の裏面側に回り込み難くなる。
誘導板52の材質は、特に限定されず、金属、合成樹脂、ガラス、陶器、これらの組み合わせなどが挙げられる。中でも、耐腐食性に優れ、染色剤が付着し難いことから、誘導板52はステンレスで形成されていることが好ましい。
【0025】
誘導板52は、搬送装置3によって搬送される生機Bの表面上に配置されている。誘導板52は生機Bの幅方向に延在するように、誘導板52の下端521を生機Bの幅方向に略平行にして配置されている。
誘導板52は、図8に示すように、その下端521を生機Bの表面から離して固定側(図示せず)に固定されている。また、誘導板52の下端521を生機Bの表面に近づける又は遠ざけることができるように、誘導板52を上下に移動させる移動装置(図示せず)が設けられていてもよい。
図示例の誘導板52の下端521は、平面視で直線状である。もっとも、誘導板52の下端521が、平面視で、波線状、ジグザグ状、幅方向中央部が内側に凹んだ弧状又は屈曲状、幅方向中央部が外側に突出した弧状又は屈曲状などであってもよい。
【0026】
誘導板52の下端521が生機Bから離れている場合、誘導板52の下端521と生機Bの表面との間の直線長さH1は、特に限定されないが、余りに小さいと、両者が接触し、余りに大きいと、装置の大型化を招く上、誘導板52の下端521から流れ落ちる染色剤が生機Bの表面で跳ね返るおそれがある。かかる観点から、誘導板52の下端521と生機Bの表面との間の直線長さH1が5mm〜100mmとなるように誘導板52が配置されていることが好ましく、10mm〜50mmとなるように誘導板52が配置されていることがより好ましい。
なお、上述の誘導板52を上下に移動させる移動装置を設けた場合、製造条件や環境などに応じて前記直線長さH1を適切な距離に微調整することが可能となる。
【0027】
誘導板52の幅方向の長さは、図4及び図7に示すように、搬送装置3によって搬送される生機Bの幅よりも大きく、従って、誘導板52の幅方向両端部は、生機Bの幅方向両端よりも外側に突出されている。
また、図8に示すように、誘導板52の長さL1(生機Bの長手方向に対応する誘導板52の長さ)は、特に限定されないが、余りに小さいと、染色剤を伝わせる面積が小さくなり過ぎるおそれがある。かかる観点から、誘導板52の長さL1は、100mm以上が好ましく、さらに、200mm以上がより好ましい。また、誘導板52の長さL1が余りに大きいと、装置の大型化を招くことから、誘導板52の長さL1は、500mm以下が好ましい。
【0028】
図8などに示すように、誘導板52は、側面視で誘導板52の下端521を上端522よりも低くして、その表面が生機Bの表面に対して非平行となるように配置されている。好ましくは、誘導板52の表面と生機Bの表面の成す内角αが、0度を超え90度以下となるように、誘導板52は配置され、より好ましくは、前記内角αが、10度〜80度となるように誘導板52は配置され、さらに好ましくは、前記内角αが、30度〜70度となるように誘導板52は配置されている。このように誘導板52が生機Bに対して鋭角に傾斜して配置されていることにより、誘導板52の表面から生機Bの表面に良好に染色剤が流れていくようになる。
ただし、誘導板52が屈曲部を有する形状や曲面部を有する形状である場合の、前記誘導板52の表面と生機Bの表面の成す内角αは、平均角度とする。
また、前記内角αを変更できるように、誘導板52に角度調整装置(図示せず)が設けられていてもよい。前記内角αを小さくすれば、より染色剤が混ざりやすくなり、内角αを大きくすれば、より染色剤が混ざり難くなる。角度調整装置を設けて誘導板52の内角α(傾斜角度)を調整することにより、染色剤の種類や粘度などの条件の違いによる混ざり程度を安定化すること、或いは、所望の色模様に応じてぼかし領域の巾を調整することなどを行える。
【0029】
また、誘導板52を振動させる振動装置(図示せず)が設けられていてもよい。振動装置は、誘導板52を生機の幅方向に平行に振動させる動作、誘導板52を生機の長手方向に平行に振動させる動作、及び、誘導板52を生機に対して近づけたり又は遠ざけたりする上下方向に振動させる動作から選ばれる少なくとも1つの動作を有する。誘導板52が振動することにより、誘導板52上での染色剤の混じり方に変化を与えることができる。振動装置による誘導板52の振動幅は、余りに小さいと、実質的に振動の効果がなく、余りに大きいと、染色剤が誘導板52から大きく漏れ落ちるおそれがある。かかる観点から、誘導板52の振動幅は、0.3mm〜10mm程度が好ましい。
【0030】
前記誘導板52の表面上には、複数の吐出口51が配置されている。複数の吐出口51は、それぞれ独立して染色剤を吐出する。各吐出口51は、後述するタンクから供給された染色剤の出口であり、各吐出口51は、誘導板52の表面に染色剤を吐出する。このような吐出口51は、一般に、ノズルとも呼ばれており、吐出口51としては、従来公知なものを用いることができる。
吐出口51の材質は、特に限定されず、金属、合成樹脂などが挙げられる。中でも、耐腐食性に優れ、染色剤が付着し難いことから、吐出口51はステンレスで形成されていることが好ましい。吐出口51の口径は、特に限定されず、例えば、3mm〜40mm程度である。
【0031】
図6及び図7などに示すように、複数の吐出口51は、誘導板52の表面上であって、搬送装置3に搬送される染色前の生機Bの幅方向に並んで配置されている。各吐出口51は、生機Bの幅方向に直線上に並んで配置されている。なお、図示例では、各吐出口51は1列に並んで配置されているが、図9に示すように、各吐出口51が生機Bの長手方向に2列以上に配置されていてもよい。
