特開2018-168961(P2018-168961A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 武蔵精密工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2018168961-差動装置 図000003
  • 特開2018168961-差動装置 図000004
  • 特開2018168961-差動装置 図000005
  • 特開2018168961-差動装置 図000006
  • 特開2018168961-差動装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-168961(P2018-168961A)
(43)【公開日】2018年11月1日
(54)【発明の名称】差動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 48/38 20120101AFI20181005BHJP
   F16H 48/08 20060101ALI20181005BHJP
【FI】
   F16H48/38
   F16H48/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-67251(P2017-67251)
(22)【出願日】2017年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000238360
【氏名又は名称】武蔵精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 裕之
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA37
3J027HB07
3J027HC02
3J027HC07
3J027HC12
3J027HC29
(57)【要約】
【課題】差動ギヤの焼き付きを抑制することができる差動装置を提供する。
【解決手段】差動装置は、複数の差動ギヤ26と、複数の差動ギヤを各々両持ち支持する複数の両端支持部45を有する支持部材29と、複数の差動ギヤと各々噛み合う一対の出力ギヤ27,28と、支持部材に接続されるとともに一対の出力ギヤの背面を覆うことができる複数のカバー部材18,19と、を備え、各々の両端支持部45の内端側支持部48と外端側支持部49には、各々差動ギヤ26を出力ギヤ回転軸方向から挿入可能に支持する切り欠き部51,57が形成されており、各々の差動ギヤ26は、内端側支持部48と摺動可能な内端側軸部33と、外端側支持部49と摺動可能な外端側軸部34と、内端側軸部33と外端側軸部34との間に設けられる出力ギヤと噛み合うギヤ歯部32と、を有し、外端側軸部34は、ギヤ歯部32の最外周部の径Mよりも小径である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の差動ギヤ(26)と、
前記複数の差動ギヤ(26)を各々両持ち支持する複数の両端支持部(45)を有する支持部材(29)と、
前記複数の差動ギヤ(26)と各々噛み合う一対の出力ギヤ(27,28)と、
前記支持部材(29)に接続されるとともに前記一対の出力ギヤ(27,28)の背面を覆うことができる複数のカバー部材(18,19)と、
を備え、
各々の前記両端支持部(45)は、内端側支持部(48)と、外端側支持部(49)と、を有し、
前記内端側支持部(48)と前記外端側支持部(49)には、各々前記差動ギヤ(26)を前記出力ギヤ(27,28)の回転軸方向から挿入可能に支持する切り欠き部(51,57)が形成されており、
各々の前記差動ギヤ(26)は、
前記内端側支持部(48)と摺動可能な内端側軸部(33)と、
前記外端側支持部(49)と摺動可能な外端側軸部(34)と、
前記内端側軸部(33)と前記外端側軸部(34)との間に設けられる前記出力ギヤ(27,28)と噛み合うギヤ歯部(32)と、
を有し、
前記外端側軸部(34)は、前記ギヤ歯部(32)の最外周部の径(M)よりも小径である、
差動装置。
【請求項2】
前記内端側軸部(33)の軸方向の長さ(B)と前記外端側軸部(34)の軸方向の長さ(C)はそれぞれ前記ギヤ歯部(32)の軸方向の長さ(D)の2分の1よりも大きい、
請求項1に記載の差動装置。
【請求項3】
前記内端側軸部(33)の軸方向の長さ(B)が前記外端側軸部(34)の軸方向の長さ(C)よりも長い、
請求項1または2に記載の差動装置。
【請求項4】
