(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-16899(P2018-16899A)
(43)【公開日】2018年2月1日
(54)【発明の名称】パイル編み靴下及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A41B 11/00 20060101AFI20180105BHJP
【FI】
A41B11/00 C
A41B11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-146881(P2016-146881)
(22)【出願日】2016年7月27日
(71)【出願人】
【識別番号】593106228
【氏名又は名称】ナカイニット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】中井 秀典
【テーマコード(参考)】
3B018
【Fターム(参考)】
3B018AA03
3B018AB04
3B018AB07
3B018AC01
3B018AC04
3B018AD02
3B018AD03
3B018AD07
(57)【要約】
【課題】 ピリング(毛玉)の出来にくいパイル編み靴下を提供する。
【解決手段】 爪先部、足甲部、底部、踵部、レッグ部及び履口部が編み糸と弾性糸とでもって編成されている靴下において、少なくとも足甲部12及び底部13が、耐ピリング性に優れた編み糸21と短繊維の編み糸22を表糸とし弾性糸23を裏糸とするパイル編み組織を有し、耐ピリング性に優れた編み糸がパイル編み組織外表面の最外側に位置されていることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪先部、足甲部、底部、踵部、レッグ部及び履口部が編み糸と弾性糸とでもって編成されている靴下において、
少なくとも足甲部(12)及び底部(13)が、耐ピリング性に優れた編み糸(21)と短繊維の編み糸(22)を表糸とし弾性糸(23)を裏糸とするパイル編み組織を有し、上記耐ピリング性に優れた編み糸(21)がパイル編み組織外表面の短繊維編み糸(22)より外側に位置されていることを特徴とするパイル編み靴下。
【請求項2】
上記耐ピリング性に優れた編み糸(21)がポリエステル長繊維又はナイロン長繊維からなる編み糸である請求項1記載のパイル編み靴下。
【請求項3】
上記踵部(14)及び爪先部(15)が、耐ピリング性に優れた編み糸と短繊維の編み糸の撚り糸によって編成された編み組織である請求項1記載のパイル編み靴下。
【請求項4】
上記短繊維の編み糸(22)が、綿糸、綿アクリル混紡糸、毛糸、毛アクリル混紡糸、絹糸、絹アクリル混紡糸、麻糸、麻アクリル混紡糸から選ばれる編み糸である請求項1記載のパイル編み靴下。
【請求項5】
爪先部、足甲部、底部、踵部、レッグ部及び履口部からなる靴下において少なくとも足甲部及び底部を、耐ピリング性に優れた編み糸と短繊維の編み糸を表糸とし弾性糸を裏糸とし、表糸をシンカーの頭部に、裏糸をシンカーの爪部に乗せてするパイル編みにて編成するにあたり、
耐ピリング性に優れた編み糸(21)がシンカー(20)の頭部(20A)先端側に、短繊維の編み糸(22)が耐ピリング性に優れた編み糸(21)の背後になるように2種類の表糸の位置関係を保持して少なくとも足甲部(12)及び底部(13)をパイル編みにて編成するようにしたことを特徴とするパイル編み靴下の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はパイル編み靴下及びその製造方法に関し、特にピリングの出来にくいパイル編み靴下及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
厳冬期には足もとが厳しく冷えることから、保温性に優れた靴下を着用することが多い。例えば、毛糸や毛アクリル混紡糸を用いてパイル編みによって編成し、パイルによって保温性を高めたニット靴下が知られている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第302008号公報
【特許文献2】特開平09−217205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、パイル編み靴下は保温性に優れているものの、靴下の使用期間が長くなって靴下表面の擦れる回数が多くなると、靴下表面、特に足甲部及び底部にピリング(毛玉)ができやすく、履き心地だけでなく、見栄えも悪くなることがあった。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑み、ピリングの出来にくいパイル編み靴下を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明に係るパイル編み靴下は、爪先部、足甲部、底部、踵部、レッグ部及び履口部が編み糸と弾性糸とでもって編成されている靴下において、少なくとも足甲部及び底部が、耐ピリング性に優れた編み糸と短繊維の編み糸を表糸とし弾性糸を裏糸とするパイル編み組織を有し、上記耐ピリング性に優れた編み糸がパイル編み組織外表面の短繊維編み糸より外側に位置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の特徴の1つは少なくとも足甲部及び底部のパイル編み組織を、耐ピリング性に優れた編み糸が編み組織外表面の最外側になるようにした点にある。
これにより、靴下の使用期間が長くなって擦れる回数が多くなっても、ピリングが出来にくく、見栄えや履き心地を保証できる。
【0008】
耐ピリング性に優れた編み糸には長繊維の編み糸を採用することができるが、より好ましくはポリエステル長繊維又はナイロン長繊維からなる編み糸を採用するのがよい。
【0009】
爪先部、踵部、レッグ部及び履き口部の編み方は特に限定されず、平編み、メッシュ編み、パイル編み、あぜ編みあるいはこれらの組合せで編成することができる。
