特開2018-1693(P2018-1693A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2018001693-装飾品及びその製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-1693(P2018-1693A)
(43)【公開日】2018年1月11日
(54)【発明の名称】装飾品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B44C 3/00 20060101AFI20171208BHJP
   B44C 5/00 20060101ALI20171208BHJP
【FI】
   B44C3/00 F
   B44C5/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-134840(P2016-134840)
(22)【出願日】2016年7月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000168115
【氏名又は名称】KTX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】野田 泰義
(57)【要約】
【課題】三次元形状の賦形を簡単に行うことができ、賦形した三次元形状を全体的に固めて外力による変形を防止することができ、金属網の質感が残る特徴的な外観特性を有する装飾品を提供する。
【解決手段】装飾品1は、目的の装飾品形状である三次元形状に折り曲げられた金属網2と、金属網2にその開目が埋まらない程度に付着しためっき層4とからなる。金属網2を構成する線材3及び線材3どうしの交差部を包むように付着しためっき層4により、線材3が強化されると共に線材3が互いに拘束されるので、賦形した三次元形状を全体的に固めることができ、外力による変形を防止することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
置物、壁掛け、天井下げ飾り又は身飾品として使用される装飾品において、目的の装飾品形状である三次元形状に折り曲げられた金属網と、該金属網にその開目が埋まらない程度に付着しためっき層とからなることを特徴とする装飾品。
【請求項2】
置物、壁掛け、天井下げ飾り又は身飾品として使用される装飾品の製造方法において、金属網を折り曲げて目的の装飾品形状である三次元形状に賦形した後、該金属網にめっき加工してその開目が埋まらない程度にめっき層を付着させることを特徴とする装飾品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置物、壁掛け、天井下げ飾り又は身飾品として使用される装飾品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、折り紙細工からなる装飾要素を有する置物等の装飾品が記載されている。折り紙細工は、製造が簡単ではあるが、強度に乏しく、耐久性に欠けるという問題がある。
【0003】
また、特許文献2には、金属板を折曲しハンダ付けして形成した胴部分に、金属板を折曲して形成した羽根部分をリベット止めし、胴部分に形成した差込用突片に、金属板を折曲して形成した首部分及び尾部分の非差込用突片を差し込んで製造した金属製折鶴形置物が記載されている。この金属製折鶴形置物は、強度及び耐久性はあると考えられるが、次の問題がある。
・金属板の切断加工、ハンダ付け、リベット止め、突片形成等が必要であり、製造に手間がかかる。
・ハンダ付け又はリベット止めをしていない箇所は、それをした箇所と比べ、強度不足となり変形しやすい。
・金属板の滑面による質感は、見慣れていて特徴に乏しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−88499号公報
【特許文献2】特開2004−262053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、三次元形状の賦形を金属網の折り曲げにより簡単に行うことができ、賦形した三次元形状をめっき層により全体的に固めて外力による変形を防止することができ、めっき層による任意の色調及び艶調(光沢ないし無光沢)を備え且つ金属網の質感が残る特徴的な外観特性を有する装飾品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の装飾品は、置物、壁掛け、天井下げ飾り又は身飾品として使用される装飾品において、目的の装飾品形状である三次元形状に折り曲げられた金属網と、該金属網にその開目が埋まらない程度に付着しためっき層とからなることを特徴とする。
【0007】
