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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-170396(P2018-170396A)
(43)【公開日】2018年11月1日
(54)【発明の名称】トランス
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20181005BHJP
【FI】
   H01F30/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-66537(P2017-66537)
(22)【出願日】2017年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】506279768
【氏名又は名称】株式会社アルファトランス
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】小森 正義
(72)【発明者】
【氏名】徳田 学
(57)【要約】
【課題】コイルのスペースファクタを向上させるとともにコイルの巻線をボビンに容易に規則正しく巻くことが可能なトランスを提供する。
【解決手段】 ボビンBBのフランジ部FL1の上面には、上段面11、下段面12および段差面14〜16からなる段差が形成されている。フランジ部FL1の下面には2次側ピン端子P21〜P24が取り付けられている。上段面11は、巻き芯MBの周囲を取り囲むようにフランジ部FL1の上面に形成されている。段差面14〜16は、上段面11と下段面12との境界に形成されている。2次コイルC2はボビンBBの巻き芯に巻回される。2次コイルC2の引き出し線CP1,CP2は下段面12上に引き出され、フランジ部FL1の下面の2次側ピン端子P21〜P24のうち互いに異なる2次側端子ピンにそれぞれ接続される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビンと、
コイルと、
複数の端子とを備え、
前記ボビンは、巻き芯と、前記巻き芯の一端および他端にそれぞれ形成される第1および第2のフランジ部とを有し、
前記複数の端子のうち第1の端子は、前記第1のフランジ部に設けられ、
前記コイルは、前記巻き芯に巻回される巻線と、前記巻線の一端から引き出される第1の引き出し線と、前記巻線の他端から引き出される第2の引き出し線とを有し、
前記第1のフランジ部は、前記第2のフランジ部に対向する対向面を有し、
前記対向面は、上段面、段差面および下段面からなる段差を有し、
前記巻き芯は、前記上段面上に設けられ、
前記第1の引き出し線は、前記巻線から前記下段面上に引き出されるように設けられ、前記第1の端子に接続される、トランス。
【請求項2】
前記段差面は、前記巻線からの前記第1の引き出し線の引き出し部から前記第1のフランジ部の縁部へ延びる第1の段差面を含み、
前記第1の引き出し線は、前記下段面上で前記第1の段差面に沿って延びる、請求項1記載のトランス。
【請求項3】
前記第1のフランジ部の縁部には第1の切欠きが設けられ、
前記第1の段差面は、前記巻線からの前記第1の引き出し線の引き出し部から前記第1の切欠きまで延び、
前記第1の端子は、前記第1のフランジ部の前記対向面と反対側の面に設けられ、
前記第1の引き出し線は、前記下段面上で前記第1の段差面に沿って前記第1の切欠きまで延び、さらに前記第1の切欠きにより案内されて前記第1の端子に接続される、請求項2記載のトランス。
【請求項4】
前記第1の段差面は、前記巻き芯の前方へ延び、湾曲して第1の側方縁部へ延びるように設けられる、請求項2または3記載のトランス。
【請求項5】
前記コイルは、前記巻線の他端から引き出される第2の引き出し線をさらに有し、
前記複数の端子のうち第2の端子は前記第1のフランジ部に設けられ、
前記第2の引き出し線は、前記巻線から前記下段面上に引き出されるように設けられ、前記第2の端子に接続される、請求項2〜4のいずれか一項に記載のトランス。
【請求項6】
前記段差面は、前記巻線からの前記第2の引き出し線の引き出し部から前記第1のフランジ部の縁部へ延びる第2の段差面を含み、
前記第2の引き出し線は、前記下段面上で前記第2の段差面に沿って延びる、請求項5記載のトランス。
【請求項7】
前記第1のフランジ部の縁部には第2の切欠きが設けられ、
前記第2の段差面は、前記巻線からの前記第2の引き出し線の引き出し部から前記第2の切欠きまで延び、