少なくとも1つの前記切り欠き部(57)は、U字状を形成している、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の差動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動四輪車といった車両に搭載される差動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
差動装置において、従来より、短いピニオンシャフト(差動ギヤ支持部材)を支持部材で両持ち支持する技術が知られている(例えば、特許文献1)。また、ピニオンギヤ(差動ギヤ)を支持する十字軸を嵌着する、U字状の切り欠きを有する支持筒を備えたデフケースが知られている(例えば、特許文献2)。また、一方端部にピニオンシャフトの機能を果たす凸部を有するピニオンギヤについて開示されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国実用新案公報第202441834号
【特許文献2】特開昭61−192948号公報
【特許文献3】特許第5167876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらを組み合わせた技術では、周速が高いピニオンギヤのギヤ部の最外径とケースとが摺動するため、ピニオンギヤが焼き付いてしまう虞があった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、ピニオンギヤ(差動ギヤ)の焼き付きを抑制することができる差動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る1つの差動装置は、複数の差動ギヤと、前記複数の差動ギヤを各々両持ち支持する複数の両端支持部を有する支持部材と、前記複数の差動ギヤと各々噛み合う一対の出力ギヤと、前記支持部材に接続されるとともに前記一対の出力ギヤの背面を覆うことができる複数のカバー部材と、を備え、各々の前記両端支持部は、内端側支持部と、外端側支持部と、を有し、前記内端側支持部と前記外端側支持部には、各々前記差動ギヤを前記出力ギヤの回転軸方向から挿入可能に支持する切り欠き部が形成されており、各々の前記差動ギヤは、前記内端側支持部と摺動可能な内端側軸部と、前記外端側支持部と摺動可能な外端側軸部と、前記内端側軸部と前記外端側軸部との間に設けられる前記出力ギヤと噛み合うギヤ歯部と、を有し、前記外端側軸部は、前記ギヤ歯部の最外周部の径よりも小径である。
【0007】
また、好適には、前記内端側軸部の軸方向の長さと前記外端側軸部の軸方向の長さはそれぞれ前記ギヤ歯部の軸方向の長さの2分の1よりも大きい。
【0008】
また、好適には、前記内端側軸部の軸方向の長さが前記外端側軸部の軸方向の長さよりも長い。
【0009】
また、好適には、少なくとも1つの前記切り欠き部は、U字状を形成している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、差動ギヤの焼き付きを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る差動装置の全体構成を模式的に示す断面図である。
図2】支持部材の斜視図である。
図3】支持部材の正面図である。
図4図3の4−4線に沿った拡大断面図である。
図5】ピニオンギヤの回転軸線を含む仮想平面で切った拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施形態に係る差動装置11の全体構成を模式的に示している。自動車は、自動車に搭載される動力源としてのエンジン(図示しない)の横に配置されて、トランスミッション(図示しない)や差動装置11を収容するミッションケース12を備える。ミッションケース12には、車軸にそれぞれ連なる左右1対の出力軸13a,13bが中心軸CL回りで回転自在に支持される。2つの出力軸13a,13bは、相互に同軸に配置され、ミッションケース12内で差動装置11に結合される一端をそれぞれ有する。
【0014】
ミッションケース12と個々の出力軸13a,13bとの間には例えば環状のシール部材14a,14bが装着される。シール部材14a,14bは、ミッションケース12と、回転する出力軸13a,13bとの間を液密に塞ぐ。本実施形態では、ミッションケース12の底部に、ミッションケース12の内部空間に臨んで所定量の潤滑油を貯留するオイルパン(図示しない)が形成される。オイルパンに貯留された潤滑油はミッションケース12の内部空間で減速歯車機構15の可動要素や後述するデフケース16の回転によって周辺に掻き上げられて飛散する。このようにして、減速歯車機構15の可動要素や後述するデフケース16の回転によって飛散された潤滑油で後述するデフケース16の内外に存在する機械運動部分は潤滑される。
