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特開2018-16904ウイルス除去用フィルター及びそれを用いたマスク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-16904(P2018-16904A)
(43)【公開日】2018年2月1日
(54)【発明の名称】ウイルス除去用フィルター及びそれを用いたマスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20180105BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20180105BHJP
【FI】
   A41D13/11 Z
   A62B18/02 C
   A41D13/11 D
   A41D13/11 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-148155(P2016-148155)
(22)【出願日】2016年7月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098752
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 吏規夫
(72)【発明者】
【氏名】中尾 浩
(72)【発明者】
【氏名】藤村 利晴
(72)【発明者】
【氏名】山口 ひろみ
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185CC32
(57)【要約】
【課題】十分な通気性があり、かつウイルス除去性能を有し、マスク用部材として好適なウイルス除去用フィルターの提供を目的とする。
【解決手段】連続気泡発泡体シートからなる第一基材11と、第一基材11の片面に形成されたナノファイバーからなる中間繊維層31と、中間繊維層31に積層された連続気泡発泡体シートからなる第二基材21とでウイルス除去用フィルターを構成し、第一基材11及び第二基材21の連続気泡発泡体シートを、除膜された軟質スラブポリウレタン発泡体シートとし、中間繊維層31のナノファイバーをポリウレタンとした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続気泡発泡体シートからなる第一基材と、前記第一基材の片面に形成されたナノファイバーからなる中間繊維層と、前記中間繊維層に積層された連続気泡発泡体シートからなる第二基材とで構成されるウイルス除去用フィルター。
【請求項2】
前記第一基材及び第二基材の連続気泡発泡体シートが、除膜された軟質スラブポリウレタン発泡体シートからなることを特徴とする請求項1に記載のウイルス除去用フィルター。
【請求項3】
前記ナノファイバーがポリウレタンであることを特徴とする請求項1または2に記載のウイルス除去用フィルター。
【請求項4】
一端側に耳掛け部としての開口部を有し、他端側に外方へ膨らんだ湾曲形状部を有する2枚のマスク半体が請求項1から3の何れか一項に記載のウイルス除去用フィルターで構成され、前記2枚のマスク半体が前記湾曲形状部で接合されたマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス除去用フィルター及びそれを用いたマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マスクとして、ガーゼで構成されたマスク(特許文献1)、ウレタンフォームで構成されたマスク(特許文献2)がある。しかし、ガーゼやウレタンフォームで構成されたマスクは、メッシュ(目)が粗く、ウイルス除去性能においては十分ではなかった。
【0003】
また、ナノファイバー不織布層と少なくとも1層の布帛との複合ファブリックからなるマスクが提案されている(特許文献3)。しかし、このマスクは、防風性、透湿性及び伸縮性の確保を目的とするものであり、ウイルスの除去について開示されていない。さらに不織布を基材とすることから、顔面への密着性に劣り、ウイルスの除去率を低下させるおそれが高い。
【0004】
また、ウイルス除去を謳うマスクも登場しているが、ウイルスの大きさは、1μm以下であり、マスクを構成するフィルターのメッシュを細かくすれば通気性が低くなり、長時間マスクとして使用した場合に息苦しさを感じる者がいる。
【0005】