隣接する吐出口51の間隔W1は、特に限定されず、例えば、5mm〜100mmであり、好ましくは、10mm〜60mmである。前記間隔W1が大きすぎると、細かな表現が困難になり、小さすぎると、装置が複雑化する上、染色剤の吐出が困難となるおそれがある。吐出口51の数は、生機Bの幅方向の長さと前記吐出口51の間隔に応じて適宜設定できる。図示例では吐出口51は10個であるが、この数は、模式的に示したものであることに留意されたい。
【0032】
各吐出口51は、誘導板52の表面から離して固定側(図示せず)に固定されている。もっとも、吐出口51が誘導板52の表面に接触するようにして固定されていてもよい。
各吐出口51が誘導板52から離れている場合、各吐出口51と誘導板52の表面との間の直線長さH2は、特に限定されないが、余りに小さいと、両者が接触し、余りに大きいと、装置の大型化を招く上、吐出口51から吐出される染色剤が誘導板52の表面で跳ね返るおそれがある。かかる観点から、各吐出口51と誘導板52の表面との間の直線長さH2(吐出口51から誘導板52の表面に対して鉛直方向に引いた直線長さ)が0を超え60mm以下となるように各吐出口51が配置されていることが好ましく、10mm〜40mmとなるように各吐出口51が配置されていることがより好ましい。
【0033】
各吐出口51は、誘導板52の下端521から上端522の間に対応して配置される。各吐出口51と誘導板52の下端521までの直線長さL2は、特に限定されないが、各吐出口51が誘導板52の下端521に余りに近いと、誘導板52の表面上を染色剤が流れる距離が相対的に小さくなる。かかる観点から、各吐出口51と誘導板52の下端521までの直線長さL2が50mm〜500mmとなるように各吐出口51が配置されていることが好ましく、100mm〜400mmとなるように各吐出口51が配置されていることがより好ましい。
また、各吐出口51を誘導板52の表面に近づく又は遠ざける、及び/又は、各吐出口51を誘導板52の下端521に近づける又は遠ざけることができるように、各吐出口51を上下に移動させる移動装置(図示せず)が設けられていてもよい。かかる移動装置を設けることにより、染色剤の混ざり具合を調整することができる。
【0034】
各吐出口51には、それぞれ流量計54が設けられている。流量計54は、各吐出口51から吐出される染色剤の量を計測するものである。流量計54は制御装置(図示せず)に繋がっており、流量計54にて計測された各吐出口51からの染色剤の吐出量は、制御装置に送られて管理される。
【0035】
また、各吐出口51には、それぞれ調整部53が設けられている。調整部53は、吐出口51からの染色剤の吐出と、染色剤の吐出量の変更と、染色剤の吐出の停止と、を行うものである。調整部53としては、例えば、代表的には弁体を用いることができる。弁体などの調整部53は、手動でもよいが、前記制御装置に繋がり、機械的に吐出の絞り(吐出量の増減)、吐出の停止を行えるものが好ましい。このような調整部53としては、自動バルブが挙げられる。また、比較的簡易であることから、調整部53は、染色剤の吐出と吐出の停止とを切り替えるだけの機能を有するものでもよい。このような調整部53としては、例えば、電磁弁が挙げられる。前記自動バルブ又は電磁弁などの調整部53による染色剤の吐出及び停止は、例えば、前記制御装置にて管理され、自動制御可能である。調整部53は、図5乃至図7などに示すように、流量計54の上流側に設けられていてもよく、或いは、吐出口51と流量計54の間に設けられていてもよい。
なお、染色剤の吐出及び停止を制御装置にて管理する場合は、流量計54で計測したデータに基づいて調整部53を調整する必要があるので、調整部53は流量計54の上流側に設けることとなる。
【0036】
各吐出口51は、供給チューブ551,552を介してタンク56に繋がっている。なお、図6図7図9では、供給チューブ551,552は、それぞれ異なる長さで表されているが、全て同じの長さであることが好ましい。同じ長さの供給チューブを用いることにより、各供給チューブ内の圧力が略均一となり、染色剤を均一速度で吐出口51に供給することができ、染色剤の流量を精度良く制御することができる。
タンク56は、1つでもよいが、2種以上の染色剤を独立した吐出口51から吐出させるために、タンク56は複数設けられている。図示例では、便宜上、2つのタンク56を例示している。つまり、図示例では、1つのタンク及びこれに繋がる部材からなる染色剤供給部を、2組設定した場合である。以下、これらの染色剤供給部に含まれるタンクや吐出口などを区別する場合に、それぞれ用語の頭に「第1」、「第2」を付す場合がある。
なお、本発明では、タンク、供給チューブ、調整部及び吐出口を少なくとも含む染色剤供給部が、2組以上設けられていればよく、これを3組、4組設けてもよい。染色剤供給部の組数に対応して染色剤の種類を増やすことができるので、生機に表出される色模様の色数を増すことができるが、反面、染色機がより複雑で大型になっていく。これらを比較考慮して、前記染色剤供給部の組数が設定される。
【0037】
第1タンク561には、第1ポンプ571が具備されている。また、第1タンク561の下流側には、第1供給管581を通じて第1マニホールド591が設けられている。第1マニホールド591には、複数の第1供給チューブ551が繋がれており、各第1供給チューブ551には、複数の吐出口51のうち第1吐出口511がそれぞれ接続されている。