前記第2の端子は、前記第2のフランジ部の前記対向面と反対側の面に設けられ、
前記第2の引き出し線は、前記下段面上で前記第2の段差面に沿って前記第2の切欠きまで延び、さらに前記第2の切欠きにより案内されて前記第2の端子に接続される、請求項6記載のトランス。
【請求項8】
前記第2の段差面は、前記巻き芯の前方へ延び、湾曲して第2の側方縁部へ延びるように設けられる、請求項6または7記載のトランス。
【請求項9】
前記段差面は、前記第1の段差面と前記第2の段差面とをつなぐように前記ボビンの前記巻き芯に沿って延びる第3の段差面をさらに含み、
前記下段面は、前記第1の段差面と前記第2の段差面との間に設けられ、
前記第1の引き出し線および前記第2の引き出し線は、前記上段面から前記第3の段差面に交差して前記下段面に延びるように設けられ、
前記第3の段差面は、前記上段面および前記下段面に対して傾斜するように形成される、請求項6〜8のいずれか一項に記載のトランス。
【請求項10】
前記上段面と前記下段面との高さの差は、前記第1の引き出し線の直径以上である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のトランス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビンに巻回されたコイルを有するトランスに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯電子端末のような小型の電子機器用のACアダプタまたは充電器等の電源回路にはトランスが用いられている。このようなトランスに用いられるボビンは、巻き芯部および上下のフランジ部を有する。ボビンの下側のフランジ部の一方側の部分に複数の1次側ピン端子が取り付けられ、下側のフランジ部の他方側の部分に複数の2次側ピン端子が取り付けられる。ボビンにはコアが装着され、巻き芯部に1次コイルおよび2次コイルが巻回される。1次コイルの引き出し線は1次側ピン端子に接続され、2次コイルの引き出し線は2次側ピン端子に接続される(例えば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−76942号公報
【特許文献2】特開2007−266639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
小型の電子機器に用いられるトランスには小型化が要求される。トランスの小型化のためには、コイルのスペースファクタ(線占積率)を向上させることが重要である。具体的には、ボビンのフランジ部間のスペースにおいてコイルの巻線を多くの巻き数で巻くことが好ましい。しかしながら、小型のトランスにおいてコイルのスペースファクタを向上させることは容易ではない。また、小型のトランスのボビンにコイルの巻線を規則正しく巻くことは容易ではない。コイルの巻線の一部に乱れがあると、トランスの特性にばらつきが生じる。
【0005】
本発明の目的は、コイルのスペースファクタを向上させるとともにコイルの巻線をボビンに容易に規則正しく巻くことが可能なトランスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係るトランスは、ボビンと、コイルと、複数の端子とを備え、ボビンは、巻き芯と、巻き芯の一端および他端にそれぞれ形成される第1および第2のフランジ部とを有し、複数の端子のうち第1の端子は、第1のフランジ部に設けられ、コイルは、巻き芯に巻回される巻線と、巻線の一端から引き出される第1の引き出し線と、巻線の他端から引き出される第2の引き出し線とを有し、第1のフランジ部は、第2のフランジ部に対向する対向面を有し、対向面は、上段面、段差面および下段面からなる段差を有し、巻き芯は、上段面上に設けられ、第1の引き出し線は、巻線から下段面上に引き出されるように設けられ、第1の端子に接続される。
【0007】
そのトランスにおいては、第1のフランジ部の対向面に段差が設けられている。コイルの第1の引き出し線は下段面上に引き出される。この場合、下段面の高さは上段面の高さよりも低い。そのため、第1の引き出し線の上端の高さは、上段面と下段面との高さの差だけ低くなる。したがって、コイルの最下端の巻線が第1のフランジ部の対向面に近づくかまたは接触する。すなわち、コイルの最下端の巻線と第1のフランジ部の対向面との間に第1の引き出し線が存在することにより形成される隙間が小さくなるか、または隙間が形成されない。その結果、ボビンの第1フランジ部と第2のフランジ部との間でのコイルの巻き数を増加させることができる。それにより、コイルのスペースファクタを向上させることが可能になる。