ウイルスや細菌等を効率的に遮断し、捕集したウイルスや細菌等の不活性化・死滅を目的としたマスクとして、ナノファイバー不織布に無機多孔質物質を担持させてマイクロファイバー不織布と積層したマスクが開示されている(特許文献4)。しかし、このマスクは、マイクロファイバー自体の繊維が太いため、単位面積あたりの空孔率が極端に少なくなって通気性が低下し、長時間の使用によって息苦しさを感じる虞がある。また、マスクの基材に不織布を使用した場合、不織布の伸び性、柔軟性が低いため、肌への追従性が不十分となり、肌とマスクの隙間からウイルス等が侵入するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭53−4799号公報
【特許文献2】特開2008−136754号公報
【特許文献3】特開2014−234561号公報
【特許文献4】特開2008−188082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、十分な通気性があり、かつウイルス除去性能を有するウイルス除去用フィルター及びそれを用いたマスクの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、連続気泡発泡体シートからなる第一基材と、前記第一基材の片面に形成されたナノファイバーからなる中間繊維層と、前記中間繊維層に積層された連続気泡発泡体シートからなる第二基材とで構成されるウイルス除去用フィルターに係る。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記第一基材及び第二基材の連続気泡発泡体シートが、除膜された軟質スラブポリウレタン発泡体シートからなることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記ナノファイバーがポリウレタンであることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、一端側に耳掛け部としての開口部を有し、他端側に外方へ膨らんだ湾曲形状部を有する2枚のマスク半体が請求項1から3の何れか一項に記載のウイルス除去用フィルターで構成され、前記2枚のマスク半体が前記湾曲形状部で接合されたマスクに係る。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、ナノファイバーからなる中間繊維層を有するため、ナノレベルのウイルスを効率的に除去することができる。また、第一基材及び第二基材に連続気泡発泡体シートを使用することでウイルス除去用フィルターの通気度が大になり、長時間使用しても目詰まり及び通気性の低下を生じ難くできる。
【0013】
請求項2の発明によれば、連続気泡発泡体シートが除膜された軟質スラブポリウレタン発泡体シートからなるため、高い通気性を確保することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、ナノファイバーが、ポリウレタンからなるため、第一基材の片面にナノファイバーを形成する際に、第一基材とナノファイバーとの接着性が高く、かつ伸縮性の良好なナノファイバー層が得られる。
【0015】
請求項4の発明によれば、マスクは、ナノファーバーからなる中間繊維層によってウイルスを除去できると共に、第一基材及び第二基材を連続気泡発泡体シートで構成したことによって通気度が大になり(通気抵抗が低くなり)、長時間使用しても息苦しさを感じ難くできる。さらに、連続気泡発泡体シートの使用によってマスクの伸び性、柔軟性が高くなって肌への追従性が良好となり、肌とマスクの隙間からウイルス等が侵入するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施態のウイルス除去用フィルターの一部を切り欠いて示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るマスクの斜視図である。
図3図2のマスクにおいて2枚のマスク半体を重ねた状態を示す斜視図である。
図4図2のマスクを製造する際の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態のウイルス除去用フィルター10について第二基材21を一部切り欠いて示す斜視図である。
【0018】
前記ウイルス除去用フィルター10は、第一基材11と、第二基材21と、前記第一基材11及び第二基材21の間に位置する中間繊維層31との積層体で構成されている。
【0019】