第1マニホールド591は、第1タンク561から供給された染色剤を各第1供給チューブ551に分岐させるものである。第1ポンプ571を通じて、第1タンク561から第1マニホールド591に染色剤が送られ、前記染色剤は、各調整部53及び流量計54を通過した後、第1吐出口511からそれぞれ吐出される。
【0038】
第2タンク562には、第2ポンプ572が具備されている。また、第2タンク562の下流側には、第2供給管582を通じて第2マニホールド592が設けられている。第2マニホールド592には、複数の第2供給チューブ552が繋がれており、各第2供給チューブ552には、複数の吐出口51のうち第2吐出口512がそれぞれ接続されている。
第2マニホールド592は、第2タンク562から供給された染色剤を各第2供給チューブ552に分岐させるものである。第2ポンプ572を通じて、第2タンク562から第2マニホールド592に染色剤が送られ、前記染色剤は、各調整部53及び流量計54を通過した後、第2吐出口512からそれぞれ吐出される。
【0039】
第1タンク561に接続された第1吐出口511及び第2タンク562に接続された第2吐出口512は、幅方向に並んだ各吐出口51の中から適宜選択できるが、縞模様のぼかし調のデザインを容易に染色できることから、例えば、第1吐出口511と第2吐出口512は幅方向において1つずつ交互に配置される。なお、このような配置に限られず、例えば、第1吐出口511と第2吐出口512が、幅方向において2つ〜5つずつ交互に配置されていてもよい。また、交互配置は、同数に限られず、例えば、第1吐出口を1つ、第2吐出口を2つとして交互に配置するなどのように、吐出口の本数を異ならせて配置してもよい。
【0040】
また、タンク56が3つ以上の場合、それぞれのタンクに幾つかの吐出口がつながれるが、各染色剤に起因する縞模様のぼかし調を形成するために、各タンクにそれぞれつながれた幾つかの吐出口の配置も、交互であることが好ましい。例えば、タンクが3つ設けられる場合、第1タンクに繋がる幾つかの第1吐出口と、第2タンクに繋がる幾つかの第2吐出口と、第3タンクに繋がる幾つかの第3吐出口とが、幅方向において1つずつ交互に配置される、或いは、幅方向において2つ〜5つずつ交互に配置される、或いは、同数でなく交互に配置されるなどの様々なパターンに配置できる。
【0041】
なお、マニホールドは、適宜省略してもよい。
さらに、各タンク56には主としてマニホールドに染色剤を送るためにポンプ57が具備されているが、後述するように、必ずしも染色剤を各吐出口51から圧力をかけて吐出する場合に限られないので、ポンプ57を省略してもよい。ポンプ57を省略する場合、例えば、各タンク56を各吐出口51よりも高い位置に設置することにより、位置エネルギーにて各タンク56から吐出口51へと染色剤を供給することもできる。
【0042】
[カーペットの連続染色方法]
次に、本発明のカーペットの連続染色方法を説明する。
本発明のカーペットの連続染色方法は、カーペットの製造に組み込まれた1つの工程として行うことができる。
例えば、カーペットの製造方法は、未染色の生機の準備工程、生機の前処理工程、生機の染色工程、裏面層の形成工程を有し、必要に応じて、他の工程を有していてもよい。
これら各工程を1つの製造ラインで一連に行ってもよいし、或いは、前記各工程から選ばれる1つ又は2つ以上の工程を、1つのラインで行い、且つ残る工程を他の1つ又は2つ以上のラインで行ってもよい。また、前記各工程の全てを一の実施者が行ってもよいし、或いは、前記各工程から選ばれる1つ又は2つ以上の工程を一の実施者が行い、且つ残る工程を他の実施者が行ってもよい。
【0043】
<生機の準備>
長尺帯状の未染色の生機Bを作製する。前記未染色の生機Bは、長尺帯状の基布にパイル糸をタフトすることによって得られる。
パイル糸は、後述する染色工程での染色剤で染色可能なものであれば特に限定されず、パイル糸そのものでもよく、所望の色彩に着色されているパイル糸でもよい。
パイル糸は、従来公知なものを用いることができ、例えば、熱可塑性樹脂などからなる合成繊維、綿、羊毛などの天然繊維、合成繊維と天然繊維の混繊などが挙げられる。前記合成繊維の材質は、特に限定されず、例えば、ポリアミド、アクリル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、セルロース、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。様々な色彩に良好に染色できることから、ポリアミド系樹脂繊維を含むパイル糸又はポリアミド系樹脂繊維のみからなるパイル糸を用いることが好ましい。
基布にタフトされたパイル糸は、カットパイルでもよいし、或いは、ループパイルでもよい。また、パイル高も特に限定されず、例えば、1mm〜20mmであり、好ましくは2mm〜10mmである。さらに、パイル高は、一定でもよく、或いは、異なっていてもよい。パイル高を異ならせてパイル糸をタフトすることにより、パイル高に起因する凹凸模様を生機の表面に形成できる。
なお、基布にパイル糸をタフトして生機を形成した後、必要に応じて、パイル糸の解れを防止するために、基布の裏面に、接着剤などからなる目止め層を形成してもよい。
【0044】
<前処理工程>
連続染色機Aの搬送装置3を用いて、長尺帯状の未染色の生機Bをその長手方向に搬送する。