【0008】
また、コイルの最下端の巻線と第1のフランジ部の対向面との間の隙間が小さいかまたは隙間が形成されないため、コイルの巻線をボビンの巻き芯に容易に規則正しく巻くことが可能となる。その結果、トランスの特性が均一になるとともに信頼性が向上する。
【0009】
(2)段差面は、巻線からの第1の引き出し線の引き出し部から第1のフランジ部の縁部へ延びる第1の段差面を含み、第1の引き出し線は、下段面上で第1の段差面に沿って延びてもよい。
【0010】
この場合、コイルの第1の引き出し線が下段面上で第1の段差面により位置決めされるので、コイルの巻線をボビンの巻き芯に巻く作業を容易に行うことができる。また、コイルの第1の引き出し線が下段面および第1の段差面に接触するため、放熱効果が得られる。
【0011】
(3)第1のフランジ部の縁部には第1の切欠きが設けられ、第1の段差面は、巻線からの第1の引き出し線の引き出し部から第1の切欠きまで延び、第1の端子は、第1のフランジ部の対向面と反対側の面に設けられ、第1の引き出し線は、下段面上で第1の段差面に沿って第1の切欠きまで延び、さらに第1の切欠きにより案内されて第1の端子に接続されてもよい。
【0012】
この場合、コイルの第1の引き出し線が下段面上で第1の段差面および第1の切欠きにより掛止および位置決めされるので、コイルの巻線をボビンの巻き芯に規則正しく巻く作業をさらに容易に行うことができる。
【0013】
(4)第1の段差面は、巻き芯の前方へ延び、湾曲して第1の側方縁部へ延びるように設けられてもよい。この場合、コイルの第1の引き出し線が第1の段差面に沿って確実に保持される。それにより、第1の引き出し線が第1の段差面により確実に掛止および位置決めされる。
【0014】
(5)コイルは、巻線の他端から引き出される第2の引き出し線をさらに有し、複数の端子のうち第2の端子は第1のフランジ部に設けられ、第2の引き出し線は、巻線から下段面上に引き出されるように設けられ、第2の端子に接続されてもよい。
【0015】
このような構成により、コイルの最下端の巻線と第1のフランジ部の対向面との間に第2の引き出し線が存在することにより形成される隙間が小さくなるか、または隙間が形成されない。その結果、ボビンの第1フランジ部と第2のフランジ部との間でのコイルの巻き数を増加させることができる。それにより、第1の引き出し線に加えて第2の引き出し線が下段面上に引き出される場合でも、コイルのスペースファクタを向上させることが可能になるとともに、コイルの巻線をボビンの巻き芯に容易に規則正しく巻くことが可能となる。その結果、トランスの特性が均一になるとともに信頼性が向上する。
【0016】
(6)段差面は、巻線からの第2の引き出し線の引き出し部から第1のフランジ部の縁部へ延びる第2の段差面を含み、第2の引き出し線は、下段面上で第2の段差面に沿って延びてもよい。
【0017】
この場合、コイルの第2の引き出し線が下段面上で第2の段差面により位置決めされるので、コイルの巻線をボビンの巻き芯に巻く作業を容易に行うことができる。また、コイルの第2の引き出し線が下段面および第2の段差面に接触するため、放熱効果が得られる。
【0018】
(7)第1のフランジ部の縁部には第2の切欠きが設けられ、第2の段差面は、巻線からの第2の引き出し線の引き出し部から第2の切欠きまで延び、第2の端子は、第2のフランジ部の対向面と反対側の面に設けられ、第2の引き出し線は、下段面上で第2の段差面に沿って第2の切欠きまで延び、さらに第2の切欠きにより案内されて第2の端子に接続されてもよい。
【0019】
この場合、コイルの第2の引き出し線が下段面上で第2の段差面および第2の切欠きにより掛止および位置決めされるので、コイルの巻線をボビンの巻き芯に規則正しく巻く作業をさらに容易に行うことができる。
【0020】
(8)第2の段差面は、巻き芯の前方へ延び、湾曲して第2の側方縁部へ延びるように設けられてもよい。この場合、コイルの第2の引き出し線が第2の段差面に沿って確実に保持される。それにより、第2の引き出し線が第2の段差面により確実に掛止および位置決めされる。
【0021】
(9)段差面は、第1の段差面と第2の段差面とをつなぐようにボビンの巻き芯に沿って延びる第3の段差面をさらに含み、下段面は、第1の段差面と第2の段差面との間に設けられ、第1の引き出し線および第2の引き出し線は、上段面から第3の段差面に交差して下段面に延びるように設けられ、第3の段差面は、上段面および下段面に対して傾斜するように形成されてもよい。
【0022】