(2)本発明の装飾品の製造方法は、置物、壁掛け、天井下げ飾り又は身飾品として使用される装飾品の製造方法において、金属網を折り曲げて目的の装飾品形状である三次元形状に賦形した後、該金属網にめっき加工してその開目が埋まらない程度にめっき層を付着させることを特徴とする。
【0008】
[作用]
(ア)金属網を手で(硬ければ工具を使って)折り曲げることにより目的の装飾品形状である三次元形状を簡単に賦形することができ、ハンダ付けやリベット止めを必要としない(但しハンダ付けやリベット止めを排除するものではない。)。
(イ)賦形後の金属網にめっき加工すると、めっき層は金属網を構成する線材及び線材どうしの交差部を包むように付着する。このめっき層により線材が強化されると共に線材が互いに拘束されるので、賦形した三次元形状を全体的に固めることができ、外力による変形を防止することができる。
(ウ)めっきの種類の選択によって、任意の色調及び艶調(光沢ないし無光沢)を備える外観特性を付与することができる。
(エ)金属網の開目が埋まらない程度に付着しためっき層とすることによって、装飾品の表面には金属網特有の微細な格子状凹凸が残り、また、開目に残る貫通孔が光を通すので、金属網の質感が残る外観特性を付与することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、三次元形状の賦形を金属網の折り曲げにより簡単に行うことができ、賦形した三次元形状をめっき層により全体的に固めて外力による変形を防止することができ、めっき層による任意の色調及び艶調(光沢ないし無光沢)を備え且つ金属網の質感が残る特徴的な外観特性を有する装飾品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の装飾品を示し、(a)は全体の斜視図、(b)はめっき加工前の部分拡大図、(c)はめっき加工後の部分拡大図である。
図2】実施例2の装飾品を示し、(a)は全体の斜視図、(b)はめっき加工前の部分拡大図、(c)はめっき加工後の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.金属網
金属網を構成する線材の線径は、特に限定されないが、0.03〜0.5mmが好ましく、0.04〜0.15mmがより好ましい。工具等を使わず手だけで折り曲げることが容易になるのは、線径が0.15mm以下のときであり、0.04〜0.09mmが最も好ましい。
メッシュ数は、特に限定されないが、300〜10が好ましく、250〜20がより好ましく、200〜30が最も好ましい。300を超えると、その開目が埋まらない程度に付着させるめっき層の厚さが極小となり、金属網を強化することが難しくなる。
線材の材料は、特に限定されないが、ステンレス鋼、銅、黄銅、丹銅、ニッケル等を例示できる。
【0012】
2.めっき層
めっき層の材料は、特に限定されないが、金、銀、銅、スズ、クロム、ニッケル、これらの一つ以上を主とする合金を例示できる。
めっき層の色調は、特に限定されず、前記材料の選択や合金組成の調整等により任意の色調を選択できる。
めっきの艶調は、特に限定されず、光沢めっき、無光沢めっき、サテン調めっき(半光沢梨地)等を任意に選択できる。光沢めっきであれば華美な外観とすることができ、無光沢めっきであれば落ち着いた外観とすることができる。
めっき層は、単層でも複数層(例えば下地めっき層と仕上げめっき層)でもよい。
めっき加工の方法は、特に限定されないが、電気めっき、無電解めっき等を例示できる。
【0013】
3.装飾品
置物、壁掛け又は天井下げ飾りとして使用される装飾品の寸法は、特に限定されず、例えば手のひらに載るようなものから、高さ1メートルを超えるようなオブジェまで実施できる。
身飾品としては、特に限定されないが、ブローチ、ペンダントトップ、メダル、バッジ、イヤリング等を例示できる。
【0014】
4.三次元形状
目的の装飾品形状である三次元形状は、特に限定されず、一般的な折り紙細工と同様の折り方による動物(鶴、兎等)、植物(花、果実、木等)、人工物(飛行機、舟、兜等)をはじめ、各種形状に賦形することができる。また、複数枚の金属網による三次元形状を組み合わせたものでもよい。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を具体化した装飾品の実施例について説明する。なお、実施例で記す材料、構成、数値は例示であって、適宜変更できる。
【0016】