図10及び図11に示すように、搬送途中に配置された前処理部4から生機Bの表面に処理剤Cが塗布される。
処理剤Cは、流動性を有する液状のものが使用される。処理剤Cは、防染剤及び水のうち少なくとも一方を含み、必要に応じて、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、糊剤などの粘度調整剤、pH調整剤、染料、均染剤などが挙げられる。
【0045】
前記防染剤は、染色成分を含まず且つそれ自身染色機能を有さないものであって、未染色のパイル糸に対する染色剤の染色を実質的に防止するもの、又は、染色剤によって未染色のパイル糸が僅かに染色することを許容するもの(換言すると、染色剤によるパイル糸に対する染色を不完全とするもの)である。前記防染剤としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、芳香族スルホン酸の縮合高分子化合物、芳香族スルホン酸塩、多価フェノール系縮合高分子化合物、グリコール類などが挙げられる。
前記水は、染色剤によって未染色のパイル糸が染色することを許容するが、色付きを薄くするものである。
前記糊剤は、生機Bの表面に塗布した処理剤Cを定着させるため及び処理剤Cの粘度を調整するために、必要に応じて処理剤Cに配合される。糊剤としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、ポリビニルアルコール系接着剤などの水系接着剤が挙げられる。
前記染料は、処理剤Cに若干の色彩を付与するために、必要に応じて処理剤Cに配合される。
【0046】
第1例では、処理剤Cは、水及び糊剤からなる。
第2例では、処理剤Cは、水、糊剤、染料及びpH調整剤からなる。
第3例では、処理剤Cは、水、糊剤及び染料からなる。
第4例では、処理剤Cは、防染剤、水、糊剤及びpH調整剤からなる。
第5例では、処理剤Cは、防染剤、水、糊剤、染料及びpH調整剤からなる。
第6例では、処理剤Cは、防染剤、水、糊剤及び染料からなる。
第7例では、処理剤Cは、防染剤、水、及び糊剤からなる。
第8例では、処理剤Cは、防染剤、糊剤、染料及びpH調整剤からなる。
第9例では、処理剤Cは、水、染料及びpH調整剤からなる。
第10例では、処理剤Cは、水及び染料からなる。
第11例では、処理剤Cは、防染剤、水及びpH調整剤からなる。
第12例では、処理剤Cは、防染剤、水、染料及びpH調整剤からなる。
第13例では、処理剤Cは、防染剤及びpH調整剤からなる。
第14例では、処理剤Cは、防染剤のみからなる。
第15例では、処理剤Cは、水のみからなる。
ロール41にて処理剤を塗布する本実施形態においては、処理剤Cは、水及び糊剤を含んでいることが好ましく、例えば、上記第1例乃至第7例から選ばれることが好ましい。
【0047】
本実施形態における処理剤の粘度は、特に限定されないが、好ましくは、50mPa・s〜10000mPa・sであり、より好ましくは、100mPa・s〜8000mPa・sである。このような粘度の処理剤Cを用いることにより、ロール41を用いて処理剤Cを生機Bに良好に塗布でき、さらに、塗布した処理剤Cが不必要に拡がらないようになる。
ただし、本明細書において、処理剤の粘度は、23℃で、E型粘度計(株式会社東京計器製の型式「VISCONIC E」、回転数25〜100RPM)を用いて測定される。
【0048】
また、上記のように複数のロール41(図示例では、第1ロール411及び第2ロール412)を用いた場合、各ロール41において、同じ処理剤Cを塗布してもよく、或いは、異なる処理剤Cを塗布してもよい。
例えば、第1ロール411において、1種類の処理剤C(例えば、上記第1例の処理剤C)を塗布し、第2ロール412において、これと同じ処理剤C(例えば、上記第1例の処理剤C)を塗布する。或いは、第1ロール411において、1種類の処理剤C(例えば、上記第1例の処理剤C)を塗布し、第2ロール412において、これと異なる処理剤C(例えば、上記第4例の処理剤C)を塗布する。
【0049】
上述のように、処理剤Cは、ロール41の塗布部にて生機Bに塗布される。以下、生機Bの表面のうち、処理剤Cが塗布された部分を「処理剤付着部分」という。
例えば、スポット的な形状の塗布部が設けられているロール41を用いた場合には、生機Bの表面に、そのスポット的な形状と略同じ平面視形状で処理剤Cが塗布され、その平面視形状の処理剤付着部分が生機Bの長手方向に所定間隔を開けて形成されていく。つまり、生機Bの表面に、長手方向にスポット的な処理剤付着部分が複数形成され、この場合には、処理剤付着部分は、長手方向に非連続である。
一方、例えば、連続的な形状の塗布部が設けられているロール41を用いた場合には、生機Bの表面に、その長手方向に連続的に延びる平面視帯状の処理剤付着部分が形成されていく。
【0050】
複数のロール41(図示例では、第1ロール411及び第2ロール412)を用いた場合、それぞれのロール41の処理剤Cの塗布によって形成される処理剤付着部分は、その一部が重なっていてもよく、或いは、何れもが重ならないものでもよい。処理剤付着部分の一部が重なるとは、例えば、第1ロール411の塗布によって形成される処理剤付着部分に、第2ロール412の塗布によって形成される処理剤付着部分の一部が重なることをいう。処理剤付着部分の何れもが重ならないとは、例えば、第1ロール411の塗布によって形成される処理剤付着部分に、第2ロール412の塗布によって形成される処理剤付着部分が重ならないことをいう。