この場合、第1および第2の引き出し線は、傾斜した第3の段差面に交差するように延びる。それにより、第1および第2の引き出し線が第3の段差面に接触しつつ上段面から下段面に引き出される。それにより、第1および第2の引き出し線との間に隙間が生じることを防止することができる。
【0023】
(10)上段面と下段面との高さの差は、第1の引き出し線の直径以上であってもよい。この場合、第1のフランジ部の対向面とコイルの最下端の巻線との間に隙間が形成されない。それにより、コイルのスペースファクタをより向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、コイルのスペースファクタを向上させるとともにコイルの巻線をボビンに容易に規則正しく巻くことが可能なトランスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施の形態に係るトランスを前方斜め上方から見た場合の斜視図である。
図2図1のトランスのボビンを前方斜め上方から見た場合の斜視図である。
図3図2のボビンの正面図である。
図4図3のボビンのA−A線断面図である。
図5図2のボビンの側面図である。
図6図2のボビンのB−B線断面図である。
図7】本実施の形態に係るトランスの前後方向に沿った縦断面図である。
図8】比較例のトランスの前後方向に沿った縦断面図である。
図9】本実施の形態に係るトランスの左右方向に沿った縦断面図である。
図10】比較例のトランスの左右方向に沿った縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(1)実施の形態に係るトランスの構成
以下の図1図10において、互いに直交する方向を矢印X、YおよびZで表す。矢印Xの方向を右側方、矢印Xと逆の方向を左側方、矢印Yの方向を前方、矢印Yと逆の方向を後方、矢印Zの方向を上方、矢印Zと逆の方向を下方とする。
【0027】
図1は本発明の一実施の形態に係るトランスを前方斜め上方から見た場合の斜視図である。図2図1のトランスのボビンを前方斜め上方から見た場合の斜視図である。図3図2のボビンの正面図である。図4図3のボビンのA−A線断面図であり、図5図2のボビンの側面図であり、図6図4のボビンのB−B線断面図である。
【0028】
図1に示すトランス1は、ボビンBB、1次コイルC1(後述する図7参照)、2次コイルC2、E型コア(磁心)EC1,EC2、金属製の複数の1次側ピン端子P11〜P16(図3)および金属製の複数の2次側ピン端子P21〜P24を備える。1次コイルC1は、巻線W1(後述する図7参照)および引き出し線からなる。2次コイルC2は、巻線W2(後述する図7および図9)および引き出し線CP1,CP2からなる。
【0029】
フランジ部FL1の下面の前方部分には、複数の2次側ピン端子P21〜P24が上下方向に延びるように圧入または一体成形等により取り付けられている。フランジ部FL1の下面の後方部分には、複数の1次側ピン端子P11〜P16が上下方向に延びるように圧入または一体成形等により取り付けられている。
【0030】
図2に示すように、ボビンBBは、角筒状の巻き芯MB、および一対のフランジ部FL1,FL2からなる。フランジ部FL1は巻き芯MBの下端に設けられ、フランジ部FL2は巻き芯MBの上端に設けられている。ボビンBBはプラスチック等の絶縁材料により一体的に形成されている。ボビンBBの巻き芯MBには、1次コイルC1の巻線W1および2次コイルC2の巻線W2が巻回される(後述する図7参照)。
【0031】
フランジ部FL1の前方部分には、上側フランジFLUおよび下側フランジFLLが形成されている。フランジ部FL1の前方部分の上面(対向面)には、上段面11、下段面12および段差面14〜16からなる段差が形成されている。上段面11は、巻き芯MBの周囲を取り囲むようにフランジ部FL1の上面に形成されている。
【0032】
段差面14〜16は、上段面11と下段面12との境界に形成されている。段差面16は巻き芯MBの前方で左右方向に延びる。段差面14は段差面16の左端から前方に延び、左方に湾曲してフランジ部FL1の左の側方縁部まで延びる。段差面15は段差面16の右端から前方に延び、右方に湾曲してフランジ部FL1の右の側方縁部まで延びる。下段面12は、段差面14,15間に設けられている。図6に示すように、段差面16は下段面12に対して傾斜するように形成されている。
【0033】