前記第一基材11及び第二基材21は、連続気泡発泡体シートからなる。連続気泡発泡体シートの材質は、連続気泡構造の発泡体であればよく、例えば連続気泡ポリウレタン(PUR)発泡体、連続気泡ポリエチレン(PE)発泡体、連続気泡メラミン発泡体等を挙げることができる。より好ましい連続気泡発泡体は、連続気泡ポリウレタン(PUR)発泡体である。連続気泡ポリウレタン発泡体は、伸び及び強度に優れ、かつ高い開口率が得られ、通気性を高めることができるため、マスクに使用した場合、マスクを顔面にフィットさせることができ、かつ良好な通気性を確保することができる。連続気泡ポリウレタン発泡体にはエーテル系とポリエステル系が存在するが、良好な伸びが得られるポリエステル系がより好ましい。
【0020】
また、前記連続気泡ポリウレタン発泡体は、除膜された軟質スラブポリウレタン発泡体が好ましい。除膜された軟質スラブポリウレタン発泡体は、軟質スラブポリウレタン発泡体に対して公知の除膜処理を施してセル膜を除去したものである。除膜処理としては、軟質スラブポリウレタン発泡体のセル膜を溶剤で除去する方法、あるいは爆発によりセル膜を除去する方法などがある。また、軟質スラブポリウレタン発泡体は、コンベアベルト上にポリウレタン発泡原料を吐出して連続的に発泡させるスラブ発泡により形成されたものである。
【0021】
前記連続気泡発泡体シートのセル数(JIS K6400-1)は、40〜110個/25mmが好ましい。セル数が小になると、通気性が大になる反面、強度が低下するようになり、逆にセル数が大になると、通気性が低下する反面、強度が増大するようになる。また、前記連続気泡発泡体シートの密度(JIS K7222)は、10〜85kg/mが好ましい。密度が低くなると、柔軟性及び軽量性が増加する反面、強度が低下するようになり、逆に密度が高くなると、柔軟性及び軽量性に劣るようになる反面、強度が増大するようになる。
【0022】
また、前記第一基材11と第二基材21の厚みは、それぞれ0.5〜2.5mmの範囲であればよい。より好ましくは、前記第一基材の厚みは、1.3〜2.5mm、第二基材の厚みは、0.5〜1.5mmの厚みである。さらに、第一基材と第二基材を積層した厚みは4.0mm以下であることが好ましい。前記第一基材11と第二基材21の厚みが薄過ぎると強度が低下し、逆に厚過ぎる柔軟性及び通気性に劣るようになる。さらに、本実施形態では、前記中間繊維層31が片面に形成される第一基材11の厚みを第二基材21の厚みよりも大にして中間繊維層31の形成を容易にするのが好ましい。なお、表裏の連続気泡発泡体の厚みが異なるものをフィルターとして使用する場合、厚みのある第一基材を吸入側とし、厚みの薄い第二基材側を吸引側とするのが好ましい。厚みのある第一基材から微粒子等ゴミを吸い込み、フィルタで除去した後、厚みのない第二基材側からエアーを吸引するのが好ましい。
【0023】
前記中間繊維層31は、ナノファイバーからなり、前記第一基材11の片面(前記第二基材21と対向する面)に形成されている。前記ナノファイバーの形成は、電界紡糸法により行うことができる。その際、ポリマー溶液をノズルから前記第一基材22の片面に直接噴霧し、蛛の巣状をしたナノファイバーの中間繊維層31を、前記第一基材11の片面に接着した状態で形成する。前記電解紡糸法では直流高電圧電源とインフュージョンポンプ、ステンレスニードルシリンジ、及び金属コレクタからなる装置を使用する。ニードルシリンジの先端ノズルからは、ポリマー溶液を噴射する。ノズルと金属コレクタは対極に帯電しており、ポリマー溶液をシリンジから噴射すると、コレクタ上に置かれた基材11上に、ナノファイバー繊維が堆積、層を形成する。
【0024】
前記ナノファイバーの材質は、電解紡糸法でナノファイバーを形成できるものであれよく、例えば、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン−6,6,ナイロン−4,6のような熱可塑性樹脂、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンオキサイド、コラーゲンのような生分解性ポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアニリン、パラアミド、ポリ酢酸ビニル、アセチルセルロース(アセテート)等を挙げることができる。特にポリウレタンは、ナノファイバーを吹付形成する際に前記第一基材11の片面との接着性がよく、伸びもよいため、特に好ましい材質である。ポリウレタンナノファイバーで構成した中間繊維層31は、前記第一基材11及び第二基材21の伸びに対する追従性がよく、前記ウイルス除去用フィルター10をマスクの構成部材とした場合にマスクが顔面にフィットし易い。
【0025】