複数のロール41を使用する意義から、それぞれのロール41は、それらによって形成される処理剤付着部分が重ならないように、処理剤Cを塗布するように構成されていることが好ましい。処理剤付着部分が重なるように処理剤Cが塗布されると、下流側のロール41(図示例では、第2ロール412)の塗布部に、上流側のロール41(図示例では、第1ロール411)からの処理剤Cが接触し、下流側のロール41が上流側のロール41の処理剤で汚染されるおそれがある。
【0051】
なお、図10において、処理剤付着部分を判り易く示すため、便宜上、第1ロール411による処理剤付着部分に左下がり斜線を付し、第2ロールによる処理剤付着部分に右下がり斜線を付している。
図10において、第1ロール411に基づく処理剤付着部分は平面視略矩形状とされており、第2ロール412に基づく処理剤付着部分は平面視帯状とされている。第1ロール411に基づく処理剤付着部分と第2ロール412に基づく処理剤付着部分とは、互いに重ならず、生機Bの幅方向において間隔を有して離れている。
なお、各ロール41による処理剤付着部分の平面視形状は、これに限定されず、ロール41の塗布部の形態を適宜設定することにより、処理剤Cを様々な形状に塗布できる。また、各ロール41の周面において、その周方向及び/又は軸方向に塗布部を適宜な位置に配置することにより、前記のように各ロール41によって形成される処理剤付着部分が重ならないようにすることができる。この場合、各ロール41の塗布部を同形同大(例えば、同じ大きさの略矩形状など)にした場合でも、各ロール41において塗布部の配置をずらすことにより、前記のように各ロール41によって形成される処理剤付着部分が重ならないようにすることができる。
前処理を行った後に染色処理が行われる。
【0052】
<染色工程>
連続染色機Aの搬送装置3を用いて、前記前処理を行った未染色の生機Bをその長手方向に搬送する。図10及び図11に示すように、搬送途中に配置された各吐出口51から染色剤が吐出され、染色剤は、誘導板52の表面を伝ってその下端から生機Bの表面に塗布される。
上記のように、複数のタンク56が設けられた連続染色機Aにあっては、通常、それぞれのタンク56に異なる染色剤が入れられる。もっとも、複数のタンク56が設けられている連続染色機Aであっても、その複数のタンク56から選ばれる少なくとも2つのタンクに同じ染色剤を入れてもよく、或いは、全てのタンクに同じ染色剤を入れてもよい。
異なる染色剤は、(a)パイル糸を染色する色彩が異なる染色剤、(b)色彩は同系統であるが色の濃さが異なる染色剤、(c)色彩は同じであるが染色剤自体の濃度が異なる、(d)後述するように種類が異なる染色剤(例えば、酸性染料とカチオン染料は、種類が異なる染色剤である)、(e)前記(a)乃至(d)から選ばれる少なくとも2つの組み合わせ、などが挙げられる。
【0053】
例えば、第1タンク561に、所望の色彩(例えば、青色など)にパイル糸を染色できる染色剤が入れられ、第2タンク562に、これと異なる色彩(例えば、白色など)にパイル糸を染色できる染色剤が入れられる。また、例えば、第1タンク561に、所望の色彩の酸性染料が入れられ、第2タンク562に所望の色彩のカチオン染料が入れられる。以下、これらの異なる染色剤を、第1染色剤、第2染色剤という場合がある。
なお、上記では、タンク、供給チューブ、調整部及び吐出口を含む染色剤供給部が2組である染色機を図示しているが、染色剤供給部が3組以上設けられている場合には、それぞれの供給部から異なる染色剤が吐出されることが好ましい。
また、各タンクに入れられる染色剤は、種々の染料を組み合わせてもよく、たとえば酸性染料とカチオン染料とを混合した混合染料、複数の酸性染料を混合して所望の色に調整した染料などでもよい。
【0054】
染色剤の種類は、パイル糸に応じて適宜設定でき、例えば、染料、顔料が挙げられ、好ましくは、染料が用いられる。前記染料の種類としては、例えば、酸性染料、カチオン染料、含金属性染料、分散染料、直接染料、反応染料、蛍光染料、硫化染料、これらの組み合わせなどが挙げられる。
染色剤は、流動性を有する液状のものが使用される。
染色剤の粘度は、特に限定されないが、余りに粘度が大きいと染色剤が誘導板52の表面上で良好に流れず、余りに粘度が小さいと染色剤が誘導板52の表面を伝って早期に流れてしまうおそれがある。かかる観点から、染色剤の粘度は、0.6mPa・s〜100mPa・sが好ましく、0.6mPa・s〜10mPa・sがより好ましい。
ただし、本明細書において、染色剤の粘度は、23℃で、E型粘度計(株式会社東京計器製の型式「VISCONIC E」、回転数0.5〜100RPM)を用いて測定される。
【0055】
各吐出口51からの染色剤の吐出速度は、特に限定されず、それぞれ独立して、例えば、0.2〜10L/minであり、好ましくは、0.5〜5L/minである。吐出速度を前記範囲にすることによって、誘導板52上で染色剤が跳ね返ることを効果的に防止できる。
染色剤は、各吐出口51から吐出される。
各吐出口51からの染色剤の吐出性状は、特に限定されず、染色剤を霧状に吐出してもよいが、誘導板52上にて第1染色剤と第2染色剤(異なる染色剤)を良好に混ぜ合わせるために、図11に示すように、各染色剤を吐出口51から略直線状に吐出することが好ましい。各吐出口51からそれぞれ出された染色剤は、まず誘導板52上にストライプ状に落ちる。
【0056】
