特開2018-170229(P2018-170229A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社GSユアサの特許一覧
<>
  • 特開2018170229-蓄電素子 図000004
  • 特開2018170229-蓄電素子 図000005
  • 特開2018170229-蓄電素子 図000006
  • 特開2018170229-蓄電素子 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-170229(P2018-170229A)
(43)【公開日】2018年11月1日
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/32 20060101AFI20181005BHJP
   H01M 4/52 20100101ALI20181005BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20181005BHJP
【FI】
   H01M4/32
   H01M4/52
   H01M4/62 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-68674(P2017-68674)
(22)【出願日】2017年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 栄人
(72)【発明者】
【氏名】金本 学
(72)【発明者】
【氏名】児玉 充浩
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA05
5H050BA14
5H050CA03
5H050CB16
5H050EA01
5H050EA23
5H050EA28
5H050FA17
5H050FA18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高温での充電受入性能が向上された蓄電素子を提供する。
【解決手段】活物質粒子を含有する合剤を含み、活物質粒子は、水酸化ニッケルを含有する粒子を含み、該粒子の表面には、コバルト化合物が付着し、該合剤は、ホウ酸化合物をさらに含む正極板を備える、ニッケル水素蓄電池などの蓄電素子。ホウ酸化合物は、ホウ酸カルシウムである、蓄電素子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質粒子を含有する合剤を含み、
前記活物質粒子は、水酸化ニッケルを含有する粒子を含み、該粒子の表面には、コバルト化合物が付着し、
前記合剤は、ホウ酸化合物をさらに含む、蓄電素子。
【請求項2】
前記ホウ酸化合物は、ホウ酸カルシウムである、請求項1に記載の蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル水素蓄電池などの蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水酸化ニッケルを活物質として有する正極と、水素吸蔵合金を有する負極と、正極及び負極の間に介在しアルカリ電解液を含有する隔膜と、を備えるニッケル水素蓄電池が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の電池では、正極は、リンを含有する集電体をさらに有し、正極、負極、及び隔膜の少なくとも1つが、ホウ素化合物を含有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−130031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電池では、高温での充電受入性能が低下する場合がある。
【0006】
本実施形態は、高温での充電受入性能が向上された蓄電素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の蓄電素子は、活物質粒子を含有する合剤を含み、活物質粒子は、水酸化ニッケルを含有する粒子を含み、該粒子の表面には、コバルト化合物が付着し、合剤は、ホウ酸化合物をさらに含む。上記の構成により、高温での充電受入性能が向上される。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態によれば、高温での充電受入性能が向上された蓄電素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る蓄電素子(ニッケル水素蓄電池)の断面図である。