【0015】
差動装置11は、例えば、中心軸CL回りで回転自在にミッションケース12に支持されるデフケース(入力部材)16と、デフケース16内に収容される差動機構としての差動ギヤ機構17と、を備える。
【0016】
デフケース16は、例えば、中心軸CLに直交する平面に沿うように差動ギヤ機構17の一側面(一方の側面,他方の側面)を覆うことができる第1カバー部材18と、中心軸CLに直交する平面に沿うように第1カバー部材18と対向する差動ギヤ機構17の他の側面(他方の側面,一方の側面)を覆うことができる第2カバー部材19と、第1カバー部材18および第2カバー部材19に結合可能であり、第1カバー部材18および第2カバー部材19とは異なる方向から差動ギヤ機構17を覆うことができるリング部材21と、を有する。
【0017】
第1カバー部材(一方のカバー部材,他方のカバー部材,カバー部材,ケース,入力部材)18は、例えば、中心軸CLを中心とする中央部に空間を有するリング形状に形成される第1カバー体18aと、第1カバー体18aの内周端部から第2カバー部材19と対向する向きとは反対側に突き出る円筒形の第1軸受け部(第1ボス部)18bと、を有する。また、第1カバー部材18は、後述するサイドギヤ(一方のサイドギヤ,一方の出力ギヤ,他方のサイドギヤ,他方の出力ギヤ)27の背面を覆うことができる。
【0018】
第1軸受け部18bの外周面には玉軸受け部材22aが装着される。第1軸受け部18bは玉軸受け部材22aの内輪に嵌め合わせられる。玉軸受け部材22aの外輪はミッションケース12に嵌め込まれる。このようにして第1軸受け部18bはミッションケース12に回転自在に支持される。
【0019】
また、第2カバー部材(他方のカバー部材,一方のカバー部材,カバー部材,ケース,入力部材)19は、例えば、中心軸CLを中心とする中央部に空間を有するリング形状に形成される第2カバー体19aと、第2カバー体19aの内周端部から第1カバー部材18と対向する向きとは反対側に突き出る円筒形の第2軸受け部(第2ボス部)19bと、を有する。また、第2カバー部材19は、後述するサイドギヤ(他方のサイドギヤ,他方の出力ギヤ,一方のサイドギヤ,一方の出力ギヤ)28の背面を覆うことができる。
【0020】
第2軸受け部19bの外周面には玉軸受け部材22bが装着される。第2軸受け部19bは玉軸受け部材22bの内輪に嵌め合わせられる。玉軸受け部材22bの外輪はミッションケース12に嵌め込まれる。このようにして第2軸受け部19bはミッションケース12に回転自在に支持される。
【0021】
リング部材(ドリブン部材,ケース,入力部材)21は、外周面に設けられる外向きのギヤ歯23を有する。ギヤ歯23は中心軸CLに同軸に環状に配置される。また、リング部材21のギヤ歯23は減速歯車機構15のギヤ歯24と噛み合う。そのため、エンジンの動力がトランスミッションからデフケース16に伝達される。したがって、リング部材21はいわゆるリングギヤ(ドリブンギヤ)として機能するとともに、入力部材としても機能する。
【0022】
差動ギヤ機構17は、例えば、中心軸CLに直交する回転軸線25回りで回転自在に支持される複数のピニオンギヤ(差動ギヤ)26と、中心軸CL回りに回転自在に支持されて、複数のピニオンギヤ26に各々噛み合う1対のサイドギヤ(出力ギヤ)27,28(即ち第1サイドギヤ(第1出力ギヤ)27および第2サイドギヤ(第2出力ギヤ)28)と、複数のピニオンギヤ26を各々両持ち支持する支持部材29と、を有する。
【0023】
個々のピニオンギヤ26は、例えば、支持体31と、支持体31からピニオンギヤ26の径方向外方に突き出るギヤ歯部32と、支持体31からサイドギヤ27,28の径方向内方に突出する内端側突部(内端側軸部)33と、支持体31からサイドギヤ27,28の径方向外方に突出する外端側突部(外端側軸部)34と、を有する。本実施形態では、例えば、支持体31、ギヤ歯部32、内端側突部33および外端側突部34は一体に形成されている。ギヤ歯部32には複数のギヤ歯が内端側突部33および外端側突部34の軸心周りで環状に配列されている。また、ギヤ歯部32は、内端側突部33と外端側突部34との間に設けられて、サイドギヤ27,28に各々噛み合う。