第1吐出口511から第1染色剤D1を及び第2吐出口512から第2染色剤D2をそれぞれ誘導板52上に吐出すると、第1染色剤D1と第2染色剤D2は、誘導板52上を伝って誘導板52の下端521側へと流れていく。そして、第1染色剤D1と第2染色剤D2は、誘導板52の下端521側に向かうに従い幅方向に拡がっていき、誘導板52の下端521近傍領域において2つの川が合流するかの如く両染色剤が混じり合いながら、誘導板52の下端521から生機Bの表面へと移行する。
なお、図10において、判り易く示すため、便宜上、第1染色剤に無数のドットを付し、第2染色剤に網掛けを付している(図12及び図14も同様)。
このように予め誘導板52上にて混じり合った第1染色剤D1と第2染色剤D2が生機Bに移行することにより、第1染色剤D1から第2染色剤D2(又は第2染色剤D2から第1染色剤D1)へと色変化が連続的になる。従って、主として第1染色剤D1が塗布された領域と、主として第2染色剤D2が塗布された領域と、その2つの領域の間に、両染色剤が混じり合って塗布され且つ連続的に色変化したグラデーション領域と、が生機Bの表面に形成される。
【0057】
また、流量計54にて計測した各吐出口51からの染色剤の吐出量に基づいて、各吐出口51の調整部53を作動させ、任意の吐出口51からの染色剤の吐出量を増減させ、或いは、停止させることができる。
また、流量計54による染色剤の吐出量とは無関係に、調整部53を作動させ、任意の吐出口51からの染色剤の吐出量を増減させ、或いは、停止させることができる。各調整部53は、それぞれ独立しており、各吐出口51からの染色剤の吐出量の増減及び停止を、調整部53により、各吐出口51毎にそれぞれ独立して行うことができる。また、各吐出口51を複数のグループに分けて、グループごとに独立して、吐出口51からの染色剤の吐出量の増減及び停止を制御してもよい。
【0058】
調整部53の動作は、上述のように、例えば、制御装置(図示せず)にて制御される。制御装置では、例えば、流量計54の数値が大きい場合には染色剤の吐出量を減らし、逆に小さい場合には吐出量を増すという、フィードバック制御などの自動制御が行われる。このような制御を行なうことによって、染色剤の種類や粘度などの物性や環境変化に因らず、吐出量を安定化させることができる。なお、管理者が、手動で調整部53を作動させて、染色濃度や混色状態、染色剤の切替などの染色条件を変えたり、流量計54を見ながら吐出量を安定化するなどの調整を行なってもよい。なお、調整部53として電磁弁のようなON/OFFタイプのものを用いた場合には、各吐出口51の染色剤の吐出と停止が行われる。各吐出口51の染色剤の吐出と停止を制御することによって、混色状態や染色剤の切替又は交換などの染色条件を変えることができる。
【0059】
例えば、図12に示すように、複数の第1吐出口511のうち、1つ又は2つ以上の第1吐出口511からの染色剤を、調整部53によって停止させる。或いは、複数の第2吐出口512のうち、1つ又は2つ以上の第2吐出口512からの染色剤を、調整部53によって停止させる。停止された吐出口51からは染色剤が出なくなるので、その吐出口51の両隣の吐出口51からの染色剤が誘導板52上において混じり合いながら、誘導板52の下端521から生機Bの表面へと移行するようになる。
図12では、紙面上側から2番目の第2吐出口512と7番目の第1吐出口511とからの染色剤を調整部53にて停止させている。この場合、上側から1番目と3番目の第1吐出口511からの第1染色剤が混じり合うが、上側から2番目の第2吐出口512が停止しているため、前記混じり合う第1染色剤の濃度が薄くなる。このため、この領域において生機Bも薄く染色され、ぼかし調となる。上側から6番目と8番目の第2吐出口512からの第2染色剤についても同様である。
【0060】
また、特に図示しないが、別の形態では、複数の第1吐出口511のうち、1つ又は2つ以上の第1吐出口511からの染色剤の量を、調整部53によって減少させる。或いは、複数の第2吐出口512のうち、1つ又は2つ以上の第2吐出口512からの染色剤の量を、調整部53によって減少させる。調整部53によって絞られた吐出口51からの染色剤の吐出は少なくなるので、その吐出口51からの染色剤に、その両隣の吐出口51からの染色剤が大きく混じり合いながら、誘導板52の下端521から生機Bの表面へと移行するようになる。
また、特に図示しないが、別の形態では、複数の第1吐出口511のうち、1つ又は2つ以上の第1吐出口511からの染色剤の量を、調整部53によって増加させる。或いは、複数の第2吐出口512のうち、1つ又は2つ以上の第2吐出口512からの染色剤の量を、調整部53によって増加させる。
これらの染色剤の停止、減少及び増加は、各吐出口51から任意に選択して行うことができる。
【0061】
<後処理工程>
前記染色剤を塗布した生機B1は、図3に示すように、必要に応じて、そのパイル面にスチーム室91に通してスチームを当てることよって、染色剤を定着させることが好ましい。スチームを当てることにより、生機B1が色落ちし難くなる。
さらに、必要に応じて、生機B1を洗浄室92に通してパイル面を洗浄することが好ましい。洗浄によって、残存する染色剤などを除去することができる。洗浄液は、染色剤や処理剤などの残存成分を除去できるものであれば特に限定されないが、例えば、水又は低濃度のアルコール水などが挙げられる。洗浄液の温度は、通常、5℃〜50℃程度である。洗浄方法としては、特に限定されず、例えば、生機B1に洗浄液を吹き付ける方法、洗浄液が満たされた浴中に生機B1を通す方法などが挙げられる。