ナノファイバーの径は、ナノファイバーの定義とされる径であればよく、具体的には、1ナノメートル(nm)から1マイクロメートル(μm)、好ましくは10ナノメートル(nm)から0.8マイクロメートル(μm)、より好ましくは10ナノメートル(nm)から0.5マイクロメートル(μm)、さらに好ましくは10ナノメートル(nm)から100ナノメートル(nm)となる。なお、ナノファイバーの径が小過ぎると中間繊維層31のナノファイバー間をウイルスが通過する虞があり、逆にナノファイバーの径が大過ぎると中間繊維層31の通気性が低下するようになる。より好ましい径は10ナノメートル(nm)〜100ナノメートル(nm)である。
【0026】
前記ナノファイバーからなる中間繊維層31の目付量は限定されないが、0.10〜0.80g/mが好ましい。目付量を小にするとナノファイバーの間隔が大になってナノファイバー間をウイルスが通過する虞があり、逆に目付量を大にするとナノファイバーの間隔が小になって通気性が低下するようになる。
【0027】
前記ウイルス除去用フィルター10の製造例を次に示す。第一基材用の連続気泡多孔体の長尺シートを使用し、その上にBASF社製熱可塑性ポリウレタンペレットを溶剤に溶解し、電解紡糸法によりナノファイバー不織布を積層紡糸する。繊維径は、紡糸用ノズルと長尺シートまでの距離および、ノズルから吐出されるナノファイバー原料の吐出量と電圧によって、所定の線径になるよう調節する。紡糸されたウレタン製ナノファイバー中間層は、上記連続気泡多孔体の長尺シートに絡み付いている。長尺シートをロールに巻き取り、火炎熔着装置に、前記ロールと第二基材のロールを装着し、前記ロールのウレタン製ナノファイバー中間層に火炎を照射しながら、第二基材のロールを積層搬送することで、前記ウイルス除去用フィルター10が得られる。
【0028】
前記ウイルス除去用フィルター10は、マスクを構成した場合の顔面へのフィット性を良好とするため、伸び(JIS K6400-5)が100〜500%であるのが好ましい。また、前記ウイルス除去用フィルター10は、マスクを構成した場合の息苦しさを防ぐため、通気度(JIS L1096 8.26.1 A法)が30(cm/cm・sec)以上であるのが好ましく、より好ましくは通気度30〜95(cm/cm・sec)である。
【0029】
前記ウイルス除去用フィルター10のウイルス除去性能は、BFE捕集率(%)で判断することができる。BFE捕集率は、JIS L1912:1997(付属書)(医療用不織布試験方法)にしたがって測定される値であり、大であるほど黄色ブドウ球菌の総コロニー数に変化がないことを示している。すなわち、コントロールの総コロニー数(A)から試料をセットしたときの総コロニー数(B)を引き、その差をコントロールの総コロニー数(A)で割った値の百分率をいう。
細菌捕集効率BFE(%)={(A)−(B)}÷(A)×100
前記ウイルス除去用フィルター10は、BFE捕集率60〜100%が好ましく、より好ましくは70〜100%である。
【0030】
前記ウイルス除去用フィルター10を用いたマスクの実施形態について、図面を用いて説明する。図2および図3に示すマスク100は、口および鼻孔を含む顔面の一部を覆い、左右両端側に耳掛け部130を有するものであり、2枚のシート状のマスク半体110,110を接合したものからなる。
【0031】
前記マスク半体110は、前記マスク100の左右方向中間位置で2分された形状からなり、一端110a側に耳掛け部としての開口部130が形成され、他端110b側に外方へ膨らんだ湾曲形状部150を有する形状に前記ウイルス除去用フィルター10を打ち抜いたもので構成されている。図示の実施形態では、図3に示すように、前記マスク半体110における左右(長さ方向)のほぼ中間位置M1から、前記湾曲形状部150が形成されている他端110bへ向かって幅(使用時の上下幅)が拡大した形状からなる。
【0032】
前記耳掛け部130としての開口部130aは貫通孔からなり、前記マスク100を顔面へ装着する際に耳が挿入されて耳に引っかけられる大きさに形成されている。前記開口部130aの形状は、耳の挿入が可能な大きさの孔であればよく、特に限定されない。例えば、円形、四角形、楕円形等、適宜の形状の孔を挙げる。また、前記開口部130aと前記マスク半体110の外周縁との間隔dは、最も狭い部分で2mm以上にして、前記耳掛け部130を引っ張った際に前記耳掛け部130付近で破断しにくくするのが好ましい。
【0033】