上側フランジFLUの左右の側方縁部には、2次コイルC2の引き出し線CP1,CP2を案内するための切欠き21,22がそれぞれ形成されている。切欠き21は、段差面14に沿うように下段面12に設けられている。切欠き22は、段差面15に沿うように下段面12に設けられている。下側フランジFLLの左右の側方縁部には、2次コイルC2の引き出し線CP1,CP2を案内するための切欠き31,32(図4)がそれぞれ形成されている。
【0034】
上側フランジFLUの前方縁部には、複数の切欠き23〜27が形成されている。下側フランジFLLの前方縁部には、複数の切欠き33〜37が形成されている。図5に示すように、上段面11と下段面12との高さの差はhである。高さの差hは2次コイルC2の引き出し線CP1,CP2の直径以上であることが好ましい。
【0035】
図4に示すように、フランジ部FL1の後方部分の上面には、上段面11、下段面13および段差面17〜19からなる段差が形成されている。図4においては、下段面12,13にドットパターンが付されている。
【0036】
段差面17〜19は、上段面11と下段面13との境界に形成されている。段差面18は巻き芯MBの後方で左右方向に延びる。段差面17は段差面19の左端から後方に延び、フランジ部FL1の後方縁部まで延びる。段差面18は段差面19の右端から後方に延び、フランジ部FL1の後方縁部まで延びる。下段面13は、段差面17,18間に設けられている。図6に示すように、段差面19は下段面13に対して傾斜するように形成されている。
【0037】
フランジ部FL1の後方縁部には、複数の切欠き41〜45が形成されている。切欠き41は、段差面17に沿うように下段面13に設けられている。切欠き45は、段差面18に沿うように下段面13に設けられている。切欠き42〜44は、段差面19に交差するように下段面13に設けられている。
【0038】
1次コイルC1の巻線W1は、ボビンBBの巻き芯MBに巻回される(後述する図7参照)。1次コイルC1の一方および他方の引き出し線(図示せず)は、巻線W1からの引き出し部から図4の下段面13上に引き出され、下段面13上を後方縁部の切欠き41〜45のうち互いに異なる2つの切欠きまで延び、それらの切欠きにそれぞれ案内されて1次側ピン端子P11〜P16のうち互いに異なる2つの1次側ピン端子に接続される。1次コイルC1としては、例えば、直径0.1mm〜0.25mmのエナメル線等の電線が用いられる。
【0039】
本実施の形態では、後述する図7に示すように、2次コイルC2の巻線W2は、1次コイルC1の巻線W1上に巻回される。図1に示すように、2次コイルC2の引き出し線CP1は、巻線W2からの引き出し部から下段面12上に引き出され、下段面12上で段差面14に沿って切欠き21まで延び、切欠き21により案内されて上側フランジFLUと下側フランジFLLとの間を通って2次側ピン端子P21〜P24のうちいずれか1つに接続される。同様に、2次コイルC2の引き出し線CP2は、巻線W2からの引き出し部から下段面12上に引き出され、下段面12上で段差面15に沿って切欠き22まで延び、切欠き22により案内されて上側フランジFLUと下側フランジFLLとの間を通って2次側ピン端子P21〜P24のうち他の1つに接続される。2次コイルC2としては、直径0.3mm〜0.55mmの三層絶縁電線が用いられる。2次コイルC2の外周部には絶縁テープが巻回される。
【0040】
図1に示すように、フランジ部FL2の上面上の前方部分にπ形状の突条部T1が形成されている。また、フランジ部FL2の上面上の後方部分にπ形状の突条部T2が形成されている。フランジ部FL2、巻き芯MBおよびフランジ部FL1には、上下に開口する内部空間(図2)が形成されている。巻き芯MBの内部空間ISおよびフランジ部FL1,FL2の左右側にそれぞれ下方および上方からE型コアEC1,EC2が嵌め込まれている。なお、コアの形状は、本例のE型コアEC1,EC2に限定されず、他の形状のコアを用いてもよい。例えば、E型コアとI型コアとの組み合わせを用いてもよい。
【0041】
本実施の形態に係るトランスは、配線回路基板等の取り付け面に取り付けられる。この場合、ボビンBBの巻き芯MBが取り付け面に垂直に配置される。
【0042】
本実施の形態に係るトランスにおいては、1次側ピン端子P11〜P16および2次側ピン端子P21〜P24を除く部分の最大高さ(矢印Zの方向の寸法)は例えば22mmであり、最大幅(矢印Xの方向の寸法)は例えば25mmであり、最大奥行き(矢印Yの方向の寸法)は例えば22mmである。
【0043】
(2)実施の形態に係るトランスの効果
以下、本実施の形態に係るトランスの効果について比較例のトランスと比較しつつ説明する。