【0024】
内端側突部33および外端側突部34は、例えば、回転軸線25に同軸の円筒形状を成している。外端側突部34は、例えば、ギヤ歯部32の最外周部の径Mよりも小径の外径を有する。また、内端側突部33のピニオンギヤ26における軸方向の長さBと、外端側突部34のピニオンギヤ26における軸方向の長さCは、例えば、それぞれ支持体31のピニオンギヤ26における軸方向の長さDの2分の1よりも大きい。また、内端側突部33のピニオンギヤ26における軸方向の長さBは、例えば、外端側突部34のピニオンギヤ26における軸方向の長さCよりも長い。
【0025】
また、支持体31の背面には、例えば、外端側突部34の外周からピニオンギヤ26の径方向外方に広がって支持部材29の受け面35に受け止められるスライド面36が形成される。スライド面36は例えば回転軸線25に直交する平面で構成される。また、支持部材29の受け面35と個々のピニオンギヤ26のスライド面36との間にはワッシャー37が介在していてもよい。
【0026】
1対のサイドギヤ27,28の各々は、例えば、各々の出力軸13a,13bの先端部がそれぞれスプライン嵌合される軸孔39を有する円筒状の軸部41と、軸部41からサイドギヤ27,28の径方向外方に離れた位置に在って複数のピニオンギヤ26に噛合するギヤ歯を有する円環状の歯部42と、軸部41のサイドギヤ27,28の軸方向内方側の先端部から歯部42の内周端部に向かってサイドギヤ27,28の径方向外方に延びるリング板状に形成される中間壁部43と、を備える。第1サイドギヤ27および第2サイドギヤ28の相対回転は回転軸線25回りのピニオンギヤ26の回転によって引き起こされる。
【0027】
また、サイドギヤ27,28の軸部41は、例えば、それぞれ対応する第1軸受け部18bおよび第2軸受け部19bに覆われる。また、出力軸13a,13bは対応する軸部41に相対回転不能に嵌め入れられる。このようにして個々のサイドギヤ27,28はデフケース16を介してミッションケース12に回転自在に支持される。
【0028】
図2および図3を参照し、支持部材29は、例えば、中心軸CL周りに等間隔に配置されて、個々にピニオンギヤ26を回転自在に両持ち支持する両端支持部45と、両端支持部45を相互に連結する複数のフレーム部46と、を有する。本実施形態では中心軸CL周りで中心角90度ごとに4つの両端支持部45が設けられている。
【0029】
両端支持部45は、例えば、フレーム部46によって形成される複数のピニオンギヤ26の配置空間47を挟んでサイドギヤ27,28の径方向内方および径方向外方にそれぞれ配置される複数の第1支持部(内周側支持部,内端側支持部)48および第2支持部(外周側支持部,外端側支持部)49を有する。
【0030】
各々の第1支持部48には、例えば、サイドギヤ27,28の回転軸方向からピニオンギヤ26の内端側突部33を挿入可能に支持する第1切り欠き部51が形成されている。第1切り欠き部51は、例えば、中心軸CLおよび回転軸線25を含む仮想平面に平行に形成される1対の壁部52を有する。1対の壁部52は、例えば、中心軸CLおよび回転軸線25を含む仮想平面に平行に広がって、内端側突部33の外径に等しい間隔で相互に向き合う軸受け面53を有する。また、軸受け面53同士の間に形成される空間は中心軸CLの軸方向に開放される。そのため、第1ピニオンシャフト33は、中心軸CLに平行に軸受け面53に沿って変位することができる一方で、軸受け面53は、中心軸CL周りの周方向における内端側突部33の変位を規制することができる。また、内端側突部33は第1支持部48に摺動する。
【0031】
各々の第2支持部49は、例えば、中心軸CLに直交する平面であって第1カバー部材18に面で接触する第1接触面54と、中心軸CLに直交する平面であって第2カバー部材19に面で接触する第2接触面55と、回転軸線25に直交しつつピニオンギヤ26の配置空間47に面する平面であって第1接触面54および第2接触面55を相互に接続する直交面56と、サイドギヤ27,28の回転軸方向からピニオンギヤ26の外端側突部34を挿入可能に支持する第2切り欠き部57と、を有する。各々の第2支持部49は第1カバー部材18および第2カバー部材19によって中心軸CLの方向から挟み込まれる。また、直交面56の一部は支持部材29の受け面35として機能する。
【0032】