前記湾曲形状部150は、2つの前記マスク半体110,110を接合する部分である。前記湾曲形状部150は、外方へ膨らんだ湾曲形状(すなわちほぼ円弧形状)とされているため、前記マスク半体110の2枚を前記湾曲形状部150で接合した後、前記2枚のマスク半体110,110を広げた際に前記接合された湾曲形状部150がマスク外方へ膨出するようになる。また、前記接合された湾曲形状部150は、前記マスク100の左右中間位置にあり、前記マスク100を顔面に装着した際に鼻先および口と対応する位置にあるため、前記接合された湾曲形状部150の外方への膨出により前記マスク100が鼻の位置で外方へ膨らんだ状態となり、鼻柱の付近でマスクの縁が顔面に密着しやすくなる。そのため、前記マスク100の周縁が顔面に密着すると共に、鼻孔や口周囲に空間が形成され、呼吸がしやすくなる。なお、前記湾曲形状部150は、全ての部分が湾曲した形状になっていなくてもよく、一部が直線状になっていてもよい。特に鼻柱から鼻先に当接する部分の一部が直線状になっていれば、より良好な装着感が得られる。
【0034】
前記湾曲形状部150,150における接合は、接着剤や溶着、ホットメルト等によって行われる。溶着には、熱溶着、振動溶着、超音波溶着、レーザー溶着等がある。特に、熱溶着等の溶着による接合は、接着剤のように健康に心配がある溶剤を使用しなくてもよいため、好ましいものである。
【0035】
前記マスク10の製造について、図4を用いて簡単に説明する。前記マスク100の製造は、前記ウイルス除去用フィルター10から打ち抜きによって2つのマスク半体110,110を形成し、2枚のマスク半体110,110を、図4の(4−1)および(4−2)のように重ね、図4の(4−3)のように、前記マスク半体110,110の湾曲形状部150,150を接着剤あるいは溶着等により接合し、前記マスク100とする。なお、前記湾曲形状部150,150を熱溶着により接合する場合には、重ねた前記マスク半体110,110の湾曲形状部150,150を熱板で挟むことにより行う。その際の熱板の温度は、前記マスク半体110、110を構成する前記ウイルス除去用フィルター10が熱溶着可能な温度とする。また、前記マスク半体150,150を構成する前記ウイルス除去用フィルター10が、前記第一基材11の厚みを第二基材21の厚みよりも大にした構成の場合は、マスクの顔面へのフィット性向上のため、厚みの大の第一基材11を顔面側となるようにして前記マスク半体150,150を接合するのが好ましい。
【実施例】
【0036】
第一基材の片面に、電界紡糸法によってナノファイバーからなる中間繊維層を直接吹付形成し、その後に中間繊維層上にフレームラミネートにより第二基材を溶着して以下の各実施例のウイルス除去用フィルターを作成した。なお、中間繊維層のナノファイバーの径は、透過型もしくは走査型電子顕微鏡(TEM/SEM)による直径・長さの分布測定により測定した。また、中間繊維層の目付量は試料の質量を測定し、平方メートル当たりに換算した。
【0037】
・実施例1
第一基材:除膜された軟質スラブポリウレタン発泡体(ポリエステル系)、密度0.075g/cm、セル数80個/25mm、品名;MF−80A、イノアックコーポレーション製、厚み1.5mm
第二基材:第一基材の除膜された軟質スラブポリウレタン発泡体(ポリエステル系)を厚み1mmとしたもの
中間繊維層:ポリウレタンナノファイバー、径;466nm、目付量;0.13g/m
ポリウレタン樹脂をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中に溶解させてポリウレタン樹脂溶液を調製した。この溶液をニードルシリンジへ入れ、印加電圧20KV、ノズル径0.4mm、室温大気圧下にて、ノズルから15cmの距離の金属コレクタ上に取り付けた第一基材の上へ吐出し、電解紡糸装置により、第一基材と中間繊維層を積層した。また、積層された第一基材と中間繊維層に、第二基材を積層する。太陽理化工業株式会社の火炎熔着装置を用いた。
【0038】
・実施例2
第一基材:実施例1と同一
第二基材:実施例1と同一
中間繊維層:ポリウレタンナノファイバー、径;531nm、目付量;0.25g/m
ポリウレタン樹脂をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中に溶解させてポリウレタン樹脂溶液を調製した。この溶液をニードルシリンジへ入れ、印加電圧20KV、ノズル径0.4mm、室温大気圧下にて、ノズルから15cmの距離の金属コレクタ上に取り付けた第一基材の上へ吐出し、電解紡糸装置により、第一基材と中間繊維層を積層した。また、上記積層された第一基材と中間繊維層に、第二基材を積層する。太陽理化工業株式会社の火炎熔着装置を用いた。
【0039】
・実施例3
第一基材:実施例1と同一
第二基材:実施例1と同一