【0044】
図7は本実施の形態に係るトランスの前後方向に沿った縦断面図である。図8は比較例のトランスの前後方向に沿った縦断面図である。図9は本実施の形態に係るトランスの左右方向に沿った縦断面図である。図10は比較例のトランスの左右方向に沿った縦断面図である。
【0045】
図7の実施の形態に係るトランスおよび図8の比較例のトランスにおいては、ボビンBBの巻き芯MBに1次コイルC1の巻線W1が2層に巻回され、1次コイルC1の巻線W1上に2次コイルC2の巻線W2が2層に巻回されている。
【0046】
図8に示すように、比較例のトランスにおいては、フランジ部FL1の上面100に段差が設けられていない。2次コイルC2の引き出し線CP2はフランジ部FL1の上面100上に引き出される。同様に、2次コイルC2の引き出し線CP1(図示せず)もフランジ部FL1の上面100上に引き出される。この場合、図8および図10に示すように、2次コイルC2の二層目の最下端の巻線W2は、引き出し線CP1,CP2と交差するため、フランジ部FL1の上面100から浮き上がる。すなわち、2次コイルC2の二層目の最下端の巻線W2とフランジ部FL1の上面100との間に隙間が形成される。
【0047】
これに対して、図7に示すように、本実施の形態に係るトランスにおいては、フランジ部FL1の上面に段差が設けられている。2次コイルC2の引き出し線CP2は下段面12上に引き出される。同様に、2次コイルC2の引き出し線CP1(図示せず)も下段面12上に引き出される。この場合、下段面12の高さは上段面11の高さよりも差h低い。そのため、引き出し線CP1,CP2の上端の高さは、上段面11と同じかまたは上段面11よりも低い。したがって、図7および図9に示すように、2次コイルC2の二層目の最下端の巻線W2は、フランジ部FL1の上段面11から浮き上がらず、上段面11に接触する。すなわち、2次コイルC2の二層目の最下端の巻線W2とフランジ部FL1の上段面111との間に隙間が形成されない。
【0048】
その結果、本実施の形態に係るトランスにおいては、比較例のトランスに比べて、ボビンBBのフランジ部FL1,FL2間での2次コイルC2の巻き数が約1ターン分多くなる。それにより、2次コイルC2のスペースファクタが向上する。
【0049】
また、2次コイルC2の最下端の巻線W2とフランジ部FL1の上段面11との間に隙間が形成されないため、2次コイルC2の巻線W2をボビンBBの巻き芯MBに容易に規則正しく巻くことが可能となる。この場合、2次コイルC2の引き出し線CP1,CP2が下段面12上で段差面14,15により掛止および位置決めされるので、2次コイルC2の巻線W2をボビンBBの巻き芯MBに規則正しく巻く作業を容易に行うことができる。
【0050】
さらに、段差面14,15は巻き芯MBの前方へ延び、湾曲して左右の側方縁部へ延びるように設けられているので、2次コイルC2の引き出し線CP1,CP2が段差面14,15に沿って確実に保持される。それにより、2次コイルC2の引き出し線CP1,CP2が段差面14,15により確実に掛止および位置決めされる。
【0051】
また、2次コイルC2の引き出し線CP1,CP2は、傾斜した段差面16に交差するように延びるので、引き出し線CP1,CP2が段差面16に接触しつつ上段面11から下段面12に引き出される。それにより、フランジ部FL1の上面と引き出し線CP1,CP2との間に隙間が生じることを防止することができる。さらに、2次コイルC2の引き出し線CP1,CP2が下段面12および段差面14,15に確実に接触するため、十分な放熱効果が得られる。
【0052】
1次コイルC1の引き出し線についても、上段面11、下段面13および段差面17〜19により2次コイルC2の引き出し線CP2と同様の効果が得られる。
【0053】
(3)他の実施の形態
(a)上記実施の形態では、2次コイルC2の引き出し線CP1,CP2の両方がフランジ部FL1の上段面11から下段面12に引き出されているが、2次コイルC2の引き出し線CP1,CP2の一方がフランジ部FL1の上段面11から下段面12に引き出されてもよい。この場合、2次コイルC2の引き出し線CP1,CP2の他方はフランジ部FL2の下面側から引き出されてもよい。また、上記実施の形態では、1次コイルC1の引き出し線の両方がフランジ部FL1の上段面11から下段面13に引き出されているが、1次コイルC1の引き出し線の一方がフランジ部FL1の上段面11から下段面13に引き出されてもよい。この場合、1次コイルC1の引き出し線CP1,CP2の他方はフランジ部FL2の下面側から引き出されてもよい。