図2図2は、実施例及び各比較例の電池の20℃における充電曲線を表すグラフである。
図3図3は、実施例及び各比較例の電池の高温における充電曲線を表すグラフである。
図4図4は、実施例及び各比較例の電池を高温で充電したあとの放電曲線を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る蓄電素子の一実施形態について、図1を参照しつつ説明する。蓄電素子には、二次電池がある。本実施形態では、蓄電素子の一例として、充放電可能な二次電池について説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0011】
本実施形態の蓄電素子1は、アルカリ性の電解液を含むアルカリ蓄電池である。より詳しくは、蓄電素子1は、ニッケル化合物を正極の活物質として有し、水素吸蔵合金を負極の活物質として利用するニッケル水素蓄電池である。この種の蓄電素子1は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子1は、単一又は複数で使用される。具体的に、蓄電素子1は、要求される出力及び要求される電圧が小さいときには、単一で使用される。一方、蓄電素子1は、要求される出力及び要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、他の蓄電素子1と組み合わされて蓄電装置(モジュール)に用いられる。蓄電装置では、該蓄電装置に用いられる蓄電素子1が電気エネルギーを供給する。
【0012】
蓄電素子1は、図1に示すように、正極21と負極22とセパレータ23とを含む電極群2と、電極群2を収容するケース3と、を備える。また、蓄電素子1は、電極群2及びケース3の他に、ケースの内部に、電解液と、電極群2の正極21とケース3の一部とを導通させる接続部材5等とを含む。
【0013】
電極群2は、正極21と負極22とがセパレータ23によって互いに絶縁された状態で積層された積層体が巻回されることによって形成される。
【0014】
正極21は、集電板と、該集電板に付着した合剤とを有する。集電板は、例えば、発泡ニッケル等の金属板である。合剤は、例えば、粒子状の活物質や導電剤などを含有する。本実施形態では、正極21は、集電板としての発泡ニッケル板に、合剤が塗布されて形成される。なお、正極21の厚さは、通常、300μm以上1200μm以下である。
【0015】
本実施形態の正極21の集電板は、例えば、ニッケル製の発泡板である。集電板は、例えば帯状である。
【0016】
正極の合剤は、粒子状の活物質(活物質粒子)と、粒子状の導電剤と、バインダとを含有する。正極における単位面積当たりの合剤質量は、通常、100mg/cm 以上500mg/cm 以下である。
【0017】
正極の合剤は、水酸化ニッケルを含有する粒子を活物質粒子として含む。充電に伴って、水酸化ニッケルの一部がオキシ水酸化ニッケルに変化することから、上記の粒子は、オキシ水酸化ニッケルを含有してもよい。上記粒子の粒子径は、通常、5μm以上15μm以下である。正極の合剤は、通常、活物質を95質量%以上99質量%以下含有する。
【0018】
正極の合剤において、水酸化ニッケルを含有する粒子の表面には、コバルト化合物が付着している。上記粒子において、表面の全部がコバルト化合物で覆われていてもよく、表面の一部がコバルト化合物で覆われていてもよい。上記粒子の表面には、例えば、コバルト化合物が層状で付着してもよく、塊状で付着してもよい。
【0019】
水酸化ニッケルを含有する粒子に対して、該粒子に付着しているコバルト化合物の質量比は、5質量%以下であってもよい。
【0020】
上記粒子の表面に付着しているコバルト化合物としては、例えば、オキシ水酸化コバルト、水酸化コバルト等が挙げられる。コバルト化合物としては、オキシ水酸化コバルトが好ましい。コバルト化合物がオキシ水酸化コバルトであることにより、上記粒子の表面における導電性がより高まるという利点がある。上記粒子の表面に付着しているコバルト化合物は、X線回析およびEPMAなどの元素分析によって同定される。
【0021】
正極の合剤は、バインダとして、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)などを含有する。正極の合剤は、通常、バインダを0.1質量%以上0.8質量%以下含有する。正極の合剤は、メチルセルロースなどのセルロース誘導体やキサンタンガムなどの多糖類を、製造時における合剤の増粘剤として含有してもよい。