また、洗浄後、生機B1を乾燥する。乾燥方法は、特に限定されず、自然乾燥、温風を用いた乾燥などが挙げられる。
【0062】
<裏面層の形成工程>
前記染色済みの生機B1の裏面に裏面層を形成する。裏面層の形成は、従来公知な方法によって行うことができる。
裏面層を形成することによって、長尺帯状のカーペットが得られる。なお、裏面層の形成は、染色工程の前に行ってもよい。この場合、裏面に裏面層が形成された未染色の生機Bに対して、上記染色工程が行われる。また、裏面層が複数の層から構成される場合、その裏面層の形成工程を2つ以上に分けて行い、1つを染色工程前に行い、残りを染色工程後に行ってもよい。
このようにして得られた長尺帯状のカーペットを、所望の形状に裁断することにより、図1に示す様な枚葉状のカーペット1が得られる。なお、長尺帯状のカーペットのままで保管・運搬してもよい。
【0063】
本発明のカーペットの連続染色機及び連続染色方法は、長尺帯状の生機Bに連続的に染色を施すことができ、カーペットの製造効率に優れている。
さらに、本発明のカーペットの連続染色機及び連続染色方法は、染色部5の上流側に前処理部4が設けられ、前処理部4にて防染剤及び水のうち少なくとも一方を含む処理剤Cを生機Bに塗布する。このため、その後、染色部5にて染色剤を塗布すると、処理剤付着部分の中央部が染色剤にてほとんど染色されず薄い色彩となり、その中央部から処理剤付着部分の周囲に向かうに従って徐々に濃くなっていき、処理剤付着部分の外側において染色剤の色彩となる。
ぼかし調の色模様は、処理剤Cの粘度の調整、防染剤が含まれている処理剤Cを使用する場合にはその防染剤の含有比率などを調整することによって、ぼかしの強弱を制御できる。例えば、粘度の高い処理剤Cを使用すると、ぼかし調が弱くなり輪郭がくっきりと表出されるようになり、反対に、その粘度の低い処理剤Cを使用すると、ぼかし調が強くなる。また、防染剤の含有比率の高い処理剤Cを使用すると、ぼかし調が強くなり、防染剤の含有比率の低い処理剤Cを使用すると、ぼかし調が弱くなる。
【0064】
このように本発明によれば、処理剤付着部分の周囲において染色剤が滲み出たような自然な感じのぼかし調の色模様に生機B1を染色できる上、処理剤Cを所望の部分に塗布することにより、様々なぼかし調の色模様に生機B1を染色できる。
特に、連続染色機を用いた染色にあっては、従来では、長手方向に連続しない柄を表出させることは困難である。この点、本発明によれば、処理剤Cを生機Bの長手方向にスポット的に塗布することもでき、この場合、生機Bの長手方向に非連続の処理剤付着部分が形成されるので(例えば、図10など参照)、長手方向に連続しない色模様を表出させることができる。このように本発明によれば、生機に様々な色模様を表出できる。
【0065】
また、染色部5は、複数の吐出口51の下方に誘導板52が設けられているので、さらに、生機Bを良好なぼかし調の色模様に染色できる。
具体的には、上述のように、第1吐出口511及び第2吐出口512(各吐出口51)からの第1染色剤D1及び第2染色剤D2は、予め誘導板52上にて混じり合いながら生機Bに移行する。誘導板52上を流れる第1染色剤D1及び第2染色剤D2は、染色剤そのものが有する流動性に従って混じり合うので、両染色剤の間では作為的でない自然な感じのグラデーションを生じる。それが生機Bに移行することにより、生機Bの表面に、第1染色剤D1で染色された領域と、第2染色剤D2で染色された領域と、その2つの色彩の領域の間に、2つの染色剤が混じり合い且つ自然な色変化のグラデーション領域と、を有する良好なぼかし調の色模様に染色できる。このグラデーション領域は、第1染色剤D1の色彩から第2染色剤D2の色彩(第2染色剤D2の色彩から第1染色剤D1の色彩)へと連続的に変化しており、自然な色変化のぼかし調のデザインを有するカーペットを提供できる。なお、第1染色剤と第2染色剤が同じ色彩の染色剤である場合には、グラデーション領域は、単一色彩でその色の濃さが薄くなったぼかし調となる。
【0066】
上記前処理部4に加えて上記染色部5を有する連続染色機Aは、第1染色剤D1で染色された領域と、第2染色剤D2で染色された領域と、自然な色変化のグラデーション領域とが、処理剤付着部分に重なった箇所において、それぞれ、染色剤にてほとんど染色されない薄い色彩と染色剤が滲み出たような自然な感じのぼかし調の色模様を生じる。このため、前処理部に前記染色部を組み合わせることにより、自然な感じのぼかし調の色模様をより複雑且つ多彩に表出できる。
また、前処理部4と染色部5により、染色部5の連続染色において、色模様を表出させつつ、生機全体を効率良く且つ大量に染色することができる。
【0067】
さらに、流量計54にて各染色剤の吐出量を計測しているので、各吐出口51において染色剤が不用意に多く吐出されているなどの事態を発見でき、調整部53を介して各吐出口51の染色剤の量を調整できる。
また、各吐出口51に調整部53が設けられているので、各吐出口51ごとに独立して染色剤の吐出量を制御でき、様々なぼかし調の色模様に生機B1を染色できる。
【0068】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限られず、本発明の意図する範囲で様々に変更できる。以下、本発明の他の実施形態を説明するが、その説明に於いては、主として上記実施形態と異なる構成及び効果について説明し、同様の構成などについては、用語又は符号をそのまま援用し、その構成の説明を省略する場合がある。
【0069】