中間繊維層:ポリウレタンナノファイバー、径;443nm、目付量;0.35g/m
ポリウレタン樹脂をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中に溶解させてポリウレタン樹脂溶液を調製した。この溶液をニードルシリンジへ入れ、印加電圧20KV、ノズル径0.4mm、室温大気圧下にて、ノズルから15cmの距離に設置した金属コレクタ上に取り付けた第一基材の上へ吐出し、電解紡糸装置により、第一基材と中間繊維層を積層した。また、上記積層された第一基材と中間繊維層に、第二基材を積層する。太陽理化工業株式会社の火炎熔着装置を用いた。
【0040】
・実施例4
第一基材:実施例1と同一材質で厚み2.0mm
第二基材:実施例1と同一
中間繊維層:ポリウレタンナノファイバー、径;449nm、目付量;0.14g/m
ポリウレタン樹脂をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中に溶解させてポリウレタン樹脂溶液を調製した。この溶液をニードルシリンジへ入れ、印加電圧20KV、ノズル径0.4mm、室温大気圧下にて、ノズルから15cmの距離に設置した金属コレクタ上に取り付けた第一基材の上へ吐出し、電解紡糸装置により、第一基材と中間繊維層を積層した。また、上記積層された第一基材と中間繊維層に、第二基材を積層する。太陽理化工業株式会社の火炎熔着装置を用いた。
【0041】
・実施例5
第一基材:除膜された軟質スラブポリウレタン発泡体(ポリエステル系)、密度0.09g/cm、セル数105個/25mm、品名;MF−DS、イノアックコーポレーション製、厚み1.5mm
第二基材:第一基材の除膜された軟質スラブポリウレタン発泡体(ポリエステル系)を厚み1mmとしたもの
中間繊維層:ポリウレタンナノファイバー、径;458nm、目付量;0.28g/m
ポリウレタン樹脂をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中に溶解させてポリウレタン樹脂溶液を調製した。この溶液をニードルシリンジへ入れ、印加電圧20KV、ノズル径0.4mm、室温大気圧下にて、ノズルから15cmの距離に設置した金属コレクタ上に取り付けた第一基材の上へ吐出し、電解紡糸装置により、第一基材と中間繊維層を積層した。また、上記積層された第一基材と中間繊維層に、第二基材を積層する。太陽理化工業株式会社の火炎熔着装置を用いた。
【0042】
・実施例6
第一基材:除膜された軟質スラブポリウレタン発泡体(ポリエステル系)、密度0.03g/cm、セル数60個/25mm、品名;MF−60、イノアックコーポレーション製、厚み1.5mm
第二基材:第一基材の除膜された軟質スラブポリウレタン発泡体(ポリエステル系)を厚み1mmとしたもの
中間繊維層:ポリウレタンナノファイバー、径;317nm、目付量;0.19g/m
ポリウレタン樹脂をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中に溶解させてポリウレタン樹脂溶液を調製した。この溶液をニードルシリンジへ入れ、印加電圧20KV、ノズル径0.4mm、室温大気圧下にて、ノズルから15cmの距離に設置した金属コレクタ上に取り付けた第一基材の上へ吐出し、電解紡糸装置により、第一基材と中間繊維層を積層した。また、上記積層された第一基材と中間繊維層に、第二基材を積層する。太陽理化工業株式会社の火炎熔着装置を用いた。
【0043】
・実施例7
第一基材:除膜された軟質スラブポリウレタン発泡体(ポリエーテル系)、密度0.025g/cm、セル数40個/25mm、品名;EL−62、イノアックコーポレーション製、厚み1.5mm
第二基材:第一基材の除膜された軟質スラブポリウレタン発泡体(ポリエーテル系)を厚み1mmとしたもの
中間繊維層:ポリプロピレンナノファイバー、径;503nm、目付量;0.11g/m
ポリウレタン樹脂をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中に溶解させてポリウレタン樹脂溶液を調製した。この溶液をニードルシリンジへ入れ、印加電圧20KV、ノズル径0.4mm、室温大気圧下にて、ノズルから15cmの距離に設置した金属コレクタ上に取り付けた第一基材の上へ吐出し、電解紡糸装置により、第一基材と中間繊維層を積層した。また、上記積層された第一基材と中間繊維層に、第二基材を積層する。太陽理化工業株式会社の火炎熔着装置を用いた。
【0044】
・実施例8
第一基材:連続気泡ポリエチレン発泡体、密度0.03g/cm、セル数35個/25mm、厚み1.5mm、品名;P・Eライト、イノアックコーポレーション製