【0022】
正極の合剤は、導電剤として、炭素質材料、金属材料などを含有する。炭素質材料としては、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛、ケッチェンブラック(登録商標)やアセチレンブラックなどのカーボンブラック、カーボンウィスカー、炭素繊維、気相成長炭素繊維などが挙げられる。金属材料しては、例えば、ニッケル、金、コバルト化合物などが挙げられる。正極の合剤は、通常、導電剤を0質量%以上5質量%以下含有する。導電剤は、通常、粒子状である。
【0023】
正極の合剤は、ホウ酸化合物を含む。ホウ酸化合物は、ホウ酸イオンを含有する化合物である。ホウ酸イオンとしては、例えば、BO3−、BO 、B2−などが挙げられる。正極の合剤は、上記のホウ酸化合物をホウ素(B)換算で0.1質量%以上1.5質量%以下含んでもよい。正極の合剤は、通常、上記のホウ酸化合物を、固体状(例えば粒子状)の状態で含む。
【0024】
上記のホウ酸化合物は、ホウ酸カルシウムであってもよい。具体的には、正極の合剤は、ホウ酸カルシウムの粒子を含んでもよい。正極の合剤は、ホウ酸カルシウムを1質量%以上3質量%以下含んでもよい。合剤中のホウ酸カルシウムの含有量は、ICP法およびX線回析によって測定される。
【0025】
正極の合剤が、ホウ酸カルシウムなどのホウ酸化合物を含むことにより、Niの酸化反応電位と、酸素発生電位との差(η値)を増大させることができる。特に、高温におけるη値を増大させることができる。これにより、蓄電素子1において、高温での充電受入性能が向上される。また、正極の合剤が、ホウ酸カルシウムなどのホウ酸化合物を含むことにより、蓄電素子1が高温で充電されたあとの出力が向上される。
【0026】
負極22は、集電板と、該集電板に付着した合剤とを有する。集電板は、例えば、厚さ方向に複数の孔が空けられた金属板(穿孔鋼板など)である。合剤は、例えば、粒子状の水素吸蔵合金や導電剤などを含有する。本実施形態では、負極22は、集電板としての穿孔鋼板に、合剤が塗布されて形成される。なお、負極22の厚さは、通常、200μm以上800μm以下である。
【0027】
本実施形態の負極22の集電板は、例えば、ニッケルめっきが施された穿孔鋼板である。
【0028】
負極の合剤は、粒子状の水素吸蔵合金と、粒子状の導電剤と、バインダとを含有する。負極の合剤の単位面積当たりの質量は、通常、100mg/cm 以上500mg/cm以下である。
【0029】
負極の合剤は、例えば、希土類元素を含有する水素吸蔵合金の粒子を含む。水素吸蔵合金は、例えば、AB型(希土類−Ni系)、AB3.0−3.8型(希土類−Mg−Ni系)又はAB型(Laves相)等の合金である。水素吸蔵合金としては、例えば、Mm1.0Ni4.0Co0.7Al0.3Mn0.3組成の合金が採用される。なお、Mmは、希土類元素の混合物であるミッシュメタル[ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)など]である。水素吸蔵合金の粒子径は、通常、30μm以上60μm以下である。負極の合剤は、通常、水素吸蔵合金を95質量%以上99質量%以下含有する。
【0030】
前記水素吸蔵合金の粒子は、アルカリ水溶液で処理されたものであることが好ましい。アルカリ水溶液(処理液)としては、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)のいずれか又は混合溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は、7mol/L以上12mol/L以下であることが好ましく、処理における温度は、80℃以上沸点未満であることが好ましく、処理時間は、1時間以上4時間以下であることが好ましい。特に、水素吸蔵合金がAB3.0−3.8型(希土類−Mg−Ni−Al系)でありアルカリに腐食しやすいCoを含まない場合、KOHを含むアルカリ水溶液で、濃度10mol/L以上のアルカリ水溶液を用い、110℃以上の温度で、処理時間が1時間以上であることが好ましい。このような処理条件であることにより、水素吸蔵合金の粒子表面に緻密なNi層を形成でき、これにより、水素吸蔵合金の耐腐食性が向上し、サイクル寿命を向上させることができる。
【0031】
負極の合剤は、上述した正極の合剤のバインダと同様のバインダを含有する。負極の合剤は、通常、バインダを0.1質量%以上2.0質量%以下含有する。負極の合剤は、メチルセルロースなどのセルロース誘導体やキサンタンガムなどの多糖類を製造時の合剤の増粘剤として含有してもよい。負極の合剤は、通常、増粘剤を0.01質量%以上0.5質量%以下含有する。