上記実施形態において、前処理部4としてロール41が用いられているが、例えば、図13に示すように、スプレー42を用いてもよい。
スプレー42は、処理剤Cを霧状に噴霧するものである。スプレー42は1つでもよいが、図示例のように、生機Bの幅方向に複数設けられていることが好ましい。スプレー42に処理剤を供給するチューブは、途中で省略している。
また、複数のスプレー42は、図示のように、生機Bの幅方向に1列に並んで配置されていてもよく、或いは、特に図示しないが、幅方向に並んだ列が長手方向に2列以上並んで配置されていてもよく、或いは、幅方向と長手方向に交互に(平面視で千鳥状に)配置されていてもよい。また、スプレー42を幅方向及び/又は上下方向などに移動可能に設けてもよい。例えば、スプレー42は、移動装置(図示せず)が設けられていてもよい。この場合、スプレー42を幅方向に移動させながら処理剤を塗布することにより、例えば、生機Bの表面に長手方向に蛇行した波状の処理剤付着部分を形成でき、さらに、変化に富んだ色模様を表出できる。
【0070】
スプレー42の材質は、特に限定されず、金属、合成樹脂などが挙げられる。中でも、耐腐食性に優れ、染色剤が付着し難いことから、スプレー42はステンレスで形成されていることが好ましい。
【0071】
前処理部4としてスプレー42が用いられている連続染色機も上記と同様に搬送装置3を用いて、長尺帯状の未染色の生機Bをその長手方向に搬送し、図14及び図15に示すように、スプレー42(前処理部4)から生機Bの表面に処理剤Cが塗布される。なお、図14において、処理剤が塗布された部分を判り易く示すため、便宜上、処理剤に斜線を付している。
処理剤Cとしては、特に限定されない。スプレー42にて処理剤を塗布する本実施形態においては、処理剤Cは、必ずしも糊剤を含んでいなくてもよい。例えば、本実施形態では、処理剤Cとして、上記で例示した第1例乃至第15例のような様々なものを用いることができ、上記第9例乃至第15例から選ばれることが好ましい。
本実施形態における処理剤の粘度は、特に限定されないが、好ましくは、0.1mPa・s〜5000mPa・sであり、より好ましくは、0.5mPa・s〜3000mPa・sである。このような粘度の処理剤Cを用いることにより、スプレー42を用いて処理剤Cを生機Bに良好に塗布できる。
【0072】
各スプレー42から噴霧される処理剤Cは、同じでもよく、スプレー42ごとに異なっていてもよい。図示例では、複数のスプレー42のうち幾つかのスプレーCから1種の処理剤Cが生機Bに噴霧され、残るスプレー42からこれと異なる処理剤Cが生機Bに噴霧された状態を示している。図14において、1種の処理剤に左下がり斜線を付し、これと異なる処理剤Cに右下がり斜線を付している。
スプレー42を用いた前処理部4でも、上記実施形態と同様に、前処理部4にて防染剤及び水のうち少なくとも一方を含む処理剤Cを所望の部分に塗布することにより、様々なぼかし調の色模様に生機B1を染色できる。
特に、スプレー42を用いると、比較的粘度の低い処理剤Cを塗布できるので、より自然な感じのぼかし調の色模様を表出できる。
【0073】
さらに、上記実施形態の染色工程において、各吐出口51から異なる染色剤を生機Bに塗布しているが、例えば、全ての吐出口51から同じ染色剤を生機Bに塗布してもよい。この場合、カーペットの生機Bは、色彩的には1色となるが、処理剤Cを塗布しているので、処理剤付着部分において自然な感じの濃淡が生じ、1色のぼかし調のカーペットが得られる。
【0074】
また、上記実施形態の連続染色機の染色部5は、複数の吐出口51にそれぞれ独立して流量計54及び調整部53が設けられているが、各吐出口51にこれらを設けなくてもよい。或いは、各吐出口51にこれらを設けず、タンク561,562とマニホール591,592の間に流量計及び調整部を設けてもよい。
さらに、染色部5の吐出口513は、独立した複数のものに限られず、例えば、図16に示すように、生機Bの幅方向に延びるスリット状の開口513aを有する吐出口513を用いてもよい。かかる吐出口513に、タンク563から供給管583を通じて染色剤が供給され、染色剤が開口513aから誘導板52上に吐出される。なお、図示例の吐出口513は、生機Bの幅方向全体に染色剤を塗布できる程度に、生機Bと略同幅に形成された開口513aを有する。もっとも、スリット状の開口は、生機Bの幅と略同じに限られず、例えば、生機Bの幅の半分や1/3などに形成されていてもよい(図示せず)。また、図示例の吐出口513は、生機Bに対して1つだけ設けられているが、これに限定されず、2つ以上設けられていてもよい。
【0075】
また、染色部5は、誘導板52を有するが、誘導板52を設けずに、吐出口から直接的に染色剤を生機Bの表面に塗布するようにしてもよい。
その他、本発明の連続染色機及び連続染色方法は、上記各実施形態及び変形例に限られず、本発明の意図する範囲で様々に設計変更できる。
【符号の説明】
【0076】
A 連続染色機
B 染色前の生機
B1 染色後の生機
C 処理剤
D1,D2 染色剤
1 カーペット
3 搬送装置
4 前処理部
41,411,412 ロール
42 スプレー
5 染色部
51,511,512,513 吐出口
52 誘導板
53 調整部
54 流量計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
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図15
図16