パイル編み組織は足甲部や底部だけでなく、爪先部、踵部、レッグ部及び履口部の編み組織として採用することもできるが、爪先部や踵部は耐ピリング性に優れた編み糸と短繊維の編み糸の2種類を用いたパイル編み組織にすることが難しい。
そこで、爪先部及び踵部は、耐ピリング性に優れた編み糸と短繊維の編み糸の撚り糸によって編成された編み組織、例えばパイル編み組織とするのが好ましい。
【0010】
耐ピリング性に優れた編み糸が編み組織外表面の最外側にくるようにパイル編みをする場合、耐ピリング性に優れた編み糸をシンカーの頭部先端側に、短繊維の編み糸を耐ピリング性に優れた編み糸の背後になるように2種類の表糸の位置関係を保持してパイル編みにて編成すると、耐ピリング性に優れた編み糸を編み組織外表面に最外側の位置に設定することができる。
【0011】
本発明に係るパイル編み靴下の製造方法は、爪先部、足甲部、底部、踵部、レッグ部及び履口部からなる靴下において少なくとも足甲部及び底部を、耐ピリング性に優れた編み糸と短繊維の編み糸を表糸とし弾性糸を裏糸とし、表糸をシンカーの頭部に、裏糸をシンカーの爪部に乗せてするパイル編みにて編成するにあたり、耐ピリング性に優れた編み糸がシンカーの頭部先端側に、短繊維の編み糸が耐ピリング性に優れた編み糸の背後になるように2種類の表糸の位置関係を保持してパイル編みにて編成するようにしたことを特徴とする。
【0012】
ポリエステル長繊維又はナイロン長繊維からなる編み糸はナイロン糸で20デニールないし400デニールに相当する特性の糸を用いることができる。
【0013】
短繊維の編み糸の材質については特に限定されず、綿糸、綿アクリル混紡糸、毛糸、毛アクリル混紡糸、絹糸、絹アクリル混紡糸、麻糸、麻アクリル混紡糸等、靴下に採用される編み糸であって、綿番で2番ないし120番に相当する特性の編み糸を用いることができる。
【0014】
裏糸や弾性糸の芯糸にはナイロン糸、ポリエステル糸、ポリウレタンカバーヤーン、コアヤーンであって、ナイロン糸で20デニールないし400デニールに相当する特性の糸を用いることができる。
【0015】
ここで、弾性糸とは一般的にはナイロン糸、ポリエステル糸、ポリウレタンカバーヤーン、コアヤーンを意味する用語として用いられているが、本発明ではさらにゴム糸を含む用語として用いている。
【0016】
本発明はレッグ部の短いソックス、レッグ部の長いハイソックスのいずれにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係るパイル編み靴下の好ましい実施形態を示す概略図である。
【
図2】上記実施形態におけるシンカーと2種類の編み糸及び弾性糸の関係を示す概略図である。
【
図3】上記実施形態におけるパイル編みの組織を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。
図1ないし
図3は本発明に係るパイル編み靴下の好ましい実施形態を示す。靴下は履口部10、レッグ部11、足甲部12、底部13、踵部14及び爪先部15から構成され、履口部10及びレッグ部11は例えば平編みによって編成され、足甲部12、底部13、踵部15及び爪先部14はパイル編みによって編成されている。
【0019】
足甲部12及び底部13の編み糸には、表糸に84デシテックスのポリエステル長繊維の2本の編み糸21(但し、
図2及び
図3では図示の便宜上、1本の編み糸21のみが示されている)と22番手の短繊維毛混紡糸22が用いられ、裏糸には30又は40デシテックスのポリウレタンを芯として75又は150デシテックスのポリエステルをカバーリングしたカバーリングヤーン(弾性糸)23が用られ、足甲部12及び底部13ではパイル編み組織外表面の最外側にポリエステル長繊維の2本の編み糸21が来て、その背後に短繊維の毛混紡糸22が来るような位置関係に保持されている。
【0020】
踵部14及び爪先部15は表糸に84デシテックスのポリエステル長繊維の2本の編み糸と22番手の短繊維毛混紡糸の撚り糸が用いられ、裏糸には30又は40デシテックスのポリウレタンを芯として75又は150デシテックスのポリエステルをカバーリングしたカバーリングヤーンが用られ、パイル編みにて編成されている。
【0021】
レッグ部11及び履き口部10は84デシテックスのポリエステル長繊維の2本の編み糸と22番手の短繊維の毛混紡糸、30又は40デシテックスのポリウレタンを芯として75又は150デシテックスのポリエステルをカバーリングしたカバーリングヤーンを用いて例えば平編みにて編成され、又履き口部10にはゴム糸が編み込まれている。
【0022】
足甲部12及び底部13をパイル編みにて編成する場合、
図2に示されるように、ポリエステル長繊維の編み糸21と22番手の短繊維の毛混紡糸22をシンカー20の頭部20Aに乗せ、カバーリングヤーン23をシンカー20の爪部20Bに乗せ、編み針25によって編成する。
その際、ポリエステル長繊維の編み糸21をシンカー20の頭部20Aの先端側、その背後に短繊維の毛混紡糸22が来る位置関係を保ってパイル編みを行うと、
図3に示されるように、編み組織外表面の最外側にはポリエステル長繊維の編み糸21が常に位置するので、靴下の使用期間が長くなって擦れる回数が多くなっても、ピリングが出来にくく、見栄えや履き心地を保証できる。
また、靴下内では短繊維の毛混紡糸22が編み組織の最内側に位置し、足の肌に接するので、違和感なく履くことができ、パイル編みの快適さを保証できる。
【0023】
上記では耐ピリング性に優れた編み糸にポリエステル長繊維の編み糸を使用したが、ナイロン長繊維の編み糸、その他の長繊維の編み糸を使用することもできる。
【符号の説明】
【0024】
10 履き口部
11 レッグ部
12 足甲部
13 底部
14 踵部
15 爪先部
20 シンカー
20A 頭部
20B 爪部
21 ポリエステル長繊維の編み糸
22 短繊維の毛混紡糸
23 カバーリングヤーン