【0032】
負極の合剤は、上述した正極の合剤の導電剤と同様の導電剤を含有する。負極の合剤は、通常、導電剤を0質量%以上5質量%以下含有する。導電剤は、通常、粒子状である。
【0033】
本実施形態の電極群2では、以上のように構成される正極21と負極22とがセパレータ23によって絶縁された状態で巻回される。即ち、本実施形態の電極群2では、正極21、負極22、及びセパレータ23の積層体が巻回される。セパレータ23は、絶縁性を有する部材である。セパレータ23は、正極21と負極22との間に配置される。これにより、電極群2(詳しくは、積層体)において、正極21と負極22とが互いに絶縁される。また、セパレータ23は、ケース3内において、電解液を保持する。
【0034】
セパレータ23は、帯状である。セパレータ23は、正極21及び負極22間の短絡を防ぐために正極21及び負極22の間に配置されている。
【0035】
セパレータ23は、多孔質である。セパレータ23は、例えば、織物又は不織布である。セパレータ23の材質としては、高分子化合物、ガラス、セラミックなどが挙げられる。高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン(PO)が挙げられる。
【0036】
ケース3は、円形の開口を有するケース本体31と、ケース本体31の開口を塞ぐ(閉じる)円板形状の蓋部32と、を有する。ケース3は、ケース本体31の開口周縁部と、蓋部32の周縁部との間に配置されたガスケット33をさらに有する。ケース3は、電極群2と電解液とを内部空間に収容する。ケース3は、電解液に耐性を有する金属によって形成される。ケース3の材質としては、例えば、鉄や鋼などの鉄系金属材料が挙げられる。ケース3は、例えば、表面にニッケルめっき処理や亜鉛めっき処理が施された金属板によって形成される。
【0037】
ガスケット33は、例えば、絶縁性の合成樹脂で形成される。ケース3は、ケース本体31の開口周縁部と、円板形状の蓋部32の周縁部とをガスケット33を介して重ね合わせた状態で、接合することによって形成される。ガスケット33によって、ケース本体31と、蓋部32とが電気的に絶縁される。また、ケース3は、ケース本体31と蓋部32とによって画定される内部空間を有する。本実施形態では、ケース本体31の開口周縁部と蓋部32の周縁部とは、カシメによって接合される。
【0038】
ケース本体31は、開口方向と反対方向の端部が塞がれた円筒形状(即ち、有底円筒形状)を有する。ケース本体31は、中空円筒状の側壁部と、側壁部の一方の開口(ケース本体31の開口と反対側の開口)を塞ぐ円板状の底部とを有する。ケース本体31の内部には、電極群2の巻回軸方向と側壁部の円筒軸方向とが同じ方向となるように、電極群2が収容されている。ケース本体31の底部は、負極22が電気的に接続されることで負極端子として機能する。
【0039】
蓋部32は、ケース本体31の開口を塞ぐ円板状の部材である。蓋部32の中央部は、外方へ向けて突出している。突出した部分は、弾性を有する接続部材5を介して正極21と電気的に接続されることにより、正極端子として機能する。
【0040】
蓋部32は、ケース3内のガスを外部に排出可能な安全弁321を有する。安全弁321は、ケース3の内部圧力が所定の圧力まで上昇したときに、該ケース3内から外部にガスを排出する。
【0041】
電解液は、アルカリ性(例えばpH14〜15)の水溶液である。電解液は、水に電解質を溶解させることによって得られる。電解質は、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物である。本実施形態の電解液は、アルカリ金属の濃度が6〜9Mとなるように、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどを水に溶解させたものである。
【0042】
次に、上記実施形態の蓄電素子1の製造方法について説明する。
【0043】
蓄電素子1の製造方法では、まず、ニッケル製の発泡板などの集電板に活物質を含む合剤を塗布することによって正極21を作製する。また、穿孔鋼板などの集電板に活物質を含む合剤を塗布することによって負極22を作製する。次に、正極21、セパレータ23、及び負極22を重ね合わせて電極群2を形成する。続いて、電極群2をケース3に入れ、ケース3に電解液を入れることによって蓄電素子1を組み立てる。
【0044】