図1に示す実施例1は、置物等として使用される装飾品1であって、目的の装飾品形状である折り鶴形状(三次元形状)に折り曲げられた金属網2と、金属網2にその開目が埋まらない程度に付着しためっき層4とからなる。折り曲げ前の金属網2は、図1(b)に示すように、線径0.05mmの丹銅製の線材3が200メッシュに平織され、一辺180mmの正方形に切り出されたものである。めっき層4は、下地めっき層としてのニッケルめっき層と、仕上めっき層としての光沢金めっき層とからなる。めっき層4は、図1(c)に示すように、金属網2を構成する線材3及び線材3どうしの交差部を包むように付着している。
【0017】
この装飾品1は、次の工程順で製造した。
(1)前記金属網2を、一般的な折り紙細工による折り鶴と同じ折り方で折り曲げて、折り鶴形状に賦形した。
(2)スルファミン酸ニッケルを主成分とするニッケルめっき液に、賦形した金属網2(陰極)と陽極を浸漬して通電し、金属網2に電解めっき加工してその開目が埋まらない程度にニッケルめっき層を電着させた。
(3)シアン化金カリウムを主成分とする金めっき液に、賦形した金属網2(陰極)と陽極を浸漬して通電し、金属網2(ニッケルめっき層上)に電解めっき加工してその開目が埋まらない程度に光沢金めっき層を電着させた。
【0018】
実施例1により、次の作用効果が得られた。
(ア)金属網2を手だけで折り曲げることにより目的の三次元形状(折り鶴形状)を簡単に賦形することができ、ハンダ付けやリベット止めを必要としなかった。
(イ)賦形後の金属網2にめっき加工すると、めっき層4は金属網2を構成する線材3及び線材3どうしの交差部を包むように付着した。このめっき層4により線材3が強化されると共に線材3が互いに拘束されるので、賦形した三次元形状を全体的に固めることができ、外力による変形を防止することができた。
(ウ)仕上めっき層として光沢金めっき層を選択したので、華美な光沢金色の外観特性を付与することができた。
(エ)金属網2の開目が埋まらない程度に付着しためっき層4としたことによって、装飾品1の表面には金属網特有の微細な格子状凹凸が残り、また、開目に残る貫通孔が光を通すので、金属網2の質感が残る外観特性を付与することができた。
【0019】
図2に示す実施例2は、置物等として使用される装飾品1であって、目的の装飾品形状である折り兎形状(三次元形状)に折り曲げられた金属網2と、金属網2にその開目が埋まらない程度に付着しためっき層4とからなる。折り曲げ前の金属網2は、図2(b)に示すように、線径0.3mmのステンレス鋼製の線材3が40メッシュに平織され、一辺180mmの正方形に切り出されたものである。めっき層4は、下地めっき層としてのニッケルめっき層と、仕上めっき層としての銅めっき層からなるものである。めっき層4は、図2(c)に示すように、金属網2を構成する線材3及び線材3どうしの交差部を包むように付着している。
【0020】
この装飾品1は、次の工程順で製造した。
(1)前記金属網2を、一般的な折り紙細工による折り鶴と同じ折り方で折り曲げて、折り兎形状に賦形した。
(2)実施例1と同様にニッケルめっき液に、賦形した金属網2(陰極)と陽極を浸漬して通電し、金属網2に電解めっき加工してその開目が埋まらない程度にニッケルめっき層を電着させた。
(3)硫酸銅を主成分とする銅めっき液に、賦形した金属網2(陰極)と陽極を浸漬して通電し、金属網2(ニッケルめっき層上)に電解めっき加工してその開目が埋まらない程度に無光沢銅めっき層を電着させた。
【0021】
実施例2により、次の作用効果が得られた。
(ア)金属網2は(実施例1よりも硬いが)工具を使って折り曲げることにより目的の三次元形状(折り兎形状)を簡単に賦形することができ、ハンダ付けやリベット止めを必要としなかった。
(イ)賦形後の金属網2にめっき加工すると、めっき層4は金属網2を構成する線材3及び線材3どうしの交差部を包むように付着した。このめっき層4により線材3が強化されると共に線材3が互いに拘束されるので、賦形した三次元形状を全体的に固めることができ、外力による変形を防止することができた。
(ウ)仕上めっき層として無光沢銅めっき層を選択したので、落ち着いた銅色の外観特性を付与することができた。
(エ)金属網2の開目が埋まらない程度に付着しためっき層4としたことによって、装飾品1の表面には金属網特有の微細な格子状凹凸が残り、また、開目に残る貫通孔が光を通すので、金属網2の質感が残る外観特性を付与することができた。
【0022】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
(1)実施例の電解めっき加工を無電解めっき加工とすること。例えば、硫酸ニッケルと次亜リン酸ナトリウムを主成分とする無電解めっき液に、賦形した金属網2を浸漬し、無電解めっき加工してその開目が埋まらない程度にニッケル−リンめっき層を付着させることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 装飾品
2 金属網
3 線材
4 めっき層
図1
図2