【0054】
(b)上記実施の形態では、フランジ部FL1の1次側の部分および2次側の部分の両方に段差が形成されているが、フランジ部FL1の2次側の部分のみに段差が形成されてもよく、フランジ部FL1の1次側の部分のみに段差が形成されてもよい。
【0055】
(c)上記実施の形態では、2次コイルC2の引き出し線CP1,CP2がそれぞれ切欠き21,22により案内されているが、2次コイルC2の引き出し線CP1,CP2が他の切欠き23〜27により案内されてもよい。
【0056】
(d)1次コイルC1の引き出し線は、1次側ピン端子P11〜P16のいずれに接続されてもよく、2次コイルC2の引き出し線CP1,CP2は、2次側ピン端子P21〜P24のいずれに接続されてもよい。
【0057】
(e)1次側ピン端子の数および2次側ピン端子の数は、上記実施の形態の数に限定されない。また、1次コイルの数および2次コイルの数も、上記実施の形態の数に限定されず、ボビンBBの巻き芯MBに複数の1次コイルまたは複数の2次コイルが巻回されてもよい。例えば、ボビンBBの巻き芯MBに内側から順に1次コイル、2次コイルおよび1次コイルが巻回されてもよく、1次コイル、2次コイル、1次コイルおよび2次コイルが巻回されてもよい。
【0058】
(f)上記実施の形態では、フランジ部FL1の縁部に切欠き21〜27,31〜37,41〜45が形成されているが、切欠き21〜27,31〜37,41〜45の一部または全てが形成されていなくてもよい。
【0059】
(g)上記実施の形態に係るトランスは、一方のフランジ部FL1に1次側ピン端子P11〜P16および2次側ピン端子P21〜P24が取り付けられた縦型トランスである。本発明は1次側ピン端子が一方のフランジ部に取り付けられかつ2次側ピン端子が他方のフランジ部に取り付けられた横型トランスにも同様に適用可能である。この場合、上記実施の形態における前後、左右および上下は、横型トランスの一方のフランジ部の対向面を上に向けた状態における横型トランスの前後、左右および上下に相当する。
【0060】
(4)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0061】
上記実施の形態では、1次コイルC1または2次コイルC2がコイルの例であり、1次側ピン端子P11〜P16または2次側ピン端子P21〜P24が複数の端子の例であり、フランジ部FL1が第1のフランジ部の例であり、1次コイルC1の一方の引き出し線または2次コイルC2の引き出し線CP1もしくは引き出し線CP2が第1の引き出し線の例であり、1次コイルC1の他方の引き出し線または2次コイルC2の引き出し線CP2もしくは引き出し線CP1が第2の引き出し線の例であり、フランジ部FL2が第2のフランジ部の例である。また、フランジ部FL1の上面が対向面の例であり、上段面11が上段面の例であり、下段面12または下段面13が下段面の例であり、段差面14〜19のいずれかが段差面の例であり、段差面14,15の一方または段差面17,18の一方が第1の段差面の例であり、段差面14,15の他方また段差面17,18の他方が第2の段差面の例であり、段差面16または段差面19が第3の段差面の例である。1次側ピン端子P11〜P16の一つまたは2次側ピン端子P21〜P24の一つが第1の端子の例であり、1次側ピン端子P11〜P16の他の一つまたは2次側ピン端子P21〜P24の他の一つが第2の端子の例であり、切欠き21〜27の一つまたは切欠き41〜45の一つが第1の切欠きの例であり、切欠き21〜27の他の一つまたは切欠き41〜45の他の一つが第2の切欠きの例である。
【0062】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係るトランスは、電源回路または電源機器等に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…トランス,11…上段面,12,13…下段面,14〜19…段差面,21〜27,31〜37,41〜45…切欠き,BB…ボビン,C1…1次コイル,C2…2次コイル,CP1,CP2…引き出し線,EC1,EC2…E型コア,FL1,FL2…フランジ部,FLL…下側フランジ,FLU…上側フランジ,IS…内部空間,MB…巻き芯,P11〜P16…1次側ピン端子,P21〜P24…2次側ピン端子,T1,T2…突条部,W1,W2…巻線
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10