正極21の作製では、集電板に、活物質とホウ酸化合物とを含む合剤を塗布する。合剤には、通常、Y、Yb等の希土類酸化物とバインダと溶媒(水)とがさらに含まれている。合剤の塗布量を変化させることによって、単位面積当たりの合剤の質量を調整することができる。合剤の塗布方法としては、一般的な方法が採用される。そして、乾燥処理によって、合剤中の水を揮発させる。
【0045】
正極21の作製において、水酸化ニッケルを含有する粒子を活物質として用いる。斯かる粒子の表面には、水酸化コバルトやオキシ水酸化コバルト等のコバルト化合物が付着している。上記の粒子の表面には、オキシ水酸化コバルトが付着していることが好ましい。表面に水酸化コバルトが付着した活物質粒子を用いて正極21を作製すると、蓄電素子1を充電することによって、斯かる水酸化コバルトから生じたコバルト成分が、上述したホウ酸化合物の粒子に付着し得る。コバルト成分がホウ酸化合物に付着すると、蓄電素子1を高温で充電したあとの出力が、必ずしも十分に向上されない場合がある。一方で、表面にオキシ水酸化コバルトが付着した粒子を用いて正極21を作製することにより、上記のようなコバルト成分がホウ酸化合物の粒子に付着することが防止される。従って、蓄電素子1の高温での充電受入性能が向上され、しかも、蓄電素子1を高温で充電したあとの出力も向上される。
正極21の作製において、表面にオキシ水酸化コバルトが付着した活物質粒子を用いた場合、表面に水酸化コバルトが付着した活物質粒子を用いた場合と異なり、充電を繰り返した後であっても、ホウ酸化合物(例えばホウ酸カルシウム)の粒子の表面には、コバルト成分が付着していない。即ち、ホウ酸化合物(例えばホウ酸カルシウム)の粒子の表面に付着したコバルト成分は、EPMA測定によって検出されない(EPMA測定の検出限界未満である)。
【0046】
負極22は、正極21と同様にして作製することができる。すなわち、負極22の作製では、集電板に、活物質を含む合剤を塗布する。合剤には、通常、導電剤とバインダと溶媒(水)とがさらに含まれている。合剤の塗布量を変化させることによって、単位面積当たりの合剤の質量を調整することができる。合剤の塗布方法としては、一般的な方法が採用される。そして、乾燥処理によって、合剤中の水を揮発させる。セパレータ23としては、市販されているものを用いることができる。
【0047】
電極群2の形成では、正極21と負極22との間にセパレータ23を挟み込んだ積層体を巻回することにより、電極群2を形成する。詳しくは、正極21とセパレータ23と負極22とを重ね合わせ、積層体を作る。積層体を巻回して、電極群2を形成する。
【0048】
電解液は、例えば、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等を水に溶解させることによって調製できる。電解液の組成は、ICPやイオンクロマトグラフを利用した分析によって、確認できる。
【0049】
蓄電素子1の組み立てでは、ケース3のケース本体31に電極群2を入れ、電解液をケース本体31内に入れる。カシメによって、ケース本体31の開口を蓋部32で塞ぐ。
【0050】
上記のように構成された本実施形態の蓄電素子1は、活物質粒子を含有する合剤を含む正極21を有し、上記の活物質粒子は、水酸化ニッケルを含有する粒子を含み、該粒子の表面には、コバルト化合物が付着している。正極21の合剤は、ホウ酸化合物(ホウ酸カルシウム)をさらに含む。斯かる構成により、高温での充電受入性能が向上される。また、斯かる構成により、蓄電素子1を高温で充電したあとの出力も向上される。
【0051】
尚、本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0052】
上記実施形態では、積層体が巻回されてなる電極群2を備えた蓄電素子1について詳しく説明したが、本発明の蓄電素子は、巻回されない積層体を備えてもよい。詳しくは、それぞれ矩形状に形成された正極、セパレータ、負極、及びセパレータが、この順序で複数回積み重ねられてなる電極群を蓄電素子が備えてもよい。蓄電素子1の形状は、特に限定されず、例えば、円柱形状、直方体形状、シート形状等である。
【0053】
上記実施形態では、蓄電素子1が充放電可能なアルカリ蓄電池(例えばニッケル水素蓄電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子1の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記実施形態では、蓄電素子1の一例として、ニッケル水素蓄電池について説明したが、これに限定されるものではない。