第2切り欠き部57は、例えば、図4に示されるように、第2接触面55から第1接触面54に向かって外端側突部34の外径に等しい間隔でU字状に窪んだ窪み部58を有する。また、窪み部58のサイドギヤ27,28の径方向(ピニオンギヤ26の軸方向)における長さは、少なくとも直交面56から外端側突部34の軸方向の長さCを有する。また、窪み部58のサイドギヤ27,28の軸方向における長さは、例えば、第2接触面55から差動装置11を組付けた時にピニオンギヤ26の回転軸が回転軸線25と同軸となすところまで有する。そのため、外端側突部34は、窪み部58内で中心軸CLに平行に変位することができる一方で、窪み部58は、中心軸CL周りの周方向における外端側突部34の変位を規制することができる。また、外端側突部34は第2支持部49に摺動する。
【0033】
次に、本実施形態の作用について説明する。本実施形態の差動装置11は、エンジンから減速歯車機構15を介してデフケース16に回転力を受けた場合に、ピニオンギヤ26が回転軸線25回りに自転しないで、デフケース16とともにデフケース16の中心軸CL回りに公転するときは、デフケース16からピニオンギヤ26を介して左右のサイドギヤ27,28が同速度で回転駆動されて、サイドギヤ27,28の駆動力が均等に左右の出力軸13a,13bに伝達される。また、自動車の旋回走行等により左右の出力軸13a,13bに回転速度差が生じるときは、ピニオンギヤ26が自転しつつデフケース16の中心軸CL回りに公転することで、ピニオンギヤ26から左右のサイドギヤ27、28に対して差動回転を許容しつつ回転駆動力が伝達される。以上は、従来周知の差動装置の作動と同様である。
【0034】
ところで、本実施形態の差動装置11の組み立てにあたっては、例えば、まず、第1カバー部材18の第1軸受け部18bを下側とするように、第1カバー部材18を置く。次に、サイドギヤ27、28用のワッシャーを第1カバー部材18の第1カバー体18aの適当な位置に配置する。次に、第1サイドギヤ27を第1サイドギヤ27の歯部42が上を向くように、第1カバー部材18の第1カバー体18aの上(より具体的には、サイドギヤ27、28用のワッシャーの上)に置く。このとき、サイドギヤ27、28用のワッシャーが第1サイドギヤ27の歯部42の背面に位置するように調整する。
【0035】
次に、支持部材29の第2接触面55を上側、支持部材29の第1接触面54を下側とするように、支持部材29を第1カバー部材18の外周部に当接させる。このとき、第1サイドギヤ27の歯部42が支持部材29によって区画されるピニオンギヤ26を収容する空間を臨むように位置させる。
【0036】
次に、ピニオンギヤ26の内端側突部33が第1切り欠き部51を、外端側突部34が第2切り欠き部57を沿うように、ピニオンギヤ26の各々が第2接触面55側から第1切り欠き部51および第2切り欠き部57に向かって挿入される。このとき、第2切り欠き部57がU字状の窪み部58で形成されているため、ピニオンギヤ26を第2接触面55側から挿入するだけで、ピニオンギヤ26の第2支持部49での位置決めを行うことができる。すなわち、第2切り欠き部57がU字状の窪み部58で形成されていることで、ピニオンギヤ26の第2支持部49での位置決めを容易に行うことができる。そして、ピニオンギヤ26の外端側突部34が第2支持部49の窪み部58の適切な位置に配置されることで、ピニオンギヤ26と第1サイドギヤ27とが噛み合う。
【0037】
次に、第2サイドギヤ28を各々のピニオンギヤ26と噛み合うように配置する。次に、サイドギヤ27、28用のワッシャーを第2サイドギヤ28の歯部42の背面に位置するように配置する。次に、蓋をするように、第2カバー部材19を支持部材29の第2支持部49に当接させる。そして、第1カバー部材18および支持部材26、並びに、第2カバー部材19および支持部材26を各々ボルト等の締結手段で連結させる。その後、リング部材21を第1カバー部材18、支持部材26および第2カバー部材19の連結体にかぶせる。
【0038】
本実施形態によれば、ピニオンギヤ26の各々は、内端側突部33と、外端側突部34と、内端側突部33と外端側突部34との間に位置するギヤ歯部32と、を有し、外端側突部34が、ギヤ歯部32の最外径よりも小径である。また、支持部材29の各々の両端支持部45は、第1支持部48と、第2支持部49と、を有し、第1支持部48には、ピニオンギヤ26の内端側突部33を挿入可能に支持する第1切り欠き部51が形成され、第2支持部49には、ピニオンギヤ26の外端側突部34を挿入可能に支持する第2切り欠き部57が形成されている。