第二基材:第一基材の連続気泡ポリエチレン発泡体を厚み1mmとしたもの
中間繊維層:ポリウレタンナノファイバー、径;448nm、目付量;0.20g/m
ポリウレタン樹脂をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中に溶解させてポリウレタン樹脂溶液を調製した。この溶液をニードルシリンジへ入れ、印加電圧20KV、ノズル径0.4mm、室温大気圧下にて、ノズルから15cmの距離に設置した金属コレクタ上に取り付けた第一基材の上へ吐出し、電解紡糸装置により、第一基材と中間繊維層を積層した。また、上記積層された第一基材と中間繊維層に、第二基材を積層する。太陽理化工業株式会社の火炎熔着装置を用いた。
【0045】
以下の比較例を作成した。
・比較例1
ポリオレフィンからなるメルトブローン製マイクロウェッブ不織布層を中間層とし、中間層の両面をスパンボンド製不織布で積層された市販品のSMS不織布マスク、総厚み0.6mm、繊維径;7.9μmを用いた。
【0046】
・比較例2
実施例1の第一基材で用いた、除膜された軟質スラブポリウレタン発泡体(ポリエステル系)、密度0.075g/cm、セル数80個/25mm、品名;MF−80A、イノアックコーポレーション製を、厚み2mmとした単層で構成した。
【0047】
・比較例3
実施例1の第一基材で用いた、除膜された軟質スラブポリウレタン発泡体(ポリエステル系)、密度0.075g/cm、セル数80個/25mm、品名;MF−80A、イノアックコーポレーション製を、厚み8mmにし、熱プレスで厚み2mmにした単層で構成した。
【0048】
・比較例4
実施例1の第一基材で用いた、除膜された軟質スラブポリウレタン発泡体(ポリエステル系)、密度0.075g/cm、セル数80個/25mm、品名;MF−80A、イノアックコーポレーション製、厚み2mmを基材とし、その基材の片面に、ポリオレフィンマイクロファイバー、径;7.8μm、目付量;48g/mを、電界紡糸法により直接吹付形成した。
【0049】
・比較例5
実施例1の第一基材で用いた、除膜された軟質スラブポリウレタン発泡体(ポリエステル系)、密度0.075g/cm、セル数80個/25mm、品名;MF−80A、イノアックコーポレーション製、厚み2mmを基材とし、その基材の片面に、ポリオレフィンマイクロファイバー、径;8.0μm、目付量;135g/mを、電界紡糸法により直接吹付形成した。
【0050】
前記各実施例及び各比較例に対して、BFE捕集率(%)、通気度(cm・cm・sec)、剛性、伸び(%)を測定した。
BFE捕集率(%)の測定方法は、JIS L1912:1997(付属書)(医療用不織布試験方法)である。
通気度はJIS L1096 8.26.1 A法(フラジール法)にしたがい、伸びはJIS K 6400−5、伸びの求め方にしたがい測定した。
測定結果及び評価を表1に示す
【0051】
【表1】
【0052】
実施例1〜実施例8は、BFE捕集率が65〜92%、通気度が30〜95cm/cm・secの範囲に入っており、BFE捕集率及び通気性の何れも良好であった。また、伸びが180〜421%と良好であった。
【0053】
上記のように、各実施例のウイルス除去用フィルターは、十分な通気性があって、かつウイルス除去性能を有するものであり、伸びも良好であり、マスクを構成した場合に、長時間使用しても息苦しさが少なく、かつウイルス除去能力を有するものである。
【0054】
一方、マイクロファイバー不織布の積層からなる比較例1は、BFE捕集率については高かったが、通気度が低く、伸びも低かった
除膜された軟質スラブポリウレタン発泡体の単層からなる比較例2は、BFE捕集率が低かった。
除膜された軟質スラブポリウレタン発泡体を熱プレスした比較例3は、BFE捕集率が、47.7%の中程度であり、通気度も低かった。
除膜された軟質スラブポリウレタン発泡体にマイクロファイバーが目付量48g/mで積層された比較例4は、BFE捕集率が、49.5%の中程度であり、剛性も低かった。
除膜された軟質スラブポリウレタン発泡体にマイクロファイバーが目付量135g/mで積層された比較例5は、BFE捕集率が高いが、通気度が低かった。
上記のように、各比較例は、BFE捕集率が低かったり、通気生が低かったりしており、BFE捕集率及び通気性の両方共高い比較例は無かった。
【符号の説明】
【0055】
10 ウイルス除去用フィルター
11 第一基材
21 第二基材
31 中間繊維層
100 マスク
110 マスク半体
130 耳掛け部
130a 開口部
150 湾曲形状部
図1
図2
図3
図4