【0054】
蓄電素子1(例えば電池)は、蓄電装置(蓄電素子が電池の場合は電池モジュール)に用いられてもよい。蓄電装置は、少なくとも二つの蓄電素子1と、二つの(異なる)蓄電素子1同士を電気的に接続するバスバ部材と、を有する。この場合、本発明の技術が少なくとも一つの蓄電素子に適用されていればよい。
【実施例】
【0055】
以下に示すようにして、アルカリ蓄電池(ニッケル水素蓄電池)を製造した。
【0056】
(実施例1)
(1)正極の作製
3質量%の亜鉛、及び、0.06質量%のコバルトを固溶状態で含有する水酸化ニッケルの粒子表面に、5質量%のコバルト水酸化物を被覆し、さらに、18M水酸化ナトリウム水溶液を用いて110℃で1時間、空気酸化処理をおこなったものを、正極活物質として用いた。増粘剤(カルボキシメチルセルロース)を溶解させた水溶液と、活物質と、当該活物質に対して2質量%のホウ酸カルシウムとを混合して、ペーストを調製し、基材面密度が320g/mの発泡ニッケルにペーストを充填し、乾燥させた。その後、所定の厚さ(0.63mm)にプレスすることによって500mAhの正極板とした。
【0057】
(2)負極の作製
平均粒径D50が60μmとなるように粉砕した水素吸蔵合金の粉末(La0.620.13Mg0.15Ni3.45Al0.15組成)を110℃で2時間、10Mの水酸化カリウム水溶液中で激しく撹拌させた。その後、pHが10になるまで水洗を繰り返した。処理後の合金粉末を振動試料型磁力計で測定した結果、磁化は、0.7Am/kgであった。乾燥後の粉末100質量部と、増粘剤(メチルセルロース)を溶解した水溶液とを混合し、さらに、結着剤(スチレンブタジエンゴム)を1質量部加えてペーストを調製した。調製したペーストを、厚さ35μmの穿孔鋼板(開口率50%)の両面に塗布して乾燥させた後、厚さ0.26mmにプレスして、1000mAhの負極板を作製した。
【0058】
(3)セパレータ
セパレータとして、スルフォン化処理を施した、目付40g/mの不織布を用いた。
【0059】
(4)電解液の調製
電解液としては、以下の方法で調製したものを用いた。溶媒としての水に、水酸化カリウム(KOH)を6.8M(即ち6.8mol/L)濃度となるように溶解させ、電解液を調製した。
【0060】
(5)ケース内への電極群の配置
上記の正極、上記の負極、上記の電解液、セパレータ、及びケースを用いて、一般的な方法によって電池を製造した。
まず、負極二枚で、セパレータを間に配した状態で、正極を挟み積層されてなるシート状物作成した。電極群を、PP製の角形のケース本体内に配置した。続いて、上記の電解液を、ケース内に入れた。最後に、ケース本体に蓋部を取り付け開放型のセルを作成した。
【0061】
(比較例2,3)
ホウ酸カルシウムに代えて表1に示す添加剤を正極の合剤に添加して電池を製造した点以外は、実施例1と同様にして電池を製造した。
【0062】
<各電池の充電曲線、及び、η値>
20℃、及び、高温(実施例の電池では45℃、比較例の電池では40℃)において、下記の方法によって充電曲線を作成した。また、常法に従いη値を算出した。
上記の結果を表1に示す。また、20℃における充電曲線を図2に示す。高温における充電曲線を図3に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
<高温で充電したあとの各電池の放電曲線>
高温(実施例の電池では45℃、比較例の電池では40℃)において充電を0.1ItAで16時間おこない、1時間休止し、放電を0.2 ItAで参照極に対し0Vとなるまで行った。その際の放電曲線を作成した。また、下記の方法によって充電受入率を算出した。充電受入れ率は、室温における上記充放電条件において測定した放電容量を100%とし、百分率を算出することで求めた。
上記の結果を表2に示す。また、45℃(比較例は40℃)における充電曲線を図4に示す。
実施例1の電池では、比較例1、2の電池と比較して、特に高温においてη値が高いことから、高温での受電受入性能が向上された。
【0065】
【表2】
【0066】
<高温で充電したあとの出力について>
実施例の電池では、図4から把握されるように、放電時の中間放電電位が高い(内部抵抗が低い)ことから高温で充電したあとの出力も向上された。
【符号の説明】
【0067】
1:蓄電素子(ニッケル水素蓄電池)、
2:電極群、
21:正極、 22:負極、 23:セパレータ、
3:ケース、 31:ケース本体、 32:蓋部。
図1
図2
図3
図4