そのため、支持部材29(より具体的には、第2支持部49)とピニオンギヤ26との摺動は、周速が高いギヤ歯部32と支持部材29(より具体的には、第2支持部49)ではなく、ギヤ歯部32よりも周速が低い外端側突部34と支持部材29(より具体的には、第2支持部49)とで行われる。従って、ピニオンギヤ26の焼き付きを抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、内端側突部33のピニオンギヤ26における軸方向の長さBと外端側突部34のピニオンギヤ26における軸方向の長さCがそれぞれギヤ歯部32のピニオンギヤ26における軸方向の長さDの2分の1よりも大きいことで、ピニオンギヤ26の内端側突部33および外端側突部34に加わる面圧を下げることができる。これにより、ピニオンギヤ26の耐久性の向上を図ることができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、内端側突部33の長さBが外端側突部34の長さCよりも長いことで、差動装置11全体を比較的大型化することなく、ピニオンギヤ26の耐久性の向上を図ることができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、第2切り欠き部57は、回転軸線25に直交する断面で見たときに、U字状を形成しているので、ピニオンギヤ26を第2接触面55側から挿入するだけで、ピニオンギヤ26の第2支持部49での位置決めを行うことができる。すなわち、本実施形態では、第2切り欠き部57がU字状で形成されていることで、ピニオンギヤ26の第2支持部49での位置決めを容易に行うことができる。これにより、差動装置11の組立性の向上を図ることができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【0043】
例えば、図5に示されるように、ピニオンギヤ26は外端側突部34のピニオンギヤ26における軸方向の端面で第2支持部49の窪み部58に支持されてもよい。このとき、サイドギヤ27,28の遠心方向に向かうピニオンギヤ26の軸方向の荷重は、第2切り欠き部57のサイドギヤ27,28における径方向外端(より具体的には、窪み部58のサイドギヤ27,28における径方向外端)で受け止められる。また、ピニオンギヤ26のギヤ歯部32の背面は、第2支持部49の直交面56から離れる。そのため、ピニオンギヤ26の焼き付きを抑制することができる。また、図5に示されるように、ピニオンギヤ26の外端側突部34の端面と第2切り欠き部57の内壁面との間にはワッシャー59が介在してもよい。
【0044】
また、本実施形態に係るピニオンギヤ26は、ピニオンシャフトの機能も有するピニオンギヤであったが、本発明はこれに限らない。本発明では、ピニオンギヤ(差動ギヤ)とピニオンシャフト(シャフト,差動ギヤ支持部材)とを別体に構成してもよい。ただし、この場合には、ピニオンシャフトは、ピニオンギヤが支持された状態(より具体的には、支持部材に挿入された状態)で、本実施形態のピニオンギヤ26の支持体31、内端側突部33および外端側突部34のそれぞれのピニオンギヤ26における軸方向の長さの関係を満たすように構成する必要がある。すなわち、ピニオンシャフトは、ピニオンシャフトの一端部および他端部を本実施形態のピニオンギヤ26の内端側突部33および外端側突部34のそれぞれのピニオンギヤ26における軸方向の長さの関係を満たすように構成する必要がある。さらに、ピニオンシャフトは、第1支持部48の第1切り欠き部51から抜け落ちないようにするため、例えば、本実施形態のピニオンギヤ26の支持体31と内端側突部33との内端側突部33側での境となる位置にピニオンシャフトの径方向に突出する突起部を設ける必要がある。
【符号の説明】
【0045】
11…差動装置、18…第1カバー部材(カバー部材,一方のカバー部材,他方のカバー部材,ケース,入力部材)、19…第2カバー部材(カバー部材,他方のカバー部材,一方のカバー部材,ケース,入力部材)、26…ピニオンギヤ(差動ギヤ)、27…第1サイドギヤ(サイドギヤ,第1出力ギヤ,出力ギヤ)、28…第2サイドギヤ(サイドギヤ,第2出力ギヤ,出力ギヤ)、29…支持部材、32…ギヤ歯部、33…内端側突部(内端側軸部)、34…外端側突部(外端側軸部)、45…両端支持部、48…第1支持部(内周側支持部,内端側支持部)、49…第2支持部(外周側支持部,外端側支持部)、51…第1切り欠き部、57…第2切り欠き部、B…内端側軸部の軸方向の長さ、C…外端側軸部の軸方向の長さ、D…ギヤ歯部の軸方向の長さ、M…ギヤ歯部の径。
図1
図2
図3
図4
図5